説明

セルロース複合熱可塑性樹脂及びその成形体

【課題】強度・弾性率及び耐衝撃性と流動性の改善されたセルロース複合熱可塑性樹脂とその成形体を提供することである。
【解決手段】セルロースパウダーと有機繊維が含有された複合熱可塑性樹脂。セルロースパウダーが平均200μmより小さく粉砕されたパルプであって、かつ有機繊維の繊維長が1mmから20mmまでであるセルロース複合熱可塑性樹脂。このセルロース複合熱可塑性樹脂を含有してなる成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロースを含有したセルロース複合熱可塑性樹脂及びその成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セルロース複合熱可塑性樹脂は、強度、弾性率、耐摩耗性などの機械特性が向上すること、焼却しても残渣が残らないこと、また、セルロースの比重が一般的セラミック系の充填剤に比べて低いために、成形体の軽量化が図れることなどが利点として挙げられており、熱可塑性樹脂と同様、包装体、収容トレイ、パレット、パソコンや携帯電話の筺体、玩具、文具、自動車用部材等に利用できる。
【0003】
しかし、親水性表面のセルロースと疎水性である例えばポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂との親和性はとても低く、単に溶融混練してもセルロースの分散性が悪く、強度物性が向上しない他、流動性が悪く、成形時にセルロースが熱で焦げて異臭を発生する不具合や、射出成形の際に、ウェルドライン、フローマーク、ショートショットなどの不具合が発生することがあった。
【0004】
そこで、溶融オレフィン樹脂へのセルロース分散性を改良するため、オレフィン樹脂に相溶する酸変性オレフィン樹脂が提案されている(例えば、特許文献1参照)。確かにこの方法でセルロースを分散させると、分散性が向上し、強度や弾性率、また流動性等の諸物性が改善された成形体を得ることが可能である。しかし、熱可塑性樹脂に、この方法でセルロースを複合させると、硬くなり、強度や弾性率が向上するが、一方で衝撃性が低下して、破壊モードも脆性化してしまう。即ち、割れやすく脆くなり、セルロースを含有した熱可塑性樹脂の利用範囲を狭めてしまうことになっていて、大きな問題であった。
【0005】
セラミック系以外の充填剤を用いた、硬くても割れ難い複合材料としては、有機繊維など、アスペクト比の高い高分子系材料を複合させることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、このような材料を熱可塑性樹脂に複合させると、硬さと衝撃性を満足させることができるが、複合させた熱可塑性樹脂の流動性が低下してしまうという問題が残された。
【0006】
更にセルロース繊維と有機繊維を含有する熱可塑性樹脂組成物も提案されている(例えば、特許文献3参照)。有機繊維は長繊維をカットして短繊維化して熱可塑性樹脂と複合させるために、繊維長が一定化できるため、製造時の特性の安定化を図ることができる。しかし、パルプ由来のセルロース繊維では、繊維長をコントロールする際に、機械的或いは化学的に粉砕する過程を経るために、繊維長の分布を生じてしまうことになる。セルロース繊維の繊維長の分布が複合熱可塑性樹脂の特性に大きく影響を与えない領域では問題はないが、ポリマー繊維と同程度の繊維長になると問題で、例えば袋詰め輸送中に袋内で天地方向に繊維長の分布にむらが生じ、更に熱可塑性樹脂との混練等に当たっての揺動搬送や螺動搬送時にもむらが助長されて、安定した特性の製品ができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3032884号公報
【特許文献2】特開2002−121869号公報
【特許文献3】特開2010−215887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、強度・弾性率及び耐衝撃性と流動性の改善されたセルロース複合熱可塑性樹脂とその成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討をした結果、下記に示す本発明により上記課題を解決できることを見出した。
[1]セルロースパウダーと有機繊維が含有されたセルロース複合熱可塑性樹脂。
[2]セルロースパウダーが平均200μmより小さく粉砕されたパルプであって、かつ有機繊維の繊維長が1mmから20mmまでである[1]記載のセルロース複合熱可塑性樹脂。
[3][1]記載のセルロース複合熱可塑性樹脂を含有してなる成形体。
【発明の効果】
【0010】
本発明のセルロース複合熱可塑性樹脂では、強度・弾性率及び耐衝撃性と流動性の改善されたセルロース複合熱可塑性樹脂とその成形体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のセルロース複合熱可塑性樹脂とはセルロースが含有された熱可塑性樹脂を意味する。用いられるセルロースとしては、非木系、木質系材料から得られるセルロースのいずれも用いることができる。本発明で用いるセルロースは、化学パルプが好ましいが、古紙なども用いることができる。化学パルプは、その色の均質性が高いため、成形体と成したときに色相が均一となる上、成形時、マスターバッチや顔料を混合して成形体を着色しても均一な色の外観を持った成形体を得ることができる。化学パルプとは、例えば、木材(針葉樹、広葉樹)、コットンリンター、ケナフ、マニラ麻(アバカ)、サイザル麻、ジュート、サバイグラス、エスパルト草、バガス、稲わら、麦わら、葦、竹などの天然セルロースを化学的に処理したパルプ(クラフトパルプ、亜硫酸パルプなど)である。地が白い方が成形体の色の調整がしやすいことより、化学的に漂白されて色が白いクラフトパルプ(N−BKP、L−BKP等)を用いることがより好ましい。
【0012】
得られたパルプを、乾式或いは湿式粉砕してセルロースパウダーを得ることができる。乾式粉砕とは、セルロースに機械的にシェアをかけることによって、強制的に粉砕する方法である。シェアのかけ方、粉砕方法などによってサイズの調整が可能で、平均繊維長が200μm程度以下のサイズに粉砕されたセルロースは均一な機械搬送が可能なパウダーとして扱うことができる。しかし、粉砕を押して、セルロースパウダーのサイズをより小さくしていくと、エネルギーコストが増大するために、乾式粉砕で得られる好ましいセルロースパウダーのサイズは平均粒径20μm以上である。湿式粉砕とは、酸或いはアルカリ水溶液中にパルプを浸漬させることにより、パルプの結晶性の崩れた部分を化学的に分解して粉砕する方法である。化学粉砕の場合、例えば10μmより小さな粒径のセルロースパウダーが得られるが、水系での反応であるので、濾過・洗浄・乾燥の工程が必要となり、更に、強アルカリ中などでは一部セルロースが膨潤して、濾過時に再凝集する場合などがあり、再度粉砕するプロセスも必要で、コストが嵩みあまり好ましくはない。一方、パルプを解繊させて得られるのが繊維状セルロースで、綿状の形状をしており、繊維長は約0.4mm以上のものが多い。この形態で繊維長に分布が生じていると、揺動搬送では繊維状の短いものから動きだし、螺動搬送では繊維長の長いものが圧縮されて動き難く、いずれも繊維分布にむらを生じてしまう。特に繊維長約0.7mm以上では複合熱可塑性樹脂の物性の変化、特に流動性の低下を引き起こすために、繊維長の分布に変化が生ずることは即ち、製品の安定生産を阻むことになる。
【0013】
本発明における有機繊維とは、カットによって短繊維化できるものであって、熱可塑性樹脂との複合過程で、繊維形状を失わない耐熱性を有し、充分な弾性率と靭性を持ち、樹脂側と密着性が高い繊維であれば特に限定されない。具体的には、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維、レーヨン繊維などが挙げられる。特にビニロン繊維やアクリル繊維は強度物性が良好で、より好ましい。カット長については、衝撃性を改良するために1mm以上、熱可塑性樹脂との複合化時に撚れや絡みを生じない程度のサイズが必要で20mm以下が好ましく、より好ましくは3mmから12mm程度である。繊維径については好ましくは0.5dtexから5dtex、更に好ましくは1dtexから3dtexである。
【0014】
本発明においては各種熱可塑性樹脂が用いることができるが、セルロースの耐熱性の問題から、融点190℃以下の熱可塑性樹脂を用いるのが好ましい。このような樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンからなるポリエチレン類、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリアセタール、ポリエステル等を挙げることができる。好ましくはポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類である。
【0015】
更に、熱可塑性樹脂として、生分解性樹脂を用いることもできる。生分解性樹脂を用いることにより、廃棄の際、成形品を土中に埋設等することにより該成形品が分解されることが期待される。生分解性樹脂としては、環境的に分解される樹脂、特に微生物の作用により分解される樹脂であれば特に制限されない。例えば、具体的には、高分子多糖類、微生物ポリエステル、脂肪族ポリエステル等が挙げられ、より具体的には、ポリ乳酸樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂、ポリエチレンサクシネート樹脂、ポリエチレンサクシネートカーボネート樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリヒドロキシアルカノエート(例えば、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)(PHB)、ポリ(3−ヒドロキシ吉草酸)(PHV))、ラクトン樹脂、低分子量脂肪族ジカルボン酸と低分子量脂肪族ジオールから得られるポリエステル樹脂、酢酸セルロース系等の複合体、変性デンプン−変性ポリビニルアルコール複合体、その他の複合体を挙げることができる。
【0016】
本発明に係わる熱可塑性樹脂として生分解性樹脂を用いる場合、その汎用性よりポリ乳酸樹脂を用いるのが好ましい。ポリ乳酸樹脂には、ポリ乳酸ホモポリマーの他、乳酸コポリマー及びブレンドポリマー等の乳酸系ポリマーが含まれる。乳酸系ポリマーの質量平均分子量は、一般に5万〜50万である。また、ポリ乳酸樹脂におけるL−乳酸単位とD−乳酸単位の構成モル比L/Dは、100/0〜0/100のいずれであってもよく、特に制限されない。
【0017】
本発明のセルロース複合熱可塑性樹脂におけるセルロースパウダーの添加量は2質量%以上90質量%以下であり、好ましくは5質量%以上80質量%以下、更に好ましくは10質量%以上75質量%以下である。セルロースパウダーの添加量が少ないと強度物性の発現等の効果が出ない。また、60質量%以上ではマスターバッチとして用いられるが、セルロースパウダーの含有量が高過ぎると希釈時の再分散性に問題が生ずることなる。有機繊維の添加量は好ましくは0.2質量%から10質量%程度である。特に有機繊維の添加量の増大はセルロース複合熱可塑性樹脂の流動性を大きく変化させるので、より好ましくは0.5質量%から5質量%である。
【0018】
複合化する方法としては、加圧ニーダー、バンバリミキサー、ヘンシェルミキサー、二軸押出混練機などの一般的な混練機を用いることができる。特に熱可塑性樹脂がオレフィン樹脂の場合、酸変性ポリオレフィンを添加することによって、セルロースパウダー、有機繊維の分散性が大きく向上して有効である。セルロースパウダー、有機繊維、熱可塑性樹脂、酸変性ポリオレフィン以外に各種添加剤を適宜加えることができる。添加剤としては、相溶化剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、離型剤、可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、染料、帯電防止剤、導電性付与剤、分散剤、造核剤、抗菌剤、防黴剤、難燃剤等の添加剤を、単独または2種類以上併せて使用することができるが、これらに限定されるわけではない。
【0019】
本発明のセルロース複合熱可塑性樹脂を用いて、各種成形方法により成形体を製造することができる。成形方法としては、一般的な成形方法を用いることができ、特に制限されない。例えば、具体的には、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法、回転成形法、中空成形法(ブロー成形法)、T−ダイ成形法、インフレーション成形法、カレンダー成形法などを挙げることができるが、これらの方法に制限されることはない。また、成形体の形状も特に制限されず、どのような形状のものを、どのような成形方法で製造してもよい。
【0020】
本発明のセルロース複合熱可塑性樹脂の優れた成形性を具現するためには、射出成形法を用いて精密な形状の成形体を得ることが好ましい。本発明のセルロース複合熱可塑性樹脂は、バランスのよい優れた強度物性及び流動性を発現することができる。
【実施例】
【0021】
次に、本発明を実施例によって、更に詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0022】
(実施例1)
広葉樹の晒パルプ(LBKP)のパルプシートを粉砕機(株式会社ホーライ製BO−2572、スクリーン30mm)によって粗粉砕した後、遠心水冷式粉砕機(株式会社ティエスピー製CLGP25)を用いて、平均粒径32μm(島津製作所製SALD−3100を用いた測定値)のセルロースパウダーを得た。このセルロースパウダー20質量部、有機繊維として、ビニロン繊維(ユニチカ製1.9dtex、カット長6mm品)2質量部、熱可塑性樹脂(東ソー製ニポロンハード#4010)76質量部、酸変性ポリエチレン(三井化学製アドマーHE810)2質量部を、二軸押出混練機(株式会社テクノベル製KZW)で混練して、セルロース複合熱可塑性樹脂(E−1)を得た。
【0023】
(実施例2)
実施例1と同様に、以下の処方でセルロース複合熱可塑性樹脂(E−2)を得た。
セルロースパウダー(平均粒径32μm) 20質量部
ビニロン繊維(1.9dtex、6mm) 3質量部
熱可塑性樹脂(ニポロンハード#4010) 75質量部
酸変性ポリプロピレン(アドマーHE810) 2質量部
【0024】
(実施例3)
実施例1と同様に、以下の処方でセルロース複合熱可塑性樹脂(E−3)を得た。
セルロースパウダー(平均粒径32μm) 20質量部
ビニロン繊維(1.9dtex、6mm) 5質量部
熱可塑性樹脂(ニポロンハード#4010) 73質量部
酸変性ポリプロピレン(アドマーHE810) 2質量部
【0025】
(実施例4)
実施例1と同様に、以下の処方でセルロース複合熱可塑性樹脂(E−4)を得た。
セルロースパウダー(平均粒径32μm) 20質量部
ビニロン繊維(1.9dtex、6mm) 2質量部
熱可塑性樹脂(プライムポリマー製プライムポリプロJ3053HP)
73質量部
酸変性ポリプロピレン(三菱化学製モディックP928) 2質量部
【0026】
(実施例5)
広葉樹の晒パルプ(LBKP)のパルプシートを粉砕機(株式会社ホーライ製BO−252、スクリーン径30mm)によって粗粉砕した後、衝撃式粉砕機(槙野産業株式会社製DD2−3.7、スクリーン径0.35mm)によって繊維の粉砕を行い、平均粒径200μmのセルロースパウダーを得た。このセルロースパウダー20質量部、有機繊維としてビニロン繊維(1.9dtex、カット長6mm品)2質量部、熱可塑性樹脂(プライムポリマー製プライムポリプロJ3053HP)76質量部、酸変性ポリプロピレン(三菱化学製モディックP928)2質量部を、二軸押出混練機(テクノベル製KZW)で混練して、セルロース複合熱可塑性樹脂(E−5)を得た。
【0027】
(比較例1)
実施例1と同様に、以下の処方でセルロース複合熱可塑性樹脂(R−1)を得た。
セルロースパウダー(平均粒径32μm) 20質量部
熱可塑性樹脂(ニポロンハード#4010) 78質量部
酸変性ポリエチレン(アドマーHE810) 2質量部
【0028】
(比較例2)
実施例1と同様に、以下の処方で複合熱可塑性樹脂(R−2)を得た。
ビニロン繊維(1.9dtex、6mm) 3質量部
熱可塑性樹脂(ニポロンハード#4010) 95質量部
酸変性ポリエチレン(アドマーHE810) 2質量部
【0029】
(比較例3)
実施例1と同様に、以下の処方で複合熱可塑性樹脂(R−3)を得た。
ビニロン繊維(1.9dtex、6mm) 20質量部
熱可塑性樹脂(ニポロンハード#4010) 78質量部
酸変性ポリエチレン(アドマーHE810) 2質量部
【0030】
(比較例4)
広葉樹の晒パルプ(LBKP)のパルプシートを粉砕機(株式会社ホーライ製BO−252、スクリーン径30mm)によって粗粉砕した後、衝撃式粉砕機(ターボ工業製ターボミルT−250、スクリーン径0.8mm)で更に粉砕して、繊維長0.7mm(オプテストイクイップメント社(OpTest Equipment Inc.)製ハイレスファイバークオリティーアナライザー(HiRes Fiber Quality Analyzer)を用いて測定)の繊維状セルロースを得た。この繊維状セルロース20質量部とビニロン繊維(1.9dtex、カット長6mm品)2重量部、熱可塑性樹脂(ニポロンハード#4010)76質量部、酸変性ポリエチレン(アドマーHE810)2質量部を、二軸押出混練機(テクノベル製 KZW)で混練して、セルロース複合熱可塑性樹脂(R−4)を得た。
【0031】
(比較例5)
広葉樹の晒パルプ(LBKP)のパルプシートを粉砕機(株式会社ホーライ製BO−252、スクリーン径30mm)によって粗粉砕した後、衝撃式粉砕機(ターボ工業製ターボミルT−250、スクリーン径1.5mm)で更に粉砕して、繊維長0.9mm(オプテストイクイップメント社(OpTest Equipment Inc.)製ハイレスファイバークオリティーアナライザー(HiRes Fiber Quality Analyzer)を用いて測定)の繊維状セルロースを得た。この繊維状セルロース20質量部とビニロン繊維(1.9dtex、カット長6mm品)2重量部、熱可塑性樹脂(プライムポリマー製プライムポリプロJ3053HP)76質量部、酸変性ポリプロピレン(三井化学製アドマーQE800)2質量部を、二軸押出混練機(テクノベル製KZW)で混練して、セルロース複合熱可塑性樹脂(R−5)を得た。
【0032】
実施例及び比較例で得られたセルロース複合熱可塑性樹脂について、二軸混練機から吐出されるストランドの最初の部分と中間部分及び最後の部分をハンマーミルで簡易粉砕して、これをもとに射出成形体を作製して、曲げ弾性率、ノッチ付きシャルピー衝撃値、メルトフローレートを測定した。結果を表1に与えた。
【0033】
【表1】

【0034】
比較例1よりセルロースを複合させるだけでは、曲げ弾性率は向上するが、衝撃性が低下して脆性破壊モードとなり実用的ではない。比較例2は曲げ弾性率の向上が見られず複合熱可塑性材料とは言えない。比較例3では曲げ弾性率が2800MPaに到達したが複合熱可塑性樹脂は流動性が極端に悪く、一般的な射出成形体では成形性が困難である。これに対して実施例では曲げ弾性率、衝撃性が向上して、流動性も成形可能な範囲に収まっている。更に、比較例4、5では、混練時の時間分布で混練機に投入されるセルロースの繊維長にばらつきがあるために、徐々に曲げ弾性率が向上し、流動性が低下しており、製造物の安定的は生産に問題が生じたが、実施例ではこの問題は解決された。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のセルロース含有熱可塑性樹脂及びその成形体は、包装材料、収容トレイ、パレット、保護用部材、パーティション部材等に利用可能である。また、パソコン、携帯電話の筺体、自動車用材料、建材、家具、遊具、玩具、文具等に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースパウダーと有機繊維が含有されたセルロース複合熱可塑性樹脂。
【請求項2】
セルロースパウダーが200μmより小さく粉砕されたパルプであって、かつ有機繊維の繊維長が1mmから20mmまでである請求項1記載のセルロース複合熱可塑性樹脂。
【請求項3】
請求項1記載のセルロース複合熱可塑性樹脂を含有してなる成形体。

【公開番号】特開2013−107987(P2013−107987A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254122(P2011−254122)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】