説明

セルロース/ポリオレフィン系複合材料の製造方法

【課題】物性バランスおよび線膨張特性がともに優れ、容易に製造することができるセルロース/ポリオレフィン系複合材料を提供する。
【解決手段】(A)セルロース不織布、(B)官能基を有する変性ポリオレフィン、および(C)ポリオレフィンを含むセルロース/ポリオレフィン系複合材料。このセルロース/ポリオレフィン系複合材料を、(A)セルロース不織布に、(B)官能基を有する変性ポリオレフィンを浸漬または塗布した後に、(C)ポリオレフィンを張り合わせることにより製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(A)セルロース不織布、(B)官能基を有する変性ポリオレフィン、および(C)ポリオレフィンを含むセルロース/ポリオレフィン系複合材料と、このセルロース/ポリオレフィン系複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィンは安価であり、しかも、機械的物性、耐熱性、耐薬品性、耐水性などに優れていることから、広い分野で使用されている。中でも、ポリプロピレンは、自動車において、バンパー、ロッカーモール、サイドモール、オーバーフェンダー等の外装部品およびインスツルメントパネル、グローブボックス、ドアライナー、ピラー等の内装部品等に利用されている。その一方で、ポリプロピレンは高い結晶性を有していることから、温度に対する寸法変化(線膨張係数)が非常に大きいことでも知られている。そして、この性質により、ポリプロピレン系材料を用いた部品、特にバンパー、インストルメントパネル等の大型部品においては、部品の合わせ目に隙間が生じたり、部品組み付け時の建て付け性が低下したりするなどの問題が生じていた。
【0003】
一方、セルロースの微細繊維を用いた複合材料がさかんに研究されている。セルロースはその伸びきり鎖結晶が故に、樹脂と複合化することにより、低線膨張係数と高弾性率と高強度とを発現することが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、セルロース不織布を熱可塑性樹脂に含浸後、乾燥させたり、脱泡後冷却したりすることにより、樹脂と複合化する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−316253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された方法でセルロース不織布とポリオレフィンとを複合化する場合、ポリオレフィンを溶媒に溶解したり、溶融体としてそれをセルロース不織布に含浸することは、多大な熱エネルギーを必要とするため工業的に通常困難であり、なおかつ高温に加熱して溶媒に溶解したり、溶融体にしたとしても、通常これらは実質的にセルロース繊維には含浸しない。また、ポリオレフィンとして変性ポリオレフィンを用いた場合、溶媒に溶解することは可能であるが、変性ポリオレフィンも実質的にセルロース繊維には含浸しない。
このようなことから、工業的に容易に製造することが可能なセルロース/ポリオレフィン系複合材料の開発が望まれていた。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、物性バランスおよび線膨張特性がともに優れ、容易に製造することができるセルロース/ポリオレフィン系複合材料を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明(請求項1)のセルロース/ポリオレフィン系複合材料は、(A)セルロース不織布、(B)官能基を有する変性ポリオレフィン、および(C)ポリオレフィンを含むことを特徴とする。
【0009】
請求項2のセルロース/ポリオレフィン系複合材料は、請求項1において、(A)セルロース不織布の含有量が1〜95重量%であることを特徴とする。
【0010】
請求項3のセルロース/ポリオレフィン系複合材料は、請求項1または2において、(B)官能基を有する変性ポリオレフィンが、無水マレイン酸変性ポリオレフィンおよび/またはカチオン性基を含むポリオレフィンであることを特徴とする。
【0011】
本発明(請求項4)のセルロース/ポリオレフィン系複合材料の製造方法は、このような本発明のセルロース/ポリオレフィン系複合材料を製造する方法であって、(A)セルロース不織布に、(B)官能基を有する変性ポリオレフィンを浸漬または塗布する工程を含むことを特徴とする。
【0012】
請求項5のセルロース/ポリオレフィン系複合材料の製造方法は、請求項4において、(A)セルロース不織布に、(B)官能基を有する変性ポリオレフィンを浸漬または塗布した後に、(C)ポリオレフィンを張り合わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、(B)官能基を有する変性ポリオレフィンを、(A)セルロース不織布と(C)ポリオレフィンとの接着剤として機能させて、セルロース不織布と樹脂との密着性、一体性に優れた複合材料とすることにより、(C)ポリオレフィンの物性を改良し、例えば、剛性向上、ガスバリア性向上、難燃性向上、成形収縮率低下、熱膨張率低下といった改良を図り、低線膨張性で物性バランスに優れたセルロース/ポリオレフィン系複合材料を提供することができる。
しかも、本発明のセルロース/ポリオレフィン系複合材料は、例えば(A)セルロース不織布に、(B)官能基を有する変性ポリオレフィンを浸漬または塗布した後に、(C)ポリオレフィンを張り合わせることにより、容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。
【0015】
{セルロース/ポリオレフィン系複合材料}
本発明のセルロース/ポリオレフィン系複合材料は、セルロース不織布と、(B)官能基を有するポリオレフィンと、(C)ポリオレフィンを含むものである。
【0016】
[(A)セルロース不織布]
本発明に係るセルロース不織布とは、主としてセルロースからなる不織布であり、セルロース繊維の集合体である。セルロース不織布はセルロース分散液を抄紙又は塗布によって製膜する方法、あるいはゲル状膜を乾燥する方法などによって得られる。
【0017】
<繊維径>
セルロース不織布を構成するセルロース繊維の繊維径は細いことが好ましい。具体的には1500nm以上の繊維径のものを含んでいないことが好ましく、さらに好ましくは1000nm以上の繊維径のものを含んでいないことが好ましく、特に好ましくは500nm以上の繊維径のものを含んでいないことが好ましい。1500nm以上の繊維径のものを含んでいない不織布は、樹脂と複合化した場合、線膨張係数が低いものが得られる点において好ましい。
なお、セルロース繊維の繊維径はSEM観察により確認することができる。
【0018】
<原料>
セルロース不織布の原料としては、針葉樹や広葉樹等の木質、バクテリアが産生するバクテリアセルロース、コットンリンターやコットンリント等のコットン、バロニアやシオグサ等の海草やホヤの被嚢等が挙げられる。これらの天然セルロースは、結晶性が高いので低線膨張係数になり好ましい。バクテリアセルロースは微細な繊維径のものが得やすい点で好ましい。また、コットンも微細な繊維径なものが得やすい点で好ましく、さらに原料が得やすい点で好ましい。さらには針葉樹や広葉樹等の木質も微細な繊維径のものが得られ、かつ地球上で最大量の生物資源であり、年間約700億トン以上ともいわれる量が生産されている持続型資源あることから、地球温暖化に影響する二酸化炭素削減への寄与も大きく、経済的な点から優位である。
【0019】
<化学修飾>
セルロース不織布は、化学修飾されたものであってもよい。化学修飾とは、セルロース中の水酸基が化学修飾剤と反応して化学修飾されているものである。
【0020】
(種類)
化学修飾によってセルロースに導入させる官能基としては、アセチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロピオニル基、プロピオロイル基、ブチリル基、2−ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、フロイル基、シンナモイル基等のアシル基、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアノイル基等のイソシアネート基、メチル基、エチル基、プロピル基、2−プロピル基、ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等のアルキル基、オキシラン基、オキセタン基、チイラン基、チエタン基等が挙げられる。これらの中では特にアセチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基等の炭素数2〜12のアシル基、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜12のアルキル基が好ましい。
【0021】
(修飾方法)
修飾方法としては、特に限定されるものではないが、セルロースと次に挙げるような化学修飾剤とを反応させる方法がある。この反応条件についても特に限定されるものではないが、必要に応じて溶媒、触媒等を用いたり、加熱、減圧等を行うこともできる。
【0022】
化学修飾剤の種類としては、酸、酸無水物、アルコール、ハロゲン化試薬、イソシアナート、アルコキシシラン、オキシラン(エポキシ)等の環状エーテルよりなる群から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0023】
酸としては、例えば酢酸、アクリル酸、メタクリル酸、プロパン酸、ブタン酸、2−ブタン酸、ペンタン酸等が挙げられる。
【0024】
酸無水物としては、例えば無水酢酸、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、無水プロパン酸、無水ブタン酸、無水2-ブタン酸、無水ペンタン酸等が挙げられる。
【0025】
アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール等が挙げられる。
【0026】
ハロゲン化試薬としては、例えばアセチルハライド、アクリロイルハライド、メタクロイルハライド、プロパノイルハライド、ブタノイルハライド、2−ブタノイルハライド、ペンタノイルハライド、ベンゾイルハライド、ナフトイルハライドが挙げられる。
【0027】
イソシアナートとしては、例えばメチルイソシアナート、エチルイソシアナート、プロピルイソシアナート等が挙げられる。
【0028】
アルコキシシランとしては、例えばメトキシシラン、エトキシシラン等が挙げられる。
【0029】
オキシラン(エポキシ)等の環状エーテルとしては、例えばエチルオキシラン、エチルオキセタンが挙げられる。
【0030】
これらの中では特に無水酢酸、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、ベンゾイルハライド、ナフトイルハライドが好ましい。
これらの化学修飾剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
【0031】
(化学修飾率)
ここでいう化学修飾率とは、セルロース中の全水酸基のうちの化学修飾されたものの割合を示し、化学修飾率は下記の滴定法によって測定することができる。
【0032】
〈測定方法〉
セルロース不織布0.5gを精秤しこれにメタノール6ml、蒸留水2mlを添加する。これを60〜70℃で30分攪拌した後、0.05N水酸化ナトリウム水溶液10mlを添加する。これを60〜70℃で15分攪拌しさらに室温で一日攪拌する。ここにフェノールフタレインを用いて0.02N塩酸水溶液で滴定する。
ここで、滴定に要した0.02N塩酸水溶液の量Z(ml)から、化学修飾により導入された置換基のモル数Qは、下記式で求められる。
Q(mol)=0.05(N)×10(ml)/1000
−0.02(N)×Z(ml)/1000
この置換基のモル数Qと、化学修飾率X(mol%)との関係は、以下の式で算出される(セルロース=(C10=(162.14),繰り返し単位1個当たりの水酸基数=3,OHの分子量=17)。なお、以下において、Tは置換基の分子量である。
【数1】

これを解いていくと、以下の通りである。
【数2】

【0033】
本発明において、セルロース不織布の化学修飾率は、セルロースの全水酸基に対して、65mol%以下であることが好ましく、50mol%以下であることがさらに好ましい。この化学修飾率が高すぎると、セルロース構造が破壊され結晶性が低下するため、得られる複合材料の線膨張係数が大きくなってしまうという問題点があり好ましくない。
【0034】
<セルロース不織布の製造方法>
セルロース不織布の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば次のようにして製造することができる。
【0035】
不織布の製造に当たっては、セルロース原料を必要に応じて、精製や微細化した後に、そのセルロース分散液(通常はセルロースの水分散液)を濾過又は塗布によって製膜、あるいはゲル状膜を製膜し、製膜後は乾燥して不織布とするが、この乾燥を行う前にアルコール等の有機溶媒で洗浄もしくは浸漬処理することが好ましい。
【0036】
化学修飾については、不織布に製膜してから行ってもよいし、不織布に製膜する前のセルロースに化学修飾を行ってもよいが、前者の方が好ましい。その場合、アルコール等の有機溶媒で置換したセルロースを製膜して不織布とした後、化学修飾する。化学修飾が終了した後は水でよく洗浄した後、残留する水をアルコール等の有機溶媒で置換して乾燥することが好ましい。
【0037】
このような不織布の製造方法について更に詳しく説明する。
【0038】
(不織布の製造)
不織布の製造には微細化したセルロース繊維を用いる。
バクテリアセルロースをセルロース原料とする場合、セルロースを産生するバクテリアを培養することによりセルロース繊維を得ることができる。この産生物を培地から取り出し、それを水洗、又はアルカリ処理などしてバクテリアを除去することにより、バクテリアを含まない含水バクテリアセルロースを得ることができる。バクテリアは微細なセルロースを産生するので微細化処理を行うことなく、そのまま用いることができる。
針葉樹や広葉樹等の木質、コットンリンターやコットンリント等のコットンは精製した後、微細化処理を行い微細化したセルロースを得る。また、バロニアやシオグサ等の海草やホヤの被嚢等も微細化処理を行い微細化したセルロースを得る。
【0039】
セルロースを微細化する分散機としてはブレンダータイプの分散機や高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等を用いることが好ましい。特に超高圧ホモジナイザーはセルロースを均一に微細化するのに有効である。
【0040】
微細化を行う際のセルロース分散液のセルロース濃度は0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.3重量%以上であることが好ましい。セルロース濃度が低すぎると濾過や塗布するのに時間がかかりすぎる。また、セルロース濃度は10重量%以下、好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは2重量%以下であることが好ましい。セルロース濃度が高すぎると粘度が高くなりすぎたり、均一なセルロース不織布が得られなかったりするので好ましくない。
【0041】
濾過によって不織布を得る場合、セルロース分散液の濃度は、0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上であることが好ましい。濃度が低すぎると濾過に膨大な時間がかかるため好ましくない。また、セルロース分散液の濃度は1.5重量%以下、好ましくは1.2重量%以下、さらに好ましくは1.0重量%以下であることが好ましい。濃度が高すぎると均一な不織布が得られないため好ましくない。
【0042】
また、濾過時の濾布としては、微細化したセルロースは通過せずかつ濾過速度が遅くなりすぎないことが重要である。このような濾布としては、有機ポリマーからなる不織布、織物、多孔膜であることが好ましい。有機ポリマーとしてはポリエチレンテレフタレートやポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のような非セルロース系の有機ポリマーが好ましい。
具体的には孔径0.1〜5μm、例えば1μmのポリテトラフルオロエチレンの多孔膜、孔径0.1〜5μm、例えば1μmのポリエチレンテレフタレートやポリエチレンの織物等が挙げられる。
【0043】
本発明で用いるセルロース不織布は濾過による製膜工程において、セルロース中の水を最後にアルコール等の有機溶媒に置換することが好ましい。これは、濾過により水を除去し、セルロース含量が5〜99重量%になったところでアルコール等の有機溶媒を加えるものである。または、セルロース分散液を濾過装置に投入した後、アルコール等の有機溶媒を分散液の上部に静かに投入することによっても濾過の最後にアルコール等の有機溶媒と置換することができる。
【0044】
ここで用いるアルコール等の有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2-プロパノール、1−ブタノール等のアルコール類の他、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、トルエン、四塩化炭素等の1種又は2種以上の有機溶媒が挙げられる。非水溶性有機溶媒を用いる場合は、水溶性有機溶媒との混合溶媒にするか水溶性有機溶媒で置換した後、非水溶性有機溶媒で置換することが好ましい。
【0045】
(不織布の化学修飾)
不織布の化学修飾は、上述のように、不織布を製造後、アルコール等の有機溶媒で置換した後、更に不織布を乾燥した後に行っても、乾燥せずに行っても構わないが、乾燥した後に行った方が化学修飾の反応速度が速くなるため好ましい。乾燥する場合は送風乾燥、減圧乾燥してもよいし、加圧乾燥してもよい。また、加熱しても構わない。
不織布の化学修飾は、通常の方法をとることができる。すなわち、常法に従って、不織布のセルロースと化学修飾剤とを反応させることによって化学修飾を行うことができる。この際、必要に応じて溶媒や触媒を用いたり、加熱、減圧等を行ってもよい。触媒としてはピリジンやトリエチルアミン、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム等の塩基性触媒や、酢酸、硫酸、過塩素酸等の酸性触媒を用いることが好ましい。
【0046】
温度条件としては、高すぎるとセルロースの重合度の低下等が懸念され、低すぎると反応速度が低下することから40〜130℃が好ましい。反応時間は化学修飾剤や化学修飾率にもよるが数分から数十時間である。
このようにして化学修飾を行った後は、反応を終結させるために水で十分に洗浄することが好ましい。未反応の化学修飾剤が残留していると、樹脂と複合化する際に問題になったりするので好ましくない。また、水で十分に洗浄した後、さらに残留する水をアルコール等の有機溶媒で置換することが好ましい。この場合、不織布をアルコール等の有機溶媒に浸漬しておくことで容易に置換することができる。
【0047】
(乾燥)
このような化学修飾後は、最後に不織布を乾燥するが、送風乾燥又は減圧乾燥してもよいし、加圧乾燥してもよい。また、加熱乾燥しても構わない。加熱する場合、温度は50℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、また、250℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。加熱温度が低すぎると乾燥に時間がかかったり、乾燥が不十分になる可能性があり、加熱温度が高すぎるとセルロースが分解したりする可能性がある。また、加圧する場合は0.01MPa以上が好ましく、0.1MPa以上がより好ましく、また、5MPa以下が好ましく、1MPa以下がより好ましい。圧力が低すぎると乾燥が不十分になる可能性があり、圧力が高すぎるとセルロース不織布がつぶれたり分解する可能性がある。
【0048】
[(B)官能基を有する変性ポリオレフィン]
(B)成分である官能基を有する変性ポリオレフィンは、オレフィン系重合体の主鎖中に官能基を有するものであってもよいし、オレフィン系重合体の主鎖に側鎖として、直接に或いは2価基を介して結合した官能基を有するものであってもよい。中でも、オレフィン系重合体の主鎖に側鎖として2価基を介して官能基を有するものが特に好ましい。
【0049】
(B)官能基を有する変性ポリオレフィンは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
変性ポリオレフィンの分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography)で測定し、各々のポリオレフィンの検量線で換算した重量平均分子量Mwで2,000以上であることが好ましく、5,000以上であることがより好ましく、10,000以上であることが特に好ましく、又、1,000,000以下であることが好ましく、500,000以下であることがより好ましく、200,000以下であることが特に好ましい。Mwが下限値より高いほどべたつきが小さくなり、(C)成分のポリオレフィンとの密着性が増す傾向があり、また上限値より低いほど粘度が低くなり、溶液の調製または溶融が容易になる傾向がある。なおGPC測定は、オルトジクロロベンゼンなどを溶媒として、市販の装置を用いて従来公知の方法で行われる。
【0051】
変性ポリオレフィンの、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比で表される分子量分布Mw/Mnは、特に限定されないが、通常1以上であって、通常20以下、好ましくは15以下、より好ましくは10以下である。
【0052】
官能基を有する変性ポリオレフィンは、前駆体としてのオレフィン系重合体に官能基を付与することにより得られる。或いは、後述の如く、α−オレフィンと官能基を有するエチレン性不飽和単量体とを共重合させることにより製造することもできる。
【0053】
(1)前駆体としてのオレフィン系重合体
前駆体としてのオレフィン系重合体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の炭素数2〜8程度のα−オレフィンの単独重合体;それらのα−オレフィンと、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−オクタデセン等の炭素数2〜18程度の他のα−オレフィン等との二元或いは三元の共重合体;等が挙げられる。
【0054】
より具体的には、例えば、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状高密度ポリエチレン等のエチレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−ヘプテン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体等のエチレン系樹脂;プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体等のプロピレン系樹脂;1−ブテン単独重合体、1−ブテン−エチレン共重合体、1−ブテン−プロピレン共重合体等の1−ブテン系樹脂;4−メチル−1−ペンテン単独重合体、4−メチル−1−ペンテン−エチレン共重合体等の4−メチル−1−ペンテン系樹脂等の樹脂などが挙げられる。
【0055】
また、α−オレフィンと、1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、1,4−オクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ブチリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロペニル−2−ノルボルネン等の非共役ジエンとの二元或いは三元の共重合体等が挙げられる。三元の共重合体等としては、例えば、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−1−ブテン−非共役ジエン共重合体等のオレフィン系ゴム等が挙げられる。
【0056】
これらのオレフィン系重合体は2種以上が併用されていてもよい。
これらの中でも、エチレン系樹脂およびプロピレン系樹脂が好ましく、プロピレン系樹脂がより好ましく、エチレン−プロピレン共重合体およびプロピレン単独重合体が更に好ましく、プロピレン単独重合体が最も好ましい。
【0057】
(2)官能基
変性ポリオレフィンの官能基としては、アニオンまたはカチオンを形成し得るか、分極性の基であることが好ましい。アニオンまたはカチオンを形成し得るか、分極性の基は、セルロース繊維の官能基と相互作用し、セルロース繊維とオレフィン系樹脂とを接着させる。アニオンを形成し得る基としては、酸素原子含有基、硫黄原子含有基、燐原子含有基、ハロゲン原子含有基等が挙げられる。カチオンを形成し得る基としては、窒素原子含有基等が挙げられる。
【0058】
官能基として、具体的には、例えば、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、水酸基、エポキシ基、アミド基、アンモニウム基、ニトリル基、アミノ基、イミド基、イソシアネート基、アセチル基、チオール基、エーテル基、チオエーテル基、スルホン基、ホスホン基、ニトロ基、ウレタン基、ハロゲン原子等が挙げられる。これらの官能基は2種以上を有していてもよい。中でも、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、水酸基、アンモニウム基、アミノ基、イミド基、イソシアネート基が好ましく、カルボン酸無水物基、アンモニウム基がより好ましい。
【0059】
オレフィン系重合体の主鎖に側鎖として2価基を介してこれらの官能基を有する場合における2価基としては、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等の炭素数1〜20程度の直鎖状、分岐状、或いは環状の脂肪族炭化水素基、フェニレン基、ナフチレン基等の芳香族炭化水素基、メチレンオキシ基、エチレンオキシ基、トリメチレンオキシ基、テトラメチレンオキシ基等の炭素数1〜20程度のアルキレンオキシ基等が挙げられる。
【0060】
変性ポリオレフィンの官能基の量としては、オレフィン系重合体の一分子当たりの平均当量として、好ましくは0.1当量以上、より好ましくは0.2当量以上、特に好ましくは0.4当量以上であって、好ましくは10当量以下、より好ましくは5当量以下、特に好ましくは3当量以下である。官能基の量が前記範囲未満では、変性ポリオレフィンとセルロース不織布との相互作用が弱くなる傾向となり、一方、前記範囲超過では、変性ポリオレフィンのセルロース不織布とポリオレフィンとの接着剤としての機能が損なわれる傾向となる。
【0061】
(3)官能基を有する変性ポリオレフィンの製造方法
(B)官能基を有する変性ポリオレフィンの製造方法としては、以下の(i)〜(v)の方法等、慣用のいずれの方法も採り得る。
【0062】
(i)オレフィン系重合体に、官能基を有するエチレン性不飽和単量体をグラフト反応させる方法
(ii)α−オレフィンと、必要に応じて保護基で保護された官能基を有するエチレン性不飽和単量体とを共重合させた後、保護基を脱離させる方法
(iii)オレフィン系重合体に3官能以上の多官能単量体をラジカル重合等で反応させ、多官能単量体によりポリオレフィン鎖同士を結合させる方法等により、オレフィン系重合体の主鎖中に官能基を有せしめる方法
(iv)官能基含有化合物を反応させる方法等により、オレフィン系重合体の主鎖に側鎖として官能基を有せしめる方法
(v)オレフィン系重合体を分子状酸素の存在下、加熱して酸化させ、オレフィン系重合体の末端にカルボニルを生成させ、該カルボニルを不活性雰囲気下で還元剤により還元して水酸基にする方法
【0063】
以下、具体例として(i)および(ii)の方法を詳細に説明する。
【0064】
(i) オレフィン系重合体に、官能基を有するエチレン性不飽和単量体をグラフト反応させる方法
オレフィン系重合体への官能基を有するエチレン性不飽和単量体のグラフト反応は、例えば、ラジカル発生剤の存在下に、オレフィン系重合体の溶融状態で行う溶融グラフト法、および、有機溶媒による溶液状態で行う溶液グラフト法等の慣用の方法で行うことができる。
【0065】
(i−1)官能基を有するエチレン性不飽和単量体
オレフィン系重合体にグラフト反応させる官能基を有するエチレン性不飽和単量体としては、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、水酸基、エポキシ基、アミド基、ニトリル基、アミノ基、イミド基、イソシアネート基、アセチル基等を有するエチレン性不飽和単量体を用いることができる。
【0066】
官能基としてのカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体の例としては、(メタ)アクリル酸〔尚、ここで、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」または/および「メタクリル」を意味するものとする。「(メタ)アクリレート」等についても同様である。〕、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等が挙げられる。
カルボン酸無水物基を有するエチレン性不飽和単量体としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。
カルボン酸エステル基を有するエチレン性不飽和単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
水酸基を有するエチレン性不飽和単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシメチル−3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,2−ジヒドロキシメチル−3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体としては、グリシジル(メタ)アクリレート、プロピルグリシジルマレエート、ブチルグリシジルマレエート、プロピルグリシジルフマレート、ブチルグリシジルフマレート等が挙げられる。
アミド基を有するエチレン性不飽和単量体としては、(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
ニトリル基を有するエチレン性不飽和単量体としては、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体としては、アミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
イミド基を有するエチレン性不飽和単量体としては、マレイン酸イミド等が挙げられる。
イソシアネート基を有するエチレン性不飽和単量体としては、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、ビニルイソシアネート、イソプロペニルイソシアネート等が挙げられる。
アセチル基を有するエチレン性不飽和単量体としては、酢酸ビニル等が、それぞれ挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
(i−2)ラジカル発生剤
ラジカル発生剤としては、具体的には、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等のジアルキルパーオキサイド類;t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン−3等のパーオキシエステル類;3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ヒドロパーオキシ)ヘキサン等のヒドロパーオキサイド類;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類等の有機過酸化物類;または、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(イソブチルアミド)ジハライド、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド〕、アゾジ−t−ブタン等のアゾ化合物類等が挙げられる。
これらのラジカル発生剤は2種以上が併用されてもよい。
【0068】
(i−3)反応方法
グラフト反応は、溶融法または溶液法により行うことができる。
【0069】
溶融法において、グラフト反応は、一軸または二軸押出機等の混練機、横型二軸多円板装置等の横型二軸攪拌機、ダブルヘリカルリボン攪拌機等の縦型攪拌機等を用いて行うことができる。
この場合、前記オレフィン系重合体と、該オレフィン系重合体100重量部に対して、前記官能基を有するエチレン性不飽和単量体を通常0.005重量部以上、好ましくは0.1重量部以上、且つ、通常20重量部以下、好ましくは10重量部以下と、前記ラジカル発生剤を通常0.001重量部以上、好ましくは0.01重量部以上、且つ、通常10重量部以下、好ましくは5重量部以下とを反応させる。
反応は、通常100℃以上、且つ通常300℃以下、好ましくは200℃以下の温度下で前記オレフィン系重合体を溶融させて、通常0.5〜10分間程度行う。
【0070】
溶液法においては、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族系溶媒に、前記オレフィン系重合体と、該オレフィン系重合体100重量部に対して前記官能基を有するエチレン性不飽和単量体を通常0.1重量部以上、好ましくは3重量部以上、且つ通常100重量部以下、好ましくは50重量部以下と、前記ラジカル発生剤を通常0.5重量部以上、好ましくは1重量部以上、且つ通常50重量部以下、好ましくは30重量部以下とを加えて行う。
反応は、通常80〜140℃程度の温度で前記オレフィン系重合体を溶解させて、通常0.1〜8時間程度行う。
なお、反応系の濃度(溶液中のオレフィン系重合体、エチレン性不飽和単量体およびラジカル発生剤の合計濃度)は、反応効率および取り扱い性の面から5〜60重量%程度とすることが好ましい。
【0071】
(ii)α−オレフィンと、必要に応じて保護基で保護された官能基を有するエチレン性不飽和単量体とを共重合させた後、保護基を脱離させる方法
オレフィン系重合体と必要に応じて保護基で保護された官能基を有するエチレン性不飽和単量体との共重合は、触媒系の存在下に、溶液重合、スラリー重合またはバルク重合で行うことができる。
【0072】
(ii−1)α−オレフィン
共重合に供するα−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の炭素数2〜8程度のα−オレフィンが好ましく挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0073】
(ii−2)官能基を有するエチレン性不飽和単量体
官能基を有するエチレン性不飽和単量体としては、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、水酸基、エポキシ基、アミド基、ニトリル基、アミノ基、イミド基、イソシアネート基、アセチル基等を有するエチレン性不飽和単量体を用いることができる。
これらの官能基が後述の触媒系を失活させることを防ぐため、官能基は必要に応じてトリアルキルシリル基、ジアルキルアルミニウム基等を用いて保護し、官能基と触媒との反応を防止する。
【0074】
官能基を有するエチレン性不飽和単量体の例を挙げると、官能基としてのカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体としては、(メタ)アクリル酸〔なお、ここで「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」又は/及び「メタクリル」を意味するものとする。〕、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等が挙げられる。
【0075】
カルボン酸無水物基を有するエチレン性不飽和単量体としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。
【0076】
カルボン酸エステル基を有するエチレン性不飽和単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0077】
水酸基を有するエチレン性不飽和単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシメチル−3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,2−ジヒドロキシメチル−3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0078】
エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体としては、グリシジル(メタ)アクリレート、プロピルグリシジルフマレート、ブチルグリシジルマレエート、プロピルグリシジルフマレート、ブチルグリシジルフマレート等が挙げられる。
【0079】
アミド基を有するエチレン性不飽和単量体としては、(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0080】
ニトリル基を有するエチレン性不飽和単量体としては、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0081】
アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体としては、アミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0082】
イミド基を有するエチレン性不飽和単量体としては、マレイン酸イミド等が挙げられる。
イソシアネート基を有するエチレン性不飽和単量体としては、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、ビニルイソシアネート、イソプロペニルイソシアネート等が挙げられる。
【0083】
アセチル基を有するエチレン性不飽和単量体としては、酢酸ビニル等が、それぞれ挙げられる。
【0084】
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0085】
(ii−2)触媒系
α−オレフィンと前記官能基を有するエチレン性不飽和単量体の共重合は、例えば以下の(x),(y)の触媒系を用いて行うことができる。
【0086】
(x)次の成分(a),(b)および(c)と任意に成分(d)を含むα−オレフィン
重合用触媒。
成分(a):メタロセン化合物
成分(b):有機アルミニウムオキシ化合物、成分(a)と反応して成分(a)を
カチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸から
なる群より選ばれる化合物
成分(c):連鎖移動剤
成分(d):微粒子担体
【0087】
(y)次の成分(a),(c)および(e)と任意に成分(f)を含むことを特徴と
するα−オレフィン重合用触媒。
成分(a):メタロセン化合物
成分(c):連鎖移動剤
成分(e):珪酸塩を除くイオン交換性層状化合物または無機珪酸塩からなる群よ
り選ばれる化合物
成分(f):有機アルミニウム化合物
【0088】
上記(x)および(y)の触媒系において、(a)メタロセン化合物は公知のものを、適宜選択して使うことができる。
(c)連鎖移動剤としては、特に限定されないが、水素が好適に使用される。
(d)微粒子担体としては、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナなどの公知のものが使用できる。
【0089】
(ii−3)反応方法
α−オレフィンと官能基を有するエチレン性不飽和単量体との共重合反応の方式は特に限定されないが、溶液、スラリーおよびバルク重合が好ましい。
【0090】
溶液又はスラリー重合時の溶媒の具体例としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサンのような炭化水素類;クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼンのようなハロゲン化炭化水素類;n−ブチルアセテート、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジメチルスルホキシドのような極性溶媒類等を挙げることができる。これらのうち、炭化水素類が好ましく、特に芳香族炭化水素類が好ましい。また、ここで記載した溶媒の混合溶媒として使用してもよい。
【0091】
前述の触媒濃度は特に限定されないが、例えば反応方式が溶液重合の場合、メタロセン化合物濃度が、反応液1Lに対して、通常100g以下であって、50g以下が好ましく、25g以下が最も好ましい。通常0.01mg以上であって、0.05mg以上が好ましく、0.1mg以上が最も好ましい。
【0092】
重合温度、重合圧力および重合時間に特に制限はないが、通常は、以下の範囲から生産性やプロセスの能力を考慮して、最適な設定を行うことができる。
すなわち、重合温度は通常−20℃以上、好ましくは0℃以上であって、通常150℃以下、好ましくは100℃以下である。
また、重合圧力は、通常0.01MPa以上、好ましくは0.05MPa以上、最も好ましくは0.1MPa以上であって、通常100MPa以下、好ましくは20MPa以下、最も好ましくは5MPa以下である。
重合時間は、通常0.1時間以上、好ましくは0.2時間以上、最も好ましくは0.3時間以上であって、通常30時間以下、好ましくは25時間以下、より好ましくは20時間以下、最も好ましくは15時間以下である。
【0093】
[(C)ポリオレフィン]
(C)成分としてのポリオレフィンとしては、前記(B)変性ポリオレフィンの前駆体として挙げたオレフィン系重合体と同様のものが挙げられる。
このオレフィン系重合体としては、分子量が重量平均分子量Mwで2,000以上であることが好ましく、5,000以上であることがより好ましく、10,000以上であることが特に好ましい。また、1,000,000以下であることが好ましく、800,000以下であることがより好ましく、600,000以下であることが特に好ましい。Mwが上記下限よりも小さいと脆くなる傾向にあり、上記上限よりも大きいと成形が困難になる傾向がある。また、分子量分布Mw/Mnは、特に限定されないが、通常1以上、好ましくは2以上であって、通常10以下、好ましくは7以下、より好ましくは5以下である。
【0094】
(C)オレフィン系重合体は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0095】
[各成分の割合]
本発明のセルロース/ポリオレフィン系複合材料における各成分の含有割合としては、(A)〜(C)成分の合計に対するセルロース不織布の含有割合が1重量%以上となるようにすることが好ましく、5重量%以上となるようにすることがより好ましく、10重量%以上となるようにすることが特に好ましい。また、95重量%以下となるようにすることが好ましく、85重量%以下となるようにすることがより好ましく、80重量%以下となるようにすることが特に好ましい。セルロース不織布の含有割合が上記下限値未満では、セルロース/ポリオレフィン系複合材料としてセルロース不織布配合による諸物性の改善という所期の目的を十分に発現し得ない傾向となり、一方、上記上限値超過では、セルロース/ポリオレフィン系複合材料としての成形加工性が悪化する傾向となる。
【0096】
また、官能基を有する変性ポリオレフィンの含有割合が0.1重量%以上、特に1重量%以上、とりわけ2重量%以上であることが好ましく、また、95重量%以下、特に80重量%以下、とりわけ70重量%以下であることが好ましい。官能基を有する変性ポリオレフィンの含有割合が上記下限値未満では変性ポリオレフィンによる接着効果を十分に確保し得ず、上記上限値超過では複合材料の諸物性を低下させる。
なお、本発明のセルロース/ポリオレフィン系複合材料中のセルロース不織布含量は、後述の本発明のセルロース/ポリオレフィン系複合材料の製造方法において、樹脂と接触させる前のセルロース不織布の重量とポリオレフィンと張り合わせ後の複合材料の重量より求めることができる。また、樹脂の比重から求める方法や、NMR、IRを用いて樹脂やセルロースの官能基を定量して求める方法がある。セルロース/ポリオレフィン系複合材料中の変性ポリオレフィン含有量についても同様にして求めることができる。
【0097】
[その他の成分]
本発明のセルロース/ポリオレフィン系複合材料には、必要に応じて、上記(A)〜(C)成分以外の他の成分が含まれていてもよい。
本発明のセルロース/ポリオレフィン系複合材料に含まれていてもよい他の成分としては、ポリオレフィン系樹脂組成物に通常用いられる各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、造核剤、中和剤、滑剤、ブロッキング防止剤、分散剤、流動性改良剤、離型剤、難燃剤、発泡剤、着色剤、充填材等の添加剤が挙げられ、これらの成分の含有割合は、通常、前記(A)〜(C)成分の合計に対して60重量%以下である。
なお、燃焼時のアッシュの発生をなくすという目的からは、無機充填材や無機繊維については可能な限り含量を少なくすることが望ましい。
【0098】
[線膨張係数]
本発明のセルロース/ポリオレフィン系複合材料は、線膨張係数が130ppm/K以下の低線膨張係数の複合材料であることが好ましい。この線膨張係数はより好ましくは120ppm/K以下である。ただし、線膨張係数は通常10ppm/K以上である。
【0099】
{セルロース/ポリオレフィン系複合材料の製造方法}
本発明のセルロース/ポリオレフィン系複合材料は、(A)〜(C)成分と、必要に応じて添加される前述の添加剤を用いて製造することもできるが、好ましくは、(A)セルロース不織布に、(B)官能基を有する変性ポリオレフィンを浸漬または塗布するなどして接触させ、更に、(C)ポリオレフィンを張り合わせることにより製造される。
【0100】
セルロース不織布と官能基を有する変性ポリオレフィンとの接触方法は、結果的にセルロース不織布表面を変性ポリオレフィンで覆うことができれば、特に限定されない。
具体的には、
(i)セルロース不織布を、官能基を有する変性ポリオレフィンを溶解した変性ポリオレフィン溶液に浸漬する方法
(ii)セルロース不織布に、官能基を有する変性ポリオレフィンを溶解した変性ポリオレフィン溶液を塗布する方法
(iii)セルロース不織布を、溶融状態にある、官能基を有する変性ポリオレフィン融液に浸漬する方法
(iv)セルロース不織布に、溶融状態にある、官能基を有する変性ポリオレフィン融液を塗布する方法
等が挙げられる。
【0101】
(i)セルロース不織布を、官能基を有する変性ポリオレフィンを溶解した変性ポリオレフィン溶液に浸漬する方法
まず、官能基を有する変性ポリオレフィンを、これを溶解可能な有機溶媒に溶解する。ここで用いる有機溶媒の具体例としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサンのような炭化水素類、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼンのようなハロゲン化炭化水素類、n−ブチルアセテート、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジメチルスルホキシドのような極性溶媒類を挙げることができる。これらの有機溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合溶媒として用いてもよい。これらのうち、炭化水素類が溶媒として好ましい。
溶解温度は、特に限定されないが、室温から溶媒の沸点の間の温度で溶解させる。
変性ポリオレフィン溶液の変性ポリオレフィン濃度は、変性ポリオレフィンが溶解可能な濃度であれば特に限定されないが、通常、1重量%以上の濃度が好ましい。それよりも薄い濃度では、セルロース不織布に変性ポリオレフィンがコーティングされにくくなる。通常、この変性ポリオレフィン溶液の変性ポリオレフィン濃度は1〜50重量%程度とされる。
浸漬時間は通常0.1秒以上、好ましくは1秒以上、また10分以下、好ましくは5分以下で行われる。また、浸漬を2回以上繰り返してもよい。浸漬を繰り返す場合は、一回ごとに乾燥させてもよいし、乾燥させなくてもよい。最後に浸漬した後は、溶媒が残らないように十分乾燥させる。乾燥は、風乾でもよいし、熱風乾燥機、真空乾燥機等を用いてもよい。
【0102】
(ii)セルロース不織布に、官能基を有する変性ポリオレフィンを溶解した変性ポリオレフィン溶液を塗布する方法
まず、官能基を有する変性ポリオレフィンを、これを溶解可能な有機溶媒に溶解する。ここで用いる有機溶媒及びその溶液濃度は、上記(i)におけると同様である。
セルロース不織布に変性ポリオレフィン溶液を塗布する方法に特に制限は無いが、スプレーで塗布する方法、ローラーで塗布する方法、刷毛で塗布する方法など、従来公知の方法が使用できる。塗布は2回以上繰り返してもよい。塗布を繰り返す場合は、一回ごとに乾燥させてもよいし、乾燥させなくてもよい。最後に塗布した後は、溶媒が残らないように十分乾燥させる。乾燥は、風乾でもよいし、熱風乾燥機、真空乾燥機等を用いてもよい。
【0103】
(iii)セルロース不織布を、溶融状態にある、官能基を有する変性ポリオレフィン融液に浸漬する方法
セルロース不織布を、溶融状態にある、官能基を有する変性ポリオレフィン融液に浸漬する場合、変性ポリオレフィンをまず加熱して溶融状態とする。
この変性ポリオレフィン融液へのセルロース不織布の浸漬時間は通常0.1秒以上、好ましくは1秒以上、また10分以下、好ましくは5分以下で行われる。また、浸漬を2回以上繰り返してもよい。浸漬を繰り返す場合は、一回ごとに冷却固化させてもよいし、固化させなくてもよい。
【0104】
(iv)セルロース不織布に、溶融状態にある、官能基を有する変性ポリオレフィン融液を塗布する方法
変性オレフィン共重合体を溶融状態でセルロース不織布に塗布する場合、上記(iii)と同様に変性ポリオレフィンを溶融させる。
セルロース不織布への変性ポリオレフィン融液の塗布方法に特に制限は無いが、上記(ii)で用いる方法と同様の方法を挙げることができる。
【0105】
このようにして、セルロース不織布に変性ポリオレフィンを付着させてコーティングした後は、両者の密着性を高めるために熱プレスしてもよい。この場合の熱プレス条件としては用いた変性ポリオレフィンの種類によっても異なるが、通常50〜300℃、0.1〜10MPaで行うのが好ましい。
【0106】
本発明のセルロース/ポリオレフィン系複合材料は、上述のようにしてセルロース不織布に、官能基を有する変性ポリオレフィンを付着させたものに、ポリオレフィンを張り合わせることにより得られる。この場合、良好な接着性を得るためには、変性ポリオレフィンを付着させたセルロース不織布をポリオレフィンとともに加熱することが好ましい。加熱温度に特に制限は無いが、実用性を考慮して、50〜300℃、特に60〜250℃が好ましい。貼り合わせは、スタンピング成形法、シートモールドコンパウンド(SMC)、プレス成形法等が用いられる。
いずれの方法においても、セルロース不織布に官能基を有する変性ポリオレフィンを浸漬または塗布することによりコーティングし、指触乾燥の状態としたプリプレグを形成し、このプリプレグに、予め20μm〜1mm程度の厚さのフィルム状又はシート状に成形したポリオレフィンを貼り合わせて本発明のセルロース/ポリオレフィン系複合材料とすることが好ましい。プリプレグとポリオレフィンフィルム又はシートとの貼り合わせを熱プレスで行う場合、熱プレス条件は用いた変性ポリオレフィン及びポリオレフィンの種類によっても異なるが、通常50〜300℃、0.1〜15MPaで行うのが好ましい。
また、得られた複合材料の複数枚を積層してもよい。この場合、使用する成型装置はどのような形式のものであってもよい。
【0107】
{用途}
本発明のセルロース/ポリオレフィン系複合材料は、その低線膨張係数、高弾性、高強度等の特性を生かして構造材料として用いることができる。特に、自動車内装材、外板、バンパー等の自動車材料や家庭電気製品の筐体、家電部品、包装用資材、建築資材、土木資材、水産資材、その他工業用資材等として好適に用いられる。
【実施例】
【0108】
以下、製造例、実施例および比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
【0109】
尚、本発明のセルロース/ポリオレフィン系複合材料の線膨張係数及び接着性の測定方法、ポリオレフィンの物性の測定方法、セルロース不織布の化学修飾率の算出方法等は以下の通りである。
【0110】
(1)グラフト率
重合体200mgとクロロホルム4800mgを10mlのサンプル瓶に入れて50℃で30分加熱し完全に溶解させた。材質NaCl、光路長0.5mmの液体セルにクロロホルムを入れ、バックグラウンドとした。次に、溶解した重合体溶液を液体セルにいれて、日本分光(株)製FT−IR460plusを用い、積算回数32回にて赤外線吸収スペクトルを測定した。無水マレイン酸のグラフト率は、無水マレイン酸をクロロホルムに溶解した溶液を測定し検量線を作成したものを用いて計算した。そしてカルボニル基の吸収ピーク(1780cm−1付近の極大ピーク、1750〜1813cm−1)の面積から、別途作成した検量線に基づき、重合体中の酸成分含有量を算出し、これをグラフト率(重量%)とした。
【0111】
(2)線膨張係数
複合材料をレーザーカッターにより、3mm幅×40mm長にカットした。これをSII製TMA120を用いて引っ張りモードでチャック間20mm、荷重10g、窒素雰囲気下、室温から180℃まで5℃/min.で昇温、180℃から25℃まで5℃/min.で降温、25℃から180℃まで5℃/min.で昇温した際の2度目の昇温時の60℃から100℃の測定値から線膨張係数を求めた。
【0112】
(3)接着性
フィルム状の複合材料サンプルの両面にセロテープ(商品名:ニチバン社製)を貼り付けた後、これら双方を速やかに180°方向に引っ張った。これを5回繰り返し、表面のポリオレフィンフィルム(ポリプロピレンフィルム)が一度も剥離しなかった場合を○、一度でも剥離した場合を×とした。
【0113】
(4)セルロース不織布の化学修飾率
セルロース不織布0.5gを精秤しこれにメタノール6ml、蒸留水2mlを添加する。これを60〜70℃で30分攪拌した後、0.05N水酸化ナトリウム水溶液10mlを添加する。これを60〜70℃で15分攪拌しさらに室温で一日攪拌する。これをフェノールフタレインを用いて0.02N塩酸水溶液で滴定する。
ここで、滴定に要した0.02N塩酸水溶液の量Z(ml)から、化学修飾により導入された置換基のモル数Qは、下記式で求められる。
Q(mol)=0.05(N)×10(ml)/1000
−0.02(N)×Z(ml)/1000
この置換基のモル数Qと、化学修飾率X(mol%)との関係は、以下の式で算出される(セルロース=(C10=(162.14),繰り返し単位1個当たりの水酸基数=3,OHの分子量=17)。なお、以下において、Tは置換基の分子量である。
【数3】

これを解いていくと、以下の通りである。
【数4】

【0114】
[製造例1:セルロース不織布の製造]
木粉((株)宮下木材、米松100)を炭酸ナトリウム2重量%水溶液で80℃にて6時間脱脂した。これを脱塩水で洗浄した後、亜塩素酸ナトリウムを用いて酢酸酸性下、80℃にて5.5時間脱リグニンした。脱塩水洗浄した後にさらに水酸化カリウム5重量%水溶液に16時間浸漬して脱ヘミセルロースした。脱塩水洗浄した後に、0.5重量%の水懸濁液とし、超高圧ホモジナイザー(スギノマシーン製アルティマイザー))に245MPaで10回通した。
【0115】
得られたセルロース分散液を0.2重量%濃度に水で希釈し、孔径1μmのPTFEを用いた90mm径の濾過器に100g投入し、固形分が約5重量%になったところで2−プロパノールを投入して置換した。その後、120℃、0.14MPaで5分間プレス乾燥してセルロース不織布を得た。
このセルロース不織布を100mlの無水酢酸に含浸して120℃にて7時間加熱した。その後、蒸留水でよく洗浄し、最後に2−プロパノールに10分浸した後、120℃、0.14MPaにて5分間プレス乾燥して厚さ55μmのアセチル化セルロース不織布を得た。この不織布の化学修飾率は42mol%であった。
【0116】
[製造例2:無水マレイン酸変性ポリプロピレンの製造]
メルトフローレート(MFR)が10g/10分(230℃/21.18Nで測定)であるアイソタクチックポリプロピレンホモポリマー100重量部、無水マレイン酸19重量部、および有機溶媒としてモノクロロベンゼン720重量部を、攪拌装置、温度計、還流冷却管および滴下ロートを備えたガラス製フラスコ中に仕込み、窒素雰囲気下で130℃にて溶解させた。ここに有機過酸化物であるジクミルパーオキサイド10重量部を、滴下ロートから同温度で添加し、4時間同温度で攪拌を続けて反応させた。反応終了後、反応系を室温付近まで冷却した後、予め用意した10℃のアセトン中に加えることでポリマーを析出させた。析出したポリマーを濾別し、更に、同様にアセトンで沈殿・濾別を繰り返してポリマーを洗浄した。洗浄後のポリマーを減圧乾燥して白色粉末状のポリマーを得た。このようにして得た無水マレイン酸変性ポリプロピレンのグラフト率は3.3重量%、メルトフローレート(MFR)は950g/10分であった。
【0117】
[実施例1]
製造例2で得られた無水マレイン酸変性ポリプロピレン20gを80℃でトルエン180gに溶解した。ここに、製造例1で得られたセルロース不織布20mm×50mm(59.4mg)を3秒間浸漬して引き上げ、1分間風乾した。これを5回繰り返し、20℃で45分間乾燥した。これを160℃で1分間予熱した後、160℃、5MPaで1分間プレスした。その後、室温、5MPaで1分間冷却することにより、セルロース不織布/変性ポリプロピレン複合フィルムを得た。
別途、市販のポリプロピレン(日本ポリプロピレン社製:MA1、JIS K7210:1999によるMFR公称21g/10min)を熱プレスで100μm厚のフィルムに成形した。
セルロース不織布/変性ポリプロピレン複合フィルムを、このようにして成形して得られた2枚のポリプロピレンフィルムの間にはさんで、190℃で1分間予熱した後、190℃、5MPaで1分間プレスした。その後、室温、5MPaで1分間冷却することにより、セルロース59.4mg、変性ポリプロピレン15.8mg、ポリプロピレン117.2mgからなるフィルムを得た。得られたフィルムの線膨張係数を測定した。また、接着性試験を実施した。結果を表1に示した。
【0118】
[比較例1]
実施例1と同様にして得た市販のポリプロピレンフィルムの線膨張係数を測定し、結果を表1に示した。
【0119】
[比較例2]
製造例2で得られた無水マレイン酸変性ポリプロピレンを160℃で1分間予熱した後、160℃、5MPaで1分間プレスした。その後、室温、5MPaで1分間冷却することにより、100μm厚の変性ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルムの線膨張係数を測定し、結果を表1に示した。
【0120】
[比較例3]
実施例1と同様にして得た市販のポリプロピレンフィルム2枚で製造例1で得られたセルロース不織布をはさみ、190℃で1分間予熱した後、190℃、5MPaで1分間プレスした。その後、室温、5MPaで1分間冷却することにより、セルロース不織布40.0mg、ポリプロピレン130.2mgからなる複合材料フィルムを得た。得られたフィルムの線膨張係数を測定した。また、接着性試験を実施した。結果を表1に示した。
【0121】
【表1】

【0122】
実施例1及び比較例1〜3の結果から、セルロース繊維、官能基を有する変性ポリオレフィン、及びポリオレフィンからなる本発明のセルロース/ポリオレフィン系複合材料は、低い線膨張係数を示し、かつ各成分が強固に接着されたフィルムであることが明らかになった。なお、セルロース繊維は、有機物であるため、燃焼しても、実質的にアッシュは発生しないため、サーマルリサイクルに有利である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)セルロース不織布、(B)官能基を有する変性ポリオレフィン、および(C)ポリオレフィンを含むセルロース/ポリオレフィン系複合材料。
【請求項2】
(A)セルロース不織布の含有量が1〜95重量%である請求項1に記載のセルロース/ポリオレフィン系複合材料。
【請求項3】
(B)官能基を有する変性ポリオレフィンが、無水マレイン酸変性ポリオレフィンおよび/またはカチオン性基を含むポリオレフィンである請求項1または2に記載のセルロース/ポリオレフィン系複合材料。
【請求項4】
(A)セルロース不織布に、(B)官能基を有する変性ポリオレフィンを浸漬または塗布する工程を含む請求項1ないし3のいずれか1項に記載のセルロース/ポリオレフィン系複合材料の製造方法。
【請求項5】
(A)セルロース不織布に、(B)官能基を有する変性ポリオレフィンを浸漬または塗布した後に、(C)ポリオレフィンを張り合わせる請求項4に記載のセルロース/ポリオレフィン系複合材料の製造方法。

【公開番号】特開2013−14143(P2013−14143A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−230865(P2012−230865)
【出願日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【分割の表示】特願2008−4598(P2008−4598)の分割
【原出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】