説明

セル型カートリッジフィルター

【課題】多段積層の軸に直角に作用する応力に対して、セル型カートリッジフィルターの接続部のガスケット間のズレ防止やガスケット間の圧縮力の低下に対する隙間形成を防止して、濾過前の製品が濾過後の製品に混入することを防止できるセル型カートリッジフィルターを提供する。
【構成】複数段積層したセル型カートリッジフィルターに於いて、セル型カートリッジフィルターの上端エンドプレートと下端エンドプレートとを、そのまま若しくは両者を嵌合連結する部材を介して嵌合連結し、ガスケット間のズレ防止やガスケット間の圧縮力の低下に対する隙間形成を完全に防止した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数段に接続したセル型カートリッジフィルターに係り、詳記すればセル型カートリッジフィルター同士の接続部のシール性を改善したセル型カートリッジフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
濾紙や焼成濾過材で構成されるディスク状濾過材でリブ状スペーサを挟持し、外周部をリングでシールしてセル型フィルターを形成し、これを多数積層したセル型カートリッジフィルターは、カートリッジが占める容量に対し、フィルターの濾過面積が大きいという特徴から、食品工業、化学工業、製薬工業等で、広く使用されている。特に、食品工業などで大容量の液体を濾過処理する用途に於いては、セル型カートリッジフィルターを複数段重ねて、フィルターハウジングに設置されたセンターシャフトのネジを利用して加圧して液密に接続して使用されている。
【0003】
しかし、セル型カートリッジフィルターに使用される濾材が濾紙の場合、濾過処理液や熱の影響で濾材の弾性力が低下するため、セル型カートリッジフィルターが収縮する。このため、センターシャフトのネジによる加圧には、金属コイル型スプリングなどを設置することによって、濾材が収縮してもガスケット間の圧縮力がシールを損なわない程度に維持できる工夫がなされている。
【0004】
セル型カートリッジフィルターは、所定の工程中の製品(被濾過処理液)を濾過する際、製品の熱の影響や、一次側の圧力変化及び二次側の配管から生じる逆圧などの影響を受けて濾材の一部が破壊されて、濾過前の製品が濾過後の製品に混入すること(以下リークという)があった。このため、特許文献1では、熱による濾材の変形を防止するカートリッジフィルターが提案されている。また、特許文献2や特許文献3では、二次側の配管から生じる逆圧に対する濾材の破壊耐性を改善する提案がなされ、特許文献4では、逆圧耐性の試験方法が提案されている。
【特許文献1】特許第04065762号
【特許文献2】特許第3371366号
【特許文献3】特許第3187786号
【特許文献4】特許第03402592号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、セル型カートリッジフィルターを複数段に積層して使用する場合のセル型カートリッジフィルター間の接続部でのリークに関しては、これまで評価・検討された例がなかった。これは、上記接続間にリークが断続的に生じても濾過流速やカートリッジフィルターの差圧などの濾過プラントの制御値に顕著な変化がなく、濾過操作中に検出することが困難であること、また、濾過後の製品を検査してリークなどの異常が確認されても、リーク箇所の断定が困難であったためである。
【0006】
しかしながら、本発明者等の鋭意研究の結果、セル型カートリッジフィルターを多段に積層して使用する場合、濾過前の製品がセル型カートリッジフィルター間の接続部のガスケットの接触面でリークし、濾過後の製品に混入する場合があることが初めて判明した。前記ガスケットの接触面でのリークは、カートリッジフィルターの差圧(一次側と二次側との運転圧力差)では検知できるレベルではなく、唯一、カートリッジフィルターの寿命後の交換作業時にガスケット表面を目視観察し、リークの痕跡の有無を確認してリークの有無が判断されるものであり、リークが確認されても濾過後の製品に直ちに対策を講じることができないことから、これは極めて重要な課題の発見である。
【0007】
本発明は、上記知見に基づきなされたものであり、複数段積層の軸に直角に作用する応力に対して、セル型カートリッジフィルターの接続部のガスケッド間のズレ防止やガスケット間の圧縮力の低下に対する隙間形成を防止して、濾過前の製品が濾過後の製品に混入することを防止できるセル型カートリッジフィルターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的に沿う本発明の構成は、複数段積層したセル型カートリッジフィルターに於いて、セル型カートリッジフィルターの上端エンドプレートと下端エンドプレートとを、そのまま若しくは両者を嵌合連結する部材を介して嵌合連結したことを特徴とする。
【0009】
筒状体の一方の開口部を一方のエンドプレートに嵌合させ、他方の開口部を他方のエンドプレートに嵌合させて、両者を嵌合連結すればよい(請求項2)。
【0010】
一方のエンドプレートを他方のエンドプレートに嵌合できる大径に形成し、両者を嵌合連結しても良い(請求項3)。
【0011】
筒状体若しくは流体の流路を形成した円柱体に、上端エンドプレートと下端エンドプレートとを外嵌させて、両者を嵌合連結しても良い(請求項4)。
【発明の効果】
【0012】
本発明のセル型カートリッジフィルターは、ガスケット間のズレ防止やガスケット間の圧縮力の低下に対する隙間形成が完全に防止できるので、濾過前の製品が濾過後の製品に混入することを完全に防止できるという絶大な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来のセル型カートリッジフィルターを3段に積層した例を示す概略断面図である。
【図2】本発明のセル型カートリッジフィルターを3段に積層した例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の接続リングの効果を示す概略断面図である。
【図4】本発明のセル型カートリッジフィルターを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、セル型カートリッジフィルターを3段に積層し、フィルターハウジングに内装した従来のセル型カートリッジフィルターを示すものである。荷重冶工具により、コイルバネを介して、セル型フィルターを接続部のガスケットによるシールを損なわないように圧縮している。濾過液が流出するコア内には、センターシャフトが挿通され、セル型カートリッジフィルター同士の接続部に近接して、センターシャフトに挿通されたフィン型ガイドがズレ防止の目的で位置している。
【0015】
図2は、本発明のセル型カートリッジフィルターを3段に積層したセル型カートリッジフィルターを示すものであり、筒状リング(接続リング)で一方のセル型カートリッジフィルターの上端エンドプレートと他方のセル型カートリッジフィルターの下端エンドプレートとを嵌合連結している。その他は、図1と同様に構成されている。尚、この場合は、フィン型ガイドは特に必要としない。
【0016】
図3に示すように、図1に示す従来のフィルターは、通常は図3(a)に示すように連結されているが、軸に直角に作用する応力に対し、図3(b)に示すようにズレが発生したり、ガスケット間の圧縮力の低下に対する隙間形成により、リークが生じる。
【0017】
これに対し、図2に示す本発明のフィルターは、図3(c)に示すように軸に直角に作用する応力に対しても、ガスケット間の圧縮力の低下に対しても、ズレや傾きを防止する。非常に大きな力が働いて、図3(d)に示すように傾いても、リングがシール材として機能し、リークを防止する。
【0018】
本発明においては、セル型カートリッジフィルターの上端エンドプレートと下端エンドプレートとを、そのまま若しくは両者を嵌合連結する部材を介して嵌合連結する。
【0019】
上記図2に示す実施例は、筒状体の一方の開口部を上端エンドプレートに嵌合させ、他方の開口部を下端エンドプレートに嵌合させて、両者を嵌合連結した例である。
【0020】
筒状体若しくは流体の流路を形成した円柱体に、上端エンドプレートと下端エンドプレートとを外嵌させて、両者を嵌合連結しても良い。例えば、図1に於いて、フィン型ガイドに流体が通過する貫通孔を形成し、これを接続部のコアに嵌合させて、両者を嵌合連結しても良い。
【0021】
図4は、本発明の他の実施例を示すものであり、セル型カートリッジフィルターの上端エンドプレートに下端エンドプレートに外嵌できる大径の接続リングを一体成型で付加し、両者を嵌合連結できようにした例を示すものである。
【0022】
上記エンドプレートは合成樹脂で形成されているが、連結する部材(接続リング)も合成樹脂で形成するのが好ましい。
(ガスケット間のリーク痕跡の調査)
カートリッジフィルターの寿命後の交換作業時にガスケット表面を目視観察し、リークの痕跡の有無を確認してリークがあったと判断した。
(1)フィン型ガイドφ48mm、コア内径φ51mm で寸法公差を勘案しても、隙間は2mmであった。ガスケット接触幅12mm、 最圧縮部の幅2mmであったので、リークの原因は装着ズレではないと判断した。
【0023】
(2)ガスケットの圧縮応力
セット時の圧縮応力は、コイルばねの圧縮長で決定され、セル型カートリッジフィルターの寸法公差を勘案して、3.8kg/cm2±0.5であり、濾材が水に濡れたときの収縮は、一段あたり、10mm±5mmであり、収縮後の圧縮応力は最小で、2.1kg/cm2であったので、シール保持力としては、十分と判断された。
【0024】
上記(1)及び(2)の結果から、セル型カートリッジフィルター自体は正常であるにも係らす、ガスケットを介して接続する接続部からリークが生じたと判断した。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の、セル型カートリッジフィルターは、濾過前の製品が濾過後の製品に混入することを完全に防止できるが、従来のセル型カートリッジフィルターは、完全には防止できないので、大変な利点があるから、広く普及することが期待される。





【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数段積層したセル型カートリッジフィルターに於いて、セル型カートリッジフィルターの上端エンドプレートと下端エンドプレートとを、そのまま若しくは両者を嵌合連結する部材を介して嵌合連結したことを特徴とする複数段に積層したセル型カートリッジフィルター。
【請求項2】
筒状体の一方の開口部を一方のエンドプレートに嵌合させ、他方の開口部を他方のエンドプレートに嵌合させて、両者を嵌合連結する請求項1記載のセル型カートリッジフィルター。
【請求項3】
一方のエンドプレートを他方のエンドプレートに嵌合できる大径に形成し、両者を嵌合連結する請求項1又は2記載のセル型カートリッジフィルター。
【請求項4】
筒状体若しくは流体の流路を形成した円柱体に、上端エンドプレートと下端エンドプレートとを外嵌させて、両者を嵌合連結する請求項1〜3のいずれかに記載のセル型カートリッジフィルター。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−206036(P2012−206036A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74532(P2011−74532)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(311007202)アサヒビール株式会社 (36)
【出願人】(000232885)株式会社ロキテクノ (18)