説明

セル間干渉除去方法、中継局および基地局

【課題】セル間干渉を効果的に除去して端ユーザのスループットを向上する。
【解決手段】セル間干渉除去方法は、中継局が、第1タイムスロットで、自局に隣接する基地局のカバー範囲内の移動端末から送信された信号を受信し、受信された信号に対して、ネットワーク符号化に基づく処理を行い、第2タイムスロットで、処理後の信号を、自局に隣接する基地局に転送する、ことを含む。該方法によれば、基地局は、中継局から転送された移動端末からの信号と、自局が直接に移動端末から受信した信号とを利用して、統合復号化を行って、自局の所要データを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信技術に関し、特に、セル間干渉除去方法、中継局および基地局に関する。
【背景技術】
【0002】
現在のセルラーシステムにおいて、ユーザの獲得できるデータレートは、ユーザの所在する位置に大きく依存する。例えば、セルラーシステムにおけるセル端ユーザのデータレートは、セル中央ユーザより遥かに低い。これは、主に、信号の無線環境での伝搬特性から引き起こされる。当業者は、基地局から比較的に遠いユーザで受信された信号が、空間損失を経た後、その信号強度が必ず弱化するため、自然に、該ユーザの獲得できるデータレートが低減する、ということを理解できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
基地局による端ユーザへの送信電力を増加することで空間損失を克服すれば、つまり、基地局は端ユーザへの送信電力を増加することで空間損失を克服すれば、該基地局による隣接セルへの干渉が増加してしまうことになり、これによって、相変わらず、隣接セルの端ユーザのデータレートが低減してしまうことになる。従って、セル間干渉を如何に解決するかという課題は、端ユーザのデータレートを向上させるために解決しようとする根本的な課題の1つである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を解決するために、本発明の実施例は、セル間干渉を効果的に除去して端ユーザのスループットを向上させることが可能なセル間干渉除去方法と、該方法を実現する中継局および基地局とを提供している。
【0005】
本発明の実施例で提供されているセル間干渉除去方法は、中継局が、第1タイムスロットで、自局に隣接する基地局のカバー範囲内の移動端末から送信された信号を受信し、中継局が、受信された信号に対して、ネットワーク符号化に基づく処理を行い、中継局が、第2タイムスロットで、処理後の信号を、自局に隣接する基地局に転送する、ことを含む。
【0006】
ここで、中継局が、受信された信号に対して、ネットワーク符号化に基づく処理を行うことは、中継局が、受信された信号に対して、増幅処理を行い、または、中継局が、受信された信号に対して、雑音除去および再変調処理を行い、または、中継局が、受信された信号に対して、雑音除去処理および圧縮処理を行う、ことを含み、またあるいは、中継局が、受信された信号に対して、ネットワーク符号化に基づく処理を行うことは、中継局と基地局との間のチャネル条件に基づいて、受信された信号に対して雑音除去処理を行う必要があるかどうかを判断し、受信された信号に対して雑音除去処理を行う必要がある場合、受信された信号に対して雑音除去処理を行ってから、ステップBを実行し、受信された信号に対して雑音除去処理を行う必要がない場合、受信された信号を増幅するステップAと、中継局と基地局との間のチャネル条件に基づいて、雑音除去処理後の信号を圧縮する必要があるかどうかを判断し、雑音除去処理後の信号を圧縮する必要がある場合、雑音除去処理後の信号を圧縮し、雑音除去処理後の信号を圧縮する必要がない場合、雑音除去処理後の信号を再変調するステップBと、を含む。
【0007】
上記の方法は、基地局が、第1タイムスロットで、自局および自局に隣接する基地局のカバー範囲内の移動端末から送信された信号を受信し、基地局が、第2タイムスロットで、中継局から送信された処理後の信号を受信し、基地局が、自局が第1タイムスロットで受信した信号と第2タイムスロットで受信した信号とに基づいて、統合復号化を行って、自局のカバー範囲内の移動端末から送信された信号を得る、ことをさらに含む。
【0008】
基地局が、自局が第1タイムスロットで受信した信号と第2タイムスロットで受信した信号とに基づいて、統合復号化を行うことは、基地局が、まず、自局が第1タイムスロットで受信した、自局および自局に隣接する基地局のカバー範囲内の移動端末から送信された信号と、第2タイムスロットで受信した、中継局から送信された処理後の信号とに対して、統合検出を行って、自局のカバー範囲内の移動端末から送信された信号に含まれる各ビットの対数尤度比を得、次に、復号器で復号化して、自局のカバー範囲内の移動端末から送信された信号を得る、ことを含む。ここで、上記の復号器は、例えばTurbo復号器やLDPC復号器などのような、ソフト情報復号化をサポートできる復号器である。
【0009】
中継局が、受信された信号に対して、ネットワーク符号化に基づく処理を行うことは、前記中継局が、受信された信号に対して、増幅処理を行う、ことを含み、前記統合検出は、前記基地局が、数式

によって、自局のカバー範囲内の移動端末から送信された信号に含まれる各ビットの対数尤度比を得る、ことを含む。
【0010】
ここで、P(y(1),y(2)/x,x)=P(y(1)/x,x)・P(y(2)/x,x)であり、P(y(1)/x,x)、P(y(2)/x,x)は、数式



によって算出し、y(1)は、第1基地局BS1が第1タイムスロットで受信した第1混合信号を代表し、y(2)は、第1基地局BS1が第2タイムスロットで受信した第3混合信号を代表し、h11は、第1移動端末MS1から第1基地局BS1へのチャネルの信号インパルス応答を代表し、h21は、第2移動端末MS2から第1基地局BS1へのチャネルの信号インパルス応答を代表し、xとxは、第1移動端末MS1と第2移動端末MS2が第1タイムスロットで送信した信号をそれぞれ代表し、gとgは、第1移動端末MS1と第2移動端末MS2から中継局へのチャネルの信号インパルス応答をそれぞれ代表し、gとgは、中継局から第1基地局BS1と第2基地局BS2へのチャネルの信号インパルス応答をそれぞれ代表し、Nは、雑音の電力スペクトル密度を代表し、αは、中継局の電力増幅因子であり、Sは、特定位置のビットが0である場合に対応するQAM変調コンスタレーションポイントを指し、Sは、特定位置のビットが1である場合に対応するQAM変調コンスタレーションポイントを指し、Sは、QAM変調に含まれる全てのコンスタレーションポイントを表す。
【0011】
中継局が、受信された信号に対して、ネットワーク符号化に基づく処理を行うことは、前記中継局が、受信された信号に対して、雑音除去および再変調処理を行う、ことを含み、ここで、前記雑音除去は、数式

によって実現し、前記再変調処理は、中継局が、

を得た後、

に基づいて、受信された第2混合信号における第1移動端末MS1と第2移動端末MS2から送信されたシンボルのコンステレーション内の位置

を決定し、それから、S(1)とS(2)よりも高次の変調コンステレーションを利用して、受信された第2混合信号を再変調し、xを生成して転送する、ことを含み、前記統合検出は、前記基地局が、数式

によって、自局のカバー範囲内の移動端末から送信された信号に含まれる各ビットの対数尤度比を得る、ことを含み、ここで、P(y(1),y(2)/x,x)=P(y(1)/x,x)・P(y(2)/x,x)であり、P(y(1)/x,x)、P(y(2)/x,x)は、数式



によって算出し、y(1)は、第1基地局BS1が第1タイムスロットで受信した第1混合信号を代表し、y(2)は、第1基地局BS1が第2タイムスロットで受信した第3混合信号を代表し、yは、中継局が第1タイムスロットで受信した第2混合信号を代表し、h11は、第1移動端末MS1から第1基地局BS1へのチャネルの信号インパルス応答を代表し、h21は、第2移動端末MS2から第1基地局BS1へのチャネルの信号インパルス応答を代表し、xとxは、第1移動端末MS1と第2移動端末MS2が第1タイムスロットで送信した信号をそれぞれ代表し、xは、処理後の第2混合信号を代表し、gとgは、第1移動端末MS1と第2移動端末MS2から中継局へのチャネルの信号インパルス応答をそれぞれ代表し、gは、中継局から第1基地局BS1へのチャネルの信号インパルス応答を代表し、Nは、雑音の電力スペクトル密度を代表し、Sは、特定位置のビットが0である場合に対応するQAM変調コンスタレーションポイントを指し、Sは、特定位置のビットが1である場合に対応するQAM変調コンスタレーションポイントを指し、Sは、QAM変調に含まれる全てのコンスタレーションポイントを表し、S(1)とS(2)は、第1移動端末MS1と第2移動端末MS2で採用されている変調コンスタレーションをそれぞれ表し、Smin(1)とSmin(2)は、中継局で推定された、第1移動端末MS1と第2移動端末MS2から送信されたシンボルをそれぞれ代表する。
【0012】
中継局が、受信された信号に対して、ネットワーク符号化に基づく処理を行うことは、前記中継局が、受信された信号に対して、雑音除去および圧縮処理を行う、ことを含み、ここで、前記雑音除去は、数式

によって実現し、前記圧縮処理は、中継局が、

を得た後、

に基づいて、受信された第2混合信号における第1移動端末MS1と第2移動端末MS2から送信されたシンボルのコンステレーション内の位置

を決定し、それから、数式

によって、コンステレーションマッピングを行い、xを生成して転送する、ことを含み、前記統合検出は、前記基地局が、数式

によって、自局のカバー範囲内の移動端末から送信された信号に含まれる各ビットの対数尤度比を得る、ことを含み、ここで、P(y(1),y(2)/x,x)=P(y(1)/x,x)・P(y(2)/x,x)であり、P(y(1)/x,x)、P(y(2)/x,x)は、数式



によって算出し、y(1)は、第1基地局BS1が第1タイムスロットで受信した第1混合信号を代表し、y(2)は、第1基地局BS1が第2タイムスロットで受信した第3混合信号を代表し、yは、中継局が第1タイムスロットで受信した第2混合信号を代表し、h11は、第1移動端末MS1から第1基地局BS1へのチャネルの信号インパルス応答を代表し、h21は、第2移動端末MS2から第1基地局BS1へのチャネルの信号インパルス応答を代表し、xとxは、第1移動端末MS1と第2移動端末MS2が第1タイムスロットで送信した信号をそれぞれ代表し、xは、処理後の第2混合信号を代表し、gとgは、第1移動端末MS1と第2移動端末MS2から中継局へのチャネルの信号インパルス応答をそれぞれ代表し、gは、中継局から第1基地局BS1へのチャネルの信号インパルス応答を代表し、Nは、雑音の電力スペクトル密度を代表し、Sは、特定位置のビットが0である場合に対応するQAM変調コンスタレーションポイントを指し、Sは、特定位置のビットが1である場合に対応するQAM変調コンスタレーションポイントを指し、Sは、QAM変調に含まれる全てのコンスタレーションポイントを表し、S(1)とS(2)は、第1移動端末MS1と第2移動端末MS2で採用されている変調コンスタレーションをそれぞれ表し、Smin(1)とSmin(2)は、中継局で推定された、第1移動端末MS1と第2移動端末MS2から送信されたシンボルをそれぞれ代表する。
【0013】
上記の方法は、統合データ転送を行う移動端末ペアを決定する、ことをさらに含んでよい。
【0014】
ここで、統合データ転送を行う移動端末ペアを決定することは、移動端末が、本セルと隣接セルの基準信号を測定し、本セルと隣接セルの基準信号の強度の差が所定の基準信号閾値より小さい場合、該移動端末が、本セルの基地局へ、隣接セルのIDと本セルの直送リンクのチャネル条件とを報告し、基地局が、移動端末に対し、転送リンクを介して転送された本セルの基準信号を測定するよう通知し、移動端末が、測定して得られた、転送リンクを介して転送された本セルの基準信号から、転送リンクのチャネル条件を得、転送リンクのチャネル条件を本セルの基地局へ報告し、本セルの直送リンクのチャネル条件と転送リンクのチャネル条件とに基づいて、転送リンクの品質が直送リンクより優れているかどうかを判断し、転送リンクの品質が直送リンクより優れている場合、該移動端末を候補リストに追加し、自局の候補リスト中の1つの移動端末と、隣接セルの候補リスト中の1つの移動端末とをランダムに選択して、統合データ転送を行う移動端末ペアとする、ことを含む。
【0015】
あるいは、統合データ転送を行う移動端末ペアを決定することは、中継局が、隣接セルの移動端末から送信された基準信号を監視し、2つのセルの移動端末からの基準信号の強度の差が所定の第1閾値より小さくて、かつ、前記2つのセルの移動端末からの基準信号の強度がいずれも所定の第2閾値より大きい場合、中継局が、前記2つのセルの移動端末からの基準信号のフォーマットを、前記2つのセルの基地局へ通知し、前記2つのセルの基地局が、受信された基準信号のフォーマットに基づいて、前記2つのセルの移動端末のIDをそれぞれ決定して、該IDに対応する移動端末を自局の候補リストに追加し、自局の候補リスト中の1つの移動端末と隣接セルの候補リスト中の1つの移動端末とをランダムに選択して、統合データ転送を行う移動端末ペアとする、ことを含む。
【0016】
また、前記中継局は、現時点で空いている基地局によって実現してよい。
【0017】
本発明の実施例で提供される中継局は、第1タイムスロットで、移動端末からの混合信号を受信する混合信号受信手段と、受信された混合信号に対して、ネットワーク符号化に基づく処理を行う混合信号処理手段と、第2タイムスロットで、処理後の混合信号を、自局に隣接する基地局に転送する混合信号転送手段と、を含む。
【0018】
本発明の実施例で提供される基地局は、第1タイムスロットで直接に移動端末から受信された混合信号と、第2タイムスロットで中継局から受信された混合信号とに対して、統合検出を行って、自局のカバー範囲内の移動端末から送信された信号に含まれる各ビットの対数尤度比を得る統合検出手段と、自局のカバー範囲内の移動端末から送信された信号に含まれる各ビットの対数尤度比に基づいて、復号化を行って、自局のカバー範囲内の移動端末から送信された信号を得る復号器と、を含む。上記の復号器は、例えばTurbo復号器やLDPC復号器などのような、ソフト情報復号化をサポートできる復号器である。
【発明の効果】
【0019】
上記のように、本発明の実施例では、隣接する基地局の間に中継局RSを導入し、かつ、中継局が、自局で受信された移動端末からの信号を処理してから、自局に隣接する基地局に転送するようにすることにより、基地局は、中継局から転送された移動端末からの信号と、自局が直接に移動端末から受信した信号とを利用して、統合復号化を行って、自局の所要データを得ることができる。これにより、セル間干渉の問題を効果的に解決し、セル端ユーザのスループットを向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るセル間干渉除去方法のフローチャートである。
【図2】本発明に係るセル間干渉除去方法が応用される無線通信システムの構成を示す図である。
【図3】本発明の実施例に係る中継局が処理方式を適応的に選択するフローチャートである。
【図4】本発明の実施例に係る中継局の内部構成を示す図である。
【図5】本発明の実施例に係る基地局の内部構成を示す図である。
【図6】中継局と移動端末との間の距離が10メートルと50メートルであるとき、中継局を有しない場合(a)および本発明の実施例1〜3に係る方法を採用する場合(b)の信号対雑音比(SNR)とブロック誤り率(BLER)との関係をそれぞれ示すグラフである。
【図7】本発明の実施例における統合データ転送を行う移動端末ペアを如何に選択するかという方法のフローチャートである。
【図8】本発明のほかの実施例における統合データ転送を行う移動端末ペアを如何に選択するかという方法のフローチャートである。
【図9】ネットワークトポロジーを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の目的、解決手段およびメリットをさらに明確にするために、以下、図面および実施例を参照しながら、本発明をさらに詳しく説明する。理解すべきものとして、ここで述べた具体的な実施例は、本発明を解釈するものにすぎず、本発明を限定するものではない。
【0022】
本発明では、セル間干渉除去方法が提供されている。該方法では、隣接する基地局の間に中継局(RS:relay station)が設けられ、図1に示すように、該方法は、下記のステップを含む。
【0023】
ステップ101で、中継局は、第1タイムスロットで、自局に隣接する基地局のカバー範囲内の移動端末から送信された信号を受信する。
【0024】
ステップ102で、中継局は、受信された信号に対して、ネットワーク符号化に基づく処理を行う。
【0025】
ステップ103で、中継局は、第2タイムスロットで、処理後の信号を、自局に隣接する基地局に転送する。
【0026】
本発明で提供されている上記のセル間干渉除去方法において、基地局は、第1タイムスロットで、自局および自局に隣接する基地局のカバー範囲内の移動端末から送信された信号を受信し、第2タイムスロットで、中継局から送信された処理後の信号を受信し、自局が第1タイムスロットで受信した信号と第2タイムスロットで受信した信号とに基づいて、統合復号化を行って、自局のカバー範囲内の移動端末から送信された信号を得る。
【0027】
以下、図2を参照しながら、上記方法を詳しく説明する。図2は、本発明に係る方法が応用される無線通信システムの構成を示す図である。
【0028】
図2に示すように、隣接する第1基地局BS1と第2基地局BS2との間の干渉を解決するために、隣接する第1基地局BS1と第2基地局BS2との間に、中継局RSが導入される。この中継局があれば、第1基地局BS1のカバー範囲内の第1移動端末MS1と第2基地局BS2のカバー範囲内の第2移動端末MS2とは、同時にデータを送信することができ、送信データは、第1タイムスロットで、第1基地局BS1、第2基地局BS2および中継局RSに送信される。このとき、第1基地局BS1と第2基地局BS2で受信されたのは、第1混合信号と呼ばれる混合信号である。第1混合信号は、下記の数式1と2によって算出できる。
【数1】

【数2】

【0029】
ここで、y(1)とy(1)は、第1基地局BS1と第2基地局BS2が第1タイムスロットで受信した第1混合信号をそれぞれ代表し、h11は、第1移動端末MS1から第1基地局BS1へのチャネルの信号インパルス応答を代表し、h12は、第1移動端末MS1から第2基地局BS2へのチャネルの信号インパルス応答を代表し、h21は、第2移動端末MS2から第1基地局BS1へのチャネルの信号インパルス応答を代表し、h22は、第2移動端末MS2から第2基地局BS2へのチャネルの信号インパルス応答を代表し、xとxは、第1移動端末MS1と第2移動端末MS2が第1タイムスロットで送信した信号をそれぞれ代表し、zとzは、第1基地局BS1と第2基地局BS2の受信機の雑音をそれぞれ代表する。
【0030】
上記の数式から分かるように、セル間干渉が存在しているため、第1基地局BS1と第2基地局BS2は、第1タイムスロットで受信したのが混合信号であり、復調することにより自局の所要データを正確に得る(第1基地局BS1は第1移動端末MS1から送信されたデータを得、第2基地局BS2は第2移動端末MS2から送信されたデータを得る)ことができない。
【0031】
信号の空間ブロードキャスト特性によって、中継局RSも第1タイムスロットで、第2混合信号と呼ばれる混合信号を受信することになる。第2混合信号は、下記の数式3によって算出できる。
【数3】

【0032】
ここで、yは、中継局が第1タイムスロットで受信した第2混合信号を代表し、gとgは、第1移動端末MS1と第2移動端末MS2から中継局へのチャネルの信号インパルス応答をそれぞれ代表し、xとxは、第1移動端末MS1と第2移動端末MS2が第1タイムスロットで送信した信号をそれぞれ代表し、zは、中継局の受信機の雑音を代表する。
【0033】
中継局RSは、受信された第2混合信号を処理した後、第2タイムスロットで、処理後の第2混合信号を、第1基地局BS1と第2基地局BS2にブロードキャストする。このようにして、第1基地局BS1と第2基地局BS2は、第2タイムスロットで、第3混合信号と呼ばれるほかの混合信号を受信することになる。第3混合信号は、下記の数式4と5によって算出できる。
【数4】

【数5】

【0034】
ここで、y(2)とy(2)は、第1基地局BS1と第2基地局BS2が第2タイムスロットで受信した第3混合信号をそれぞれ代表し、gとgは、中継局から第1基地局BS1と第2基地局BS2へのチャネルの信号インパルス応答をそれぞれ代表し、xは、処理後の第2混合信号を代表する。
【0035】
最後に、第1基地局BS1と第2基地局BS2は、自局が第1タイムスロットで受信した第1混合信号と、第2タイムスロットで受信した中継局からの第3混合信号とに基づいて、それぞれ統合復号化を行って、自局の所要データを得る。つまり、第1基地局BS1は、上記のy(1)とy(2)とに基づいて、統合復号化を行って、xを得、第2基地局BS2は、上記のy(1)とy(2)とに基づいて、統合復号化を行って、xを得る。
【0036】
具体的に、上記の統合復号化は、基地局が、まず、自局が第1タイムスロットで受信した移動端末からの第1混合信号と、第2タイムスロットで受信した中継局からの第3混合信号とに対して、統合検出を行って、自局のカバー範囲内の移動端末から送信された信号に含まれる各ビットの対数尤度比(LLR)を得、それから、復号器で復号化して、自局のカバー範囲内の移動端末から送信された信号を得る。ここでの復号器は、例えばTurbo復号器やLDPC復号器などのような、ソフト情報復号化をサポートする復号器である。
【0037】
以下、第1基地局BS1、並びに、第1移動端末MS1および第2移動端末MS2がいずれもQAM変調方式を採用することを例として、基地局が第1混合信号と第3混合信号とに基づいて、統合検出を行って、自局のカバー範囲内の移動端末から送信された信号に含まれる各ビットの対数尤度比(LLR)を得る方法について、詳しく説明する。
【0038】
上記のように、第1基地局BS1で取得された信号は、y(1)=h11+h21+zとy(2)=g+zとを含む。第1移動端末MS1で採用されているのはQAM変調方式であれば、第1基地局BS1は、まず、統合検出を行うことで、信号Xで代表するQAMシンボルに含まれる2つのビットb1とb2のLLR情報を得る必要がある。
【0039】
本例では、第1基地局BS1は、下記の数式6によって、信号Xに含まれる2つのビットb1とb2のLLR情報を決定することができる。
【数6】

【0040】
ここで、Sは、特定位置のビットが0である場合に対応するQAM変調コンスタレーションポイントを指し、Sは、特定位置のビットが1である場合に対応するQAM変調コンスタレーションポイントを指す。Sは、QAM変調に含まれる全てのコンスタレーションポイントを表す。
【0041】
さらに、上記の数式6におけるP(y(1),y(2)/x,x)から導出することで、下記の数式7を得ることができる。
【数7】

【0042】
ここで、P(y(1)/x,x)は、下記の数式8によって算出できる。
【数8】

ここで、Nは、雑音の電力スペクトル密度を代表する。
【0043】
また、P(y(2)/x,x)の計算方法は、中継局の受信した第2混合信号に対する処理方式と関係があり、後文で詳しく説明する。
【0044】
上記の方法から分かるように、隣接する基地局の間に中継局を導入し、中継局が、移動端末からの信号を受信した後、受信された信号を処理してから、自局に隣接する基地局へ転送するようにすることにより、基地局は、中継局から転送された移動端末からの信号と、直接に移動端末から受信された信号とに対して、統合復号化を行って、自局の所要データを得ることができる。これにより、セル間干渉の問題を効果的に解決し、セル端ユーザのスループットを向上させる。
【0045】
以下、具体的な実施例を参照しながら、上記方法における中継局RSの受信した第2混合信号に対する処理方法、および、第1基地局BS1が第1混合信号と第3混合信号とに基づいて統合復号化を行う方法について、詳しく説明する。
【0046】
(実施例1)
本実施例において、中継局は、受信された第2混合信号に対して、増幅処理を行ってから転送する。つまり、本実施例において、中継局は、数式X=α・Yによって、受信された第2混合信号を処理し、ここでのαは、中継局の電力増幅因子であり、αの設定について、中継局の電力制限を満足することのみを考慮してもよく、移動端末と中継局との間の最適な電力割当を実現するように、移動端末の電力を同時に考慮してもよい。
【0047】
この場合、第1基地局BS1で取得できる信号は、y(1)=h11+h21+zとy(2)=g+zとを含み、ここで、x=α・y=α・g+α・g+α・zである。
【0048】
第1移動端末MS1と第2移動端末MS2で採用されているのがQAM変調方式であれば、上記の数式7におけるP(y(2)/x,x)は下記の数式9によって算出できると決定できる。
【数9】

【0049】
本実施例では、第1基地局BS1は、上記の数式8と9によって、LLR(b1)とLLR(b2)を算出すると、算出されたLLR(b1)とLLR(b2)を復号器に送信でき、復号化によって、オリジナルデータ情報Xを得ることができる。
【0050】
(実施例2)
本実施例において、中継局は、まず、受信された第2混合信号に対して、雑音除去処理を行い、次に、再変調してから転送する。
【0051】
本実施例における雑音除去処理は、下記の数式10によって実現できる。
【数10】

【0052】
ここで、S(1)とS(2)は、第1移動端末MS1と第2移動端末MS2で採用されている変調コンスタレーションをそれぞれ表し、Smin(1)とSmin(2)は、中継局で推定された、第1移動端末MS1と第2移動端末MS2から送信されたシンボルをそれぞれ代表する。
【0053】
具体的に、第1移動端末MS1と第2移動端末MS2がいずれもQAM変調方式を採用する場合、

が満たされる。
【0054】
中継局は、

を得た後、

に基づいて、受信された第2混合信号における第1移動端末MS1と第2移動端末MS2から送信されたシンボルのコンスタレーション内の位置

を決定でき、それから、例えば16QAMのような、S(1)とS(2)よりも高次な変調コンスタレーションを利用して、受信された第2混合信号を再変調し、xを生成して転送する。
【0055】
このとき、xは、下記の数式11によって生成できる。
【数11】

ここで、

である。
【0056】
この場合、上記の数式7におけるP(y(1)/x,x)は上記の数式8によって算出でき、P(y(2)/x,x)は下記の数式12によって算出できると決定できる。
【数12】

【0057】
本実施例では、第1基地局BS1は、上記の数式8と12によって、LLR(b1)とLLR(b2)を算出すると、算出されたLLR(b1)とLLR(b2)を復号器に送信でき、オリジナルデータ情報を得ることができる。
【0058】
(実施例3)
本実施例において、中継局は、まず、受信された第2混合信号に対して、雑音除去処理を行い、次に、処理後の第2混合信号を圧縮して、最後に転送する。
【0059】
当業者は、移動端末から基地局へのダイレクトリンクのチャネル条件が十分によい場合、基地局は、第1タイムスロットで受信された第1混合信号から一部の情報を取得することがまだ可能であり、そのため、このとき、実施例2における方法を採用して、2つのQAM信号からなる第2混合信号を16QAMに変調してから送信すれば、やはりたくさんのリソースを浪費してしまう、ということを理解できる。上記の要因を考慮すれば、本実施例では、雑音除去後の信号をさらに圧縮してもよい。具体的に、雑音除去後の信号における第1移動端末MS1と第2移動端末MS2から送信された信号のコンスタレーション内の位置

に基づいて、更なるコンスタレーションマッピングを行って、送信しようとする信号xを得ることにより、送信リソースの消耗を減少させるようにしてもよい。
【0060】
本実施例では、上記のコンスタレーションマッピングは、下記の数式13によって完成できる。
【数13】

【0061】
この場合、上記の数式7におけるP(y(1)/x,x)は上記の数式8によって算出でき、P(y(2)/x,x)は上記の数式12によって算出できると決定できる。
【0062】
本実施例では、第1基地局BS1は、上記の数式8と12によって、LLR(b1)とLLR(b2)を算出すると、算出されたLLR(b1)とLLR(b2)を復号器に送信でき、オリジナルデータ情報を得ることができる。
【0063】
(実施例4)
本実施例において、中継局は、中継局と基地局との間のチャネル条件に基づいて、上記の実施例1〜実施例3に係る方式を適応的に選択して、受信された第2混合信号を処理することができる。
【0064】
本実施例において、図3に示すように、中継局が処理方式を適応的に選択する処理フローは、主に、下記のステップを含む。
【0065】
ステップ301で、中継局と基地局との間のチャネル条件に基づいて、受信された第2混合信号に対して雑音除去処理を行う必要があるかどうかを判断し、受信された第2混合信号に対して雑音除去処理を行う必要がある場合、ステップ303を実行し、受信された第2混合信号に対して雑音除去処理を行う必要がない場合、ステップ302を実行する。
【0066】
具体的に、UEと中継局との間の距離と、UEの送信電力とに基づいて、受信された第2混合信号に対して雑音除去処理を行う必要があるかどうかを判断してもよい。
【0067】
ステップ302で、受信された第2混合信号を増幅してから、自局に隣接する基地局に転送する。
【0068】
本ステップでは、受信された第2混合信号を増幅する方法について、上記の実施例1に記載された方法を参照してよい。
【0069】
ステップ303で、受信された第2混合信号に対して雑音除去処理を行ってから、ステップ304を実行する。
【0070】
本ステップでは、第2混合信号に対して雑音除去処理を行う方法について、上記の実施例2に記載された方法を参照してよい。
【0071】
ステップ304で、中継局と基地局との間のチャネル条件に基づいて、雑音除去処理後の第2混合信号を圧縮する必要があるかどうかを判断し、雑音除去処理後の第2混合信号を圧縮する必要がある場合、ステップ305を実行し、雑音除去処理後の第2混合信号を圧縮する必要がない場合、ステップ306を実行する。
【0072】
具体的に、UEと中継局との間の距離と、UEの送信電力とに基づいて、受信された第2混合信号を圧縮する必要があるかどうかを判断してもよい。
【0073】
ステップ305で、雑音除去処理後の第2混合信号を圧縮してから、圧縮後の信号を、自局に隣接する基地局に転送する。
【0074】
本ステップでは、雑音除去処理後の第2混合信号を圧縮する方法について、上記の実施例3に記載された方法を参照してよい。
【0075】
ステップ306で、雑音除去処理後の第2混合信号を再変調してから、自局に隣接する基地局に転送する。
【0076】
本ステップでは、雑音除去処理後の第2混合信号を再変調する方法について、上記の実施例2に記載された方法を参照してよい。
【0077】
このような中継局が処理方式を適応的に選択する場合、基地局も、上記の数式7におけるP(y(1)/x,x)とP(y(2)/x,x)の計算方法を適応的に決定することができる。
【0078】
本実施例では、第1基地局BS1は、上記の数式8と12によって、LLR(b1)とLLR(b2)を算出すると、算出されたLLR(b1)とLLR(b2)を復号器に送信でき、オリジナルデータ情報を得ることができる。
【0079】
上記のセル間干渉除去方法に対応して、本発明の実施例では、上記方法を実現する中継局および基地局も提供されている。
【0080】
図4は、本発明の実施例に係る中継局の内部構成を示す。図4に示すように、本発明の実施例に係る中継局は、第1タイムスロットで、移動端末からの信号を受信する混合信号受信手段と、受信された信号に対して、ネットワーク符号化に基づく処理を行う混合信号処理手段と、第2タイムスロットで、処理後の信号を、自局に隣接する基地局に転送する混合信号転送手段と、を含む。
【0081】
ここで、上記の混合信号処理手段は、上記の実施例1〜4に係る方法のうちの1つを採用して、受信された信号を処理することができる。つまり、上記の混合信号処理手段は、上記の実施例1に係る方法を採用して、受信された信号に対して増幅処理を行う増幅モジュールを含んでよい。あるいは、上記の混合信号処理手段は、上記の実施例2に係る方法を採用して、受信された信号に対して雑音除去処理と再変調処理とをそれぞれ行う雑音除去モジュールと変調モジュールとを含んでよい。またあるいは、上記の混合信号処理手段は、上記の実施例3に係る方法を採用して、受信された信号に対して雑音除去処理と圧縮処理とをそれぞれ行う雑音除去モジュールと圧縮モジュールとを含んでよい。
【0082】
図5は、本発明の実施例に係る基地局の内部構成を示す。図5に示すように、本発明の実施例に係る基地局は、第1タイムスロットで直接に移動端末から受信された混合信号と、第2タイムスロットで中継局から受信された混合信号とに対して、統合検出を行って、自局のカバー範囲内の移動端末から送信された信号に含まれる各ビットの対数尤度比を得る統合検出手段と、自局のカバー範囲内の移動端末から送信された信号に含まれる各ビットの対数尤度比に基づいて、復号化を行って、自局のカバー範囲内の移動端末から送信された信号を得る復号器と、を含む。
【0083】
ここで、上記の統合検出手段は、上記の実施例1〜4に係る方法を採用して、第1タイムスロットで直接に移動端末から受信された混合信号と、第2タイムスロットで中継局から受信された混合信号とに対して、統合検出を行うことができる。
【0084】
以下、中継局を有しない従来の無線通信システムおよび本発明の実施例で提供されているいくつかの方法の、信号対雑音比(SNR)が等価する場合のブロック誤り率をシミュレーションすることにより、本発明の実施例で提供されているセル間干渉除去方法の性能を詳しく説明する。今回のシミュレーションで採用されたシミュレーションパラメータは、下記の表1に示す通りである。
【0085】
【表1】

【0086】
図6(a)と図6(b)は、中継局と移動端末との間の距離が10メートルと50メートルであるとき、中継局を有しない場合および本発明の実施例1〜3に係る方法を採用する場合の信号対雑音比(SNR)とブロック誤り率(BLER)との関係をそれぞれ示す。図6(a)と図6(b)において、四角印の曲線に対応するのは、中継局を有しない場合のSNRとBLERとの関係であり、丸印の曲線に対応するのは、本発明の実施例1に係る方法を採用する場合のSNRとBLERとの関係であり、十字印の曲線に対応するのは、本発明の実施例2に係る方法を採用する場合のSNRとBLERとの関係であり、三角印の曲線に対応するのは、本発明の実施例3に係る方法を採用する場合のSNRとBLERとの関係である。図6(a)と図6(b)から分かるように、異なる信号対雑音比の条件においても、本発明で提供されているセル間干渉除去方法は、中継局を有しない従来の構成より優れている。
【0087】
上記の構成をさらに完備するために、本発明の実施例では、統合データ転送を行う移動端末ペアを如何に選択するか、即ち、前記第1移動端末と第2移動端末とを如何に選択するかという方法も提供されている。該方法は、基地局と移動端末とによって協同して実行することができる。図7に示すように、その具体的なフローは、主に、下記のステップを含む。
【0088】
ステップ701で、移動端末は、本セルと隣接セルの基準信号を測定する。
【0089】
ステップ702で、本セルと隣接セルの基準信号強度の差が所定の基準信号閾値より小さい場合、該移動端末は、本セルの基地局へ、隣接セルのアイデンティティ(ID)と本セルの直送リンクのチャネル条件とを報告する。
【0090】
ステップ703で、基地局は、移動端末に対し、転送リンクを介して転送された本セルの基準信号を測定するよう通知する。
【0091】
ステップ704で、移動端末は、測定して得られた、転送リンクを介して転送された本セルの基準信号から、転送リンクのチャネル条件を得、転送リンクのチャネル条件を本セルの基地局へ報告する。
【0092】
ステップ705で、本セルの直送リンクのチャネル条件と転送リンクのチャネル条件とに基づいて、転送リンクの品質が直送リンクより優れているかどうかを判断し、転送リンクの品質が直送リンクより優れている場合、該移動端末を候補リストに追加する。
【0093】
ステップ706で、自局の候補リスト中の1つの移動端末と、隣接セルの候補リスト中の1つの移動端末とをランダムに選択して、統合データ転送を行う移動端末ペアとする。
【0094】
具体的に、上記の本セルの直送リンクのチャネル条件および転送リンクのチャネル条件は、直送リンクを介して受信されたパイロット信号の強度と、転送リンクを介して受信されたパイロット信号の強度とによって表すことができ、例えば、転送リンクを介して受信されたパイロット信号の強度が、直送リンクを介して受信されたパイロット信号の強度より大きい場合、該移動端末を候補リストに追加することができる。
【0095】
本発明の実施例では、統合データ転送を行う移動端末ペアを選択するほかの方法も提供されている。該方法は、基地局と中継局とによって協同して実行することができる。図8に示すように、その具体的なフローは、主に、下記のステップを含む。
【0096】
ステップ801で、中継局は、隣接セルの移動端末から送信された基準信号を監視する。
【0097】
ステップ802で、2つのセルの移動端末からの基準信号の強度の差が所定の第1閾値より小さくて、かつ、上記2つのセルの移動端末からの基準信号の強度がいずれも所定の第2閾値より大きい場合、中継局は、上記の2つのセルの移動端末からの基準信号のフォーマットを、上記2つのセルの基地局へ通知する。
【0098】
説明すべきものとして、上記の第1閾値と第2閾値は、経験値に基づいて、予め設定してもよい。
【0099】
ステップ803で、上記2つのセルの基地局は、受信された基準信号のフォーマットに基づいて、上記2つのセルの移動端末のIDをそれぞれ決定して、該IDに対応する移動端末を自局の候補リストに追加する。
【0100】
ステップ804で、自局の候補リスト中の1つの移動端末と、隣接セルの候補リスト中の1つの移動端末とをランダムに選択して、統合データ転送を行う移動端末ペアとする。
【0101】
上記の図7と図8に示す方法によって、統合データ転送を行う移動端末ペアを決定することができる。統合データ転送を行う移動端末ペアを決定した後、即ち、第1移動端末と第2移動端末とを決定した後、システムにおける中継局は、上記の実施例における方法を利用して、受信された第1移動端末と第2移動端末からの信号に対して、ネットワーク符号化に基づく処理を行ってから、自局に隣接する基地局へ転送することができる。続いて、基地局は、それぞれ、中継局から転送された信号と、直接に上記の第1移動端末と第2移動端末から受信された信号とに対して、統合復号化を行って、自局の所要データを得る。
【0102】
上記の説明から分かるように、上記の実施例はいずれも、隣接する基地局の間に中継局を設けることにより、干渉除去を実現するものである。実際の応用では、ネットワークに中継局が設けられなくても、一時的に空いている隣接基地局を利用して、それを上記の中継局として、受信された移動端末からの信号に対して、ネットワーク符号化に基づく処理を行ってから、隣接基地局へ転送するようにしてもよい。これにより、本発明に係る干渉除去方法を実現する。図9は、ネットワークトポロジーを示す図である。図9に示すネットワークにおいて、BS1とBS2は2つの隣接する基地局であり、ここで、BS1は、移動端末MS1のサービング基地局であり、BS2は、移動端末MS2のサービング基地局である。BS3は、BS1とBS2のいずれにも隣接する基地局であり、かつ、BS3は、サービスを必要とする移動端末がなく、あるいは、一時的に比較的に空いている。この場合、BS3を中継局として機能するように設定してもよい。つまり、第1ステップで、BS3は、第1タイムスロットで、自局に隣接する基地局BS1とBS2のカバー範囲内の移動端末MS1とMS2から送信された信号を受信し、第2ステップで、BS3は、受信された信号に対して、ネットワーク符号化に基づく処理を行い、最後に、第3ステップで、BS3は、第2タイムスロットで、処理後の信号を、自局に隣接する基地局BS1とBS2に転送する。このようにして、基地局BS1とBS2は、それぞれ、BS3から転送された移動端末MS1とMS2からの信号と、直接に移動端末MS1とMS2から受信された信号とに対して、統合復号化を行って、自局の所要データを得ることができる。これにより、セル間干渉の問題を効果的に解決し、セル端ユーザのスループットを向上させる。
【0103】
このような応用シナリオで、図7と同じ方法、あるいは、図8と類似する方法を採用して、統合データ転送を行う移動端末ペアMS1とMS2とを選択してもよい。説明すべきものとして、図8と類似する方法を採用する場合、中継局に代わって、現時点で空いている基地局によって、図8に示す方法における中継局の機能を実現すればよい。
【0104】
上記の構成によれば、ネットワークに中継局が設けられなくても、一時的に比較的に空いている基地局を利用して、中継局の機能を実現することができる。これにより、セル間干渉の問題を効果的に解決し、セル端ユーザのスループットを向上させる。
【0105】
上記は、本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明を限定するものではない。本発明の精神と原則内で行われる種々の修正、均等置換え、改善などは全て本発明の保護範囲内に含まれるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セル間干渉除去方法であって、
中継局が、第1タイムスロットで、自局に隣接する基地局のカバー範囲内の移動端末から送信された信号を受信し、
中継局が、受信された信号に対して、ネットワーク符号化に基づく処理を行い、
中継局が、第2タイムスロットで、処理後の信号を、自局に隣接する基地局に転送する、
ことを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記中継局が、受信された信号に対して、ネットワーク符号化に基づく処理を行うことは、
前記中継局が、受信された信号に対して、増幅処理を行う、
ことを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記中継局が、受信された信号に対して、ネットワーク符号化に基づく処理を行うことは、
前記中継局が、受信された信号に対して、雑音除去および再変調処理を行う、
ことを含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記中継局が、受信された信号に対して、ネットワーク符号化に基づく処理を行うことは、
前記中継局が、受信された信号に対して、雑音除去処理および圧縮処理を行う、
ことを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記中継局が、受信された信号に対して、ネットワーク符号化に基づく処理を行うことは、
中継局と基地局との間のチャネル条件に基づいて、受信された信号に対して雑音除去処理を行う必要があるかどうかを判断し、受信された信号に対して雑音除去処理を行う必要がある場合、受信された信号に対して雑音除去処理を行ってから、ステップBを実行し、受信された信号に対して雑音除去処理を行う必要がない場合、受信された信号を増幅するステップAと、
中継局と基地局との間のチャネル条件に基づいて、雑音除去処理後の信号を圧縮する必要があるかどうかを判断し、雑音除去処理後の信号を圧縮する必要がある場合、雑音除去処理後の信号を圧縮し、雑音除去処理後の信号を圧縮する必要がない場合、雑音除去処理後の信号を再変調するステップBと、
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
基地局が、第1タイムスロットで、自局および自局に隣接する基地局のカバー範囲内の移動端末から送信された信号を受信し、
基地局が、第2タイムスロットで、中継局から送信された処理後の信号を受信し、
基地局が、自局が第1タイムスロットで受信した信号と第2タイムスロットで受信した信号とに基づいて、統合復号化を行って、自局のカバー範囲内の移動端末から送信された信号を得る、
ことをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記基地局が、自局が第1タイムスロットで受信した信号と第2タイムスロットで受信した信号とに基づいて、統合復号化を行うことは、
基地局が、まず、自局が第1タイムスロットで受信した、自局および自局に隣接する基地局のカバー範囲内の移動端末から送信された信号と、第2タイムスロットで受信した、中継局から送信された処理後の信号とに対して、統合検出を行って、自局のカバー範囲内の移動端末から送信された信号に含まれる各ビットの対数尤度比を得、次に、復号器で復号化して、自局のカバー範囲内の移動端末から送信された信号を得る、
ことを含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記中継局が、受信された信号に対して、ネットワーク符号化に基づく処理を行うことは、前記中継局が、受信された信号に対して、増幅処理を行う、ことを含み、
前記統合検出は、前記基地局が、数式

によって、自局のカバー範囲内の移動端末から送信された信号に含まれる各ビットの対数尤度比を得る、ことを含み、
ここで、P(y(1),y(2)/x,x)=P(y(1)/x,x)・P(y(2)/x,x)であり、P(y(1)/x,x)、P(y(2)/x,x)は、数式



によって算出し、y(1)は、第1基地局BS1が第1タイムスロットで受信した第1混合信号を代表し、y(2)は、第1基地局BS1が第2タイムスロットで受信した第3混合信号を代表し、h11は、第1移動端末MS1から第1基地局BS1へのチャネルの信号インパルス応答を代表し、h21は、第2移動端末MS2から第1基地局BS1へのチャネルの信号インパルス応答を代表し、xとxは、第1移動端末MS1と第2移動端末MS2が第1タイムスロットで送信した信号をそれぞれ代表し、gとgは、第1移動端末MS1と第2移動端末MS2から中継局へのチャネルの信号インパルス応答をそれぞれ代表し、gとgは、中継局から第1基地局BS1と第2基地局BS2へのチャネルの信号インパルス応答をそれぞれ代表し、Nは、雑音の電力スペクトル密度を代表し、αは、中継局の電力増幅因子であり、Sは、特定位置のビットが0である場合に対応するQAM変調コンスタレーションポイントを指し、Sは、特定位置のビットが1である場合に対応するQAM変調コンスタレーションポイントを指し、Sは、QAM変調に含まれる全てのコンスタレーションポイントを表す、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記中継局が、受信された信号に対して、ネットワーク符号化に基づく処理を行うことは、前記中継局が、受信された信号に対して、雑音除去および再変調処理を行う、ことを含み、
ここで、前記雑音除去は、数式

によって実現し、
前記再変調処理は、中継局が、

を得た後、

に基づいて、受信された第2混合信号における第1移動端末MS1と第2移動端末MS2から送信されたシンボルのコンステレーション内の位置

を決定し、それから、S(1)とS(2)よりも高次の変調コンステレーションを利用して、受信された第2混合信号を再変調し、xを生成して転送する、ことを含み、
前記統合検出は、前記基地局が、数式

によって、自局のカバー範囲内の移動端末から送信された信号に含まれる各ビットの対数尤度比を得る、ことを含み、
ここで、P(y(1),y(2)/x,x)=P(y(1)/x,x)・P(y(2)/x,x)であり、P(y(1)/x,x)、P(y(2)/x,x)は、数式



によって算出し、y(1)は、第1基地局BS1が第1タイムスロットで受信した第1混合信号を代表し、y(2)は、第1基地局BS1が第2タイムスロットで受信した第3混合信号を代表し、yは、中継局が第1タイムスロットで受信した第2混合信号を代表し、h11は、第1移動端末MS1から第1基地局BS1へのチャネルの信号インパルス応答を代表し、h21は、第2移動端末MS2から第1基地局BS1へのチャネルの信号インパルス応答を代表し、xとxは、第1移動端末MS1と第2移動端末MS2が第1タイムスロットで送信した信号をそれぞれ代表し、xは、処理後の第2混合信号を代表し、gとgは、第1移動端末MS1と第2移動端末MS2から中継局へのチャネルの信号インパルス応答をそれぞれ代表し、gは、中継局から第1基地局BS1へのチャネルの信号インパルス応答を代表し、Nは、雑音の電力スペクトル密度を代表し、Sは、特定位置のビットが0である場合に対応するQAM変調コンスタレーションポイントを指し、Sは、特定位置のビットが1である場合に対応するQAM変調コンスタレーションポイントを指し、Sは、QAM変調に含まれる全てのコンスタレーションポイントを表し、S(1)とS(2)は、第1移動端末MS1と第2移動端末MS2で採用されている変調コンスタレーションをそれぞれ表し、Smin(1)とSmin(2)は、中継局で推定された、第1移動端末MS1と第2移動端末MS2から送信されたシンボルをそれぞれ代表する、
請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記中継局が、受信された信号に対して、ネットワーク符号化に基づく処理を行うことは、前記中継局が、受信された信号に対して、雑音除去および圧縮処理を行う、ことを含み、
ここで、前記雑音除去は、数式

によって実現し、
前記圧縮処理は、中継局が、

を得た後、

に基づいて、受信された第2混合信号における第1移動端末MS1と第2移動端末MS2から送信されたシンボルのコンステレーション内の位置

を決定し、それから、数式

によって、コンステレーションマッピングを行い、xを生成して転送する、ことを含み、
前記統合検出は、前記基地局が、数式

によって、自局のカバー範囲内の移動端末から送信された信号に含まれる各ビットの対数尤度比を得る、ことを含み、
ここで、P(y(1),y(2)/x,x)=P(y(1)/x,x)・P(y(2)/x,x)であり、P(y(1)/x,x)、P(y(2)/x,x)は、数式



によって算出し、y(1)は、第1基地局BS1が第1タイムスロットで受信した第1混合信号を代表し、y(2)は、第1基地局BS1が第2タイムスロットで受信した第3混合信号を代表し、yは、中継局が第1タイムスロットで受信した第2混合信号を代表し、h11は、第1移動端末MS1から第1基地局BS1へのチャネルの信号インパルス応答を代表し、h21は、第2移動端末MS2から第1基地局BS1へのチャネルの信号インパルス応答を代表し、xとxは、第1移動端末MS1と第2移動端末MS2が第1タイムスロットで送信した信号をそれぞれ代表し、xは、処理後の第2混合信号を代表し、gとgは、第1移動端末MS1と第2移動端末MS2から中継局へのチャネルの信号インパルス応答をそれぞれ代表し、gは、中継局から第1基地局BS1へのチャネルの信号インパルス応答を代表し、Nは、雑音の電力スペクトル密度を代表し、Sは、特定位置のビットが0である場合に対応するQAM変調コンスタレーションポイントを指し、Sは、特定位置のビットが1である場合に対応するQAM変調コンスタレーションポイントを指し、Sは、QAM変調に含まれる全てのコンスタレーションポイントを表し、S(1)とS(2)は、第1移動端末MS1と第2移動端末MS2で採用されている変調コンスタレーションをそれぞれ表し、Smin(1)とSmin(2)は、中継局で推定された、第1移動端末MS1と第2移動端末MS2から送信されたシンボルをそれぞれ代表する、
請求項7に記載の方法。
【請求項11】
統合データ転送を行う移動端末ペアを決定する、
ことをさらに含む請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記統合データ転送を行う移動端末ペアを決定することは、
移動端末が、本セルと隣接セルの基準信号を測定し、
本セルと隣接セルの基準信号の強度の差が所定の基準信号閾値より小さい場合、該移動端末が、本セルの基地局へ、隣接セルのIDと本セルの直送リンクのチャネル条件とを報告し、
基地局が、移動端末に対し、転送リンクを介して転送された本セルの基準信号を測定するよう通知し、
移動端末が、測定して得られた、転送リンクを介して転送された本セルの基準信号から、転送リンクのチャネル条件を得、転送リンクのチャネル条件を本セルの基地局へ報告し、
本セルの直送リンクのチャネル条件と転送リンクのチャネル条件とに基づいて、転送リンクの品質が直送リンクより優れているかどうかを判断し、転送リンクの品質が直送リンクより優れている場合、該移動端末を候補リストに追加し、
自局の候補リスト中の1つの移動端末と、隣接セルの候補リスト中の1つの移動端末とをランダムに選択して、統合データ転送を行う移動端末ペアとする、
ことを含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記統合データ転送を行う移動端末ペアを決定することは、
中継局が、隣接セルの移動端末から送信された基準信号を監視し、
2つのセルの移動端末からの基準信号の強度の差が所定の第1閾値より小さくて、かつ、前記2つのセルの移動端末からの基準信号の強度がいずれも所定の第2閾値より大きい場合、中継局が、前記2つのセルの移動端末からの基準信号のフォーマットを、前記2つのセルの基地局へ通知し、
前記2つのセルの基地局が、受信された基準信号のフォーマットに基づいて、前記2つのセルの移動端末のIDをそれぞれ決定して、該IDに対応する移動端末を自局の候補リストに追加し、
自局の候補リスト中の1つの移動端末と、隣接セルの候補リスト中の1つの移動端末とをランダムに選択して、統合データ転送を行う移動端末ペアとする、
ことを含む請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記中継局は、現時点で空いている基地局によって実現する、
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
中継局であって、
第1タイムスロットで、移動端末からの混合信号を受信する混合信号受信手段と、
受信された混合信号に対して、ネットワーク符号化に基づく処理を行う混合信号処理手段と、
第2タイムスロットで、処理後の混合信号を、自局に隣接する基地局に転送する混合信号転送手段と、
を含むことを特徴とする中継局。
【請求項16】
基地局であって、
第1タイムスロットで直接に移動端末から受信された混合信号と、第2タイムスロットで中継局から受信された混合信号とに対して、統合検出を行って、自局のカバー範囲内の移動端末から送信された信号に含まれる各ビットの対数尤度比を得る統合検出手段と、
自局のカバー範囲内の移動端末から送信された信号に含まれる各ビットの対数尤度比に基づいて、復号化を行って、自局のカバー範囲内の移動端末から送信された信号を得る復号器と、
を含むことを特徴とする基地局。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−81169(P2013−81169A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−210426(P2012−210426)
【出願日】平成24年9月25日(2012.9.25)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】