説明

セレン含有改質剤及びコンジュゲート(Conjugates)

本発明は、水溶性ポリマーを含む改質剤に関し、前記水溶性ポリマーは少なくとも1つの反応性セレン基を有し、前記反応性セレン基はチオール基と反応可能であり、それによって-Se-S-結合を形成する。更に、本発明は、前記改質剤を生産する方法、及び、例えばG-CSFのような薬学活性剤の変性におけるそれらの使用に関する。加えて、本発明は、水溶性ポリマー及び薬学活性剤を有するコンジュゲートに関し、ここで、水溶性ポリマーはS−Se結合を介して薬剤に結合され、それらの生産の方法及び薬剤としてのそれらの使用に関する。最後に、本発明は、進歩性のあるコンジュゲートを含む医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チオール基と、好ましくは、-Se-S-結合を形成するように、薬学活性剤(pharmaceutically active agent)のチオール基と、反応可能な反応性のセレン基の少なくとも1つを含むような、水溶性のポリマーを含む改質剤に関する。更に、本発明は、改質剤を製造する方法及び例えば、G-CSFのような薬学活性剤(pharmaceutically active agent)の改質における前記改質剤の使用及び生産のための方法に関する。加えて、本発明は、薬剤としてのコンジュゲート(conjugates)の生産及び使用のための方法及び薬学活性剤(pharmaceutically active agent)へのS−Se結合を介して結合される水溶性のポリマー並びに薬学活性剤(pharmaceutically active agent)を含むコンジュゲートに関する。最後に、本発明は進歩性のあるコンジュゲートを含む薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
過去数年において、遺伝子組み換えたんぱく質及びペプチドのような薬学活性剤(pharmaceutically active agent)の数は劇的に増加してきた。しかしながら、これらのたんぱく質及びペプチドの多くは、短い生体内半減期、免疫原性、低いタンパク分解抵抗性、又は、低い溶解度のために、治療用途に対して適していない。これらの欠点を克服するため、種々のソリューションが適用された。これらのソリューションの1つは、水溶性ポリマー、特にポリエチレン・グリコールの付加によるたんぱく質及びペプチドの化学的改質(変性)である。このアプローチは、ペグ化として知られるが、たんぱく質の性質の改善において効果的であると証明されてきた。たんぱく質へのPEG鎖の付加は、その分子量を増加させ、かつ、生体内半減期を伸ばす。たんぱく質に包み込まれたPEG鎖は、たんぱく質に関して遮蔽効果を持ち、そして、コンジュゲートのたんぱく質分解劣化及び免疫原性が低下する。
【0003】
PEGは、リジン残基のアミノ基及びN末端アミノ酸のアミノ基を介して、たんぱく質及びペプチドに最も一般的に付加される。たんぱく質の表面の上のリジンの数は通常多く、そして、そのため、リジン・アミノ基のペグ化は、位置異性体及びマルチペグ化形態との複合混合物の形成という結果になる。
【0004】
リジン残基より典型的に生じ難いシステン残基は、部位特異的なペグ化に対する更に好ましい可能性を提供する。異なる反応基を備えるPEG試薬は、遊離チオール残基の改質のために使用されることができる。当該技術分野においては、チオール及びジスルフィド(保護されたチオール)反応基を備えるPEG試薬が提案された。しかしながら、そのようなPEG試薬は、還元環境下で容易に切断され得る、ジスルフィド結合をチオールと形成する。現在、2個の市販PEG試薬が、上述した欠点を有するジスルフィド結合を形成することによって、たんぱく質の改質に対して利用可能である。前記試薬はPEGチオール及びPEGオルソピリジルジスルフィド試薬に基づいており、米国特許公開番号2005/0014903A1に記述されている。同様に、EP1586334においては、G−CSFのCys18のペグ化のためのプロセスが提案されている。しかしながら、このプロセスは、上述した欠点を含む-S-S-結合を有するコンジュゲートへと導く。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それゆえ、本発明の目的は、少なくとも1個の遊離システイン基を含むポリペプチド等のような少なくとも1つのチオール基を含む薬学活性剤(pharmaceutically active agent)の改質のために有利な薬剤(agent)を提供することである。好ましくは、上記改質は可逆であるべきである。
【0006】
特に、本発明の目的は、反応時間が短くなるべく、少なくとも1つのチオール基を含む薬学活性剤(pharmaceutically active agent)の改質のための改質剤を提供することである。加えて、改質剤の低余剰は必要であるべきである。また更に、部位特異的なペグ化が達成されるべきである。
【0007】
本発明の更なる目的は、水溶性ポリマー及び薬学活性剤(pharmaceutically active agent)を含むコンジュゲートを生産する容易なかつ信頼性のあるプロセスを提供することであり、ここで、前記水溶性ポリマーは、前記薬学活性剤(pharmaceutically active agent)のチオール基を介して結合されるべきである。
【0008】
一般的に、市販の入手可能なチオール反応PEG試薬は、アルカリ性の条件下でのみ使用可能であり、ここで、たんぱく質のジスルフィド結合された二量体及び多量体の形成のような通常望ましくない副作用が生ずる。それ故、本発明の更なる目的は、アルカリ条件に比べて、反応レートがより遅いことが予期されるが、酸性の条件下においても使用され得るチオール反応性PEG試薬を提供することである。通常、表面に露出したシステン残基を含むたんぱく質は、ジスルフィド結合された二量体及び多量体に自発的に酸化し得る。この反応は、酸性条件下で遅く、そして、進歩性のある改質剤(agent)との改質反応が酸性のpHで起こり得るということが有利な点である。
【0009】
最後に、本発明の目的は、本発明のコンジュゲートを含む医薬組成物を提供することである。
【0010】
本発明のこれらの目的は、セレン基を、特に、チオール基と反応するセレン基を含む改質剤(modifying agent)を用いることによって、思いがけず解決することができたのである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
それゆえ、本発明の主題は、水溶性ポリマーを含む改質剤(agent)であり、ここで、その水溶性ポリマーは少なくとも1つの反応性セレン基を含み、その反応性セレン基はチオール基(−SH)と反応することが可能なものであり、しかして、セレン―硫黄結合(Se−S−結合)を形成する。
【0012】
上記改質剤(modifying agent)は、以下の2つの必要な特徴を含んでいる。
(1)水溶性ポリマーと、及び
(2)反応性セレン基である。
【0013】
オプションとして、上記改質剤(modifying agent)は、付加的に以下を含む。
(3)連結基(linking group)、ここにおいて、通常、前記連結基は前記水溶性ポリマー及び反応性セレン基とを連結する。
【0014】
上記各特徴(1)、(2)、及び(3)に関して、以下ようなことが述べられる。
【0015】
水溶性ポリマー(1)は25℃において、水に可溶である任意のポリマーである。典型的には水溶性ポリマーは、水の中で少なくとも約40%(重量で)可溶であり、より好ましくは水の中で少なくとも約55%(重量で)可溶であり、より好ましくは水の中で約75%(重量で)可溶であり、特に好ましくは水の中で約90%(重量で)可溶である。最も好ましくは、水溶性ポリマー又はセグメントが水の中で約95%(重量)可溶であるか、或いは、水の中で完全に可溶でありことである。ここで、全ての可溶性データは25℃でのものである。
【0016】
前記可溶性ポリマー(1)は、例えば、線形、分枝状、多分岐状、及び、マルチアーム状等のような、種々の幾何学形状を有することができる。線形構造を有する水溶性ポリマーが好ましい。前記水溶性ポリマーは、単官能基、ホモ2官能基、及びヘテロ2官能基ポリマーを含むことができる。
【0017】
例えば、ポリエチレン・グリコールのような水溶性ポリマー(1)は、通常、300から100,000ダルトン(Da)、好ましくは、1000から60,000ダルトン、より好ましくは、6000から40,000ダルトン、特に好ましくは、10,000から40,000ダルトンの重量平均分子量を有している。好ましい実施例においては、前記ポリマーは、20,000から40,000ダルトンの範囲の分子量を有している。1個の好ましいポリマーは、約20,000ダルトンの分子量を有している。
【0018】
妥当な水溶性ポリマー(1)のための例は、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリオール(例えば、ポリエーテル・ポリオール若しくはポリエステル・ポリオール)、ポリエチレン・グリコール(PEG)のようなポリアルキレン・オキシド、セルロース、スクロース、ヒドロキシアルキル・スターチ(HAS)、及びヒドロキシエチル・スターチ(HES)である。
【0019】
好ましい実施例においては、前記水溶性ポリマーはヒドロキシアルキル・スターチ(HAS)若しくは特にヒドロキシエチル・スターチ(HES)である。本発明の文脈においては、用語「ヒドロキシアルキル・スターチ」は、ヒドロキシアルキル基によって置換されたスターチ誘導体(starch derivatives)を示している。この文脈では、前記アルキル基は、置換されてもよい。好ましくは、前記ヒドロキシアルキルは、2から10の炭素原子、より好ましくは、2から4個の炭素原子を含んでいる。それ故、「ヒドロキシアルキル・スターチ」は、好ましくは、ヒドロキシエチル・スターチ、ヒドロキシプロピル・スターチ、そして、ヒドロキシブチル・スターチを含むが、ここで、ヒドロキシエチル・スターチ及びヒドロキシプロピル・スターチが好ましい。HASのヒドロキシアルキル基は、少なくとも1つのOH基を含んでいる。「ヒドロキシアルキル・スターチ」との表現は、各誘導体をも含み、前記アルキル基は一置換若しくは多置換される。この文脈において、前記HASが水に可溶であるとすれば、前記アルキル基は、ハロゲン、特にフッ素、で置換されるか、若しくは、アリール基で置換されることが好ましい。更にまた、ヒドロキシアルキルの末端ヒドロキシ基は、エステル化されるか若しくはエーテル化されてもよい。また、ヒドロキシアルキル・スターチのアルキル基は、線形若しくは分岐されてもよい。更に、アルキルの代わりに、線形若しくは分岐した、置換若しくは非置換のアルケン基が使用されてもよい。
【0020】
ヒドロキシエチル・スターチ(HES)は、本発明の文脈において、好ましいHASである。このヒドロキシエチル・スターチ(HES)は、自然に生ずるアミロペクチンの誘導体であり、体内においてα―アミラーゼによって劣化される。HES−タンパク質―コンジュゲートの調製は、現在の技術において記述されている(例えば、DE2616086若しくはDE2646854におけるHES−ヘモグロビン―コンジュゲートを参照)。HESは、単位重量あたり95%までの濃度で、コーン・スターチ内に存在する、炭水化物ポリマー・アミロペクチンの置換された誘導体である。HESは、有利な生物学的な性質を示し、クリニックにおいて血液希釈治療において、そして、血液量の置換薬剤(bloodvolume replacement agent)として使用される。アミロペクチンは、ぶどう糖部分(glucose moieties)から構成され、ここで、主たる鎖において、α−1,4−グリコシド結合(α-1,4-glycosidic bonds)が存在し、分岐部分においてはα−1,6−グリコシド結合(α-1,6-glycosidic bonds)が見出される。この分子の物理化学的性質は、グリコシド結合のタイプによって主に決定される。ギザギザのα−1,4−グリコシド結合のため、一回転あたりの約6個のグルコース単量体を備える螺旋構造体が生産される。
【0021】
本発明の文脈において、ヒドロキシエチル・スターチは、1−300kDaの平均分子量(重量平均)を有してもよいが、ここで、5−100kDaの平均分子量がより好ましい。ヒドロキシエチル・スターチは、更に、ヒドロキシエチル基に対して、0.1から0.8のモル置換度、及び、C2対C6−置換の比を2−20の範囲内に示すことができる。
【0022】
より好ましい実施例において、前記水溶性ポリマーは、ポリアルキレン・オキシド、特にポリエチレン・グリコール(これ以降、PEGと称する)である。ここで使用されるような「PEG」若しくは「ポリエチレン・グリコール」は、2つの以下の構造:「−(CHCHO)−」又は「−(CHCHO)−CHCH−」のいずれか1つを含む。変数「n」は、3から4000、好ましくは、10から3500、より好ましくは、55から2500、一層より好ましくは、80から1500、特に好適には、150から900の範囲に亘っている。もしPEGが分岐される場合には、上記−(CHCHO)−鎖は、1又はそれ以上の分岐単位で、中断され得る。
【0023】
前記PEG残基は、例えば、単官能基の、二官能基の、又は、多官能基のもので在り得る。PEGが単官能基である(このことは好ましい)場合には、PEG残基は、末端キャップ部分(end-capping moiety)Rを含むが、このとき、PEGが、R−(CHCHO)−となる。ここで、Rは、例えば水素、水酸基、又は、C−C20のアルコキシル基となり得る。好ましくは、Rは、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、又は、ベンジルオキシ基であるが、メトキシ基が特に好適である。
【0024】
更に、PEGは、線形及び分岐される得る。もしPEGが分岐するならば、上述した線形構造は、分岐ユニットによって中断される。
【0025】
一般的に、反応性セレン基(2)は、従来の条件下において、実用的な速度又は直ちに反応する任意のセレン基である。本発明において、反応性セレン基(2)は、チオール基(−SH)と反応することが可能であり、それによって、Se−S結合を形成する。
【0026】
好ましい実施例において、反応性セレン基(2)は、二セレン(diselenide)化基(−Se−Se−)、セレノ亜硫酸塩(selenosulfide)基(−SeSO)、セノール(selenol)基(−SeH)、又は、セレノアート(selenoate)基(−Se-)を含む。より好ましくは、反応性セレン基(2)は、二セレン化基(−Se−Se−)、又は、セレノ亜硫酸塩基(−SeSO)を含む。
【0027】
オプションとして、本発明の改質剤(modifying agent)は更に連結基(linking group)(3)を更に含む。用語「連結基(linking group)」は、相互に結合する部分(interconnecting moieties)を連結するために、好ましくは水溶性ポリマーと反応性セレン基とを連結するために、オプションとして使用される原子又は原子の集合体を意味するようにここでは使用される。本発明の連結基は、好ましくは、加水分解に対して安定である。
【0028】
通常、連結基は、1から10個の橋架け原子、好ましくは、2から6個の橋架け原子を含むが、ここで、これらの橋架け原子は、オプションとして、例えばアルキル又はアルコキシ残基のような側鎖を含んでもよい。
【0029】
適切な連結基の例は、-CH-、-CH-CH-、-CH-CH-CH-、-CH-CH-CH-CH-、-O-CH-、-CH-O-、-O-CH-CH-、-CH-O-CH-、-CH-CH-O-、-O-CH-CH-CH-、-CH-O-CH-CH-、-CH-CH-O-CH-、-CH-CH-CH-O-、-O-CH-CH-CH-CH-、-CH-O-CH-CH-CH-、-CH-CH-O-CH-CH-、-CH-CH-CH-O-CH-、-CH-CH-CH-CH-O-、-CO-NH-CH-CH-CH-CH-、-CH-CO-NH-CH-CH-CH-、-CO-NH-CH-、-CO-NH-CH-CH-、-CH-CO-NH-CH-、-CH-CH-CO-NH-、-CO-NH-CH-CH-CH-、-CH-CO-NH-CH-CH-、-CH-CH-OO-NH-CH-、-CH-CH-CH-CO-NH-、-CH-CH-CO-NH-CH-CH-、-CH-CH-CH-CO-NH-CH-、-CH-CH-CH-CO-NH-CH-CH-、-CH-CH-CH-CH-CO-NH-、-CO-O-CH-、-CH-CO-O-CH-、-CH-CH-CO-O-CH-、-CO-O-CH-CH-、-O-CO-NH-CH-CH-、-NH-CH-、-NH-CH-CH-、-CH-NH-CH-、-CH-CH-NH-CH-、-CO-CH-、-CO-CH-CH-、-CH-CO-CH-、-CH-CH-CO-CH-、-CH-CH-CO-CH-CH-、-CH-CH-CO-、-NH-CO-CH-、-CH-NH-CO-CH-、-CH-CH-NH-CO-CH-、-NH-CO-CH-CH-、-CH-NH-CO-CH-CH-、-CH-CH-NH-CO-CH-CH-、-CO-NH-CH-、-CO-NH-CH-CH-、-O-CO-NH-CH-、及び、上述の任意の2個若しくはそれ以上の組み合わせである。
【0030】
好ましくは、連結基は-CO-NH-CHR-CH-であり、ここで、Rは、水素、カルボキシル基、又は、C−Cアルキル基であり、特にRは水素又はカルボキシル基である。
【0031】
本発明の好適な実施例の主題は、以下の式I又はIIに記述されたような構造を有する改質剤(modifying agent)である。
【化1】

【0032】
ここで、上式において、Pは水溶ポリマーであり、そして、Lは連結基である。好ましくは、P及びLは、上述したように、夫々水溶性ポリマー及び連結基から選択される。特に、PはPEG残基であり、そして、Lは-CO-NH-CHR-CH-であるが、ここで、Rは水素、カルボキシル基、又は、C−Cアルキル基のいずれかであり、特に、Rは水素又はカルボキシル基である。
【0033】
上述したように、水溶性ポリマーは、二官能基、又は、多官能基のものであり得る。従って、本発明の主題は、また、式Ia又はIIaにおいて記述されるような構造を有する改質剤(modifying agent)でもある。
【化2】

【0034】
上記式において、Pは水溶性ポリマーであり、Lは連結基であり、そして、nは2から10の数である。好ましくは、P及びLは、上述したように、夫々、水溶性ポリマー及び連結基から選択される。また、nは、好ましくは2、3、又は4であり、特に、2が好ましい。特に、PはPEG残基であり、Lは−CO−NH−CHR−CH−であるが、ここで、Rは水素、カルボキシル基、又は、C−Cアルキル基であり、特に、Rは水素又はカルボキシル基である。
【0035】
本発明の特に好ましい実施例の主題は、式III又はIVにおいて記述されているような構造を有する改質剤(modifying agent)である。
【化3】

【0036】
上記式において、PEGはポリエチレン・グリコールであり、Rは水素、カルボキシル基、又は、C−Cアルキル基である。PEGの上述した好ましい実施例(例えば、分子量、末端キャップ基(end-capping groups))は、また化学式III及びIVにおけるPEGに対して適用する。
【0037】
本発明の更なる主題は、上述する進歩性のある改質剤(modifying agents)を生産するためのプロセスでもある。
【0038】
従って、本発明は、進歩性のある改質剤(modifying agent)を生産するためのプロセスを含み、以下の工程を含む。
(i)式Vの化合物を供給する工程、
【化4】

【0039】
ここで、Aは官能基であり、そして、Lは連結基である。
(ii)活性化された水溶性ポリマーと、式Vの化合物とを反応させる工程、そして
(iii)オプションとして、工程(ii)の生産物がスルフィトリシス反応(sulfitolysis reaction)を受ける工程。
【0040】
工程(ii)の結果である生成物は、化学式I、Ia、及びIIIによるそれぞれの化合物に対応する。付加的な反応工程(iii)の結果である生成物は、化学式II、Ha、及び、IVによるそれぞれの化合物に相当する。
【0041】
進歩性のあるプロセスの工程(i)において、式Vによる化合物が生成される。式Vよる化合物は、二セレン化結合、2つの連結基L、及び2つの官能基Aを含む。
【0042】
連結基Lに関しては、上述した好ましい実施例に言及される。好ましくは、連結基は-CHR-CH-であり、ここでRは水素、カルボキシル基、又は、C-Cアルキル基であり、特に、水素又はカルボキシル基である。
【0043】
官能基Aは、活性化された水溶性ポリマーと反応可能であり、そして、好ましくは安定な連結を形成することができる。官能基Aは、好ましくは、アミノ基、ヒドロキシル基、及び、カルボキシル基から選択される。最も好ましくは、官能基Aは、第一級アミノ基で、即ち、Aは-NHである。
【0044】
式Vによる化合物は、「活性化された水溶性ポリマー」と工程(ii)において反応する。用語の活性化された水溶性ポリマーは、上記定義された如何なる水溶性ポリマーをも含み、式Vの上記定義された官能基Aと反応可能である1つ又はそれ以上の基を含む。反応基に対する例は、N-ヒドロキシこはく酸イミドエステル(N-hydroxy-succinimide esters)、ジクロロトリアジン(dichlorotriazine)、トレシレート(tresylate)、スクシンイミジル炭酸塩(succinimidyl carbonate)、ベンゾトリアゾール炭酸塩(benzotriazole carbonate)、p-ニトロフェル炭酸塩(p-nitrophenyl carbonate)、トリクロロフェル炭酸塩(trichlorophenyl carbonate)、カルボニルイミダゾール(carbonilimidazole)、イソシアネート(isocyanate)、イソチオシアネート(isothiocyanate)、及び、アルデヒド反応基(aldehyde reactive group)である。
【0045】
好ましくは、工程(ii)において、活性化されたPEGが使用され、即ち、N-ヒドロキシこはく酸イミドエステル(N-hydroxysuccinimide esters)、ジクロロトリアジン(dichlorotriazine)、トレシレート(tresylate)、スクシンイミジル炭酸塩(succinimidyl carbonate)、ベンゾトリアゾール炭酸塩(benzotriazole carbonate)、p-ニトロフェル炭酸塩(p-nitrophenyl carbonate)、トリクロロフェル炭酸塩(trichlorophenyl carbonate)、カルニルイミダゾール(carbonilimidazole)、アルデヒド反応基(aldehyde reactive group)を持つPEG試薬が使用される。特に、N-ヒドロキシコハク酸イミドエステル残基(N-hydroxysuccinimide ester residue)で活性化されるポリエチレン・グリコール(polyethylene glycol)(以降PEG-NHSと称する)が用いられる。
【0046】
好ましい実施例に関して、以下の点が指摘される。式Vの官能基Aがアミノ基である場合、「活性化された水溶性ポリマー」(好ましくは、活性化されたPEG)は1つ又はそれ以上のアミノ反応性基(amino-reactive groups)を含む。もし「A」がカルボキシル基であれば、「活性化された水溶性ポリマー」は1つ又はそれ以上のヒドラジド基(hydrazide groups)を含む。もし「A」がヒドロキシル基であれば、「活性化された水溶性ポリマー」は1つ又はそれ以上のイソシアネート基(isocyanate groups)を含んでいる。上述の代わりとして、反対のアプローチもまた可能である。即ち、活性化された水溶性ポリマー(好ましくは、活性化されたPEG)は、アミノ基、ヒドロキシル基、又は、カルボキシル基を持ち、そして、「A」は、活性化された水溶性ポリマーに対して上述したように適した官能基である。
【0047】
故に、工程(i)における進歩性のあるプロセスの好ましい実施例においては、式VIによる化合物が生産される。
【化5】

【0048】
ここで、上記の式において、Rは水素又はカルボキシル基であり、工程(ii)において、式VIによる化合物はPEG-NHSと反応する。式VIによる化合物は、式Vによる化合物のより特定的な実施例である。
【0049】
セレノシステイン(selenocystine)(R=COOH)又はセレノシスタミン(selenocystamine)(R=H)は、式VIによる化合物として使用されることが特に好ましい。
【0050】
カップリング反応(ii)は、水溶液又は非水溶液内においてなされ得る。pHは、6から10の範囲に亘り、好ましくは、7.5から8.5の範囲に亘ってよい。その反応は、例えば、10から50℃で、好ましくは20から30℃で、なされ得る。その反応時間は、例えば、1時間から20時間の間で変化するかもしれない。
【0051】
セレノシスタミン(selenocystamine)は、水溶液内において容易に分解するが、例えば1Mの水酸化カリウム(KOH)のアルカリ溶液によって、セレノシスタミン(selenocystine)の遅い分解速度が好ましくは増加可能である。しかしながら、PEG-NHSとの反応に対しては、溶液のpHは減少させらなければならない。カップリング反応が終了すると、残滓セレノシステイン(residual selenocystine)は、限外濾過(ultrafiltration)によって、又は、有機相抽出によって、混合物から除去可能である。後者は、固体の形態でPEG混合物の分離を提供する。一般に、非反応のPEG-NHSは、時間と共に加水分解し非反応性形態となるため、除去される必要はない。二置換のセレノシステイン(disubstituted selenocystine)又はセレノシスタミン(selenocystamine)の量は、SDS-ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって、又は、逆相クロマトグラフィー(RP−HPLC)によって定性的に見積もることができる。工程(ii)の反応生成物質(以降(PEG-Se)とも称する)が出発物質(PEG-NHS)の2倍の大きさであるので、両方法が適用可能である。
【0052】
反応工程(i)及び(ii)を含む好ましい実施例は、以下に示される反応スキームにより図解される。
【化6】

【0053】
ここで、Rは好ましくはH又はCOOHである。
【0054】
付加的な反応工程(iii)において、二セレン化基(diselenide group)を含む改質剤(modifying agent)は、セレノ亜硫酸塩基(selenosulfite group)を含む改質剤(modifying agent)を生じるように反応させられ得る。
【0055】
反応(iii)は、いわゆるスルフィトリシス(sulfitolysis)である。この反応工程(iii)を実行するために、スルフィトリシス試薬(sulfitolysis reagents)が使用され得る。適切なスルフィトリシス試薬(sulfitolysis reagent)は、NaSO及びNaを混合することによって調整されてもよい。この反応は、水溶液内で実施可能である。この溶液は好ましくは緩衝される。pHは、7から10、好ましくは8から9の範囲になってもよい。この反応は、例えば、10から50℃、好ましくは20から30℃で行われ得る。反応時間は、例えば、1時間から20時間の間で変化するかもしれない。
【0056】
単量体型(=PEG・SeSO-)の形成は、例えば、SDS−PAGEによってモニタ可能である。反応が終了すると、低分子量試薬は、限外濾過(ultrafiltration)によって除去し得る。
【0057】
反応工程(i)から(iii)を含む好ましい実施例は、以下に示される反応スキームによって図解される。
【化7】

【0058】
ここで、Rは好ましくはH又はCOOHである。
【0059】
改質剤(modifying agents)の双方の形態(2量体的なもの、即ち工程(ii)の反応生成物並びに単量体的なもの、即ち工程(iii)の反応生成物)は、例えばPEG―NHS試薬のような活性化された水溶性ポリマーの未反応分と関連する不純物を含んでもよい。これらの不純物は、例えばチオール含有タンパク質のようなチオール含有活性薬剤(thiol containing active agents)のペグ化反応のような、抱合反応(conjunction reaction)において、干渉しないので、除去される必要がない。
【0060】
オプションとして、未反応の活性化された水溶性ポリマーは、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー若しくは逆相クロマトグラフィーから選択されるように、異なるクロマトグラフィー技術を用いることによって除去可能である。セレンノシスティン(selenocystine)から調整された二量体Se―PEG試薬、及び、単量体Se―PEG試薬の場合、イオン交換クロマトグラフィーは、負電荷の存在のため、使用され得る。セレノシスタミン(selenocystamine)から調製された二量体Se―PEG試薬は、サイズ排除クロマトグラフィー若しくは逆相クロマトグラフィーによって効果的に精製され得る。
【0061】
本発明の改質剤(modifying agents)は、チオール基を含む薬学活性剤(pharmaceutically active agent)に、好ましくはポリペプチドのシステイン残基に、水溶性ポリマーを付加するために使用され得る。水溶性ポリマーがPEGである場合、改質剤(modifying agent)は、チオール基を含む薬学活性剤(pharmaceutically active agent)のペグ化のため、特にポリペプチドのシステイン残基のペグ化のために、使用され得る。好ましくは、本発明の改質剤(modifying agent)はG−CSFのペグ化のために使用されるが、ここで、特にG−CSFのCys18がペグ化され、より詳しくはモノペグ化される。
【0062】
その結果、本発明の主題は、チオール基を含む薬学活性剤(pharmaceutically active agent)及び水溶性ポリマーを更に含むコンジュゲート(conjugate)であるが、ここで、水溶性ポリマーは薬学活性剤(pharmaceutically active agent)にS−Se結合を介して連結される。
【0063】
故に、本発明の更なる主題は、本発明のコンジュゲート(conjugate)の調製のためのプロセスでり、以下の工程を含む。
(i)少なくとも1つの遊離チオール基(free thiol group)を持つ薬学活性剤(pharmaceutically active agent)を供給し、そして、
(ii)前記薬学活性剤(pharmaceutically active agent)を本発明による改質剤(modifying agent)と反応させる。
【0064】
このことは、遊離チオール基を持つアミノ酸、ペプチド、又は、タンパク質のようなチオール基を含む薬学活性剤(pharmaceutically active agent)が、進歩性のある改質剤(modifying agents)と反応できることを意味する。この反応によって、以下のスキームに図解されるように、セレニルスルフィド結合(selenylsulfide bond)を介して、共有結合が形成される。
【化8】

【0065】
Aは薬学活性剤(pharmaceutically active agent)、好ましくは、遊離システイン残基を有するポリペプチドである。
【0066】
水溶性ポリマーが二官能基の又は多官能基の場合、類似の反応が生ずるかもしれない。以下の反応スキームを参照。
【化9】

【0067】
Aは、薬学活性剤(pharmaceutically active agent)、好ましくはポリペプチド、であり、遊離システイン残基を持つ。nは自然数であり、好ましくは2から10であり、より好ましくは2、3、又は、4である。
【0068】
一般に、用語「薬学活性剤(pharmaceutically active agent)」は、インビボ又はインビトロにおいて実証でき得る薬理学的な、好ましくは有益な、効果を提供する如何なる薬剤、薬、化合物、組成物、又は、混合物を意味する。
【0069】
薬学活性剤(pharmaceutically active agent)の一般的な例は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体及び抗体の誘導体、多糖類、ステロイド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、脂肪、電解質、及び、それらの混合物である。
【0070】
アスパラギナーゼ(aspariginase)、アムドキソビル(amdoxovir)(DAPD)、べカプレミン(becaplermin)、ビスホスホネート(bisphosponates)、カルシトニン(calcitonins)、シアノビリン(cyanovirin)、デニロイキン(denileukin)、ジフチトクス(diftitox)、エリスロポエチン(erythropoietin)(EPO)、赤血球生成刺激剤(erythropoiesis stimulating protein)(NESP)、例えば、因子V(Factor V)、因子VII(Factor VII)、因子ViIa(Factor VIIIa)、因子VIII(Factor VIII)、因子IX(Factor IX)、因子X(Factor X)、因子XII(Factor XII)、因子XIII(Factor XIII)、ヴォン・ヴィレブランド因子(von Willebrand factor)のような凝固因子(coagulation factors)、セレデース(cere-dase)、セレザイム(cerezyme)、アルファグルコシダーゼ(alpha-glucosidase)、コラーゲン(collagen)、スクロスポリン(cyclosporin)、アルファ・ディフェンシンス(alpha defensins)、ベータ・ディフェンシンス(beta defensins)、エキセンディン・フォー(exedin-4)、顆粒球コロニー刺激因子(granulocyte colony stimulating factor)(G−CSF)、トロンボポエチン(thrombopoietin)(TPO)、アルファ・ワン・プロテナーゼ・インヒビター(alpha-1 proteinase inhibitor)、エルカトニン(elcatonin)、顆粒球マクロファージ・コロニー刺激因子(granulocyte macrophage colony stimulating factor)(GM−CSF)、フィブリノゲン(fibrinogen)、卵胞刺激ホルモン(follicle stimulating hormone)(FSH)、ヒト成長ホルモン(human growth hormone)(hGH)、成長ホルモン放出ホルモン(growth hormone releasing hormone)(GHRH),GRO−ベータ(GRO-beta)、GRO−ベータ抗体(GRO-beta antibody)、酸性線維芽細胞増殖因子(acidic fibroblast growth factor)、塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor)、CD−40リガンド(CD-40 ligand)、へパリン(heparin)、ヒト血清アルブミン(human serum albumin)、例えばインターフェロン・アルファ(interferon alpha)、インターフェロン・ベータ(interferon beta)、インターフェロン・ガンマ(interferon gamma)、インターフェロン・オメガ(interferon omega)、インターフェロン・タウ(interferon tau)、コンセンサスインターフェロン(consensus interferon)のようなインターフェロン(interferons)、例えばインターロイキン−1・レセプター(interleukin-1 receptor)、インターロイキン−2(interleukin-2)、インターロイキン−2融合タンパク質(inter-leukin-2 fusion proteins)、インターロイキン−1レセプター・アンタゴニスト(interleukin-1 receptor antagonist)、インターロイキン−3(interleukin-3)、インターロイキン−4(interleukin-4)、インターロイキン−4・レセプター(interleukin-4 receptor)、インターロイキン−6(interleukin-6)、インターロイキン−8(interleukin-8)、インターロイキンー12(interleukin- 12)、インターロイキン−13・レセプター(interleukin-13 receptor)、インターロイキン−17・レセプター(interleukin- 17 receptor)のようなインターロイキン・レセプター(interleukin receptors)やインターロイキン(interleukins)、インシュリン(insulin)、低分子量へパリン(low molecular weight heparin)(LMWH)、プロインシュリン(pro-insulin)、インフルエンザ・ワクチン(influenza vaccine)、インシュリンのような成長因子(insulin-like growth factor)(IGF)、インシュリントロピン(insulintropin)、マクロファージ・コロニー刺激因子(macrophage colony stimulating factor)(M−CSF)、モノクローナル抗体(monoclonal antibodies)、例えばアルテプラーゼ(alteplase)、ウロキナーゼ(urokinase)、レテプラーゼ(reteplase)、ストレプトキナーゼ(streptokinase)、パミテプラーゼ(pamiteplase)、ラノテプラーゼ(lanoteplase)及びテネテプラーゼ(teneteplase)のようなプラスミノゲン活性化因子(plasminogen activators)、神経成長因子(nerve growth factor)(NGF)、オステオプロテジェリン(osteoprotegerin)、血小板由来成長因子(platelet-derived growth factor)、組織成長因子(tissue growth factors)、トランスフォーミング成長因子−1(transforming growth factor-1)、血菅内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor)、白血病抑制因子(leukemia inhibiting factor)、ケラチン化成長因子(keratinocyte growth factor)(KGF)、グリアル成長因子(glial growth factor)(GGF)、T−細胞レセプター(T-cell receptors)、CD分子/抗原(CD molecules/antigens)、腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor)(TNF)、球送化性タンパク質−1(monocyte chemoattractant protein-1)、血菅肉皮増殖因子(endothelial growth factors)、上皮小体ホルモン(parathyroid hormone)(PTH),又は、それらの混合物である。上述した活性化剤は、遊離チオール基を含むか、又は、それらが遊離チオール基を含むようなやり方で改質されることが必要である。「遊離チオール基」は、ジスルフィド結合を介して他のチオール基に連結されていないチオール基(−SH)を意味する。
【0071】
抗体のための例としては、例えばHER2(例えば、トラスツズマブ(trastuzumab))、VEGF(例えば、ベバシズマブ(bevacizumab)),EGF(例えば、セツキシマブ(cetuximab)),CD20(例えば、リツキマブ(rituximab))、TNF(例えば、インフリキシマブ(infliximab)、アダリムマブ(adalimumab))に対する抗体が知られている。抗体の誘導体のための例も知られており、免疫グロブリンFc融合タンパク質(immune globulin Fc fusion proteins)(例えば、エタネルセプト(etanercept))、又は、Fabフラグメント(Fab fragments)(例えば、ラニミズマブ(ranibizumab))を有している。
【0072】
好ましくは、薬学活性剤(pharmaceutically active agents)は、好ましくはポリペプチドのシステイン残基に属する、少なくとも1つの遊離チオール基を備えるポリペプチドである。このことは、チオール基は、自然に存在する不対システィン残基に属し得るが、タンパク質構造に化学的に若しくは遺伝子的に導入され得ることを意味する。その代わりとして、遊離チオール基は、タンパク質のジスルフィド結合の還元によっても達成可能である(もし、このジスルフィド結合がタンパク質の望ましい生物学的な活性度のために必要でないならば)。
【0073】
好ましいポリペプチドの例は、EPO、IFN−[アルファ]、IFN−[べータ]、IFN−[ガンマ]、コンセンサス(consensus)IFN、因子VII、因子VIII、因子IX、G−CSF、GM−CSF、hGH、インシュリン、FSH、PTH、又は、それらの混合物である。特にG−CSFが好ましい。その代わりとして、EPOが特に好ましい。
【0074】
一般的に、本発明は、一次構造的形態(即ち、アミノ酸残基の連続的な配列)の一部又は全てと、1又はそれ以上の生物的な性質(例えば、免疫的性質及びインビトロ生物的活性)及び物理的な性質(例えば、分子量)とを有する精製され単離されたポリペプチドを好ましくは用いる。これらのポリペプチドは、遺伝子合成によって、又は、ゲノムの若しくはcDNAのクローニングによって、得られる外因性のDNA配列の原核生物若しくは真核生物宿主発現(procaryotic or eucaryotic host expression)(例えば、培養液中のバクテリア、イースト、高等植物、昆虫及び哺乳類細胞によって)の化学的な合成方法の生産物であることによっても特徴付けられる。典型的なイースト(例えば、サッカロマイセス・セルビシエ(Saccaromyces cerevisiae))、若しくは、プロカリオート(procaryote)[例えば、エシェリキア(Escherichia coli)(大腸菌)]ホスト細胞の生成物は、如何なる哺乳動物のタンパク質とも関連していない。脊椎動物(例えば、ヒトでない哺乳類及び鳥類)細胞における微生物発現の生産物は、如何なるヒトタンパク質と関連していない。用いられるホストに依存して、本発明に使用されるポリペプチドは、哺乳動物若しくは他の真核性の炭水化物とグリコシル化されてもよく、又は、非グリコシル化されてもよい。本発明のポリペプチドは、イニシャル・メチオニン・アミノ酸残基(initial methionine amino acid residue)(位置−1における)を含んでもよい。
【0075】
特に、大腸菌内において生産される遺伝子組換えヒトグラニュロシティコロニー刺激因子(recombinant human granulocyte-colony stimulating factor)(G−CSF)が使用される。好ましいG−CSFのアミノ酸配列はSEQ ID No.1に示される。SEQ ID No.1に示されるアミノ酸配列は、好ましくはグリコシル化されておらず、フィルグラスチム(Filgrastim)として市販されている。その代わりとして、特に真核生物宿主発現によって生ずる遺伝子組換えヒトグラニュロシティコロニー刺激因子(recombinant human granulocyte-colony stimulating factor)(G−CSF)が使用される。この好ましい実施例のアミノ酸配列は、Met1が存在しないならば、SEQ ID No.1において示されるものと同じである。加えて、この好ましい実施例のポリペプチドは、グリコシル化され、レノグラスチム(Lenograstim)として市販される。
【0076】
さらに好ましい実施例において、エリスロポエチン(erythropoietin)(EPO)及びその誘導体も使用されてよい。そのようなEPOは、当該技術分野において周知である。エリスロポエチン(Erythropoietin)は、約34kDaの酸性グリコプロテインホルモン(acid glycoprotein hormone)である。ヒトエリスロポエチン(Human erythropoietin)は、単量体として自然に存在する166アミノ酸ポリペプチドである(Lin et al., 1985, PNAS 82, 7580-7584, EP148605 B2, EP411678 B2)。
【0077】
本発明の文脈において使用されるEPOは、如何なるヒト由来若しくは他の哺乳類由来であり得るが、ヒトの腎臓、胚ヒト肝臓(embryonic human liver)、又は、動物、好ましくは猿の腎臓、のような自然に生ずる源から精製により得る事ができる。好ましくは、EPOは遺伝子組み換え的に生産される。これは、真核生物若しくは原核生物細胞、好ましくは哺乳類、昆虫、イースト、植物、バクテリア細胞内における、或いは、EPOの遺伝子組換え生産物のために便利である如何なる他の細胞タイプ内における生産物を含んでいる。また、EPOは、トランスジェニック動物(transgenic animals)内において(例えば、乳液、血液等の体液内において)、特に家禽類、好ましくは鶏のような、トランスジェニック鳥類の卵内において、或いは、トランスジェニック植物若しくは藻類において、発現するかもしれない。
【0078】
EPOは、N−及び/又はO−連結のグリコシル化を介して、即ちEPOはグリコシル化されるが、EPOに付加される1つ又はそれ以上の炭酸塩の側鎖(好ましくは、1から4、好ましくは4)を含んでもよい。通常、EPOが真核生物細胞内で生産される際、ポリペプチドは翻訳後に(posttranslationally)グリコシル化される。その結果、炭酸塩側鎖は、哺乳類、特にヒト、昆虫、植物、又は、イースト細胞内の生合成中に、EPOに付加されたかもしれない。
【0079】
ポリペプチドの遺伝子組換え生産は当該技術分野において公知である。一般に、これは、適切な発現ベクターを備えるホストセルのトランスフェクション、ポリペプチドの生産を可能にする条件下におけるホストセルの培養、及び、ホストセルからのポリペプチドの精製、を含む。
【0080】
特に、EPOは、ヒトEPOのアミノ酸配列を有してもよい(EP148605B2参照)。また、「エリスロポエチン(erythropoietin)」又は「EPO」という表現は、EPO変異体をも包含するが、ここにおいて、1つ又はそれ以上のアミノ酸(例えば、1から25、好ましくは1から10、より好ましくは1から5、最も好ましくは1から2)がヒトEPOの配列に比べて他のアミノ酸によって交換され、そして、EPOはエリスロポエチン活性(erythropoietic activity)を示している(EP640619Blを参照)。
【0081】
エリスロポエチン活性度の測定は、当該技術分野において記述されている(インビトロにおける活性度の測定に対しては、例えば、Fibi et al., 1991, Blood, 77, 1203 ff;インビボにおけるEPO活性度の測定に対しては、例えば、Fibi, Hermentin, Pauly, Lauffer, Zettlmeissl. , 1995, N-and O-glycosylation muteins of recombinant human erythropoietin secreted from BHK-21 cells, Blood, 85(5), 1229-36;(EPO及び改質EPOは雌のNMRIマウスの中に1日目、2日目、3日目において注入され(タンパク質50ng/マウス等量)、血液サンプルが4日目において取得されて、さらに網状赤血球が決定された))。
【0082】
一般に、ポリペプチドの上述した例は、類似体、アゴニスト、アンタゴニスト、インヒビター、異性体、及び、それらの薬学的に容認される塩の形態を包含することができる。また、上述したポリペプチドは、少なくとも1つの遊離チオール基が存在するとすれば、合成の、遺伝子組換えの、天然の、グリコシル化された、及び、非グリコシル化された形態、並びに、生物学的に活性なそれらのフラグメントを包含する。
【0083】
用語「生物学的に活性な」特に「生物学的に活性なフラグメント」の意味は、当業者によって理解される。特に、フラグメント若しくは誘導体は、もし親の分子の生物学的な活性の質を保持するならば、たとえ、そのような活性が増加又は減少したとしても、生物学的に活性であると考慮される。より詳しくは、生物学的に活性であることは、フラグメント若しくは誘導体が、適切な投与量において投与されるならば、治療的に効果が当然あることを意味する。
【0084】
その結果、本発明の好ましい実施例の主題は、式VIIによる構造を有するコンジュゲートである。
【化10】

【0085】
ここで、上式において、Pは水溶性ポリマーであり、Lは連結基であり、Seはセレン原子であり、Peptはポリペクチドであり、そして、Sはそのポリペプチドのシステイン残基に属するイオウ原子である。P、L、及び、Peptに関しては、好ましい実施例に対して与えられた説明が参照される。
【0086】
特定の好ましい実施例においては、本発明は、式VIIIによる構造を有するコンジュゲートに関する。
【化11】

【0087】
上述した式において、PEGは、ポリエチレン・グリコールであり、Lは連結基で、好ましくは−CO−NH−CHR−CH−残基であるが、ここで、Rは水素、カルボキシル基、又は、C−Cアルキル基であり、そして、Seはセレン原子であり、G−CSFは顆粒コロニー刺激因子(granulocyte colony-stimulating factor)であり、更にSは顆粒コロニー刺激因子(granulocyte colony-stimulating factor)のシステイン残基に属するイオウ原子である。式VIIIにおいて、「G−CSF」は、好ましくは大腸菌内で生産される遺伝子組み換えヒト顆粒コロニー刺激因子(human granulocyte-colony stimulating factor)(G−CSF)である。好ましいG−CSFのアミノ酸配列は図8に示される。その代わりとして、レノグラスチム(Lenograstim)として知られるG−CSFが使用可能である。
【0088】
式VIIIにおいて「S」は、G−CSFのCys18残基のイオウ原子であることが特に好ましい。故に、Cys18においてモノペグ化されたG−CSFが特に好ましい。
【0089】
進歩性のあるコンジュゲートは、薬剤として使用可能である。従って、本発明の更なる主題は、薬剤としての使用のための進歩性のあるコンジュゲートである。
【0090】
好ましい実施例においては、進歩性のあるコンジュゲートは、好中球減少症(neutropenia)の治療のために使用される。特に、この治療は、骨髄抑制抗がん剤(myelosuppressive anti-cancer drugs)を受ける非骨髄悪性腫瘍(non-myeloid malignancies)を持つ患者において行われる。
【0091】
上述で議論したように、本発明は、また本発明のコンジュゲートの調製のためのプロセスに関し、以下の工程を含む。
(i)少なくとも1つの遊離チオール基を有する薬学活性剤(pharmaceutically active agents)を供給し、そして、
(ii)前記薬学活性剤(pharmaceutically active agents)を、本発明による改質剤(modifying agent)と反応させる(コンジュゲート反応)。
【0092】
抱合反応(conjugation reaction)は、水溶液内ですることができる。水溶液は、好ましくは緩衝される。pHは3から10、好ましくは6から9の範囲であってもよい。その反応は、例えば、2から50℃、好ましくは20から30℃の範囲で実施可能である。一般に、抱合反応(conjugation reaction)は、実質的にそれ以上のコンジュゲート反応が生じなくなるまで進行することが許容されるが、これは、時間をかけて反応の進行をモニターすることにより一般に決定されることができる。反応の進行は、種々の時点における反応混合物からのアリコート(aliquots)を抜き出し、例えばSDS−PAGE又はMALDI−TOF質量分析によって、反応混合物を分析すして、モニタすることができる。反応時間は、1時間から50時間、好ましくは10時間から25時間の範囲で変化するかもしれない。
【0093】
本発明の上記プロセスにおいて、水溶性ポリマー及び薬学活性剤(pharmaceutically active agent)の好ましい実施例についで上述されてきた全てのコメントが適用される。好ましくは、水溶性ポリマーはPEGであり、活性剤はG−CSFである。
【0094】
遊離チオール基のペグ化に対して、好ましくは前記チオール基は、本発明の改質剤(modifying agent)との反応を許容するように、充分に露出されなければならない。G−CSFにおいて、Cys18残基は、通常溶媒に部分的に露出されるのみであり、改質剤(modifying agent)によって充分にアクセス可能な訳ではない。それゆえ、好ましくはG−CSFは、ペグ化反応に先立ち、可逆的に変性させられる(好ましくは、温和な条件の下で)。これは、例えば尿素、GdHCl、DMSO、SDS、NLS、ツイーン(Tweens)のような種々の化合物の付加によって達成可能である。ペグ化反応の後、好ましくは再生工程(renaturation step)が実施される。この再生工程は、緩衝液交換及び/又は希釈によって誘発され得る。
【0095】
抱合反応(conjugation reaction)は、改質剤(modifying agen)の1モル過剰下で通常実行される。好ましい実施例において、反応性セレン原子対反応性チオール基のモル比は、0.9:1から10:1、より好ましくは1.0から5:1、より好ましくは1.1:1から3:1である。
【0096】
結果的にコンジュゲートされた生産物は、例えば、過剰試薬、未だコンジュゲートされていない反応物質、望ましくないマルチ・コンジュゲートされた種、及び/又は、遊離の又は未反応のポリマーから、分離するために好ましくは精製される。結果として得られるコンジュゲートは、MALDI、キャピラリー電気泳動、ゲル電気泳動法、及び/又は、クロマトグラフィーのような分析方法を使って、さらに特徴づけられ得る。
【0097】
最後に、本発明の更なる主題は、以下のものを含む医薬組成物である。
(a)本発明によるコンジュゲート、
(b)1つ又はそれ以上の薬学的に容認される賦形剤。
【0098】
コンジュゲート(a)に対して、好ましい実施例についての上述したコメントの全てが適用される。
【0099】
一般に、「薬学的に容認される賦形剤」は、本発明の組成に含まれることができるものであって、患者に対して、顕著な有害な毒性効果を引き起こさない賦形剤を意味する。
【0100】
適切な賦形剤のための例は、炭水化物、抗菌薬剤、界面活性剤、緩衝剤,酸、塩基、酸化防止剤、無機塩類、及び、それらの混合物である。
【0101】
適切な炭水化物賦形剤ための例は、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、Dマンノース、ソルボースのような単糖類 、ラクトース、スクロース、トレハロースのような二糖類、でんぷんのような多糖類、及び、マンニトール、ソルビトールのようなアルジトールである。無機塩類又は緩衝液のための例は、クエン酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、リン酸二水素ナトリウム(無水)(sodium phosphate monobasic)、リン酸水素二ナトリウム(sodium phosphate dibasic)、及び、これらの組み合わせである。適切な界面活性剤のための例は、「ツイーン20」、「ツイーン80」、ソルビタンエステルのようなポリソルベート、レシチン、脂肪酸、脂肪酸エステルのようなリン脂質のような脂質、コレステロールのようなステロイド、そして、EDTAのようなキレート剤である。
【0102】
本発明の医薬組成物は、全てのタイプ製剤を含み、ここで、注射にふさわしい製剤が好ましい。組成物におけるコンジュゲートの量は変化するであろうが、単位投与形態(例えば、バイアル)に組成物が貯蔵されるときは、好ましくは治療効果のある投与量であろう。
【0103】
本発明の薬剤調製は、好ましくは注射により投与され、それ故、一般的に溶液又は懸濁液である。
【0104】
本発明は、以下の実施例によって説明されるであろう。
【0105】
実施例
【0106】
A)本発明において使用される方法
【0107】
SDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動法)
【0108】
SDS−PAGEは、新規なSe−PEG試薬の形成を監視するために、並びに、タンパク質とSe−PEG試薬との間のカップリング反応の見積りのために使用された。SDS−PAGEは、商業的に入手可能な4%から12%のビス・トリス・ゲル(Bis-Tris gels)(インビトロジェン(Invitrogen)社製)を使用してなされた。検出の2つのタイプが使用された。即ち、PEGの可視化のためのヨウ素染色、及び、タンパク質の可視化のためのシンプリーブルー(Simply Blue)(インビトロジェン社製)の染色が使用された。
【0109】
陽イオン交換クロマトグラフィー(CEC)
【0110】
CECは、ペグ化混合物からCys18残基においてペグ化されたG−CSFを単離するために用いられた。SP−5PW TSK−ゲル(TOSOHAAS)を備える8mlのカラム(トリコーン(Tricorn)10/100)が分離のために用いられた。結合バッファー(binding buffer)は、25mM CHCOOH/NaOH pH3.8であった。G−CSFのペグ化された形態及び非ペグ化された形態が、35カラム体積において、0から100%の溶出緩衝液(75mM CHCOOH/NaOH pH8.0)から、浅い直線的勾配(shallow linear gradient)を使用して、分離された。この分離は、流速2.0ml/minにおいてなされた。非還元条件(シンプリーブルー(Simply Blue)染色及びヨウ素染色)下でなされたSDS−PAGE分析により、CEC部分はプールされた。
【0111】
逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)
逆相高速液体クロマトグラフィーは、Se−PEG試薬の分析のために用いられた。コロナ プラス及びクナウアUV検出器を使うことにより、ウォーターズ・ボンダパック・フェニル カラム(Waters Bondapak Phenyl coloumn)(3.9 x 150 mm, 粒子サイズ:10μm)で、それは行われた。ビンディング溶離液は、40%CHCN/HOであった。PEG部分は、40−50 %のCHCN/HOからの線形勾配を用いて分離された。流速は、1 ml/minであった。サンプルは、40%のCHCN/HO中において固体PEG混合物を分解することにより調製し、10lの注入体積で注入された。
【図面の簡単な説明】
【0112】
B)図面の説明
【0113】
【図1】図1:Se−PEG試薬のSDS−PAGE分析(ヨウ素染色、非還元条件)。
【0114】
レーン1: PEG MW 標準(5kDa、12kDa、20kDa、30kDa)
レーン2: 開始 10kDa mPEG―NHS試薬
レーン3: セレノシステイン及び10kDa PEG―NHSから調製された(PEG―Se)試薬の反応混合物
レーン4: セレノシスタミン及び10kDa PEG―NHSから調製された(PEG―Se)試薬の反応混合物
レーン5: セレノシスタミン及び20kDa PEG―NHSから調製された(PEG―Se)試薬の反応混合物
レーン6: セレノシスティン及び20kDa PEG―NHSから調製された(PEG―Se)試薬の反応混合物
レーン7: セレノシスタミン及び20kDa PEG―NHSから調製されたPEG―SeSO試薬の反応混合物
レーン8: セレノシスタミン及び20kDa PEG―NHSから調製されたPEG―SeSO試薬の反応混合物
レーン2、3、4、5、及び6: より高い分子量を有する染点は、(PEG―Se)試薬に相当し、より低い分子量を有する染点は開始物のPEG―NHS試薬に相当する。
レーン7及び8: PEG―SeSOの形成は、(PEG―Se)に相当する高い分子量の染点の非出現によって確認される。
【0115】
【図2】図2: 乾燥DMFにおいて調製された(PEG―Se)試薬のSDS−PAGE分析(ヨウ素染色、非還元条件)
【0116】
レーン1: PEG MW 標準(5kDa、12kDa、20kDa、30kDa)
レーン2: セレノシステイン及び10kDa PEG―NHSから調製された(Se−PEG)試薬の反応混合物
【0117】
【図3】図3: G−CSF及び異なったSe−PEG試薬のペグ化混合物のSDS−PAGE分析(シンプリーブルー染色、非還元条件)
【0118】
レーン1: タンパク質 MW 標準(2.5kDa、3.5kDa、6kDa、14.4kDa、21.5kDa、31.0kDa、36.5kDa、55.4kDa、66.3kDa、97.4kDa、116.3kDa、200kDa)
レーン2: G−CSF+ニューラスタ(Neulasta)
レーン3: G−CSFとセレンシスタミン及び10kDa PEG―NHSから調製された(PEG―Se)試薬とのペグ化混合物
レーン4: G−CSFとセレンシステイン及び10 kDa PEG−NHSから調製された(PEG―Se)試薬とのペグ化混合物
レーン5: G−CSFとセレンシスタミン及び20kDa PEG―NHSから調製された(PEG―Se)試薬とのペグ化混合物
レーン6: G−CSFとセレンシスタミン及び20kDa PEG―NHSから調製された(PEG―Se)試薬とのペグ化混合物
レーン3及び4: より高い分子量を有する染点は10のkDaSe−PEG試薬とコンジュゲートされたG−CSFに相当し、より低い分子量を有する染点は天然G−CSFに相当する。
レーン5及び6: より高い分子量を有する染点は、20のkDaSe−PEG試薬とコンジュゲートされたG−CSFに相当し、より低い分子量を有する染点は天然G−CSFに相当する。
【0119】
【図4】図4:(PEG―Se)を用いて調製され、精製されたG−CSFコンジュゲートのSDS−PAGE分析(シンプリーブルー染色、還元及び非還元条件)。
【0120】
レーン1: タンパク質 MW 標準(2.5kDa、3.5kDa、6kDa、14.4kDa、21.5kDa、31.0kDa、36.5kDa、55.4kDa、66.3kDa、97.4kDa、116.3kDa、200kDa)
レーン2: G−CSF+ニューラスタ(Neulasta);還元条件
レーン3: (セレノシスタミン及び10 kDa PEG−NHSから(PEG―Se)を用いて調製された)Cys18に付加された10 kDa PEGを備えたG−CSFコンジュゲート;還元条件
レーン4: G−CSF+ニューラスタ(Neulasta);非還元条件
レーン5: (セレノシスタミン及び10 kDa PEG−NHSから(PEG―Se)を用いて調製された)Cys18に付加された10 kDa PEGを備えたG−CSFコンジュゲート;非還元条件
【0121】
非還元条件において、単一の高分子量バンドが観測され、そして、それはペグ化されたG−CSFに相当する。還元条件の下で、PEGはタンパク質から切断され、そして、単一バンドは、天然G−CSFに相当する分子量で観測される。
【0122】
【図5】図5: (PEG―Se)又はPEG−SeSO試薬を用いて調製され、精製されたG−CSFコンジュゲートのSDS−PAGE分析(シンプリーブルー染色、還元及び非還元条件)。
【0123】
レーン1: タンパク質 MW 標準(15kDa、21kDa、31kDa、50kDa、66kDa、100kDa)
レーン2: G−CSF;非還元条件
レーン3: ニューラスタ(Neulasta);非還元条件
レーン4: (セレノシスタミン及び20 kDa PEG−NHSから(PEG―Se)を用いて調製された)Cys18に付加された20 kDa PEGを備えるG−CSFコンジュゲート;非還元条件
レーン5: (セレノシスタミン及び20 kDa PEG−NHSからPEG―SeSOを用いて調製された)Cys18に付加された20 kDa PEGを備えるG−CSFコンジュゲート;非還元条件
レーン6: G−CSF;還元条件
レーン7: ニューラスタ(Neulasta);還元条件
レーン8: (セレノシスタミン及び20 kDa PEG−NHSから(PEG―Se)を用いて調製された)Cys18に付加された20 kDa PEGを備えるG−CSFコンジュゲート;還元条件
レーン9: (セレノシスタミン及び20 kDa PEG−NHSから(PEG―Se)を用いて調製された)Cys18に付加された20 kDa PEGを備えるG−CSFコンジュゲート;還元条件
【0124】
非還元条件において、単一の高分子量のバンドが観測され、そして、それはペグ化されたG−CSFに相当する。還元条件下で、PEGはタンパク質から切断され、そして単一バンドが天然G−CSFに相当する分子量のところに観測される。
【0125】
【図6】図6: セレノシステイン及び20 kDa PEG−HSから調製された(PEG−Se)試薬の反応混合物のRP−HPLCクロマトグラム(コロナ検出器)
【0126】
【図7】図7: セレノシスティンから調製された(PEG−Se) 試薬の反応混合物のRP−HPLCクロマトグラム(クナウアUV検出器、=215nm)。tr=18 minにおける信号は、ポリマー二量体 Se−Se基の吸収を示すが、このことは、(PEG−Se)の合成が定量的収率で進行したことが示している。
【0127】
【図8】図8: pH4.0、5.0、6.0、7.0、及び、7.5におけるG−CSF及び(PEG−Se)ペグ化混合物のSDS−PAGE分析(シンプリーブルー染色、非還元条件)
【0128】
レーン1:タンパク質 MW 標準(2.5kDa、3.5kDa、6kDa、14.4kDa、21.5kDa、31.0kDa、36.5kDa、55.4kDa、66.3kDa、97.4kDa、116.3kDa、200kDa)
レーン2:G−CSF+ニューラスタ(Neulasta)
レーン3:pH4.0におけるペグ化混合物
レーン4:pH5.0におけるペグ化混合物
レーン5:pH6.0におけるペグ化混合物
レーン6:pH7.0におけるペグ化混合物
レーン7:pH7.5におけるペグ化混合物
【0129】
高分子量の染点は20kDa Se−PEG試薬とコンジュゲートされたG−CSFに相当し、低分子量の染点は天然G−CSFに相当する。G−CSF二量体の位置は、矢印で示されている。
【0130】
結果は、Se−PEG試薬が酸性条件で使用可能であり、そしてコンジュゲーション収率はより高いpHにおいてより良いことを示している。
【発明を実施するための形態】
【0131】
C)実行された反応
【0132】
実施例1: セレノシステイン及び10kDa PEG−NHSからの (PEG―Se)試薬の調製
【0133】
工程1 セレノシステインの可溶化
【0134】
セレノシスティンの8.5mgは、1 M KOHの101.61の中で分解された。pHは、0.2M Kの1.017 mlを付加することにより約9.8に調整された。
【0135】
工程2 PEG及びセレノシステインのカップリング反応
【0136】
10kDa PEG−NHS試薬の924 mg(0.092mmol)が、0.2 M Na−リン酸塩 pH8.5の2 ml 中で分解された。この溶液に対して、分解されたセレノシスティン(工程1)の0.411 ml(0.0092 mmol)が加えられた。この反応は、18時間室温で進行することが許容された。
【0137】
工程3 低分子量不純物の除去
【0138】
10 MWCOを備えるアミコンウルトラ15が限外濾過のために使用された。緩衝液は、0.2 M Na−リン酸塩 pH7.5に交換された。緩衝液交換後の容積は4 mlであった。
【0139】
実施例2: セレノシスティン、及び、乾燥DMFにおける10 kDa PEG−NHSからの、(PEG−Se) 試薬の調製
【0140】
工程1 PEG及びセレノシステインのカップリング反応
【0141】
セレノシスティンの3.3 mg(0.01 mmol)、69.1 mg(0.5 mmol)のKCOを含む乾燥DMFの3 ml中に懸濁された。1時間の後、10 kDa PEG−NHS試薬の200 mg(0.02 mmol)が添加されて、そして、この反応混合物が、不活性アルゴン雰囲気の下で、室温において5日間攪拌されながら放置された。この溶液に対して、10 mlの水が付加されて、そして、その混合物はもう1日間攪拌すべく放置された(加水分解によるPEG−NHS試薬のクエンチング)。
【0142】
工程2 低分子量不純物の除去
【0143】
ポリマー混合物は、濾過され、そして、結果として得られるろ液が、ジクロロメタンで3回洗浄された。組み合わされた有機相は、減圧下で濃縮され、ポリマー混合物はジエチルエーテルの滴下追加によって沈殿させられた。遠心分離の後、沈殿物は、室温で12時間、高真空下で乾燥された。
【0144】
実施例3: セレノシスタミン及び10 kDa PEG−NHSからの(PEG−Se) 試薬の調製
【0145】
工程1 セレノシスタミン原液の調製
【0146】
セレノシスタミンの6.2mgは、0.2M Na−リン酸塩のpH8.5の0.31mlに分解された。
【0147】
工程2 PEG及びセレノシスタミンのカップリング反応
【0148】
10 kDa PEG−NHS試薬の939 mg(0.094 mmol)が、0.2M Na−リン酸塩 pH8.5の4.26 ml内で分解された。この溶液に、0.15ml(0.0094 mmol)の分解されたセレノシスタミン(工程1)が添加された。この反応は、18時間室温で進行することが許可された。
【0149】
工程3 低分子量不純物の除去
【0150】
10 MWCOを備えるアミコンウルトラ15が、限外濾過のために使用された。緩衝液は、0.2 M Na−リン酸塩 pH7.5 に交換された。緩衝液交換後の体積は、4.775 mlであった。
【0151】
実施例4: セレノシステイン及び 20 kDa PEG−NHSからの(PEG−Se)、及び、PEG―SeSO試薬の調製
【0152】
工程1 セレノシスティンの可溶化
【0153】
セレノシステインの23.3 mgは、1M KOHの140 lにおいて分解された。pHは、0.2 M Kの0.4mlの追加により約9.9に調節された。
【0154】
工程2 PEG及びセレノシステインのカップリング反応
【0155】
20 kDa PEG−NHS試薬の610 mg(0.03 mmol)は、0.2 M Na−リン酸塩 pH 8.5の2 ml 中において分解された。この溶液に、分解したセレノシスティン(工程1)の27.5 l(0.003 mmol)が添加された。この反応は18時間室温で進行することが許可された。
【0156】
工程3 低分子量不純物の除去
【0157】
10 MWCOを備えるアミコンウルトラ15が、限外濾過のために使用された。緩衝液は、0.2 M Na−リン酸塩 pH7.5に交換された。緩衝液交換後の体積は、13.6 mlであった。
【0158】
工程4 亜硫酸塩分解試薬(sulfitolysis reagent)の調製
【0159】
亜硫酸塩分解試薬(sulfitolysis reagent)は、NaSOの0.315g、及び、pH8.0の 1 M TRIS/HCl 溶液の1 ml中におけるNaSの0.121gを分解することによって調製され、水で25mlへ希釈された。
【0160】
工程5 (PEG−Se)試薬の亜硫酸塩分解(sulfitolysis)
【0161】
亜硫酸塩分解試薬の6.25 mlが、(PEG−Se)試薬(工程2)の10.2 mlに対して、追加された(二セレン化基に向かって100倍モル過剰量)。この反応は、18時間室温で進行することが許可された。
【0162】
工程6 低分子量不純物の除去
【0163】
10 MWCOを備えるアミコンウルトラ15が、限外濾過のために使用された。緩衝液は、0.2 M Na−リン酸塩 pH7.5に交換された。緩衝液交換後の体積は、8.1 mlであった。
【0164】
実施例5: セレノシスタミン、及び、20 kDa PEG−NHSからの(PEG−Se)及びPEG―SeSO試薬の調製
【0165】
工程1 セレノシスタミン原液の調製
【0166】
セレノシスタミンの12.4 mgは、0.2 M Na−リン酸塩 pH8.5の0.341 ml内で分解された。
【0167】
工程2 PEG及びセレノシスタミンのカップリング反応:
【0168】
20 kDa PEG−NHS試薬の583 mg(0.03 mmol)が、0.2 M Na−リン酸塩 pH8.5の1.906 ml中に分解された。この溶液に対して、分解されたセレノシスタミン(工程1)の27.5 l(0.003 mmol)が添加された。この反応は18時間室温で進行することが許可された。
【0169】
工程3 低分子量不純物の除去
【0170】
10 MWCOを備えるアミコンウルトラ15が、限外濾過のために使用された。緩衝液は、0.2 M Na−リン酸塩 pH7.5に交換された。緩衝液交換後の体積は、13.0 mlであった。
【0171】
工程4 (PEG−Se)試薬の亜硫酸塩分解
【0172】
亜硫酸塩試薬(実施例4、工程4)の6.25 mlが、(PEG−Se)試薬(工程3)の9.75 mlに対して添加された(二セレン化基に向けて亜硫酸の100倍モル余剰量)。この反応は18時間室温で進行することが許可された。
【0173】
工程5 低分子量不純物の除去
【0174】
10 MWCOを備えるアミコンウルトラ15が、限外濾過のために使用された。緩衝剤は、0.2 M Na−リン酸塩 pH7.5に交換された。緩衝液交換後の体積は、9.0 mlであった。
【0175】
実施例6: セレノシスタミン及び 20 kDa PEG−NHSからの(PEG−Se)の調製
【0176】
工程1 セレノシスタミン原液の調製
【0177】
セレノシスタミンの22.2 mgが、0.1 M KpH8.0の中で分解された。
【0178】
工程2 PEG及びセレノシスタミンのカップリング反応
【0179】
20 kDa PEG−NHS試薬の321 mg(0.016 mmol)が、0.1 M K pH8.0の1.075 ml中で分解された。この溶液に対して、分解されたセレノシスタミン(工程1)の0.114(0.0054 mmol)が添加された。この反応は24時間の間、光から保護され、室温で進行することが許可された。
【0180】
工程3 低分子量不純物の除去及び固体(PEG−Se)の単離
【0181】
反応混合物のpHは、シュウ酸の添加により3.0に調整され、更に20 mlの最終体積に水で希釈された。緩衝溶液は、次いでジクロロメタンで3回抽出された。組み合わされた有機部分は、NaSOで乾燥された。この有機溶液は、ロータリーエバポレーション(回転蒸発)により濃縮されて、(PEG−Se)が、ジエチルエーテルの滴下によって沈殿させられた。遠心分離の後、沈殿物は、室温で12時間高真空状態で乾燥された。
【0182】
実施例7: セレノシステン及び 10 kDa PEG−NHSから調製された(PEG−Se)試薬を備えるG−CSFのコンジュゲーション
【0183】
工程1 Cys18におけるG−CSFのペグ化:
【0184】
G−CSF溶液のpHを7.5に調整するために、0.2 M Naリン酸塩pH8.5の3.636 mlがG−CSF(20mg)バルク溶液の11.2 mlに添加された。その後、セレノシステイン(実施例1、工程3)及び10% SDSの0.172 mlから調製された(PEG−Se)試薬の2.18 mlが添加された。ペグ化反応は、24時間光から保護された状態で室温において進行することが許容された。ペグ化混合物はSDS−PAGEによって分析された。
【0185】
実施例8: セレノシスタミン及び 10 kDa PEG−NHSから調製された(PEG−Se)試薬を備えるG−CSFコンジュゲートの調製
【0186】
工程1 Cys18におけるG−CSFのペグ化:
【0187】
G−CSF溶液のpHを7.5に調整するために、0.2 M Na−リン酸塩pH8.5の3.246 mlが、10.8 ml G−CSF(19.2 mg)バルク溶液に添加された。その後、セレノシスタミン(実施例3、工程3)及び10% SDSの 0.2 mlから調製された10 kDa (PEG−Se)試薬の3.65 mlが添加された。ペグ化反応は、26時間光から保護された状態で室温において進行することが許容された。
【0188】
工程2 ペグ化の終了:
【0189】
緩衝液は、セファデックスG−25カラムを使って、25 mM CHCOOH/NaOH 3.8に交換され、同じ緩衝液を用いて1+1に希釈された。その後、そのサンプルは、4℃で18時間放置された。このペグ化混合物は、非還元条件下で、SDS−PAGEによって分析された。
【0190】
工程3 CECによるCys18においてペグ化されたG−CSFの単離:
【0191】
Cys18においてペグ化されたG−CSFを含むフラクションは、溶離緩衝液の63%と71%の間で溶出された。プールされたフラクションは、還元及び非還元条件下で、SDS−PAGEによって分析された。
【0192】
実施例9: セレノシスタミン及び 20 kDa PEG−NHSから調製された(PEG−Se)試薬を備えるG−CSFコンジュゲートの調製
【0193】
工程1 Cys18におけるG−CSFのペグ化:
【0194】
G−CSF溶液のpHを7.5に調整するために、0.2 M Na−リン酸塩 pH8.5の0.462 mlが、G−CSF(2.5 mg)バルク溶液の1.4 mlに添加された。その後、セレノシスタミン(実施例5、工程3)及び10% SDSの 0.045 mlから調製された(PEG−Se)試薬の2.6 mlが添加された。ペグ化反応は、24時間光から保護された状態で室温において進行することが許容された。
【0195】
工程2 ペグ化の終了:
【0196】
緩衝液は、セファデックスG−25カラムを使って、25 mM CHCOOH/NaOH 3.8に交換され、同じ緩衝液を用いて1+1に希釈された。その後、このサンプルは4℃で24時間放置された。
【0197】
工程3 CECによるCys18においてペグ化されたG−CSFの単離
【0198】
Cys18においてペグ化されたG−CSFを含むフラクションは、溶離緩衝液の63%と67%の間で溶出された。プールされたフラクションは、還元及び非還元条件下でSDS−PAGEによって分析された。
【0199】
実施例10: セレノシスタミン及び 20 kDa PEG−NHSから調製されたPEG−SeSO試薬を備えるG−CSFコンジュゲートの調製
【0200】
工程1 Cys18におけるG−CSFのペグ化:
【0201】
G−CSF溶液のpHを7.5に調整するために、0.2 M Na−リン酸塩 pH8.5の2.039 mlが、6.179 ml G−CSF(11 mg)バルク溶液に添加された。セレノシスタミン(実施例5、工程5)及び10% SDSの0.163 mlから調製された20 kDa PEG−SeSO試薬の7.92 mlが添加された。ペグ化反応は、24時間光から保護された状態で室温において進行することが許容された。
【0202】
工程2 ペグ化の終了:
【0203】
緩衝液は、セファデックスG−25カラムを使って、25 mM CHCOOH/NaOH 3.8に交換され、同じ緩衝液を用いて1+1に希釈された。その後、このサンプルは4℃で24時間放置された。
【0204】
工程3 CECによるCys18においてペグ化されたG−CSFの単離:
【0205】
Cys18においてペグ化されたG−CSFを含んだフラクションは、溶離緩衝液の59%と67%の間で溶出された。プールされたフラクションは、還元及び非還元条件下でSDS−PAGEによって分析された。
【0206】
実施例11: 異なったpH値における、セレノシスタミン及び 20 kDa PEG−NHSから調製された(PEG−Se)試薬を備えるG−CSFのコンジュゲーション
工程1 pH4.0、5.0、6.0、7.0、及び、7.5の緩衝液中のCys18におけるG−CSFのペグ化
【0207】
(PEG−Se)試薬を備えるG−CSFのペグ化の前に、G−CSF溶液(G−CSFの140 μl/0.25 mg)のpHは、それぞれ0.2 M Na−リン酸塩の0μl、4.1μl、6.6μl、15.3μl、及び、7.2μlの付加によって4.0、5.0、6.0、7.0、及び、7.5に調整された。全てのサンプルにおけるG−CSFの同一濃度を達成するために、HOの適切な体積が添加された。G−CSFは、光から保護された状態で室温において、24時間SDSの0.1%の存在下で、20 kDa(PEG−Se)試薬の10モル過剰量で、ペグ化された。ペグ化混合物は、SDS−PAGEによって分析された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性ポリマーを含む改質剤であって、前記水溶性ポリマーは少なくとも1つの反応性セレン基を含み、該反応性セレン基はチオール基と反応することが可能であり、それにより−Se−S−結合を形成することを特徴とする改質剤。
【請求項2】
前記反応性セレン基は、二セレン化基(−Se−Se−)、セレノ亜硫酸塩基(−SeSO)、セレノール基、又は、セレノアート基を含むことを特徴とする請求項1に記載の改質剤。
【請求項3】
式I又はIIに記述される構造を有するが、これらの式においてPは水溶性ポリマーであり、Lは連結基であることを特徴とする請求項1又は2に記載の改質剤。
【化12】

【請求項4】
式III又はIVに記述される構造を有するが、ここでPEGはポリエチレングリコールであり、Rは水素、カルボキシル基、又は、Cl−C6アルキル基であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の改質剤。
【化13】

【請求項5】
請求項1から4に記載の改質剤を生産するプロセスであって、以下の工程を含む。
(i)式Vの化合物を供給する工程であるが、ここでAは官能基であり、Lは連結基である工程。
【化14】

(ii)活性化された水溶性ポリマーで式Vの化合物を反応させる工程。
(iii)オプションとして、工程(ii)の生成物を、スルフィトリシス反応を受けさせる工程。
【請求項6】
工程(i)において、Rは水素、カルボキシル基、又は、C1−C6アルキル基であるところの式VIの化合物が供給され、
【化15】

上記式において、であり、工程(ii)において、式VIの化合物がPEG−NHSと反応することを特徴とする請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
特にポリペプチドのシスティン残基のペグ化のために、ポリペプチドのシスティン残基への水溶性ポリマーの付加のための、請求項1から4の何れかに記載の改質剤の使用。
【請求項8】
G−CSFのCys18がペグ化される、特にモノペグ化されることを特徴とする請求項8に記載の使用。
【請求項9】
水溶性ポリマーと、チオール基を含む薬学活性剤とを含むコンジュゲートであって、前記水溶性ポリマーは前記薬学活性剤にS−Se−結合を介して連結されていることを特徴とするコンジュゲート。
【請求項10】
Pは水溶性ポリマーであり、Lは連結基であり、Seはセレン原子であり、Peptはポリペプチドであり、そして、Sは当該ポリペプチドのシスティン残基に属するイオウ原子であるところの式VIIによる構造を有する請求項9に記載のコンジュゲート。
【化16】

【請求項11】
PEGはポリエチレングリコールであり、Lは好ましくは−CO−NH−CHR−CH−残基であり、Rは水素、カルボキシル基、又は、C1−C6アルキル基であり、Seはセレン原子であり、G−CSFは顆粒球コロニー刺激因子であり、Sは前記顆粒球コロニー刺激因子のシスティン残基に属するイオウ原子であるところの式VIIIによる構造を有する請求項9又は10に記載のコンジュゲート。
【化17】

【請求項12】
前記ポリエチレングリコール残基は前記G−CSFの前記Cys18に特定的に付加されることを特徴とする請求項11に記載のコンジュゲート。
【請求項13】
薬剤としての使用のための請求項9から12項のいずれかに記載のコンジュゲート。
【請求項14】
好中球減少症の療法のための請求項9から12のいずれかに記載のコンジュゲート。
【請求項15】
前記療法は、骨髄抑制抗がん剤を受ける非骨髄悪性腫瘍を持つ患者において行われることを特徴とする請求項14に記載のコンジュゲート。
【請求項16】
請求項9から12のいずれかに記載のコンジュゲートの調製のためのプロセスであって以下の工程を含む。
(i)少なくとも1つの遊離チオール基を有する薬学活性剤を供給する工程、及び
(ii)請求項1から4のいずれかに記載の改質剤と、前記薬学活性剤を反応させる工程。
【請求項17】
(a)請求項9から12のいずれかに記載のコンジュゲートと、(b)1つ又はそれ以上の薬学的に容認される賦形剤とを含むことを特徴とする医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−523936(P2011−523936A)
【公表日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−547988(P2010−547988)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【国際出願番号】PCT/EP2009/001039
【国際公開番号】WO2009/106239
【国際公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(504359293)レツク・フアーマシユーテイカルズ・デー・デー (60)
【Fターム(参考)】