説明

セレン/第3A族インク、並びにその製造方法および使用方法

【課題】セレン/第3a族半導体を組み込むシステムの製造において使用するセレン/第3a族インクの堆積を容易にするインクを提供する。
【解決手段】(a)セレンを含むセレン成分;式R−COOH(式中、RはC1−10アルキル、C1−10ハロアルキルおよびC1−10メルカプトアルキルから選択される)を有するカルボン酸成分;多座配位子と錯体形成したアルミニウム、インジウム、ガリウムおよびタリウムから選択される少なくとも1種の第3a族物質を含む第3a族錯体:の組み合わせを当初成分として含むセレン/第3a族錯体;並びに(b)液体キャリア:を含み、セレン/第3a族錯体が液体キャリア中に安定に分散されている、セレン/第3a族インク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セレンを含むセレン成分;式R−COOH(式中、RはC1−10アルキル、C1−10ハロアルキルおよびC1−10メルカプトアルキルから選択される)を有するカルボン酸成分;第3a族錯体;を当初成分として含み、液体キャリア中に安定に分散した、セレン/第3a族インクに関する。本発明は、さらに、セレン/第3a族インクを製造する方法、およびセレン/第3a族インクを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
第III族/第VI族半導体(例えば、InSe)の薄膜の製造は、例えば、スイッチング素子、太陽電池、非線形光学素子、イオン性蓄電池、および高密度相変換データ記憶素子をはじめとする多くの潜在的な用途における使用のために過去二十年にわたって広範囲に検討されてきた。これら潜在的な用途の中で、CIGS吸収体層の製造におけるおよびγ−InSeウィンドウ層の製造における第III族/第VI族半導体の使用(すなわち、太陽電池における使用のためのCdSバッファ層代替物)が非常に前途有望である。
【0003】
第III族/第VI族半導体についてのこれら前途有望な使用についての1つの試みはコスト効果的な製造技術の開発である。第III族/第VI族半導体を堆積させる従来の方法は典型的には真空ベースのプロセス、例えば、真空蒸発、スパッタリングおよび化学蒸着(例えば、金属有機化学蒸着)などの使用を伴う。このような堆積技術は低いスループット能力および高いコストを示す傾向がある。大規模で高いスループットで低コストでの、第III族/第VI族半導体材料の使用を組み込むシステムの製造を容易にするために、液体ベースの堆積技術を提供することが望ましい。
【0004】
半導体前駆体膜の液体堆積のための方法がシュルツ(Schulz)らへの米国特許第6,126,740号に開示されている。シュルツらは金属カルコゲナイドナノ粒子および揮発性キャッピング剤を含むコロイド懸濁物を開示し、このコロイド懸濁物は、有機溶媒中での金属塩とカルコゲナイド塩との反応により金属カルコゲナイドを沈殿させ、この金属カルコゲナイド沈殿物の回収、および非水性有機溶媒中での金属カルコゲナイド沈殿物と揮発性キャッピング剤との混合によって製造される。シュルツらは、コロイド懸濁物が基体上に噴霧堆積されて、半導体前駆体膜を生じさせることができることをさらに開示する。シュルツらはそのコロイド懸濁物における使用および使用方法に特に好ましい金属が銅、インジウム、ガリウムおよびカドミウムであることを開示する。
【0005】
セレン化インジウムを堆積させる方法はミツィー(Mitzi)らによって、アドバンストマテリアルズ、第17巻、1285〜89ページ(2005年)、高機動性スピンコートカルコゲナイド半導体を使用する低電圧トランジスタ(Low−Voltage Transistor Employing a High−Mobility Spin−Coated Chalcogenide Semiconductor)に開示されている。ミツィーらはセレン化インジウムを堆積し、薄膜トランジスタのセレン化インジウムチャネル形成のためのヒドラジニウム前駆体物質の使用を開示する。
【0006】
ミツィーらによって開示されるヒドラジニウム前駆体物質は、半導体膜を生産するための製造工程からヒドラジンを除く。にもかかわらず、ミツィーらはヒドラジンについての必要性を除いていない。むしろ、ミツィーらはヒドラジニウム前駆体物質の製造において依然としてヒドラジンを利用する。さらに、ヒドラジニウムイオン前駆体は、エッカートW.シュミット(Eckart W.Schmidt)によって、彼の本、ヒドラジンおよびその誘導体:製造、特性および用途(Hydrazine and Its Derivatives: Preparation, Properties, and Applications)、ジョンウイリーアンドサンズ(JOHN WILEY&SONS)、第392〜401ページ(1984年)に記載されるように、かなりの爆発の危険性を有している。多くの金属イオンの存在は、ヒドラジニウム爆発または爆轟の危険性を深刻にする。残留するヒドラジニウム塩は、製造中にプロセス装置内に蓄積する場合があり、許容できない安全上のリスクを生じさせるので、このことは問題である場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,126,740号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】ミツィー(Mitzi)ら、アドバンストマテリアルズ、第17巻、1285〜89ページ(2005年)、高機動性スピンコートカルコゲナイド半導体を使用する低電圧トランジスタ(Low−Voltage Transistor Employing a High−Mobility Spin−Coated Chalcogenide Semiconductor)
【非特許文献2】エッカートW.シュミット(Eckart W.Schmidt)、ヒドラジンおよびその誘導体:製造、特性および用途(Hydrazine and Its Derivatives: Preparation, Properties, and Applications)、ジョンウイリーアンドサンズ(JOHN WILEY&SONS)、第392〜401ページ(1984年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
にもかかわらず、セレン/第3a族半導体を組み込むシステム(例えば、スイッチング素子、太陽電池、非線形光学素子、イオン性蓄電池、および高密度相変換データ記憶素子)の製造において使用するためのセレン/第3a族インクについての必要性が存在している。特に、MSe物質の堆積を容易にするセレン/第3aインクであり、Mは第3a族物質であり、堆積されたMSe中のMのSeに対するモル比は調節可能であり、セレン/第3a族インク配合物が好ましくはヒドラジンおよびヒドラジニウムを含まない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、(a)セレン/第3a族錯体と(b)液体キャリアとを含む、セレン/第3a族インクであって;
前記セレン/第3a族錯体は、
セレンを含むセレン成分;
式R−COOH(式中、RはC1−10アルキル、C1−10ハロアルキルおよびC1−10メルカプトアルキルから選択される)を有するカルボン酸成分;
多座配位子と錯体形成したアルミニウム、インジウム、ガリウムおよびタリウムから選択される少なくとも1種の第3a族物質を含む第3a族錯体:
の組み合わせを当初成分として含み;
セレン/第3a族錯体が液体キャリア中に安定に分散されている;
セレン/第3a族インクを提供する。
【0011】
本発明は、セレンを含むセレン成分を提供し;式R−COOH(式中、RはC1−10アルキル、C1−10ハロアルキルおよびC1−10メルカプトアルキルから選択される)を有するカルボン酸成分を提供し;多座配位子と錯体形成したアルミニウム、インジウム、ガリウムおよびタリウムから選択される少なくとも1種の第3a族物質を含む第3a族錯体を提供し;液体キャリアを提供し;第3a族錯体、カルボン酸成分および液体キャリアを一緒にし;この組み合わせ物を攪拌しつつ加熱して、化合した第3a族錯体/カルボン酸成分を生じさせ;並びに、化合した第3a族錯体/カルボン酸成分とセレン成分とを一緒にしてセレン/第3a族インクを形成する:ことを含み、セレン/第3a族インクが安定な分散物である、セレン/第3a族インクを製造する方法も提供する。
本発明は、基体を提供する工程;セレンを含むセレン成分を提供し;式R−COOH(式中、RはC1−10アルキル、C1−10ハロアルキルおよびC1−10メルカプトアルキルから選択される)を有するカルボン酸成分を提供し;液体キャリアを提供し;多座配位子と錯体形成したアルミニウム、インジウム、ガリウムおよびタリウムから選択される少なくとも1種の第3a族物質を含む第3a族錯体を提供し;セレン成分、カルボン酸成分、第3a族錯体および液体キャリアを一緒にしてセレン/第3a族インクを形成することを含んで、セレン/第3a族インクが安定な分散物である、セレン/第3a族インクを形成する工程;セレン/第3a族インクを基体上に堆積させる工程;堆積したセレン/第3a族インクを加熱して液体キャリアを除いてMSe物質を残す工程、ここで、基体上に堆積したMSe物質におけるM:Seのモル比は6:1〜1:6である;並びに、場合によっては堆積したMSe物質をアニールする工程:を含む、基体上にMSe物質を堆積させる方法も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第3a族錯体は塩ではない。理論に拘束されるのを望まないが、本発明のセレン/第3a族インクは(i)液体キャリア中に一緒に安定に分散されているセレン錯体および第3a族錯体;(ii)セレンおよび第3a族物質の双方を組み込んでいる錯体;または(iii)(i)および(ii)の組み合わせを含むことができる。米国特許第6,126,740号においてシュルツらにより教示される非水性コロイド懸濁物との相違として、本発明のセレン/第3a族インク中に存在するあらゆるセレン/第3a族錯体は沈殿させられず、溶液から単離されず、ひいては再分散されない。むしろ、本発明のセレン/第3a族インク中に存在するあらゆるセレン/第3a族錯体は作成の際に液体キャリア中で安定であり、かつその使用の間安定なままである。
【0013】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、セレン/第3a族インクに関する言及における用語「安定な」とは、セレン成分、カルボン酸成分および第3a族錯体が、22℃で窒素下での液体キャリア中でのセレン/第3a族インクを形成する混合の際に沈殿物を形成しないことを意味する。
【0014】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、セレン/第3a族インクに関する言及における用語「貯蔵安定な」とは、セレン成分、カルボン酸成分および第3a族錯体が、液体キャリア中でのセレン/第3a族インクを形成する混合の際に、またはセレン/第3a族インクの22℃で窒素下での少なくとも5分間のその後の貯蔵の際に沈殿物を形成しないことを意味する。
【0015】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、セレン/第3a族インクに関する言及における用語「延長された安定性」とは、セレン成分、カルボン酸成分および第3a族錯体が、液体キャリア中でのセレン/第3a族インクを形成する混合の際に、またはセレン/第3a族インクの22℃で窒素下での少なくとも2時間のその後の貯蔵の際に沈殿物を形成しないことを意味する。
【0016】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、セレン/第3a族インクに関する言及における用語「ヒドラジンを含まない」とは、セレン/第3a族インクが100ppm未満しかヒドラジンを含まないことを意味する。
【0017】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、セレン/第3a族インクに関する言及における用語「ヒドラジニウムを含まない、または(Nを含まない」とは、セレンと錯体形成したヒドラジニウムをセレン/第3a族インクが100ppm未満しか含まないことを意味する。
【0018】
本発明のセレン成分はセレンを含む。好ましくは、セレン成分はセレンである。
【0019】
カルボン酸成分は式R−COOHを有し、RはC1−10アルキル、C1−10ハロアルキルおよびC1−10メルカプトアルキル(好ましくはC1−5アルキル、C1−5ハロアルキルおよびC1−5メルカプトアルキル)から選択される。好ましくは、Rはセレン/第3a族インクの安定性を増大させるように選択される。本明細書に提供される教示が与えられることによって、当業者はルーチンの実験を通じて、どのカルボン酸成分が本発明において使用するのに好適であるかを決定するための方法を知るであろう。本発明のインジウム含有セレン/第3a族インクに使用するのに最も好ましいカルボン酸成分は、2−メルカプトプロピオン酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸、酢酸、プロピオン酸およびこれらの混合物から選択される。本発明のガリウム含有セレン/第3a族インクにおいて使用するのに最も好ましいカルボン酸成分は2−エチル酪酸、メルカプトプロピオン酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸、酢酸、プロピオン酸およびこれらの混合物から選択される。
【0020】
カルボン酸成分は、本発明のセレン/第3a族インクに向上した安定性を提供すると考えられる。第3a族物質のカルボン酸成分に対するモル比は、セレン/第3a族インクの特性を所望のように調節するように選択される。理論により拘束されるのを望むものではないが、本発明のセレン/第3a族インクにおいて、カルボン酸成分の第3a族物質に対するさらに高いモル比は、セレン/第3a族インクのさらに高い安定性に関連すると考えられる。好ましくは、セレン/第3a族インクにおける、第3a族物質:カルボン酸成分のモル比は、2:1〜1:16、より好ましくは1:1〜1:6、さらにより好ましくは1:1〜1:4、最も好ましくは1:1〜1:2である。
【0021】
本発明の第3a族錯体は(a)アルミニウム、ガリウム、インジウムおよびタリウムから選択される、好ましくはガリウムおよびインジウムから選択される、最も好ましくはインジウムである第3a族物質;並びに(b)第3a族イオンと配位している多座配位子:を含む。理論に拘束されるのを望むものではないが、相対的にいうと、第3a族錯体の製造におけるより高い配座数の配位子の使用は、セレン成分と第3a族錯体が液体キャリア中で分散されつつ、セレン成分中のセレンと第3a族錯体中の第3a族物質との反応性を低減させる(例えば、三座配位子は二座配位子もしくは一座配位子よりも高い安定性を生じさせる)と考えられる。より高い配座数の配位子は第3a族錯体中の第3a族物質に対してさらに高い親和性を示し、よって液体キャリア中で分散されつつセレンが第3a族物質と置き換わるのはより困難であると考えられる。
【0022】
第3a族錯体中の多座配位子には好ましくはジケトンが挙げられる。より好ましくは、第3a族錯体は、第3a族物質と錯体形成される、ブタンジオナート、ペンタンジオナート、ヘキサンジオナート、ヘプタンジオナート、シクロヘキサンジオナート、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトンから選択される多座配位子を含む。最も好ましくは、第3a族錯体は第3a族物質と錯形成したペンタンジオナートを含む。
【0023】
本発明の第3a族錯体は好ましくはインジウム、ガリウムもしくはその混合物であり;多座配位子と錯形成される。場合によっては、第3a族錯体はガリウム錯体、好ましくはジケトンで錯化されたガリウム、最も好ましくはペンタンジオナートで錯化されたガリウムである。場合によっては、第3a族錯体はインジウム錯体、好ましくはジケトンで錯化されたインジウム、最も好ましくはペンタンジオナートで錯化されたインジウムである。
【0024】
場合によっては、セレン成分とカルボン酸成分とは一緒にされて、液体ビヒクル(本明細書において定義されるとおり)中で、化合したセレン/カルボン酸成分を形成する。好ましくは、化合したセレン/カルボン酸成分は1重量%以上のセレンを含み、化合したセレン/カルボン酸成分は安定な分散物であり、セレン/カルボン酸成分はヒドラジンおよびヒドラジニウムを含まない。
【0025】
場合によっては、第3a族錯体とカルボン酸成分とは一緒にされて、化合した第3a族錯体/カルボン酸成分を形成する。
【0026】
本発明のセレン/第3a族インクにおいて使用される液体キャリアは、セレン成分とカルボン酸成分と第3a族錯体とが安定に分散可能なあらゆる溶媒であることができる。本明細書に提供される教示が与えられることによって、当業者はルーチンの実験を通じて、どの溶媒が本発明において使用するのに好適であるかを決定するための方法を知るであろう。すなわち、当業者はルーチンの実験を通じて、どの溶媒がゲル化をもたらすかを知るであろう。例えば、一座配位アミン溶媒は第3a族錯体の低減した溶解性を示しかつセレン成分に対する貧溶媒でもある。好ましくは、液体キャリアは(a)分子あたり2つの窒素原子を有し、(i)それら窒素原子がアミン溶媒の分子式において少なくとも3つの炭素原子(例えば、−C−C−C−)で隔てられているか、または(ii)それら窒素原子がアミン溶媒の分子式における不飽和環構造の構成要素である(例えば、イミダゾール環)アミン溶媒;並びに(b)アミン溶媒の分子あたり少なくとも3つの窒素原子を有するアミン溶媒から選択される。より好ましくは、液体キャリアは、1,3−ジアミノプロパン、ジエチレントリアミン、1−メチルイミダゾール、トリス(2−アミノエチル)アミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンおよびテトラメチルグアニジンから選択される。さらにより好ましくは、液体キャリアは1,3−ジアミノプロパン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラメチルグアニジンおよび1−メチルイミダゾールから選択される。最も好ましくは、液体キャリアは1,3−ジアミノプロパンである。
【0027】
本発明のセレン/第3a族インクは、場合によっては、補助溶媒をさらに含むことができる。本発明において使用するのに好適な補助溶媒は、セレン/第3a族インクに含まれる液体キャリアと混和性であり、かつセレン/第3a族インクを不安定化する効果を有しない。好ましい補助溶媒は、セレン/第3a族インクに含まれる液体キャリアの沸点の30℃以内の沸点を示す。
【0028】
本発明のセレン/第3a族インクは、場合によっては、分散剤、湿潤剤、ポリマー、バインダー、消泡剤、乳化剤、乾燥剤、充填剤、増量剤、膜コンディショニング剤、酸化防止剤、可塑剤、保存剤、増粘剤、フロー制御(flow control)剤、レベリング剤、腐蝕抑制剤、およびドーパント(例えば、CIGS吸収体物質の電気的性能を向上させるためのナトリウム)から選択される薬剤をさらに含むことができる。例えば、延長した貯蔵寿命を容易にするために、フロー特性を向上させるために、基体への適用方法(例えば、印刷、噴霧)を容易にするために、基体上へのインクの濡れ/展着特性を変更するために、基体上に他の成分(例えば、CIGS吸収体物質の他の構成成分、例えば、Cu)を堆積させるのに使用される他のインクとセレン/第3a族インクとの適合性を増大させるために、並びにセレン/第3a族インクの分解温度を変えるために、任意の薬剤が本発明のセレン/第3a族インクに組み込まれることができる。
【0029】
好ましくは、本発明のセレン/第3a族インクは非水性インクである(すなわち、10重量%以下、より好ましくは1重量%以下、最も好ましくは0.1重量%以下しか水を含まない)。使用される原料(液体ビヒクル、任意の薬剤)中に存在する水は第3a族錯体と反応して不溶性の第3a族酸化物を生じさせる場合があると考えられる。
【0030】
本発明のセレン/第3a族インクのセレン含量は必要とされる具体的な用途、並びにセレン/第3a族インクを所定の基体に適用するために使用される処理技術および装置に適合するように選択されうる。好ましくは、セレン/第3a族インクは、セレン/第3a族インクの重量を基準にして1〜50重量%;1〜5重量%;4〜15重量%;および5〜10重量%から選択されるセレン含量を示す。場合によっては、セレン/第3a族インクはセレン/第3a族インクの重量を基準にして1〜50重量%のセレン含量を示す。場合によっては、セレン/第3a族インクはセレン/第3a族インクの重量を基準にして1〜5重量%のセレン含量を示す。場合によっては、セレン/第3a族インクはセレン/第3a族インクの重量を基準にして4〜15重量%のセレン含量を示す。場合によっては、セレン/第3a族インクはセレン/第3a族インクの重量を基準にして5〜10重量%のセレン含量を示す。
【0031】
本発明のセレン/第3a族インクにおけるセレン:第3a族物質のモル比は調節可能である。好ましくは、本発明のセレン/第3a族インクにおけるセレン:第3a族物質のモル比は6:1〜1:6に調節可能である。より好ましくは、本発明のセレン/第3a族インクにおけるセレン:第3a族物質のモル比は3:1〜1:3に調節可能である。さらにより好ましくは、本発明のセレン/第3a族インクにおけるセレン:第3a族物質のモル比は2:1〜1:2に調節可能である。最も好ましくは、本発明のセレン/第3a族インクにおけるセレン:第3a族物質のモル比は1.5:1〜1:1.5に調節可能である。
【0032】
理論に拘束されるのを望むものではないが、セレン/第3a族インクの安定性は5つの主要因によって決定されることが考えられる、すなわち1)液体キャリア中での第3a族錯体の溶解性;2)カルボン酸成分におけるR基の選択;3)カルボン酸成分の、第3a族物質に対するモル比の選択;4)液体キャリアの選択;並びに5)液体キャリア中に分散されつつ、第3a族物質とセレンとの反応を調節することができる配位子による、第3a族錯体中の第3a族物質の配位である。これら5つの主要因の選択および制御によって、所定の用途のためのセレン/第3a族インクの安定性を調節することが可能であると考えられる。すなわち、所望の安定性は、基体上にセレン/第3a族インクを堆積するために使用される方法に応じて変動しうる。ある場合には、セレン/第3a族インクが基体上に堆積される時より(例えば、数時間)前に、セレン成分と第3a族錯体とを充分に混合することが望まれる場合がある。この状況においては、セレン/第3a族インクは延長された安定性を示すように配合されうる。ある場合には、セレン/第3a族インクが基体上に堆積される直前に(例えば、基体上への堆積の数分以内に)、セレン成分と第3a族錯体とを一緒にすることが顧客/使用者に望まれる場合がある。この状況においては、セレン/第3a族インクは少なくとも貯蔵安定なように配合されうる。ある場合には、セレン/第3a族インクの基体上への堆積と同時に(例えば、セレン成分と第3a族錯体との同時共堆積、この場合、これら成分はそれらが基体に接触するごく直前に混合されるか、または基体に接触する時に混合される)、セレン成分と第3a族錯体とを一緒にすることが顧客/使用者に望まれる場合がある。この状況においては、セレン/第3a族インクは少なくとも安定なように配合されうる。
【0033】
好ましくは、本発明のセレン/第3a族インクはヒドラジンを含まずかつヒドラジニウムを含まない。
【0034】
本発明のセレン/第3a族インクを製造する方法は、セレン成分を提供し;カルボン酸成分を提供し;第3a族錯体を提供し;液体キャリアを提供し;並びに、セレン成分、カルボン酸成分、第3a族錯体および液体キャリアの組み合わせ物を形成して、セレン/第3a族インクを提供する:ことを含む。
【0035】
本発明のセレン/第3a族インクの製造に使用するためのセレン成分の提供においては、液体キャリアをセレンに添加することにより、セレンおよび液体キャリアが好ましくは一緒にされる。より好ましくは、セレンおよび液体キャリアは不活性技術を用いて一緒にされ、次いで、セレンが液体キャリアに溶解するまで連続的に攪拌、還流加熱される。好ましくは、液体キャリアは、液体キャリアとセレンとを一緒にする間、20〜240℃の温度に維持される。場合によっては、液体キャリアおよびセレンは、一緒にするプロセス中でセレンの融点(220℃)より高く加熱されうる。
【0036】
本発明のセレン/第3a族インクの製造において使用するための化合した第3a族錯体/カルボン酸成分の提供は、第3a族錯体を提供し;カルボン酸成分を提供し;並びに好適な液体ビヒクルを提供し、液体ビヒクルは液体キャリア(本明細書において定義されるとおり)、補助溶媒(本明細書において定義されるとおり)、またはこの混合物から選択され;第3a族錯体、カルボン酸成分および液体ビヒクルを一緒にして;場合によっては、この組み合わせ物を攪拌しつつ(好ましくは液体ビヒクルの沸点温度より低い温度で)加熱して、液体ビヒクル中に安定に分散された、化合した第3a族錯体/カルボン酸成分を形成することを含む。好ましくは、化合した第3a族錯体/カルボン酸成分における第3a族物質:カルボン酸成分のモル比は2:1〜1:6、より好ましくは1:1〜1:6、さらにより好ましくは1:1〜1:4、最も好ましくは1:1〜1:2である。
【0037】
本発明のセレン/第3a族インクの製造に使用するための化合した第3a族錯体/カルボン酸成分の提供においては、提供されるカルボン酸成分は式R−COOH(式中、RはC1−10アルキル、C1−10ハロアルキルおよびC1−10メルカプトアルキル(好ましくはC1−5アルキル、C1−5ハロアルキルおよびC1−5メルカプトアルキル)から選択される)を有するカルボン酸から選択される。使用されるカルボン酸成分におけるR基は液体ビヒクル中での生じる化合した第3a族錯体/カルボン酸成分の溶解性を増大させるかまたは生じる化合した第3a族錯体/カルボン酸成分のゲル化を抑制するように選択されうる。本明細書に提供される教示が与えられることによって、当業者はルーチンの実験を通じて、どのカルボン酸成分が本発明において使用するのに好適であるかを決定するための方法を知るであろう。本発明のインジウム含有セレン/第3a族インクに使用するのに最も好ましいカルボン酸成分は、2−メルカプトプロピオン酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸、酢酸、プロピオン酸およびこれらの混合物から選択される。本発明のガリウム含有セレン/第3a族インクにおいて使用するのに最も好ましいカルボン酸成分は2−エチル酪酸、メルカプトプロピオン酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸、酢酸、プロピオン酸およびこれらの混合物から選択される。
【0038】
好ましくは、本発明のセレン/第3a族インクの製造に使用するための化合した第3a族錯体/カルボン酸成分の提供において、カルボン酸成分は好ましくは一緒になった第3a族錯体および液体ビヒクルに添加される。より好ましくは、本発明のセレン/第3a族インクの製造において使用するための化合した第3a族錯体/カルボン酸成分の提供は、場合によっては、カルボン酸成分の添加前、添加後もしくは添加中の少なくとも1つにおいて、一緒にされた第3a族錯体および液体キャリアを加熱することをさらに含む。さらにより好ましくは、一緒にされた第3a族錯体および液体キャリアは、カルボン酸成分の添加中に20〜100℃の温度に維持される。最も好ましくは、一緒にされた第3a族錯体および液体キャリアに、連続的に攪拌しつつカルボン酸成分を徐々に添加することにより、一緒にされたセレンおよび液体キャリアに、カルボン酸成分が添加される。
【0039】
第3a族錯体は、場合によっては、第3a族物質の単純な塩と配位子とを好適な液体ビヒクル中で化合させることにより製造されることができ、この液体ビヒクルは液体キャリア(本明細書において定義される通り)、補助溶媒(本明細書において定義される通り)またはその混合物から選択される。例えば、硝酸インジウムまたは硝酸ガリウムは脱プロトン化ペンタンジオンと好適な液体ビヒクル中で反応させられて、インジウムペンタンジオナートもしくはガリウムペンタンジオナートをそれぞれ形成することができる。いくつかの第3a族錯体、例えば、インジウムペンタンジオナートおよびガリウムペンタンジオナートは商業的に入手可能でもある。商業的に入手可能な第3a族錯体については、第3a族錯体は場合によっては好適な液体ビヒクルと一緒にされることができ、液体ビヒクルは液体キャリア(本明細書において定義される通り)、補助溶媒(本明細書において定義される通り)またはその混合物から選択される。第3a族物質と一緒に、配位子と一緒に、もしくは第3a族錯体と一緒に使用されるいくつかの原料(例えば、任意のカルボン酸成分、任意の薬剤および液体ビヒクル)は沈殿の形成をもたらす場合がある。例えば、原料(例えば、任意のカルボン酸成分、任意の薬剤、液体ビヒクル)が水を含む場合には、その水は第3a族錯体と反応して不溶性第3a族酸化物を形成しうると考えられる。沈殿が形成される組み合わせについては、液体ビヒクル中の第3a族錯体、任意のカルボン酸成分(すなわち、化合した第3a族錯体/カルボン酸成分)および任意の薬剤が上澄みとして存在でき、この上澄みは、本発明のセレン/第3a族インクの製造において使用するために、デカントおよびカニューレなどによる周知の方法を用いて容器から引き抜かれうる。
【0040】
本発明のセレン/第3a族インクの製造に使用するためのセレン成分および第3a族錯体を提供する場合に、使用される液体キャリアはセレン成分および第3a族錯体が安定に分散可能であるあらゆる溶媒もしくは溶媒の組み合わせ物である。好ましくは、液体キャリアは(a)分子あたり2つの窒素原子を有し、それら窒素原子が(i)アミン溶媒の分子式において少なくとも3つの炭素原子(例えば、−C−C−C−)で隔てられているか、または(ii)それら窒素原子が両方ともアミン溶媒の分子式における不飽和環構造の構成要素である(例えば、イミダゾール環)アミン溶媒;並びに(b)アミン溶媒の分子あたり少なくとも3つの窒素原子を有するアミン溶媒から選択される。より好ましくは、液体キャリアは、1,3−ジアミノプロパン、ジエチレントリアミン、1−メチルイミダゾール、トリス(2−アミノエチル)アミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンおよびテトラメチルグアニジンから選択される。さらにより好ましくは、液体キャリアは1,3−ジアミノプロパン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラメチルグアニジンおよび1−メチルイミダゾールから選択される。最も好ましくは、液体キャリアは1,3−ジアミノプロパンである。
【0041】
場合によっては、本発明のセレン/第3a族インクを製造する方法は、補助溶媒を提供し;並びに、補助溶媒を、セレン成分、第3a族錯体および液体キャリアと一緒にすること:をさらに含む。場合によっては、補助溶媒は第3a族錯体の製造に使用される。好適な補助溶媒はセレン/第3a族インクに含まれる液体キャリアと混和性であり、かつセレン/第3a族インクを不安定化する効果を有しない。好ましい補助溶媒はセレン/第3a族インクに含まれる液体キャリアの沸点の30℃以内の沸点をさらに示す。
【0042】
場合によっては、本発明のセレン/第3a族インクを製造する方法は、分散剤、湿潤剤、ポリマー、バインダー、消泡剤、乳化剤、乾燥剤、充填剤、増量剤、膜コンディショニング剤、酸化防止剤、可塑剤、保存剤、増粘剤、フロー制御剤、レベリング剤、腐蝕抑制剤、およびドーパントから選択される任意の薬剤を提供し;並びに任意の薬剤と液体キャリアとを一緒にする:ことをさらに含む。
【0043】
本発明のセレン/第3a族インクは例えば、スイッチ、太陽電池(CIGS吸収体層もしくはγ−InSeウィンドウ層の製造)、非線形光学素子、イオン性蓄電池および高密度相変換データ記憶素子に使用されうる。
【0044】
本発明のセレン/第3a族インクを使用してMSe物質を基体上に適用する方法は、基体を提供し;本発明のセレン/第3a族インクを提供し、セレン/第3a族インクを基体に適用して、基体上にMSe前駆体を形成し;MSe前駆体を処理して液体キャリアを除去して、基体上にMSe物質を堆積させる:ことを含み、セレン/第3a族インク中のセレン:Mのモル比は6:1〜1:6(好ましくは、3:1〜1:3、より好ましくは2:1〜1:2、最も好ましくは1.5:1〜1:1.5)であり;Mはアルミニウム、ガリウム、インジウムおよびタリウム(好ましくはガリウムおよびインジウム;最も好ましくはインジウム)から選択される少なくとも1種の第3a族物質であり;並びに、基体上に堆積されるMSe物質中のM:Seのモル比は6:1〜1:6(好ましくは3:1〜1:3、より好ましくは2:1〜1:2、最も好ましくは1.5:1〜1:1.5)である。
【0045】
本発明のセレン/第3a族インクを使用してMSe物質を基体上に適用する方法においては、本発明のセレン/第3a族インクは従来の液体処理技術、例えば、湿潤コーティング、噴霧コーティング、スピンコーティング、ドクターブレードコーティング、接触印刷、トップフィード(top feed)反転印刷、ボトムフィード(bottom feed)反転印刷、ノズルフィード反転印刷、グラビア印刷、マイクログラビア印刷、反転マイクログラビア印刷、コマダイレクト(comma direct)印刷、ローラーコーティング、スロットダイコーティング、マイヤーバー(meyerbar)コーティング、リップダイレクトコーティング、デュアルリップダイレクトコーティング、キャピラリーコーティング、インクジェット印刷、ジェット堆積、噴霧熱分解および噴霧堆積を使用して基体に適用されうる。場合によっては、本発明のセレン/第3a族インクは、従来の噴霧熱分解技術を用いて基体に適用されうる。好ましくは、本発明のセレン/第3a族インクは不活性雰囲気下(例えば、窒素下)で基体に適用される。
【0046】
本発明のセレン/第3a族インクを基体に適用した後で、堆積された物質は加熱されて、残留する液体キャリアもしくは補助溶媒を除去する。好ましくは、堆積された物質は0.5〜60分のアニーリング時間で、200〜650℃の温度にかけることによってさらにアニールされる。本発明のセレン/第3a族インクを使用してInSeウィンドウ層を太陽電池に堆積する場合には、堆積された物質を350〜450℃のアニーリング温度でアニールするのが望ましい。
【0047】
本発明のセレン/第3a族インクを堆積する方法に使用される基体は半導体システムの製造に関連して使用される従来の物質から選択されうる。ある用途においては、基体は、例えば、ガラス、ホイルおよびプラスチック(例えば、ポリエチレンテレフタラートおよびポリイミド)のようなキャリア物質上の塗膜であり得る。場合によっては、基体は光起電力素子における使用のためのCIGS物質のロールツーロール生産を容易にするのに充分に可とう性である。CIGS吸収体物質の製造に使用される場合には、基体は好ましくはモリブデンである。光起電力素子におけるウィンドウ層の製造に使用される場合には、基体は好ましくは吸収体層物質である。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態が以下の実施例において詳細に説明される。実施例において使用されたIn(acac)(インジウム(III)アセチルアセトナートおよびインジウム2,4−ペンタンジオナートとしても知られる)およびGa(acac)(ガリウム(III)アセチルアセトナートおよびガリウム2,4−ペンタンジオナートとしても知られる)はシグマアルドリッチから得られた。
【実施例】
【0049】
実施例1〜30:液体キャリア中での化合した第3a族錯体/カルボン酸成分の製造
表1に示された物質およびその量を用いて、液体キャリア中で第3a族錯体と添加剤との組み合わせ物が製造された。具体的には、示された第3a族錯体は空気中で、攪拌棒を備えたガラスバイアル中に、表1に示された量で秤量された。次いで、固体状態の示された添加剤(例えば、p−トルエンチオール)がガラスバイアルに表1に示された量で添加され、次いで、示された液体キャリアが示された量で添加され、次いで、示された量の液体状態の示された添加剤の添加が行われた。次いで、ガラスバイアルは密封され、窒素ガス下で不活性化された。次いで、ガラスバイアルは攪拌しつつ1時間、23℃のホットプレート設定温度のホットプレート上に配置された。次いで、このホットプレート設定温度は70℃に上げられ、バイアルは攪拌しつつ1時間ホットプレート上に置いておかれた。次いで、ホットプレートの電源を停止させた。観察結果は表1に提供される。いくつかの例においては、白色沈殿が形成した。白色沈殿が形成した例においては、セレン/第3a族インクの製造に使用するために、上澄み生成物(液体キャリア中の第3a族錯体+添加剤)がガラスバイアルからデカントして取り出された。
【0050】
実施例31:液体キャリア中のセレン成分の製造
250mLのガラスソニケーションバイアルに、3グラムのセレン粉体、および72グラムの1,3−ジアミノプロパンが秤量された。この容器にSonics,Inc.からの500Wソニケーションホーンを取り付けた。この容器は窒素で不活性化され、60%の出力で4時間超音波処理された。次いで、この容器は断熱材で包まれ、反応容器はさらに4時間の超音波処理によってソニケーションホーンによって約100℃に加熱されることができた。次いで、生成物はカニューレによって不活性化された容器に移され、窒素下で貯蔵された。
【0051】
【表1】

【表2】

A 室温(RT)で18〜36時間の貯蔵後にわずかに曇った溶液、非常に少量の白色沈殿沈殿。
B RTで18〜36時間の貯蔵後に透明溶液、非常に少量の白色沈殿。
C RTで18〜36時間の貯蔵後に透明溶液、沈殿なし。
【0052】
実施例32〜61:セレン/第3a族インクの製造
セレン/第3a族インクはグローブボックス内で製造された。各実施例において、2mLのバイアルに、表2に示された重量の実施例31の生成物、および表2に示された液体キャリア中の化合した第3a族錯体/カルボン酸成分(G3aCAinLC)を表2に示された量で入れた。次いで、バイアルの内容物をボルテックスで5秒間混合した。2mLバイアルの内容物の混合後に観察が行われ、表2に示される。
【0053】
【表3】

D 当初混合時に沈殿(ppt)なく、室温(RT)で30分間の貯蔵後に沈殿なし。
E 当初混合時に沈殿なく、RTで5分間の貯蔵後に沈殿形成した。
F 混合当初に沈殿なく、RTで5分間の貯蔵後に沈殿なく、RTで2時間の貯蔵後に沈殿なく、RTで2時間の貯蔵後に容器の底に薄膜が付着した。
【0054】
実施例62〜65:セレン/第3a族膜の製造
実施例62〜65の膜は窒素雰囲気下でグローブボックス内で製造された。それぞれの膜の製造に使用された基体はモリブデンコーティングしたガラスの5×5mm片であった。それぞれの例において、基体は80℃に設定されたホットプレート上で加熱された。それぞれの例において、表3に示されるセレン/第3a族インクの1滴が基体上に置かれた。セレン/第3a族インクを基体上に滴下した後、約15分の上昇時間にわたってホットプレート設定温度を400℃に上げた。次いで、このホットプレート設定温度を5分間400℃に保持し、その後スイッチを切った。次いで、基体をホットプレートの表面上で室温まで冷却した。次いで、生成物膜が表3に示されるようにx−線回折(2−シータスキャン)(XRD)およびエネルギー分散型x−線分析(EDS)の少なくとも1つによって分析された。x−線回折(2−シータスキャン)によって分析されるこれらの膜は、ニッケルフィルター銅Kα放射の50kV/200mAでのリガクD/MAX2500を用いて分析された。サンプルは0.03度のステップで0.75度/分で5〜90度の2θでスキャンされた。回折ジオメトリが使用され、サンプルは20RPMで回転させられた。実施例62および63についてのXRDスキャンアウトプットは3.276、2.0171および1.7524のd−少なくともページングでのx線回折ピークを示した。これらのピークはマリックら、J.MATER.RES.第24巻、1375〜1387ページ(2009)において言及されている立方体InSe相についての報告と適合している。EDSサンプルは導電性炭素テープ上に取り付けられ、日立3400VP−SEMにおいて様々な圧力モードでコーティングされずに試験された。EDSスペクトルは15KeVで30mmSD検出器を用いて集められた。EDSデータは堆積した膜における第3a族物質とセレンとの間の重量%比を提供する。EDSデータは最適化されていない膜における5〜15重量%の炭素含量、および下地モリブデン基体からのシグナルも示した。
【0055】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)セレン/第3a族錯体と(b)液体キャリアとを含む、セレン/第3a族インクであって;
前記セレン/第3a族錯体は、
セレンを含むセレン成分;
式R−COOH(式中、RはC1−10アルキル、C1−10ハロアルキルおよびC1−10メルカプトアルキルから選択される)を有するカルボン酸成分;
多座配位子と錯体形成したアルミニウム、インジウム、ガリウムおよびタリウムから選択される少なくとも1種の第3a族物質を含む第3a族錯体:
の組み合わせを当初成分として含み;
セレン/第3a族錯体が液体キャリア中に安定に分散されている;
セレン/第3a族インク。
【請求項2】
第3a族錯体がインジウム錯体を含む請求項1に記載のインク。
【請求項3】
第3a族錯体がガリウム錯体を含む請求項1に記載のインク。
【請求項4】
液体キャリアが窒素含有溶媒であり、当該窒素含有溶媒が(a)分子あたり2つの窒素原子を有し、(i)それら窒素原子が脂肪族鎖において少なくとも3つの炭素原子で隔てられているか、または(ii)それら窒素原子が両方とも不飽和環構造に含まれている(例えば、イミダゾール環)アミン溶媒;並びに(b)分子あたり3つ以上の窒素原子を有するアミン溶媒から選択される、請求項1に記載のインク。
【請求項5】
液体キャリアが1,3−ジアミノプロパンである請求項1に記載のインク。
【請求項6】
セレンを含むセレン成分を提供し;
式R−COOH(式中、RはC1−10アルキル、C1−10ハロアルキルおよびC1−10メルカプトアルキルから選択される)を有するカルボン酸成分を提供し;
多座配位子と錯体形成したアルミニウム、インジウム、ガリウムおよびタリウムから選択される少なくとも1種の第3a族物質を含む第3a族錯体を提供し;
液体キャリアを提供し;
セレン成分、カルボン酸成分、第3a族錯体および液体キャリアを一緒にしてセレン/第3a族インクを形成する:ことを含み、セレン/第3a族インクが安定な分散物である、セレン/第3a族インクを製造する方法。
【請求項7】
第3a族錯体とカルボン酸成分とが一緒にされて、化合した第3a族錯体/カルボン酸成分を形成し、その後にセレン成分と一緒にされてセレン/第3a族インクを形成する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
基体を提供する工程;
セレンを含むセレン成分を提供し;式R−COOH(式中、RはC1−10アルキル、C1−10ハロアルキルおよびC1−10メルカプトアルキルから選択される)を有するカルボン酸成分を提供し;液体キャリアを提供し;多座配位子と錯体形成したアルミニウム、インジウム、ガリウムおよびタリウムから選択される少なくとも1種の第3a族物質を含む第3a族錯体を提供し;セレン成分、カルボン酸成分、第3a族錯体および液体キャリアを一緒にしてセレン/第3a族インクを形成することを含んで、セレン/第3a族インクが安定な分散物である、セレン/第3a族インクを形成する工程;
セレン/第3a族インクを基体上に堆積させる工程;
堆積したセレン/第3a族インクを加熱して液体キャリアを除いてMSe物質を残す工程、ここで、基体上に堆積したMSe物質におけるM:Seのモル比は6:1〜1:6である;並びに、
場合によっては堆積したMSe物質をアニールする工程:
を含む、基体上にMSe物質を堆積させる方法。
【請求項9】
第3a族錯体とカルボン酸成分とが一緒にされて、化合した第3a族錯体/カルボン酸成分を形成し、その後にセレン成分と一緒にされてセレン/第3a族インクを形成する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
セレン成分とカルボン酸成分とが一緒にされて、化合したセレン/カルボン酸成分を形成し、その後に第3a族錯体と一緒にされてセレン/第3a族インクを形成する、請求項8に記載の方法。

【公開番号】特開2011−241396(P2011−241396A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−108913(P2011−108913)
【出願日】平成23年5月15日(2011.5.15)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)
【Fターム(参考)】