説明

セロトニントランスポーター、セロトニン受容体およびノルアドレナリントランスポーターに親和性を有する化合物の治療的使用

4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジンおよび治療上許容可能なその塩の治療的使用が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セロトニン受容体への親和性と併せてセロトニンおよびノルアドレナリンの輸送阻害活性を有する化合物の治療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI)については、何年もの間、うつ病および不安など多くのCNS疾患の治療用に医師が好んで使用してきたが、その理由は、SSRIは有効であり、以前の世代のCNS薬、すなわち、いわゆる三環系薬に比べて好ましい安全プロファイルを有するからである。ところが、SSRI薬は、相当な割合の非応答者(すなわち、治療に応答しないか、または完全には応答しない患者)がいることが障害になっている。そのうえ、SSRIは、典型的には、数週間の治療後にようやく効果を示し始める。最後に、典型的には、SSRI薬がもたらす有害作用は三環系薬より少ないが、SSRI薬を投与すると、例えば睡眠障害などの有害作用が引き起こされることが多い。
【0003】
セロトニントランスポーター(SERT)の阻害と1種または2種以上のセロトニン受容体に対する活性とを組み合わせると、セロトニンレベルをより急速に上昇させることができることは公知である。5−HT1A部分作動薬であるピンドロールとセロトニン再取込み阻害薬とを併用すると、効果がより早く発現することが報告されている(非特許文献1)。同様に、セロトニン再取込み阻害薬と、5−HT2C拮抗作用または逆作動作用を有する化合物(5−HT2C受容体で負の効果を有する化合物)とを併用すると、微小透析実験で測定した場合、終末領域における5−HTのレベルが相当上昇することも見出されている(特許文献1)。SERT化合物の治療効果は、誘導されるセロトニンレベルの上昇が原因と考えられるので、これらの活性を組み合わせれば、臨床の場における治療効果の発現が早期化し、セロトニン再取込み阻害薬の治療効果が増大または増強すると思われる。
【0004】
認知を制御する神経事象にはいくつかの神経伝達物質が関与していると推定される。特に、コリン作動系は認知において顕著な役割を果たしていることから、コリン作動系に影響する化合物は、認知機能障害の治療に有用である可能性がある。5−HT受容体に影響する化合物はコリン作動系に影響することが知られており、したがって、こうした化合物は認知機能障害の治療において有用である可能性がある。
【0005】
5−HT受容体の拮抗薬、特に5−HT2Aおよび5−HT2C拮抗薬は睡眠障害の治療に有用である可能性があることはよく知られている(非特許文献2、非特許文献3)。
【0006】
したがって、SERT阻害薬であり5−HT2A/Cおよび5−HT受容体の阻害薬である化合物は、セロトニンレベルを上げることが有効と考えられる疾患にも罹患している患者における認知機能障害の治療において特に有用であることが期待される。そのような治療的介入を行えば、SERT化合物の使用に伴うことの多い、例えば睡眠に対する有害作用の発生が減ると期待される。このような有害作用には、睡眠の開始および維持に伴う問題、不眠症、レム睡眠抑制、睡眠潜時の長期化、睡眠効率の低下、夜間覚醒の増加および睡眠断片化に伴う問題が含まれる(非特許文献4、非特許文献5)。
【0007】
特許文献2として公開された国際特許出願では、例えば、遊離塩基としての化合物4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジンおよび対応するHCl塩が開示されている。この化合物は、セロトニントランスポーターおよび5−HT2C受容体の阻害薬であると報告されており、情動障害、例えばうつ病および不安の治療に有用とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第01/41701号
【特許文献2】国際公開第2003/029232号
【特許文献3】国際公開第2007/144006号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Psych.Res.、125、81〜86頁、2004
【非特許文献2】Neuropharmacol.、33、467〜471頁、1994
【非特許文献3】Bioorg.Med.Chem.Lett.、15、3665〜3669頁、2005
【非特許文献4】Hum.Psychopharm.Clin.Exp.、20、533〜559頁、2005
【非特許文献5】Int.Clin.Psychpharm.、21(補遺1)、S25〜S29頁、2006
【非特許文献6】Clin.Ther.、26、951〜979頁、2004
【非特許文献7】Exp.Opin.Ther.Targets、11、527〜540頁、2007
【非特許文献8】J.Nervous Mental Disease、185、748〜754頁、197
【非特許文献9】Brain Res.Bull.、58、345〜350頁、2002
【非特許文献10】Hum Psychpharmacol.、8、41〜47頁、1993
【非特許文献11】Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第19版、Gennaro編、Mack Publishing Co.、Easton、PA、1995
【非特許文献12】Neuropharm.、48、252〜263頁、2005
【非特許文献13】Pain、51、5〜17頁、1992
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献3では、4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジンのさらなる医薬用途が開示されており、この化合物が、セロトニン輸送阻害薬であることに加えてノルアドレナリン輸送阻害薬であり、5−HT2Aおよび5−HT受容体ならびにαアドレナリン受容体の拮抗薬であることも開示されている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペリジンが、既知の薬理学的プロファイルに加え、ノルアドレナリン再取込みの強力な阻害薬であり、セロトニン受容体3(5−HT)の拮抗薬であることを見出した。したがって、本発明は、ある一定の疾患を治療する方法であって、4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペリジンおよび薬学的に許容可能なその塩を、該治療を必要とする患者に投与することを含む方法に関する。
【0012】
1つの実施形態では、本発明は、ある一定の疾患を治療するための薬剤の製造における4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジンおよび薬学的に許容可能なその塩の使用に関する。
【0013】
1つの実施形態では、本発明は、ある一定の疾患の治療において使用するための4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペリジンおよび薬学的に許容可能なその塩に関する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】化合物IのHBr付加塩のX線回折パターン。
【図2】化合物IのHBr付加塩の溶媒和物のX線回折パターン。
【図3】化合物IのDL−乳酸付加塩のX線回折パターン。
【図4】L−アスパラギン酸との混合物中の化合物IのL−アスパラギン酸付加塩(1:1)のX線回折パターン。
【図5】L−アスパラギン酸との混合物中の化合物IのL−アスパラギン酸付加塩水和物(1:1)のX線回折パターン。
【図6】グルタミン酸一水和物との混合物中の化合物Iのグルタミン酸付加塩(1:1)のX線回折パターン。
【図7】化合物Iのグルタル酸付加塩(1:1)のX線回折パターン。
【図8】化合物Iのマロン酸付加塩(1:1)α型のX線回折パターン。
【図9】化合物Iのマロン酸付加塩β型のX線回折パターン。
【図10a】化合物I投与時の前前頭皮質および腹側海馬中のアセチルコリンレベル。
【図10b】化合物I投与時の前前頭皮質および腹側海馬中のアセチルコリンレベル。
【図11】本発明の化合物の投与時の前前頭皮質中のドパミンレベル。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、化合物I、すなわち4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペリジンおよび薬学的に許容可能なその塩の使用に関する。4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペリジンの構造は、
【0016】
【化1】

である。
【0017】
1つの実施形態では、前記薬学的に許容可能な塩は、非毒性である酸の酸付加塩である。前記塩には、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、アスコルビン酸、コハク酸、シュウ酸、ビスメチレンサリチル酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、酢酸、プロピオン酸、酒石酸、サリチル酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、ケイ皮酸、シトラコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、イタコン酸、グリコール酸、p−アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸、テオフィリン酢酸などの有機酸、ならびに8−ハロテオフィリン、例えば8−ブロモテオフィリンから生成される塩が含まれる。前記塩は、臭化水素酸、塩酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸および硝酸などの無機塩から生成されてもよい。追加的な有用な塩を例3の表(表1)に掲載する。
【0018】
1つの実施形態では、本発明は、化合物Iの使用を提供するが、但し、化合物Iは、非結晶性形態の遊離塩基または結晶性形態の塩酸塩ではない。
【0019】
経口剤形、特に錠剤およびカプセル剤は、投与が簡単であるため服薬遵守率が高まることから、患者および医師に好まれる場合が多い。錠剤およびカプセル剤の場合、活性成分は結晶質であることが好ましい。1つの実施形態では、化合物Iは結晶質であり、特に、塩酸塩でないことを条件とする。
【0020】
本発明において使用される結晶は、溶媒和物、すなわち、溶媒分子が結晶構造の一部を形成する結晶として存在してもよい。溶媒和物は水から形成されてもよく、その場合、溶媒和物は水和物と呼ぶことが多い。あるいは、溶媒和物は、例えばエタノール、アセトンまたは酢酸エチルなど他の溶媒から形成されてもよい。溶媒和物の正確な量は、条件に依存することが多い。例えば、水和物であれば、温度が上昇するに従い、または相対湿度が低下するに従い、典型的に水を遊離する。例えば湿度などの条件が変化した際に、変化しない、またはわずかしか変化しない化合物は、医薬製剤により適しているとみなされるのが一般的である。HBr付加塩は水から析出させた際に水和物を形成しないが、コハク酸、リンゴ酸および酒石酸(tatrate)の酸付加塩などの化合物は水和物を形成することが認められる。
【0021】
一部の化合物は吸湿性であり、すなわち、こうした化合物は湿度に曝されると水を吸収する。吸湿性は、医薬製剤中、特に、錠剤またはカプセル剤などの乾燥製剤の形で提供されることになる化合物にとって望ましくない特性と通常みなされる。1つの実施形態では、本発明は、吸湿性の低い結晶を提供する。
【0022】
結晶性の活性成分を使用する経口剤形の場合、前記結晶が明確に規定(well−defined)されていることも有利である。この文脈において用語「明確に規定された」とは、特に、化学量論が明確に規定されていること、すなわち、塩を形成するイオン間の比率が、小さい整数の間の比率(1:1、1:2、2:1、1:1:1など)であることを意味する。1つの実施形態では、本発明の化合物は、明確に規定された結晶である。
【0023】
活性成分の溶解性も、バイオアベイラビリティに直接影響しうるので、剤形の選択に重要である。経口剤形の場合、活性成分の溶解性が高い方が、バイオアベイラビリティを高めることから有利であると通常考えられている。一部の患者、例えば高齢の患者は錠剤を飲み込むのが難しいことがあり、経口用ドロップ溶液(drop solution)は、錠剤を飲み込む必要性を回避する、適当な代替物である場合がある。経口用ドロップ溶液の体積を制限するためには、溶液中に高濃度の活性成分を有する必要があり、さらには、化合物の溶解性が高いことが必要である。表3に示すように、DL−乳酸、L−アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタル酸およびマロン酸の付加塩は、きわめて高い溶解性を有する。
【0024】
結晶形態は、化合物の濾過特性および加工特性に影響を及ぼす。針状結晶は、濾過がより難しくなり時間がかかるために、作製環境における取扱いが難しくなりがちである。所与の塩の正確な結晶形態は、例えば、塩が析出した条件に依存し得る。本発明で使用するHBr酸付加塩は、エタノール、酢酸およびプロパノールから析出させた場合は溶媒和された針状結晶を生成するが、HBr付加塩を水から析出させた場合の非水和形態の結晶(針状ではない)は、より優れた濾過特性をもたらす。
【0025】
表3には、結果としてのpH、すなわち、塩の飽和溶液におけるpHも示す。この特性は重要であるが、その理由は、保管中に水分を完全に回避することは決してできず、水分が蓄積すると、結果としてのpHが低い塩を含む錠剤の中または上でpHの低下を生じることになり、それにより貯蔵寿命が短縮化することがあるからである。そのうえ、結果としてのpHが低い塩は、錠剤が湿式造粒により作製されている場合に加工設備の腐食を生じる可能性がある。表3のデータから、HBr、HClおよびアジピン酸の付加塩はこの点において優れている可能性があることが示唆される。
【0026】
1つの実施形態では、本発明で使用する化合物、すなわち式Iの化合物は、HBr付加塩である。
【0027】
1つの実施形態では、本発明で使用する化合物は、DL−乳酸付加塩、特に1:1塩である。
【0028】
1つの実施形態では、本発明で使用する化合物は、L−アスパラギン酸付加塩、特に1:1塩である。
【0029】
1つの実施形態では、本発明で使用する化合物は、グルタミン酸付加塩、特に1:1塩である。
【0030】
1つの実施形態では、本発明で使用する化合物は、グルタル酸付加塩、特に1:1塩である。
【0031】
1つの実施形態では、本発明で使用する化合物は、マロン酸付加塩、特に1:1塩であり、この塩は、2つの多形変態α型およびβ型で存在することが見出され、中でもβ型は、溶解性がより低いことに基づき最も安定であると考えられる。
【0032】
1つの実施形態では、本発明で使用する化合物は、精製された形態のものである。用語「精製された形態」は、化合物には、他の化合物または他の形態(すなわち、場合によっては前記化合物の多形)が本質的に含まれていないことを示すことを意図したものである。
【0033】
1つの実施形態では、本発明で使用する化合物は、結晶形態、特に、精製された形態のHBr付加塩である。さらなる実施形態では、前記HBr塩は、粉末X線回折図(X−ray powder diffractogram:XRPD)において約6.08°、14.81°、19.26°および25.38°(2θ)にピークを有し、特に、前記HBr塩は、図1に示すようなXRPDを有する。
【0034】
1つの実施形態では、本発明で使用する化合物は、結晶形態、特に、精製された形態のDL−乳酸付加塩(1:1)である。さらなる実施形態では、前記DL−乳酸付加塩は、XRPDにおいて約5.30°、8.81°、9.44°および17.24°(2θ)にピークを有し、特に、前記DL乳酸付加塩は、図2に示すようなXRPDを有する。
【0035】
1つの実施形態では、本発明で使用する化合物は、結晶形態、特に、精製された形態のL−アスパラギン酸付加塩(1:1)である。さらなる実施形態では、前記L−アスパラギン酸付加塩は、溶媒和されておらず、XRPDにおいて約11.05°、20.16°、20.60°および25.00°(2θ)にピークを有する。1つの実施形態では、前記L−アスパラギン酸塩は、L−アスパラギン酸と混合した場合に、図3に示すようなXRPDを有する。1つの実施形態では、前記L−アスパラギン酸付加塩は、特に、精製された形態の水和物である。さらなる実施形態では、前記L−アスパラギン酸付加塩の水和物は、XRPDにおいて約7.80°、13.80°、14.10°および19.63°(2θ)にピークを有する。1つの実施形態では、前記L−アスパラギン酸付加塩の水和物は、L−アスパラギン酸と混合した場合に、図4に示すようなXRPDを有する。
【0036】
1つの実施形態では、本発明で使用する化合物は、結晶形態、特に、精製された形態のグルタミン酸付加塩(1:1)である。さらなる実施形態では、前記グルタミン酸付加塩は、XRPDにおいて約7.71°、14.01°、19.26°および22.57°(2θ)にピークを有し、特に前記グルタミン酸塩は、グルタミン酸一水和物と混合した場合、図5に示すようなXRPDを有する。
【0037】
1つの実施形態では、本発明で使用する化合物は、結晶形態、特に、精製された形態のマロン酸付加塩(1:1)である。さらなる実施形態では、前記マロン酸付加塩はα型であり、XRPDにおいて約10.77°、16.70°、19.93°および24.01°(2θ)にピークを有するか、または、前記マロン酸付加塩はβ型であり、XRPDにおいて約6.08°、10.11°、18.25°および20.26°(2θ)にピークを有し、特に前記マロン酸付加塩は、図7または8に示すようなXRPDを有する。
【0038】
1つの実施形態では、本発明で使用する化合物は、結晶形態、特に、精製された形態のグルタル酸付加塩(1:1)である。さらなる実施形態では、前記グルタル酸付加塩は、XRPDにおいて約9.39°、11.70°、14.05°および14.58°(2θ)にピークを有し、特に、前記グルタル酸付加塩は、図6に示すようなXRPDを有する。
【0039】
化合物Iの薬理学的プロファイルは、セロトニンおよびノルアドレナリンの再取込み阻害、および、5−HT拮抗作用を包含する。このような活性から、化合物Iは、疼痛、例えば慢性疼痛の治療において特に有用であり得ることが示唆される[Clin.Ther.、26、951〜979頁、2004(非特許文献6);Exp.Opin.Ther.Targets、11、527〜540頁、2007(非特許文献7)]。事実、例6に掲載するデータは、化合物Iが疼痛の治療において有用であることを示している。化合物Iは、疼痛の治療に、または他の疾患(例えばCNS疾患、特にうつ病または不安)に伴う疼痛の治療に使用できる。
【0040】
例4に掲載するデータは、化合物Iが前前頭皮質および海馬中でのアセチルコリンの細胞外レベルの増加をもたらすことを示すものである。脳内のアセチルコリンレベルを増加させることはアルツハイマー病および認知機能障害の治療において全般的に役立つ(アルツハイマー病の治療におけるアセチルコリンエステラーゼ阻害薬の使用を参照)という長年の臨床的証拠がある。
【0041】
例5に掲載するデータは、化合物Iが前前頭皮質中でのドパミンの細胞外レベルの増加をもたらすことを示すものである。ドパミン受容体作動薬またはドーパによる治療時のパーキンソン病患者における実行機能および認知機能の改善に基づき、ドパミンレベルは認知についても顕著な役割を果たすと提唱されている。認知機能障害は、老人性のうつ病または不安、すなわち、高齢者の集団におけるうつ病または不安において一般的である。本発明で使用する化合物について示すデータから、こうした化合物は高齢者の集団におけるうつ病または不安の治療に有用であることが示唆される。
【0042】
認知欠損または認知機能障害には、認知機能または認知領域、例えば、作業記憶、注意および警戒、言語の学習および記憶、視覚的な学習および記憶、推理および問題解決、例えば実行機能、処理スピードおよび/または社会的認知の低下が含まれる。特に、認知欠損または認知機能障害は、注意欠如、解体した思考、思考緩慢、理解困難、集中力欠如、問題解決障害、記憶力不足、思考表現困難、および/または、思考、感情および行動の統合困難、または無関係な思考の消去困難を指し得る。用語「認知欠損」および「認知機能障害」は、同じ内容を指すことを意図したものであり互換的に使用される。
【0043】
1つの実施形態では、化合物Iは、認知機能障害に加えて、うつ病;全般性うつ病(generalized depression);大鬱病性障害;不安障害(全般性不安障害(general anxiety disorder)および恐慌性障害を含む);強迫性障害;統合失調症;パーキンソン病;認知症;AIDS認知症;ADHD;加齢に関連する記憶障害;ダウン症候群、トリプトファン加水分解酵素遺伝子突然変異またはアルツハイマー病などの情動障害といった別のCNS障害に罹患していると診断されてもいる患者の治療のために使用してもよい。
【0044】
認知機能障害は、例えば大鬱病性障害など、うつ病の代表的な特徴に属する。認知機能障害は、抑鬱状態の改善が認知機能障害の改善にもつながると考えられるという意味では、ある程度はうつ病に続発するものである可能性がある。しかし、認知障害は、事実、うつ病から独立したものであるという明確な証拠もある。例えば、いくつかの研究により、うつ病から回復した際に認知機能障害が持続していることが示されている[J.Nervous Mental Disease、185、748〜754頁、197(非特許文献8)]。さらに、抗鬱病薬はうつ病および認知機能障害に差次的効果を及ぼすことから、うつ病と認知機能障害とは、共存する状態であることが多くても独立したものであるという見解がさらに支持される。セロトニンおよびノルアドレナリンの医薬は、抑うつの症状において匹敵する改善をもたらすが、いくつかの研究により、ノルアドレナリン作動系を調節しても、セロトニンの調節ほどには認知機能が改善しないことが示されている[Brain Res.Bull.、58、345〜350頁、2002(非特許文献9);Hum Psychpharmacol.、8、41〜47頁、1993(非特許文献10)]。
【0045】
化合物Iの認知への効果は、精神運動遅滞の治療においても有用である。精神運動遅滞は、対象における認知機能障害および身体運動の低下を特徴とする。精神運動遅滞は、うつ病患者においてしばしば見られ、この場合、重度のうつ病であることを示している。精神運動遅滞に罹患している患者は、更衣、自分の身繕いおよび料理などの日常活動を行ううえで、また買い物など移動が必要な事柄を行ううえで困難を有する。
【0046】
化合物Iを、70名の健康な志願者に最大30mg/日の化合物Iまたはプラセボを投与する多回投与臨床試験において使用した。49名の対象には活性化合物を投与し、21名の対象にはプラセボを投与した。試験中、血圧を含む生命兆候を測定したところ、最大用量の場合にのみ、血圧上昇の兆候があった。このことから、化合物Iは、予想される臨床用量では血圧の上昇を生じさせず、したがって、化合物Iは高血圧症患者または高血圧症のリスクが高い患者の治療に使用できることが示唆されると考えられよう。
【0047】
本発明で使用する化合物の幅広い薬理学的プロファイルから、この化合物はSSRIを用いた治療に応答しないかまたは適切に応答しない患者のうつ病の治療にも有用であることが示唆される。
【0048】
化合物Iの独特な薬理学的プロファイルにより、この化合物は、以下から選択される疾患の治療に有用となる:重度のうつ病などのうつ病、精神運動遅滞、気分変調性障害、循環気質、全身疾患(generalized medical condition)に起因する気分障害、物質誘発性うつ病、反復性うつ病、単一エピソードうつ病、小児うつ病、非定型うつ病、脳卒中後うつ病、消耗性うつ病、IBS(過敏性腸症候群)などの胃腸痛、乱用、敵意、被刺激性、疲労、不安(不安性うつ病)、レヴィー小体病、ハンチントン病または多発性硬化症に関連するうつ病、疼痛に伴う全般性不安障害、季節性感情障害(SAD)、高血圧症のリスクが高い患者におけるうつ病または不安、睡眠問題を有する患者におけるうつ病または不安、ストレス関連障害、急性ストレス、認知症、軽度認知機能障害(MCI)、統合失調症またはパーキンソン病における認知障害、加齢に伴う認知障害、血管性認知症、白質病変、小血管病、うつ病、全般性うつ病、大鬱病性障害、不安障害(全般性不安障害および恐慌性障害を含む)、強迫性障害、統合失調症、パーキンソン病、認知症、AIDS認知症、ADHD、加齢に関連する記憶障害、ダウン症候群、トリプトファン加水分解酵素遺伝子突然変異、てんかん、外傷性脳傷害またはアスペルガー症候群、月経前、月経前後もしくは月経後の不快気分障害、病的泣き(pathological crying)、自閉症、肥満、食欲不振、過食症および無茶食い、衝動調節障害、間欠性爆発性障害、窃盗癖、放火癖、病的賭博、抜毛癖、行為障害、燃え尽き、ストレス、慢性疲労症候群、概日リズム障害、睡眠障害などの情動障害を伴う認知障害;睡眠呼吸障害;低呼吸症候群;行動障害、高齢者における行動障害、認知症に関連する行動障害、ADHD、アスペルガー症候群および自閉症に関連する強迫性スペクトラム障害および注意スペクトラム障害、認知症およびアルツハイマー病における攻撃性および激越、HPA軸機能亢進に関連するインスリン抵抗性、むち打ち症、飛行恐怖症、エレベーター恐怖症または小部屋恐怖症および弱視。
【0049】
ここで言う重度のうつ病は、患者がMADRS尺度で30超(32超または35超など)を記録するうつ病を指すことを意図している。
【0050】
したがって、1つの実施形態では、本発明は、精神運動遅滞;重度のうつ病;気分変調性障害;循環気質;全身状態に起因する気分障害;物質誘発性うつ病;反復性うつ病;単一エピソードうつ病;小児うつ病;非定型うつ病;脳卒中後うつ病;消耗性うつ病;胃腸痛、IBS、乱用、敵意、被刺激性、疲労、不安(不安性うつ病)、レヴィー小体病、ハンチントン病または多発性硬化症に関連するうつ病;疼痛に伴う全般性不安障害;季節性感情障害(SAD);高血圧症のリスクが高い患者におけるうつ病または不安;睡眠問題を有する患者におけるうつ病または不安;ストレス関連障害;急性ストレス;認知症;軽度認知機能障害(MCI);血管性認知症;白質病変;小血管病;情動障害、うつ病、全般性うつ病、大鬱病性障害、不安障害、全般性不安障害、恐慌性障害、強迫性障害、統合失調症、パーキンソン病、認知症、AIDS認知症、ADHD、加齢に関連する記憶障害、ダウン症候群、てんかん、外傷性脳傷害、アスペルガー症候群およびトリプトファン加水分解酵素遺伝子突然変異に関連する認知障害;閉経期前、閉経期前後または閉経期後の不快気分障害;病的泣き;自閉症;肥満;食欲不振;過食症;無茶食い;衝動調節障害;間欠性爆発性障害;窃盗癖;放火癖;病的賭博;抜毛癖;行為障害;燃え尽き;ストレス;慢性疲労症候群;概日リズム障害;睡眠障害;睡眠呼吸障害;低呼吸症候群;行動障害;高齢者における行動障害;認知症に関連する行動障害;ADHD、アスペルガー症候群および自閉症に関連する強迫性スペクトラム障害および注意スペクトラム障害;認知症およびアルツハイマー病における攻撃性および激越;HPA軸機能亢進に関連するインスリン抵抗性;むち打ち症;飛行恐怖症、エレベーター恐怖症または小部屋恐怖症;および弱視から選択される疾患を治療する方法であって、治療的有効量の化合物Iを、該治療を必要とする患者に投与することを含む方法を提供する。
【0051】
1つの実施形態では、治療対象となる患者は、前記患者が治療されている疾患を有すると診断されている。
【0052】
1つの実施形態では、本発明の化合物は、1日当たり約0.001〜約100mg/kg体重の量で投与される。
【0053】
典型的な経口投薬量は、1日当たり約0.001〜約100mg/kg体重、好ましくは1日当たり約0.01〜約50mg/kg体重の範囲内であり、1〜3回の投薬など1回または2回以上の投薬で投与される。正確な投薬量は、投与の頻度および様式、治療される対象の性別、年齢、体重および全身状態、治療される状態の性質および重症度、ならびに、治療対象となる任意の随伴疾患、ならびに当業者には明白な他の要素によって決まることになる。
【0054】
成人用の典型的な経口投薬量は、本発明の化合物1〜100mg/日(1〜30mg/日または5〜25mg/日など)の範囲内である。この投薬量は、典型的には、0.1〜50mg(1〜25mgなど、1、5、10、15、20 25、30、40、50または60mgなど)の本発明の化合物を1日1回または2回投与することにより達成できる。
【0055】
化合物の「治療的有効量」は、本明細書中で使用する場合、前記化合物の投与を含む治療的介入において、所与の疾患およびその合併症の臨床症状を治癒、軽減または部分的に進行抑止するのに十分な量を意味する。これを達成するのに妥当な量を、「治療的有効量」と定義する。この用語は、前記化合物の投与を含む治療において、所与の疾患およびその合併症の臨床症状を治癒、軽減または部分的に進行抑止するのに十分な量も包含する。各目的にとっての有効量は、疾患または傷害の重症度、ならびに対象の体重および全身状態によって決まることになる。適切な投薬量の決定は、値のマトリックスを構成し、マトリックス中のさまざまな点を試験することにより日常的な実験を用いて達成でき、これらは全て、訓練を受けた医師の通常の技術の範囲内であることは理解されよう。
【0056】
用語「治療」および「治療する(こと)」は、本明細書中で使用する場合、疾患または障害などの状態に対抗する目的での患者の管理および看護を意味する。この用語は、症状もしくは合併症を軽減するため、疾患、障害もしくは状態の進行を遅らせるため、症状および合併症を軽減もしくは緩和するため、および/または、疾患、障害もしくは状態を治癒または排除するため、ならびに状態を防止するための活性化合物の投与など、患者が罹患している所与の状態の治療の全範囲を包含することを意図しており、この場合の防止は、疾患、状態または障害に対抗する目的での患者の管理および看護として、症状または合併症の発症を防止するための活性化合物の投与を包含すると理解されたい。但し、予防的(防止的)および治療的(治癒的)な治療は、本発明の2つの別々の態様である。治療対象となる患者は、好ましくは哺乳動物、特にヒトである。
【0057】
1つの実施形態では、本発明は、精神運動遅滞;重度のうつ病;気分変調性障害;循環気質;全身状態に起因する気分障害;物質誘発性うつ病;反復性うつ病;単一エピソードうつ病;小児うつ病;非定型うつ病;脳卒中後うつ病;消耗性うつ病;胃腸痛、IBS、乱用、敵意、被刺激性、疲労、不安(不安性うつ病)、レヴィー小体病、ハンチントン病または多発性硬化症に関連するうつ病;疼痛に伴う全般性不安障害;季節性感情障害(SAD);高血圧症のリスクが高い患者におけるうつ病または不安;睡眠問題を有する患者におけるうつ病または不安;ストレス関連障害;急性ストレス;認知症;軽度認知機能障害(MCI);血管性認知症;白質病変;小血管病;情動障害、うつ病、全般性うつ病、大鬱病性障害、不安障害、全般性不安障害、恐慌性障害、強迫性障害、統合失調症、パーキンソン病、認知症、AIDS認知症、ADHD、加齢に関連する記憶障害、ダウン症候群、てんかん、外傷性脳傷害、アスペルガー症候群およびトリプトファン加水分解酵素遺伝子突然変異に関連する認知障害;閉経期前、閉経期前後または閉経期後の不快気分障害;病的泣き;自閉症;肥満;食欲不振;過食症;無茶食い;衝動調節障害;間欠性爆発性障害;窃盗癖;放火癖;病的賭博;抜毛癖;行為障害;燃え尽き;ストレス;慢性疲労症候群;概日リズム障害;睡眠障害;睡眠呼吸障害;低呼吸症候群;行動障害;高齢者における行動障害;認知症に関連する行動障害;ADHD、アスペルガー症候群および自閉症に関連する強迫性スペクトラム障害および注意スペクトラム障害;認知症およびアルツハイマー病における攻撃性および激越;HPA軸機能亢進に関連するインスリン抵抗性;むち打ち症;飛行恐怖症、エレベーター恐怖症または小部屋恐怖症;および弱視から選択される疾患を治療するための薬剤の製造における化合物Iの使用に関する。
【0058】
1つの実施形態では、本発明は、精神運動遅滞;重度のうつ病;気分変調性障害;循環気質;全身状態に起因する気分障害;物質誘発性うつ病;反復性うつ病;単一エピソードうつ病;小児うつ病;非定型うつ病;脳卒中後うつ病;消耗性うつ病;胃腸痛、IBS、乱用、敵意、被刺激性、疲労、不安(不安性うつ病)、レヴィー小体病、ハンチントン病または多発性硬化症に関連するうつ病;疼痛に伴う全般性不安障害;季節性感情障害(SAD);高血圧症のリスクが高い患者におけるうつ病または不安;睡眠問題を有する患者におけるうつ病または不安;ストレス関連障害;急性ストレス;認知症;軽度認知機能障害(MCI);血管性認知症;白質病変;小血管病;情動障害、うつ病、全般性うつ病、大鬱病性障害、不安障害、全般性不安障害、恐慌性障害、強迫性障害、統合失調症、パーキンソン病、認知症、AIDS認知症、ADHD、加齢に関連する記憶障害、ダウン症候群、てんかん、外傷性脳傷害、アスペルガー症候群およびトリプトファン加水分解酵素遺伝子突然変異に関連する認知障害;閉経期前、閉経期前後または閉経期後の不快気分障害;病的泣き;自閉症;肥満;食欲不振;過食症;無茶食い;衝動調節障害;間欠性爆発性障害;窃盗癖;放火癖;病的賭博;抜毛癖;行為障害;燃え尽き;ストレス;慢性疲労症候群;概日リズム障害;睡眠障害;睡眠呼吸障害;低呼吸症候群;行動障害;高齢者における行動障害;認知症に関連する行動障害;ADHD、アスペルガー症候群および自閉症に関連する強迫性スペクトラム障害および注意スペクトラム障害;認知症およびアルツハイマー病における攻撃性および激越;HPA軸機能亢進に関連するインスリン抵抗性;むち打ち症;飛行恐怖症、エレベーター恐怖症または小部屋恐怖症;および弱視から選択される疾患の治療において使用するための化合物Iに関する。
【0059】
本発明の化合物は、純粋な化合物として単独で、または薬学的に許容可能な担体もしくは賦形剤と組み合わせて、単回投与または複数回投与のいずれかで投与できる。本発明による医薬組成物は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第19版、Gennaro編、Mack Publishing Co.、Easton、PA、1995(非特許文献11)に開示されているものなど従来の手法に従い、薬学的に許容可能な担体または希釈剤、ならびに、他の任意の公知の佐剤および賦形剤を用いて製剤できる。
【0060】
この医薬組成物は具体的には、経口、経直腸、経鼻、経肺、局所(バッカルおよび舌下など)、経皮、槽内(intracisternal)、腹腔内、経膣および非経口(皮下、筋肉内、くも膜下腔内、静脈内および皮内など)経路など適当な任意の経路による投与用に製剤できるが、経口経路が好ましい。好ましい経路が、治療されることになる対象の全身状態および年齢、治療されることになる状態の性質および選択された活性成分によって決まることになることは理解されよう。
【0061】
経口投与用の医薬組成物には、カプセル剤、錠剤、糖剤、丸剤、ロゼンジ、散剤および顆粒剤などの固形剤形が含まれる。適切な場合には、こうした医薬組成物は、コーティングを施して調製できる。
【0062】
経口投与用の液体剤形には、液剤、乳剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤が含まれる。
【0063】
非経口投与用の医薬組成物には、水性および非水性の滅菌済み注射用液剤、分散剤、懸濁剤または乳剤、ならびに、使用に先立ち滅菌済みの注射用の液剤または分散剤に再構成される滅菌済み散剤が含まれる。
【0064】
他の適当な投与形態には、坐剤、噴霧剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、吸入剤、皮膚パッチ、インプラントなどが含まれる。
【0065】
好都合には、本発明の化合物は、約0.1〜60mg(1mg、5mg 10mg、15mg、20mgまたは25mgまたは30mgまたは40mgまたは50mgなど)の量の前記化合物を含有する単位投薬形態の形で投与する。
【0066】
静脈内、くも膜下腔内、筋肉内および類似の投与などの非経口経路の場合、典型的には、用量は、経口投与に用いる用量のほぼ約半分である。
【0067】
非経口投与の場合、滅菌済みの水溶液、水性プロピレングリコール、水性ビタミンEまたはゴマ油もしくはピーナッツ油中の本発明の化合物の溶液を使用することができる。そのような水溶液は、必要に応じ適切に緩衝すべきであり、液体希釈剤を十分な生理食塩水またはグルコースでまず等張性にすべきである。水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内の投与に特に適している。使用される滅菌済みの水性媒体は全て、当業者に公知の標準的な手法により容易に入手できる。
【0068】
適当な医薬担体には、不活性な固体希釈剤または増量剤、滅菌済みの水溶液および種々の有機溶剤が含まれる。固形担体の例は、乳糖、白土、ショ糖、シクロデキストリン、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、およびセルロースの低級アルキルエーテルである。液体担体の例は、シロップ、ピーナッツ油、オリーブ油、リン脂質、脂肪酸、脂肪酸アミン、ポリオキシエチレンおよび水である。本発明の化合物と薬学的に許容可能な担体とを組み合わせることにより形成される医薬組成物は、そうすることで、開示する投与経路に適したさまざまな剤形で容易に投与される。
【0069】
経口投与に適した本発明の製剤は、それぞれ所定量の活性成分を含有し、適当な賦形剤を含んでいてもよいカプセル剤または錠剤などの個別の単位として提供されてもよい。さらに、経口摂取できる製剤は、散剤もしくは顆粒剤、水性もしくは非水性の液体中の液剤もしくは懸濁剤、または、水中油型もしくは油中水型の液体乳剤の形態であってもよい。
【0070】
固形担体を経口投与用に使用する場合、調合品は、例えば、硬ゼラチンカプセルに入れた錠剤、散剤もしくは小丸剤の形態、またはトローチ剤もしくはロゼンジの形態であってよい。固形担体の量は変化させることができるが、普通は約25mg〜約1gであろう。
【0071】
液体担体を使用する場合、調合品は、シロップ剤、乳剤、軟ゼラチンカプセル、または水性もしくは非水性液体の懸濁剤または液剤など滅菌済みの注射用液剤の形態であってよい。
【0072】
錠剤は、活性成分を通常の佐剤および/または希釈剤と混合し、次いでこの混合物を慣用の打錠機中で圧縮することにより調製できる。佐剤または希釈剤の例には、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、タルカム、ステアリン酸マグネシウム、ゼラチン、乳糖、ゴムなどが含まれる。着色料、香味料、保存料などといった上記目的のために通常使用される他の任意の佐剤または添加剤を使用してもよいが、それらが活性成分と適合することが条件である。
【0073】
本発明の化合物を含むカプセル剤は、前記化合物を含む粉末を微結晶性セルロースおよびステアリン酸マグネシウムと混合し、前記粉末を硬ゼラチンカプセルに入れることにより調製できる。場合により、前記カプセル剤は、適当な顔料を用いて着色してもよい。典型的には、カプセル剤は、本発明の化合物を0.25〜20%(本発明の化合物を0.5〜1.0%、3.0〜4.0%または14.0〜16.0%など)を含むことになる。このような力価を用いると、単位投薬形態で本発明の化合物1、5、10、15、20、25、30、40、50または60mgを都合よく送達させることができる。
【0074】
注射用溶液は、注射用溶剤、好ましくは滅菌水の一部に活性成分および可能な添加剤を溶解し、溶液を所望の体積に調節し、溶液を滅菌し、適当なアンプルまたはバイアルの中にこれを充填することにより調製できる。等張化剤、保存剤、酸化防止剤など、当技術分野で慣用の適当な任意の添加剤を加えてもよい。
【0075】
化合物Iは、以下に示すように、賦形剤を用いて、力価の異なる錠剤の形態で製剤できる(比率(%)はw/w%である)。
化合物I、例えばHBr塩 1〜7%
リン酸水素カルシウム(無水) 35〜45%
トウモロコシデンプン 18〜23%
ヒドロキシプロピルセルロース 1〜4%
セルロース(微結晶性) 25〜30%
デンプングリコール酸ナトリウム 1〜5%
タルク 1〜3%
ステアリン酸マグネシウム 0.5〜2%
【0076】
化合物Iを含む錠剤の具体例は、以下のとおりである:
【0077】

【0078】
あるいは、化合物Iは、以下に示すように、賦形剤を用いて、力価の異なる錠剤の形態で製剤してもよい(比率(%)はw/w%である)。
化合物I、例えばHBr 1〜10%
マンニトール 35〜50%
トウモロコシデンプン 18〜25%
ヒドロキシプロピルセルロース 1〜4%
セルロース(微結晶性) 20〜25%
デンプングリコール酸ナトリウム 1〜5%
ステアリン酸マグネシウム 1〜5%
【0079】
化合物Iを含む錠剤の具体例は、以下のとおりである:
【0080】

【0081】
上に例示した錠剤は、例えば、特定の色を得、または錠剤をより飲み込みやすくするために、コーティングしてもよい。
【0082】
化合物Iは、単独でまたは別の治療上活性な化合物と組み合わせて投与するかのいずれでもよく、この場合、2つの化合物は、同時または逐次のいずれで投与してもよい。化合物Iと有利に組み合わせることができる治療上活性な化合物の例には以下が含まれる:鎮静薬または催眠薬(ベンゾジアゼピンなど)、抗痙攣薬(ラモトリジン、バルプロ酸、トピラメート、ガバペンチン、カルバマゼピンなど)、気分安定化剤(リチウムなど)、ドパミン作動性薬(ドパミン作動薬およびL−ドーパなど)、ADHD治療薬(アトモキセチンなど)、精神刺激薬(モダフィニル、ケタミン、メチルフェニデートおよびアンフェタミンなど)、他の抗鬱薬(ミルタザピン、ミアンセリンおよびブプロプリオンなど)、ホルモン(T3、エストロゲン、DHEAおよびテストステロンなど)、非定型抗精神病薬(オランザピンおよびアリピプラゾールなど)、定型抗精神病薬(ハロペリドールなど)、アルツハイマー病治療薬(コリンエステラーゼ阻害薬およびメマンチン、葉酸など)、S−アデノシルメチオニン、免疫調節薬(インターフェロンなど)、オピエート(ブプレノルフィンなど)、アンギオテンシンII受容体1拮抗薬(AT1拮抗薬)、ACE阻害薬、スタチンおよびα1アドレナリン拮抗薬(プラゾシンなど)。
【0083】
化合物Iは、特許文献2または特許文献3中で概説されているように調製することができる。化合物Iの塩は、適切な酸を加え、次いで析出させることにより調製できる。析出は、例えば、冷却、溶媒の除去、別の溶媒の添加またはその混合により実行できる。あるいは、化合物Iは、例に示すように製造してもよい。
【0084】
刊行物、特許出願および特許を含め、本明細書中で引用する全ての参考文献は、参照によりその全体が、また、別々に記載された、本明細書中の別の箇所で成される特定の文書の組込みの有無にかかわらず、各参考文献が参照により組み込まれると個別かつ具体的に示されその全体が本明細書中に記載されている場合と同程度に(法で認められる最大程度に)、本明細書に組み込まれる。
【0085】
本明細書中で他の形で示されるか、または文脈により明らかに矛盾することがない限り、本発明を説明する文脈における用語「a」および「an」および「the」および同様の指示語の使用は、単数および複数の両方に及ぶと解釈されたい。例えば、「化合物(the compound)」という語句は、特に指示がない限り、本発明の種々の「化合物」または特定の記載された態様を指すと理解されたい。
【0086】
特に指示がない限り、本明細書中に記載した厳密な値は全て、対応する近似値を代表する(例えば、特定の因子または測定に関して記載される例示的な厳密な値は全て、適切な場合には「約」により修飾して、対応する近似測定値も示すとみなすことができる)。
【0087】
本明細書中で、1つまたは複数の要素に関し、「を含む」、「を有する」、「を包含する」または「を含有する」などの用語を用いる一切の態様または本発明の態様の説明は、特に明記するか、または文脈により明らかに矛盾しない限り、当該の特定の1つまたは複数の要素「から成る」、「から本質的に成る」または「を実質的に含む」同様の態様または本発明の態様を支持することを意図している(例えば、特定の要素を含むものとして本明細書中に記載の組成物は、特に明記するか、または文脈により明らかに矛盾しない限り、当該要素から成る組成物についても記載しているものとして理解されるべきである)。
【実施例】
【0088】
分析方法
粉末X線回折図(XRPD)は、CuKα1放射線を用いて、PANalytical X’Pert PRO X−Ray Diffractometerで測定した。X’celerator検出装置を使用して、2θ範囲が5〜40°の反射モードで試料を測定した。
【0089】
Elementar製のElementar Vario EL装置を用いて元素組成(CHN)を測定した。各測定につき約4mgの試料を使用し、結果は2つの測定値の平均値として得る。
【0090】
例1A
セロトニン(5−HT)およびノルエピネフリン(NE)再取込みの阻害
試験化合物のアリコートおよびラットの皮質のシナプトソーム調製物を10分間/37℃で予めインキュベートしてから、[H]NEまたは[H]5−HT(最終濃度10nM)を加えた。10μMのタルスプラムまたはシタロプラムの存在下で非特異的な取込みを測定し、緩衝液の存在下で総取込み量を測定した。アリコートを37℃で15分間インキュベートした。インキュベーション後、Tomtec Cell Harvesterプログラムを用いて、0.1%PEI中に30分間予浸したUnifilter GF/Cで濾過することにより、シナプトソームが取り込んだ[H]NEまたは[H]5−HTを分離した。フィルターを洗浄し、Wallac MicroBeta計測器で計測した。
【0091】
NETでは、本発明の化合物は、23nMのIC50値を示す。SERTでは、本発明の化合物は、8nMのIC50値を示す。
【0092】
例1B
5−HT3A受容体拮抗作用
ヒトホモマー5−HT3A受容体を発現する卵母細胞においては、5−HTは、2600nMのEC50で電流を活性化する。この電流は、オンダンセトロンなどの古典的な5−HT拮抗薬で拮抗できる。オンダンセトロンは、この系中でKi値1nM未満を示す。本発明の化合物は、低濃度(0.1nM〜100nM)で強力な拮抗作用を呈し(IC50約10nM/Kb約2nM)、より高い濃度(100〜100000nM)で施用した場合の作動特性は、5−HT自体により誘発された最大電流の約70〜80%の最大電流に到達した(EC50約2600nM)。ラットホモマー5−HT3A受容体を発現する卵母細胞においては、5−HTは、3.3μMのEC50で電流を活性化する。実験は以下の要領で実施した。0.4%MS−222中で10〜15分間麻酔した成熟した雌のXenepus laevisから卵母細胞を外科的に取り出した。次に、この卵母細胞を、OR2緩衝液(82.5mN NaCl、2.0mM KCl、1.0mM MgCl2および5.0mM HEPES、pH7.6)中の0.5mg/mlのコラゲナーゼ(IA型、Sigma−Aldrich)を用い、室温で2〜3時間消化した。卵胞層を避けて卵母細胞を選別して、改変Barth生理食塩水緩衝液[88mM NaCl、1mM KCl、15mM HEPES、2.4mM NaHCO、0.41mM CaCl、0.82mM MgSO、0.3mM Ca(NO]に2mMピルビン酸ナトリウム、0.1U/lペニシリンおよび0.1μg/lストレプトマイシンを添加したものの中で24時間インキュベートした。IV−IV段階の卵母細胞を同定し、ヒト5−HT3A受容体受容体をコードするcRNA14〜50pgを含有するヌクレアーゼ不含の水12〜48nlを注射し、電気生理学的記録用に使用するまで(注射の1〜7日後)、18℃でインキュベートした。ヒト5−HT3受容体を発現している卵母細胞を1mlの槽中に入れ、リンゲル緩衝液(115mM NaCl、2.5mM KCl、10mM HEPES、1.8mM CaCl、0.1mM MgCl、pH7.5)で灌流した。寒天で細胞を固定し、3MのKClを含有する0.5−1MΩ電極を差し込み、電圧はGeneClamp500B増幅器により−90mVでクランプした。卵母細胞はリンゲル緩衝液で連続的に灌流し、薬物を灌流液に加えた。5−HT作動薬溶液を10〜30秒間加えた。10μMの5−HT刺激に対する濃度−応答を測定することにより、5−HT受容体拮抗薬の効力を調べた。
【0093】
例2A
化合物I、HBr塩
2−(4−トリルスルファニル)−フェニルブロミド
撹拌され窒素で覆われた反応器中で、N−メチル−ピロリドン、NMP(4.5L)に20分間窒素を流した。4−メチルベンゼンチオール(900g、7.25mol)、次いで1,2−ジブロモベンゼン(1709g、7.25mol)を加えた。最後の反応物として、カリウムtert−ブトキシド(813g、7.25mol)を最後に加えた。反応は発熱性であり、反応混合物の温度は70℃まで上昇した。次に、反応混合物を120℃まで2〜3時間加熱した。反応混合物を室温に冷却した。酢酸エチル(4L)および塩化ナトリウム水溶液(15%、2.5L)を加えた。この混合物を20分間撹拌した。水相を分離し、別に用意した酢酸エチル(2L)で抽出した。水相を分離し、有機相を合わせ、塩化ナトリウム溶液(15%、2.5L)で洗浄した。有機相を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させてから減圧下で蒸発させて、20〜30%NMPを含有する赤色の油状物とした。この油状物をメタノールで2倍の体積に希釈し、この混合物を還流させた。清澄な赤色の溶液が得られるまで、さらなるメタノールを加えた。結晶種を入れながら、この溶液を室温までゆっくり冷却させた。生成物は、オフホワイトの結晶として結晶化し、これを濾過により単離しメタノールで洗浄してから、恒量まで真空オーブン中にて40℃で乾燥させた。
【0094】
エチル4−ヒドロキシ−4−(2−(4−トリルスルファニル)フェニル)−ピペリジン−1−カルボキシレート
撹拌され窒素で覆われた反応器中で、2−(4−トリルスルファニル)−フェニルブロミド(600g、2.15mol)をヘプタン(4.5L)中に懸濁させた。室温で、ヘキサン(235mL、2.36mol)中の10M BuLiを10分かけて加えた。わずかな発熱しか認められなかった。この懸濁液を常温で1時間撹拌してから、−40℃に冷却した。THF(1.5L)に溶解させた1−カルブエトキシ−4−ピペリドン(368g、2.15mol)を、反応より速くない速度で加え、温度は−40℃未満に維持した。反応が完了したら反応生成物を0℃に温め、温度を10℃未満に維持しながら1M HCl(1L)を加えた。酸の水相を分離させて酢酸エチル(1L)で抽出した。有機相を合わせて、塩化ナトリウム溶液(15%、1L)で抽出した。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥および蒸発させて半結晶性の塊にした。この塊をエチルエーテル(250mL)でスラリー状にしてから濾過により取り出した。40℃の真空オーブン中で恒量まで乾燥させた。
【0095】
エチル4−(2−(4−トリルスルファニル)フェニル)−ピペリジン−1−カルボキシレート
トリフルオロ酢酸(2.8kg、24.9mol)およびトリエチルシラン(362g、3.1mol)を効率的な撹拌機付きの反応器中に入れた。エチル4−ヒドロキシ−4−(2−(4−トリルスルファニル)フェニル)−ピペリジン−1−カルボキシレート(462g、1.24mol)を、複数回に分けて粉末漏斗経由で加えた。反応はわずかに発熱性であった。温度は50℃に上昇した。添加を終えた後、反応混合物を60℃に18時間温めた。反応混合物を室温に冷却した。トルエン(750mL)および水(750mL)を加えた。有機相を単離し、別に用意したトルエン(750mL)で水相を抽出した。有機相を合わせ塩化ナトリウム溶液(15%、500mL)で洗浄してから、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。硫酸ナトリウムを濾過により除去し、濾液を減圧下で蒸発させて赤色の油状物とし、これを次のステップでさらに加工した。
【0096】
4−(2−(4−トリルスルファニル)フェニル)−ピペリジン臭化水素酸塩
例3で得た赤色の油状物としての未精製のエチル4−(2−(4−トリルスルファニル)フェニル)−ピペリジン−1−カルボキシレートを、撹拌された反応器中で酢酸中の臭化水素酸(40%、545mL、3.11mol)と混合した。この混合物を80℃で18時間加熱した。反応混合物を室温に冷却した。冷却中に生成物が晶出する。1時間後、反応混合物に室温でエチルエーテル(800mL)を加え、さらに1時間混合物を撹拌した。生成物を濾過により取り出し、エチルエーテルで洗浄してから50℃の真空オーブン中で恒量まで乾燥させた。
【0097】
例2B
化合物I、HBr塩
撹拌しわずかに加熱(約45℃)した、油状物としての4−(2−p−トリルスルファニル−フェニル)−ピペリジン−1−カルボン酸エチルエステル442グラムに、AcOH中の33重量%HBr545ml(5.7M、2.5相当)を加えた。この混合により、10℃発熱する。最終添加後、反応混合物を80℃に加熱し、18時間放置する。試料を取り出してHPLCにより分析し、完了していなければ、AcOH中の33重量%HBrをさらに加えなければならない。あるいは、混合物を25℃に冷却して、生成物4−(2−p−トリルスルファニル−フェニル)−ピペリジン臭化水素酸塩を析出させる。1時間後、25℃で、濃い懸濁液にジエチルエーテル800mlを加える。さらに1時間撹拌を続けてから、生成物を濾過により単離し、ジエチルエーテル400mlで洗浄し、真空下にて40℃で一晩乾燥させる。化合物Iの臭化水素酸塩を、白色の固体として単離した。
【0098】
例2C
化合物I、HBr塩の再結晶化
化合物IのHBr塩10.0グラムの混合物(例えば前述のように調製したもの)をHO 100ml中で加熱還流した。この混合物は清澄になり、80〜90℃で完全に溶解した。この清澄な溶液に木炭1グラムを加え、還流を15分間続けてから濾過し、放置して、室温まで自然に冷却させた。冷却中に白色の固体の析出が生じ、懸濁液を室温で1時間撹拌した。濾過し、真空下、40℃で一晩乾燥させると、化合物IのHBr酸付加塩6.9グラム(69%)が生成した。XRPDについては図1を参照されたい。元素分析:3.92%N、59.36%C、6.16%H(理論:3.85%N、59.34%C、6.09%H)
【0099】
例3
化合物I、さらなる塩
遊離塩基のストック溶液の調製
酢酸エチル500mlとHO 200mlとの混合物に化合物IのHBr塩50グラムを加えると、2相のスラリーが生成した。このスラリーに濃NaOH約25mlを加えたところ、清澄な2相の溶液(pHを測定したところ13〜14であった)が形成された。この溶液を15分間激しく撹拌すると、有機相が分離した。この有機相をHO 200mlで洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濾過し、真空下、60℃で蒸発させると、ほぼ無色の油状物としての収量38グラム(99%)の遊離塩基が得られた。
【0100】
酢酸エチルを用い、この油状物10グラムを溶解させて体積を150mlに調節すると酢酸エチル中0.235Mのストック溶液が生成され、ここからアリコート1.5ml(遊離塩基100mg)を使用した。
【0101】
96体積%のEtOHを用い、この油状物10グラムを溶解させて体積を100mlに調節するとEtOH中0.353Mのストック溶液が生成され、ここからアリコート1.0ml(遊離塩基100mg)を使用した。
【0102】
遊離塩基のストック溶液を用いた塩の形成
得られたアリコートを試験管の中に入れ、撹拌しながら、表1に示すとおりの適切な量の酸を加えた。酸が液体の場合、酸は希釈せずに加えたが、液体ではない場合には、添加の前に所与の溶媒中に溶解させた。混合および析出後、撹拌を一晩続け、濾過により析出物を回収した。真空中にて30℃で乾燥させる前に、少量の基準試料を取り出し、真空を用いずに室温で乾燥させた。この手順は、溶媒和物についてテストするために含めた。一部の結果を表1に示す。選択したXRPD回折図を図1〜9に示し、主要なピーク位置を表2にまとめる。表3は、本発明で使用する化合物の水溶性を、結果として得られる飽和溶液中でのpHと一緒に示すものである。カラム「析出物」は、溶解性決定後に単離された析出物が、溶解した化合物と同一であるかどうかを示しており、水和物の形成を示すものである。
【0103】
【表1】

【0104】
【表2】

【0105】
【表3】

【0106】
例4
アセチルコリンレベルに及ぼす影響
この実験は、本発明の化合物が、自由行動ラットの前前頭皮質および腹側海馬中のアセチルコリンの細胞外レベルに及ぼす影響を評価するために設計した。
【0107】
最初の体重が275〜300gの雄のSprague−Dawleyラットを使用した。動物は、一定の室内温度(21±2℃)および湿度(55±5%)に制御された条件下で、12時間の明/暗サイクル下で収容し、食餌および水道水は自由に摂取できるようにした。
【0108】
手術および微小透析実験
ヒプノルム/ドルミカム(2ml/kg)でラットに麻酔をかけ、腹側海馬中(座標:ブレグマ後方5.6mm、側方−5.0mm、腹側から硬膜に7.0mm、または、前頭皮質中(座標:ブレグマ前方3.2mm、側方0.8mm、腹側から硬膜に4.0mm)に透析プローブの先端部を配置するために、脳内ガイド・カニューレ(CMA/12)を定位的に海馬中に埋め込んだ。ガイド・カニューレの固定には、アンカー・スクリューおよびアクリル・セメントを使用した。直腸プローブにより動物の体温をモニターし、37℃に維持した。ラットは、手術から2日間かけて回復させ、1匹ずつケージに収容した。実験当日、ガイド・カニューレを通して微小透析プローブ(CMA/12、直径0.5mm、長さ3mm)を挿入した。
【0109】
プローブは、チャネル2個の回転台経由でマイクロインジェクション・ポンプに接続した。濾過済みのリンゲル液(145mm NaCl、3mM KCl、1mM MgCl、0.5μMネオスチグミンを含有する1.2mM CaCl)を用いた微小透析プローブの灌流は、脳内へのプローブの挿入直前に開始し、実験の継続期間にわたり1μl/分の一定流速で続けた。180分間の安定化後、実験を開始した。透析液を20分毎に回収した。実験後、動物を屠殺し、脳を取り出し、凍結させて、プローブ配置の検証用にスライスした。
【0110】
透析液のアセチルコリンの分析
100mM水素リン酸二ナトリウム、2.0mMオクタンスルホン酸、0.5mMテトラメチル塩化アンモニウムおよび0.005%MB(ESA)から成る移動相、pH8.0を使用する、電気化学的検出を用いたHPLCにより、透析液中のアセチルコリン(ACh)の濃度を分析した。固定化されたコリンオキシダーゼを含有するプレカラム酵素反応器(ESA)により注入試料(10μl)からコリンを排出させた後、分離用カラム(ESA ACH−250)、流速0.35ml/分、温度35℃でAchを分離した。試料は、分析用カラムの後、固定化されたアセチルコリンエステラーゼおよびコリンオキシダーゼを含有するポスト・カラム固相反応器(ESA)を通した。後者の反応器により、AChはコリンに、次いでコリンはベタインおよびHに変換された。後者は、プラチナ電極(Analytical cell:ESA、型式5040)を用いることにより電気化学的に検出した。
【0111】
データの提示
単回注射実験では、化合物投与の直前の3つの連続したACh試料の平均値を各実験についての基底レベルとし、データを基底値に対する比率(%)に変換した(注射前の基底値の平均値を100%に正規化)。データを図10aおよび10bに提示する。
【0112】
図10aおよび10bに提示するデータは、脳における細胞外アセチルコリンレベルの用量依存的な増加を示している。この前臨床的知見は、例えば、認知機能障害、および、認知機能障害を特徴とする疾患の治療に有用な、臨床的な状況での認知の改善と解釈されると期待される。
【0113】
例5
ドパミンレベルに及ぼす影響
本発明の化合物の単回注射は、ラットの前頭皮質中の細胞外ドパミン(DA)レベルを用量依存的に増加させた。図11に示すように、本発明の化合物は、8.9mg/kgおよび18mg/kgの皮下注射でそれぞれ、DAレベルをベースラインレベルより約100%および150%高めた。量は遊離塩基として計算する。
【0114】
方法
最初の体重が275〜300gの雄のSprague−Dawleyラットを使用した。動物は、一定の室内温度(21±2℃)および湿度(55±5%)に制御された条件下で、12時間の明/暗サイクル下で収容し、食餌および水道水は自由に摂取できるようにした。3日間の処置実験用に、浸透圧ミニポンプ(Alzet、2ML1)を使用した。ポンプは無菌条件下で充填し、セボフルランス(sevoflurance)麻酔下で皮下に埋め込んだ。実験は、ミニポンプを用いてオン・ボードで実施した。実験の最後に、3日間の処置後の試験化合物の血漿レベルを測定するための血液試料を採取した。
【0115】
手術および微小透析実験。
ヒプノルム/ドルミカム(2ml/kg)で動物に麻酔をかけ、脳内ガイド・カニューレ(CMA/12)を定位的に海馬中に埋め込み、腹側海馬中(座標:ブレグマ前方5.6mm、側方−5.0mm、腹側から硬膜に7.0mm、または、前頭皮質中(座標:ブレグマ前方3.2mm、側方3.0mm、腹側から硬膜に4.0mm)に透析プローブの先端を配置した。ガイド・カニューレの固定には、アンカー・スクリューおよびアクリル・セメントを使用した。直腸プローブにより動物の体温をモニターし、37℃に維持した。ラットは、手術から2日間かけて回復させ、1匹ずつケージに収容した。実験当日、ガイド・カニューレを通して微小透析プローブ(CMA/12、直径0.5mm、長さ3mm)を挿入した。プローブは、チャネル2個の回転台経由でマイクロインジェクション・ポンプに接続した。濾過済みのリンゲル液(145mm NaCl、3mM KCl、1mM MgCl、1.2mM CaCl)を用いた微小透析プローブの灌流は、脳内へのプローブの挿入直前に開始し、実験の継続期間にわたり1(1.3)μL/分の一定流速で続けた。180分間の安定化後、実験を開始した。透析液を20(30)分毎に回収した。実験後、断頭によりラットを屠殺し、脳を取り出し凍結させて、プローブ配置検証用にスライスした。
【0116】
透析液の分析。
電気化学的検出を用いたHPLCにより、透析液中のドパミンの濃度を分析した。逆相液体クロマトグラフィー(ODS150×3mm、3μM)によりモノアミンを分離した。ドパミン:90mM NaHPO、50mMクエン酸ナトリウム、367mg/lナトリウム1−オクタンスルホン酸、50μM EDTAおよび8%アセトニトリル(pH4.0)から成る移動相、流速0.5ml/分。電気化学的検出は、電量検出器、250mVのポテンシャル・セット(ガード・セルは350mV)(Coulochem II、ESA)を用いて達成した。
【0117】
例6
神経因性疼痛に及ぼす効果
神経因性疼痛に対する有効性を実証するため、神経因性疼痛のホルマリンモデルにおいて本発明の化合物をテストした[Neuropharm.、48、252〜263頁、2005(非特許文献12);Pain、51、5〜17頁、1992(非特許文献13)]。このモデルでは、マウスの左後肢足蹠の足底表面にホルマリン(4.5%、20μl)を注射し、その後、観察のために、マウスを個別のガラスのビーカー(容量2l)に入れる。ホルマリン注射により引き起こされた刺激は、傷害された足蹠を舐めるのに費やす時間の長さにより定量されるように、特徴的な2相性の行動応答を誘発する。第1相(約0〜10分)は直接的な化学的刺激および侵害受容を表し、これに対し第2相(約20〜30分)は、神経障害に由来する疼痛を表すと考えられる。2つの相は、行動が正常に戻る休止期間により隔てられる。2つの相において傷害された足蹠を舐めるのに費やす時間の長さの測定は、試験化合物が有痛刺激を減少させる有効性を評価するものである。
【0118】
8匹のC57/B6マウス(約25g)を群ごとに試験した。以下の表4は、2つの相、すなわち、ホルマリン注射後0〜5分および20〜30分における、傷害された足蹠を舐めるのに費やす時間の長さを示すものである。投与された化合物の量は、遊離塩基として計算する。
【0119】
【表4】

【0120】
表4に記載のデータは、本発明の化合物が直接的な化学的刺激および侵害受容を表す第1相においてはほとんど効果がないことを示すものである。さらに注目すべきことは、このデータは、神経因性疼痛の治療における本発明の化合物の効果を示す第2相において、足蹠を舐めるのに費やす時間の明確で用量依存的な短縮化を示すものでもあることである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
精神運動遅滞;重度のうつ病;気分変調性障害;循環気質;全身状態(generalised medical condition)に起因する気分障害;物質誘発性うつ病;反復性うつ病;単一エピソードうつ病;小児うつ病;非定型うつ病;脳卒中後うつ病;消耗性うつ病;胃腸痛、IBS、乱用、敵意、被刺激性、疲労、不安(不安性うつ病)、レヴィー小体病、ハンチントン病または多発性硬化症に関連するうつ病;疼痛に伴う全般性不安障害;季節性感情障害(SAD);高血圧症のリスクが高い患者におけるうつ病または不安;睡眠問題を有する患者におけるうつ病または不安;ストレス関連障害;急性ストレス;認知症;軽度認知機能障害(MCI);血管性認知症;白質病変(leucariosis);小血管病(small vessel disease);情動障害、うつ病、全般性うつ病(generalised depression)、大鬱病性障害、不安障害、全般性不安障害、恐慌性障害、強迫性障害、統合失調症、パーキンソン病、認知症、AIDS認知症、ADHD、加齢に関連する記憶障害、ダウン症候群、てんかん、外傷性脳傷害、アスペルガー症候群およびトリプトファン加水分解酵素遺伝子突然変異に関連する認知障害;閉経期前、閉経期前後または閉経期後の不快気分障害;病的泣き;自閉症;肥満;食欲不振;過食症;無茶食い(binge eating);衝動調節障害;間欠性爆発性障害;窃盗癖;放火癖;病的賭博;抜毛癖;行為障害;燃え尽き;ストレス;慢性疲労症候群;概日リズム障害;睡眠障害;睡眠呼吸障害;低呼吸症候群;行動障害(behavioural disturbance);高齢者における行動障害;認知症に関連する行動障害;ADHD、アスペルガー症候群および自閉症に関連する強迫性スペクトラム障害および注意スペクトラム障害;認知症およびアルツハイマー病における攻撃性および激越(agitation);HPA軸機能亢進に関連するインスリン抵抗性;むち打ち症;飛行恐怖症、エレベーター恐怖症または小部屋恐怖症(fear of small rooms);および弱視から選択される疾患を治療する方法であって、治療的有効量の4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジンおよび治療上許容可能なその塩(化合物I)を、治療を必要とする患者に投与することを含む方法。
【請求項2】
化合物Iが結晶質であり、但し、前記化合物が塩酸塩ではない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
化合物Iが臭化水素酸塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
化合物Iが、結晶質であり、約6.08°、14.81°、19.26°および25.30°(2θ)にXRPDピークを有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
化合物Iが、図1に示すようなXRPDを有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
化合物Iが、前記患者に約1〜60mgの単位用量で投与される、請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジンの臭化水素酸塩が前記患者に約10〜40mgで経口投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
精神運動遅滞;重度のうつ病;気分変調性障害;循環気質;全身状態に起因する気分障害;物質誘発性うつ病;反復性うつ病;単一エピソードうつ病;小児うつ病;非定型うつ病;脳卒中後うつ病;消耗性うつ病;胃腸痛、IBS、乱用、敵意、被刺激性、疲労、不安(不安性うつ病)、レヴィー小体病、ハンチントン病または多発性硬化症に関連するうつ病;疼痛に伴う全般性不安障害;季節性感情障害(SAD);高血圧症のリスクが高い患者におけるうつ病または不安;睡眠問題を有する患者におけるうつ病または不安;ストレス関連障害;急性ストレス;認知症;軽度認知機能障害(MCI);血管性認知症;白質病変;小血管病;情動障害、うつ病、全般性うつ病、大鬱病性障害、不安障害、全般性不安障害、恐慌性障害、強迫性障害、統合失調症、パーキンソン病、認知症、AIDS認知症、ADHD、加齢に関連する記憶障害、ダウン症候群、てんかん、外傷性脳傷害、アスペルガー症候群およびトリプトファン加水分解酵素遺伝子突然変異に関連する認知障害;閉経期前、閉経期前後または閉経期後の不快気分障害;病的泣き;自閉症;肥満;食欲不振;過食症;無茶食い;衝動調節障害;間欠性爆発性障害;窃盗癖;放火癖;病的賭博;抜毛癖;行為障害;燃え尽き;ストレス;慢性疲労症候群;概日リズム障害;睡眠障害;睡眠呼吸障害;低呼吸症候群;行動障害;高齢者における行動障害;認知症に関連する行動障害;ADHD、アスペルガー症候群および自閉症に関連する強迫性スペクトラム障害および注意スペクトラム障害;認知症およびアルツハイマー病における攻撃性および激越;HPA軸機能亢進に関連するインスリン抵抗性;むち打ち症;飛行恐怖症、エレベーター恐怖症または小部屋恐怖症;および弱視から選択される疾患を治療するための薬剤の製造における4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジンおよび治療上許容可能なその塩(化合物I)の使用。
【請求項9】
化合物Iが結晶質であり、但し、前記化合物が塩酸塩ではない、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
化合物Iが臭化水素酸塩である、請求項8に記載の使用。
【請求項11】
化合物Iが、結晶質であり、約6.08°、14.81°、19.26°および25.30°(2θ)にXRPDピークを有する、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
化合物Iが、図1に示すようなXRPDを有する、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記薬剤が、化合物I約1〜60mgの単位用量である、請求項8〜12のいずれか一つに記載の使用。
【請求項14】
前記薬剤が、約10〜40mgの単位用量の経口投与用の4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジンの臭化水素酸塩である、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
精神運動遅滞;重度のうつ病;気分変調性障害;循環気質;全身状態に起因する気分障害;物質誘発性うつ病;反復性うつ病;単一エピソードうつ病;小児うつ病;非定型うつ病;脳卒中後うつ病;消耗性うつ病;胃腸痛、IBS、乱用、敵意、被刺激性、疲労、不安(不安性うつ病)、レヴィー小体病、ハンチントン病または多発性硬化症に関連するうつ病;疼痛に伴う全般性不安障害;季節性感情障害(SAD);高血圧症のリスクが高い患者におけるうつ病または不安;睡眠問題を有する患者におけるうつ病または不安;ストレス関連障害;急性ストレス;認知症;軽度認知機能障害(MCI);血管性認知症;白質病変;小血管病;情動障害、うつ病、全般性うつ病、大鬱病性障害、不安障害、全般性不安障害、恐慌性障害、強迫性障害、統合失調症、パーキンソン病、認知症、AIDS認知症、ADHD、加齢に関連する記憶障害、ダウン症候群、てんかん、外傷性脳傷害、アスペルガー症候群およびトリプトファン加水分解酵素遺伝子突然変異に関連する認知障害;閉経期前、閉経期前後または閉経期後の不快気分障害;病的泣き;自閉症;肥満;食欲不振;過食症;無茶食い;衝動調節障害;間欠性爆発性障害;窃盗癖;放火癖;病的賭博;抜毛癖;行為障害;燃え尽き;ストレス;慢性疲労症候群;概日リズム障害;睡眠障害;睡眠呼吸障害;低呼吸症候群;行動障害;高齢者における行動障害;認知症に関連する行動障害;ADHD、アスペルガー症候群および自閉症に関連する強迫性スペクトラム障害および注意スペクトラム障害;認知症およびアルツハイマー病における攻撃性および激越;HPA軸機能亢進に関連するインスリン抵抗性;むち打ち症;飛行恐怖症、エレベーター恐怖症または小部屋恐怖症;および弱視から選択される疾患の治療において使用するための4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジンおよび治療上許容可能なその塩(化合物I)。
【請求項16】
結晶質であり、但し塩酸塩ではない、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
臭化水素酸塩である、請求項15に記載の化合物。
【請求項18】
結晶質であり、約6.08°、14.81°、19.26°および25.30°(2θ)にXRPDピークを有する、請求項16に記載の化合物。
【請求項19】
図1に示すようなXRPDを有する、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
約1〜60mgの単位用量で患者に投与される、請求項15〜19のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項21】
約10〜40mgで患者に経口投与される4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジンの臭化水素酸塩である、請求項20に記載の化合物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10a】
image rotate

【図10b】
image rotate

【図11】
image rotate


【公表番号】特表2011−506353(P2011−506353A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537257(P2010−537257)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際出願番号】PCT/DK2008/050302
【国際公開番号】WO2009/076962
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(591143065)ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベット (129)
【出願人】(509022185)タケダ・フアーマシユーテイカルズ・ノース・アメリカ・インコーポレイテツド (8)
【Fターム(参考)】