説明

セロトニントランスポータ阻害剤およびニューロキニン−1受容体アンタゴニストとして有用なピペリジン誘導体

本発明は、式(I)(式中、Rは、水素、ハロゲンまたは低級アルキルであり;Rは、水素、低級アルキルまたは−(CHCNであり;Rは、水素またはCFであり;nは、1または2であり;点線は、結合であってもなくてもよい)で示されるトランス誘導体、およびその薬学的に許容され得る酸付加塩に関する。式(IA)および(IB)で示される化合物は、本発明の式Iの化合物に包含される。式(I)で示される化合物は、良好なセロトニントランスポータ阻害剤(SERT阻害剤)であり、同時にそれは、NK−1受容体に対し良好な活性を有する(二重効果)。本発明の化合物は、SERT阻害剤としての有効性により、CNS障害および精神病性の障害の処置において、特にうつ状態の治療もしくは予防、および/または不安の治療において、特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式I:
【0002】
【化14】

【0003】
(式中、
は、水素、ハロゲンまたは低級アルキルであり;
は、水素、低級アルキルまたは−(CHCNであり;
は、水素またはCFであり;
nは、1または2であり;
点線は、結合であってもなくてもよい)
で示されるトランス誘導体、およびその薬学的に許容され得る酸付加塩に関する。
【0004】
式IAおよびIB:
【0005】
【化15】

【0006】
で示される化合物は、本発明の式Iの化合物に包含される。
【0007】
式Iで示される化合物は、良好なセロトニントランスポータ阻害剤(SERT阻害剤)であり、同時にそれは、NK−1受容体に対して良好な活性を有する(二重効果)。本発明の化合物は、SERT阻害剤としての有効性により、CNS障害および精神病性の障害の処置において、特にうつ状態の治療もしくは予防、および/または不安の治療において、特に有用である。
【背景技術】
【0008】
選択的セロトニントランスポータ阻害剤をはじめとするSERT阻害剤は、選択的セロトニン再取込み阻害剤(SSRI)とも呼ばれ、最も多く処方される抗うつ剤になった。それは、セロトニン作動性末端領域(例えば、海馬および前前頭皮質)での細胞外5−HTレベルを上昇させることにより、効果を発揮すると考えられている。しかし、患者の約30%は、SSRI処置に抵抗性があると思われる。加えて、SSRI処置の利益を受けるそれらの患者は、多くの場合、性機能障害、胃腸障害(gastrointestinal distress)、不眠症、そして場合により5−HT受容体全ての(5−HTレベルの上昇を介した)間接的活性化による不安発症など、様々な副作用を呈する。更に、現行の抗うつ治療の共通問題は、作用開始が緩やかなことであり、通常、処置の開始と症状軽減との間に、約4週間の遅延が見られる。その遅延は、細胞体樹状突起の5HT1A受容体の進行的脱感作現象(セロトニン機能を上昇させ、これによりうつ症状を軽減する)と平行すると思われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それゆえ、本発明の目的は、SERT阻害活性を有し、作用の開始に関する更なる有益効果を備え、かつ、例えば、不安発生の低下または抗不安プロファイルにより、SSRI抵抗性患者に対して大幅な改善を可能にする化合物を見出すことであった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
驚くべきことに、本発明の式Iで示される化合物が、SERT阻害剤として良好な活性を有し、付随してNK−1受容体アンタゴニストとして活性があることが見出された。NK−1アンタゴニストは、ノルアドレナリン作動性経路を介して5−HT機能を間接的に調整すると考えられており、シナプス前5HT1A受容体機能を減弱させることが示された(Bioorg. Med. Chem., Lett. 12, (2002), 261-264)。
【0011】
つまり、セロトニン取込み阻害とNK−1拮抗作用との組合わせは、うつ/不安状態の処置の際に作用開始が改善され、より良好な有効性を有する化合物が得られる可能性がある。
【0012】
本発明の化合物は、セロトニントランスポータ阻害およびNK−1拮抗作用を併せ持つ。
【0013】
近年の報告により、SSRIとNK−1アンタゴニストとの組合わせは、比較的低用量で、不安およびうつの動物モデル、例えばモルモットの子の母子分離啼鳴などにおいて有利な応答を生じることが示された(WO98/47514;. Bioorg. Med. Chem. Lett. 12(2), 261-264(2002)およびBioorg. Med. Chem. Lett. 12(21), 3195-3198 (2002))。
【0014】
このことは、メカニズムの異なる二重のアプローチを採用することにより、2種の作用機序の間に相乗作用が生じ得て、応答を高めることを示唆している。これは、SSRI単独での処置に抵抗性の患者において有利なだけでなく、治療作用の開始の迅速性も改善する可能性がある。二重の作用機序を有する薬物は、2剤の併用に比較して、潜在的に投与量を低減し、それゆえ副作用のリスクを低下させる。
【0015】
特許文献において、NK−1/SSRI併用アプローチは、肥満の潜在的処置としても提案された(WO98/47514)。
【0016】
WO2005/032464には、タキキニン受容体アンタゴニストであるトランス−フェニルピロリジンエーテルが記載されている。驚くべきことに、本発明の式Iで示されるピペリジンまたはテトラヒドロピリジン誘導体のトランス誘導体のうちの小さな群が、SERT阻害剤であり、同時に、それがNK−1受容体アンタゴニストとして良好な活性を有することが、ここに見出された。二重の作用機序を有する薬物は、両方の受容体部位の利点を併せ持ち、それゆえ薬物の投与量を低減できるため、2剤併用に比較して副作用のリスクが低下する可能性がある。
【0017】
式Iで示されるトランス−誘導体(ピペリジンまたはテトラヒドロピリジン)が、二重の活性を有し、それゆえそれが、上述の利点を有し得ることが示された。以下の表に、本発明の式Iで示されるトランス誘導体の化合物のNK−1およびSERT活性を、本発明には含まれないが構造的に関連する式IIおよびIIIで示されるトランス誘導体と比較して示す。
【0018】
【表1】





【0019】
式IIおよびIIIで示される関連の化合物は、NK−1受容体への高い選択性を有する(本発明の場合には望ましくない)。
【0020】
データは、以下のアッセイにより作成したものである。
【0021】
hSERT SPA結合アッセイ
組換えヒトSERTを安定発現するHEK−293細胞を、10%FBS、300μg/ml G418および2mM L−グルタミンを含む高グルコースDMEMで保持し、5%COと共に37℃でインキュベートした。PBSを用いて、細胞を1〜2分間、培養フラスコから遊離させた。次に、細胞を1000gで5分間遠心分離し、PBSで再懸濁させた後、膜の調製に用いた。
【0022】
細胞を、50mMトリス(pH7.4)中でPolytronを用いてホモジナイズした。48,000×gで15分間遠心分離し、ペレットを新しい緩衝液で再懸濁させた。1秒間遠心分離した後、ペレットを再度ホモジナイズして、新しい緩衝液で再懸濁させた。代表的には、膜の一部を分取して3mg/ml(w:v)に調製し、−80℃で貯蔵した。
【0023】
Optiplate (Packard)(100μl/ウェル)中で、50mM Tris−HCl、120mM NaCl、5mM KCl(pH7.4)でテスト化合物の希釈系列を調製し、[H]−シタロプラム放射性リガンド(比活性:60〜80Ci/mmol、最終濃度:1nM)を50μl/ウェル添加した。0.6mgの PVT-WGA Amershamビーズ(Cat# RPQ0282V)をウェルごとに添加して、膜とビーズを5μg:0.6mgの比で調製した。膜/ビーズ混合物50μlを、最終容量が200μlになるようにアッセイプレートに添加した。混合物を室温で1時間放置し、その後、Packard TopCountでカウントした。
【0024】
テストした各化合物について、%阻害率を計算した(100%結合=(化合物を含まずに緩衝液中で膜/ビーズおよび放射線リガンドをインキュベートして得られた値)−(10μMフルオキセチンの存在下で測定された非特異的結合))。反復非線形曲線適合法を利用して、50%阻害率を生じる濃度(IC50)を決定した。各化合物の阻害解離定数(Ki)は、Cheng-Prusoffの方法により決定した。
【0025】
hNK−1結合アッセイ
Semlikiウイルス発現系を用いてヒトNK−1受容体をトランスフェクトし、[H]サブスタンスP(最終濃度0.6nM)で放射線標識したCHO細胞中のヒトNK−1受容体で、NK−1受容体に対するテスト化合物の親和力を評価した。BSA(0.04%)、ロイペプチン(8μg/ml)、MnCl(3mM)およびホスホラミドン(2μM)を含むHEPES緩衝液(50mM、pH7.4)中で、結合アッセイを実施した。結合アッセイは、膜懸濁液250μl(1.25×10細胞/アッセイ試験管)、置換剤の緩衝液125μlおよび[H]サブスタンスP 125μlで構成されていた。少なくとも10の化合物濃度で、置換曲線を決定した。アッセイ試験管を室温で60分間インキュベートし、その後、真空下で、PEI(0.3%)を60分間予浸したGF/Cフィルターで試験管の内容物を迅速にろ過し、HEPES緩衝液(50mM、pH7.4)2mlで2回洗浄した。フィルターに残留した放射能を、シンチレーションカウントにより測定した。アッセイは全て、少なくとも2度の別個の実験で2重測定として実施した。
【0026】
NK1のための各化合物の阻害解離定数(Ki)を、hSERTに関して先に記載されたとおり決定した。
【0027】
参考文献
− Froger, N., Gardier, A. M., Moratalla, R., et al., 5-HT1A autoreceptor adaptive changes in substance P (Neurokinin 1)receptor knock-out mice mimic antidepressant-induced desensitization. J. Neuroscience, 21(20), 8188-8197 (2001).
− Kramer M. S., Cutler, N., Feighner, J. et al., Distinct Mechanism of antidepressant activity by blockade of central substance P receptors. Science 281, 1640-1645 (1998).
− Millan, M. J., Lejeune, F., de Nauteuil, G. and Gobert, A. selective blockade of neurokinin NK1 receptors facilitates the activity of adrenergic pathways projecting to the frontal cortex and dorsal hippocampus in rats. J. Neurochem., 76, 1949-1954 (2001).
− Rupniak, N. M. J. New Insights into the antidepressant actions of substance P (NK1 receptor) antagonists. N. M. J Can. J. Physiol. Pharmacol. 80, 489-494 (2002).
− Rupniak, N. M. J. Elucidating the antidepressant actions of substance P (NK1 receptor) antagonists. Current Opinion in Investigational Drugs, 3(2), 257-261 (2002).
− Ryckmans, T., Balancon, L., Berton, O., et al., First dual NK1 antagonists-serotonin reuptake inhibitors: synthesis and SAR of a new class of potential antidepressants. Bioorg. Med. Chem. Lett. 12(2), 261-264 (2002).
− Ryckmans, T., Berton, O., Grimee, R., et a,. Dual NK1 Antagonists-serotonin reuptake inhibitors as potential antidepressants. Part 2: SAR and activity of benzyloxyphenethyl piperazine derivatives. Bioorg. Med. Chem. Lett. 12(21), 3195-3198 (2002).
− WO98/47514 A1. Use of an NK1 receptor antagonist and an SSRI for treating obesity.
− WO03/015784 A1. 2-Substituted 1-arylpiperazines as tachykinin antagonists and/or serotonin reuptake inhibitors.
【0028】
本発明の目的は、式Iで示される化合物そのもの、セロトニントランスポータ(SERT)の活性に関連する疾患の処置用(例えば、うつおよび不安の処置用)の医薬を製造するための、式Iで示される化合物およびその薬学的に許容され得る塩の使用、その製造、本発明の化合物を基にした医薬およびその製造、ならびにうつおよび不安などの疾病の制御または予防における式Iで示される化合物の使用である。
【0029】
本発明は、トランス誘導体全て、およびその薬学的に活性の塩を包含する。
【0030】
本明細書において使用される用語「低級アルキル」は、炭素原子を1〜7個含む飽和直鎖または分枝鎖基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、i−ブチル、2−ブチル、t−ブチルなどを示す。好ましいアルキル基は、炭素原子を1〜4個含む基である。
【0031】
用語「ハロゲン」は、塩素、ヨウ素、フッ素および臭素を示す。
【0032】
用語「薬学的に許容され得る酸付加塩」は、無機および有機酸、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、クエン酸、ギ酸、フマル酸、マレイン酸、酢酸、コハク酸、酒石酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などとの塩を包含する。
【0033】
好ましい式Iで示される化合物は、式IAで示されるもの、例えば、以下の化合物:
(−)−(3S,4R)−3−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジルオキシメチル)−4−(4−フルオロ−フェニル)−ピペリジン、
(−)−(3S,4R)−3−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジルオキシメチル)−4−(4−フルオロ−フェニル)−ピペリジン、
(−)−[(3S,4R)−3−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジルオキシメチル)−4−(4−フルオロ−フェニル)−ピペリジン−1−イル]−アセトニトリル、
(−)−(3S,4R)−4−(4−フルオロ−フェニル)−3−(3−トリフルオロメチル−ベンジルオキシメチル)−ピペリジン、
(3SR,4RS)−3−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジルオキシメチル)−4−フェニル−ピペリジン、または
(−)−(トランス)−3−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジルオキシメチル)−4−o−トリル−ピペリジン、
である。
【0034】
さらに、好ましい式Iで示される化合物は、式I−Bで示されるもの、例えば、以下の化合物:
5−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジルオキシメチル)−4−o−トリル−1,2,3,6−テトラヒドロ−ピリジン、
である。
【0035】
新規な式Iで示されるトランス誘導体およびその薬学的に許容され得る塩は、当該技術分野で公知の方法、例えば、以下に示す方法により調製され得、この方法は、
a)式II:
【0036】
【化16】

【0037】
で示される化合物を、水素化ナトリウムおよび式III:
【0038】
【化17】

【0039】
で示される化合物と反応させ、次に酸(例えば、HClまたはトリフルオロ酢酸)で処理して、式I−1:
【0040】
【化18】

【0041】
(式中、Xは、Cl、BrまたはIであり、RおよびRは、先に記載されたとおりである)で示される化合物を得る工程、または
b)式I−1:
【0042】
【化19】

【0043】
で示される化合物を式:
【0044】
【化20】

【0045】
で示される化合物と反応させて、式I−2:
【0046】
【化21】

【0047】
(式中、R2’は、nを1もしくは2とする(CHCN、またはメチル以外の低級アルキルであり、他の置換基は、先に記載されたとおりである)で示される化合物を得る工程、または
c)式I−1:
【0048】
【化22】

【0049】
で示される化合物を式RX(式中、Xは、ハライドである)で示される化合物と反応させて、式I:
【0050】
【化23】

【0051】
で示される化合物を得る工程、または
d)式VII:
【0052】
【化24】

【0053】
で示される化合物を脱保護して、式I−B’:
【0054】
【化25】

【0055】
(式中、Rは、先に記載されたとおりである)で示される化合物を得る工程、及び
所望の場合、得られた化合物を薬学的に許容され得る酸付加塩に変換する工程を含む。
【0056】
スキーム1〜4は、式Iで示される化合物の製造をより詳細に示している。スキーム1〜4で用いられる出発原料は、公知の化合物であるか、または当該技術分野で公知の方法により製造され得る。
【0057】
【化26】

【0058】
【化27】

【0059】
【化28】

【0060】
【化29】

【実施例】
【0061】
中間体1
4−(4−フルオロ−フェニル)−5,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1,3−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステル
a)4−トリフルオロメタンスルホニルオキシ−5,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1,3−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステル3−メチルエステル
【0062】
【化30】

【0063】
THF 230ml中の4−オキソ−ピペリジン−1,3−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステル3−メチルエステル(8.64g、33.5mmol)の溶液に、水素化ナトリウム(油中懸濁液、55%、3.26g、74.6mmol)を0℃で添加した。0℃で30分間撹拌した後、N−フェニルトリフルオロメタンスルホンイミド(20.4g、56.0mmol)を添加した。氷水浴を取り除いて、反応混合物を2日間撹拌した。氷でクエンチし、次に真空濃縮して、THFを除去した。残渣をtert−ブチルメチルエーテルで希釈し、3部の1M水酸化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。真空濃縮して、粗表題化合物を純度90%(11.4g、26.4mmol、71%)で得た。
MSm/e(%):334(M+H−C,100)
【0064】
b)4−(4−フルオロ−フェニル)−5,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1,3−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステル3−メチルエステル
【0065】
【化31】

【0066】
4−トリフルオロメタンスルホニルオキシ−5,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1,3−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステル3−メチルエステル(10.1g、25.9mmol)と、臭化4−フルオロフェニル亜鉛溶液(THF中の0.5M、86.3ml、43.1mmol)と、THF 290mlとの混合物に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.83g、0.72mmol)を室温で添加した。6時間撹拌した後、反応物を氷でクエンチした。混合物をtert−ブチルメチルエーテルで希釈して、2M炭酸ナトリウム水溶液で洗浄した。水層を2部のtert−ブチルメチルエーテルで抽出した。ひとまとめにした有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させて、真空濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ヘプタン/エチル)により精製して、表題化合物を淡黄色非晶質残渣(6.8g、71%)として得た。
MSm/e(%):336(M+H,10)
【0067】
c)4−(4−フルオロ−フェニル)−5,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1,3−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステル
【0068】
【化32】

【0069】
4−(4−フルオロ−フェニル)−5,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1,3−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステル3−メチルエステル(6.8g、20mmol)と、1,4−ジオキサン100mlと、2M NaOH 100mlとの混合物を、室温で20時間撹拌した。反応混合物を2部のtert−ブチルメチルエーテルで抽出した後、ひとまとめにした有機層を1M水酸化ナトリウム水溶液(100ml)で抽出した。ひとまとめにした水層に氷(150g)を添加して0℃に冷却し、氷冷した4M塩酸水溶液(70ml)でpH1に酸性化した。水層を3部の酢酸エチル 各150mlで抽出した。ひとまとめにした有機層をブライン(50ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させて、真空濃縮した。n−ヘプタンと酢酸エチルとの混合物(19:1、1,120ml)から粗酸(crude acid)(6.4g)を結晶化させて、表題化合物を白色結晶(5.1g、78%)として得た。
MSm/e(%):320(M−H,100)
【0070】
中間体2
4−フェニル−5,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1,3−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステル
【0071】
【化33】

【0072】
工程b)の臭化4−フルオロフェニル亜鉛の代わりにヨウ化フェニル亜鉛を用いて、4−(4−フルオロ−フェニル)−5,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1,3−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステルの製造に関する前記の手順により、表題化合物を白色結晶として同等の収率で得た。
MSm/e(%):302(M−H,100)
【0073】
中間体3
4−o−トリル−5,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1,3−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステル
a)4−o−トリル−5,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1,3−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステル3−メチルエステル
【0074】
【化34】

【0075】
THF中の塩化o−トリルマグネシウムの1M溶液(6.26ml、41.5mmol)に、乾燥THF(200ml)中の乾燥塩化亜鉛(8.48g、62.2mmol)の新たに調製した溶液(8.48g、62.2mmol)を0℃で滴下した。添加が完了した後、反応混合物を放置して、1時間かけて室温に緩やかに昇温させた。この混合物に、THF(270ml)中の4−トリフルオロメタンスルホニルオキシ−5,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1,3−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステル3−メチルエステル(10.7g、27.5mmol)の溶液およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.96g、0.83mmol)を添加した。室温で6時間撹拌した後、反応物を氷でクエンチした。混合物をtert−ブチルメチルエーテルで希釈し、2M炭酸ナトリウム水溶液で洗浄した。水層を2部のtert−ブチルメチルエーテルで抽出した。ひとまとめにした有機層を水およびブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させて、真空濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ヘプタン/酢酸エチル)により精製して、表題化合物を淡黄色粘性油状物(6.31g、69%)として得た。
MSm/e(%):332(M+H,16)
【0076】
b)4−o−トリル−5,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1,3−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステル
【0077】
【化35】

【0078】
工程c)の4−(4−フルオロ−フェニル)−5,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1,3−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステル3−メチルエステルの代わりに4−o−トリル−5,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1,3−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステル3−メチルエステルを用いて、4−(4−フルオロ−フェニル)−5,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1,3−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステルの製造に関する前記の手順により、n−ヘプタン/酢酸エチル19:1から結晶化させた後、表題化合物を白色結晶として同等の収率で得た。
MSm/e(%):316(M−H,100)
【0079】
実施例1
(−)−(3S,4R)−3−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジルオキシメチル)−4−(4−フルオロ−フェニル)−ピペリジン塩酸塩
a)(+)−(3R,4R)−4−(4−フルオロ−フェニル)−ピペリジン−1,3−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステル
【0080】
【化36】

【0081】
グローブボックス(O量≦2ppm)内で、15mlガラス挿入部および磁気撹拌棒を備えた35mlオートクレーブに、4−(4−フルオロ−フェニル)−5,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1,3−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステル(0.300g、0.934mmol)、[Ru(OAc)((S)−3,5−Xyl−4−MeO)−MeOBIPHEP](9.67mg、0.00936mmol)、トリエチルアミン(15mg、0.16mmol、0.16当量)およびメタノール5mlを充填した。不斉水素化を、水素40バールの下、80℃で42時間実施した。室温に冷却した後、オートクレーブから圧力を放出し、メタノール溶液をtert−ブチルメチルエーテル50mlで希釈し、2部の1M水酸化ナトリウム水溶液各50mlで抽出した。水層を氷に注ぎ、氷冷した2M塩酸水溶液でpH1に酸性化して、2部の酢酸エチル各100mlで抽出した。ひとまとめにした有機層を、硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過して真空濃縮し、(+)−(3R,4R)−4−(4−フルオロ−フェニル)−ピペリジン−1,3−ジカルボン酸−1−tert−ブチルエステルを収率89%(0.27g)および96.6%eeで得た。
MSm/e(%):322(M−H,100)
【0082】
ee決定のためのGC法
表題化合物の2mg試料を、室温でジエチルエーテル中のジアゾメタンの約0.5M溶液0.5mlで処理して、メチルエステルに変換した。穏やかなアルゴン気流の下で過剰のジアゾメタンおよびジエチルエーテルを蒸発させた後、残渣を酢酸エチル1mlに溶解した。BGB−175カラム、10m0.1mmdf0.1μm、水素 230kPa、スプリット比 1:300;温度勾配100−200℃、2℃/分のプログラム;インジェクター温度 200℃、検出器温度 210℃。保持時間:46.59分((+)−酸のメチルエステル)、46.76分((−)−酸のメチルエステル)。
【0083】
b)(+)−(3R,4R)−4−(4−フルオロ−フェニル)−ピペリジン−1,3−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステル3−メチルエステル
【0084】
【化37】

【0085】
テトラヒドロフラン70ml中のトリフェニルホスフィン(3.82g、14.6mmol)の溶液に、アゾジカルボン酸ジエチル(2.53g、14.6mmol)を0℃で添加した。30分後、メタノール(4.55ml、112.0mmol)およびテトラヒドロフラン30ml中の(+)−(3R,4R)−4−(4−フルオロ−フェニル)−ピペリジン−1,3−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステル(3.62g、11.2mmol、93.6%ee)の溶液を、0〜5℃で連続して添加した。反応混合物を室温で20時間撹拌した。水でクエンチし、次にtert−ブチルメチルエーテルで抽出した(100mlで3回)。ひとまとめにした有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させて、減圧下で濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(n−ヘプタン/酢酸エチル)により精製して、表題化合物(3.55g、94%)を無色油状物として得た。
MSm/e(%):338(M+H,28)
[α]=+68.69(c=0.310,CHCl
[α]578=+71.27(c=0.310,CHCl
[α]365=+221.60(c=0.310,CHCl
【0086】
c)(−)−(3S,4R)−4−(4−フルオロ−フェニル)−ピペリジン−1,3−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステル
【0087】
【化38】

【0088】
無水トルエン100ml中の(+)−(3R,4R)−4−(4−フルオロ−フェニル)−ピペリジン−1,3−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステル3−メチルエステル(3.55g、10.5mmol)とナトリウムメトキシド(1.14g、21.1mmol)との混合物を、一晩加熱還流した。室温に冷却した後、反応混合物を水でクエンチし、真空濃縮した。残渣を1,4−ジオキサン100mlと2M水酸化ナトリウム水溶液50mlとの混合物に溶解した。室温で5時間撹拌した後、混合物を水で希釈し、2部のtert−ブチルメチルエーテルで洗浄した。水層を0℃に冷却し、氷冷した1M塩酸水溶液でpH1〜2に酸性化し、3部のtert−ブチルメチルエーテルで抽出した。ひとまとめにした有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させて、真空濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィーおよびヘプタン/酢酸エチル9:1(30ml)からの結晶化により、表題化合物を白色結晶(1.76g、52%、97.5%ee)として得た。
MSm/e(%):322(M−H,100)
[α]=−0.650(c=0.154,CHCl
【0089】
ee決定のためのHPLC法
Chiralpak-OD-Hカラム、25cm4.6mm、95% n−ヘプタン+0.1%トリフルオロ酢酸を含む5% 2−プロパノール、流速0.7ml/分、30℃、注入容積0.001ml、210nm、保持時間:(−)−酸で9.5分、(+)−酸で11.5分。
【0090】
絶対配置の帰属
以下の通り、旋光、およびChiralpak-OD-HカラムでのHPLC分析での保持時間を、(−)−(3S,4R)−4−(4−フルオロ−フェニル)−1−メチル−ピペリジン−3−カルボン酸メチルエステル(WO0129031に記載されたとおり製造)から誘導された(−)−(3S,4R)−4−(4−フルオロ−フェニル)−ピペリジン−1,3−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステルの試料の値と比較することにより、表題化合物の絶対配置を(3S,4R)として帰属した。
【0091】
1,2−ジクロロエタン5ml中の(−)−(3S,4R)−4−(4−フルオロ−フェニル)−1−メチル−ピペリジン−3−カルボン酸メチルエステル(575mg、2.29mmol)およびクロロギ酸1−クロロエチル(393mg、2.75mmol)の溶液を、4時間加熱還流した。室温に冷却し、溶媒を真空で蒸発させた後、残渣をメタノール5mlに溶解した。溶液を1時間加熱還流し、次に室温に冷却して、真空濃縮した。残渣を2M塩酸水溶液11.5mlに溶解し、一晩加熱還流した。反応混合物を氷水浴で0℃に冷却した後、32%水酸化ナトリウム水溶液2.8ml、および1,4−ジオキサン15ml中の二炭酸ジ−tert−ブチル(1.00g、4.58mmol)の溶液を連続して添加した。添加が完了した後、氷水浴を取り除き、室温で4時間撹拌し続けた。反応混合物のpHを、1M水酸化ナトリウム水溶液の添加により8に調整した。2部のtert−ブチルメチルエーテルで洗浄し、次にひとまとめにした有機層を1M水酸化ナトリウム水溶液で逆抽出した。ひとまとめにした水層を0℃に冷却し、氷冷した4M塩酸水溶液でpH1に酸性化して、3部の酢酸エチルで抽出した。ひとまとめにした有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させて真空濃縮し、(−)−(3S,4R)−4−(4−フルオロ−フェニル)−ピペリジン−1,3−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステル(590mg、80%)を93.8%eeで得た。
MSm/e(%):322(M−H,100)
[α]=−0.867(c=0.462,CHCl
【0092】
d)(3S,4R)−4−(4−フルオロ−フェニル)−3−ヒドロキシメチル−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル
【0093】
【化39】

【0094】
THF 35ml中の(−)−(3S,4R)−4−(4−フルオロ−フェニル)−ピペリジン−1,3−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステル(1.71g、5.29mmol)の溶液に、THF(5.44ml、10.9mmol)中の2Mボランジメチルスルフィド錯体溶液を0℃で添加した。混合物を0℃で15分間撹拌し、その後、室温で一晩撹拌した。0℃に冷却した後、メタノールを添加して反応物をクエンチした。気体の発生が観察されなくなるまで、撹拌し続けた。反応混合物を水で希釈し、3部のtert−ブチルメチルエチルで抽出した。ひとまとめにした有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空濃縮した。フラッシュクロマトグラフィーにより、表題化合物を無色粘性油状物1.58g(94%)として得た。
MSm/e(%):310(M+H,32)
【0095】
e)(−)−(3S,4R)−3−(3,5−ビストリフルオロメチル−ベンジルオキシメチル)−4−(4−フルオロ−フェニル)−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル
【0096】
【化40】

【0097】
DMF30ml中の(3S,4R)−4−(4−フルオロ−フェニル)−3−ヒドロキシメチル−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(1.58g、5.11mmol)の溶液に、水素化ナトリウム0.29g(6.0mmol)(鉱物油中の50%)を0℃で添加した。反応混合物を室温に昇温させた。20分後に、臭化3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンジル(3.14g、10.2mmol)を添加した。室温で2時間撹拌した後、水でクエンチし、3部のtert−ブチルメチルエーテルで抽出した。ひとまとめにした有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させて、真空濃縮した。粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘプタン/酢酸エチル)で精製して、表題化合物3.4g(>100%)を白色固体として得た。
MSm/e(%):536(M+H,13)
[α]=−5.26(c=0.362,CHCl
【0098】
f)(−)−(3S,4R)−3−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジルオキシメチル)−4−(4−フルオロ−フェニル)−ピペリジン塩酸塩
【0099】
【化41】

【0100】
メタノール(16.4ml、3.3mmol)中の1.25M塩酸溶液中の(−)−(3S,4R)−3−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジルオキシメチル)−4−(4−フルオロ−フェニル)−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(1.10mg、2.05mmol)の溶液を、40℃で30分間撹拌した。反応混合物を濃縮乾固し、残渣をtert−ブチルメチルエーテルと1M水酸化ナトリウム水溶液で分別した。3部のtert−ブチルメチルエーテルで抽出した後、ひとまとめにした有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空濃縮して表題化合物0.890g(99.5%)を無色白色固体として得た。
MSm/e(%):436(M+H,100)
[α]=−40.8(c=0.385,CHCl
【0101】
実施例2
(−)−(3S,4R)−3−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジルオキシメチル)−4−(4−フルオロ−フェニル)−ピペリジン
【0102】
【化42】

【0103】
メタノール5ml中の(−)−(3S,4R)−3−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジルオキシメチル)−4−(4−フルオロ−フェニル)−ピペリジン(121mg、0.278mmol)およびパラホルムアルデヒド(67mg、2.2mmol)の溶液を、2.5時間加熱還流した。混合物を0℃に冷却し、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(37mg、0.56mmol)で処理して、30分間撹拌した。2M塩酸水溶液でクエンチし、次に2M水酸化ナトリウム水溶液でpH14に塩基性化して、3部のtert−ブチルメチルエーテルで抽出した。ひとまとめにした有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィーにより、表題化合物85mg(68%)を無色非晶質固体として得た。
MSm/e(%):450(M+H,100)
[α]=−37.8(c=0.558,CHCl
【0104】
実施例3
(−)−[(3S,4R)−3−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジルオキシメチル)−4−(4−フルオロ−フェニル)−ピペリジン−1−イル]−アセトニトリル
【0105】
【化43】

【0106】
アセトニトリル4ml中の(−)−(3S,4R)−3−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジルオキシメチル)−4−(4−フルオロ−フェニル)−ピペリジン(150mg、0.345mmol)と、ブロモアセトニトリル(45mg、0.37mmol)と、炭酸カリウム(95mg、0.69mmol)との混合物を、室温で一晩撹拌した。水でクエンチし、次に3部のtert−ブチルメチルエーテルで抽出した。ひとまとめにした有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィーにより、表題化合物163mg(99.7%)を白色固体として得た。
MSm/e(%):475(M+H,100)
[α]=−46.16(c=0.496,CHCl
【0107】
実施例4
(−)−(3S,4R)−4−(4−フルオロ−フェニル)−3−(3−トリフルオロメチル−ベンジルオキシメチル)−ピペリジン塩酸塩
【0108】
【化44】

【0109】
工程e)の臭化3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンジルの代わりに臭化3−トリフルオロメチルベンジルを用いて、(−)−(3S,4R)−3−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジルオキシメチル)−4−(4−フルオロ−フェニル)−ピペリジン塩酸塩の製造に関する前記の手順の工程e)およびf)により、表題化合物を淡黄色非晶質固体として同等の収率で得た。
MSm/e(%):368(M+H,100)
[α]=−39.93(c=0.431,CHCl
【0110】
実施例5
(3SR,4RS)−3−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジルオキシメチル)−4−フェニル−ピペリジン塩酸塩
【0111】
【化45】

【0112】
工程d)の(−)−(3S,4R)−4−(4−フルオロ−フェニル)−ピペリジン−1,3−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステルの代わりに(3SR,4RS)−4−(フェニル)−ピペリジン−1,3−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステルを用いて、(−)−(3S,4R)−3−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジルオキシメチル)−4−(4−フルオロ−フェニル)−ピペリジン塩酸塩の製造に関する前記の手順により、表題化合物を淡黄色非晶質固体として同等の収率で得た。
MSm/e(%):418(M+H,100)
【0113】
実施例6
(−)−(トランス)−3−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジルオキシメチル)−4−o−トリル−ピペリジン塩酸塩
a)(+)−(シス)−4−o−トリル−ピペリジン−1,3−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステル
【0114】
【化46】

【0115】
[Ru(OAc)((S)−3,5−Xyl−4−MeO)−MeOBIPHEP]の代わりにRu(OAc)((S)−BITIANP)を用いて、上記の(+)−(3R,4R)−4−(4−フルオロ−フェニル)−ピペリジン−1,3−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステルの製造に関する前記の手順により、n−ヘプタン/酢酸エチルから結晶化した後、表題化合物を白色結晶として98.1%eeで得た。
MSm/e(%):318(M−H,100)
[α]=+78.71(c=0.700,CHCl
【0116】
ee決定に関するHPLC法
Chiralpak-ADHカラム、25cm4.6mm、85% n−ヘプタン+1%トリフルオロ酢酸を含む15%エタノール、流速0.7ml/分、20℃、注入容積0.005ml、215nm、保持時間:(−)−酸で8.1分、(+)−酸で8.8分。
【0117】
b)(−)−(トランス)−3−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジルオキシメチル)−4−o−トリル−ピペリジン塩酸塩
【0118】
【化47】

【0119】
工程b)の(+)−(3R,4R)−4−(4−フルオロ−フェニル)−ピペリジン−1,3−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステルの代わりに(+)−(シス)−4−o−トリル−ピペリジン−1,3−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステルを用いて、(−)−(3S,4R)−3−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジルオキシメチル)−4−(4−フルオロ−フェニル)−ピペリジン塩酸塩の製造に関する前記の手順の工程b)〜f)により、表題化合物を無色非晶質固体として同等の収率で得た。
MSm/e(%):432(M+H,100)
[α]=−33.36(c=0.408,CHCl
【0120】
実施例7
5−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジルオキシメチル)−4−o−トリル−1,2,3,6−テトラヒドロ−ピリジン塩酸塩
a)臭化1−ベンジル−3−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジルオキシメチル)−4−o−トリル−ピリジニウム
【0121】
【化48】

【0122】
アセトニトリル3ml中の3−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジルオキシメチル)−4−o−トリル−ピリジン(DE10008042 A1に記載されたとおり製造;150mg、0.353mmol)と臭化ベンジル(60mg、0.35mmol)との溶液を、5時間加熱還流した。混合物を真空濃縮し、残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題化合物163mg(78%)を白色固体として得た。
MSm/e(%):516(M,100)
【0123】
b)1−ベンジル−5−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジルオキシメチル)−4−o−トリル−1,2,3,6−テトラヒドロ−ピリジン
【0124】
【化49】

【0125】
エタノール6ml中の臭化1−ベンジル−3−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジルオキシメチル)−4−o−トリル−ピリジニウム(163mg、0.273mmol)の溶液に、水素化ホウ素ナトリウム(10mg、0.26mmol)を0℃で添加した。混合物を35℃に加熱し、この温度で一晩撹拌した。別の水素化ホウ素ナトリウム(10mg、0.26mmol)を添加して、混合物を2時間50℃に加熱した。室温に冷却し、水でクエンチした後、混合物を飽和炭酸ナトリウム水溶液で希釈し、3部のtert−ブチルメチルエーテルで抽出した。ひとまとめにした有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィーにより、表題化合物78mg(55%)を淡黄色油状物として得た。
MSm/e(%):520(M+H,100)
【0126】
c)5−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジルオキシメチル)−4−o−トリル−1,2,3,6−テトラヒドロ−ピリジン塩酸塩
【0127】
【化50】

【0128】
1,2−ジクロロエタン3ml中の1−ベンジル−5−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジルオキシメチル)−4−o−トリル−1,2,3,6−テトラヒドロ−ピリジン(76mg、0.15mmol)と、炭酸カリウム(20mg、0.15mmol)と、クロロギ酸1−クロロエチル(23mg、0.16mmol)との混合物を、50℃で3時間加熱した。混合物をろ過して、真空濃縮した。残渣をメタノール2mlに溶解し、一晩加熱還流した。溶媒を真空蒸発させ、次にフラッシュカラムクロマトグラフィーにより表題化合物の遊離塩基を得た。ジエチルエーテル中の2M塩酸溶液に溶解して、真空濃縮し、表題化合物57mg(84%)を白色固体として得た。
MSm/e(%):430(M+H,100)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】


(式中、
は、水素、ハロゲンまたは低級アルキルであり;
は、水素、低級アルキルまたは−(CHCNであり;
は、水素またはCFであり;
nは、1または2であり;
点線は、結合であってもなくてもよい)
で示されるトランス誘導体、およびその薬学的に許容され得る酸付加塩。
【請求項2】
が、水素、ハロゲンまたは低級アルキルであり;
が、水素、低級アルキルまたは−(CHCNであり;
が、水素またはCFであり;
nが、1または2である、
請求項1記載の式I−A:
【化2】


で示される化合物、およびその薬学的に許容され得る酸付加塩。
【請求項3】
が、水素、ハロゲンまたは低級アルキルであり;
が、水素、低級アルキルまたは−(CHCNであり;
が、水素またはCFであり;
nが、1または2である、
請求項1記載の式I−B:
【化3】


で示される化合物、およびその薬学的に許容され得る酸付加塩。
【請求項4】
(−)−(3S,4R)−3−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジルオキシメチル)−4−(4−フルオロ−フェニル)−ピペリジン、
(−)−(3S,4R)−3−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジルオキシメチル)−4−(4−フルオロ−フェニル)−ピペリジン、
(−)−[(3S,4R)−3−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジルオキシメチル)−4−(4−フルオロ−フェニル)−ピペリジン−1−イル]−アセトニトリル、
(−)−(3S,4R)−4−(4−フルオロ−フェニル)−3−(3−トリフルオロメチル−ベンジルオキシメチル)−ピペリジン、
(3SR,4RS)−3−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジルオキシメチル)−4−フェニル−ピペリジン、または
(−)−(トランス)−3−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジルオキシメチル)−4−o−トリル−ピペリジン、
である、請求項2記載の式I−Aで示される化合物。
【請求項5】
5−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジルオキシメチル)−4−o−トリル−1,2,3,6−テトラヒドロ−ピリジンである、請求項3記載の式I−Bで示される化合物。
【請求項6】
a)式II:
【化4】


で示される化合物を、水素化ナトリウムおよび式III:
【化5】


で示される化合物と反応させ、次にHClまたはトリフルオロ酢酸などの酸で処理して、式I−1:
【化6】


(式中、Xは、Cl、BrまたはIであり、RおよびRは、先に記載されたとおりである)で示される化合物を得る工程、または
b)式I−1:
【化7】


で示される化合物を式:
【化8】


で示される化合物と反応させて、式I−2:
【化9】


(式中、R2’は、nを1もしくは2とする(CHCN、またはメチル以外の低級アルキルであり、他の置換基は、先に記載されたとおりである)で示される化合物を得る工程、または
c)式I−1:
【化10】


で示される化合物を式RX(式中、Xは、ハライドである)で示される化合物と反応させて、式I:
【化11】


で示される化合物を得る工程、または
d)式VII:
【化12】


で示される化合物を脱保護して、式I−B’:
【化13】


(式中、Rは、先に記載されたとおりである)で示される化合物を得る工程、及び
所望の場合、得られた化合物を薬学的に許容され得る酸付加塩に変換する工程を含む、式Iで示される化合物およびその薬学的に許容され得る塩を製造する方法。
【請求項7】
請求項6記載の方法、または同等の方法により製造される、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
請求項1記載の化合物を1種以上および薬学的に許容され得る賦形剤を含む医薬。
【請求項9】
セロトニントランスポータ(SERT)阻害剤に基づいて疾病を処置するための、請求項8記載の医薬。
【請求項10】
疾病が、不安およびうつである、請求項8および9記載の医薬。
【請求項11】
不安およびうつの処置用の医薬を製造するための、請求項1記載の化合物の使用。
【請求項12】
明細書に記載された発明。

【公表番号】特表2009−532409(P2009−532409A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503526(P2009−503526)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【国際出願番号】PCT/EP2007/052852
【国際公開番号】WO2007/113153
【国際公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】