説明

セロトニン再取り込み阻害剤およびアゴメラチンの併用。

本発明は、うつ病およびその他の情動障害を治療するために、アゴメラチン、およびセロトニン再取り込み阻害剤 (SRIs)または細胞外セロトニンレベルの上昇を引き起こすその他の化合物を併用して使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、うつ病およびその他の情動障害を治療するために、アゴメラチンおよびセロトニン再取り込み阻害剤 (SRI)または細胞外セロトニンレベルを上昇させるその他の化合物を併用して使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
選択的セロトニン再取り込み阻害剤(本明細書においてはSSRIsと呼ぶ)は、うつ病、特定の形態の不安および対人恐怖症の治療における第一選択の治療になっており、なぜならこれらは効果的で、良く許容され、そして古典的な三環系抗うつ剤と比較して良好かつ安全なプロファイルを有するからである。
【0003】
しかし、うつ病および不安障害の臨床研究においては、SSRIsに対する非応答が30%に至るほどの相当な数であることが示されている。しばしば軽視されてしまう抗うつ治療におけるもう1つの要素はコンプライアンス(compliance)であり、これは薬物治療を続けるための患者の動機付けに非常に大きな影響を有する。
【0004】
まず第一に、SSRIsの治療効果における遅延がある。時折、治療の第一週の間でも症状が悪化することさえある。第二に、全てのSSRIsに共通の副作用として性機能障害がある。これらの問題に対処せずに、うつ病および不安障害の薬物治療における本当の進展は生じ得ない。
【0005】
非応答に対処するために、精神科医は時々増強戦略を用いる。抗うつ治療の増強は、炭酸リチウムまたはトリヨードチロニンのような気分安定薬の共投与を通して、または電気ショックの使用により達成される。
1993年には、Artigas 等による非特許文献1にピンドロールを用いた増強戦略が記載された。Artigasの考えは動物における脳内の微小透析実験に基づいている。実際に、Blierおよび共同研究者による脱感作仮説を基礎とする最近の神経科学研究では、抗うつ剤の治療効果における遅延は5-HT自己受容体の段階的な脱感作に関連していると述べられている(非特許文献2)。これらの仮説の要点は、放出制御細胞体樹状突起の(somatodendritic)自己受容体(5-HT1A)におけるSSRIsの効果が、終末領域における5-HTの放出およびそれらの領域における5-HT取り込み阻害の効果を制限するということである。これは、単一用量のSSRIにより誘導される細胞外5-HTの増加が、5-HT1A自己受容体アンタゴニストの共投与により増強されることを示す、ラットにおける微小透析実験により支持される(非特許文献3および非特許文献4)。
【0006】
セロトニン再取り込みを阻害する化合物および5-HT1A受容体アンタゴニストの併用投与の効果は、いくつかの研究において評価されている(非特許文献5および非特許文献6、非特許文献7)。これらの研究において、5-HT1A受容体アンタゴニストはセロトニン再取り込み阻害剤により誘導される5-HT神経伝達における初期の抑制を取り除き、従って5-HT神経伝達の迅速な促進および治療作用の急速な発現を引き起こすことが見出された。
【0007】
うつ病を治療するための5-HT1Aアンタゴニストおよびセロトニン再取り込み阻害剤の併用使用をカバーするいくつかの特許出願が出願されている(例えば特許文献1および特許文献2参照)。
【0008】
終末5-HTを増加させるためのもう1つのアプローチは、5-HT1 B自己受容体の遮断を介するものである。ラットにおける微小透析実験により、シタロプラムによる海馬5-HTの増加が 5-HT1B受容体アンタゴニストであるGMC 2-29により増強されることが実際に示されている。
【0009】
SSRIおよび5-HT1Bアンタゴニストまたはパーシャルアゴニストの併用をカバーする特許出願もまたいくつか出願されている(特許文献3、特許文献4、特許文献5および特許文献6 )。
【特許文献1】欧州特許出願公開(EP-A2)第687 472 号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開(EP-A2)第714 663号明細書
【特許文献3】国際公開(WO )第97/28141号明細書
【特許文献4】国際公開(WO )第96/03400号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開(EP-A)第701819号明細書
【特許文献6】国際公開(WO )第99/13877号明細書
【非特許文献1】Trends Pharmacol. Sci. 1993, 14, p 262-263
【非特許文献2】Blier et al. J. Clin. Psycipharmacol. 1987, 7 suppl. 6, 24S-35S
【非特許文献3】Invernizzi et al. Brain Res, 1992, 584, p 322-324
【非特許文献4】Hjorth, S., J. Neurochem, 1993, 60, p 776-779
【非特許文献5】Innis, R.B. et al. Eur. J. Pharmacol. 1987, 143, p. 1095-204
【非特許文献6】Gartside, S.E., Br. J. Pharmacol, 1995, 115, p 1064-1070
【非特許文献7】Blier, P. et al. Trends in Pharmacol. Science 1994, 15, 220
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
驚くべきことに本発明においては、一般式、
【0011】
【化1】

【0012】
を有するアゴメラチンまたはその薬学的に許容される塩が、セロトニン再取り込み阻害剤の治療効果のより速い発現を増強および提供するするために使用できることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、セロトニン再取り込み阻害剤または細胞外セロトニンレベルの上昇を引き起こすその他の化合物と組み合わせて使用される医薬調合物を製造するために、アゴメラチンまたはその薬学的に許容される塩を使用する方法に関する。
【0014】
特に本発明は、セロトニン再取り込み阻害剤または細胞外セロトニンレベルの上昇を引き起こすその他の化合物の治療効果の発現を増強および/または提供するために有用な医薬調合物を製造するために、アゴメラチンまたはその薬学的に許容される塩を使用する方法に関する。
【0015】
さらに具体的には、本発明は、うつ病、不安障害およびその他の情動障害、過食症のような摂食障害、食欲不振および肥満、恐怖症、気分変調、月経前症候群、認識障害、衝動調節障害、注意欠陥多動性障害および薬物乱用、特にうつ病をセロトニン再取り込み阻害剤または細胞外セロトニンレベルの上昇を引き起こすその他の化合物で治療するために、アゴメラチンまたはその薬学的に許容される塩を上述のように使用する方法に関する。
【0016】
前記不安障害には、全般性不安障害、パニック不安、強迫性障害、急性ストレス障害、心的外傷後ストレス障害または社会不安障害が含まれる。
【0017】
本明細書で用いられる場合に、増強(augmenting)という語句は、SRIまたは細胞外5-HTのレベル上昇を引き起こす化合物の治療効果を改善すること、および/または前記治療効果を強化することに及ぶ。
【0018】
さらなる実施態様において本発明は、セロトニン再取り込み阻害剤または細胞外セロトニンレベルの上昇を引き起こすその他の化合物の治療効果に応答する疾患または障害の治療のための医薬調合物またはキットを製造するために、 アゴメラチンまたはその薬学的に許容される塩、およびセロトニン再取り込み阻害剤である化合物または細胞外セロトニンのレベル上昇を引き起こす化合物を使用する方法に関する。
【0019】
セロトニン再取り込み阻害剤に応答する疾患には、うつ病、不安障害およびその他の情動障害、過食症のような摂食障害、食欲不振および肥満、恐怖症、気分変調、月経前症候群、認識障害、衝動調節障害、注意欠陥多動性障害および薬物乱用、特にうつ病が含まれる。
【0020】
不安障害という語句は上述で定義したとおりである。
【0021】
1つの実施態様において本発明は、活性成分の同時投与に適合する上述のような医薬調合物を製造するために、アゴメラチンまたはその薬学的に許容される塩を使用する方法に関する。特に前記医薬調合物は、同一の単位剤形(unit dosage forms)、例えば同一の錠剤またはカプセル剤の中に活性成分を含むことができる。前記単位剤形は、均一な混合物として、または単位剤形の別々の区分において活性成分を含むことができる。
【0022】
もう1つの実施態様において本発明は、活性成分の連続投与に適合する上述のような医薬調合物またはキットを製造するために、アゴメラチンまたはその薬学的に許容される塩を使用する方法に関する。特に前記医薬調合物は、別々の単位剤形、例えば活性成分のいずれかを含む別々の錠剤またはカプセル剤で活性成分を含むことができる。これらの別々の単位剤形は、同一の容器またはパッケージ、例えばブリスターパックに含まれていてもよい。
【0023】
本明細書においてキットという語句は、それぞれの活性成分を含むが別々の単位剤形で含む医薬調合物を意味する。
【0024】
本発明はまた、アゴメラチンまたはその薬学的に許容される塩、およびセロトニン再取り込み阻害剤である化合物または細胞外5-HTの上昇を引き起こすその他の化合物、および場合により薬学的に許容されるキャリアーまたは希釈剤を含む医薬調合物またはキットに関する。
【0025】
本発明の医薬調合物またはキットは、上述のように活性成分の同時投与に、または活性成分の連続投与に適合することができる。
【0026】
最後に本発明は、アゴメラチンまたはその薬学的に許容される塩、およびセロトニン再取り込み阻害剤または細胞外セロトニンレベルの上昇を引き起こす化合物を、それを必要とする個体に投与することを含む、セロトニン再取り込み阻害剤または細胞外セロトニンのレベル上昇を引き起こすその他の化合物に応答する疾患または障害を治療する方法に関する。
【0027】
特に本発明は、セロトニン再取り込み阻害剤または細胞外セロトニンレベルの上昇を引き起こすその他の化合物で治療されるまたは治療を受ける個体にアゴメラチンまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、セロトニン再取り込み阻害剤または細胞外セロトニンレベルの上昇を引き起こすその他の化合物の治療効果のより速い発現を増強および/または提供するための方法に関する。
うつ病、不安障害およびその他の情動障害、過食症のような摂食障害、食欲不振および肥満、恐怖症、気分変調、月経前症候群、認識障害、衝動調節障害、注意欠陥多動性障害および薬物乱用、特にうつ病を患う前記個体が、上述のような併用を用いる治療により恩恵を受けることができる。
【0028】
上述のように、不安障害には、全般性不安障害、パニック不安、強迫性障害、急性ストレス障害、心的外傷後ストレス障害または社会不安障害が含まれる。
【0029】
アゴメラチンおよびセロトニン再取り込み阻害剤は上述のように同時に投与することができる。
【0030】
もう1つの方法として、前記活性化合物は上述のように連続して、例えば2つの別々の単位剤形で投与することができる。
【0031】
以下の式、
【0032】
【化2】

【0033】
を有するアゴメラチンおよびその薬学的に許容される塩は欧州特許(EP-B1)第447285号によりカバーされる。その中における請求項の化合物はメラトニン受容体に対してアフィニティーを有するとして記載される。
【0034】
驚くべきことに、微小透析実験で測定した場合に、アゴメラチンおよびセロトニン再取り込み阻害剤の共投与により、セロトニン再取り込み阻害剤単独の投与と比較して終末領域(terminal areas)におけるセロトニンレベルが有意に増加することが見出された。アゴメラチン単独の投与では、微小透析実験で測定した場合にセロトニンレベルの増加は生じない。
【0035】
上述のように、セロトニン再取り込み阻害剤では作用発現の遅延が見られる。SSRIsに対して応答する者においてさえ、症状の緩和に達するには数週間の治療が必要である。アゴメラチン は、セロトニン再取り込み阻害剤の治療効果のより速い発現を提供することができる。
【0036】
アゴメラチンおよびセロトニン再取り込み阻害剤を併用して使用することにより、うつ病およびその他の情動障害の治療に必要なセロトニン再取り込み阻害剤の量を大幅に減らすことができ、従ってセロトニン再取り込み阻害剤により生じる副作用を減らすことができる。特に、減少した量のSRIおよびアゴメラチンの併用は、SSRIに誘導される性機能不全および睡眠障害のリスクを減少することができる。
【0037】
アゴメラチンおよびセロトニン再取り込み阻害剤の共投与は、難治性うつ病、すなわちセロトニン再取り込み阻害剤単独の投与では適当に治療することができないうつ病の治療にも有用である。典型的には、アゴメラチン はSRIを用いた治療の最初の6週間で症状の少なくとも40〜60%の減少が達成されない患者において、SRIsへの応答を増強させるための追加治療として使用することができる。
【0038】
セロトニン再取り込み阻害効果を有する多くの抗うつ剤が、文献に記載されている。CNSにおけるセロトニン再取り込み阻害を通してその治療効果を主にまたは部分的に発揮する薬学的に活性な化合物はいずれも、アゴメラチンを用いた増強により恩恵を受けることができる。
【0039】
以下のリスト:シタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチン、R-フルオキセチン、セルトラリン、パロキセチン、フルボキサミン、ベンラファキシン、デュロキセチン、ダポキセチン、ネファゾドン、イミプラミン、イミプラミンN-オキシド、デシプラミン、ピランダミン、ダゼピニル、ネフォパム、ベフラリン、フェゾラミン、フェモキセチン、クロミプラミン、シアノイミプラミン、リトキセチン、セリクラミン、セプロキセチン、WY 27587、WY 27866、イメルジン(imeldine)、イホキセチン、チフルカルビン、ビクァリン、ミルナシプラン、バジナプリン、YM 922、S 33005、F 98214-TA、OPC 14523、アラプロクラート、シアノドセピン(cyanodothepine)、トリミプラミン、キヌプラミン、ドチエピン、アモキサピン、ニトロキサゼピン(nitroxazepine)、McN 5652、McN 5707、Ol 77、Org 6582、Org 6997、Org 6906、アミトリプチリン、アミトリプチリンN-オキシド、ノルトリプチリン、CL 255.663、ピルリンドール、インダトラリン、LY 113.821、LY 214.281、CGP 6085 A、RU 25.591、ナパメゾール、ジクロフェンシン、トラゾドン、EMD 68.843、BMY 42.569、NS 2389、セルクロレミン(sercloremine)、ニトロキパジン(nitroquipazine)、アデメチオニン、シブトラミンおよびクロボキサミンにはアゴメラチンを用いた増強から恩恵を受けることができる多くのセロトニン再取り込み阻害剤が含まれる。
【0040】
上述の化合物はまた、その塩基または薬学的に許容される酸付加塩の形態で使用することができる。
【0041】
アゴメラチンを用いた増強により恩恵を受けることができるその他の治療用化合物には、セロトニン再取り込み阻害剤ではないがシナプス間隙における5-HTの細胞外レベル上昇を引き起こす化合物が含まれる。前記化合物の1つはティアネプチンである。
【0042】
セロトニン再取り込み阻害剤およびセロトニンの細胞外レベル上昇を引き起こすその他の化合物に関する前記リストは、それによる限定を意図するものではない。
【0043】
本発明の特に好ましいSRIsにはシタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチン、セルトラリン、パロキセチン、フルボキサミン、ベンラファキシン、ダポキセチン、ネファゾドン、イミプラミン、フェモキセチンおよびクロミプラミンが含まれる。
【0044】
選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)という語句は、ドーパミンおよびノルアドレナリントランスポーターよりもセロトニントランスポーターにおいてより強力な阻害効果を有するモノアミントランスポーターの阻害剤を意味する。
【0045】
選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRIs)は、本発明において使用される最も好ましいセロトニン再取り込み阻害剤の1つである。本発明の特に好ましいSSRIはシタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、セルトラリンまたはパロキセチンである。
【0046】
本発明の活性成分、すなわちアゴメラチンおよびSRIまたは細胞外セロトニンレベル増加を引き起こす化合物は、遊離塩基の形態で、またはその薬学的に許容される酸付加塩の形態で使用することができ、後者は前記塩基形態を適当な酸と反応させることにより得ることができる。
【0047】
好ましくはシタロプラムは臭化水素酸塩の形態で、または塩基として、エスシタロプラムはシュウ酸塩の形態で、フルオキセチン、セルトラリンおよびパロキセチンは塩酸塩の形態で、そしてフルボキサミンはマレイン酸塩の形態で使用される。
【0048】
上述のように、アゴメラチンとセロトニン再取り込み阻害剤との併用は中枢神経系(CNS)において予期しない相乗効果を示す。結果として、アゴメラチンおよび単剤療法において通常使用されるよりも低用量のセロトニン再取り込み阻害剤を用いる併用療法は効果的であり、単剤療法において使用される多量のセロトニン再取り込み阻害剤に伴う副作用は減少するか、または完全に抑制される。
【0049】
さらに、通常用量のセロトニン再取り込み阻害剤を用いるアゴメラチンとの併用療法は、SSRIsを用いる慣用の単剤療法に対しては応答しない多数の患者において、しばしば有効なCNS効果を得ることができるという利点を有する。
【0050】
併用療法において使用されるアゴメラチンの量は、約0.1〜約150 mg/日、好ましくは約0.1〜約100 mg/日、さらに好ましくは約0.5〜約50 mg/日、およびさらにとりわけ好ましくは約1〜約5 mg/日のような範囲でよい。
【0051】
具体的に上述されるSSRIsを含むセロトニン再取り込み阻害剤は、分子量および活性の両方において相違する。結果として、併用療法で使用されるセロトニン再取り込み阻害剤の量は、前記セロトニン再取り込み阻害剤の性質に依存する。本発明の1つの実施態様において、セロトニン再取り込み阻害剤または細胞外5-HTレベルの増加を引き起こす化合物は、化合物が単独で使用される場合に必要な量よりも低用量で投与される。もう1つの実施態様において、前記セロトニン再取り込み阻害剤または細胞外5-HTレベルの増加を引き起こす化合物は、標準的な用量で投与される。
【0052】
本発明の医薬調合物を製造するために、塩形態または塩基形態である適当な量の活性成分が、投与に求められる調合物の形態に依存して多様な形態を取ることができる薬学的に許容されるキャリアーとともに、密な混合物(intimate admixture)に組み込まれる。これらの医薬調合物は好ましくは、経口的な、経直腸的な、経皮的なまたは非経口注射による投与に適した単一の剤形である。例えば、経口剤形での調合物の製造では、例えば、懸濁剤、シロップ剤、エリキシルおよび液剤のような経口用の液体調合物の場合には、水、グリコール、油、アルコール等;散剤、丸剤(pills)、カプセル剤および錠剤の場合には、澱粉、糖、カオリン、潤滑剤、バインダー、崩壊剤等のような固体のキャリアーのようないずれの通常の薬学的媒体も使用することができる。投与の容易さから、錠剤およびカプセル剤が最も有利な経口の投与単位形態(dosage unit form)であり、その場合には当然に固体の薬学的キャリアーが使用される。
【0053】
投与の容易さおよび用量の均一性のために、投与単位形態で前記医薬調合物を製剤化することが特に有利である。本明細書および請求項において用いられる場合に、単位剤形は、単一用量として適当な物理的に別個の単位を表し、各単位は必要な薬学的キャリアーと合わせて、予め決められ、所望の治療効果を実現するために計算された量の活性成分を含む。前記投与単位形態の例は、錠剤(分割錠および被覆錠剤を含む)、カプセル剤、丸剤、パウダーパケット(powder packets)、ウエハース(wafers)、注射用溶剤または懸濁剤、ティースプーンフル(teaspoonfuls)、テーブルスプーンフル(tablespoonfuls)等、およびそれらの分離した複合物(segregated multiples)である。
アゴメラチンは、アゴメラチンの投与とセロトニン再取り込み阻害剤の投与との間の時間によって成分がCNSにおいて相乗的に作用することができるということを条件として、セロトニン再取り込み阻害剤の投与の前、投与の間、または投与の後に投与することができる。アゴメラチンおよびセロトニン再取り込み阻害剤の同時投与を想定する場合には、セロトニン再取り込み阻害剤およびアゴメラチンの両方を含む調合物が特に都合がよい。あるいは、アゴメラチンおよびセロトニン再取り込み阻害剤は、適当な調合物の形態で別々に投与することができる。前記調合物は上述の記載のように製造することができる。
【0054】
本発明はまた、精神医学の薬物療法において同時に、別々にまたは連続して使用するための配合剤としてアゴメラチンおよびセロトニン再取り込み阻害剤を含む生成物を含む。前記生成物は、例えば、アゴメラチンを含む個別の単位剤形およびセロトニン再取り込み阻害剤を含む個別の単位剤形を含むキットであって、全てが同一の容器またはパック、例えばブリスターパックに含まれる前記キットを含むことができる。
【0055】
上述の同時または連続投与のための調合物は、セロトニン再取り込み阻害剤の代わりに、細胞外5-HTレベルの上昇を引き起こす他の化合物を含むことができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
セロトニン再取り込み阻害剤または細胞外セロトニンレベルの上昇を引き起こすその他の化合物と組み合わせて使用される医薬調合物を製造するために、アゴメラチンまたはその薬学的に許容される塩を使用する方法。
【請求項2】
セロトニン再取り込み阻害剤または細胞外セロトニンレベルの上昇を引き起こすその他の化合物の治療効果のより速い発現を増強および/または提供するのに有用な医薬調合物を製造するために、アゴメラチンまたはその薬学的に許容される塩を使用する方法。
【請求項3】
前記セロトニン再取り込み阻害剤または細胞外セロトニンレベルの上昇を引き起こす化合物が、うつ病、不安障害およびその他の情動障害、過食症のような摂食障害、食欲不振および肥満、恐怖症、気分変調、月経前症候群、認識障害、衝動調節障害、注意欠陥多動性障害および薬物乱用の治療に使用される、請求項1または2のいずれか1つに記載の使用方法。
【請求項4】
前記セロトニン再取り込み阻害剤または細胞外セロトニンレベルの上昇を引き起こす化合物が、全般性不安障害、パニック不安、強迫性障害、急性ストレス障害、心的外傷後ストレス障害または社会不安障害を包含する不安傷害の治療に使用される、請求項3記載の使用方法。
【請求項5】
前記セロトニン再取り込み阻害剤または細胞外セロトニンレベルの上昇を引き起こす化合物が、うつ病の治療に使用される、請求項3記載の使用方法。
【請求項6】
アゴメラチンの酒石酸塩が使用される、請求項1〜5のいずれか1つに記載の使用方法。
【請求項7】
前記セロトニン再取り込み阻害剤がシタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチン、セルトラリン、パロキセチン、フルボキサミン、ベンラファキシン、ダポキセチン、ネファゾドン、イミプラミン、フェモキセチンおよびクロミプラミン、またはこれらの化合物のうちのいずれかの薬学的に許容される塩から選択される、請求項1〜6のいずれか1つに記載の使用方法。
【請求項8】
前記セロトニン再取り込み阻害剤が選択的セロトニン再取り込み阻害剤である、請求項7記載の使用方法。
【請求項9】
前記セロトニン再取り込み阻害剤がシタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、セルトラリンおよびパロキセチン、またはこれらの化合物のうちのいずれかの薬学的に許容される塩から選択される、請求項8記載の使用方法。
【請求項10】
セロトニン再取り込み阻害剤または細胞外セロトニンレベルの上昇を引き起こすその他の化合物の治療効果に応答する病気または疾患の治療のための医薬調合物またはキットを製造するために、アゴメラチンまたはその薬学的に許容される塩、およびセロトニン再取り込み阻害剤である化合物または細胞外セロトニンレベルの上昇を引き起こすその他の化合物を使用する方法。
【請求項11】
うつ病、不安障害およびその他の情動障害、過食症のような摂食障害、食欲不振および肥満、恐怖症、気分変調、月経前症候群、認識障害、衝動調節障害、注意欠陥多動性障害および薬物乱用の治療に有用な医薬調合物またはキットを製造するための、請求項10記載の使用方法。
【請求項12】
全般性不安障害、パニック不安、強迫性障害、急性ストレス障害、心的外傷後ストレス障害または社会不安障害を包含する不安傷害の治療に有用な医薬調合物またはキットを製造するための、請求項11記載の使用方法。
【請求項13】
うつ病の治療のための医薬調合物を製造するための、請求項11記載の使用方法。
【請求項14】
アゴメラチンが酒石酸塩の形態で使用される、請求項10〜13のいずれか1つに記載の使用方法。
【請求項15】
前記セロトニン取り込み阻害剤がシタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチン、セルトラリン、パロキセチン、フルボキサミン、ベンラファキシン、ダポキセチン、ネファゾドン、イミプラミン、フェモキセチンおよびクロミプラミン、またはこれらの化合物のうちのいずれかの薬学的に許容される塩から選択される、請求項10〜14のいずれか1つに記載の使用方法。
【請求項16】
使用されるセロトニン取り込み阻害剤が選択的セロトニン再取り込み阻害剤である、請求項15記載の使用方法。
【請求項17】
前記選択的セロトニン再取り込み阻害剤がシタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、セルトラリンおよびパロキセチン、またはこれらの化合物のうちのいずれかの薬学的に許容される塩である、請求項16記載の使用方法。
【請求項18】
製造される医薬調合物が活性成分の同時投与に適合する、請求項10〜17のいずれか1つに記載の使用方法。
【請求項19】
前記活性成分が同一の単位剤形に含まれる、請求項18記載の使用方法。
【請求項20】
製造される医薬調合物が活性成分の連続投与に適合する、請求項10〜17のいずれか1つに記載の使用方法。
【請求項21】
前記活性化合物が別々の単位剤形に含まれる、請求項20記載の使用方法。
【請求項22】
アゴメラチンまたはその薬学的に許容される塩、およびセロトニン再取り込み阻害剤である化合物または細胞外セロトニンレベルの上昇を引き起こすその他の化合物、および場合により薬学的に許容されるキャリアーまたは希釈剤を含む、医薬調合物またはキット。
【請求項23】
アゴメラチンをその酒石酸塩の形態で含む、請求項22記載の医薬調合物またはキット。
【請求項24】
前記セロトニン取り込み阻害剤がシタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチン、セルトラリン、パロキセチン、フルボキサミン、ベンラファキシン、ダポキセチン、ネファゾドン、イミプラミン、フェモキセチンおよびクロミプラミン、またはこれらの化合物のうちのいずれかの薬学的に許容される塩から選択されることを特徴とする、請求項22または23のいずれか1つに記載の医薬調合物またはキット。
【請求項25】
前記セロトニン再取り込み阻害剤が選択的セロトニン再取り込み阻害剤である、請求項24記載の医薬調合物またはキット。
【請求項26】
前記選択的セロトニン再取り込み阻害剤がシタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、セルトラリンおよびパロキセチン、またはこれらの化合物のうちのいずれかの薬学的に許容される塩である、請求項25記載の医薬調合物またはキット。
【請求項27】
前記活性成分の同時投与に適合する、請求項22〜26のいずれか1つに記載の医薬調合物。
【請求項28】
前記活性成分が同一の単位剤形に含まれる、請求項27記載の医薬調合物。
【請求項29】
前記活性成分の連続投与に適合する、請求項22〜26のいずれか1つに記載の医薬調合物またはキット。
【請求項30】
前記活性成分が別々の剤形に含まれる、請求項29記載の医薬調合物。
【請求項31】
アゴメラチンまたはその薬学的に許容される塩、およびセロトニン再取り込み阻害剤または細胞外セロトニンレベルの上昇を引き起こす化合物をそれを必要とする個体に投与することを含む、セロトニン再取り込み阻害剤または細胞外セロトニンレベルの上昇を引き起こすその他の化合物に応答する病気または疾患を治療する方法。
【請求項32】
アゴメラチンまたはその薬学的に許容される塩を、セロトニン再取り込み阻害剤または細胞外セロトニンレベルの上昇を引き起こすその他の化合物で治療されるかまたは治療を受ける個体に投与することを含む、セロトニン再取り込み阻害剤または細胞外セロトニンレベルの上昇を引き起こすその他の化合物の治療効果のより速い発現を増強および/または提供する方法。
【請求項33】
前記個体がうつ病、不安障害およびその他の情動障害、過食症のような摂食障害、食欲不振および肥満、恐怖症、気分変調、月経前症候群、認識障害、衝動調節障害、注意欠陥多動性障害および薬物乱用を患っている、請求項31または32のいずれか1つに記載の方法。
【請求項34】
前記個体が全般性不安障害、パニック不安、強迫性障害、急性ストレス障害、心的外傷後ストレス障害または社会不安障害を包含する不安傷害を患っている、請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記個体がうつ病を患っている、請求項33記載の方法。
【請求項36】
アゴメラチンが酒石酸塩の形態で使用される、請求項31または32のいずれか1つに記載の方法。
【請求項37】
前記セロトニン取り込み阻害剤がシタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチン、セルトラリン、パロキセチン、フルボキサミン、ベンラファキシン、ダポキセチン、ネファゾドン、イミプラミン、フェモキセチンおよびクロミプラミン、またはこれらの化合物のうちのいずれかの薬学的に許容される塩から選択される、請求項31または32のいずれか1つに記載の方法。
【請求項38】
前記セロトニン再取り込み阻害剤が選択的セロトニン再取り込み阻害剤である、請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記セロトニン再取り込み阻害剤がシタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、セルトラリンおよびパロキセチン、またはこれらの化合物のうちのいずれかの薬学的に許容される塩である、請求項38記載の医薬調合物。
【請求項40】
前記活性成分が同時に投与される、請求項31〜39のいずれか1つに記載の方法。
【請求項41】
前記活性成分が同一の単位剤形で投与される、請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記活性成分が連続的に投与される、請求項31〜39のいずれか1つに記載の方法。
【請求項43】
前記活性成分が2つの別々の単位剤形に含まれる、請求項42記載の方法。

【公表番号】特表2007−513052(P2007−513052A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517965(P2006−517965)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【国際出願番号】PCT/DK2004/000464
【国際公開番号】WO2005/002562
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(591143065)ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベット (129)
【Fターム(参考)】