説明

センサの呼びかけ信号

【課題】センサの呼びかけ信号の提供。
【解決手段】本発明は、ホログラフィックセンサを外からの物理的影響に暴露して、該センサがこの物理的影響を感知すること、及び、画像の変化を観察することを含むことを特徴とする感知方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラフィックセンサの光学特性を変化させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホログラフィックセンサを使用すると、様々な検体を感知することができる。特許文献1中には、体積ホログラムを基盤とするホログラフィックセンサが開示されている。このセンサは、その全体に光変換構造を含む検体感受性マトリックスを有する。このセンサが発する光シグナルは、上記変換構造の物理的配列により、検体感受性マトリックスと検体とが相互作用又は反応した結果起こる検体感受性マトリックスの体積変化又は構造配列変化に対して非常に感度が高い。
【0003】
特許文献2中には、ホログラフィックセンサを使用した連続的な感知方法が記載されている。検体を含む流体をセンサの上を通過させると、検体がホログラフィック支持媒体と可逆的に反応する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際特許WO95/26499
【特許文献2】国際特許WO03/087899
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ホログラフィックセンサは、例えば温度、磁場、電場又は他の照射場、光及び/又は圧力の変化の存在下において、物理的な相互作用を感知することができ、有用である、という認識に基づく。センサ、例えばホログラムを支持する媒体が物理的な相互作用の影響を受ける体積ホログラムが変化を呈し、この変化を観察することができる。この光学特性の変化は、可逆的であることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ホログラフィックセンサを外からの物理的影響に暴露して、該センサがこの物理的影響を感知すること、及び、画像の変化を観察することを含み、
前記外からの物理的影響が、温度または磁気であり、
前記センサが、前記外からの物理的影響を感知できる支持媒体中にホログラフィック素子を含むことを特徴とする感知方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の感知方法は、ホログラフィックセンサを外からの物理的影響に暴露して、該センサがこの物理的影響を感知すること、及び、画像の変化を観察することを含む。物理的影響は、ホログラフィック素子を支持する媒体の物性変化を引き起こす遠隔からの又は直接の呼びかけ信号であると理解してよい。
【0008】
ホログラフィックセンサは、温度、磁気、光及び/又は圧力等の物理的影響を感知し得る。
本発明は、セキュリティ/認証に特に関連がある。観察された変化、すなわちセンサの光学特性の変化は、目で直接、又は、好適な装置(例えば分光計)を使用することによって感知され得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、温度(℃)に対するピーク波長(nm)のグラフである。
【図2】図2は、時間(分)に対する強度(カウント)のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において使用されるホログラフィックセンサは、一般的にホログラフィック支持媒体を含み、上記媒体全体にホログラムが配置されている。本発明の方法は、支持媒体が物性(例えば温度)を感知するようなセンサの使用を含んでいることが好ましい。センサを呼びかけ信号に暴露することによって、(局所的に)物性が変化して、支持媒体の特性が変化し得る。これによって、素子の光学特性が変化する。
【0011】
センサは、任意の好適な手段からの呼びかけ信号を受信することができる。遠隔からの呼びかけ信号の例として、好適な能力のレーザをセンサに向けると、支持媒体が拡大し得る。従って、本発明のセンサは光アドレス型(light−addressable)であり得る。
【0012】
上記以外の呼びかけ信号は、遠隔的なものではなく、例えば手で又は重さをかけることによって、力を直接かけて圧縮又は伸張させることを含む。ホログラムは、温度の上昇又は低下等の物理的な効果を感知することができる。
【0013】
変化する支持媒体の特性は、電荷密度、体積、形、密度、粘度、強度、硬度、電荷、疎水度、膨張度、整合度、架橋密度等の任意の物性であってよい。上記物性が変化すると、分極性、反射率、屈折率又は吸光度等のホログラフィー素子の光学特性が変化する。広帯域入射光である非電離電磁放射線によってホログラムを再生している間に何か変化が生じると、光学特性が変化して、例えば色又は強度の変化が観察され得る。
【0014】
変化させる物性は、支持媒体の大きさ又は体積であることが好ましい。これは、支持マトリックスの中に、支持媒体を拡大又は縮小させる原子団を組み込むことによって実施することができる。支持媒体は、粘弾特性を有する未改変の又は改変したマトリックスを含むことが好ましい。
【0015】
好ましい一実施形態において、上記支持媒体はスピロピラン基又はその誘導体を含む。スピロピラン類は、UV光に暴露すると可逆的にメロシアニンに転換する。この変形によって電荷が増大し、かつ、支持媒体が拡大する。この転換は、可視光又は熱によってセンサに呼びかけ信号を送ると、元に戻り得る。
【0016】
支持媒体中において磁気を移動させるため、媒体は強磁性ポリマー又は一つ以上の「分子磁石」を含んでいてもよい。分子磁石は公知であり、重合性モノマーとして合成することができる。
【0017】
ホログラフィックセンサは、それぞれが異なる特性を感知できる複数のホログラフィック素子を含んでいてもよい。ホログラフィック素子はアレイ状に配置されていてもよい。
【0018】
ホログラムは、例えば透過型又は反射ホログラムであってもよい。反射ホログラムにおいて、縞は支持媒体の表面に平行である。これによって、入射光が入った面から光が出て行く。このように縞が配置されている場合に、温度変化を特に感知し得るホログラムが提供される。
【0019】
外からの物理的な相互作用に対するセンサの感受性は、センサ又は支持媒体のバルク特性に応じて変化し得る。あるいは、これは、ホログラフィック素子の化学的変化又は他の変化によるものである可能性もある。これは、より感受性の高い反応及び/又は遠隔からの呼びかけ信号に対して特に適切である可能性がある。
【0020】
実施例2中に例証されるように、感光性ホログラムは、センサに光呼びかけ信号を送ることによって作ることができ、ホログラムの特性が変化すると、ホログラフィック素子の光学特性が変化する。実施例2中においては特定の漂白剤が使用されるが、他のものの方が好適であるということが理解されるであろう。漂白プロトコル及び/又はポリマー骨格を改変することによって、感光度を調整することができる。同様に、他の物理的影響によって感受性を調節して、センサの応答を調節することもできる。
【0021】
アゾベンゼン部位を使用して別の感光性ホログラフィックセンサを作ることもでき、これをUV呼びかけ信号によってtrans型からcis型に光異性化する。これによって、ホログラフィック画像を支持する媒体の混合の自由エネルギーが変化し、その結果、対応するホログラムの光学特性が変化する。また別のアプローチとしては、ホログラムの中にトリフェニルメタン白色色素を組み込むことを含むものがある。この色素はUV光にあたると光解離し、これにより荷電種が生じてホログラフィックマトリックスが膨張し、ホログラフィック画像が変化する。
【0022】
特にレーザ感受性センサについては、媒体は、エラストマー状モノマーから構成されるポリマーであることが好適である。あるいは、ホログラフィック媒体は、温度変化に対して非常に感受性の高いコンフォメーションを有するN−イソプロピルアクリルアミドポリマー(「NiPAMM」)等のポリマーを含んでいてもよい。温度が上昇すると、堅いポリマー構造が壊れて、反射波長が顕著にシフトする。
【0023】
本発明は、特にセキュリティに関連する。例えば、認証タグは「メッセージ」が内蔵されたホログラフィックセンサを含むものであってもよい。例えば磁場によって、このセンサに呼びかけ信号を送ると、センサは「メッセージ」を表示する。この「メッセージ」は、目で直接見えることが好ましい。
【0024】
磁場は、セキュリティ特性として使用できる可能性がある。例えば単純にホログラムの上を磁石を通過させることによって、磁場が生じ、これによりホログラムの色又は画像が変化して、本物であることが示される。また、磁場の上にホログラムをのせて、(クレジットカードについているもののような)一体型磁気ストリップを作成することもできるであろう。
【0025】
食品の品質を監視する際に、圧力センサを使用して、真空又は加圧により製品を密閉して新鮮に保つことも可能であろう。真空状態又は加圧状態でなくなると、ホログラムが変化するであろう。また、これは認証性のものであってもよく、接触により圧力がかかると色又は画像が変化し、ホログラムが本物であることが示される。
【0026】
上記以外の、温度に対して感受性のある本発明の実施形態は、使用時の温度で色が変化する装置(例えば発酵系等)、又は、光で遠隔から呼びかけ信号を送ることのできる交換用非電動温度計(replacement power−free thermometer)である。更なる実施形態は、(例えば指で押す等して)体温に近づくと色が変化するセキュリティ装置、又は、細菌若しくは人間のモニター診断用のセンサアレイの一部である。
【0027】
センサは、化学的、生化学的若しくは生物学的な種である検体に感受性を有し得る。本発明は、サンプル中の上記任意の検体の感知方法であって、サンプルとセンサとを接触させること、及び、その光学特性における任意の変化を感知することを含むことを特徴とする方法に関する。
【0028】
また、本発明は、本発明のセンサを含む物品であって、上記物品は、金融取引カード、銀行券、パスポート、身分証明証、スマートカード、運転免許証、株券、債務証書、小切手、小切手保証カード(cheque card)、タックスバンダロール(tax banderole)、ギフト券、郵便切手、鉄道チケット若しくは航空チケット、テレフォンカード、くじ券、イベントチケット、クレジットカード若しくはデビットカード、業務用名刺等の手段、又は、消費者、商標若しくは製品の保護において偽造品と本物の製品とを区別するための、若しくは、盗品を確認するためのアイテムであってよいことを特徴とする物品にも関する。また、上記物品は、品質についての製品情報を、又は、製品の品質、保存期間若しくは安全性に影響を及ぼす可能性のある環境条件を、監視、試験又は表示するための、容器、包み又は囲いを含む系である、識別力を有するパッケージのアイテムであってもよい。主な用途は、時間と温度の相関、鮮度、湿度、アルコール、ガス及び物理的損傷等を示す指標を含む。
【0029】
上記物品は、宝飾品類、衣類(履物を含む)、織物、家具、玩具、進物、家庭用品(陶磁器類及びガラス器を含む)、建築物(ガラス、タイル、塗料、金属、レンガ、陶磁器、木、プラスチック、並びに、他の内装及び外装を含む)、芸術品(絵画、彫刻、陶器及び照明装置を含む)、文房具類(あいさつ状、レターヘッド及び宣伝製品を含む)及びスポーツ用品から選択される装飾要素を有する工業品又は手工芸品であってもよい。物品は、農学研究、環境研究、人間又は獣医学における予後、治療的診断、診断、治療又は化学分析に使用するための製品又は装置であってもよく、試験紙、チップ、カートリッジ、綿球、チューブ、ピペット、コンタクトレンズ、結膜下インプラント、皮下インプラント、飲酒検知器、カテーテル、又は、流体サンプリング装置若しくは分析装置であってもよい。
【0030】
また、本発明は、本発明のセンサを含む転写可能なホログラフィーフィルムにも関する。このフィルムは、ホットスタンプテープ上に配置されていてもよい、又は、センサをフィルムから物品の上に移動させることによって、物品のセキュリティを強化することができる。
【0031】
また、本発明は、本発明のセンサを含む、データを生成できる物質、及び、該データをデータ読み取り、処理、記憶、制御、送信、妨害、報告及び/又はモデル化に使用する系にも関する。このような系は、携帯電話、携帯情報端末、及び、他の携帯用電子機器を含む。
【0032】
以下の実施例により本発明を説明する。
【実施例】
【0033】
実施例1
N−イソプロピルアクリルアミド及びN,N’−メチレンビスアクリルアミド(MBA)(モル比24:1)をジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解し、40重量%(総モノマーに対する)溶液を作った。その後、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(DMPA)の5%メタノール溶液の適正量をモノマー溶液に添加して、DMPAの最終濃度を0.24%とした。
【0034】
上記モノマー溶液80μlを、シラン化したスライドガラスの下でUV光を照射して60分間重合させた。このポリマーの中で銀拡散法によってホログラムを記録した。
【0035】
4mlのキュベットの中で、20mMリン酸ナトリウム緩衝生理食塩水(pH6.5、30℃、イオン強度50mM)3.7ml中でホログラムをインキュベートした。外部の水浴によってキュベットの温度を調整し、大量の溶液中で温度を測定した。
【0036】
鋭角のスペクトルデータから、ピーク回折波長を記録した。測定値はすべて、平衡状態における最終ピークシグナルを反映している。結果を、添付の図面の図1中に示す。
【0037】
実施例2
感光性ホログラフィックセンサを、ゼラチンに基づくホログラムから作った。得られたホログラムをKBrを含みFe(III)に基づく調製物を使用して漂白し、感光性のホログラフィック縞を形成した。その後、感光性ホログラフィックセンサを白色光に1000分間露光し、ホログラムから回折された光の強度を実験中ずっと観察して記録した(添付の図面の図2中に示す)。回折シグナルの強度(反射率)は、白色光に最初200分間露光した際に15%減少した。また、この結果は目視できた。
【0038】
実施例3
架橋剤MBAを5%を含み、アクリルアミド:メタクリルアミドの比が2:1であるアクリルアミド共重合体を調製した。モノマー溶液200μlを処理済スライドガラス上で重合させて、厚いポリマー層を形成した。このポリマーの中で、水浴中に浸漬して、周波数が2倍のNd:YAGレーザでホログラムを記録し、脱イオン水中で529nmの緑色の回折シグナル(再生)を得た。その後、ホログラムを別のスライドガラスで覆い、約15mmの間隔をあけて一対のGクランプで留めた。Gクランプに挟まれたホログラムの回折シグナル(再生)は、スライドガラスを割らないようにしてクランプを締めると、526nmに変化した。クランプによってホログラムに力がかかることによって、ホログラムの体積が収縮し、これによって回折シグナルが青側に合計3nmシフトした。
【0039】
実施例4
国際特許WO03/062305中及びZaidiらの文献(Polymer 45 (2004)5683−89)によって記載される方法に従って、ポリアニリン(PANi)及びこれを受ける分子であるテトラシアノキノジメタン(tetracyanoquinodimethane)(TCNQ)からPANiCNQ共重合体を合成した(その含量は本明細書中に参照によって組み込まれている)。これによって、室温で磁気特性を示すポリマー材料が得られる。このポリマーでガラス表面を覆って、これを、そのまま、又は、架橋剤を含むコモノマーをPANiCNQ中に拡散・架橋させて、重合することができる。その後、PANiCNQポリマーを、国際特許WO95/26499中に記載されるように、銀拡散により記録材料として処理することよって、ホログラムを作成することができる。あるいは、国際特許WO2004/081676中に記載されるように、モノマー溶液をUVレーザで架橋し、銀を含まないホログラムを作成することもできる。
【0040】
磁場による呼びかけ信号の受信によりポリマー全体が磁気を帯びているため、白色光に照射されると、ポリマーが拡大又は収縮して、ホログラムの回折波長(再生)がそれぞれ赤又は青にシフトし得る。これによって、磁場を定量し得るであろう、又は、好適な磁場の存在下においてホログラムの色/画像が変化し得るであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホログラフィックセンサを外からの物理的影響に暴露して、該センサがこの物理的影響を感知すること、及び、画像の変化を観察することを含み、
前記外からの物理的影響が、温度または磁気であり、
前記センサが、前記外からの物理的影響を感知できる支持媒体中にホログラフィック素子を含む
ことを特徴とする感知方法。
【請求項2】
前記媒体の大きさ、形、密度、粘度、強度、硬度、疎水度、膨張度、整合度、分極性、及び/又は、電荷の分布を変化させる
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記媒体がポリマーを含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマーがエラストマーである
ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリマーがN−イソプロピルアクリルアミドポリマーである
ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記光学特性の変化が可逆的である
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ホログラムが反射型又は透過型ホログラムを含む
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ホログラムは、白色光、UV光又は赤外線を照射すると見える
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
認証に用いられる
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−95768(P2011−95768A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1932(P2011−1932)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【分割の表示】特願2007−522023(P2007−522023)の分割
【原出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【出願人】(501023524)ケンブリッジ エンタープライズ リミテッド (17)
【Fターム(参考)】