説明

センサシート、検出回路およびタッチパネル装置

【課題】容易に製造することができるセンサシート、検出回路、およびタッチパネル装置を提供すること。
【解決手段】入力体100が近接したことと近接した入力体100の位置とを検出する検出回路に接続されるタッチパネル装置用のセンサシート2であって、基板6と、基板6の厚さ方向における一方のみの面上に互いに離間して配置され、入力体100が近接したときに入力体100との間の静電容量が変化する3つ以上の検出電極7と、前記3つ以上の検出電極7に電気的に接続されているとともに検出回路に電気的に接続される配線8と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサシート、検出回路およびタッチパネル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器に対して入力をするための入力装置として、スタイラスペンや使用者の指など(以下、これらを「入力体」と称する。)を接触させるためのパネル面を有し、このパネル面に入力体が接触した際に入力体の位置を検出して入力体の座標情報として電子機器へ出力するタッチパネル装置が知られている。
また、近年、複数の位置に同時に入力体が接触したときに入力体が接触した位置をそれぞれ検出するマルチタッチ式のセンサシートを備えたタッチパネル装置が普及している。
【0003】
このようなタッチパネル装置の例として、特許文献1には、マルチタッチ式のタッチセンサと、このタッチセンサを駆動するコントローラとが記載されている。特許文献1に記載されたタッチセンサは、タッチセンサの厚さ方向に積層された2層式検出電極構造を有し、その一方の層には駆動ラインが設けられ、他の層には感知ラインが設けられている。特許文献1に記載されたタッチセンサでは、異なる層にそれぞれ設けられた駆動ラインと感知ラインとをタッチパッドの厚さ方向から見たときに交差する位置に、駆動ラインと感知ラインとによってキャパシタが構成される。駆動ラインと感知ラインとの間のキャパシタにおける静電容量の変化をコントローラが検出することによって、入力体がタッチパネルへ接触したことをコントローラが認識できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−535742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されたタッチパネル装置では、駆動ラインと感知ラインとがそれぞれ別の層に形成された2層構造であるので、駆動ラインを有する層と感知ラインを有する層とをそれぞれ別の工程で形成する必要があり、タッチパネル装置を製造する工程が複雑であった。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、容易に製造することができるセンサシート、検出回路、およびタッチパネル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明のセンサシートは、入力体が近接したことと近接した前記入力体の位置とを検出する検出回路に接続されるタッチパネル装置用のセンサシートであって、基板と、前記基板の厚さ方向における一方のみの面上に互いに離間して配置され、前記入力体が近接したときに前記入力体との間の静電容量が変化する3つ以上の検出電極と、前記3つ以上の検出電極に電気的に接続されているとともに前記検出回路に電気的に接続される配線と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、前記3つ以上の検出電極は、三角格子状に配置されていることが好ましい。
また、前記検出電極は4つ以上設けられ、正方格子状に配置されていてもよい。
【0009】
本発明の検出回路は、基板の面上に予め座標が定められて配置されるとともに入力体との間の静電容量が変化する3つ以上の検出電極が形成されたセンサシートに接続されるタッチパネル装置用の検出回路であって、前記3つ以上の検出電極に対して電気的に接続され、前記3つ以上の検出電極のそれぞれと前記入力体との間における静電容量の変化量を検出する検出部と、前記検出部に対して電気的に接続され、前記3つ以上の検出電極に対する静電容量の変化量の閾値が設定されており、前記3つ以上の検出電極のうち前記閾値を超える前記変化量が検出された検出電極であって互いに隣り合う検出電極を1つの検出電極群として、前記3つ以上の検出電極を1つ以上の前記検出電極群に群分けする群分け部と、前記群分け部において群分けされた前記検出電極群のそれぞれに対して、それぞれの前記検出電極群毎に前記変化量が大きい順に3つ以上の検出電極を抽出し、抽出された検出電極における前記変化量と前記座標とに基づいて、前記基板の面上における前記入力体の座標を算出する位置算出部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明のタッチパネル装置は、本発明の検出回路と、前記検出回路に接続された本発明のセンサシートとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のセンサシートおよびタッチパネル装置によれば、検出電極および配線が基板の一方の面にのみ設けられているので、容易に製造することができる。
また、本発明の検出回路によれば、検出電極を群分けして入力体の位置をそれぞれの群に対して算出するので、複数の位置に同時に複数の入力体を近接させた場合に複数の入力体のそれぞれの位置を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態のタッチパネル装置の構成を示すブロック図である。
【図2】同タッチパネル装置におけるパネル部の構成を示す正面図である。
【図3】図2のA1−A1線における断面図である。
【図4】図3のB1−B1線における断面図で、同パネル部におけるセンサシートの構成を示す図である。
【図5】同タッチパネル装置における検出回路の構成を説明するためのフローチャートである。
【図6】同タッチパネル装置を備えるコンピュータシステムの構成を示すブロック図である。
【図7】同タッチパネル装置の作用を説明するための説明図である。
【図8】本実施形態のタッチパネル装置の変形例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態のセンサシート2、検出回路3、およびタッチパネル装置1について図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態のタッチパネル装置1の構成を示すブロック図である。また、図2は、タッチパネル装置1におけるパネル部4の構成を示す正面図である。また、図3は、図2のA1−A1線における断面図である。また、図4は、図3のB1−B1線における断面図で、パネル部4におけるセンサシート2の構成を示す図である。また、図5は、タッチパネル装置1における検出回路3の構成を説明するためのフローチャートである。また、図6は、タッチパネル装置1を備えるコンピュータシステム20の構成を示すブロック図である。また、図7は、タッチパネル装置1の作用を説明するための説明図である。
【0014】
本実施形態のタッチパネル装置1は、入力体100(図3参照)が近接したことと、近接した入力体100の位置とをそれぞれ検出し、入力体100による入力操作を受け付けるものである。なお、タッチパネル装置1における入力体100としては、たとえば人の指を挙げることができる。なお、入力体100は人の指に限れられるものではない。入力体100としては、スタイラスペンやその他の導体を適宜採用することができる。
【0015】
図1に示すように、本実施形態のタッチパネル装置1は、パネル部4と、パネル部4に対して電気的に接続された検出回路3とを備える。
図2および図3に示すように、パネル部4は、センサシート2と、センサシート2に積層された保護層5とを備える。以下では、センサシート2がある側を下とし、保護層5がある側を上として説明を行う。
センサシート2は、基板6と、検出電極7と、配線8とを備える。
【0016】
図3および図4に示すように、基板6は、樹脂によって形成された薄板状の絶縁基板である。本実施形態では、基板6はポリエチレンテレフタレートからなり、光透過性を有する。基板6には、配線8を引き出すための引き出し部9が形成されており、引き出し部9において検出回路3に接続できるようになっている。
引き出し部9は、基板6の四隅のそれぞれに設けられている。これにより、後述する配線8の長さのばらつきを軽減し、配線8の長さが異なることによる信号の遅延や、配線8の長さが長くなることによるノイズの混入などを軽減することができる。本実施形態では、引き出し部9の先端は、ZIFソケット(Zero Insertion Force socket)に接続できるように形成されており、検出回路3に対して着脱可能に接続できるようになっている。
【0017】
検出電極7は、基板6の厚さ方向における一方の面上に互いに離間して3つ以上配置されている。本実施形態では、検出電極7は、基板6の厚さ方向において保護層5側に向けられた面上にのみに形成されている。複数の検出電極7のそれぞれの形状は、基板6の厚さ方向から見たときの輪郭形状が円形となっている。検出電極7は少なくとも3つ以上配置されており、本実施形態では67個の検出電極7が基板6上に設けられている。なお、検出電極7の数は、3つ以上であれば、パネル部4の大きさに応じて適宜増減することができる。本実施形態では、複数の検出電極7は基板6の面上において三角格子状に配置されており、検出電極7は、検出電極7のそれぞれの中心O1が、互いに隣接する3つの検出電極7において正三角形の頂点をなすように配置されている。
【0018】
また、本実施形態の検出電極7は、光透過性を有する。光透過性を有する検出電極7の材質としては、たとえば透明導電性樹脂材料を採用することができる。具体的には、検出電極7の材料としては、信越ポリマー製SEPLEGYDA(登録商標)、酸化インジウムスズ(ITO)などを採用することができる。
【0019】
配線8は、検出電極7のそれぞれに一端が接続されており、基板6の面に沿っていずれかの引き出し部9へ向かって延びている。さらに、配線8は、基板6の引き出し部9において等間隔に整列して配置されている。本実施形態では、配線8の材質は検出電極7の材質と同じであり、配線8は光透過性を有する。
配線8は、線幅が狭い方がノイズの影響を受け難いため好ましい。たとえば、検出電極7の直径が10mmである場合には、配線8の線幅は78μm以下であり、検出電極7の直径が5mmである場合には配線8の線幅は39μm以下であることが好ましい。これにより、検出電極7のみに入力体100を近接させた場合に対する配線8のみに入力体100を近接させた場合のS/N比は100以上となり、検出回路3においてノイズが無視できる程度の感度を得ることができる。
【0020】
図2および図3に示すように、保護層5は、光透過性の樹脂やガラスなどの誘電材料によって板状に形成されたものであり、外力がセンサシート2に伝わったり水分がセンサシート2に進入することからセンサシート2を保護するためのものである。本実施形態では、保護層5は、センサシート2の上面を覆ってセンサシート2に固定された樹脂からなる被覆層5aと、被覆層5aの上に積層されるガラス板5bとを備える。保護層5はセンサシート2の上に積層されており、保護層5の上面は、入力体100である指を接触させることができるようになっている。保護層5には、保護層5の厚さ方向から見たときに検出電極7の全体を囲う矩形形状の貫通孔10aが形成された枠体10が固定されている。枠体10は、遮光性を有する樹脂材料によって形成されている。
【0021】
このような構成により、パネル部4は、貫通孔10aの内側領域において、基板6、検出電極7、配線8、保護層5を介して光を透過させることができるようになっている。このため、パネル部4をたとえば液晶表示装置21の液晶パネル21aに重ねて組み付けたときに、液晶パネル21aが発する光はセンサシート2における基板6、検出電極7および配線8を透過し、さらに保護層5を透過してユーザーによって視認できるようになっている。
【0022】
次に、検出回路3の構成について、検出回路3によって行われる処理とともに説明する。
図4に示すように、検出回路3は、センサシート2における引き出し部9に接続されておいる。また、図1に示すように、検出回路3は、検出部11と、群分け部12と、位置算出部13と、出力部14と、を備える。
【0023】
検出部11は、センサシート2と検出回路3とが接続されたときには、センサシート2に形成された各検出電極7に対して配線8を介して電気的に接続されるようになっている。検出部11には、それぞれの検出電極7に対して検出動作を行うための時間幅と、複数の検出電極7に対して検出動作を行う順序とが定められている。これにより、検出部11は、予め定められた時間幅をもって複数の検出電極7に対して順次検出動作を行い、複数の検出電極7のそれぞれから静電容量の変化量の信号を受信することができる(図5に示すステップS1)。
【0024】
また、検出部11は、すべての検出電極7に対する検出動作が一巡したら、複数の検出電極7における静電容量の変化量の信号を、検出した順序どおりに群分け部12へ出力するようになっている。検出部11は、検出電極7のそれぞれにおける指(入力体100)との間の静電容量の変化を繰り返し検出し、検出電極7における静電容量の変化量の信号を群分け部12へ繰り返し出力するようになっている。
【0025】
群分け部12は、検出部11に対して電気的に接続されており、群分け部12によって出力された静電容量の変化量が入力されるようになっている。また、群分け部12は、複数の検出電極7のそれぞれにおける静電容量が一定以上上回って変化した場合に検出電極7から入力されたと判定するための閾値が設定されている。
【0026】
本実施形態において群分け部12に設定された閾値は、パネル部4の上面における一箇所に入力体100を接触させたときに少なくとも3つの検出電極7において入力されたと判定されるようにその値が定められている。検出部11から群分け部12へ出力された信号が閾値を超えている場合には、その検出電極7に対して入力があったものと群分け部12が判定するようになっている。なお、検出電極7における静電容量の変化量が閾値を下回っている場合には、入力がなかったものと群分け部12が判定するようになっている。
【0027】
さらに、群分け部12には、複数の検出電極7のそれぞれにおける互いの位置関係が記憶されている。すなわち、群分け部12には、基板6の面上における複数の検出電極7の座標がそれぞれ記憶されている。本実施形態では、複数の検出電極7に対応する座標は、パネル部4の厚さ方向から見て貫通孔10aの内側領域に重なる矩形領域における長辺と短辺とに沿って延びる互いに直交する2軸線による直交座標系に基づいて定められている。この直交座標系における原点はパネル部4の面方向における適宜に位置に定めることができる。たとえば、本実施形態では、原点は、すべての検出電極7を囲む矩形領域における一角に定められている。また、複数の検出電極7の座標としては、基板6の厚さ方向から見て円形の輪郭形状を有する複数の検出電極7におけるそれぞれの中心位置の座標が採用されている。以下では、上記矩形領域における長辺方向をX軸方向、短辺方向をY軸方向として説明する。
【0028】
また、群分け部12は、群分け部12に記憶されている検出電極7の座標と、検出部11から入力された信号とに基づいて、複数の検出電極7のうち閾値以上の変化量が検出された検出電極7であって互いに隣り合う検出電極7を抽出するようになっている。さらに、群分け部12は、閾値以上の変化量が検出された検出電極7によって1つ以上の検出群G(図7参照)を設定し(図5に示すステップS2)、検出群Gのそれぞれに含まれる検出電極7の座標とそれらの検出電極7における静電容量の変化量を電磁的な情報として記憶するようになっている。
【0029】
図7に示すように、本実施形態において、1つの検出群Gが設定されたときにこの検出群Gに含まれる検出電極7の数は3つ以上である。また、静電容量の変化量が閾値を超える検出電極7であっても、隣接する検出電極7において静電容量の変化量が閾値を超える検出電極7が1つもない場合には、1つの検出電極7のみによる検出群Gは設定されない。これにより、1つの検出電極7にのみ静電容量の変化が生じるような狭い範囲における静電容量の変動は入力として判定されないため、検出電極7に伝わるノイズによって誤検出が発生することを軽減することができる。また、互いに隣接する2つの検出電極7のみでは検出群Gは設定されない。
【0030】
群分け部12において記憶される検出群Gの上記情報は、群分け部12において群分けされた検出群Gのすべてであってもよいし、例えば10群以下、あるいは5群以下などに限定されていてもよい。これは、タッチパネル装置1において想定される同時入力(例えば両手の10指や、いずれか2、3本の指による操作などで同時にパネル部4の上面に触れること)の数量に合わせて適宜増減して定めることができる。
【0031】
群分け部12において記憶される検出群Gの数が少ないと複数の入力体100が検出電極7に近接して行われる同時入力を受付可能な数量が少ない反面、検出回路3全体および検出回路3から出力される後述する座標情報Mを処理する電子回路における処理が軽くなる。逆に、群分け部12において記憶される検出群Gが多いと、検出回路3における処理は重くなる反面、同時入力を受け付け可能な数量が増える。なお、群分け部12において記憶できる検出群Gの数量は、検出回路3の製造後に別に設定変更することができるようになっていてもよい。
【0032】
群分け部12に記憶された検出群Gの情報は一定間隔で更新される。たとえば、群分け部12においては、すべての検出電極7に対する静電容量の変化量が検出部11によって入力されるたびに、入力された新たな変化量に基づいて検出群Gの情報を更新するようになっている。
【0033】
図1に示すように、位置算出部13は、群分け部12に対して電気的に接続されており、群分け部12において記憶された検出群Gの情報を参照できるようになっている。また、位置算出部13は、群分け部12において群分けされた検出群Gのそれぞれに対して、それぞれの検出群G毎に変化量が大きい順に3つの検出電極7を順位付けする(図5に示すステップS3)。さらに、位置算出部13は、順位付けされた上位3つの検出電極7における座標と静電容量の変化量とをそれぞれ記憶するようになっている。これにより、位置算出部13において抽出されて記憶された検出群Gあたり3つの検出電極7が演算対象検出電極T(図7参照)として設定されるようになっている(図5に示すステップS4)。
【0034】
さらに、位置算出部13は、演算対象検出電極Tにおける静電容量の変化量と演算対象検出電極Tの座標とに基づいて、基板6上における入力体100の座標を算出するようになっている(図5に示すステップS5)。また、本実施形態では、位置算出部13は、入力体100による入力の大きさも算出するようになっている。
位置算出部13は、入力体100の座標および入力体100による入力の大きさを算出したら、その座標と入力の大きさとをそれぞれ出力部14へ出力するようになっている。
【0035】
位置算出部13における座標の算出は次のように行われる。以下では、1つの検出群Gにおける入力体100の座標の算出について説明する。複数の検出群Gに対する算出は、1つの検出群Gに対する算出と同様の算出方法を順次適用することによって行われる。
【0036】
まず、1つの検出群Gにおける演算対象検出電極Tについて、演算対象検出電極Tに含まれる3つの検出電極7の座標を参照する。以下、演算対象検出電極Tに含まれる3つの検出電極7の座標をそれぞれ(x1、y1)、(x2、y2)、(x3、y3)とし、それぞれの検出電極7において検出部11に対して入力された静電容量の変化量の信号における検出値がそれぞれS1、S2、S3であったとする。このとき、位置算出部13は、演算対象検出電極Tにおける上記座標のそれぞれが代入された以下の式1、式2からなる演算式に上記検出値を代入することによって入力体100の座標を算出する。
【0037】
【数1】

【0038】
上記式1におけるXは、上記直交座標系における入力体100のX座標を示し、上記式2におけるYは、上記直交座標系における入力体100のY座標を示している。また、上記式3におけるZは、入力体100による入力の大きさが位置算出部13によって算出された値を示している。また、X、Y、Zにおけるiは正の整数であり、複数の検出群Gが設定された場合において検出群Gごとに異なる値が割り当てられる。
上記式1および式2によって、演算対象検出電極Tに含まれる3つの検出電極7におけるX座標とY座標とがそれぞれ静電容量の変化量によって重み付けされた加重平均値が入力体のX座標およびY座標となる。
また、上記式3によって、演算対象検出電極Tにおける検出値S1、S2、S3の和が入力体100による入力の大きさとなる。
【0039】
位置算出部13において入力体100のX座標とY座標とがそれぞれ算出されたら、位置算出部13は、このX座標およびY座標、および入力体100による入力の大きさを、入力体100の座標および入力の大きさとして出力部14へ出力する。
本実施形態では、位置算出部13は、一定時間ごとに入力体100の座標および入力の大きさを繰り返し算出して、算出された座標および入力の大きさをそれぞれ出力部14へ出力するようになっている。
【0040】
出力部14は、位置算出部13に対して電気的に接続されており、位置算出部13から出力された入力体100の座標と入力の大きさが入力されるようになっている。出力部14は、たとえば検出回路3に接続される図示しない他の電子回路に対して電気的に接続できるようになっており、位置算出部13において算出された座標と入力の大きさを、座標情報M(図6参照)として他の電子回路に対して出力するようになっている(図5に示すステップS6)。
【0041】
以上に説明した構成のタッチパネル装置1の作用について、センサシート2および検出回路3の作用を中心に説明する。
本実施形態では、タッチパネル装置1の作用を説明するための一構成例として、図6に示すように、タッチパネル装置1が取り付けられた液晶表示装置21と、液晶表示装置21に接続され、液晶表示装置21に映像を表示する機能を有するコンピュータ本体22とを有するコンピュータシステム20の動作を示す。
【0042】
タッチパネル装置1の使用時には、ユーザは、液晶パネル21aに表示された映像を、タッチパネル装置1のパネル部4を介して視認することができる。ここで、例えば液晶パネル21aに表示された映像に基づいて液晶パネル21aの表示面の一部を指し示す操作を行う場合、ユーザは、パネル部4の上面4aのうち液晶パネル21aにおいて指し示す映像と重なる位置に入力体100を接触させる。ユーザが入力体100を液晶パネル21aの表示面に接触させる過程において、入力体100はタッチパネル装置1のセンサシート2に近接する。たとえば、図2におよび図7に示すように、ユーザは、パネル部4の上面における位置A、位置Bに入力体100を接触させる。
【0043】
これにより、センサシート2において入力体100が近接した位置にある検出電極7とその入力体100との間にはキャパシタが形成される。すると、入力体100が近接する前と比較して、入力体100が近接した検出電極7においては静電容量が増加する。また、入力体100と検出電極7との間の距離に応じて、入力体100に最も近い位置にある検出電極7における静電容量が最も大きく、入力体100からの距離が遠くなるに従って検出電極7における静電容量は小さくなる。このため、入力体100が接触した位置A、位置Bのそれぞれにおいて検出電極7の静電容量は検出電極7ごとに異なる。
【0044】
センサシート2の検出電極7において静電容量が変化すると、その変化量は検出回路3の検出部11(図1参照)によって検出される。さらに、入力体100が近接した検出電極7のうち閾値以上静電容量が変化した検出電極7(図7に示す検出電極7A−1ないし7A−5および検出電極7B−1ないし7B−6)が検出群Gとして群分け部12に記憶される。
【0045】
たとえば、センサシート2において離間した2つの位置A、位置Bにそれぞれ入力体100を近接させた場合には、図7に示すように2つの検出群Gが群分け部12によって抽出され、それぞれが別の検出群Gとして群分け部12に記憶される。また、たとえば入力体100をそろえて隣接する2つの位置に入力体100を近接させた場合には、1つの検出群Gが群分け部12によって抽出されて記憶される。このように、本実施形態では、静電容量の変化量が閾値以上である検出電極7のまとまりが、静電容量の変化量が閾値未満である検出電極7を間に挟んだ状態であるときに、複数の検出群Gとして抽出される。
【0046】
群分け部12によって検出群Gが記憶されたら、位置算出部13によって、検出群Gのそれぞれにおける入力体100の位置が上述の式1、式2に基づいて算出され、また、入力体100による入力の大きさが上記式3に基づいて算出され、出力部14へ出力される。
【0047】
出力部14は、図6に示すように液晶表示装置21に接続されたコンピュータ本体22に対して座標情報Mを出力する。出力部14から出力された座標情報Mは、コンピュータ本体22において出力部14と電気的に接続された図示しない電子回路へ入力され、コンピュータ本体22において、例えばパネル部4が重ねられた液晶パネル21aにおけるクリック操作や、液晶パネル21aの面に沿ってカーソルを移動させる操作、あるいは各種アプリケーションに対する命令操作などとして受け付けられる。
【0048】
以上に説明したように、本実施形態のセンサシート2によれば、基板6の厚さ方向における一方にのみ検出電極7が配置されているので、基板6の両面に検出電極7を形成するよりも構造を単純にすることができ、容易にセンサシート2を製造することができる。
【0049】
また、検出電極7が三角格子状に配置されているので、基板6の面上における検出電極7の密度を高めることができ、入力体100の位置を検出する精度を高めることができる。
【0050】
また、本発明の検出回路3によれば、群分け部12が検出電極7を検出群Gに群分けし、入力体100である指の座標をそれぞれの検出群Gに対して位置算出部13が算出するので、複数の位置に同時に複数の入力体100を近接させることによる同時入力において複数の入力体100のそれぞれの位置を検出することができる。
【0051】
このように、本実施形態のセンサシート2と検出回路3とを備えることによって、タッチパネル装置1をより容易に製造することができる。
【0052】
(変形例)
次に、本実施形態のセンサシート2の変形例であるセンサシート15の構成について説明する。図8は、本変形例のセンサシート15の構成を説明するための模式図である。
本変形例におけるセンサシート15は、検出電極7の配置が上述の実施形態と異なっている。本変形例における検出電極7は、基板6の一方の面上に正方格子状に配列されている。具体的には、図8に示すように、検出電極7は、対角線がX軸およびY軸に対して平行とされた正方格子状に配列されている。
【0053】
このような構成のセンサシート15に接続される検出回路16(図1参照)は、群分け部12に代えて群分け部17が設けられている。群分け部17において設定する検出群Gには4つ以上の検出電極7が含まれ、群分け部17によって、検出群Gのそれぞれにおいて静電容量の変化量を示す信号の検出値が最も高いものから順に4つの検出電極7が選択されるようになっている。たとえば、図8に示すように、位置Cに入力体100を近接させた場合には、位置Cに対する距離が短い順に4つの検出電極7C−1、7C−2、7C−3、7C−4が選択される。
【0054】
さらに、位置算出部13においては処理内容が上述の実施形態と異なり、群分け部17によって選択された4つの検出電極7の座標が上述の実施形態と同様に静電容量の検出値によって加重平均されて入力体100の座標が算出される。
【0055】
本変形例の構成であっても、上述の実施形態と同様の効果を奏する。
さらに、上述の実施形態において3つの検出電極7から入力体100の座標を算出する場合と比較して、本変形例では演算対象検出電極Tとなる検出電極7の数が1つ多いので、検出電極7に外部から伝わるノイズの影響を軽減することができ、入力体100の位置を検出する精度をさらに高めることができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、検出電極7を厚さ方向から見たときの輪郭形状は円形に限られるものではない。例えば、検出電極7における輪郭形状は、3角形、4角形、6角形などとしてもよい。
【0057】
また、上述の実施形態および変形例においては、基板6の面のうち保護層5に近い側の面に検出電極7を配置する例を示したが、保護層5から遠い側の面に検出電極7が配置されてもよい。
【0058】
また、本実施形態では検出電極7における静電容量の変化量が閾値と等しい場合にはその検出電極7を検出群Gに含むように設定されているが、検出電極7における静電容量の変化量が閾値と等しい場合にはその検出電極7を検出群Gに含まないものとして設定しても構わない。
【0059】
また、検出回路3の位置算出部13における演算式において、演算対象検出電極TのそれぞれのX座標およびY座標のそれぞれに対して、センサシートの構成や検出回路における処理内容に応じて別途定める係数をかけたり、センサシートの構成や検出回路における処理内容に応じて別途乗数を定めて演算対象検出電極TのそれぞれのX座標およびY座標を変換してもよい。これにより、タッチパネル装置における検出感度のチューニングを容易にすることができる。
【0060】
また、基板6の材質としては、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ナイロン樹脂、ビニロン樹脂、アセテート樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などのプラスチックシートを使用することができる。また、基板6の表面あるいは裏面には模様や形状による装飾が付加されていてもよい。また、基板6の材料としては、必要に応じて色付きの材料や偏光特性を有するものを採用することもできる。
【0061】
また、基板6と検出回路3との接続は引き出し部9におけるZIFソケットに限られるものではない。例えば、検出回路3において検出部11に信号を入力するための端子が接触するためのランドが基板6に形成されていたり、検出回路3と基板6とを導電ゴムによるゴムコネクタを介して接続するためのランドが基板6に形成されていてもよい。
【0062】
また、検出電極7および配線8の材質としては、金属箔あるいは金属粒子を含んだインク、金属細線を含んだインク、カーボンを含んだインク、導電性高分子を含んだインクなどの導電インクを用いることができる。導電インクの選定は、抵抗値、光透過性、成型時の伸びに基づいて適宜選定することができる。
【0063】
また、上述の実施形態および変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 タッチパネル装置
2、15 センサシート
3 検出回路
4 パネル部
5 保護層
6 基板
7 検出電極
8 配線
9 引き出し部
G 検出群
T 演算対象検出電極
10 枠体
10a 貫通孔
11 検出部
12 群分け部
13 位置算出部
14 出力部
20 コンピュータシステム
21 液晶表示装置
22 コンピュータ本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力体が近接したことと近接した前記入力体の位置とを検出する検出回路に接続されるタッチパネル装置用のセンサシートであって、
基板と、
前記基板の厚さ方向における一方のみの面上に互いに離間して配置され、前記入力体が近接したときに前記入力体との間の静電容量が変化する3つ以上の検出電極と、
前記3つ以上の検出電極に電気的に接続されているとともに前記検出回路に電気的に接続される配線と、
を備えることを特徴とするセンサシート。
【請求項2】
前記3つ以上の検出電極は、三角格子状に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のセンサシート。
【請求項3】
前記検出電極は4つ以上設けられ、正方格子状に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のセンサシート。
【請求項4】
基板の面上に予め座標が定められて配置されるとともに入力体との間の静電容量が変化する複数の検出電極が形成されたセンサシートに接続されるタッチパネル装置用の検出回路であって、
前記複数の検出電極に対して電気的に接続され、前記複数の検出電極のそれぞれと前記入力体との間における静電容量の変化量を検出する検出部と、
前記検出部に対して電気的に接続され、前記複数の検出電極に対する静電容量の変化量の閾値が設定されており、前記複数の検出電極のうち前記閾値を超える前記変化量が検出された検出電極であって互いに隣り合う検出電極を1つの検出電極群として、前記複数の検出電極を1つ以上の前記検出電極群に群分けする群分け部と、
前記群分け部において群分けされた前記検出電極群のそれぞれに対して、それぞれの前記検出電極群毎に前記変化量が大きい順に3つ以上の検出電極を抽出し、抽出された検出電極における前記変化量と前記座標とに基づいて、前記基板の面上における前記入力体の座標を算出する位置算出部と、
を備えることを特徴とする検出回路。
【請求項5】
請求項4に記載の検出回路と、
前記検出回路に接続された請求項1から3のいずれか一項に記載のセンサシートと、
を備えることを特徴とするタッチパネル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−243049(P2011−243049A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115456(P2010−115456)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】