説明

センサシートおよび入力装置

【課題】容易に製造できるセンサシートおよび入力装置を提供すること。
【解決手段】誘電体層からなる層状の基板と、基板に設けられ誘電体層を間に挟んで誘電体層の両側に配置された電極とを有し、電極における静電容量の変化を検出する検出回路に電極が電気的に接続される入力装置用のセンサシートであって、電極は、誘電体層の厚さ方向の一方側に配置され、検出回路に電気的に接続可能な第一対向電極53と、誘電体層を挟んで第一対向電極53と対向して配置された第二対向電極71と、第二対向電極71に電気的に接続され、基板の面方向のうちの一方向へ互いに平行に延びる複数の第一入力電極72と、前記基板における一方側において第一入力電極72とは絶縁されて配置されているとともに検出回路に電気的に接続可能であり、基板の面方向のうち一方向に対して交差する方向へ互いに平行に延びる複数の第二入力電極56と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサシートおよび入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器に対して入力をするための入力装置として、スタイラスペンや使用者の指など(以下、これらを「入力体」と称する。)を接触させるためのパネル面を有し、このパネル面に入力体が接触した際に、入力体の位置を検出して入力体の座標情報として電子機器へ出力するタッチパネル装置が知られている。
【0003】
このようなタッチパネル装置の例として、特許文献1には、タッチセンサと、このタッチセンサを駆動するコントローラとが記載されている。特許文献1に記載されたタッチセンサは、タッチセンサのパネル面の複数個所に複数の入力体が同時に接触した際に、複数の入力体の座標情報をそれぞれ検知するいわゆるマルチタッチ式のタッチセンサである。特許文献1に記載のタッチセンサは、タッチセンサの基板の厚さ方向に積層された2層式検出電極構造を有し、その一方の層に駆動ラインが設けられ、他の層に感知ラインが設けられている。
特許文献1に記載されたタッチセンサでは、異なる層にそれぞれ設けられた駆動ラインと感知ラインとをタッチパッドの厚さ方向から見たときに交差する位置に、駆動ラインと感知ラインとによってキャパシタが構成される。さらに、駆動ラインと感知ラインとの間のキャパシタにおける静電容量の変化をコントローラが検出することによって、入力体がタッチパネルへ接触したことをコントローラは認識できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−535742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のタッチセンサにおいて、2層式検出電極構造における駆動ラインと感知ラインとは別の層として形成されている。このため、たとえば2層式検出電極構造が形成された基板の片面に駆動ラインおよび感知ラインの端子を集約させる場合には、スルーホールを基板に形成して、基板の厚さ方向の一方から他方へ配線を引き回すことによって信号を伝達する必要がある。
しかし、基板の片面に駆動ラインおよび感知ラインの端子を集約させるためにスルーホールを形成するためには、基板に貫通孔を開け、且つ内部に導体を設ける必要があるため、基板の製造工程が複雑になるおそれがある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、容易に製造できるセンサシートおよび入力装置を提供することがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明のセンサシートは、誘電体層からなる層状の基板と、前記基板に設けられ前記誘電体層を間に挟んで前記誘電体層の両側に配置された電極とを有し、前記電極における静電容量の変化を検出する検出回路に前記電極が電気的に接続される入力装置用のセンサシートであって、前記電極は、前記基板において前記誘電体層の厚さ方向の一方側に配置され、前記検出回路に電気的に接続可能な第一対向電極と、前記誘電体層を挟んで前記第一対向電極と対向して配置された第二対向電極と、前記第二対向電極に電気的に接続され、前記基板の面方向のうちの一方向へ互いに平行に延びる複数の第一入力電極と、前記基板における前記一方側において前記第一入力電極とは絶縁されて配置されているとともに前記検出回路に電気的に接続可能であり、前記基板の面方向のうち前記一方向に対して交差する方向へ互いに平行に延びる複数の第二入力電極と、を備えることを特徴とするセンサシートである。
【0008】
また、本発明の入力装置は、本発明のセンサシートと、前記電極に電気的に接続されて入力体と前記電極と間における静電容量の変化を検出する検出回路とを備え、前記検出回路は、前記第二入力電極によって受信可能な駆動信号を前記複数の第一入力電極のそれぞれに対して一定の時間幅で順次出力する信号出力部と、前記第一入力電極によって受信された前記駆動信号が検出信号として入力され、前記検出信号の変化に基づいて前記電極への前記入力体の近接を判定する判定部と、を有することを特徴とする入力装置である。
【0009】
また、本発明の入力装置は、本発明のセンサシートと、前記電極に電気的に接続されて入力体と前記電極と間における静電容量の変化を検出する検出回路とを備え、前記検出回路は、前記第一入力電極によって受信可能な駆動信号を前記複数の第二入力電極のそれぞれに対して一定の時間幅で順次出力する信号出力部と、前記第二入力電極によって受信された前記駆動信号が検出信号として入力され、前記検出信号の変化に基づいて前記電極への前記入力体の近接を判定する判定部と、を有するものであってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のセンサシートおよび入力装置によれば、第一対向電極と第二対向電極との間にキャパシタが形成され、このキャパシタを介して静電誘導によって検出回路に対する信号の送信あるいは受信をすることができるので、下部導体層5と上部導体層7とを接続するためのスルーホールを形成する必要がなく、入力装置1の製造工程を簡略化して入力装置1を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態の入力装置を示すブロック図である。
【図2】(A)は同入力装置を示す斜視図、(B)は(A)のQ1−Q1線における断面図である。
【図3】(A)は図2(B)のQ2−Q2線における断面図、(B)は図2(B)のQ3−Q3線における断面図、(C)は同入力装置における上部入力電極と下部入力電極との配置を説明するための説明図である。
【図4】同入力装置の使用時の動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】同入力装置の使用時の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態のセンサシートおよび入力装置について、図1ないし図3を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態の入力装置を示すブロック図である。また、図2(A)は本発明の第2実施形態の入力装置を示す斜視図、図2(B)は図2(A)のQ1−Q1線における断面図である。また、図3(A)は図2(B)のQ2−Q2線における断面図、(B)は図2(B)のQ3−Q3線における断面図、(C)は入力装置における上部入力電極と下部入力電極との配置を説明するための説明図である。
【0013】
図1に示すように、入力装置1は、センサシート2と検出回路3とを備える。
図2(A)および図2(B)に示すように、センサシート2は、下部基材層4と、下部導体層5と、誘電体層6と、上部導体層7と、上部基材層8とがこの順に積層されており、下部基材層4と、下部導体層5と、誘電体層6と、上部導体層7と、上部基材層8とによって基板が構成されている。なお、図2(B)においては、説明を分かりやすくするために誘電体層6の厚さ方向の上下に隙間を空けて図示しているが、下部導体層5、誘電体層6、および上部導体層7はこの順で互いに密着されている。
以下、センサシート2において、下部基材層4が下側にあり、上部基材層8が上側にあるものとして説明する。
【0014】
下部基材層4は、樹脂材料によってシート状に形成されており、絶縁性を有する。本実施形態では、下部基材層4の材質はポリエチレンテレフタレートである。本実施形態では、下部基材層4は、略矩形形状に形成された本体4Aと、本体4Aの4辺のうちの一辺から帯状に延びて形成された帯状部4Bとを有している。
【0015】
下部導体層5は、導電材料によって形成された層であり、下部基材層4に接着されている。下部導体層5は、下部入力電極(第二入力電極)56と、第2配線部55と、第1回路接続部51と、下部対向電極(第一対向電極)53と、第1配線部52と、第2回路接続部54と、を備える。また、下部導体層5の材質は、たとえば銅、金、銀、アルミニウムなどの金属材料を採用することができる。本実施形態では、下部導体層5は銅箔からなる。
【0016】
下部入力電極56は、下部基材層4上に複数(本実施形態では、下部入力電極56−1ないし56−8の計8つ)設けられている。また、各下部入力電極56は、厚さ方向から見たときの輪郭形状が正方形状に形成された銅箔からなる複数の電極要素56Aが、その対角の頂点において互いに接続されて一続きに並べられている。また、一続きに並べて設けられた電極要素56Aの両端は、電極要素56A側に頂点が向けられた三角形状になっている。また、下部入力電極56は、下部基材層4の本体4Aの面上において互いに同方向に向けて延ばして配置されている。下部入力電極56における長手方向の中心線は互いに平行とされている。このように下部入力電極56が構成されていることにより、隣り合う下部入力電極56の間には略正方形状の隙間が空けられている。
【0017】
図3(A)に示すように、第2配線部55は、下部入力電極56−1ないし56−8のそれぞれに一端が接続され、下部入力電極56−1ないし56−8の全体を囲う略矩形形状の領域の外周から帯状部4Bへ向かって延びている。さらに、第2配線部55は、帯状部4Bにおいて互いに平行に整列されて帯状部4Bの上面に沿って帯状部4Bの突出端側へ向かって延ばして設けられている。
【0018】
第1回路接続部51は、下部基材層4における帯状部4Bの突出端の近傍に位置し、FPC(フレキシブル回路基板)またはFFC(フレキシブルフラットケーブル)において配線を接続するためのコネクタ(例えばZIFコネクタなど)に嵌合して検出回路3に導通させるための端子である。第1回路接続部51は、帯状部4Bの突出端の近傍において一定間隔をあけて整列配置されている。
また、本実施形態では、第1回路接続部51は、後述する第2回路接続部54が間に位置するように帯状部4Bの二箇所に分かれて配置されている。図示していないが、第1回路接続部51と第2回路接続部54との間には、導電材料によって形成されたシールド材が配置されており、互いに隣接する第1回路接続部51と第2回路接続部54との間で電気信号が伝わるのを抑制できるようになっている。
【0019】
下部対向電極53は、下部入力電極56が延びる方向に沿って間隔をあけて複数設けられている。本実施形態では、複数の下部対向電極53は、複数の下部入力電極56によって構成された上述の略矩形形状の領域を挟むように両側に設けられている。各下部対向電極53において下部入力電極56に向けられた側の形状は略三角形状であり、下部入力電極56に向けられた側と反対側の形状は略長方形状になっている。
【0020】
図3(A)に示すように、第1配線部52は、一端が下部対向電極53に接続されているとともに複数の下部入力電極56によって構成される上述の矩形形状の領域の外周に沿って帯状部4Bへ向けて延ばして設けられている。さらに、第1配線部52は、帯状部4Bの面上において互いに平行に整列配置されている。本実施形態は、帯状部4Bにおける第1配線部52は、帯状部4Bにおける第2配線部55と平行に配置されている。
【0021】
第2回路接続部54は、第1配線部52のうち、下部基材層4における帯状部4Bの突出端の近傍に位置し、下部基材層4の上面において第1回路接続部51の間に位置するように配置されている。また、第2回路接続部54は、第1回路接続部51のそれぞれと同じ間隔に並べて配置され、第1回路接続部51と同様にFPCあるいはFFC用のコネクタに接続できるようになっている。本実施形態では、第1回路接続部54と第2回路接続部54とは、複数の接点端子を有する1つのZIFコネクタに取り付けることができる。
【0022】
図2(B)に示すように、誘電体層6は、シート状に形成された誘電材料からなる層であり、下部導体層5に接着されている。誘電体層6の比誘電率は、2以上6以下となるように設定されている。本実施形態の誘電体層6は、樹脂からなるシート状の誘電基材の両面に粘着材が設けられた両面粘着テープであり、本実施形態では、誘電基材と粘着材とを含んだ誘電体層6の厚さは25μmである。
【0023】
図3(B)に示すように、上部導体層7は、導電材料によって形成された層であり、誘電体層6の上面に接着されている。上部導体層7は、上部対向電極71(第二対向電極)と、上部入力電極(第一入力電極)72とを備える。また、上部導体層7の材質は、たとえば銅、金、銀、アルミニウムなどの金属材料を採用することができる。本実施形態では、上部導体層7は銅箔からなる。
【0024】
複数の上部対向電極71は、下部対向電極53に対して誘電体層6を挟んで対向配置されている。上部対向電極71をその厚さ方向から見たときの上部対向電極71のそれぞれの形状は、下部対向電極53をその厚さ方向から見たときの下部対向電極53の形状と同じである。また、上部対向電極71の面積は、下部対向電極53の面積と等しい(図2(A)および図3(C)においては重なっている上部対向電極71と下部対向電極53とをそれぞれ見やすくするために外形線をわずかにずらして図示している)。
【0025】
図3(B)および図3(C)に示すように、複数の上部入力電極72のそれぞれは、複数の上部対向電極71にそれぞれ一端が接続されて複数設けられている。各上部入力電極72には、厚さ方向から見たときの輪郭形状が正方形状に形成された電極要素72Aが、その対角の頂点が互いに接続されて一続きに並べて設けられている。本実施形態では、複数の上部入力電極72は互いに誘電体層6の上面に沿って互いに同方向に向けられている。複数の上部入力電極72のそれぞれの長手方向における中心線は、互いに平行とされている。
【0026】
各上部入力電極72が延びる方向は、下部入力電極56が延びる方向に対して垂直な方向で、且つ下部基材層4の上面と平行な方向である。さらに、上部入力電極72の各電極要素72Aは、上部入力電極72と下部入力電極56とが誘電体層6を挟んで積層された状態で厚さ方向からみたときに、複数の下部入力電極56によって構成される上述の略正方形状の隙間の内側領域に配置されている。上部入力電極72と下部入力電極56とはこのように電極要素56Aと電極要素72Aとが正方形状の電極要素56Aと電極要素72Aにおける各辺において隣り合うように配列されており、厚さ方向から見たときの電極要素56Aと電極要素72Aとの間にはわずかに隙間が空けられている。
【0027】
また、上部入力電極72と下部入力電極56とは、上部入力電極72と下部入力電極56との間で誘導無線信号の送受信が行われるようになっている。
【0028】
上部基材層8は、樹脂材料によってシート状に形成されており、絶縁性を有する。上部基材層8は、上部導体層7の上面に接着されている。上部基材層8の表面は入力体を接触させることができる入力部8Aになっている。
【0029】
本実施形態では、下部導体層5に設けられた下部対向電極53と、誘電体層6を挟んで下部対向電極53と対向して配置された上部対向電極71とによってキャパシタC1が複数形成されている。
【0030】
図1に示すように、検出回路3は、信号出力部31と、信号入力部32と、判定部33と、座標出力部34と、を有する。
信号出力部31は、センサシート2における第2回路接続部54に電気的に接続されており、所定の駆動信号を生成し、第2回路接続部54、第2配線部55を通じて複数の下部入力電極56のそれぞれへ駆動信号を出力するものである。信号出力部31から出力される駆動信号は、下部入力電極56から誘導無線信号として下部入力電極56の外部へ送信されるようになっている。本実施形態では、下部入力電極56から送信される誘導無線信号は、上部入力電極72において受信可能な程度の強度とされている。
また、信号出力部31には、下部入力電極56の1つ当たりに対して駆動信号を送信する時間幅が予め記憶されている。信号出力部31は、記憶された時間幅だけ1つの下部入力電極56へ駆動信号を出力したらその出力を停止して他の1つの下部入力電極56へ駆動信号を出力する。これにより複数の下部入力電極56へ駆動信号が順次出力される。本実施形態では、信号出力部31はたとえば図3(A)に符号Xで示すように複数の下部入力電極56−1から56−8までこの順に駆動信号を出力し、下部入力電極56−8へ駆動信号を出力した後再び下部入力電極56−1へ駆動信号を出力するようになっている。
信号出力部31が出力する駆動信号の種類は、特に限定されるものではないが、たとえば、サイン波や矩形波による高周波を駆動信号とすることができる。
【0031】
信号入力部32は、センサシート2における第1回路接続部51に電気的に接続されており、下部入力電極56から送信されて上部入力電極72において受信される誘導無線信号が検出信号として入力されるものである。詳細は後述するが、上部入力電極72において受信される誘導無線信号は、上部対向電極71、下部対向電極53、第1配線部52、第1回路接続部51をこの順に通って信号入力部32へ入力されるようになっている。また、信号入力部32には、複数の上部入力電極72のすべてにおける検出信号が入力されるようになっている。信号入力部32は、入力された検出信号を判定部33へ出力するようになっている。
【0032】
判定部33は、信号入力部32に対して電気的に接続されており、信号入力部32に入力された検出信号を受け付け、検出信号を測定するようになっている。また、判定部33には、下部入力電極56および上部入力電極72に対して入力体が近接されていない状態における検出信号の測定値が基準値として予め記憶されている。さらに、判定部33には、記憶された基準値に対する検出信号の測定値の変化量に基づいて入力があったものと判定するための閾値が予め記憶されている。
判定部33は、入力された検出信号の測定値を基準値と比較し、基準値に対して閾値以上の変化がある検出信号を受け付けた際に、このとき駆動信号が出力された下部入力電極56と検出信号を受信した上部入力電極72とからなる一対の電極対を特定し、この電極対が交差する位置に入力があったものと判定するようになっている。
判定部33は、入力があったものと判定された検出信号がある場合には、上述のように特定された電極対におけるそれぞれの中心線の交点の座標を座標出力部34へ出力するようになっている。
【0033】
座標出力部34は、判定部33に対して電気的に接続されており、判定部33から出力された電極対の交点の座標を外部の電子回路などへ出力するものである。
【0034】
以上に説明した構成の入力装置1の使用時の動作について図4および図5を参照して説明する。図4および図5は、入力装置1の使用時の動作を説明するためのフローチャートである。
本実施形態では、入力装置1の使用者が入力装置1の入力部8A(図2参照)に指で触れることで入力装置1に対する入力操作を行う例を示す。すなわち、本実施形態において入力装置1に対して入力操作を行う入力体は人の指である。なお、入力体としては、導電性を有するものであれば人の指に限られるものではない。たとえば、静電容量タッチスクリーン用のスタイラスを用いて入力装置1に入力を行うこともできる。
【0035】
入力装置1の動作時には、信号出力部31は、複数の下部入力電極56−1ないし56−8に対して昇順に番号n(nは1以上の整数)を割り当てる。この番号nは、駆動信号を出力する対象となる下部入力電極56を特定するための番号である。本実施形態では、番号nの最大値Nは8である。
【0036】
続いて、信号出力部31は、nに1を代入し(図4に示すステップS11)、第nの下部入力電極(この場合は、第1の下部入力電極である下部入力電極56−1(図3(A)参照))へ駆動信号を一定の時間幅の間だけ出力する(図4に示すステップS12)。一定の時間幅が経過した後、信号出力部31は駆動信号の送信を終了する。
【0037】
続いて、番号nが最大値N未満であるか否かを判断し(図4に示すステップS13)、番号nが最大値N未満であればnに1を加えてステップS12へ進む。これにより、信号出力部31は、第1の下部入力電極56−1から第8の下部入力電極56−8へ順次駆動信号を出力する。
第8の下部入力電極56−8に対する信号出力部31による駆動信号の出力が終了した後では、番号n=最大値Nであるので、ステップS13からステップS11へ進み、信号出力部31は、n=1として再び第1の下部入力電極56−1から順次駆動信号を出力する。
【0038】
一方、複数の上部入力電極72では、下部入力電極56から送信された駆動信号による誘導無線信号を受信している(図5に示すステップS21)。このとき、上部入力電極72において受信された誘導無線信号によって上部入力電極72と上部対向電極71とには高周波信号が流れている。
【0039】
上部対向電極71に高周波信号が伝わると、誘電体層6を挟んで上部対向電極71と対向配置された下部対向電極53へキャパシタC1(図2(B)参照)を介して高周波信号が伝わる。下部対向電極53に伝わった高周波信号は、下部対向電極53から第2配線部52および第1回路接続部51を通じて電気的に接続された信号入力部32に検出信号として入力される。
入力体による入力操作がないときには、信号入力部32に入力される検出信号は略一定であり、ノイズ等が混入しても閾値を超える変化は生じない。
【0040】
入力部8Aへ入力体が接近すると、入力体が近接した位置の近傍にある下部入力電極56に対して駆動信号が出力されたときに、下部入力電極56および上部入力電極72と入力体との間の静電容量が、入力体が近接されていないときの静電容量から変化する。すると、上部入力電極72において受信される誘導無線信号が変化することで、信号入力部32に入力される検出信号も変化する。
信号入力部32へ入力される検出信号の変化は、判定部33において検出される(図5に示すステップS22)。ここで、信号入力部32へ入力される検出信号が閾値を超えているか否かが判定され(図5に示すステップS23)、閾値を超えて変化している場合には、入力体による入力があったものと判定され、そのときの下部入力電極56と上部入力電極72との交点の座標(本実施形態では下部入力電極56の中心線と上部入力電極72の中心線との交点の座標)が座標出力部34へ出力される(図5に示すステップS24)。その後、ステップS21へ進み、再び、下部入力電極56からの誘導無線信号の入力を受け付ける。
なお、検出信号の変化が閾値未満である場合には、座標の出力は行われず、ステップS23からステップS21へ進む。
上記ステップS21ないしS24の一連の動作は、複数の上部入力電極72のすべてに対して行われる。
【0041】
ここで、入力装置1における入力部8Aの複数個所へ入力体が近接した場合における動作について説明する。
入力装置1の入力部8Aに対して例えば図3(A)に示す点P1、点P2の2箇所に入力体が近接した場合には、まず、2点のうちの一方(例えば点P1)に最も近い位置にある下部入力電極56−3に駆動信号が出力されたときに、下部入力電極56−3が延びる方向と、下部入力電極56−3に直交し、点P1に最も近い位置にある上部入力電極72との間で、入力体が近接していない場合に対して検出信号が変化する。
【0042】
これにより、点P1に対して入力があったと判定部33は判定する。その後、下部入力電極56−3への駆動信号の出力は終了し、下部入力電極56−4、56−5、56−6へこの順に信号出力部31が駆動信号を出力する。点P2に最も近い下部入力電極56−6に対して信号出力部31が駆動信号を出力したときに、上述と同様に点P2に対して入力があったと判定部33が判定する。
【0043】
このように、本実施形態の入力装置1では、入力部8Aにおける異なる2点に対して同時に入力操作が行われたときにも、その2点の座標を判定部33が順次検出してそれらの座標をそれぞれ座標出力部34が外部の電子回路へ出力することができる。各下部入力電極56への駆動信号の出力の時間幅を短く設定することによって、入力装置1に対して入力操作を行う操作者に対して、異なる2点に対して操作者が同時に複数の入力体を近接させたときにそれらの入力が同時に入力装置1に入力されたと感じさせることができる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態の入力装置1によれば、上部対向電極71と下部対向電極53との間にキャパシタC1が形成され、入力部8Aに入力体が近接したときに、上部入力電極72において受信された誘導無線信号の変化に基づく検出信号の変化が、キャパシタC1を介して検出回路3の信号入力部32に入力される。このため、下部導体層5と上部導体層7とを接続するためのスルーホールを形成する必要がなく、入力装置1の製造工程を簡略化して入力装置1を容易に製造することができる。
【0045】
また、本実施形態の入力装置1では、検出回路3において、下部入力電極56−1から56−8へ順次駆動信号を出力し、複数の上部入力電極72において駆動信号をそれぞれ受信しているので、入力部8Aへ複数の入力体が同時に近接した場合にも、複数の入力体の座標をそれぞれ検出することができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態および実施例について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態および実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
たとえば、上述の実施形態で説明した上部基材層、下部基材層、および誘電体層の材料としては、上述のポリエチレンテレフタレート以外にも、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリル、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアリレート、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマーなどからなるのも、またはこれらの片面あるいは両面に粘着材を設けたものなどを採用することができる。
【0047】
また、上述の実施形態において、上部導体層および下部導体層の材料として透明電極膜を採用することができる。透明電極膜の材料としては、たとえば、光透過性を有する導電性ポリマーである信越ポリマー製SEPLEGYDA(登録商標)や、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)からなる透明導電膜を採用することもできる。この場合、電極層が光透過性を有するので、入力装置の厚さ方向の一方側にある映像や模様などを入力装置の他方側から視認できる。
また、下部導体層および上部導体層の材質としては、金属材料以外であってもよく、たとえば下部導体層および上部導体層としてカーボン電極などを採用することもできる。
【0048】
また、上述の実施形態では、下部入力電極56に対して駆動信号を出力し、下部入力電極56から送信される誘導無線信号を上部入力電極72によって受信する構成を説明したが、逆に、上部入力電極72に対して駆動信号を出力し、上部入力電極72から送信される誘導無線信号を下部入力電極56によって受信する構成を採用することもできる。
【0049】
また、上述の実施形態では、下部対向電極および上部対向電極の形状は、厚さ方向から見たときの輪郭形状が三角形状である例を示したが、下部対向電極および上部対向電極の形状はこれに限られるものではない。たとえば、下部対向電極および上部対向電極の形状は、多角形状、円形状、環状などの形状とすることができる。その他、下部対向電極および上部対向電極の形状は、下部対向電極と上部対向電極との対向面積を増大させるために適宜変形した形状とすることができる。
また、下部対向電極と上部対向電極とは少なくとも一部が対向して設けられていればよい。
【0050】
また、上述の実施形態では、基板は平板状である例を示したが、基板の形状は平板状に限られるものではない。たとえば、基板において、入力部が基板の厚さ方向に向かって凹凸を有する3次元形状に形成されていてもよい。この場合、上部入力電極および下部入力電極(以下、まとめて「入力電極」と称する。)は、入力部の形状に沿って3次元形状に形成されていることが好ましい。この場合、入力電極と入力部との間の距離が一定であるので、入力電極と入力体との間の静電容量の変化量を安定させることができる。
【0051】
また、上述の実施形態では、誘電体層として両面粘着テープを採用したが、同実施形態における誘電体は両面粘着テープに限られるものではない。例えば、基材のない粘着テープや、第1の導体層と第2の導体層とを貼り合わせる接着剤が硬化したもの自体が誘電体として機能するものであってもよい。
また、上部導体層が、誘電体層からなる基板の厚さ方向の一方の面に形成され、下部導体層が基板の厚さ方向の他方の面に形成されるものとしてもよい。
また、本実施形態では入力部8Aへ1つあるいは2つの入力体が近接する場合の例を示したが、例えば入力体が3つ以上であっても入力装置1はそれらの入力体による同時入力をそれぞれ検出してそれらの座標を出力することができる。同時入力が想定される数としては、片手の5指による5点入力、5指に手掌を加えた6点入力、両手の10指による10点入力などが考えられる。
【符号の説明】
【0052】
1 入力装置
2 センサシート
3 検出回路
4 下部基材層
4A 本体
4B 帯状部
5 下部導体層
6 誘電体層
7 上部導体層
8 上部基材層
8A 入力部
31 信号出力部
32 信号入力部
33 判定部
34 座標出力部
51 第1回路接続部
52 第1配線部
53 下部対向電極(第一対向電極)
54 第2回路接続部
55 第2配線部
56 下部入力電極(第二入力電極)
71 上部対向電極(第二対向電極)
72 上部入力電極(第一入力電極)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層からなる層状の基板と、前記基板に設けられ前記誘電体層を間に挟んで前記誘電体層の両側に配置された電極とを有し、前記電極における静電容量の変化を検出する検出回路に前記電極が電気的に接続される入力装置用のセンサシートであって、
前記電極は、
前記基板において前記誘電体層の厚さ方向の一方側に配置され、前記検出回路に電気的に接続可能な第一対向電極と、
前記誘電体層を挟んで前記第一対向電極と対向して配置された第二対向電極と、
前記第二対向電極に電気的に接続され、前記基板の面方向のうちの一方向へ互いに平行に延びる複数の第一入力電極と、
前記基板における前記一方側において前記第一入力電極とは絶縁されて配置されているとともに前記検出回路に電気的に接続可能であり、前記基板の面方向のうち前記一方向に対して交差する方向へ互いに平行に延びる複数の第二入力電極と、
を備えることを特徴とするセンサシート。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサシートと、
前記電極に電気的に接続されて入力体と前記電極と間における静電容量の変化を検出する検出回路とを備え、
前記検出回路は、
前記第二入力電極によって受信可能な駆動信号を前記複数の第一入力電極のそれぞれに対して一定の時間幅で順次出力する信号出力部と、
前記第二入力電極によって受信された前記駆動信号が検出信号として入力され、前記検出信号の変化に基づいて前記電極への前記入力体の近接を判定する判定部と、
を有することを特徴とする入力装置。
【請求項3】
請求項1に記載のセンサシートと、
前記電極に電気的に接続されて入力体と前記電極と間における静電容量の変化を検出する検出回路とを備え、
前記検出回路は、
前記第一入力電極によって受信可能な駆動信号を前記複数の第二入力電極のそれぞれに対して一定の時間幅で順次出力する信号出力部と、
前記第一入力電極によって受信された前記駆動信号が検出信号として入力され、前記検出信号の変化に基づいて前記電極への前記入力体の近接を判定する判定部と、
を有することを特徴とする入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−3402(P2012−3402A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136224(P2010−136224)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】