説明

センサチップ、バイオセンサシステム、生体試料の温度測定方法、血液試料の温度測定方法、血液試料中の分析物の濃度測定方法

【課題】血液試料の温度を測定し使用環境の温度に起因する測定誤差の発生を抑制できるバイオセンサシステム、および当該センサシステムに適したセンサチップを提供する。
【解決手段】センサチップ200は、測定部41及び測定部42を有する。測定部41は、電極11の部分31および電極12の部分32で構成される電極系(温度電極)と、部分31および部分32を収容するキャピラリ40の一部と、を有する。測定部42は、センサ電極13の部分33および電極14の部分34で構成される電極系(分析電極)と、反応試薬層20ならびに部分33および部分34を収容するキャピラリ40の一部と、を有する。温度電極に流れる電流の大きさに基づいて血液試料の温度に関連するデータaが取得され、分析電極間に流れる電流の大きさ量に基づいて血液試料中の分析物の濃度に関連するデータbが取得される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサチップ、バイオセンサシステム、生体試料の温度測定方法、血液試料の温度測定方法、血液試料中の分析物の濃度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液試料中の分析物濃度、例えば、血中グルコース濃度(血糖値)を測定するために、演算部を有する測定器と、測定器に着脱自在のセンサチップとを備えた携帯型バイオセンサシステムが用いられている。分析物の濃度は、分析物を基質とする酸化還元酵素を介した酵素サイクリング反応によって生じる、酸化体または還元体の量に基づく、電気化学式手法または光学式手法によって算出されている。酵素サイクリング反応の速度は、反応が進行している温度(反応温度)に依存する。このため、分析物の濃度は、反応温度に基づいて補正することが望ましい。
【0003】
反応温度は、例えば、測定器に配置された温度センサによって測定される(特許文献1)。しかし、特許文献1のバイオセンサシステムでは、測定器の内部温度が測定されるので、測定される反応温度は、血液試料の温度を正確に反映しない。このため、分析物濃度の測定に、誤差が生じる場合がある。
特許文献2〜4は、反応温度の測定精度の向上を目的とするバイオセンサシステムを開示する。特許文献2および3のバイオセンサシステムは、センサチップの血液試料保持部の近傍に熱伝導部材を有しており、この熱伝導部材を介して伝達される血液試料の温度を測定器に配置された温度センサによって検出する。特許文献2および3のバイオセンサシステムでは、熱伝導部材と血液試料保持部との間に樹脂板が配置されているため、熱伝導部材が血液試料に接触することはない。特許文献4のバイオセンサシステムでは、センサチップを取り付けるための測定器の装着部に温度センサおよび熱伝導部材が配置されており、血液試料の温度が熱伝導部材を介して温度センサに伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−156469号公報
【特許文献2】特開2001−235444号公報
【特許文献3】特開2003−42995号公報
【特許文献4】国際公開第2003/062812号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バイオセンサシステムを携帯した使用者が、寒暖差の大きな場所を移動(例えば、冬場または夏場に屋外から屋内へ移動)した場合、測定器は、環境温度の急激な変化に追随できず、しばらくの間、移動先の環境よりも高温または低温になる。例えば、40℃または10℃の環境から25℃の環境に測定器を移動させると、測定器の温度が25℃に収束するまでに約30分間もかかる(特許文献1)。
【0006】
測定器の温度センサによる反応温度の測定において、測定器の温度による影響を完全に排除することは容易でない。よって、センサを使用する環境の温度が急激に変化すると、特許文献2〜4に記載のバイオセンサシステムにおいても、分析物濃度の測定に誤差が生じやすくなる。
また、特許文献2〜4に記載のバイオセンサシステムでは、血液試料の温度が樹脂板および熱伝導部材を介して温度センサに熱伝達されるので、測定される反応温度は、血液試料の温度を正確に反映しない。
【0007】
本発明は、血液試料の温度を測定し、使用環境の温度に起因する測定誤差の発生を抑制できるバイオセンサシステム、および当該センサシステムに適したセンサチップの提供を目的とする。また、本発明は、血液試料中の分析物濃度の測定精度を向上できる測定方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1観点に係るセンサチップは、生体試料の温度を測定するセンサチップであって、生体試料の温度を測定するために少なくとも作用極と対極とを有しており、直流電圧が印加される温度電極と、生体試料を温度電極まで導入するキャピラリと、を備える。温度電極の作用極及び/または対極は、キャピラリに導入された生体試料と接触するように配置される。直流電圧は、直流電圧の印加時にヘマトクリットが温度の測定結果に与える影響が小さくなるように設定されている。
【0009】
このセンサチップでは、温度電極が、生体試料の温度を測定するにあたって、ヘマトクリットの影響が少ない所定の直流電圧が、温度電極に印加される。
これにより、生体試料におけるヘマトクリット値に依存しない生体試料の温度測定が可能となる。この結果、生体試料の温度測定の精度を高めることが可能となると共に、生体試料の温度を利用した各種補正についての精度も高めることが可能となる。
【0010】
本発明の第2観点に係るセンサチップは、第1観点に係るセンサチップであって、キャピラリにおける生体試料の取込量は5μL以下であり、温度電極における直流電圧の印加時間は15秒以下である。
本発明の第3観点に係るセンサチップは、第1または第2の観点に係るセンサチップであって、所定の直流電圧は、生体試料の溶媒が電気分解される範囲である。
【0011】
本発明の第4観点に係るセンサチップは、第1から第3の観点のいずれか1つに係るセンサチップであって、使い捨てである。
本発明の第5観点に係るセンサチップは、血液試料中の分析物の濃度を測定するセンサチップであって、血液試料に接触するように配置され、血液試料の温度を測定するために少なくとも作用極と対極とを有する温度電極と、血液試料の分析物の濃度に関する項目の測定に用いられる濃度測定部と、を備える。
【0012】
これにより、従来の樹脂板や熱伝導部材等を介して伝達される熱を測定する温度電極を備えたセンサチップとは異なり、血液試料の温度を直接測定することが可能となる。この結果、使用環境の温度に起因する測定誤差の発生を抑制し、血液試料中の分析物濃度の測定精度を向上することが可能となる。
本発明の第6観点に係るセンサチップは、第5の観点に係るセンサチップであって、濃度測定部は、少なくとも作用極と対極とを備える分析電極である。
【0013】
本発明の第7観点に係るセンサチップは、第6の観点に係るセンサチップであって、温度電極と分析電極とは、別に設けられている。
これにより、血液試料中の分析物の濃度を正確に測定することが可能となる。
本発明の第8観点に係るセンサチップは、第6または第7の観点に係るセンサチップであって、試料導入口と、試料導入口から温度電極及び分析電極まで血液試料を導入するキャピラリと、をさらに備える。温度電極は、分析電極よりも試料導入口に近い位置に配置されている。
【0014】
本発明の第9観点に係るセンサチップは、第5から第8の観点のいずれか1つに係るセンサチップであって、温度電極は、酸化還元酵素および電子メディエータの少なくとも1つと接しないように配置されている。
これにより、血液試料の温度を正確に測定することが可能となる。
本発明の第10観点に係るセンサチップは、第5から第9の観点のいずれか1つに係るセンサチップであって、濃度測定部は、酸化還元反応を起こす反応試薬をさらに備え、温度電極は、酸化還元反応を起こす反応試薬と接しないように配置されている。
【0015】
これにより、温度電極に反応試薬が接触することを回避することができ、血液試料の温度を正確に測定することが可能となる。
本発明の第11観点に係るセンサチップは、第5から第9の観点のいずれか1つに係るセンサチップであって、如何なる試薬とも接しないように配置されている。
これにより、温度電極に如何なる試薬も接触することを回避することができ、血液試料の温度を正確に測定することが可能となる。
【0016】
本発明の第12観点に係るセンサチップは、第6観点に係るセンサチップであって、温度電極の作用極が、少なくとも分析電極の作用極または対極のいずれかと共通である。
本発明の第13観点に係るセンサチップは、第6観点に係るセンサチップであって、温度電極の対極が、少なくとも分析電極の作用極または対極のいずれかと共通である。
本発明の第14観点に係るセンサチップは、第6から第8観点のいずれか1つに係るセンサチップであって、濃度測定部は、作用極及び対極以外の1以上の電極を有しており、作用極及び対極以外の濃度測定部の電極のうちの少なくとも1つが、温度電極の作用極及び対極のうちの少なくとも1つと共通である。
【0017】
第12から第14観点の通り、濃度測定部に含まれる電極は、温度電極の作用極及び対極のうちの少なくとも1つを兼ねてもよい。
第12及び第13観点のセンサチップは、分析電極として複数の作用極及び/又は複数の対極を備えていてもよい。この複数の作用極及び/又は対極のうちの少なくとも1つが、温度電極の作用極及び/又は対極を兼ねることができる。
【0018】
第14観点における作用極及び対極以外の電極の例として、
‐ヘマトクリット測定用電極、
‐還元物質の濃度又は量の測定用電極、
‐血液の導入を検知する検知極、
‐グルコース濃度、ヘマトクリット、又は還元物質の濃度若しくは量の測定用の電極以外に設けられた他の測定用の電極が挙げられる。
【0019】
本発明の第15観点に係るセンサチップは、第6観点に係るセンサチップであって、温度電極における作用極の面積が、温度電極における対極の面積と同じか、それより小さい。
本発明の第16観点に係るセンサチップは、第5から第15観点のいずれか1つに係るセンサチップであって、分析物の濃度に関する項目には、少なくともヘマトクリットが含まれている。
【0020】
本発明の第17観点に係るセンサチップは、第5から第16の観点のいずれか1つに係るセンサチップであって、分析物の濃度に関する項目には、少なくとも還元物質の量または濃度が含まれている。
本発明の第18観点に係る生体試料の温度測定方法は、作用極と対極とから形成される温度電極と、キャピラリと、を備えているセンサチップにおいて、生体試料の温度を測定する温度測定方法であって、キャピラリにより、生体試料を温度電極まで導入する導入ステップと、温度電極に直流電圧を印加する印加ステップと、印加ステップにおいて印加される直流電圧を、第1電圧に調整する調整ステップと、を備える。第1電圧は、第1電圧の温度電極への印加時にヘマトクリットが温度の測定結果に与える影響が小さくなるように設定されている。
【0021】
この方法によれば、生体試料におけるヘマトクリット値に依存しない生体試料の温度測定が可能となる。この結果、生体試料の温度測定の精度を高めることが可能となると共に、生体試料の温度を利用した各種補正についての精度も高めることが可能となる。
本発明の第19観点に係る温度測定方法は、第18観点に係る温度測定方法であって、ヘマトクリットが温度の測定結果に与える影響が小さくなるような直流電圧の値を予め測定および記憶しておき、調整ステップは、記憶された直流電圧に基づいて第1電圧に調整するステップである。
【0022】
本発明の第20観点に係る生体試料の温度測定方法は、第18または第19観点に係る生体試料の温度測定方法であって、取込ステップにおける生体試料の取込量は5μL以下であり、印加ステップにおける直流電圧の印加時間は15秒以下である。
本発明の第21観点に係る血液試料の温度測定方法は、作用極と対極とから形成されている温度電極を備えたセンサチップで使用される血液試料の温度を測定する方法であって、血液試料に接触させた温度電極に電圧を印加するステップと、電圧を印加することによって血液試料中に流れる電流の大きさに基づいて、血液試料の温度に関連するデータaを取得するステップと、データaに基づいて、血液試料の温度tを算出するステップと、を備えている。
【0023】
ここでは、血液試料に接触させた温度電極に電圧を印加することによって取得できる血液試料の温度に関連するデータaに基づいて、血液試料の温度tを算出している。
これにより、正確に取得された血液試料の温度に関連するデータaに基づいて、血液試料の温度tを算出することができるので、使用環境の温度に起因する測定誤差の発生を抑制することが可能となる。
【0024】
本発明の第22観点に係る血液試料中の分析物の濃度測定方法は、血液試料に接触させた一対の電極に電圧を印加することによって血液試料中に流れる電流の大きさに基づいて、血液試料の温度に関連するデータaを取得するステップと、血液試料中の分析物を基質とする酸化還元酵素が関与する反応によって血液試料中に流れる電流の大きさに基づいて、分析物の濃度に関連するデータbを取得するステップと、データaおよびデータbに基づいて、血液試料中の分析物濃度を決定する濃度測定ステップとを備えている。
【0025】
ここでは、樹脂板や熱伝導部材を介することなく、血液試料の温度を直接測定することによって取得されたデータaを取得し、血液試料の温度に関連するデータaおよび分析物の濃度に関連するデータbに基づいて、血液試料中の分析物濃度を決定している。
これにより、血液試料中の分析物濃度の測定精度を向上することが可能となる。
本発明の第23観点に係る血液試料中の分析物の濃度測定方法は、第22観点に係る血液試料中の分析物の濃度測定方法であって、濃度測定ステップは、データaに基づいてデータbを補正するステップを含んでいる。
【0026】
これにより、血液試料中の分析物濃度の測定精度を向上することが可能となる。
本発明の第24観点に係る血液試料中の分析物の濃度測定方法は、第22観点に係る血液試料中の分析物の濃度測定方法であって、濃度測定ステップは、データbに基づいて、血液試料の分析物の濃度xを算出するステップと、データaに基づいて、濃度xを補正するステップとを含んでいる。
【0027】
これにより、血液試料中の分析物濃度の測定精度を向上することが可能となる。
本発明の第25観点に係る血液試料中の分析物の濃度測定方法は、第22観点に係る血液試料中の分析物の濃度測定方法であって、濃度測定ステップは、データaに基づいて、血液試料の温度tを算出するステップと、温度tに基づいて、データbを補正するステップと、を含んでいる。
【0028】
これにより、血液試料中の分析物濃度の測定精度を向上することが可能となる。
本発明の第26観点に係る血液試料中の分析物の濃度測定方法は、第22観点に係る血液試料中の分析物の濃度測定方法であって、濃度測定ステップは、データaに基づいて、血液試料の温度tを算出するステップと、データbに基づいて、血液試料の分析物の濃度xを算出するステップと、温度tに基づいて、濃度xを補正するステップとを含んでいる。
【0029】
これにより、血液試料中の分析物濃度の測定精度を向上することが可能となる。
本発明の第27観点に係る血液試料中の分析物の濃度測定方法は、第22から第26の観点のいずれか1つに係る血液試料中の分析物の濃度測定方法であって、データaを取得するステップは、データbを取得するステップよりも先に行う。
これにより、データb取得時の温度をより正確に反映させることが可能となる。
【0030】
本発明の第28観点に係る血液試料中の分析物の濃度測定方法は、第22観点に係る血液試料中の分析物の濃度測定方法であって、濃度測定ステップは、データb取得後に、血液試料に接触させた一対の電極に所定の電圧を印加することによって血液試料中に流れる電流の大きさに基づいて、血液試料の温度に関連するデータcを取得するステップと、データaとデータcとを演算することによって血液試料の温度に関連するデータdを求めるステップと、データdに基づいて、データbを補正するステップとを含んでいる。
【0031】
これにより、データb取得時の温度をより正確に反映させることが可能となり、血液試料中の分析物濃度の測定精度を向上することが可能となる。
本発明の第29観点に係る血液試料中の分析物の濃度測定方法は、第22観点に係る血液試料中の分析物の濃度測定方法であって、濃度測定ステップは、データaに基づいて、血液試料の温度tを算出するステップと、データbに基づいて、血液試料の分析物の濃度xを算出するステップと、血液試料の周囲の環境温度t1を測定するステップと、温度tと環境温度t1との差分を温度閾値Zと比較するステップと、|t−t1|≧Zを満たす場合、温度tに基づいて濃度xを補正し、|t−t1|<Zを満たす場合、温度t1に基づいて濃度xを補正するステップとを含んでいる。
【0032】
ここでは、データaに基づいて血液試料の温度t、データbに基づいて血液試料の分析物の濃度xを算出し、さらに、血液試料の周囲の環境温度t1を測定している。そして、温度tと環境温度t1との差分を温度閾値Zと比較して、以下のとおり補正している。
|t−t1|≧Zを満たす場合、温度tに基づいて濃度xを補正
|t−t1|<Zを満たす場合、温度t1に基づいて濃度xを補正
これにより、外部温度環境に応じた適正な温度を用いて濃度xを補正することができるので、血液試料中の分析物濃度の測定精度を向上することが可能となる。
【0033】
本発明の第30観点に係る血液試料中の分析物の濃度測定方法は、第22から第29の観点のいずれか1つに係る血液試料中の分析物の濃度測定方法であって、血液試料の温度に関連するデータaには温度が含まれており、分析物の濃度に関連するデータbにはグルコース濃度が含まれている。
ここでは、データaとして取得するデータの項目として温度が含まれ、データbとして取得するデータの項目としてグルコース濃度が含まれている。
【0034】
本発明の第31観点に係る血液試料中の分析物の濃度測定方法は、第30観点に係る血液試料中の分析物の濃度測定方法であって、分析物の濃度に関連するデータbにはヘマトクリットが含まれている。
ここでは、データbとして取得するデータの項目としてヘマトクリットが含まれている。
【0035】
本発明の第32観点に係る血液試料中の分析物の濃度測定方法は、第30または第31観点に係る血液試料中の分析物の濃度測定方法であって、分析物の濃度に関連するデータbには還元物質の量または濃度が含まれている。
ここでは、データbとして取得するデータの項目として還元物質量または濃度が含まれている。
【0036】
本発明の第33観点に係る血液試料中の分析物の濃度測定方法は、第30から第32の観点のいずれか1つに係る血液試料中の分析物の濃度測定方法であって、データaおよびデータbに含まれるデータのうち、少なくとも2つの項目を同時に測定する。
ここでは、データaおよびデータbに含まれるデータを測定する際、同時に2つ以上の項目を測定する。例えば、グルコース濃度と還元物質の量または濃度と同時を測定する。
【0037】
本発明の第34観点に係る血液試料中の分析物の濃度測定方法は、第30から第32の観点のいずれか1つに係る血液試料中の分析物の濃度測定方法であって、データaおよびデータbに含まれるデータの測定は、それぞれ独立して行われる。
ここでは、データaおよびデータbに含まれるデータを測定する際、同時に2つ以上の項目を測定するのではなく1つ1つ順番に行われる。なお、各項目を測定する順番は任意でよい。
【0038】
本発明の第35観点に係る血液試料中の分析物の濃度測定方法は、第30から第32の観点のいずれか1つに係る血液試料中の分析物の濃度測定方法であって、データaおよびデータbに含まれるデータの測定は、温度、グルコース濃度および還元物質の量もしくは濃度、ヘマトクリットの順番で行われる。
ここでは、データを測定する順番を特定している。これにより、速度、正確さ、電極への負担面において有利な効果を得ることが可能となる。
【0039】
本発明の第36観点に係る血液試料中の分析物の濃度測定方法は、第30から第35の観点のいずれか1つに係る血液試料中の分析物の濃度測定方法であって、データaおよびデータbに含まれるデータの測定は、独立した電極を介して行われる。
ここでは、データaおよびデータbに含まれるデータを測定する際、それぞれ独立した電極を介して行う。
【0040】
本発明の第37観点に係るバイオセンサシステムは、第1から第17の観点のいずれか1つに係るセンサチップと、センサチップの温度電極に電圧を印加する制御回路を含む測定器とを有する、血液試料中の分析物の濃度を測定するバイオセンサシステムであって、制御回路に従って温度電極に電圧を印加する電圧印加部と、血液試料に接触させた温度電極に流れる電流の大きさに基づいて、血液試料の温度に関連するデータaを取得する温度測定部と、血液試料中の分析物を基質とする酸化還元酵素が関与する反応によって血液試料中に流れる電流の大きさに基づいて、分析物の濃度に関連するデータbを取得する分析物測定部と、データaおよびデータbに基づいて、血液試料中の分析物濃度を決定する濃度決定部と、を備えている。
【0041】
ここでは、樹脂板や熱伝導部材を介することなく、血液試料の温度を直接測定することによって取得されたデータaを取得し、血液試料の温度に関連するデータaおよび分析物の濃度に関連するデータbに基づいて、濃度決定部が、血液試料中の分析物濃度を決定している。
これにより、使用環境の温度に起因する測定誤差の発生を抑制し、血液試料中の分析物濃度の測定精度を向上することが可能となる。
【0042】
本発明の第38観点に係るバイオセンサシステムは、第37観点に係るバイオセンサシステムであって、濃度決定部は、データaに基づいて、データbを補正する第1の分析物補正部を含んでいる。
ここでは、樹脂板や熱伝導部材を介することなく、血液試料の温度を直接測定することによって取得されたデータaに基づいて、第1の分析物補正部が、血液試料中における分析物の濃度に関連するデータbを補正している。
【0043】
これにより、使用環境の温度に起因する測定誤差の発生を抑制し、血液試料中の分析物濃度の測定精度を向上することが可能となる。
本発明の第39観点に係るバイオセンサシステムは、第37観点に係るバイオセンサシステムであって、濃度決定部は、データbに基づいて、血液試料の分析物の濃度xを算出する算出部と、データaに基づいて、濃度xを補正する第2の分析物補正部とを含んでいる。
【0044】
ここでは、分析物補正部が、データbに基づいて血液試料の分析物の濃度xを算出した後、第2の分析物補正部が、血液試料の温度を直接測定することによって取得されたデータaに基づいて濃度xを補正している。
これにより、使用環境の温度に起因する測定誤差の発生を抑制し、血液試料中の分析物濃度の測定精度を向上することが可能となる。
【0045】
本発明の第40観点に係るバイオセンサシステムは、第37観点に係るバイオセンサシステムであって、濃度決定部は、データaに基づいて、血液試料の温度tを算出する算出部と、温度tに基づいて、データbを補正する第3の分析物補正部とを含んでいる。
ここでは、算出部が、血液試料の温度を直接測定することによって取得されたデータaに基づいて血液試料の温度tを算出した後、第3の分析物補正部が、温度tに基づいてデータbを補正している。
【0046】
これにより、使用環境の温度に起因する測定誤差の発生を抑制し、血液試料中の分析物濃度の測定精度を向上することが可能となる。
本発明の第41観点に係るバイオセンサシステムは、第37観点に係るバイオセンサシステムであって、濃度決定部は、データaに基づいて、血液試料の温度tを算出する算出部と、データbに基づいて、血液試料の分析物の濃度xを算出する算出部と、温度tに基づいて、濃度xを補正する第4の分析物補正部とを含んでいる。
【0047】
ここでは、算出部が、血液試料の温度を直接測定することによって取得されたデータaに基づいて血液試料の温度t、データbに基づいて血液試料の分析物の濃度xを算出した後、第4の分析物補正部が、温度tに基づいて濃度xを補正している。
これにより、使用環境の温度に起因する測定誤差の発生を抑制し、血液試料中の分析物濃度の測定精度を向上することが可能となる。
【0048】
本発明の第42観点に係るバイオセンサシステムは、第37から第41の観点のいずれか1つに係るバイオセンサシステムであって、温度測定部により試料の温度に関連するデータa取得後に、分析物測定部により分析物の濃度に関連するデータbを取得する。
これにより、データb取得時の温度をより正確に反映させることが可能となる。
本発明の第43観点に係るバイオセンサシステムは、第37観点に係るバイオセンサシステムであって、濃度決定部は、データb取得後に、血液試料に接触させた温度電極に流れる電流の大きさに基づいて、血液試料の温度に関連するデータcを取得する温度測定部と、データaとデータcとを演算し、血液試料の温度に関連するデータdを求める演算部と、データdに基づいて、血液試料の温度に応じて補正された分析物の濃度xを算出する算出部とを含んでいる。
【0049】
ここでは、データb取得後に、もう一度データaと同じ取得方法で血液試料の温度に関連するデータcを取得し、演算部が、データaとデータcとを演算することによって血液試料の温度に関連するデータdを求めている。そして、算出部が、このデータdに基づいて濃度xを補正している。
これにより、データb取得時の温度をより正確に反映させることが可能となり、血液試料中の分析物濃度の測定精度を向上することが可能となる。
【0050】
本発明の第44観点に係るバイオセンサシステムは、第37観点に係るバイオセンサシステムであって、濃度決定部は、データaに基づいて、血液試料の温度tを算出する温度算出部と、データbに基づいて、血液試料の分析物の濃度xを算出する濃度算出部と、血液試料の周囲の環境温度t1を測定する環境温度測定部と、温度tと環境温度t1との差分を温度閾値Zと比較する比較部と、|t−t1|≧Zを満たす場合、温度tに基づいて濃度xを補正し、|t−t1|<Zを満たす場合、環境温度t1に基づいて濃度xを補正する補正部とを含んでいる。
【0051】
ここでは、データaに基づいて血液試料の温度t、データbに基づいて血液試料の分析物の濃度xを算出し、さらに、血液試料の周囲の環境温度t1を測定している。そして、温度tと環境温度t1との差分を温度閾値Zと比較して、以下のとおり補正している。
|t−t1|≧Zを満たす場合、温度tに基づいて濃度xを補正
|t−t1|<Zを満たす場合、温度t1に基づいて濃度xを補正
これにより、外部温度環境に応じた適正な温度を用いて濃度xを補正することができるので、血液試料中の分析物濃度の測定精度を向上することが可能となる。
【0052】
本発明の第45観点に係るバイオセンサシステムは、第37から第44の観点のいずれか1つに係るバイオセンサシステムであって、血液試料の温度に関連するデータaには温度が含まれており、分析物の濃度に関連するデータbにはグルコース濃度が含まれている。
ここでは、データaとして取得するデータの項目として温度が含まれ、データbとして取得するデータの項目としてグルコース濃度が含まれている。
【0053】
本発明の第46観点に係るバイオセンサシステムは、第45観点に係るバイオセンサシステムであって、分析物の濃度に関連するデータbにはヘマトクリットが含まれている。
ここでは、データbとして取得するデータの項目としてヘマトクリットが含まれている。
本発明の第47観点に係るバイオセンサシステムは、第45または第46観点に係るバイオセンサシステムであって、分析物の濃度に関連するデータbには還元物質の量または濃度が含まれている。
【0054】
ここでは、データbとして取得するデータの項目として還元物質の量または濃度が含まれている。
本発明の第48観点に係るバイオセンサシステムは、第45から第47の観点のいずれか1つに係るバイオセンサシステムであって、データaおよびデータbに含まれるデータのうち、少なくとも2つの項目を同時に測定するように制御回路を制御するシーケンス制御部をさらに備えている。
【0055】
ここでは、データaおよびデータbに含まれるデータを取得する際、シーケンス制御部は、同時に2つ以上の項目を測定するように制御回路を制御する。例えば、シーケンス制御部は、グルコース濃度と還元物質の量または濃度とを同時に取得するように制御回路を制御する。
本発明の第49観点に係るバイオセンサシステムは、第45から第47の観点のいずれか1つに係るバイオセンサシステムであって、データaおよびデータbに含まれるデータの測定をそれぞれ独立して行うように制御回路を制御するシーケンス制御部をさらに備えている。
【0056】
ここでは、データaおよびデータbに含まれるデータを取得する際、シーケンス制御部は、同時に2つ以上の項目を測定するのではなく1つ1つ順番に測定するように制御回路を制御する。なお、各項目の取得する順番は任意であってよい。
本発明の第50観点に係るバイオセンサシステムは、第45から第47の観点のいずれか1つに係るバイオセンサシステムであって、データaおよびデータbに含まれるデータの測定は、温度、グルコース濃度および還元物質の量または濃度、ヘマトクリットの順番で行うように制御回路を制御するシーケンス制御部をさらに備えている。
【0057】
ここでは、データを測定する順番を特定している。これにより、速度、正確さ、電極への負担面において有利な効果を得ることが可能となる。
本発明の第51観点に係るバイオセンサシステムは、第45から第50の観点のいずれか1つに係るバイオセンサシステムであって、データaおよびデータbに含まれるデータの測定は独立した電極を介して行うように制御回路を制御する電極選択部をさらに備えている。
【0058】
ここでは、データaおよびデータbに含まれるデータを測定する際、電極選択部は、それぞれ独立した電極を介して行うように制御回路を制御する。
【発明の効果】
【0059】
本発明に係るセンサチップ、バイオセンサシステム、血液試料の温度測定方法、血液試料中の分析物の濃度測定方法によれば、使用環境の温度に起因する測定誤差の発生を抑制し、血液試料中の分析物濃度の測定精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施形態に係るバイオセンサシステムの斜視図。
【図2】本発明の一実施形態に係るバイオセンサチップの分解斜視図。
【図3】本発明の一実施形態に係るバイオセンサチップの透視平面図。
【図4】本発明の一実施形態に係るバイオセンサシステムにおける回路構成図。
【図5】本発明の一実施形態に係るバイオセンサシステムにおける血液試料中の分析物濃度の測定方法を示すフローチャート。
【図6】(a)および(b)は、本発明の他の実施形態に係るバイオセンサシステムにおける血液試料中の分析物濃度の測定方法を示すフローチャート、バイオセンサシステムにおける回路構成図。
【図7】(a)および(b)は、本発明の他の実施形態に係るバイオセンサシステムにおける血液試料中の分析物濃度の測定方法を示すフローチャート、バイオセンサシステムにおける回路構成図。
【図8】(a)、(b)および(c)は、本発明の一実施形態に係るバイオセンサチップを用いて得られる電流の変化特性を示すグラフ。
【図9】本発明の一実施形態に係るセンサチップの分解斜視図。
【図10】本発明の一実施形態に係るセンサチップの透視平面図。
【図11】(a)、(b)、および(c)は、実施例1において図8に対応する電流特性グラフ。
【図12】実施例1において所定の温度に対して得られた電流特性グラフ。
【図13】(a)、(b)、および(c)は、実施例7における温度が4度のときの、所定の印加電圧、所定のヘマトクリット値に対して得られた電流特性グラフ。
【図14】(a)、(b)、および(c)は、実施例7における温度が13度のときの、所定の印加電圧、所定のヘマトクリット値に対して得られた電流特性グラフ。
【図15】(a)、(b)、および(c)は、実施例7における温度が21度のときの、所定の印加電圧、所定のヘマトクリット値に対して得られた電流特性グラフ。
【図16】(a)、(b)、および(c)は、実施例7における温度が30度のときの、所定の印加電圧、所定のヘマトクリット値に対して得られた電流特性グラフ。
【図17】(a)、(b)、および(c)は、実施例7における温度が38度のときの、所定の印加電圧、所定のヘマトクリット値に対して得られた電流特性グラフ。
【図18】実施例10において所定の温度に対して得られた電流値との関係を示すグラフ。
【図19】実施例11におけるセンサチップの電極間距離を示す斜視図。
【図20】(a)〜(d)は、実施例11において、血液試料が11℃における電極間距離別、ヘマトクリット別の応答電流値を示すグラフ。
【図21】(a)〜(d)は、実施例11において、血液試料が21℃における電極間距離別、ヘマトクリット別の応答電流値を示すグラフ。
【図22】(a)〜(d)は、実施例11において、血液試料が30℃における電極間距離別、ヘマトクリット別の応答電流値を示すグラフ。
【図23】(a)および(b)は、実施例12におけるセンサチップを示す斜視図。
【図24】(a)および(b)は、実施例12において、血液試料が11℃における電極形状別、ヘマトクリット別の応答電流値を示すグラフ。
【図25】(a)および(b)は、実施例12において、血液試料が21℃における電極形状別、ヘマトクリット別の応答電流値を示すグラフ。
【図26】(a)および(b)は、実施例12において、血液試料が30℃における電極形状別、ヘマトクリット別の応答電流値を示すグラフ。
【図27】(a)および(b)は、実施例13におけるセンサチップを示す斜視図。
【図28】(a)〜(d)は、実施例13において、血液試料が30℃におけるリード幅別、ヘマトクリット別の応答電流値を示すグラフ。
【図29】実施例14におけるセンサチップのキャピラリ高さを示す斜視図。
【図30】(a)および(b)は、実施例14において、血液試料が11℃におけるキャピラリ高さ別、ヘマトクリット別の応答電流値を示すグラフ。
【図31】(a)および(b)は、実施例14において、血液試料が21℃におけるキャピラリ高さ別、ヘマトクリット別の応答電流値を示すグラフ。
【図32】(a)および(b)は、実施例14において、血液試料が30℃におけるキャピラリ高さ別、ヘマトクリット別の応答電流値を示すグラフ。
【図33】(a)および(b)は、実施例15において、血液試料が4℃におけるパラジウム抵抗別の応答電流値を示すグラフ。
【図34】(a)および(b)は、実施例15において、血液試料が13℃におけるパラジウム抵抗別の応答電流値を示すグラフ。
【図35】(a)および(b)は、実施例15において、血液試料が21℃におけるパラジウム抵抗別の応答電流値を示すグラフ。
【図36】(a)および(b)は、実施例15において、血液試料が30℃におけるパラジウム抵抗別の応答電流値を示すグラフ。
【図37】(a)および(b)は、実施例15において、血液試料が38℃におけるパラジウム抵抗別の応答電流値を示すグラフ。
【図38】実施例16において、血液試料が24℃におけるグルコース濃度別の応答電流値を示すグラフ。
【図39】実施例17において、血液試料が24℃におけるアスコルビン酸濃度別の応答電流値を示すグラフ。
【図40】実施例18おいて、24℃の環境下で血液試料を導入した場合の温度別の応答電流値を示すグラフ。
【図41】実施例19におけるセンサチップの上回り、下回りを示す斜視図。
【図42】実施例19おいて、24℃の環境下で上回り、下回りに血液が付着した場合の応答電流値を示すグラフ。
【図43】実施例20において、24℃の環境下において、指でセンサチップの先端部をつまんだ場合とつままなかった場合の応答電流値を示すグラフ。
【図44】実施例21における測定シーケンスを示す説明図。
【図45】(a)は、実施例21において測定されたグルコースの応答電流値を示すグラフ、(b)は、実施例21において測定された温度、Hctの応答電流値を示すグラフ。
【図46】(a)は、実施例21における温度測定の応答電流値を示すグラフ、(b)は、実施例21において温度を測定した場合の温度別の応答電流値を示すグラフ。
【図47】実施例21における他の測定シーケンスを示す説明図。
【図48】(a)および(b)は、本発明の変形例1に係るバイオセンサシステムにおける血液試料中の分析物濃度の測定方法を示すフローチャート。
【図49】(a)および(b)は、本発明の変形例1に係るバイオセンサシステムにおける血液試料中の分析物濃度の測定方法を示すフローチャート。
【図50】(a)および(b)は、本発明の変形例1に係るバイオセンサシステムにおける回路構成図。
【図51】(a)および(b)は、本発明の変形例1に係るバイオセンサシステムにおける回路構成図。
【図52】本発明の変形例2に係るバイオセンサシステムにおける回路構成図。
【図53】本発明の一実施形態に係るバイオセンサシステムにおける回路構成図。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本発明によるバイオセンサシステムは、センサチップに配置された測定部によって、分析物の温度を血液試料から取得する。
図1は、本発明によるバイオセンサシステムの一例を説明するための図である。このバイオセンサシステム100は、直方体状の測定器101と、センサチップ200とを有している。測定器101の側壁面には、矩形状の孔である装着口102が形成されている。センサチップ200は、装着口102に着脱自在な状態で測定器101に接続される。測定器101の一方の主面の略中央部には、測定結果を表示する表示部103が配置されている。
【0062】
図2は、センサチップ200の分解斜視図であり、図3は、その平面図である。このセンサチップ200は、矩形状の切欠部204が形成されたスペーサー202を介して、かつ、絶縁基板201の一方の端部(図2における右側の端部)を残して、絶縁基板201上にカバー203が配置されている。
各部材201、202、203は、例えば接着または熱溶着によって、一体化されている。スペーサー202の切欠部204は、各部材の一体化後には、血液試料を保持するキャピラリ40として機能する。キャピラリ40は、センサチップ200の長辺に沿って長い形状であり、スペーサー202の一方の端部(図2、図3における左側の端部)において外部に連通している。換言すれば、キャピラリ40は、センサチップ200の外部に開口する血液試料導入口17と連通している。そして、カバー203は、キャピラリ40において、血液試料導入口17側とはと反対側の端近傍に、排気口16を有している。これにより、毛管現象によって、血液試料は、血液試料導入口17からキャピラリ40の内部に容易に吸引される。
【0063】
絶縁基板201上には、電極(電圧印加部)11、12、13、14、15が、それぞれの一部分(部分31、32、33、34、35)がキャピラリ40に面するように配置されている。電極11の部分31および電極12の部分32は、電極13の部分33および電極14の部分34よりも血液試料導入口17に近接する位置に配置されている。
絶縁基板201上には、反応試薬層20が、電極13の部分33の全体を覆うと共に、電極14の部分34および電極15の部分35を部分的に覆うように形成されている。反応試薬層20は、血液試料中の分析物を基質とする酸化還元酵素と、電子メディエータと、を含有する。
【0064】
反応試薬層20は、電極11の部分31および電極12の部分32から離れた位置に形成されている。好ましくは、電極11の部分31および電極12の部分32上には酸化還元酵素、または、電子メディエータを含む反応試薬は配置されず、より好ましくは、いかなる反応試薬も配置されない。
上記とは逆に、電極13の部分33および電極14の部分34が、電極11の部分31および電極12の部分32よりも、血液試料導入口17に近接する位置に配置されると、血液試料導入口17から血液試料が導入される際に、電極13の部分33および電極14の部分34上の反応試薬層20が流されることで、電極13の部分33および電極14の部分34に到達することがあり得る。よって、このような配置は避けられるべきである。
【0065】
センサチップ200は、測定部41(測定部A)を有する。測定部Aは、電極11の部分31および電極12の部分32によって構成される電極系(温度電極)と、部分31および部分32を収容するキャピラリ40の一部の空間とによって構成される。
さらに、センサチップ200は、測定部42(測定部B)を有する。測定部Bは、電極13の部分33および電極14の部分34によって構成される電極系(分析電極)と、反応試薬層20ならびに部分33および部分34を収容するキャピラリ40の一部の空間とによって構成される。
【0066】
測定部Aの温度電極では、電極11は作用極として、電極12は対極として機能する。測定部Bの分析電極では、電極13は作用極として、電極14は対極として機能する。
測定部A(温度測定部)は、温度電極に流れる電流の量に基づいて、血液試料の温度に関連するデータaを取得する。温度電極上で電気化学反応する物質は、主に血液試料中の成分であり、水であってもよく、赤血球および白血球などの血球成分であってもよい。
【0067】
測定部B(分析物測定部)は、分析電極間に流れる電流の量に基づいて、血液試料中の分析物の濃度に関連するデータbを取得する。分析電極上で電気化学反応する物質は、主に、酸化還元酵素との間で電子の授受がなされた電子メディエータである。測定部Bで取得されたデータbは、データaを用いて温度に基づく補正が行われる。分析物の濃度は、補正後のデータbを用いて算出される。
【0068】
電極13の部分33および電極14の部分34の両方または片方は、電極11の部分31および電極12の部分32の両方または片方を兼ねることができる。しかし、これらの電極は別個に設けられる方が好ましい。
電極15の部分35は、キャピラリ40の奥側の端部近傍に、換言すれば、外部に連通する端と反対側の端の近傍に配置されている。電極15と電極13との間に電圧が印加されることにより、血液試料がキャピラリ40の奥にまで導入されたことが、容易に検知される。なお、電極13に代えて電極14と電極15との間に、電圧が印加されてもよい。
【0069】
電極11、12、13、14、15は、それぞれリード(図示せず)と連結している。リードの一端は、各電極間に電圧を印加できるように、スペーサー202およびカバー203で覆われていない絶縁基板201の端部において、センサチップ200の外部に露出している。
血液試料中の分析物としては、血球を除く物質、例えば、グルコース、アルブミン、乳酸、ビリルビンおよびコレステロールが挙げられる。酸化還元酵素は、対象とする分析物を基質とするものを使用する。酸化還元酵素としては、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、ラクテートオキシダーゼ、ラクテートデヒドロゲナーゼ、ビリルビンオキシダーゼおよびコレステロールオキシダーゼが例示される。反応試薬層中の酸化還元酵素の量としては、0.01〜100ユニット(U)、好ましくは、0.05〜10U、より好ましくは、0.1〜5Uの範囲が例示される。
【0070】
反応試薬層20は、フェリシアン化カリウム、p−ベンゾキノン、p−ベンゾキノン誘導体、酸化型フェナジンメトサルフェート、メチレンブルー、フェリシニウムおよびフェリシニウム誘導体といった、酵素反応にて生じた電子を電極に受け渡す機能を有する電子メディエータを含有することが望ましい。反応試薬層20は、反応試薬層の成形性を高めるために、水溶性高分子化合物を含有してもよい。水溶性高分子化合物としては、カルボキシメチルセルロースおよびその塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシエチルセルロースおよびその塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリリジンといったポリアミノ酸、ポリスチレンスルホン酸およびその塩、ゼラチンおよびその誘導体、ポリアクリル酸およびその塩、ポリメタクリル酸およびその塩、スターチおよびその誘導体、無水マレイン酸重合体およびその塩、アガロースゲルおよびその誘導体、から選ばれる少なくとも1種が例示される。
【0071】
絶縁基板201、スペーサー202およびカバー203の材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリオキシメチレン、モノマーキャストナイロン、ポリブチレンテレフタレート、メタクリル樹脂およびABS樹脂といった樹脂、さらにはガラスが例示される。
【0072】
電極11、12、13、14、15は、例えば、パラジウム、白金、金、銀、チタン、銅、ニッケルおよび炭素といった、公知の導電性材料により構成される。
図4は、バイオセンサシステム100における、血液試料中の分析物濃度を測定するための回路構成の一例を示す図である。測定器101は、センサチップ200における電極11、12、13、14、15のうち少なくとも2つの電極間に電圧を印加する制御回路300と、測定結果を表示する表示部400とを有している。
【0073】
制御回路300は、5つのコネクタ301a、301b、301c、301d、301eと、切換回路302と、電流/電圧変換回路303と、アナログ/デジタル(A/D)変換回路304と、基準電圧源305と、演算部306とを有している。制御回路300は、切換回路302を介して、1つの電極を正極または負極として使用できるように、当該電極に印加する電位を切り換えることができる。
【0074】
演算部(濃度決定部)306は、公知の中央演算装置(CPU)と、上記のデータaおよびデータbに基づき血液試料中の分析物濃度を決定するための換算テーブルとを有する。演算部306は、環境温度に基づく補正係数が記述された換算テーブルを参照することによって、分析物濃度を補正する。より具体的には、仮測定用の換算テーブルを参照して分析物濃度が仮算出された後、演算部306は、温度補正用の換算テーブルを参照することで、分析物濃度を補正する。
【0075】
バイオセンサシステム100を用いた血液試料中の分析物濃度の測定は、例えば、図5に示すように、次のようにして実施される。
まず、演算部306のCPUの指令により、電極13がコネクタ301bを介して電流/電圧変換回路303に接続され、電極15がコネクタ301cを介して基準電圧源305に接続される。
【0076】
その後、CPUの指令により、両電極間に一定の電圧が印加される(ステップS1)。当該電圧は、例えば、電極15を正極、電極13を負極と表示したときに0.01〜2.0V、好ましくは、0.1〜1.0V、より好ましくは、0.2〜0.5Vである。この電圧は、センサチップが測定器101に挿入されてから、血液試料がキャピラリ40の奥まで導入されるまでの間、印加される。センサチップ200の血液試料導入口からキャピラリ40に血液試料が導入されると、電極15と電極13との間に電流が流れる。CPUは、そのときの単位時間当たりの電流の増加量を識別することによって、キャピラリ40が血液試料にて満たされたことを検知する。この電流の値は、電流/電圧変換回路303により電圧値に変換された後に、A/D変換回路304によりデジタル値に変換された後、CPUに入力される。CPUは、このデジタル値に基づいて血液試料がキャピラリの奥にまで導入されたことを検知する。
【0077】
血液試料の導入後、例えば、0〜60秒、好ましくは、0〜15秒、より好ましくは、0〜5秒の範囲で、血液試料中の分析物と酵素および酵素と電子メディエータとを反応させる。
続いて、次のようにして上記のデータaを取得する(ステップS2)。
まず、CPUの指令により、電圧切換回路302が作動して、電極11がコネクタ301aを介して電流/電圧変換回路303に接続され、電極12がコネクタ301eを介して基準電圧源305に接続される。続いて、CPUの指令により、測定部Aにおける両電極間に一定の電圧が印加される。後述するように、当該電圧は、例えば、電極11を正極、電極12を負極と表示したときに0.1〜5.0V、好ましくは、1.0〜3.0V、より好ましくは、1.5〜2.5Vである。電圧の印加時間は、0.1〜30秒、好ましくは、0.5〜10秒、より好ましくは、1〜5秒の範囲にある。当該電圧の印加に伴って両電極間に流れた電流量は、データaの取得を指示する信号が制御回路から測定部Aに与えられることによって、電流/電圧変換回路303により電圧値に変換され、その後に、A/D変換回路304によりデジタル値に変換されCPUに入力され、データaとして演算部306のメモリに格納される。
【0078】
その後、次のようにして上記のデータbが取得される(ステップS3)。
まず、CPUの指令により、切換回路302が作動して、電極13がコネクタ301bを介して電流/電圧変換回路303に接続され、電極14がコネクタ301dを介して基準電圧源305に接続される。その後、CPUの指令により、測定部Bにおける測定シーケンスが入力される。その際、当該電圧は、例えば、電極13を正極、電極14を負極と表示したときに0.05〜1.0V、好ましくは、0.1〜0.8V、より好ましくは、0.2〜0.6Vである。電圧の印加時間は0.1〜30秒、好ましくは、0.1〜15秒、より好ましくは、0.1〜5秒の範囲にある。当該電圧の印加に伴って両電極間に流れた電流量は、データbの取得を指示する信号が制御回路から測定部Bに与えられることによって、電流/電圧変換回路303により電圧値に変換され、その後に、A/D変換回路304によりデジタル値に変換されCPUに入力され、データbとして演算部306のメモリに格納される。分析物濃度の測定を迅速化する観点からは、制御回路は、血液試料がセンサチップのキャピラリ40に導入された時点から0.5秒以上5秒未満の範囲内に、データbの取得を指示する信号を測定部Bに与えることが好ましい。
【0079】
なお、データbは、データaよりも先に取得されてもよい。ただし、データb取得に至るまでには、試薬の溶解、酵素反応、電子メディエータと酵素間の反応などに十分な時間を要するため、データbは後に取得されることが好ましい。また、データbとデータaとが同時に取得されてもよいが、その際には1つの溶液系内において、2組の電極系に同時に電圧を印加することになるため、それぞれの電流が互いに干渉しあう場合がある。そのためデータaの取得とデータbの取得とは、別々に行われることが好ましい。
【0080】
また、図6(a)に示すように、データb取得時の温度を、濃度の測定結果に、より正確に反映させるために、データb取得の前後に、血液試料の温度に関連するデータがそれぞれ取得されてもよい。即ち、バイオセンサシステム100は、両電極間に一定の電圧を印加し(ステップS101)、血液試料の温度に関連するデータaを取得し(ステップS102)、その後、血液試料中の分析物の濃度に関連するデータbを取得し(ステップS103)、さらにその後、再度血液試料の温度に関連するデータcを取得する(ステップS104)。その後、演算部306は、データaとデータcとを平均する等演算することでデータdを求め(ステップS105)、データdを用いてデータbに対し温度の補正を行い、分析物の濃度を算出する(ステップS106)。このとき、バイオセンサシステム100における演算部(濃度決定部)306(図4参照)は、図6(b)に示すように、データb取得後に、血液試料に接触させた温度電極に流れる電流の大きさに基づいて、血液試料の温度に関連するデータcを取得する温度測定部307と、データaとデータcとを演算し、血液試料の温度に関連するデータdを求める演算部308と、データdに基づいて、血液試料の温度に応じて補正された分析物の濃度xを算出する濃度算出部309とを含んでいる。
【0081】
続いて、演算部306が、換算テーブルを参照し、データaおよびデータbに基づき血液試料中の分析物濃度を決定する(ステップS4)。そして、決定された分析物濃度が、表示部400に画像表示される。データaについて温度換算テーブルが用意されていれば、演算部306は、血液試料中の温度を算出することができ、その温度を表示部400に画像表示することもできる。当該決定のための演算プログラムは、換算テーブルのデータ構造に応じて適宜設計される。データaおよびデータbに完全に一致する数値データが換算テーブルに記述されていない場合、演算部306は、当該換算テーブルに記述されデータaおよびデータbに近似するデータから、公知の線形補間法を用いることによって分析物濃度を決定すればよい。
【0082】
更に、必要であれば電極11および電極12は、温度計測用途の電極及び他の分析用途の電極として、兼用されてもよい。他の分析用途とは、例えば、血液試料内のヘマトクリット値の測定、または、血液試料内の物質でデータbに影響を与える可能性があるアスコルビン酸、尿酸、ビリルビン、アセトアミノフェンなどの還元物質の測定である。電極11または電極12を作用極(正極)、電極13または電極14を対極(負極)として用いる方法が公知となっている。
【0083】
本発明において、測定部Aにおける温度電極間の電圧は、電極面積や電極の材料などセンサチップの構成により左右され得るため、事前に最適な印加電圧を決定する必要がある。最適値から外れた電圧を印加した時に取得される電流量は、血液試料内のヘマトクリット値(Hct値)によって左右され得る。Hct値とは、血液中に占める血球成分の容積の割合を示す数値を意味する。
【0084】
最適電圧値をVm、最適電圧値より高い電圧値をVh、最適電圧値より低い電圧値Vlとした場合(Vl<Vm<Vh)の電流量の変化を図8に示す。最適電圧値より低い電圧値Vlの場合、図8(a)に示すように、Hct値が高いほど電流量は大きくなる。逆に最適電圧値より高い電圧値をVhの場合では、図8(c)に示すように、Hct値が低いほど電流量は大きくなる。最適電圧値Vmの場合は、図8(b)に示すように、Hct値によらず一定の電流量を示す。このようなHct値による電流量の乖離は、電流量が大きい高温条件で顕著に見られるため、必要とする温度測定領域の上限温度で事前に決定しておくことが好ましい。Vmの範囲は、0.1〜5.0V、好ましくは、1.0〜3.0V、より好ましくは、1.5〜2.5Vである。
【0085】
本発明において、測定部Aにおける温度電極間に流れる電流量は、電極面積に左右される。電極11(作用極)の一部分31の面積および電極12(対極)の一部分32の面積のどちらが広くても、より高い電流量が得られる。ただし、対極側である一部分32の面積が広い方が好ましい。具体的には、作用極側の面積/対極側の面積の比率の範囲が、1〜0.25であることが好ましい。
【0086】
本実施形態のバイオセンサシステムは、センサを使用する環境の温度が急激に変化した場合であっても、分析物濃度を高精度に測定できる。このため、サーミスタに代表される環境温度測定部が、測定器に設置される必要はない。
しかし、センサの状態または構造によっては、測定部Aで取得される電流量の精度が低いこともあり得る。例えば、キャピラリ40の体積が小さいセンサでは、測定に必要な血液試料の容量は低減可能であるが、測定部Aの温度電極の面積も小さくなければならない。よって、測定部Aで取得される電流量は減少し、結果として測定部Aで取得される電流量の精度は低下すると予測される。このような場合に、図53の回路構成図に示すように、測定器に環境温度測定部315が設けられてもよい。設けられる環境温度測定部315の数は、1つだけでもよいが、2つ以上であってもよい。2つ以上の環境温度測定部315が設けられる場合は、それぞれの環境温度測定部315が、互いに精度を監視することで、環境温度のより正確な測定結果が保証される。
【0087】
また、センサの測定部Aから得られる温度データと、測定器に設けられたサーミスタから得られる温度データとを比較しながら温度補正をすることも、それぞれの温度変化を監視して最適な温度を選択し温度補正に活用することもできる。さらに、測定部Aの温度とサーミスタの温度との差を参考にして温度を補正する方法、及び、温度の差を複数取り込んで、最適な温度補正値を選択する方法なども実行可能である。もちろん、温度の差ではなく平均値のデータを活用する方法も実行可能である。
【0088】
図53のバイオセンサシステム100において、演算部306は、測定部Aで取得される温度tと測定器の環境温度測定部315で取得される温度t1(ステップS43)とを比較し、両者に差が生じた場合のみ、測定部Aで取得される温度tを採用する。つまり、図7(a)に示すように、演算部306は、データaに基づいて温度tを算出する(ステップS41)。演算部306は、データbに基づいて濃度xを算出する(ステップS42)。環境温度測定部315が環境温度t1を測定する(ステップS43)。
【0089】
外部環境温度と血液試料温度とに差がない場合は、演算部306は、温度t1を採用する(ステップS45)。環境温度測定部315は測定精度が高いからである。
温度の急激な変化などによって、外部環境温度と血液試料温度とに差が生じた場合は、測定器の環境温度測定部315は、この差に対応することができない。そこで、測定部Aで取得される温度tが採用される(ステップS46)。より具体的には、温度閾値Zが予め設定される。演算部306は、|t−t1|の値と温度閾値Zとを比較する(ステップS44)。そして、演算部306は、|t−t1|の値が温度閾値Z以上の場合には、温度tに基づいて濃度xを補正し(ステップS45)、温度閾値Zより小さい場合には、環境温度t1に基づいて濃度xを補正する(ステップS46)。
【0090】
温度閾値Zの範囲は、測定器の環境温度測定部の精度と、センサチップの測定部Aの精度を考慮して決定され、0.01〜5.0℃、好ましくは、0.1〜2.0℃、より好ましくは、0.2〜1.0℃の範囲である。
バイオセンサシステム100における演算部(濃度決定部)306(図4、図52参照)は、図7(b)に示すように、温度算出部310と、濃度算出部311と、を含む。温度算出部310は、データaに基づいて、血液試料の温度tを算出する。濃度算出部311は、データbに基づいて、血液試料の分析物の濃度xを算出する。
【0091】
測定器は、環境温度測定部312と、比較部313と、補正部314と、を含む。環境温度測定部312は、血液試料の周囲の環境温度t1を測定する。比較部313は、温度tと環境温度t1との差分を温度閾値Zと比較する。補正部314は、|t−t1|≧Zを満たす場合、温度tに基づいて濃度xを補正し、|t−t1|<Zを満たす場合、環境温度t1に基づいて濃度xを補正する。
【0092】
[実施例]
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
図9および図10に示すセンサチップ210を作製した。キャピラリを、幅1.2mm、長さ(奥行き)4.0mm、高さ0.15mmになるように設計した。絶縁基板としては、ポリエチレンテレフタレートを用いた。絶縁基板にパラジウムを蒸着させた後、電極11の部分31の面積が0.12mm2、電極12の部分32の面積が0.48mm2となるように、レーザーでパラジウム層にスリットを入れることで、各電極を形成した。
【0093】
それぞれ25%、45%、65%のHct値を有する3種類の血液試料を準備した。血液試料の温度を、23℃とした。これらの血液試料を別々のセンサチップのキャピラリに導入した。その後、電極11を作用極(正極)、電極12を対極(負極)として用い、2.0V、2.2V、又は2.4Vの電圧を両電極(温度電極)間に印加した。電圧印加に伴って作用極と対極との間に流れる電流(応答電流)を測定した。
【0094】
測定の結果をそれぞれ図11(a)、図11(b)、図11(c)のグラフに示す。
印加電圧が2.0Vである場合は、図11(a)に示すように、Hct値が高いほど応答電流が大きかった。この結果は、図8(a)に対応する。
図11(b)に示すように、印加電圧が2.2Vであった場合は、Hct値に関わらず応答電流が一定であった。この結果は、図8(b)に対応する。
【0095】
図11(c)に示すように、印加電圧が2.4Vであった場合は、Hct値が低いほど応答電流が大きかった。この結果は、図8(c)に対応する。
次に、Hct値45%、4℃〜38℃の血液試料を用いた実験が行われた。温度毎に、別々のセンサチップのキャピラリに血液試料を導入した。その後、電極11を作用極(正極)、電極12を対極(負極)として用い、2.2Vの電圧を両電極(温度電極)間に印加したときの応答電流を測定した。測定の結果を図12のグラフに示す。図12に示すように、温度の上昇に伴い応答電流が増加した。
【0096】
図11および図12の結果より、電極11と電極12との間に2.2Vの大きさの電圧を印加し、応答電流を測定することで、血液試料温度を検出することが可能であることが見出された。
(実施例2)
実施例1に記載の構成のセンサチップを用い、Hct値45%、温度23℃の血液試料をセンサチップのキャピラリに導入した。その後、電極11を作用極(正極)、電極12を対極(負極)として用い、2.2Vの電圧を両電極(温度電極)間に印加したときの応答電流を測定した。電圧印加開始から3秒後の電流値を以下の表1に示す。実施例2における電流値は、1.88μAであった。
【0097】
【表1】

【0098】
(実施例3)
センサチップの電極11の部分31の面積が0.24mm2、電極12の部分32の面積が0.48mm2となるように、電極を形成した。他の条件は、実施例2に記載のセンサチップと同様とした。電圧印加開始から3秒後の電流値を以下の上記表1に示す。実施例3における電流値は、2.47μAとなり、実施例2と比較すると、電流値は32%増加する結果であった。実施例3におけるセンサチップの作用極の面積は、実施例2の場合と比較して2倍である。
【0099】
(実施例4)
センサチップの電極11の部分31の面積が0.48mm2、電極12の部分32の面積が0.48mm2となるように、電極を形成した。他の条件は、実施例2に記載のセンサチップと同様とした。電圧印加開始から3秒後の電流値を上記表1に示す。実施例4における電流値は、3.13μAとなり、実施例2と比較すると電流値は67%増加する結果となった。実施例4におけるセンサチップの作用極の面積は、実施例2の場合と比較して4倍、また、実施例3の場合と比較して2倍である。すなわち、作用極の面積増加に伴い電流値が増加することがわかった。
【0100】
(実施例5)
センサチップの電極11の部分31の面積が0.12mm2、電極12の部分32の面積が0.96mm2となるように、電極を形成した。他の条件は、実施例2と同様とした。電圧印加開始から3秒後の電流値を上記表1に示す。実施例5における電流値は、3.08μAであり、実施例2と比較すると、電流値は65%増加した。実施例5におけるセンサチップの対極の面積は、実施例2の場合と比較して2倍であった。すなわち、対極の面積増加に伴い電流値が増加することがわかった。また、実施例3と比較すると、作用極の面積が2倍である条件では、電流値の増加率は32%に留まっていた。よって、作用極よりも対極の面積を増加させたほうが、より高い応答値が得られると考えられる。
【0101】
(実施例6)
センサチップの電極11の部分31の面積が0.24mm2、電極12の部分32の面積が0.96mm2となるように、電極を形成した。他の条件は、実施例2と同様とした。電圧印加開始から3秒後の電流値を上記表1に示す。実施例6における電流値は3.65μAであり、実施例2と比較すると、電流値は94%増加した。実施例6におけるセンサチップの作用極および対極の面積は、実施例2の場合と比較してともに2倍である。すなわち、電極面積の比率が同じ場合には、電極面積の増加に比例して、電流値も増加することがわかった。
【0102】
(実施例7)
実施例1に記載のセンサチップを準備した。Hct値が25%、45%、および65%の3通りのHct値と、4℃、13℃、21℃、30℃、および38℃の5通りの温度と、をそれぞれ組み合わせて、15種類の血液試料を準備した。
次に、上述したそれぞれの血液試料をセンサチップのキャピラリに導入した。その後、電極11を作用極(正極)、電極12を対極(負極)として用い、2.1V、2.15V、2.2Vの電圧を両電極(温度電極)間に印加し、そのときの応答電流を測定した。
【0103】
図13〜図17は、温度条件および印加電圧条件毎の応答電流を示すグラフである。また、各グラフにおける温度条件と、印加電圧条件は、以下のとおりである。
(温度条件)
図13(a)、(b)、(c):4℃
図14(a)、(b)、(c):13℃
図15(a)、(b)、(c):21℃
図16(a)、(b)、(c):30℃
図17(a)、(b)、(c):38℃
(印加電圧条件)
図13(a)、図14(a)、図15(a)、図16(a)、図17(a):2100mV
図13(b)、図14(b)、図15(b)、図16(b)、図17(b):2150mV
図13(c)、図14(c)、図15(c)、図16(c)、図17(c):2200mV
ここで、応答電流が小さい4℃および13℃の低温条件では、いずれの印加電圧条件においても同様に、Hct値に依存しない応答電流を示した。
【0104】
一方、応答電流が大きい30℃および38℃の高温条件では、応答電流においてはHct値によって変化しやすくなる傾向が見られた。特に、印加電圧2.1V条件では4秒以下、印加電圧2.2V条件では3秒以上の領域において、印加電圧2.15V条件と比較して顕著な差が見られた。
このように、温度条件が異なる場合においても応答電流がHct値に依存しないようにするためには、高温領域の応答電流を目安として、最適な印加電圧条件を決めることが重要となる。実施例7において上記のように決定した最適印加電圧は、2.15Vとなる。このとき、以下の表2に示すように、Hct値45%、温度21℃の血液試料を導入したときの3秒後の電流値は、1.93μAであった。
【0105】
【表2】

【0106】
(実施例8)
センサチップの電極11の部分31の面積が0.20mm2、電極12の部分32の面積が0.40mm2となるように、電極を形成した。他のセンサチップの構成は、実施例1と同様にした。実施例7で示したように、高温領域での応答電流を目安にして決定した実施例8の最適印加電圧は2.1Vであった。このとき、上記表2に示すように、Hct値45%、温度21℃の血液試料を導入したときの3秒後の電流値は1.69μAであった。
【0107】
(実施例9)
センサチップの電極11の部分31の面積を0.30mm2、電極12の部分32の面積を0.30mm2となるように電極を形成した。他のセンサチップの構成は、実施例1と同様にした。
実施例7で示したように、高温領域での応答電流を目安にして、最適印加電圧を決定した。実施例9の最適印加電圧は2.05Vであった。このとき、上記表2に示すように、Hct値45%、温度21℃の血液試料を導入したときの3秒後の電流値は、1.48μAであった。実施例7、8および9の結果より、電極面積が異なると最適印加電圧も異なり、応答電流の大きさも変わることがわかった。また、作用極の面積と対極の面積との和が同じ条件では、対極の面積が広い方がより大きい応答電流が得られることがわかった。
【0108】
(実施例10)
図2および図3の構成を有するセンサチップを作製した。キャピラリを、幅1.2mm、長さ(奥行き)4.0mm、高さ0.15mmになるように設計した。絶縁基板として、ポリエチレンテレフタレートを用い、絶縁基板にパラジウムを蒸着させた。その後、電極11の部分31の面積が0.30mm2、電極12の部分32の面積が0.48mm2となるように、パラジウム層にレーザーでスリットを入れることで、各電極を形成した。
【0109】
反応試薬層を、次のようにして形成した。グルコースデヒドロゲナーゼ、フェリシアン化カリウム(関東化学社製)、タウリン(ナカライテスク社製)を含む水溶液を作製した。グルコースデヒドロゲナーゼの濃度を、2.0U/センサの濃度になるように調整した。この水溶液に、さらにフェリシアン化カリウム量を1.7質量%、タウリン量を1.0質量%の濃度で溶解させることによって、試薬液を得た。この試薬液をポリエチレンテレフタレート基板上に塗布した後、湿度45%、温度21℃の雰囲気下で乾燥させた。
【0110】
血液試料のHct値は、25%、45%、65%であり、グルコース濃度は、40mg/dl、80mg/dl、200mg/dl、400mg/dl、600mg/dlであった。血液試料の温度は、4℃、13℃、22℃、30℃、39℃であった。
各電極間の印加電圧と印加時間とは、以下のように設定された。血液試料導入直後から3秒後まで、電極11(正極)と電極12(負極)との両電極(温度電極)間に、2.075Vが印加された。3秒後から5秒後まで、電極13(正極)と電極14(負極)との両電極(分析電極)間に、0.25Vが印加された。血液試料導入から5秒間で、測定が終了した。
【0111】
温度電極間の3秒後の応答電流値を表3および図18のグラフに示す。3秒後の応答電流値は、Hct値に依存せず、かつ、温度に依存した。温度に対する換算テーブルとして、図18に示すテーブルを用いることで、3秒後の応答電流値を血液試料の温度に換算することが可能となる。また、異なるグルコース濃度においては、3秒後の応答電流値に差は見られなかった。分析電極間の5秒後の応答電流値を、以下の表4に示す。5秒後の応答電流値は、各温度においてグルコース濃度の増加に伴い増加し、また、各グルコース濃度においても温度の上昇に伴い増加した。温度が既知であれば、グルコース濃度に対する換算テーブルとして、以下の表4に示すテーブルを用いることで、5秒後の応答電流値を血液試料のグルコース濃度に換算することが可能となる。
【0112】
【表3】

【0113】
【表4】

【0114】
(実施例11)
図9および図10の構成を有する4種類のセンサチップを準備した。これらの第1〜第4種類のセンサチップにおいて、図19の電極間距離は、それぞれ、100μm、300μm、500μm、700μmであった。
25%、45%、および65%のHct値と、11℃、21℃、および30℃の温度と、を組み合わせることで、9種類の血液試料を準備した。
【0115】
次に、上述したそれぞれのセンサチップにおけるキャピラリに、上述したそれぞれの血液試料を導入した後、両電極(温度電極)間に2.2Vの電圧を印加し、それぞれの場合における応答電流を測定した。
このようにして測定された結果を、図20(a)〜(d)、図21(a)〜(d)、図22(a)〜(d)のグラフに示す。図20(a)〜(d)は、血液試料が11℃における電極間距離別、ヘマトクリット別の応答電流値、図21(a)〜(d)は、血液試料が21℃における電極間距離別、ヘマトクリット別の応答電流値、図22(a)〜(d)は、血液試料が30℃における電極間距離別、ヘマトクリット別の応答電流値を示している。
【0116】
上記グラフによれば、電極間距離が変化しても、応答電流値に有意差が見られなかった。実施例11の結果により、応答電流は、電極間距離の影響をほとんど受けないことが分かった。
(実施例12)
電極形状が異なる2種類のセンサチップを準備した。
【0117】
第1種類のセンサチップは、図9,図10,および図23(a)の構成を有した。第1種類のセンサチップにおいて、電極11部分(作用極)31の面積は0.24mm2、電極12部分(対極)32の面積は0.96mm2、電極間距離は300μmであった。
第2種類のセンサチップは、図23(b)の構成を有した。第2種類のセンサチップにおいて、図23(b)における電極11部分(作用極)31の面積は0.24mm2、電極12部分(対極)32は2箇所に別れる形状であった。部分32の2つの部分の面積は、それぞれ0.48mm2であり、部分32の電極12部分としての合計値は0.96mm2であった。第2種類のセンサチップにおいて、電極間距離は300μmであった。
【0118】
25%、45%、および65%のHct値と、11℃、21℃、および30℃の温度とを組み合わせることで、9種類の血液試料を準備した。
次に、上述したそれぞれのセンサチップにおけるキャピラリに、上述したそれぞれの血液試料を導入した後、両電極(温度電極)間に2.2Vの電圧を印加し、それぞれの場合における応答電流を測定した。
【0119】
このようにして測定された結果を、図24(a)、(b)、図25(a)、(b)、図26(a)、(b)のグラフに示す。図24(a)、(b)は、血液試料が11℃における電極形状別、ヘマトクリット別の応答電流値、図25(a)、(b)は、血液試料が21℃における電極形状別、ヘマトクリット別の応答電流値、図26(a)、(b)は、血液試料が30℃における電極形状別、ヘマトクリット別の応答電流値を示している。
【0120】
上記グラフによれば、電極形状が変化しても、応答電流値に有意差が見られない結果となった。実施例12の結果により、応答電流は、電極形状の影響をほとんど受けないことが分かった。
(実施例13)
対極12のリード幅の異なる4種類のセンサチップを準備した。各種類のセンサチップは、図2、図3、及び図27(a)に示される構成を有した。各種類のセンサチップにおいて、電極11部分(作用極)31の面積は0.30mm2、電極12部分(対極)32の面積が0.30mm2、電極間距離は100μmであった。第1〜第4種類のセンサチップにおいて、図27(b)に示す対極12のリード幅は、それぞれ、0.5mm、1.0mm、1.5mm、2.0mmであった。
【0121】
3種類の血液試料を準備した。第1〜第3種類の血液試料のHct値は、それぞれ、25%、45%、および65%であった。各種類の血液試料の温度は、23℃(室温)であった。
次に、上述したそれぞれのセンサチップのキャピラリに、上述したそれぞれの血液試料を導入した後、両電極(温度電極)間に2.05Vの電圧を印加し、それぞれの場合における応答電流を測定した。
【0122】
このようにして測定された結果を、図28(a)〜(d)のグラフに示す。
上記グラフによれば、ヘマトクリットが異なっても、応答電流には変化がほとんど見られなかった。また、リード幅が変化しても応答電流値に有意差が見られない結果となった。実施例13の結果により、応答電流は、リード幅(抵抗)の影響をほとんど受けないことが分かった。
【0123】
(実施例14)
2種類のセンサチップを準備した。第1および第2種類のセンサチップは、図9および図10に示される構成を有した。第1および第2種類のセンサチップにおいて、電極11部分(作用極)31の面積は0.12mm2、電極12部分(対極)32の面積は0.48mm2、電極間距離は300μmであった。第1種類および第2種類のセンサチップにおいて、図29に示すスペーサー202の厚さ(キャピラリ高さ)は、それぞれ、0.15mmおよび0.09mmであった。
【0124】
25%、45%、および65%の3通りのHct値と、11℃、21℃、および30℃の3通りの温度とを組み合わせることで、9種類の血液試料を準備した。
次に、上述したそれぞれのセンサチップにおけるキャピラリに、上述したそれぞれの血液試料を導入した後、両電極(温度電極)間に2.2Vの電圧を印加し、それぞれの場合における応答電流を測定した。
【0125】
このようにして測定された結果を、図30(a)、図30(b)、図31(a)、図31(b)、図32(a)、および図32(b)のグラフに示す。図30(a)および(b)は、血液試料が11℃におけるキャピラリ高さ別およびヘマトクリット別の応答電流値を、図31(a)および(b)は、血液試料が21℃におけるキャピラリ高さ別およびヘマトクリット別の応答電流値を、図32(a)および(b)は、血液試料が30℃におけるキャピラリ高さ別およびヘマトクリット別の応答電流値を、それぞれ示している。
【0126】
上記グラフによれば、キャピラリ高さが変化しても、応答電流値に有意差が見られなかった。実施例14の結果により、応答電流は、キャピラリ高さの影響をほとんど受けないことが分かった。
(実施例15)
2種類のセンサチップを準備した。各種類のセンサチップは、図9および図10の構造を有した。各種類のセンサチップにおいて、電極11部分(作用極)31の面積が0.12mm2、電極12部分(対極)32の面積が0.48mm2、電極間距離が100μmであった。第1種類及び第2種類のセンサチップにおいて、パラジウム蒸着基板の表面抵抗率は、それぞれ115Ω/□および60Ω/□であった。
【0127】
25%、45%、65%の3種類のHct値と、4℃、13℃、21℃、30℃、38℃の温度とを組み合わせることで、15種類の血液試料を準備した。
次に、上述したそれぞれのセンサチップにおけるキャピラリに、上述したそれぞれの血液試料を導入した後、両電極(温度電極)間に2.15Vの電圧を印加し、それぞれの場合における応答電流を測定した。
【0128】
このようにして測定された結果を、図33〜図37(a)および(b)のグラフに示す。図33(a)および(b)は、血液試料が4℃におけるパラジウム抵抗別の応答電流値を、図34(a)および(b)は、血液試料が13℃におけるパラジウム抵抗別の応答電流値を、図35(a)および(b)は、血液試料が21℃におけるパラジウム抵抗別の応答電流値を、図36(a)および(b)は、血液試料が30℃におけるパラジウム抵抗別の応答電流値を、図37(a)および(b)は、血液試料が38℃におけるパラジウム抵抗別の応答電流値を、それぞれ示している。
【0129】
上記グラフによれば、パラジウム抵抗が変化しても、応答電流値に有意差が見られなかった。実施例15の結果により、応答電流は、基板抵抗の影響をほとんど受けないことが分かった。なお、基板に、白金、金、銀、チタン、銅、ニッケルおよび炭素といった、公知の導電性材料が適用されても、同様の結果が得られることは、説明するまでもない。
(実施例16)
図9および図10の構成を有するセンサチップを準備した。センサチップにおいて、電極11部分(作用極)31の面積は0.12mm2、電極12部分(対極)32の面積は0.48mm2、電極間距離は100μmであった。
【0130】
Hct値が45%、温度が24℃の血液に、グルコース濃縮液を添加することで3種類の血液試料を準備した。第1〜第3種類の血液試料のグルコース濃度は、それぞれ、0mg/dL、205mg/dL、640mg/dLであった。
次に、上述したそれぞれのセンサチップにおけるキャピラリに、上述した血液試料を導入した。その後、両電極(温度電極)間に2.15Vの電圧を印加し、それぞれの場合における応答電流を測定した。
【0131】
このようにして測定された結果を、図38のグラフに示す。図38は、血液試料が24℃におけるグルコース濃度別の応答電流値を示している。
上記グラフによれば、グルコース濃度が変化しても、応答電流値に有意差が見られなかった。実施例16の結果により、応答電流は、グルコース濃度の影響をほとんど受けないことが分かった。この結果、血糖値センサ(グルコースセンサ)に本発明を適用した場合であっても、グルコース濃度によって測定精度が左右されることがないので、問題なく使用できることが分かった。
【0132】
(実施例17)
図9、図10に示すような電極11部分(作用極)31の面積が0.12mm2、電極12部分(対極)32の面積が0.48mm2、電極間距離が100μmとなるように形成されたセンサチップを準備する。
Hct値が45%、温度が24℃の血液にアスコルビン酸濃縮液を添加することで、アスコルビン酸濃度の異なる3種類の血液試料を準備した。第1〜第3の血液試料のグルコース濃度は、それぞれ、0mg/dL、10mg/dL、20mg/dLであった。
【0133】
次に、上述したそれぞれのセンサチップにおけるキャピラリに、上述した血液試料を導入した。その後、両電極(温度電極)間に2.15Vの電圧を印加し、それぞれの場合における応答電流を測定した。
このようにして測定された結果を、図39のグラフに示す。図39は、血液試料が24℃におけるアスコルビン酸濃度別の応答電流値を示している。
【0134】
上記グラフによれば、アスコルビン酸濃度が変化しても、応答電流値に有意差が見られなかった。実施例17の結果により、応答電流は、アスコルビン酸濃度の影響をほとんど受けないことが分かった。つまり、本実施例において、血液中の還元物質であるアスコルビン酸の濃度によって、血糖値の測定精度は左右されなかった。よって、本実施例のセンサチップは、血糖値センサとして問題なく使用できることが分かった。
【0135】
(実施例18)
図9および図10の構成を有するセンサチップを準備した。センサチップにおいて、電極11部分(作用極)31の面積は0.12mm2、電極12部分(対極)32の面積は0.48mm2、電極間距離は100μmであった。
温度の異なる2種類の血液試料を準備した。第1種類の血液試料において、Hct値は45%、温度は4℃であった。第2種類の血液試料において、Hct値は45%、温度は42℃であった。
【0136】
上述したそれぞれのセンサチップにおけるキャピラリに、上述した血液試料を24℃の環境下に移してから1分後に導入した。その後、両電極(温度電極)間に2.15Vの電圧を印加し、それぞれの場合における応答電流を測定した。
このようにして測定された結果を、図40のグラフに示す。ここで、図40における点線は、24℃の環境下において24℃の血液を導入した場合(以後、“通常導入”として示す)の応答電流を示している。図40における実線は、上記4℃の血液試料を24℃の環境下に移してから1分後に導入した場合(以後、“4℃導入”として示す)の応答電流を示している。図40における破線は、上記42℃の血液試料を24℃の環境下に移してから1分後に導入した場合(以後、“42℃導入”として示す)の応答電流を示している。
【0137】
上記グラフによれば、測定時間が早い時間帯においては、4℃導入が示す温度は、通常導入が示す温度に比べて低く、42℃導入が示す温度は、通常導入が示す温度に比べて高かった。そして、測定時間の経過に伴い、4℃導入と42℃導入との温度差が無くなった。このように、測定時間の時間経過に伴い温度差が無くなることは、4℃または42℃の血液試料が24℃の環境下に持ち込まれたことで、両者とも、時間の経過に伴って、センサチップの温度である24℃に移行したからである、と考えられる。
【0138】
本実施例18によれば、血液試料の温度に対する経時的変化を計測することが可能であることが分かる。
また、センサチップは、血液試料に接触するように配置され、血液試料の温度を測定する温度電極を備えている。よって、このセンサチップを用いると、経時的変化が考慮された血液試料の温度を得ることができ、これを用いてグルコース濃度等を補正することができる。すなわち、各種補正の精度を向上させることが可能となる。
【0139】
(実施例19)
図9および図10の構成を有するセンサチップを準備した。このセンサチップにおいて、電極11部分(作用極)31の面積は0.12mm2、電極12部分(対極)32の面積は0.48mm2、電極間距離は100μmであった。
また、血液試料を準備した。この血液試料において、Hct値は45%であった。
【0140】
図41に示すように、センサチップに、予め約3μLの血液を滴下した。このとき、血液は、カバー203の上部に滴下された。血液をこのように滴下することを、以下、“上回り”と示す。
他のセンサチップに、予め約10μLの血液を滴下した。このとき、血液は、絶縁基板201の下部に滴下された。血液をこのように滴下することを、以下、“下回り”と示す。
【0141】
それぞれのセンサチップのキャピラリ204に、上述した血液試料を24℃の環境下で導入した。その後、両電極(温度電極)間に2.15Vの電圧を印加し、それぞれの場合における応答電流を測定した。
このようにして測定された結果を、図42のグラフに示す。ここで、図42における破線は、24℃の環境下において、予め上回りに血液を滴下しておいた場合、図42における実線は、24℃の環境下において、予め下回りに血液を滴下しておいた場合、図42における点線は、24℃の環境下において、上回りにも下回りにも血液を滴下していない場合(以下、通常導入と示す)の応答電流を示している。
【0142】
上記グラフによれば、通常導入時に比べて、上回りおよび下回りにおける応答電流値が低かった。これは、キャピラリ204の範囲外に過剰に付着した上回り、下回りの血液が気化熱によってキャピラリ204内の血液試料の温度を下げることが原因であると考えられる。
本実施例19によれば、図42に示すような気化熱の影響を正確に把握することが可能となる。
【0143】
また、センサチップは、血液試料に接触するように配置され、血液試料の温度を測定する温度電極を備えている。よって、気化熱の影響を考慮した血液試料の温度を得ることができ、これを用いてグルコース濃度等を補正することができる。このため、各種補正の精度を向上させることが可能となる。
(実施例20)
図9、図10に示すような電極11部分(作用極)31の面積が0.12mm2、電極12部分(対極)32の面積が0.48mm2、電極間距離が100μmとなるように形成されたセンサチップを準備する。また、Hct値が45%に設定された血液を準備する。
【0144】
次に、上記センサチップの先端部を5秒間指先につまんで測定器に装着した直後、上記センサチップの先端部を指先につままないように測定器に装着した直後、のそれぞれにおいて上述した血液試料を24℃の環境下で導入した後、両電極(温度電極)間に2.15Vの電圧を印加し、それぞれの場合における応答電流を測定した。
このようにして測定された結果を、図43のグラフに示す。ここで、図43における実線は、24℃の環境下において、指でセンサチップの先端部を5秒間つまんだ場合、図43における点線は、24℃の環境下において、指でセンサチップの先端部を5秒間つままなかった場合(以下、通常導入と示す)の応答電流を示している。
【0145】
上記グラフによれば、指でセンサチップの先端部を5秒間つまんだ場合、通常導入時に比べて応答電流値が高くなる結果となった。これは、センサ先端部を指でつまんだ場合、指先の温度がセンサ先端部を介して血液試料に伝わったためと考えられる。
本実施例20によれば、図43に示すような指先温度による誤差を把握することが可能となる。
【0146】
また、本発明のセンサチップは、血液試料に接触するように配置され、血液試料の温度を測定する温度電極を備えているので、指先温度の影響を考慮した血液試料の温度を得ることができ、これを用いてグルコース濃度等を補正することができる。このため、各種補正の精度を向上させることが可能となる。
(実施例21)
図2および図3に示すような電極11部分(作用極)31の面積が0.30mm2、電極12部分(対極)32の面積が0.48mm2、電極間距離が100μmとなるように形成された、実施例10に記載のセンサチップを準備する。また、グルコース濃度が209mg/dL、Hct値が25、45%、65%、温度が22℃に設定されたそれぞれの血液を準備する。
【0147】
次に、上述したそれぞれのセンサチップにおけるキャピラリに血液試料を導入した後、図44に示されるような順番で、所定の電極間に、所定の電圧を印加した。すなわち、0秒から3.0秒にかけて電極11と電極12との間(図44に示す電極11−12間)に2075mVの電圧を印加し、3.0秒から5.0秒にかけて電極13と電極14との間(図44に示す電極13−14間)に250mVの電圧を付加し、5.1秒から5.5秒にかけて電極11と電極13との間(図44に示す電極11−13間)に2500mVの電圧を印加した。そして、このときの応答電流を測定した。
【0148】
このようにして測定された結果を、図45(a)、図45(b)のグラフに示す。上記グラフによれば、測定の対象としたグルコース、Hct(ヘマトクリット)については、ヘマトクリットの値に応じた応答電流値が得ることができる。また、図46(a)に示すように、温度についても、図46(b)に示すような所定の温度に対する応答電流値が得ることができる。
【0149】
実施例21によれば、グルコース、温度、Hctのそれぞれの項目について順番に計測することが可能であることが分かった。
また、グルコース、温度、Hctの計測の順番は、上記に示した場合だけでなく、任意に並べ変えることも可能である。例えば、温度、Hct、グルコース等の順番であってもよい。
【0150】
さらに、図47に示すように、グルコース、温度、Hct、還元物質の項目について測定してもよい。すなわち、図47に示すように、0秒から3.0秒にかけて電極11と電極12との間(図47に示す電極11−12間)に、3秒から4.95秒にかけて電極12と電極14との間(図47に示す電極12−14間)に、これとほぼ同時(3秒から5.0秒)に電極13と電極14との間(図47に示す電極13−14間)に、そして、5.1秒から5.5秒にかけて電極11と電極13との間(図47に示す電極11−13間)に電圧を印加してもよい。この場合であっても、それぞれの条件に対応した応答電流を得ることができる。
【0151】
なお、2つ以上の項目を同時に計測する場合には、作用極と対極との組み合わせが互いに混同しないように注意する必要がある。例えば、グルコースと温度とを同時に測定するにあたって、グルコースの測定を電極13と電極14(図47に示す電極13−14間)、温度の測定を電極11と電極12(図47に示す電極11−12間)の応答電流を計測することを想定していたとする。このとき、グルコースの応答電流が電極13−12間、温度の応答電流が電極11−14間に流れてしまうような場合には、意図していた応答電流を得ることができない。このため、2つ以上の項目を同時に計測する場合には、上記のような混同が発生しないように、印加する電極の適切な組み合わせ、および、適切な印加電圧、印加時間を選択することが重要である。
【0152】
(変形例1)
上記他の実施形態においては、図6(a)に示すように、ステップS4における血液試料中の分析濃度を決定するステップ(濃度決定ステップ)が、ステップS101〜ステップS106を含んでいる例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0153】
例えば、濃度決定ステップS4は、図48(a)に示すように、データaに基づいて、データbを補正するステップS141を含んでいてもよい。このとき、バイオセンサシステム100における演算部(濃度決定部)306(図4参照)は、図50(a)に示すように、データaに基づいて、データbを補正する第1の分析物補正部321を含んでいる。
【0154】
また、濃度決定ステップS4は、図48(b)に示すように、データbに基づいて、血液試料の分析物の濃度xを算出するステップS241と、データaに基づいて、濃度xを補正するステップS242とを含んでいてもよい。このとき、バイオセンサシステム100における演算部(濃度決定部)306(図4参照)は、図50(b)に示すように、データbに基づいて、血液試料の分析物の濃度xを算出する濃度算出部331と、データaに基づいて、濃度xを補正する第2の分析物補正部332とを含んでいてもよい。
【0155】
また、濃度決定ステップS4は、図49(a)に示すように、データaに基づいて、血液試料の温度tを算出するステップS341と、温度tに基づいて、データbを補正するステップS342とを含んでいてもよい。このとき、バイオセンサシステム100における演算部(濃度決定部)306(図4参照)は、図51(a)に示すように、データaに基づいて、血液試料の温度tを算出する温度算出部341と、温度tに基づいて、データbを補正する第3の分析物補正部342とを含んでいる。
【0156】
また、濃度決定ステップS4は、図49(b)に示すように、データaに基づいて、血液試料の温度tを算出するステップS441と、データbに基づいて、血液試料の分析物の濃度xを算出するステップS442と、温度tに基づいて、濃度xを補正するステップS443とを含んでいてもよい。このとき、バイオセンサシステム100における演算部(濃度決定部)306(図4参照)は、図51(b)に示すように、データaに基づいて、血液試料の温度tを算出する温度算出部351と、データbに基づいて、血液試料の分析物の濃度xを算出する濃度算出部352と、温度tに基づいて、濃度xを補正する第4の分析物補正部353とを含んでいる。
【0157】
(変形例2)
上記実施形態における制御回路300は、図52に示すように、シーケンス制御部501と、電極選択部502とをさらに備えていてもよい。
シーケンス制御部501は、温度、グルコース、ヘマトクリット、還元物質を測定する際に、少なくとも2つの項目を同時に測定するように制御回路300を制御してもよい。また、シーケンス制御部501は、温度、グルコース、ヘマトクリット、還元物質を測定する際に、それぞれ独立して行うように制御回路300を制御してもよい。この際、それぞれの項目を測定する順番は任意に設定することができる。また、シーケンス制御部501は、温度、グルコース、ヘマトクリット、還元物質を測定する際に、温度、グルコース濃度および還元物質、ヘマトクリットの順番で行うように制御回路300を制御してもよい。
【0158】
電極選択部502は、温度、グルコース、ヘマトクリット、還元物質を測定する際に、独立した電極を介して行うように制御回路300を制御してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明は、血液試料中の分析濃度の測定において、当該測定を実施する温度に起因した測定誤差の発生を抑制するものとして、測定の高精度化が要求される各分野において多大な利用価値を有する。
【符号の説明】
【0160】
11、12、13、14、15 電極(電圧印加部)
16 排気口
17 血液試料導入口
20 反応試薬層
31 キャピラリに面する電極11の一部分
32 キャピラリに面する電極12の一部分
33 キャピラリに面する電極13の一部分
34 キャピラリに面する電極14の一部分
35 キャピラリに面する電極15の一部分
40 キャピラリ
41 測定部A(温度測定部)
42 測定部B(分析物測定部)
100 バイオセンサシステム
101 測定器
102 装着口
103 表示部
200 センサチップ
201 絶縁基板
202 スペーサー
203 カバー
204 切欠部
210 センサチップ
300 制御回路
301a、301b、301c、301d、301e コネクタ
302 切換回路
303 電流/電圧変換回路
304 アナログ/デジタル(A/D)変換回路
305 基準電圧源
306 演算部(濃度決定部)
307 温度測定部
308 演算部
309 濃度算出部
310 温度算出部
311 濃度算出部
312 環境温度測定部
313 比較部
314 補正部
315 環境温度測定部
321 第1の分析物補正部
331 濃度算出部
332 第2の分析物補正部
341 温度算出部
342 第3の分析物補正部
351 温度算出部
352 濃度算出部
353 第4の分析物補正部
400 表示部
501 シーケンス制御部
502 電極選択部
S ステップ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液試料中の分析物の濃度を測定するセンサチップであって、
絶縁基板と、
スペーサと、
カバーと、
前記血液試料に接触するように配置され、前記血液試料の温度を測定するために少なくとも作用極と対極とを有し、直流電圧が印加される温度電極と、
前記血液試料の分析物の濃度に関する項目を測定するために少なくとも作用極と対極とを備える分析電極である濃度測定部と、
前記生体試料を前記温度電極および前記濃度測定部まで導入するキャピラリと、
を備え、
前記キャピラリは、前記絶縁基板と、その絶縁基板の上側に配置される前記スペーサの切欠部と、そのスペーサの上側に配置される前記カバーとによって形成され、
前記温度電極と前記濃度測定部とは、前記絶縁基板上にそれぞれ独立して配置されている、
センサチップ。
【請求項2】
試料導入口と、
前記試料導入口から前記温度電極及び分析電極まで血液試料を導入するキャピラリと、
をさらに備え、
前記温度電極は、前記分析電極よりも前記試料導入口に近い位置に配置されている、
請求項1に記載のセンサチップ。
【請求項3】
前記濃度測定部は、酸化還元酵素および電子メディエータをさらに備え、
前記温度電極は、前記酸化還元酵素および電子メディエータの少なくとも1つと接しないように配置されている、
請求項1または2に記載のセンサチップ。
【請求項4】
前記濃度測定部は、酸化還元反応を起こす反応試薬をさらに備え、
前記温度電極は、前記反応試薬と接しないように配置されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載のセンサチップ。
【請求項5】
前記濃度測定部は、試薬をさらに備え、
前記温度電極は、如何なる試薬とも接しないように配置されている、
請求項1から4のいずれか1項に記載のセンサチップ。
【請求項6】
前記分析物の濃度に関する項目には、少なくともヘマトクリットが含まれている、
請求項1から5のいずれか1項に記載のセンサチップ。
【請求項7】
前記分析物の濃度に関する項目には、少なくとも還元物質の量または濃度が含まれている、
請求項1から6のいずれか1項に記載のセンサチップ。
【請求項8】
一対の温度電極と、一対の分析電極を有する濃度測定部と、キャピラリと、を備えたセンサチップで使用される血液試料の濃度を測定する方法であって、
前記キャピラリにより、前記生体試料を前記一対の温度電極及び前記濃度測定部まで導入する導入ステップと、
前記血液試料に接触させた前記一対の温度電極に電圧を印加する第1の印加ステップと、
前記第1の印加ステップにおいて、電圧を印加することによって前記血液試料中に流れる電流の大きさに基づいて、前記血液試料の温度に関連するデータaを取得するステップと、
前記血液試料に接触させた前記濃度測定部に電圧を印加する第2の印加ステップと、
前記第2の印加ステップにおいて、前記血液試料中の分析物を基質とする酸化還元酵素が関与する反応によって前記血液試料中に流れる電流の大きさに基づいて、前記分析物の濃度に関連するデータbを取得するステップと、
前記データaおよび前記データbに基づいて、血液試料中の分析物濃度を決定する濃度測定ステップと、
を備えている、血液試料中の分析物の濃度測定方法。
【請求項9】
前記濃度測定ステップは、前記データaに基づいて前記データbを補正するステップを含んでいる、
請求項8に記載の血液試料中の分析物の濃度測定方法。
【請求項10】
前記濃度測定ステップは、
前記データbに基づいて、前記血液試料の前記分析物の濃度xを算出するステップと、
前記データaに基づいて、前記濃度xを補正するステップと、
を含んでいる、
請求項8に記載の血液試料中の分析物の濃度測定方法。
【請求項11】
前記濃度測定ステップは、
前記データaに基づいて、前記血液試料の温度tを算出するステップと、
前記温度tに基づいて、データbを補正するステップと、
を含んでいる、
請求項8に記載の血液試料中の分析物の濃度測定方法。
【請求項12】
前記濃度測定ステップは、
前記データaに基づいて、前記血液試料の温度tを算出するステップと、
前記データbに基づいて、前記血液試料の前記分析物の濃度xを算出するステップと、
前記温度tに基づいて、前記濃度xを補正するステップと、
を含んでいる、
請求項8に記載の血液試料中の分析物の濃度測定方法。
【請求項13】
前記データaを取得するステップは、前記データbを取得するステップよりも先に行う、
請求項8から12のいずれか1項に記載の血液試料中の分析物の濃度測定方法。
【請求項14】
前記第1の印加ステップおよび第2の印加ステップは、同時に印加される、
請求項8に記載の血液試料中の分析物の濃度測定方法。
【請求項15】
前記第1の印加ステップおよび第2の印加ステップは、別々に印加される、
請求項8に記載の血液試料中の分析物の濃度測定方法。
【請求項16】
前記濃度測定ステップは、
前記データb取得後に、前記血液試料に接触させた前記一対の電極に前記所定の電圧を印加することによって前記血液試料中に流れる電流の大きさに基づいて、前記血液試料の温度に関連するデータcを取得するステップと、
前記データaと前記データcとを演算することによって前記血液試料の温度に関連するデータdを求めるステップと、
前記データdに基づいて、前記データbを補正するステップと、
を含んでいる、
請求項8に記載の血液試料中の分析物の濃度測定方法。
【請求項17】
前記濃度測定ステップは、
前記データaに基づいて、前記血液試料の温度tを算出するステップと、
前記データbに基づいて、前記血液試料の前記分析物の濃度xを算出するステップと、
前記血液試料の周囲の環境温度t1を測定するステップと、
前記温度tと前記環境温度t1との差分を温度閾値Zと比較するステップと、
|t−t1|≧Zを満たす場合、前記温度tに基づいて前記濃度xを補正し、|t−t1|<Zを満たす場合、前記温度t1に基づいて前記濃度xを補正するステップと、
を含んでいる、
請求項8に記載の血液試料中の分析物の濃度測定方法。
【請求項18】
前記血液試料の温度に関連するデータaには温度が含まれており、
前記分析物の濃度に関連するデータbにはグルコース濃度が含まれている、
請求項8から17のいずれか1項に記載の血液試料中の分析物の濃度測定方法。
【請求項19】
前記分析物の濃度に関連するデータbにはヘマトクリットが含まれている、
請求項18に記載の血液試料中の分析物の濃度測定方法。
【請求項20】
前記分析物の濃度に関連するデータbには還元物質量または濃度が含まれている、
請求項18または19に記載の血液試料中の分析物の濃度測定方法。
【請求項21】
前記データaおよび前記データbに含まれるデータのうち、少なくとも2つの項目を同時に測定する、
請求項18から20のいずれか1項に記載の血液試料中の分析物の濃度測定方法。
【請求項22】
前記データaおよび前記データbに含まれるデータの測定は、それぞれ独立して行われる、
請求項18から20のいずれか1項に記載の血液試料中の分析物の濃度測定方法。
【請求項23】
前記データaおよび前記データbに含まれるデータの測定は、前記温度、前記グルコース濃度および前記還元物質の量もしくは濃度、前記ヘマトクリットの順番で行われる、
請求項18から20のいずれか1項に記載の血液試料中の分析物の濃度測定方法。
【請求項24】
前記データaおよび前記データbに含まれるデータの測定は、独立した電極を介して行われる、
請求項18から23のいずれか1項に記載の血液試料中の分析物の濃度測定方法。
【請求項25】
温度電極を有する請求項1から7のいずれか1項に記載のセンサチップと、前記センサチップの前記温度電極に電圧を印加する制御回路を含む測定器とを有する、血液試料中の分析物の濃度を測定するバイオセンサシステムであって、
前記制御回路に従って前記温度電極および/または前記分析電極に電圧を印加する電圧印加部と、
前記血液試料に接触させた前記温度電極に流れる電流の大きさに基づいて、前記血液試料の温度に関連するデータaを取得する温度測定部と、
前記血液試料中の分析物を基質とする酸化還元酵素が関与する反応によって前記血液試料中に流れる電流の大きさに基づいて、前記分析物の濃度に関連するデータbを取得する分析物測定部と、
前記データaおよび前記データbに基づいて、血液試料中の分析物濃度を決定する濃度決定部と、
を備えている、バイオセンサシステム。
【請求項26】
前記濃度決定部は、前記データaに基づいて、前記データbを補正する第1の分析物補正部を含んでいる、
請求項25に記載のバイオセンサシステム。
【請求項27】
前記濃度決定部は、
前記データbに基づいて、前記血液試料の前記分析物の濃度xを算出する算出部と、
前記データaに基づいて、前記濃度xを補正する第2の分析物補正部と、
を含んでいる、
請求項25に記載のバイオセンサシステム。
【請求項28】
前記濃度決定部は、
前記データaに基づいて、前記血液試料の温度tを算出する算出部と、
前記温度tに基づいて、前記データbを補正する第3の分析物補正部と、
を含んでいる、
請求項25に記載のバイオセンサシステム。
【請求項29】
前記濃度決定部は、
前記データaに基づいて、前記血液試料の温度tを算出する算出部と、
前記データbに基づいて、前記血液試料の前記分析物の濃度xを算出する算出部と、
前記温度tに基づいて、前記濃度xを補正する第4の分析物補正部と、
を含んでいる、
請求項25に記載のバイオセンサシステム。
【請求項30】
前記温度測定部により試料の温度に関連する前記データa取得後に、前記分析物測定部により前記分析物の濃度に関連するデータbを取得する、
請求項25から29のいずれか1項に記載のバイオセンサシステム。
【請求項31】
前記濃度決定部は、
前記データb取得後に、前記血液試料に接触させた前記温度電極に流れる電流の大きさに基づいて、前記血液試料の温度に関連するデータcを取得する温度測定部と、
前記データaと前記データcとを演算し、前記血液試料の温度に関連するデータdを求める演算部と、
前記データdに基づいて、前記血液試料の温度に応じて補正された前記分析物の濃度xを算出する算出部と、
を含んでいる、
請求項25に記載のバイオセンサシステム。
【請求項32】
前記濃度決定部は、
前記データaに基づいて、前記血液試料の温度tを算出する温度算出部と、
前記データbに基づいて、前記血液試料の前記分析物の濃度xを算出する濃度算出部と、
前記血液試料の周囲の環境温度t1を測定する環境温度測定部と、
前記温度tと前記環境温度t1との差分を温度閾値Zと比較する比較部と、
|t−t1|≧Zを満たす場合、前記温度tに基づいて前記濃度xを補正し、|t−t1|<Zを満たす場合、前記環境温度t1に基づいて前記濃度xを補正する補正部と、
を含んでいる、
請求項25に記載のバイオセンサシステム。
【請求項33】
前記血液試料の温度に関連するデータaには温度が含まれており、
前記分析物の濃度に関連するデータbにはグルコース濃度が含まれている、
請求項25から32のいずれか1項に記載のバイオセンサシステム。
【請求項34】
前記分析物の濃度に関連するデータbにはヘマトクリットが含まれている、
請求項33に記載のバイオセンサシステム。
【請求項35】
前記分析物の濃度に関連するデータbには還元物質の量または濃度が含まれている、
請求項33または34に記載のバイオセンサシステム。
【請求項36】
前記データaおよび前記データbに含まれるデータのうち、少なくとも2つの項目を同時に測定するように前記制御回路を制御するシーケンス制御部をさらに備えている、
請求項33から35のいずれか1項に記載のバイオセンサシステム。
【請求項37】
前記データaおよび前記データbに含まれるデータの測定をそれぞれ独立して行うように前記制御回路を制御するシーケンス制御部をさらに備えている、
請求項33から36のいずれか1項に記載のバイオセンサシステム。
【請求項38】
前記データaおよび前記データbに含まれるデータの測定は、前記温度、前記グルコース濃度および前記還元物質の量または濃度、前記ヘマトクリットの順番で行うように前記制御回路を制御するシーケンス制御部をさらに備えている、
請求項33から37のいずれか1項に記載のバイオセンサシステム。
【請求項39】
前記データaおよび前記データbに含まれるデータの測定は独立した電極を介して行うように前記制御回路を制御する電極選択部をさらに備えている、
請求項33から38のいずれか1項に記載のバイオセンサシステム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【公開番号】特開2013−29516(P2013−29516A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−202521(P2012−202521)
【出願日】平成24年9月14日(2012.9.14)
【分割の表示】特願2010−540389(P2010−540389)の分割
【原出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)