説明

センサデータ提供システム、方法及び装置

【課題】各アプリケーションが意識せずに抽象化したセンサデータを取得できるようにする。
【解決手段】本発明は、1又は複数センサが送出するセンサデータを用いてアプリケーションを行なうサーバに、各センサから受信したセンサデータを提供するセンサデータ提供システムにおいて、センサデータを記憶するセンサデータ記憶手段と、抽象化対象の属性及びセンサ値の抽象化変換方法を有する抽象化変換規則を格納する抽象化変換規則格納手段と、今回受信した受信センサデータの属性に対応する抽象化変換規則を検索し、この抽象化変換規則の属性に属する1又は複数のセンサデータを抽出し、1又は複数のセンサデータと今回の受信センサデータとを用いて抽出化変換方法により抽象化センサデータを生成する抽象化センサデータ生成手段とデータ提供手段とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサデータ提供システム、方法及び装置に関し、例えば、多種多様なセンサからセンサデータを収集し、コンテキストアウェア装置等にセンサデータを提供するシステム、方法及び装置に適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
近年、多種多様なセンサを利用したユビキタスなアプリケーションサービスが多種検討されている。
【0003】
例えば、ユビキタスサービスの1つとして、ターゲットとする人やモノの周囲の状況を判断し、適切な情報配信や、機器の自動制御を行なうことで、様々な利便性をもたらすコンテキストアウェアサービスがある。コンテキストアウェアサービスは、例えば、省エネ管理(例えば、機器等の消費電力値等の管理など)や、火災や空き巣等の居住管理(例えば、地域等の温度管理など)や、ユーザ個人の健康管理など幅広い分野での利用が期待されている。
【0004】
特許文献1には、コンテキストアウェアなサービスを提供する技術が記載されている。また、図10は、コンテキストアウェアなサービスを提供するシステムの従来の全体構成を示す。
【0005】
コンテキストアウェアなサービスを提供するには、例えば、サービスを契約したユーザが、特許文献1の図19に示すコンテキストアウェアポータルにサービス登録を行なう。各アプリケーション(例えばサーバ)は、サービス提供に必要な多数のセンサデータを周期的に収集し、これら多数のセンサデータを用いた解析処理を行い、特許文献1の図19に示すように、各アプリケーションがユーザに対してサービスを提供するという構成が必要となる。
【0006】
この種のサービスでは、収集すべきセンサデータ種別や処理内容などの設定が必要であるが、それらの情報は例えば各アプリケーション側に設定されている。そして、各アプリケーションの要求により、各センサノードからの生データである実センサデータが各アプリケーションに与えられる。つまり、各アプリケーションは、センサノードから生のデータである実センサデータを取得しており、この実センサデータを用いた解析処理を行なっている。また、提供するサービスによっては、複数のアプリケーションが同一のセンサデータを利用することもあり、この場合、複数のアプリケーションが同一のセンサノードから当該センサデータの収集を行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−287040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、図10に示すように、センサ(種別)とイベント定義との対応は1対1であり、既存センサに対して新規のセンサイベントを創出するということは考えられていない。
【0009】
例えば、市町村のような広いレベルで、何らかのセンサ値の平均をとるという統計データのイベントを扱う場合に、各アプリケーションが、市町村などの広い範囲に散在する全センサを把握していることが必要であった。また例えば、センサノードを新規に追加した場合には、各アプリケーションにおいて新規のセンサイベントを再度定義することが必要となる。このように、各アプリケーションの負担が大きくなると、提供サービスのサービス品質の保持が難しくなったり、新規サービスの構築にも影響を及ぼすことにもなる。
【0010】
また、上記のような統計センサイベントの場合、各センサノードから全センサイベントに関するセンサデータを各アプリケーションに向けて送信することになる。そのため、センサデータの通信量が膨大になり、ネットワーク全体の帯域効率化を図ることが求められる。
【0011】
さらに、上述したように、同一のセンサイベントであっても、アプリケーション毎にセンサ種別を定義し、各アプリケーションがセンサデータを収集しなければならなかった。
【0012】
そのため、ネットワーク全体の通信効率を考慮しつつ、各アプリケーションが意識せずにセンサデータを利用したサービスを容易に提供することができるセンサデータ提供システム、方法及び装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる課題を解決するために、第1の本発明のセンサデータ提供システムは、1又は複数センサが送出するセンサデータを用いてアプリケーションを行なうサーバに、各センサから受信したセンサデータを提供するセンサデータ提供システムにおいて、(1)受信した1又は複数のセンサデータを記憶するセンサデータ記憶手段と、(2)抽象化対象の属性及びセンサ値の抽象化変換方法を有する抽象化変換規則を格納する抽象化変換規則格納手段と、(3)今回受信した受信センサデータの属性に対応する抽象化変換規則を抽象化変換規則格納手段から検索し、この抽象化変換規則の属性に属する1又は複数のセンサデータをセンサデータ記憶手段から抽出し、この抽出した1又は複数のセンサデータと今回の受信センサデータとを用いて抽出化変換方法により抽象化センサデータを生成する抽象化センサデータ生成手段と、(4)抽象化センサデータ生成手段により生成された抽象化センサデータをサーバに提供するデータ提供手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
第2の本発明のセンサデータ提供方法は、1又は複数センサが送出するセンサデータを用いてアプリケーションを行なうサーバに、各センサから受信したセンサデータを提供するセンサデータ提供方法において、(1)受信した1又は複数のセンサデータを記憶するセンサデータ記憶手段と、(2)抽象化対象の属性及びセンサ値の抽象化変換方法を有する抽象化変換規則を格納する抽象化変換規則格納手段とを備え、(3)抽象化センサデータ生成手段が、今回受信した受信センサデータの属性に対応する抽象化変換規則を抽象化変換規則格納手段から検索し、この抽象化変換規則の属性に属する1又は複数のセンサデータをセンサデータ記憶手段から抽出し、この抽出した1又は複数のセンサデータと今回の受信センサデータとを用いて抽出化変換方法により抽象化センサデータを生成する抽象化センサデータ生成工程と、(4)データ提供手段が、抽象化センサデータ生成手段により生成された抽象化センサデータをサーバに提供するデータ提供工程とを有することを特徴とする。
【0015】
第3の本発明のセンサデータ提供装置は、1又は複数センサが送出するセンサデータを用いてアプリケーションを行なうサーバに、各センサから受信したセンサデータを提供するセンサデータ提供装置において、(1)受信した1又は複数のセンサデータを記憶するセンサデータ記憶手段と、(2)抽象化対象の属性及びセンサ値の抽象化変換方法を有する抽象化変換規則を格納する抽象化変換規則格納手段と、(3)今回受信した受信センサデータの属性に対応する抽象化変換規則を抽象化変換規則格納手段から検索し、この抽象化変換規則の属性に属する1又は複数のセンサデータをセンサデータ記憶手段から抽出し、この抽出した1又は複数のセンサデータと今回の受信センサデータとを用いて抽出化変換方法により抽象化センサデータを生成する抽象化センサデータ生成手段と、(4)抽象化センサデータ生成手段により生成された抽象化センサデータをサーバに提供するデータ提供手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ネットワーク全体の通信効率を考慮しつつ、各アプリケーションが意識せずにセンサデータを利用したサービスを容易に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態のセンサデータ提供システムの全体構成を示す全体構成図である。
【図2】実施形態のセンサデータ提供装置の内部構成を示す内部構成図である。
【図3】実施形態のゲートウェイの内部構成を示す内部構成図である。
【図4】実施形態の一般化センサデータの構成例を示す構成図である。
【図5】実施形態の抽象化ルールの構成を説明する説明図である。
【図6】実施形態のセンサデータ提供処理の動作を示すフローチャートである。
【図7】実施形態の抽象化センサデータへの変換を説明する説明図である(その1)。
【図8】実施形態の抽象化センサデータへの変換を説明する説明図である(その2)。
【図9】実施形態のセンサデータフォーマットの統一化の変換ルールを説明する説明図である。
【図10】従来のコンテキストアウェアサービスを実施するシステムの構成例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(A)主たる実施形態
以下では、本発明のセンサデータ提供システム、方法及び装置の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0019】
(A−1)実施形態の構成
図1は、この実施形態のセンサデータ提供システムの全体構成を示す全体構成図である。図1において、この実施形態のセンサデータ提供システム5は、複数(図1では4台)のセンサノード2(2−1〜2−4)、ゲートウェイ3(3−1〜3−2)、センサデータ提供装置1、アプリケーション4(4−1〜4−2)を少なくとも有して構成される。
【0020】
センサノード2は、種々のデータを周期的に検知してセンサデータとして送出するものである。センサノード2が検知する対象は、特に限定されるものではなく、広く適用することができる。例えば、温度、湿度、電力値、振動値、照度、人間感知等のさまざまな情報がある。
【0021】
アプリケーション4は、コンテキストアウェアなサービスを提供する処理部又は装置(例えばサーバ等)である。アプリケーション4は、センサデータ提供装置1から転送されたセンサデータを用いて所定のアプリケーションを提供する。
【0022】
センサデータ提供装置1は、ゲートウェイ3を介して、入力されたセンサデータをアプリケーション4に転送するものである。また、センサデータ提供装置1は、センサデータを蓄積し、入力センサデータと蓄積センサデータとを用いて新規のセンサデータを生成してからアプリケーション4に送信するものである。
【0023】
図2は、センサデータ提供装置1の内部構成を示す内部構成図である。図2に示すように、センサデータ提供装置1は、データ受信部101、データ投入部102、データ変換部103、データ提供部104、センサデータデータベース(DB)105、抽象化ルール格納部106を持つ。
【0024】
データ受信部101は、ゲートウェイ3から転送されたセンサデータを取り込み、このセンサデータをデータ投入部102及びデータ変換部103に与える処理部又は装置である。
【0025】
データ投入部102は、データ受信部101から受け取ったセンサデータを、センサデータDB105に与える機能をもつものである。
【0026】
データ変換部103は、データ受信部101から受け取ったセンサデータの内容を、抽象化ルール格納部106に格納される抽象化ルールを参照しながら抽象化し、抽象化センサデータに変換するものである。
【0027】
データ提供部104は、アプリケーション4から要求を受けると、その要求に該当するセンサデータをセンサデータDB105から読み出してアプリケーション4に向けて送信する処理部又は装置である。
【0028】
センサデータDB105は、データ投入部102からのセンサデータを格納する記憶領域である。また、センサデータDB105は、データ変換部103により抽象化変換された抽象化センサデータを格納する記憶領域である。
【0029】
抽象化ルール格納部106は、抽象化センサデータに変換するためのルールを格納する記憶領域である。
【0030】
センサノード2は、センサと通信機能とを有するものである。センサノード2のセンサの種類は、特に限定されるものではなく、種々のものが適用できる。例えば、温度、湿度、電力値、振動値、照度、人間感知など様々なものを検知するセンサを適用することができる。また、センサノード2の通信機能も、無線通信又は有線通信を行なうことができれば、ここでは特に限定されるものではない。センサノード2は、通信機能を用いて、センサが周期的に検知したセンサデータを、周辺のセンサノード2又はゲートウェイ3に送信し、最終的にアプリケーション4に送信する。また、センサノード2が送信するセンサデータ(実センサデータ)は、例えば、センサ種別、センサ値などの簡単なデータしか含まれていない。
【0031】
ゲートウェイ3は、センサノード2から受信したセンサデータをセンサデータ提供装置1に転送する機能を有するネットワーク装置である。ゲートウェイ3は、複数台のセンサノード2と接続し、複数台のセンサノード2から受信したセンサデータを転送できるようにしても良い。また、ゲートウェイ3は、例えば、一般的なゲートウェイ、ホームゲートウェイ等として適用することができる。例えば、ゲートウェイ3をホームゲートウェイとする場合、家庭内のセンサデータを、宅外に設置したセンサデータ提供装置1に転送することになる。
【0032】
また、ゲートウェイ3は、センサノード2から受け取ったセンサデータについて、センサ固有のデータフォーマットを、センサデータ提供装置1で一意に決めた統一データフォーマットに変換する機能を有する。
【0033】
図3は、ゲートウェイ3の内部構成を示す内部構成図である。図3において、ゲートウェイ3は、データ受信部301、データ変換部302、付加情報追加部303、データ送信部304、変換ルール投入部305、変換ルール格納部306を少なくとも有する。
【0034】
データ受信部301は、センサノード2が送信したデータの内、センサデータ提供サーバ1に転送すべきデータを受信する処理部又は装置である。例えば、データ受信部301は、受信パケットの送信先が、センサデータ提供装置1がセンサデータを提供するアプリケーション4であれば、当該パケットに含まれるセンサデータを取り込む。
【0035】
データ変換部302は、変換ルール格納部306に格納される変換ルールを用いて、データ受信部301で取り込んだセンサデータを統一フォーマットに変換するものである。
【0036】
付加情報追加部303は、データ変換部302により統一フォーマットに変換されたデータに、所定の付加情報を追加するものである。例えば、付加情報は予め接続するセンサノード2の位置情報などの付加情報がゲートウェイ3に登録されており、付加情報追加部303は、その登録されている情報を利用して付加情報を作成する。
【0037】
図4は、付加情報追加部303により付加情報が追加された情報の一例を説明する説明図である。ここでは、例えば、データ変換部302が統一フォーマットにより「センサ種別」と「センサ値」とを含むデータに変換したとする。このとき付加情報追加部303は、統一化センサデータに対して、「時刻」、「宅内位置(位置)」、「ユーザ(位置)」、「地名(位置)」等の付加情報を追加した場合を例示する。付加情報は、時刻情報、位置情報に限定されるものではない。
【0038】
データ送信部304は、付加情報追加部303により変換したセンサデータをセンサデータ提供装置1に送信する処理部又は装置である。
【0039】
変換ルール投入部305は、センサデータのフォーマットを統一化する統一化ルールを受信し、変換ルール格納部306に登録するものである。ここで、統一化ルール(変換ルール)は、センサデータ提供装置1から供給されるようにしても良いし、又はセンサを製造した製造元(メーカ)サーバ等から供給されるようにしても良い。この実施形態では、センサデータ提供装置1から供給される場合を例示する。
【0040】
変換ルール格納部306は、データフォートの統一化ルールである変換ルールを格納するものである。
【0041】
なお、データ変換部302、付加情報追加部303は、センサノード2又はセンサデータ提供装置1に持たせるようにしてもよい。他の装置に持たせるならば、センサノード2からセンサデータ提供装置1に直接送信するようにしてもよい。
【0042】
(A−2)実施形態の動作
次に、この実施形態のセンサデータ提供装置1によるセンサデータ提供処理の動作を、図面を参照しながら説明する。
【0043】
なお、以下の実施形態の動作では、サービスの一例として、例えば市町村等の比較的広い範囲の平均的な温度を提供する場合を例示して説明する。
【0044】
センサノード2では、センサが周期的に検知し、その検知したセンサデータをゲートウェイ3に送信する。ゲートウェイ3は、センサデータ提供装置1に転送すべきセンサデータを受信すると、そのセンサデータを、一般フォーマットに形式変換及び付加情報の追加を行い、一般化センサデータとして、センサデータ提供装置1に送信する。
【0045】
ここで、センサデータ提供装置1には、図4に例示する一般化センサデータが入力される。図4に示すように、例えば、一般化センサデータは、センサ種別、センサ値の他に、センシング時刻、位置情報などの付加情報も含むものである。例えば、図4に例示する一般化センサデータは、センサ種別が「温度」であり、センサ値が「25.8(度)」であり、センシング時刻が「20103/4 10:40:02」であり、ユーザが「ユーザA」であり、当該センシング位置の地名(住所)が「○県△市□1丁目2番地」の「宅内」であることを示している。
【0046】
(A−2−1)抽象化ルールの作成について
センサデータ提供装置1では、あらかじめ抽象化ルールが作成され、その抽象化ルールが抽象化ルール格納部106に登録される。そこで、ここでは、抽象化ルールの作成について説明する。
【0047】
抽象化ルールは、センサデータの属性(例えばセンサ種別、位置情報等)に応じて、その特性を抽出するためのルールである。ここで注意すべきことは、アプリケーション4はサービスに必要なセンサ種別のセンサデータを要求するので、その要求に対応するデータをセンサデータ提供装置1が提供できるようにすることである。そのため、抽象化ルールは、アプリケーション4が要求するセンサの属性と、要求に応じたセンサ値の変換方法等のルールを含むものである。
【0048】
図5は、抽象化ルールの構成例を説明する説明図である。図5に例示する抽象化ルールは、「対象位置」、「対象センサ種別」、「変換方法」、「センサ種別」を項目とする。「対象位置」はセンサデータを取得した位置を示し、「対象センサ種別」はセンサの種別を示す。
【0049】
「変換方法」は、抽出化データを生成するための変換方法を示す。例えば、「変換方法:単純平均」だとすると、「対象位置」、「対象センサ種別」に該当するセンサデータを抽出すると、それらセンサデータを単純平均し、これに得られた値を抽象化データとする。なお、「変換方法」は、種々の方法を決めることができ、例えば、センサ値の変化量、閾値を超えたもの(又は超えなかったもの)の平均等でもよい。
【0050】
「センサ種別」は、センサデータの内容種別である。例えば、図4に例示するセンサ種別「温度」であっても、例えば、機器やモノの温度や、人の温度など種々考えられるが、そのセンサ種別「温度」が「地域温度」であることを示す。
【0051】
なお、「対象位置」の指定は、地名のように範囲が固定であるものについては、変換ルールをあらかじめ作成しておく必要はなく、アプリケーション4から取得制御を受信したときに登録すればよい。
【0052】
(A−2−2)抽象化センサデータの生成処理について
図6は、センサデータ提供装置1における抽象化センサデータの生成処理の動作を示すフローチャートである。
【0053】
センサデータ提供装置1においてセンサデータが受信されると(ステップS1)、センサデータは、データ受信部101を経由し、データ投入部102によりセンサデータDB105に登録される(ステップS2)。
【0054】
また、受信したセンサデータはデータ変換部103に与えられる。データ変換部103は、当該センサデータに含まれる情報に基づいて、当該センサデータを抽象化するための抽象化ルールがあるか否かを抽象化ルール格納部103から検索する(ステップS3)。このとき、抽象化ルールを検索できなければデータ変換処理を終了する(ステップS7)。
【0055】
例えば、図4に示すような一般化センサデータを受信したとする。そして、センサデータに含まれるセンサ種別「温度」及び位置情報「○県△市□」であるから、これに一致する対象センサ種別「温度」及び対象位置「○県△市□」の抽象化ルール(図5参照)を検索する。
【0056】
なお、ここでは、「センサ種別」及び「位置情報」をキーとして抽象化ルールを検索する場合を示したが、センサデータに含まれる全ての情報のうち1つ以上の情報をキーとして抽象化ルールを検索するようにしてもよい。また、1つのセンサデータから複数の抽象化ルールを検索できるようにしてもよい。
【0057】
データ変換部103は、抽象化ルールを検索すると、その抽象化ルールに規定される属性に属する他のセンサデータを、センサデータDB105から検索する(ステップS4)。
【0058】
例えば、「○県△市□の温度データ」という属性に属する1又は複数のセンサデータをセンサデータDB105から検索する。このとき、例えば、複数のユーザについてのセンサデータを検索した場合、センサデータDB105に格納される各ユーザの1個のセンサデータ(例えば最新データのみ)を抽出するようにしてもよいし、また各ユーザの複数のセンサデータを抽出するようにしてもよい。また例えば、各ユーザの過去1日のデータを抽出するなど抽出範囲は特に限定されるものではない。また例えば、データ変換部103は、センサデータDB105に格納される当該抽象化ルールの属性に属する過去の抽象化センサデータを用いるようにしてもよい。
【0059】
データ変換部103がセンサデータDB105から当該抽象化ルールの属性に属するセンサデータを検索すると、今回のセンサデータ及び検索したセンサデータを用いて、抽象化ルールに規定される変換方法を用いてセンサ値の変換を行なう(ステップS5)。
【0060】
図7(a)は、「○県△市□の温度データ」という属性の各センサデータの一例であり、図7(b)は、「○県△市□の温度データ」という属性の抽象化センサデータの一例を説明する説明図である。
【0061】
図7(a)に示すように、「○県△市□の温度データ」という属性のセンサデータとして、ユーザA〜ユーザDのセンサデータを検索したとする。データ変換部103は、抽象化ルールの変換方法が単純平均であるから、各センサデータのセンサ値を単純平均して「25.6(℃)」を求める。この温度が、「○県△市□」の抽象化温度となる。
【0062】
また例えば、上記例の場合の抽象化温度を求める別の方法を用いるようにしてもよい。つまり、上記の例では、ステップS4で対象範囲のセンサデータを全て検索したが、センサデータDB105から直前の抽象化温度(すなわち抽象化センサデータ)を用いるようにしてもよい。この場合、データ変換部103は、センサデータDB105から「○県△市□の直前の抽象化温度」を抽出する。そして、この「○県△市□の直前の抽象化温度」と入力センサデータ、及び、対象範囲のセンサデータの総数を用いて抽象化温度センサ値の平均を更新するようにしてもよい。
【0063】
この例の場合の抽象化温度の計算方法は、特に限定されないが、例えば式(1)を用いることができる。なお、式(1)に限定されず、抽象化ルールの属性及び求めるセンサ値に応じて、他の関数式を用いるようにしてもよい。
【0064】
(更新後の抽象化温度)
={直前の抽象化温度×(総数−1)/総数+入力センサ値/総数}…(1)
また、データ変換部103は、センサデータDB105に格納される抽象化センサデータを用いて、別の抽象化ルールの抽象化センサデータを求めるようにしてもよい。例えば、「○県」の抽象化センサデータを求めるようにしてもよい。この場合の計算は、例えば、「○県」内の市町村単位の抽象化センサデータを計算するというように、階層的に広範囲の抽象化センサ値を計算するようにしてもよい。これは、例えば、市町村単位、県単位のセンサデータが欲しい等の統計的なアプリケーションがある場合に特に有効である。
【0065】
次に、データ変換部103は、求めた抽象化センサデータをセンサデータDB105に登録する(ステップS6)。
【0066】
例えば、データ変換部103が図7(a)に例示するセンサデータを用いて図7(b)に例示する抽象化センサデータに変換した場合、図7(b)に例示する「センサ種別」が抽象化した「温度」であり、「温度」が「25.6(℃)」、「位置(地名)」が「○県△市□」である抽象化センサデータをセンサデータDBに登録する。
【0067】
(抽象化センサデータの別の例)
また、抽象化センサデータの別の例を説明する。上記の例では、抽象化ルールの属性が位置(又は空間)とする場合であり、その位置(又は空間)に属する対象センサのセンサデータを統合する場合を例示した。しかし、抽象化は、位置(又は空間)の属性に限定されるものではない。例えば、時間軸上の変化を抽象化するものであってもよい。
【0068】
図8は、時間軸上の変化を抽象化して抽象化センサデータに変換する場合の例を示す。時間軸上の変化として、同一種類のセンサデータを用いるようにしてもよいし、また異種のセンサデータを統合した抽象化センサデータを用いるようにしてもよい。図8では、異種のセンサデータを用いて抽象化センサデータに変換する場合を例示する。
【0069】
図8(a)には、ユーザA〜ユーザDの温度変動量のセンサデータを示す。なお、変換方法は単純平均とする。この場合、データ変換部103は、図8(a)の各センサデータを用いて抽象化温度変動量を「0.4」を求める。つまり、データ変換部103は、図8(b)に示すように、「センサ種別」が抽象化した「変動量」であり、「温度」が「0.4(℃)」、「位置(地名)」が「○県△市□」である抽象化センサデータを求め、これをセンサデータDBに登録する。
【0070】
(A−2−3)アプリケーションでのデータの取得処理
アプリエーション4は、センサノード2からセンサデータ提供装置1に入力されるデータ、また抽象化センサデータの区別なく、サービスに必要な対象センサ種別を指定してセンサデータを要求している。
【0071】
つまり、サービスに必要な対象センサ種別のセンサデータであれば、センサデータ提供装置1からの抽象化センサデータについてもアプリケーション4は取得可能である。
【0072】
そこで、センサデータ提供装置1は、アプリケーション4から、例えば、「位置:○県△市□」、「センサ種別:温度センサ」を含む取得要求信号を受けると、「位置:○県△市□」、「センサ種別:温度センサ」をキーワードとしてセンサデータDB105を検索し、これにより対応する抽象化センサデータをアプリケーション4に応答する。
【0073】
(A−2−4)統一化センサデータの生成
センサデータ提供装置1による抽象化センサデータへの変換処理の前に、センサデータのフォーマットが統一化がされていないと、信頼性のある抽象化が充分にできない。
【0074】
この実施形態では、ゲートウェイ3がセンサデータのフォーマットの統一化を行なう。
【0075】
なお、フォーマットの統一化はセンサデータの抽象化の前であればよいので、センサデータ提供装置1が抽象化変化の前に行なうようにしてもよいし、センサノード2が行うようにしてもよい。
【0076】
例えば、センサ種別を新規定義する場合若しくは統一フォーマット化を定義する場合、センサ固有のデータフォーマットを統一データフォーマットに変換する変換ルールを用意する。
【0077】
この変換ルールは、センサデータ提供システム5の構成内で用意すればよく、例えばセンサデータ提供装置1に格納するようにしてもよいし、また別の変換ルールサーバ等(図示しない)に格納するようにしてもよい。
【0078】
図9は、温度センサのフォーマットと、統一化センサデータのデータフォーマットとの対応関係の例を示す説明図である。
【0079】
図9において、例えば「センサ1」は、単位が「℃(セルシウス温度)」であり有効数字が「0.001」である場合を示す。また、「センサ2」は、単位が「K(ケルビン温度)」であり有効数字が「0.01」である場合を示す。また、「センサ3」は、例えば温度抵抗特性を有する素子(例えばサーミスタ素子等)であり、単位が「Ω」であり有効数字が「1」である場合を示す。
【0080】
また統一データフォーマットの「統一温度センサ」では、単位を「℃」とし、有効数字を「0.1」とする。そのため、センサ値を正規化するための変換方式は「変換」に記載される。例えば、「センサ2」の単位が「K」であるから、統一温度センサの単位「℃」に変換するためには、「value(センサ値)−273.2」の変換式を用いることを示す。
【0081】
ゲートウェイ3は、センサノード2を接続すると、そのセンサノード2内のセンサに関する変換ルールを、例えばセンサデータ提供装置1等から取り込み、変換ルールDB3056に登録しておく。
【0082】
このような初期動作の完了後、センサノード2からセンサデータを受信するとデータ変換部302が、統一センサ値、例えば、温度ならば℃(セルシウス温度)に変換する。
【0083】
次に、付加情報追加部303は、図4のようにセンサ種別、センサ値以外の付加情報を追加する。なお、付加情報については予めゲートウェイ3がセンサノード2の各センサの位置等を登録しておき、この情報を用いてセンサに関する情報を付加する。
【0084】
そして、形成されたセンサデータをデータ送信部303からセンサデータ提供部1に送信する。
【0085】
(A−3)実施形態の効果
以上のように、この実施形態によれば、センサデータ提供装置1が、複数のセンサデータについて、例えば位置、時間等による統合・抽象化処理を行ない、抽象化処理後のセンサデータをセンサイベントとしてアプリケーション4に提供することにより、アプリケーション4が必要な実センサデータ(センサノードが送信したセンサデータ)を全て取得する必要がなくなるという効果が得られる。
【0086】
また、実施形態では、抽象化センサデータは実センサデータと同様な定義とする。これにより、アプリケーション4は、実センサデータの取得制御と同様にして抽象化センサデータを取得することができる。また、センサを新規追加したとしても、アプリケーションは意識しなくてよく、センサデータを利用した新規サービスを容易に構築することができるという効果が得られる。
【0087】
さらに、実施形態では、抽象化処理をアプリケーションに提供する前に行なうことにより、同一の抽象化センサデータを使用する場合や、別の抽象化センサデータを包含するような抽象化センサデータ値の計算をする場合に複数アプリケーションで抽象化センサデータを共有できるため、各アプリケーションで個々に計算するより効率的になるという効果が得られる。
【0088】
(B)他の実施形態
上述した実施形態では、センサノード、ゲートウェイ、センサデータ提供装置、アプリケーションの順に接続する場合で説明したが、その他の装置を含んでもよい。また、機能を他と兼用するならばこれらの一部の装置を省略してもよい。
【0089】
上述した実施形態において、センサデータのデータフォーマットの統一化処理、抽象化処理は、いわゆるソフトウェア処理により実現することができる。例えば、ゲートウェイアやセンサデータ提供装置が、CPU、ROM、RAM、EEPROM等から構成され、CPUが、ROMに格納される処理プログラムを読み出し、この処理プログラム及び処理に必要なデータを用いて実行することにより、これらの処理は実現される。
【符号の説明】
【0090】
1…センサデータ提供装置、
101…データ受信部、102…データ投入部、103…データ変換部、
104…データ提供部、105…センサデータDB、106…抽象化ルール格納部、
3−1〜3−2…ゲートウェイ、
301…データ受信部、302…データ変換部、303…付加情報追加部、
304…データ送信部、305…変換ルール投入部、306…変換ルール格納部、
2−1〜2−4…センサノード、4−1〜4−2…アプリケーション、
5…センサデータ提供システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数センサが送出するセンサデータを用いてアプリケーションを行なうサーバに、上記各センサから受信したセンサデータを提供するセンサデータ提供システムにおいて、
受信した1又は複数のセンサデータを記憶するセンサデータ記憶手段と、
抽象化対象の属性及びセンサ値の抽象化変換方法を有する抽象化変換規則を格納する抽象化変換規則格納手段と、
今回受信した受信センサデータの属性に対応する上記抽象化変換規則を上記抽象化変換規則格納手段から検索し、この抽象化変換規則の属性に属する1又は複数のセンサデータを上記センサデータ記憶手段から抽出し、この抽出した1又は複数のセンサデータと今回の上記受信センサデータとを用いて上記抽出化変換方法により抽象化センサデータを生成する抽象化センサデータ生成手段と、
上記抽象化センサデータ生成手段により生成された抽象化センサデータを上記サーバに提供するデータ提供手段と
を備えることを特徴とするセンサデータ提供システム。
【請求項2】
センサデータフォーマットを統一化する統一化変換規則を格納する統一化変換規則格納手段と、
上記統一化変換規則を参照して、受信したセンサデータのデータフォーマットを変換して、上記抽象化センサデータ生成手段に与えるデータフォーマット変換手段と
を備えることを特徴とする請求項1に記載のセンサデータ提供システム。
【請求項3】
上記抽象化センサデータ生成手段により生成される上記抽象化センサデータは、上記各センサからのセンサデータとセンサ種別が同じであり、上記サーバに指定された属性に属する上記センサからのセンサデータとして上記サーバに与えられるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のセンサデータ提供システム。
【請求項4】
上記センサデータ記憶手段が上記抽象化センサデータも記憶するものであり、
上記抽象化センサデータ生成手段が、上記センサデータ記憶手段に格納される複数の抽出化センサデータの属性よりも上位の属性に属する抽出化センサデータを生成する事を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のセンサデータ提供システム。
【請求項5】
上記抽象化センサデータ生成手段が、特定範囲の位置を属性として抽象化するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のセンサデータ提供システム。
【請求項6】
上記抽象化センサデータ生成手段が、特定時間又は変化量を属性として抽象化するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のセンサデータ提供システム。
【請求項7】
上記抽象化センサデータ生成手段が、異種センサ種別のセンサデータを用いて上記抽象化センサデータを生成することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のセンサデータ提供システム。
【請求項8】
1又は複数センサが送出するセンサデータを用いてアプリケーションを行なうサーバに、上記各センサから受信したセンサデータを提供するセンサデータ提供方法において、
受信した1又は複数のセンサデータを記憶するセンサデータ記憶手段と、
抽象化対象の属性及びセンサ値の抽象化変換方法を有する抽象化変換規則を格納する抽象化変換規則格納手段とを備え、
抽象化センサデータ生成手段が、今回受信した受信センサデータの属性に対応する上記抽象化変換規則を上記抽象化変換規則格納手段から検索し、この抽象化変換規則の属性に属する1又は複数のセンサデータを上記センサデータ記憶手段から抽出し、この抽出した1又は複数のセンサデータと今回の上記受信センサデータとを用いて上記抽出化変換方法により抽象化センサデータを生成する抽象化センサデータ生成工程と、
データ提供手段が、上記抽象化センサデータ生成手段により生成された抽象化センサデータを上記サーバに提供するデータ提供工程と
を有することを特徴とするセンサデータ提供方法。
【請求項9】
1又は複数センサが送出するセンサデータを用いてアプリケーションを行なうサーバに、上記各センサから受信したセンサデータを提供するセンサデータ提供装置において、
受信した1又は複数のセンサデータを記憶するセンサデータ記憶手段と、
抽象化対象の属性及びセンサ値の抽象化変換方法を有する抽象化変換規則を格納する抽象化変換規則格納手段と、
今回受信した受信センサデータの属性に対応する上記抽象化変換規則を上記抽象化変換規則格納手段から検索し、この抽象化変換規則の属性に属する1又は複数のセンサデータを上記センサデータ記憶手段から抽出し、この抽出した1又は複数のセンサデータと今回の上記受信センサデータとを用いて上記抽出化変換方法により抽象化センサデータを生成する抽象化センサデータ生成手段と、
上記抽象化センサデータ生成手段により生成された抽象化センサデータを上記サーバに提供するデータ提供手段と
を備えることを特徴とするセンサデータ提供装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−180946(P2011−180946A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46216(P2010−46216)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成21年度総務省「消費エネルギー抑制ホームネットワーク技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】