説明

センサネットワークシステム

【課題】センサネットワークシステム上に配備された電池で駆動されているノードの電池寿命を長くするシステムの提供。
【解決手段】センサの感知信号を送信するノードと、前記ノードから前記センサのデータフレームを受信するベースとの間にルータを設け、ノードからルータへのデータフレームの伝送には人体通信を使用し、ルータからベースまでのデータフレームの伝送には従来からの無線を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサデータを送信するノードと、そのノードからセンサデータを受信するルータ、ルータからセンサデータを受信するベースから構成されるセンサネットワークシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、センサに無線通信機能を有する小型の電子回路を付加して、現実世界の様々な情報をリアルタイムに情報処理装置に取り込むセンサネットワークシステムが検討されている。センサネットワークシステムには幅広い応用が考えられており、例えば、無線回路、プロセッサ、センサ、電池を集積した指輪型の小型電子回路により、脈拍等を常時モニタし、モニタ結果は無線通信により診断装置に送信され、モニタ結果に基づいて健康状態を判定するといったような医療応用も考えられている。(例えば、非特許文献1参照)
センサネットワークシステムを広く実用化するためには、無線通信機能、センサ、および、電池等の電源を搭載する血圧計、心拍計または体脂肪計等(以下、ノードという)を、長時間に渡ってメンテナンスフリー、かつセンサデータを送信し続けられるものとし、かつ外形も小型化することが重要になる。このため、超小型でどこにでも設置できるノードの開発が進められている。現段階では、実用上、1年程度の期間、電池交換をせずに使用可能であることが、メンテナンスコストおよび使い勝手の両面から必要と考えられている。
【0003】
例えば、非特許文献2には、「Mica2Dot」と呼ばれる、直径3cm程度の小型のノードのプロトタイプが紹介されている。このMica2Dotは、無線通信に必要な機能を集積したRFチップと、低消費電力なプロセッサチップから構成される。このプロトタイプにおいては、99%の時間は待機状態で、残りの1%の時間のみを間欠的に起動してセンサを動かして結果を無線通信するという間欠動作により、小型電池にて1年程度の動作が可能としている。
【0004】
センサネットワークシステムには、上記のような小型で無線通信を行うノードと、センシングされたデータを無線で収集して、インターネットなどの有線ネットワークに接続するデバイス(以下、ベースと呼ぶ)の2種のデバイスが必要である。ノードは、小型かつ移動性を加味して電池で駆動されることが多いのに対し、ベースは据え置きでAC電源駆動されるケースが多い。
【非特許文献1】Sokwoo Rhee他「Artifact-Resistant Power-Efficient Design of Finger-Ring Plethysmographic Sensors」,IEEE Transactions On Biomedical Engineering, Vol.48, No.7, July 2001, pp.795-805
【非特許文献2】Crossbow 「Smarter Sensors In Silicon」、インターネット、URL : http://www.xbow.com/Support/Support_pdf_files/Motetraining/Hardware.pdf
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
センサネットワークシステムを人体情報の収集システムに利用しようとすると、以下のような課題が発生する。前述したように、ノードは血圧計、心拍計、体脂肪計等扱い易さから電池駆動が強く求められている。しかし、電池駆動ではその寿命に制限が発生する。
【0006】
ましてやこれらノードに無線機能を搭載すると、この無線機能の動作電力により更に電池寿命が減少してしまうという課題がある。背景技術でも述べたように「Mica2Dot」の無線機能を用いても一年程度の寿命しかない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、センサの感知信号を送信するノードと、前記ノードから前記センサの感知信号を受信するルータと、前記ルータが受信して再送信する感知信号を受信するベースから構成され、前記ノードと前記ルータ間は人体通信を用い、前記ルータと前記ベース間は無線通信を用いるようにセンサネットワークシステムを構成した。
【0008】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様のセンサネットワークシステムにおいて、前記人体通信および無線通信が伝送する前記感知信号から構成されるデータフレームは前記ノードを識別できる固有のID情報も含むように構成した。
【0009】
本発明の第3の態様は、電界通信用の第1電極及び第2電極を備え、センサの感知信号を電圧波形に変換し、前記第1電極及び第2電極を介して送信するノードと、電界通信用の第3電極及び第4電極と無線通信用の第1アンテナを備え、前記電圧波形を前記第3及び第4電極を介して受信し、前記電圧波形から前記センサの感知信号を検出し、このセンサの感知信号を含む信号を前記第1アンテナを介して再送信するルータと、
無線通信用の第2アンテナを備え、前記ルータが再送信したセンサの感知信号を含む信号を前記第2アンテナを介して検出するベースから構成され、前記ノードと前記ルータ間は、前記各電極を人体に接触または近接させて前記人体を介して通信し、前記ルータと前記ベース間は、前記各アンテナを介した無線通信を用いるようにセンサネットワークシステムを構成した。
【0010】
本発明の第4の態様は、上記センサネットワークシステムにおいて、前記ノードは、心拍数を測定するセンサを備え、前記心拍数データをセンサの感知信号を含む電波波形として送信するように構成した。
【0011】
本発明の第5の態様は、上記センサネットワークシステムにおいて、前記ノードは、心拍数データ信号を変調するキャリア信号の周波数と心拍信号の周波数が異なるように構成した。
【0012】
本発明の第6の態様は、上記センサネットワークシステムにおいて、前記ノードは、心拍数を検出する検出モードと、ノードからルータへデータを送信する送信モードを含むように構成した。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電池駆動型のノードを使用しても長寿命なセンサネットワークシステムを構築できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の代表的な実施形態の概要は次のとおりである。
【0015】
図1は、本発明のノードからサーバへ感知信号を伝送するシステム構成図であり、ノードとして心拍計測定器の例を示している。
【0016】
また、図2はノード102の詳細ブロック図であり、図3はルータ106の詳細ブロック図である。なお、図1〜図3において同一部分には同一符号を付している。図4は、データフレームの構成を示す図である。図5はベースの詳細ブロック図である。
【0017】
図1〜図3において、人体101の胸部には、第1の通信手段としてのノード102がチェストバンド110によって取り付けられている。ノード102は、送受信器本体103、人体101に接触又は静電結合する第1の電極104及び人体101に接触又は静電結合する第2の電極105を有している。人体101の一方の腕(左腕)の手首には、第2の通信手段としてのルータ106が取り付けられている。ルータ106は、受信器本体107、人体101に接触又は静電結合する第3の電極108及び人体101の外側(人体101とは反対側)に向けて配置された第4の電極109を有している。
【0018】
第1の電極104と第3の電極108は人体101(主として胸部及び左腕)を介して電気的に接続されると共に、第2の電極105と第4の電極109は破線で示すように静電結合によって電気的に接続されている。これによって、ノード102とルータ106間での通信が可能なように構成されている。
【0019】
即ち、信号線側においては、ノード102は、第1の電極104、人体101及び第3の電極108を介してルータ106に接続されている。また、基準電位線(例えば接地電位)側においては、ルータ106は、破線で示すような静電容量結合による経路によって、第4の電極109、人体101及び第2の電極105を介してノード102に接続されている。
【0020】
送受信器本体103は、増幅部201とフィルタ202と心拍検出部203と第1の演算処理部204と変調部205を有している。増幅部201は第1の電極で受信した信号を増幅して出力する。フィルタ(本実施の形態では低域フィルタ)は増幅部の出力信号中の所定周波数の信号を通過する。心拍検出部203はフィルタの出力信号から心拍信号を検出する。第1の演算処理部204は心拍検出部で検出した心拍信号に基づいて心拍数を算出して心拍数を表すデジタル化された心拍数データ信号を出力する。変調部205は心拍数データ信号を変調して、データ送信部へ出力する。データ送信部206は変調部で変調された心拍数データ信号を第1の電極104から出力する。
【0021】
フィルタ202は心拍信号以外のノイズ信号を除去するためのフィルタである。また、変調部205が心拍数データ信号を変調するために使用するキャリア信号の周波数、即ち、ノード102とルータ106間の通信で使用するキャリア信号の周波数は、心拍信号の周波数と異なるように設定されている。なお、心拍信号の周波数は50Hz程度であることから、ノードとルータ間の通信で使用するキャリア信号の周波数は、人体を介した静電容量結合による通信が容易な1MHz以上が望ましい。これにより、ノード102とルータ106間で通信される信号とノードでの感知信号である心拍信号とが混信しないように構成されている。
【0022】
受信器本体107は、増幅部301と復調部302と第2の演算処理部303とメモリ304と表示部305を有している。増幅部301は第3の電極108で受信した心拍数データ信号を増幅して出力する。復調部302は増幅部の出力信号を復調する。第2の演算処理部303は復調部302で復調した心拍数データ信号から心拍数を得て該心拍数をメモリ304に記憶すると共に、前記心拍数を表示部305に表示処理する。
【0023】
以上のように構成された心拍計システムにおいて、ノード102が検出モードにある場合、増幅部201は、第1の電極104で受信(検出)した心拍信号を増幅して出力する。フィルタ202は、増幅部201の出力信号中の所定周波数の信号を通過して出力する。心拍検出部203は、フィルタ202の出力信号から心拍信号を検出して出力する。第1の演算処理部204は、心拍検出部203で検出した心拍信号に基づいて心拍数を算出する。
【0024】
次に、ノード102が送信モードになると、第1の演算処理部204は、心拍検出部203で検出した心拍信号に基づいて算出した心拍数を表すデジタル化された心拍数データ信号を変調部205に出力する。変調部205は、第1の演算処理部204からのデジタル化された心拍数データ信号を所定周波数のキャリア信号で変調して出力する。データ送信部206は、変調部205で変調された心拍数データ信号を第1の電極104から出力する。
【0025】
第1の電極104から出力されたデジタル化された心拍数データ信号は、人体101(主として胸部及び左腕)を通ってルータ106の第3の電極108で受信される。
【0026】
受信器本体107は、第3の電極108で受信したデジタル化された心拍数データ信号を増幅部301で増幅して出力する。復調部302は、増幅部301から出力されたデジタル化された心拍数データ信号を復調して出力する。第2の演算処理部303は、復調部302から出力されたデジタル化された心拍数データ信号から心拍数を得て、前記心拍数データ信号を受信した順序で、前記心拍数を順次メモリ304に記憶すると共に、表示部305に該心拍数を表示させる。このように人体通信を使用したデータ伝送の大きなメリットは無線に比較して消費電力が極めて小さいことである。実際には無線通信が15mW程度の電力消費に対して人体通信では4mW程度に抑えることができる。これによってノードの電池は無線を使ったシステムに比較して約4倍長い時間使用することができる。
【0027】
この時、送信されたデータフレームの構成を図4に示す。データフレームはデジタル化された心拍数データ信号に加えてノードのIDと、パリティチェック用のCRCで構成されている。ここで、各データは8Bitで構成される。信号を受け取ったルータは、このノードのIDを参照することによって、どの人体情報測定器からのデータなのかを識別することができる。具体的にはIDは測定器の種類を区別するために測定器に独自につけられたIDなので血圧計なのか、心拍計なのかがノードIDを見れば識別できる。
【0028】
次にルータ106からベース111までの情報伝達システム及び送受信器について、図3及び図5に基づき説明する。ベースのハードウェア構成を図5に示す。無線部401はアンテナ402と無線モジュール403とマイコン404と制御回路405とリアルタイムクロック(RTC)406と電圧レギュレータ407を有している。また、サーバとの通信を行えるようにTCP/IP変換IC409を搭載したLAN基板408が搭載されている。このLAN基板408により、LANコネクタ410を介して、サーバ112とベース111間の有線通信を行う。また、LAN基板408と無線部401はコネクタCN1,2で接続されている。ここでルータ106は図3に示してあるように無線機能を持っており、無線部306からベース111に対してメモリ304に蓄積されたデータフレームに含まれているデジタル化された心拍数データが送信される。これによりルータとベースの距離が数メートル離れていても大量の心拍数データをベース111に送ることができる。ここで用いられる無線方式はZigBee、Bluetooth等様々な方式を用いることができる。更にベース111に送信されたデータフレームはLAN経由でサーバ112に転送され、サーバで種々加工されて個人の身体健康データとして活用することができる。ノードとルータ間は人体通信にするために、いずれも人体に接触する機器がこのシステムには適している。この観点から見ると人体情報を計測する血圧計、体温計、体脂肪計、体重計、心拍計、心電計等はすべて人体に接触させて人体情報を計測する機器である。また、ルータとしては腕時計のような身体に装着する機器が適している。また本方式による人体通信では通信に電界を用いているため、直接皮膚に接触していなくても人体を通して通信可能である。したがって腕時計の代わりに携帯電話やIDカードなどを携行して、これらに図3のルータの機能を回路的に付加しておけば図1のシステムが構築できる。このようにノードとして血圧計、心拍計、体脂肪計のような必ず身体に接触し身体情報を測定する機器にし、ルータとしては身体に装着する腕時計、携帯電話のような機器にすればシステムとして自然である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のノードからサーバへ感知信号を伝送するシステム構成図である。
【図2】本発明のノードの詳細ブロック図である。
【図3】本発明のルータの詳細ブロック図である。
【図4】データフレームの構成を示す図である。
【図5】本発明のベースの詳細ブロック図である。
【符号の説明】
【0030】
101・・・人体
102・・・ノード
103・・・送受信器本体
104・・・第1の電極
105・・・第2の電極
106・・・ルータ
107・・・受信器本体
108・・・第3の電極
109・・・第4の電極
110・・・チェストベルト
111・・・ベース
112・・・サーバ
201、301・・・増幅部
202・・・フィルタ
203・・・心拍検出部
204・・・第1の演算処理部
205・・・変調部
206・・・データ送信部
302・・・復調部
303・・・第2の演算処理部
304・・・記憶手段としてのメモリ
305・・・表示手段としての表示部
306、401・・・無線部
402・・・アンテナ
403・・・無線モジュール
404・・・マイコン
405・・・制御回路
406・・・リアルタイムクロック(RTC)
407・・・レギュレータ
408・・・LAN基板
409・・・TCP/IP変換IC
410・・・LANコネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサの感知信号を送信するノードと、前記ノードから前記センサの感知信号を受信するルータと、前記ルータが受信して再送信する感知信号を受信するベースから構成され、前記ノードと前記ルータ間は人体通信を用い、前記ルータと前記ベース間は無線通信を用いることを特徴としたセンサネットワークシステム。
【請求項2】
前記人体通信および無線通信が伝送する前記感知信号から構成されるデータフレームは前記ノードを識別できる固有のID情報も含むことを特徴とした請求項1に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項3】
電界通信用の第1電極及び第2電極を備え、センサの感知信号を電圧波形に変換し、前記第1電極及び第2電極を介して送信するノードと、
電界通信用の第3電極及び第4電極と無線通信用の第1アンテナを備え、前記電圧波形を前記第3及び第4電極を介して受信し、前記電圧波形から前記センサの感知信号を検出し、このセンサの感知信号を含む信号を前記第1アンテナを介して再送信するルータと、
無線通信用の第2アンテナを備え、前記ルータが再送信したセンサの感知信号を含む信号を前記第2アンテナを介して検出するベースから構成され、
前記ノードと前記ルータ間は、前記各電極を人体に接触または近接させて前記人体を介して通信し、
前記ルータと前記ベース間は、前記各アンテナを介した無線通信を用いることを特徴としたセンサネットワークシステム。
【請求項4】
前記ノードは、心拍数を測定するセンサを備え、前記心拍数データをセンサの感知信号を含む電波波形として送信することを特徴とした請求項1〜3のいずれか1項に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項5】
前記ノードは、心拍数データ信号を変調するキャリア信号の周波数と心拍信号の周波数が異なることを特徴とした請求項4記載のセンサネットワークシステム。
【請求項6】
前記ノードは、心拍数データ信号を変調するキャリア信号の周波数を1MHz以上に設定した請求項5記載のセンサネットワークシステム。
【請求項7】
前記ノードは、心拍数を検出する検出モードと、ノードからルータへデータを送信する送信モードを備えることを特徴とした請求項4記載のセンサネットワークシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−108164(P2010−108164A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278549(P2008−278549)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
2.Bluetooth
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】