説明

センサヘッド、電気化学的センサおよび電気化学的センサの使用方法

【課題】電気化学的測定を行うためのセンサヘッドであって、簡単な操作で校正を行うことができ、小型かつ低価格で構成できるものを提供すること。
【解決手段】絶縁性をもつ搭載面31aを備える。搭載面31a上に、互いに離間して配置された第1電極41および第2電極42を備える。搭載面31a上に、第1電極41および第2電極42を一体として覆うように配置された保液性材料51を備える。保液性材料51に電気化学的測定の基準となる標準液が含浸されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はセンサヘッドに関し、より詳しくは、電気化学的測定を行うためのセンサヘッドに関する。
【0002】
また、この発明は、そのようなセンサヘッドを備えた電気化学的センサに関する。
【0003】
また、この発明は、そのような電気化学的センサを使用する電気化学的センサの使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
電気化学的センサとしては、例えば(株)堀場製作所製のコンパクトナトリウムイオンメータC−122やコンパクト硝酸イオンメータB−343などが市販されている。ユーザがこれらの電気化学的センサを用いて測定を行おうとする場合、測定精度を確保するために、予め校正用の標準液を用いて校正を行うことになっている。
【0005】
例えば、コンパクトナトリウムイオンメータC−122では、1液校正を行う場合、次の手順で校正を行っている。(1)洗浄液でセンサ(センサヘッドを指す。以下同様。)をきれいに洗い、乾いたティッシュペーパなどで拭き取る。この操作を2〜3回繰り返す。(2)センサにサンプリングシートを載せ、その上にSTD標準液(1つ目の標準液)を滴下する(直接センサに滴下しても良い。)。(3)安定後、STDボリウムで表示が20×100になるように合わせる。(4)洗浄液でセンサを洗浄した後、乾いたティッシュペーパなどできれいに拭き取る(校正終了)。
【0006】
1液校正ではなく、2液校正を行う場合は、さらに、SLOPE標準液(2つ目の標準液)を用いて、SLOPEボリウムで表示が15×10になるように合わせる、という操作が要求される。
【0007】
コンパクト硝酸イオンメータB−343でも、校正の手順は同様である。
【0008】
このような校正を行うことは、一般的なユーザにとって非常に煩わしく、操作ミスが生じる可能性もある。
【0009】
そこで、従来、例えば特開2009−150902号公報に記載のように、読出装置に挿入されるべきカートリッジ内の試料保持チャンバにスパイクを設けておき、ユーザが読出装置へカートリッジを挿入したとき、上記スパイクによってパッケージ(校正用の標準液で満たされた箔パック)を破裂させ、液体を試料保持チャンバから導管に導く装置が提案されている。これにより、ユーザは、校正のための操作を意識的に行わなくても、読出装置へカートリッジを挿入するだけで、自動的に校正を行わせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−150902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、同文献(特開2009−150902号公報)の装置では、試料保持チャンバから延びる導管を設けたり、この導管を通して液体が流れるようにポンプを設けたりしているため、装置が大型化し、高価格になるという問題がある。
【0012】
そこで、この発明の課題は、電気化学的測定を行うためのセンサヘッドであって、簡単な操作で校正を行うことができ、小型かつ低価格で構成できるものを提供することにある。
【0013】
また、この発明の課題は、そのようなセンサヘッドを備えて、簡単な操作で校正を行うことができ、小型かつ低価格で構成できる電気化学的センサを提供することにある。
【0014】
また、この発明の課題は、そのような電気化学的センサを使用する電気化学的センサの使用方法であって、簡単な操作で測定を行えるものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、この発明のセンサヘッドは、
電気化学的測定を行うためのセンサヘッドであって、
絶縁性をもつ搭載面と、
上記搭載面上に、互いに離間して配置された第1電極および第2電極と、
上記搭載面上に、上記第1電極および上記第2電極を一体として覆うように配置された保液性材料とを備え、
上記保液性材料に上記電気化学的測定の基準となる標準液が含浸されていることを特徴とする。
【0016】
本明細書で、「電気化学的測定」とは、測定対象物の特性(濃度など)に応じた電気的な信号(電流、電圧、電気量、あるいはそれらの変化)を発生する機能を有した変換要素を用いて、上記電気的な信号を検出し、上記電気的な信号を上記測定対象物の特性を表す量に換算する測定を意味する。
【0017】
また、本明細書で、「絶縁性」とは、電気的な絶縁性を意味する。
【0018】
また、本明細書で、「保液性」とは、水や水溶液などの液体を含んで保持できる性質を意味する。
【0019】
また、本明細書で、「含浸」とは、保液性材料の組織の隙間または構造中に液体が含まれていることを意味する。上記保液性材料が例えば電極に直接接していれば、上記保液性材料から上記液体がしみ出して上記電極に接触する状態になる。
【0020】
この発明のセンサヘッドでは、搭載面上の第1電極および第2電極を一体として覆うように保液性材料が配置されている。上記保液性材料に電気化学的測定の基準となる標準液が含浸されている。したがって、上記保液性材料から上記標準液がしみ出して上記第1電極および上記第2電極に接触している状態で、上記第1電極と上記第2電極との間の電位差または電流を検出することによって、上記標準液についての測定データ(電位差または電流。以下同様。)が得られる。したがって、例えばこのセンサヘッドがセンサ本体に装着されたことを条件として上記第1電極と上記第2電極との間の電位差または電流を検出すれば、ユーザは、校正のための操作を意識的に行わなくても、校正が可能となる。上記標準液についての測定データが得られた後、ユーザは、上記保液性材料に測定対象液を振り掛けるか、または上記保液性材料を測定対象液に浸漬する等によって、上記保液性材料中の上記標準液が上記測定対象液で置換された状態にする。この状態で、上記第1電極と上記第2電極との間の電位差または電流を検出することによって、上記測定対象液についての測定データ(電位差または電流。以下同様。)が得られる。上記測定対象液についての測定データを上記標準液についての測定データを用いて校正することによって、上記測定対象液についての電気化学的測定データが精度良く得られる。
【0021】
このセンサヘッドは、実質的に、搭載面上の第1電極および第2電極を一体として覆うように、上記標準液が含浸された保液性材料を配置することによって構成され得る。したがって、小型かつ低価格で構成できる。
【0022】
本明細書で、保液性材料に測定対象液を「振り掛ける」とは、生体が排出した測定対象液をその生体から上記保液性材料へ直接振り掛ける場合や、測定対象液をマイクロピペットなどの器具を用いて上記保液性材料へ一定量だけ滴下する場合を含む。
【0023】
また、本明細書で、上記保液性材料を測定対象液に「浸漬する」とは、上記保液性材料だけでなく、上記センサヘッド(特に搭載面)のうち上記保液性材料が配置された部分を併せて測定対象液に浸漬する場合を含む。
【0024】
一実施形態のセンサヘッドでは、上記保液性材料は、シートの形態をもち、このシートを通して測定対象液を上記第1電極および上記第2電極へ向けて透過させる透液性を有することを特徴とする。
【0025】
この一実施形態のセンサヘッドでは、上記保液性材料はシートの形態をもつ。したがって、このセンサヘッドは、薄厚に構成され得る。また、上記保液性材料は、このシートを通して測定対象液を上記第1電極および上記第2電極へ向けて透過させる透液性を有する。したがって、上記保液性材料に測定対象液を振り掛けるか、または上記保液性材料を測定対象液に浸漬する等によって、上記保液性材料中の上記標準液が上記測定対象液で置換された状態に容易にすることができる。
【0026】
一実施形態のセンサヘッドでは、上記保液性材料に含浸された上記標準液の変化を防止するように、少なくとも上記保液性材料を覆う密封部材を備えたことを特徴とする。
【0027】
本明細書で、標準液の「変化」とは、蒸発による乾燥や濃度の変化、空気との接触による酸化などを指す。
【0028】
この一実施形態のセンサヘッドでは、少なくとも上記保液性材料を覆う密封部材を備えている。この密封部材により、上記保液性材料に含浸された上記標準液の変化が防止される。したがって、高精度の校正が可能になる。このことは、例えばこのセンサヘッドを市販品として市場に出した場合に、このセンサヘッドを上記標準液によって高精度に校正できる期間を長く確保でき、有益である。なお、上記密封部材は、このセンサヘッドが使用される直前に、ユーザによって除去されるのが望ましい。
【0029】
一実施形態のセンサヘッドでは、上記密封部材は、上記保液性材料の面方向サイズよりも大きい面方向サイズをもつシートの形態をもち、上記シートの縁部が上記搭載面に密着して貼り付けられていることを特徴とする。
【0030】
本明細書で、「面方向サイズ」とは、搭載面に沿った方向の寸法を指す。
【0031】
この一実施形態のセンサヘッドでは、上記密封部材は、上記保液性材料の面方向サイズよりも大きい面方向サイズをもつシートの形態をもつ。したがって、このセンサヘッドは、薄厚に構成され得る。また、上記密封部材をなす上記シートの縁部が上記搭載面に密着して貼り付けられているので、上記標準液の変化を確実に防止できる。
【0032】
一実施形態のセンサヘッドでは、上記密封部材は、袋の形態をもち、上記第1電極、上記第2電極および上記保液性材料とともに上記搭載面をなす基板の全部または一部を覆っていることを特徴とする。
【0033】
この一実施形態のセンサヘッドでは、上記密封部材は袋の形態をもつ。したがって、センサヘッドの薄厚化を損なうことがない。また、上記密封部材は上記第1電極、上記第2電極および上記保液性材料とともに上記搭載面をなす基板の全部または一部を覆っているので、上記標準液の蒸発を確実に防止できる。
【0034】
一実施形態のセンサヘッドでは、上記保液性材料と上記第1電極および上記第2電極との間に配置された、液の透過を遮断する液遮断膜を備えたことを特徴とする。
【0035】
この一実施形態のセンサヘッドでは、上記保液性材料と上記第1電極および上記第2電極との間に配置された、液の透過を遮断する液遮断膜を備えている。したがって、上記保液性材料に含浸されている上記標準液が上記第1電極、上記第2電極に長期間接触することよって変質するような不具合が防止される。このことは、例えばこのセンサヘッドを市販品として市場に出した場合に、このセンサヘッドを上記標準液によって高精度に校正できる期間を長く確保でき、有益である。なお、この液遮断膜は、このセンサヘッドが使用される直前に、ユーザによって取り除かれるのが望ましい。
【0036】
特に、上記第1電極、上記第2電極がイオン濃度測定のための内部液(後述)を含む構成になっている場合、上記保液性部材に含浸されている上記標準液とそれらの内部液とが上記液遮断膜によって遮断されて、混合することがない。したがって、液同士の混合を考慮する必要が無く、上記第1電極、上記第2電極に最適な内部液と標準液とを採用できる。
【0037】
一実施形態のセンサヘッドでは、上記液遮断膜は、上記保液性材料と上記第1電極および上記第2電極との間から上記搭載面に沿った一方向に引き抜かれるように、上記保液性材料が存する領域から上記一方向に突出した突出部を有する一方、上記保液性材料は、上記液遮断膜を越えて上記一方向と反対側の方向に延在する延在部を有し、この延在部が上記搭載面に密着して貼り付けられていることを特徴とする。
【0038】
この一実施形態のセンサヘッドでは、上記液遮断膜は、上記保液性材料が存する領域から上記一方向に突出した突出部を有する。したがって、このセンサヘッドを使用する直前に、ユーザは上記液遮断膜の上記突出部を指でつまんで、上記液遮断膜を上記保液性材料と上記第1電極および上記第2電極との間から上記搭載面に沿った一方向に引き抜くことができる。一方、上記保液性材料は、上記液遮断膜を越えて上記一方向と反対側の方向に延在する延在部を有し、この延在部が上記搭載面に密着して貼り付けられている。したがって、上記液遮断膜が上記一方向に引き抜かれたとき、上記保液性材料は、上記液遮断膜に伴って除去されることなく、上記第1電極および上記第2電極に直接接する状態になる。したがって、上記保液性材料から上記標準液がしみ出して上記第1電極および上記第2電極に接触する状態になる。この状態で、上記第1電極と上記第2電極との間の電位差または電流を検出することによって、上記標準液についての測定データが精度良く得られる。この標準液についての測定データを用いて校正が行われる。
【0039】
一実施形態のセンサヘッドでは、上記液遮断膜の上記突出部は上記密封部材と結合されていることを特徴とする。
【0040】
この一実施形態のセンサヘッドでは、上記液遮断膜の上記突出部は上記密封部材と結合されている。したがって、ユーザがこのセンサヘッドを使用する直前に、上記密封部材を除去するとき、上記密封部材が上記突出部を介して上記液遮断膜と結合されていることに気付き、上記液遮断膜を引き抜くことを促される。ユーザは、上記密封部材を指でつまんで上記搭載面に沿った一方向に引っ張ることによって、上記突出部を介して上記液遮断膜を上記保液性材料と上記第1電極および上記第2電極との間から上記一方向に引き抜くことができる。つまり、上記密封部材を除去する1回の操作で、上記液遮断膜を同時に引き抜くことができる。この場合、ユーザが上記液遮断膜を引き抜くことを忘れるような事態が防止される。
【0041】
一実施形態のセンサヘッドでは、上記保液性材料が上記第1電極および上記第2電極と直接接していることを特徴とする。
【0042】
この一実施形態のセンサヘッドでは、上記保液性材料が上記第1電極および上記第2電極と直接接している。したがって、ユーザがこのセンサヘッドを使おうと思った時点で、既に上記保液性材料から上記標準液がしみ出して上記第1電極および上記第2電極に接触する状態になっている。この状態で、上記第1電極と上記第2電極との間の電位差または電流を検出することによって、直ちに上記標準液についての測定データが得られる。
【0043】
一実施形態のセンサヘッドでは、上記保液性材料はゲル状であることを特徴とする。
【0044】
この一実施形態のセンサヘッドでは、上記保液性材料はゲル状であるから、上記保液性材料として、例えば、寒天、ゼラチン、アガロースゲル、セルロースゲル、ポリアクリルアミドなどの様々な材料を採用できる。
【0045】
一実施形態のセンサヘッドでは、上記保液性材料は繊維を集合させた布状または紙状であることを特徴とする。
【0046】
この一実施形態のセンサヘッドでは、上記保液性材料は繊維を集合させた布状または紙状であるから、上記保液性材料として、例えば、濾紙、キムワイプ(日本製紙クレシア株式会社の登録商標)、フィルタなどの様々な材料を採用できる。
【0047】
一実施形態のセンサヘッドでは、上記保液性材料は多孔質材料であることを特徴とする。
【0048】
この一実施形態のセンサヘッドでは、上記保液性材料は多孔質材料であるから、スポンジなどの様々な材料を採用できる。
【0049】
一実施形態のセンサヘッドでは、上記保液性材料は上記標準液に対する耐性をもつことを特徴とする。
【0050】
本明細書で、標準液に対する「耐性」とは、標準液に接しても物理的または化学的に変化せず、元の状態を維持できる性質を意味する。
【0051】
この一実施形態のセンサヘッドでは、上記保液性材料は上記標準液に対する耐性をもつ。したがって、上記保液性材料に上記標準液が含浸されている状態を長期間維持することができる。このことは、例えばこのセンサヘッドを市販品として市場に出した場合に有益である。
【0052】
一実施形態のセンサヘッドでは、
上記第1電極は、導電性をもつ第1芯材と、この第1芯材の表面に接して設けられた、測定対象液に含まれた特定のイオン種を選択的に透過または吸着するイオン選択膜とからなり、
上記第2電極は、導電性材料のみからなることを特徴とする。
【0053】
この一実施形態のセンサヘッドによれば、上記特定のイオン種の濃度の測定が可能になる。
【0054】
一実施形態のセンサヘッドでは、
上記第1電極は、導電性をもつ第1芯材と、この第1芯材の表面に接して設けられた第1イオン選択膜とからなり、
上記第2電極は、導電性をもつ第2芯材と、この第2芯材の表面に接して設けられた第2イオン選択膜とからなり、
上記第1イオン選択膜、上記第2イオン選択膜は、それぞれ上記測定対象液に含まれた互いに異なるイオン種を選択的に透過または吸着することを特徴とする。
【0055】
この一実施形態のセンサヘッドによれば、上記互いに異なるイオン種間の濃度比の測定が可能になる。
【0056】
一実施形態のセンサヘッドでは、
上記第1電極は、導電性をもつ第1芯材と、上記第1芯材を取り囲む絶縁性をもつ第1外囲器と、上記第1外囲器と上記第1芯材との間に満たされたイオン濃度測定のための第1内部液とを含み、
上記第2電極は、導電性をもつ第2芯材と、上記第2芯材を取り囲む絶縁性をもつ第2外囲器と、上記第2外囲器と上記第2芯材との間に満たされたイオン濃度測定のための第2内部液とを含み、
上記第1外囲器、上記第2外囲器の上記保液性材料に対向する面に、それぞれ上記第1内部液、上記第2内部液と上記標準液または測定対象液との間の接触を許容し得る第1窓部、第2窓部が設けられていることを特徴とする。
【0057】
この一実施形態のセンサヘッドでは、上記第1電極、上記第2電極は、それぞれ上記第1外囲器と上記第1芯材との間、上記第2外囲器と上記第2芯材との間に満たされたイオン濃度測定のための第1内部液、第2内部液を含んでいる。上記標準液または測定対象液は、上記第1窓部、上記第2窓部を通して、それぞれ上記第1内部液、上記第2内部液との間の接触が許容され得る。この結果、上記第1内部液、上記第2内部液として様々な材料を選択して設定することによって、様々なイオン種を対象とする電気化学的測定用のセンサヘッドを構成できる。
【0058】
一実施形態のセンサヘッドでは、上記第1内部液、上記第2内部液はそれぞれ上記標準液と同じであることを特徴とする。
【0059】
この一実施形態のセンサヘッドでは、上記第1内部液、上記第2内部液はそれぞれ上記標準液と同じであるから、上記第1窓部、上記第2窓部を通してそれぞれ上記第1内部液、上記第2内部液と上記標準液との間の混合が生じても、上記第1内部液、上記第2内部液、上記標準液の組成に変動が生じない。したがって、高精度の校正が可能になる。また、このことは、例えばこのセンサヘッドを市販品として市場に出した場合に、このセンサヘッドを上記標準液によって高精度に校正できる期間を長く確保でき、有益である。
【0060】
一実施形態のセンサヘッドでは、
上記第1窓部に、上記測定対象液に含まれた特定のイオン種を選択的に透過または吸着するイオン選択膜が設けられ、
上記第2窓部に、上記標準液または測定対象液と上記第2内部液との間の流通を許容する液絡が設けられていることを特徴とする。
【0061】
この一実施形態のセンサヘッドでは、上記特定のイオン種の濃度の測定が可能になる。
【0062】
一実施形態のセンサヘッドでは、上記第1窓部、上記第2窓部にそれぞれ、上記測定対象液に含まれた互いに異なるイオン種を選択的に透過または吸着する第1イオン選択膜、第2イオン選択膜が設けられていることを特徴とする。
【0063】
この一実施形態のセンサヘッドによれば、上記互いに異なるイオン種間の濃度比の測定が可能になる。
【0064】
一実施形態のセンサヘッドでは、
上記搭載面は、所定のサイズをもつ基板の一方の主面であり、
上記搭載面上で、上記第1電極、上記第2電極からそれぞれ上記基板の縁部へ向かって延在する第1引出電極および第2引出電極を備えたことを特徴とする。
【0065】
この一実施形態のセンサヘッドでは、上記搭載面上で、上記第1電極、上記第2電極からそれぞれ上記基板の縁部へ向かって延在する第1引出電極および第2引出電極を備える。したがって、例えばユーザがこのセンサヘッドの上記第1引出電極、上記第2引出電極が延在する部分(これを「電極パッド部」と呼ぶ。)を、上記第1引出電極、上記第2引出電極に対応する接点をもつコネクタに装着する。これにより、上記コネクタを介して、上記第1電極と上記第2電極との間の電位差または電流を容易に検出することができる。また、測定対象液について電気化学的測定データが得られた後は、上記コネクタから上記センサヘッドを容易に取り外すことができる。したがって、このセンサヘッドは、小型かつ低価格で構成できることと相俟って、使い捨てが容易である。
【0066】
この発明の電気化学的センサは、
上記発明のセンサヘッドと、
上記第1電極と上記第2電極との間の電位差または電流を検出する検出部とを備えたことを特徴とする。
【0067】
この発明の電気化学的センサでは、上記センサヘッドの上記保液性材料から上記標準液がしみ出して上記第1電極および上記第2電極に接触している状態で、上記検出部が上記第1電極と上記第2電極との間の電位差または電流を検出する。これによって、上記標準液についての測定データが得られる。したがって、例えばこのセンサヘッドがセンサ本体に装着されたことを条件として上記第1電極と上記第2電極との間の電位差または電流を検出すれば、ユーザが校正のための操作を意識的に行わなくても、校正が可能となる。上記標準液についての測定データが得られた後、ユーザは、上記保液性材料に測定対象液を振り掛けるか、または上記保液性材料を測定対象液に浸漬する等によって、上記保液性材料中の上記標準液が上記測定対象液で置換された状態にする。この状態で、上記検出部によって上記第1電極と上記第2電極との間の電位差または電流を検出することによって、上記測定対象液についての測定データが得られる。上記測定対象液についての測定データを上記標準液についての測定データを用いて校正することによって、上記測定対象液についての電気化学的測定データが精度良く得られる。
【0068】
また、上記センサヘッドが小型かつ低価格で構成できることから、この電気化学的センサも全体として小型かつ低価格で構成できる。
【0069】
別の局面では、この発明の電気化学的センサは、
上記発明のセンサヘッドであって、上記搭載面は、所定のサイズをもつ基板の一方の主面であり、上記搭載面上で、上記第1電極、上記第2電極からそれぞれ上記基板の縁部へ向かって延在する第1引出電極および第2引出電極を備えたものと、
上記センサヘッドの上記第1引出電極、上記第2引出電極が延在する電極パッド部が着脱可能に装着されるコネクタを備えた本体と、
上記本体に搭載され、上記コネクタに装着された上記センサヘッドの上記第1引出電極、上記第2引出電極を介して、上記第1電極と上記第2電極との間の電位差または電流を検出する検出部とを備えたことを特徴とする。
【0070】
この発明の電気化学的センサでは、使用に際し、ユーザが上記センサヘッドの上記電極パッド部を、上記第1引出電極、上記第2引出電極に対応する接点をもつコネクタに装着する。そして、上記センサヘッドの上記保液性材料から上記標準液がしみ出して上記第1電極および上記第2電極に接触している状態で、上記検出部が上記第1電極と上記第2電極との間の電位差または電流を検出する。これによって、上記標準液についての測定データが得られる。したがって、ユーザが校正のための操作を意識的に行わなくても、校正が可能となる。上記標準液についての測定データが得られた後、ユーザは、上記保液性材料に測定対象液を振り掛けるか、または上記保液性材料を測定対象液に浸漬する等によって、上記保液性材料中の上記標準液が上記測定対象液で置換された状態にする。この状態で、上記検出部によって上記第1電極と上記第2電極との間の電位差または電流を検出することによって、上記測定対象液についての測定データが得られる。上記測定対象液についての測定データを上記標準液についての測定データを用いて校正することによって、上記測定対象液についての電気化学的測定データが精度良く得られる。
【0071】
ここで、上記センサヘッドの上記保液性材料が配置された部分は、上記本体から外部へ突出した態様をとり得る。その場合、ユーザが上記本体を手に持って使用する手持ちタイプの電気化学的センサが構成され得る。このような手持ちタイプの電気化学的センサでは、ユーザは、上記保液性材料に測定対象液を振り掛ける操作や、上記保液性材料を測定対象液に浸漬する操作等を容易に行うことができる。
【0072】
一実施形態の電気化学的センサでは、
上記標準液について上記検出部を動作させて上記電位差または電流を検出する第1の制御を行う第1の制御部と、
上記測定対象液について上記検出部を動作させて上記電位差または電流を検出する第2の制御を行う第2の制御部と、
上記標準液の特定成分の濃度、上記標準液について検出された上記電位差または電流、および上記測定対象液について検出された上記電位差または電流を用いて演算を行って、上記測定対象液の電気化学的測定データを表す信号を出力する第3の制御部とを備えたことを特徴とする。
【0073】
この一実施形態の電気化学的センサでは、第1の制御部が、上記標準液について上記検出部を動作させて上記電位差または電流を検出する第1の制御を行う。第2の制御部が、上記測定対象液について上記検出部を動作させて上記電位差または電流を検出する第2の制御を行う。そして、第3の制御部が、上記標準液の特定成分の濃度、上記標準液について検出された上記電位差または電流、および上記測定対象液について検出された上記電位差または電流を用いて演算を行って、上記測定対象液の電気化学的測定データを表す信号を出力する。これにより、上記測定対象液の上記特定成分の濃度が得られる。
【0074】
一実施形態の電気化学的センサでは、
上記第1の制御部は、上記コネクタに上記センサヘッドの上記電極パッド部が装着されたことを条件として上記第1の制御を開始し、
上記第2の制御部は、上記第1の制御の終了後、所定の指示の入力を条件として上記第2の制御を開始することを特徴とする。
【0075】
この一実施形態の電気化学的センサでは、上記第1の制御部は、上記コネクタに上記センサヘッドの上記電極パッド部が装着されたことを条件として上記第1の制御を開始する。したがって、ユーザが校正のための操作を意識的に行わなくても、校正が可能となる。上記第2の制御部は、上記第1の制御の終了後、所定の指示の入力を条件として上記第2の制御を開始する。上記所定の指示は、上記保液性材料中の上記標準液が上記測定対象液で置換された状態で上記検出部を動作させるものとする。これにより、上記測定対象液についての電気化学的測定データが精度良く得られる。
【0076】
この発明の電気化学的センサの使用方法は、
上記発明のセンサヘッドであって、上記保液性材料が上記第1電極および上記第2電極と直接接しているものと、上記第1電極と上記第2電極との間の電位差または電流を検出する検出部とを備えた電気化学的センサを使用する電気化学的センサの使用方法であって、
上記標準液について上記検出部を動作させて上記電位差または電流を検出し、
続いて、上記保液性材料に測定対象液を振り掛けるか、または上記保液性材料を測定対象液に浸漬することによって、上記保液性材料中の上記標準液を上記測定対象液で置換した状態で、上記測定対象液について上記検出部を動作させて上記電位差または電流を検出することを特徴とする。
【0077】
この発明の電気化学的センサの使用方法では、上記標準液について測定データが得られた後、ユーザが上記保液性材料に測定対象液を振り掛けるか、または上記保液性材料を測定対象液に浸漬することによって、上記測定対象液について測定データが得られる。したがって、ユーザは簡単な操作で測定を行うことが可能となる。特に、生体が排出した測定対象液(例えば、尿)をその生体から上記保液性材料へ直接振り掛ける場合は、ユーザは上記測定対象液を溜める容器や上記測定対象液を取り扱う器具を用意する必要が無く、便利である。
【0078】
別の局面では、この発明の電気化学的センサの使用方法は、
上記発明のセンサヘッドであって、上記保液性材料と上記第1電極および上記第2電極との間に配置された、液の透過を遮断する液遮断膜を備えたものと、上記第1電極と上記第2電極との間の電位差または電流を検出する検出部とを備えた電気化学的センサを使用する電気化学的センサの使用方法であって、
上記保液性材料と上記第1電極および上記第2電極との間から上記液遮断膜を引き抜いて、上記保液性材料を上記第1電極および上記第2電極に接触させて、上記標準液について上記検出部を動作させて上記電位差または電流を検出し、
続いて、上記保液性材料に測定対象液を振り掛けるか、または上記保液性材料を測定対象液に浸漬することによって、上記保液性材料中の上記標準液を上記測定対象液で置換した状態で、上記測定対象液について上記検出部を動作させて上記電位差または電流を検出することを特徴とする。
【0079】
この発明の電気化学的センサの使用方法では、ユーザが上記液遮断膜を引き抜くことによって上記標準液について測定データが得られた後、ユーザが上記保液性材料に測定対象液を振り掛けるか、または上記保液性材料を測定対象液に浸漬することによって、上記測定対象液について測定データが得られる。したがって、ユーザは簡単な操作で測定を行うことが可能となる。特に、生体が排出した測定対象液(例えば、尿)をその生体から上記保液性材料へ直接振り掛ける場合は、ユーザは上記測定対象液を溜める容器や上記測定対象液を取り扱う器具を用意する必要が無く、便利である。
【発明の効果】
【0080】
以上より明らかなように、この発明のセンサヘッドによれば、電気化学的測定のために、簡単な操作で校正を行うことができ、小型かつ低価格で構成できる。
【0081】
また、この発明の電気化学的センサでは、簡単な操作で校正を行うことができ、小型かつ低価格で構成できる。
【0082】
また、この発明の電気化学的センサの使用方法によれば、簡単な操作で測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】この発明の一実施形態の電気化学的センサのブロック構成を示す図である。
【図2】図2(A)は、図1の電気化学的センサが備え得るセンサヘッドであって、保液性材料と電極とが直接接しているもの(これを「接触タイプ」と呼ぶ。)の分解斜視図である。図2(B)は、図1の電気化学的センサが備え得るセンサヘッドであって、保液性材料と電極との間に使用に際して引き抜かれるべき液遮断膜が存在するもの(これを「引き抜きタイプ」と呼ぶ。)の分解斜視図である。
【図3】図2(A)に対応する完成状態のセンサヘッドを、対応するコネクタとともに示す斜視図である。
【図4】袋の形態をもつ密封部材で覆われた完成状態のセンサヘッドを示す図である。
【図5】接触タイプの完成状態のセンサヘッドの断面(図3におけるV−V線断面に相当)を示す図である。
【図6】引き抜きタイプの完成状態のセンサヘッドの断面を示す図である。
【図7】接触タイプのセンサヘッドの一つの構成例を示す断面図である。
【図8】引き抜きタイプのセンサヘッドの一つの構成例を示す断面図である。
【図9】接触タイプのセンサヘッドの別の構成例を示す断面図である。
【図10】引き抜きタイプのセンサヘッドの別の構成例を示す断面図である。
【図11】接触タイプのセンサヘッドのさらに別の構成例を示す断面図である。
【図12】引き抜きタイプのセンサヘッドのさらに別の構成例を示す断面図である。
【図13】接触タイプのセンサヘッドのさらに別の構成例を示す断面図である。
【図14】引き抜きタイプのセンサヘッドのさらに別の構成例を示す断面図である。
【図15】接触タイプのセンサヘッドを備えた電気化学的センサを用いて、測定対象液中の特定成分の濃度を測定する場合のフローを示す図である。
【図16】接触タイプのセンサヘッドを備えた電気化学的センサを用いて、測定対象液中の第1特定成分と第2特定成分との間の濃度比を測定する場合のフローを示す図である。
【図17】図17(A)、図17(B)は、それぞれセンサヘッドの検証実験に用いた測定系の構成を示す図である。
【図18】図18(A)、図18(B)は、それぞれセンサヘッドの検証実験に用いた測定系の構成を示す図である。
【図19】図19(A)は、検証実験に用いた接触タイプのセンサヘッドの分解図である。図19(B)は、図19(A)に対応する完成状態のセンサヘッドの構成を示す断面図である。
【図20】測定対象液中の特定成分の様々な濃度についての、市販品センサヘッドによる測定結果と実施例センサヘッドによる測定結果との相関を示す図である。
【図21】測定対象液中の第1特定成分と第2特定成分との間の濃度比を可変して設定した場合の、実施例のセンサヘッドによる測定結果を示す図である。
【図22】実施例のセンサヘッドに対して、測定対象液としての濃度の異なる3種類のNaCl水溶液を順次繰り返して振り掛けた場合の、検出電位差の経時変化を示す図である。
【図23】図22の測定データを用いて得られた、設定NaCl濃度と検出電位差との関係を示す図である。
【図24】実施例のセンサヘッドにNaCl水溶液を直接振り掛けた場合の検出電位の経時変化と、比較例のセンサヘッドにNaCl水溶液を直接振り掛けた場合の検出電位の経時変化と、比較例のセンサヘッドをNaCl水溶液に浸漬した場合の検出電位の経時変化とを併せて示す図である。
【図25】図24の測定データを解析して得られた結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0084】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0085】
(第1実施形態)
図1は、この発明の一実施形態の電気化学的センサ(全体を符号90で示す。)のブロック構成を示している。
【0086】
この電気化学的センサ90は、大別して、センサヘッド30と、筐体10′を有する本体10とを備えている。本体10は、センサヘッド30が着脱可能に装着されるコネクタ21を備えている。コネクタ21は、筐体10′の壁面を貫通して設けられている。本体10には、制御部11、データ入力部12、操作部13、センサヘッド接続検知部14および表示部20が搭載されて収容されている。制御部11は後述の演算部15を含んでいる。
【0087】
本体10は、この例では、ユーザの手で把持されるべき細長い角柱状の外形を有している。センサヘッド30は、詳しくは後述するが、略矩形板状の外形を有している。この結果、この電気化学的センサ90は、ユーザが本体10を手に持って使用する手持ちタイプの装置として構成されている。
【0088】
センサヘッド30は、この発明に従って幾つかの形態をとり得る。図2(A)は、上記センサヘッド30の一例としての接触タイプのセンサヘッド30Aを分解状態で示している。図3は、センサヘッド30Aの完成状態を示している。なお、「接触タイプ」とは、後述の保液性材料51と電極41,42とが直接接しているものを意味する。
【0089】
図2(A)によって良く分かるように、このセンサヘッド30Aは、所定のサイズを持つ矩形状の基板31と、この基板31の一方の主面である搭載面31a上に、1つの辺31cに沿って互いに離間して配置された円板状または円柱状の第1電極41および第2電極42と、これらの第1電極41、第2電極42からそれぞれ基板31の反対側の辺(縁部)31eへ向かってX方向に互いに平行に延在する第1引出電極43および第2引出電極44を備えている。
【0090】
基板31は、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ガラス、シリコン、ポリイミドフィルムまたはガラスエポキシなどの絶縁性材料からなっている。したがって、搭載面31aも、絶縁性をもつ。第1引出電極43、第2引出電極44は、Pt、Ag、Au、Ir、CまたはIrOなどの導電性材料からなっている。
【0091】
さらに、このセンサヘッド30Aは、搭載面31a上に、第1電極41および第2電極42を一体として覆うように配置された保液性材料としての矩形の保液性シート51を備えている。この保液性シート51は、搭載面31a上の辺31cに近い略半分の領域を覆っている。保液性シート51のうち搭載面31aに対向する部分は、図示しない接着剤(両面テープでも良い。)によって搭載面31aに接着されている。
【0092】
保液性シート51には、電気化学的測定の基準となる標準液が含浸されている。また、保液性シート51は、このシートを通して測定対象液を第1電極41および第2電極42へ向けて透過させる透液性を有する。これにより、保液性シート51に測定対象液を振り掛けるか、または保液性シート51を測定対象液に浸漬する等によって、保液性シート51中の標準液が測定対象液で置換された状態に容易にすることができる。
【0093】
保液性シート51は、この例では繊維を集合させた紙状の材料からなる。この他に、保液性シート51の材料としては、例えば、寒天、ゼラチン、アガロースゲル、セルロースゲル、ポリアクリルアミドなどのゲル状の材料、繊維を集合させた布状の材料、またはスポンジなどの多孔質材料のような様々な材料を採用できる。保液性シート51は標準液に対する耐性をもつのが望ましい。これにより、保液性シート51に標準液が含浸されている状態を長期間維持することができる。このことは、例えばこのセンサヘッド30Aを市販品として市場に出した場合に有益である。
【0094】
さらに、このセンサヘッド30Aは、保液性シート51に含浸された標準液の変化を防止するように、保液性シート51を覆う密封部材としての矩形の密封シート71を備えている。
【0095】
この例では、密封シート71は、保液性シート51の面方向サイズよりも大きい面方向サイズをもつ。搭載面31a上で保液性シート51の4つの辺51c,51d,51e,51fは、それぞれ密封シート71の4つの辺71c,71d,71e,71fよりも一定寸法だけ内側に後退した位置にある。密封シート71の3つの辺71c,71d,71fは、基板31の3つの辺31c,31d,31fと一致した位置にある。密封シート71の4つの辺71c,71d,71e,71fに沿った縁部(保液性シート51よりも外側に位置する部分)は、矩形枠状の両面テープ61を介して搭載面31aに密着して貼り付けられている。密封シート71は、保液性シート51と同様にシートの形態をもつので、このセンサヘッド30Aは、薄厚に構成され得る。
【0096】
この密封シート71により、保液性シート51に含浸された標準液の変化が防止される。したがって、高精度の校正が可能になる。このことは、例えばこのセンサヘッド30Aを市販品として市場に出した場合に、このセンサヘッド30Aを標準液によって高精度に校正できる期間を長く確保でき、有益である。なお、密封シート71は、このセンサヘッド30Aが使用される直前に、ユーザによって除去されるのが望ましい。密封シート71は、両面テープ61を介して搭載面31aに貼り付けられているので、ユーザは爪を使って密封シート71を容易に除去することができる。
【0097】
図3によって良く分かるように、センサヘッド30Aのうち密封シート71によって覆われていない部分(これを「電極パッド部」と呼ぶ。)30xでは、第1引出電極43、第2引出電極44が露出している。
【0098】
図5(図3におけるV−V線断面に相当)に示すように、この例(接触タイプ)では、保液性シート51は第1電極41および第2電極42に直接接している。したがって、ユーザがこのセンサヘッドを使おうと思った時点で、既に保液性シート51から上記標準液がしみ出して第1電極41および第2電極42に接触する状態になっている。
【0099】
上述のようなセンサヘッド30Aは、比較的構成要素が少なく、小型かつ低価格で構成できる。
【0100】
図1中のコネクタ21は、図3中に具体的に示すように、センサヘッド30Aの電極パッド部30xが挿入されるべきスロット22を有している。スロット22内で、センサヘッド30Aの第1引出電極43、第2引出電極44に対応する位置には、くの字状の板ばねからなるコンタクト部材23,24が設けられている。ユーザがセンサヘッド30Aの電極パッド部30xをスロット22内に挿入すると、第1引出電極43、第2引出電極44がコンタクト部材23,24と接触して導通する。この結果、センサヘッド30Aの第1電極41と第2電極42との間の電位差または電流が、コネクタ21を介して、本体10によって検出され得る。
【0101】
ここで、センサヘッド30Aがコネクタ21を介して本体10に装着された状態では、センサヘッド30Aのうち保液性シート51が配置された部分は、本体10から外部へ突出した態様になる。これにより、ユーザは、本体10を手に持って、保液性シート51に測定対象液を振り掛ける操作や、保液性シート51を測定対象液に浸漬する操作を容易に行うことができる。
【0102】
図1中の本体10に搭載されたデータ入力部12は、センサヘッド30Aの第1電極41と第2電極42との間の電位差または電流を入力する。
【0103】
センサヘッド接続検知部14は、コネクタ21のコンタクト部材23,24間がオープンであるか否かに基づいて、センサヘッド30Aが本体10に装着されているか否かを検出する。なお、図3中のスロット22内にリミットスイッチ(図示せず)を設けても良い。そして、センサヘッド接続検知部14は、基板31の一部が当接することによって上記リミットスイッチがオンしているか否かに基づいて、センサヘッド30Aが本体10に装着されているか否かを検出しても良い。
【0104】
図1中の制御部11は、ソフトウェアによって動作するCPU(中央演算処理ユニット)を含み、この電気化学的センサ90全体の動作を制御する。特に、制御部11は、検出部としての演算部15を含んでいる。詳しくは後述するが、演算部15は、校正試料測定電位記録部16と、演算式計算部17と、検体測定電位記録部18と、濃度換算処理部19とを備えている。
【0105】
図1中の操作部13は、この例では押しボタンスイッチからなり、ユーザによる測定対象液についての測定開始の指示を入力するために働く。
【0106】
表示部20は、この例ではLCD(液晶表示素子)からなり、制御部11による演算結果などの各種情報を表示する。
【0107】
この電気化学的センサ90を使用する直前に、ユーザは、センサヘッド30Aから密封シート71を除去し、センサヘッド30Aの電極パッド部30xを本体10のコネクタ21に装着する。この時点で、センサヘッド30Aでは、既に保液性シート51から標準液がしみ出して第1電極および第2電極に接触している。
【0108】
センサヘッド30Aが本体10に装着されると、そのことをセンサヘッド接続検知部14が検出し、これに応じて、演算部15が第1の制御部として働いて、第1電極41と第2電極42との間の電位差または電流を検出する。これによって、直ちに標準液についての測定データ(電位差または電流。以下同様。)が得られる。校正試料測定電位記録部16が、この標準液についての電気化学的測定データを記憶する。したがって、ユーザは、校正のための操作を意識的に行わなくても、校正が可能となる。
【0109】
標準液についての測定データが得られた後、ユーザは、保液性シート51に測定対象液を振り掛けるか、または保液性シート51を測定対象液に浸漬する等によって、保液性シート51中の標準液が測定対象液で置換された状態にする。この状態で、ユーザは、本体10の操作部13を操作(この例では押しボタンスイッチを押下)して、測定対象液についての測定開始の指示を入力する。これに応じて、演算部15が第2の制御部として働いて、第1電極41と第2電極42との間の電位差または電流を検出する。これによって、測定対象液についての測定データ(電位差または電流。以下同様。)が得られる。検体測定電位記録部18が、この測定対象液についての測定データを記憶する。
【0110】
この後、演算部15が第3の制御部として働いて、演算式計算部17が測定対象液についての測定データを標準液(濃度は既知)についての測定データを用いて校正し、濃度換算処理部19が測定対象液についての電気化学的測定データ(この例では、特定成分の濃度)を表す信号を出力する。これにより、測定対象液についての電気化学的測定データが精度良く得られる。
【0111】
このように、この電気化学的センサ90によれば、ユーザは、校正のための操作を意識的に行わなくても良く、簡単な操作で測定を行うことが可能となる。特に、生体が排出した測定対象液(例えば、尿)をその生体から保液性シート51へ直接振り掛ける場合は、ユーザは測定対象液を溜める容器や測定対象液を取り扱う器具を用意する必要が無く、便利である。また、この電気化学的センサ90は、測定のための配管設備が無い場所でも使用できる。
【0112】
また、センサヘッド30Aが小型かつ低価格で構成できることから、この電気化学的センサ90も全体として小型かつ低価格で構成できる。
【0113】
また、測定対象液について電気化学的測定データが得られた後は、コネクタ21からセンサヘッド30Aを容易に取り外すことができる。したがって、センサヘッド30Aは、小型かつ低価格で構成できることと相俟って、使い捨てが容易である。よって、このセンサヘッド30Aは、汚染された測定対象物や環境などのデータを取得するのに適する(使用後に使い捨てすれば良いからである。)。
【0114】
なお、上記センサヘッド30Aのように電極パッド部30xが露出した構成では、ユーザは、センサヘッド30Aをセンサ本体10に装着する前ではなく、センサヘッド30Aに測定対象液を振り掛けるか、またはセンサヘッドを測定対象液に浸漬する直前に密封シート71を取り外しても良い。
【0115】
(第2実施形態)
上述の例では、密封部材として、シートの形態をもつ密封シート71を備えたが、これに限られるものではない。例えば図4に示すように、密封シート71に代えて、密封部材として、袋の形態をもつ密封パック72を設けても良い。
【0116】
この図4の例では、密封パック72は、基板31の面方向サイズよりも大きい面方向サイズをもつ矩形の表シート72aと裏シート72bとからなっている。表シート72aと裏シート72bは、少なくとも4辺で互いに密着され、第1電極41、第2電極42および保液性シート51とともに搭載面31aをなす基板31の全部を覆っている。このような密封パック72を備えた場合も、センサヘッドの薄厚化を損なうことがない。また、保液性シート51に含浸された標準液の蒸発を確実に防止できる。なお、この密封パック72は、センサヘッドをセンサ本体10に装着する前に除去されることが予定される。
【0117】
なお、密封パック72を引出電極43,44が延在する方向(X方向)に関して略半分のサイズにして、密封パックが基板31の略半分(保液性シート51が配置された側)のみを覆い、電極パッド部30xが露出する構成にしても良い。そのような構成では、ユーザは、センサヘッドをセンサ本体10に装着する前ではなく、センサヘッドに測定対象液を振り掛けるか、またはセンサヘッドを測定対象液に浸漬する直前に密封パック72を取り外しても良い。
【0118】
(第3実施形態)
図7は、図3に示したセンサヘッド30Aがイオンセンサとして取り得る具体的な一つの構成例(符号30A−1で表す。)を示している。
【0119】
この構成例のセンサヘッド30A−1では、第1電極41は、導電性をもつ第1芯材41mと、この第1芯材41mの表面に接して設けられた、測定対象液に含まれた特定のイオン種を選択的に透過または吸着するイオン選択膜41iとからなり、イオン選択電極を構成している。一方、第2電極42は、導電性材料(第2芯材)42mのみからなり、不感応性電極である基準電極を構成している。
【0120】
この図7のセンサヘッド30A−1によって、測定対象液に含まれた特定のイオン種(これを適宜「特定イオン」と呼ぶ。)の濃度が、次のような原理によって求められる。
【0121】
一般に、電極電位からイオン濃度を測定するポテンショメトリックセンサは、式(1)のようにネルンストの式に従った、化学種の活量の対数(log)に比例した応答を示す。
E=E+Sloga …(1)
【0122】
ここで、Eはイオン選択電極の電位、Eは各電極に固有の式量電位、Sはイオン選択電極の理論電位勾配を現すネルンスト定数、aは電極界面でのイオン活量を表す。活量とは、混合物中でのその物質が占める粒子数の割合を指す。測定対象液としての典型的な希薄溶液では、イオン活量として体積モル濃度Cを代用できる。
【0123】
イオン選択電極41と常に一定の電位を示す基準電極42とを考え、系での基準電位をEとすると、イオン選択電極41と基準電極42との間の電位差Eは、一般に式(2)のように表される。
=E+SlogC …(2)
【0124】
測定対象液に含まれた特定イオンの濃度を求めるためには、系での電位勾配(ネルンスト定数)Sと基準電位Eを予め求めておく必要がある。これらの値S、Eを校正により求める。ここで、電位勾配Sについては、作製したセンサのロット内では一定と仮定し、予め測定しておいた既知の一定の値を採用する。基準電位Eについては、保液性シート51に含浸された標準液について、イオン選択電極41と基準電極42との間の電位差を検出することにより求めることができる。すなわち、標準液における特定イオンの濃度(既知)をCrefとし、標準液について検出された電位差をErefとすると、式(2)から、
=Eref−SlogCref …(3)
が得られる。
【0125】
保液性シート51に測定対象液を振り掛けるか、または保液性シート51を測定対象液に浸漬する等によって、保液性シート51中の標準液が測定対象液で置換された状態で、測定対象液についてイオン選択電極41と基準電極42との間の電位差を検出する。測定対象液中の特定イオンの濃度をCとし、測定対象液について検出された電位差をEとすると、
logC=(E−E)/S
となる。
【0126】
よって、測定対象液中の特定イオンの濃度Cは、式(4)のように求められる。

…(4)
【0127】
図15は、図7のセンサヘッド30A−1を用いて、ユーザが電気化学的センサ90を使用する際の使用方法のフローを示している。
【0128】
まず、図15のステップS1に示すように、ユーザはセンサヘッド30A−1から密封部材としての密封シート71を除去する。なお、既述のように、ユーザがセンサヘッド30A−1を使おうと思った時点で、既に保液性シート51から標準液がしみ出して第1電極41および第2電極42に接触する状態になっている。
【0129】
続いて、図15のステップS2に示すように、ユーザはセンサヘッド30A−1をセンサ本体10に装着する。具体的には、センサヘッド30A−1の電極パッド部30x(図3参照)をコネクタ21に装着する。
【0130】
これに応じて、図15のステップS3に示すように、本体10内のセンサヘッド接続検知部14は、センサヘッド30A−1が本体10に装着されたことを検出する。
【0131】
すると、制御部11が第1の制御部として働いて第1の制御を開始して、図15のステップS4に示すように、検出部としての演算部15を動作させて標準液について電位差Erefを検出する。具体的には、センサヘッド30A−1の第1電極41と第2電極42との間の電位差Erefを、図1中のコネクタ21を介して、データ入力部12が入力し、校正試料測定電位記録部16が記憶する。演算式計算部17は、標準液についての電位差Erefを用いて、測定対象液についての電位差Eを校正するために、式(3)に基づいて基準電位Eを算出する演算を行う。これにより、ユーザが校正のための操作を意識的に行わなくても、校正が可能となる。
【0132】
この演算式計算部17による演算が完了すると、制御部11は表示部20に測定対象液についての測定準備が完了した旨(例えば「測定準備ができました」という文字列)を表示して、ユーザに知らせる。
【0133】
次に、図15のステップS5に示すように、ユーザは、センサヘッド30A−1に測定対象液を振り掛けるか、またはセンサヘッド30A−1を測定対象液に浸漬する。測定対象液の振り掛けまたは測定対象液への浸漬を20〜30秒間継続すれば、保液性シート51中の標準液が測定対象液で置換された状態になる。したがって、測定対象液が保液性シート51を透過して第1電極41および第2電極42に接触する状態になる。
【0134】
この状態で、図15のステップS6に示すように、ユーザは、本体10の操作部13を操作して、測定対象液についての測定開始の指示を入力する。
【0135】
すると、制御部11が第2の制御部として働いて第2の制御を開始して、図15のステップS7に示すように、検出部としての演算部15を動作させて測定対象液について電位差Eを検出する。具体的には、センサヘッド30A−1の第1電極41と第2電極42との間の電位差Eを、図1中のコネクタ21を介して、データ入力部12が入力し、検体測定電位記録部18が記憶する。
【0136】
続いて、制御部11が第3の制御部として働いて第3の制御を開始して、図15のステップS8に示すように、標準液についての電位差を用いて測定対象液についての電位差を校正し、測定対象液中の特定成分の濃度を算出する。具体的には、濃度換算処理部19が、式(4)に基づいて、測定対象液中の特定イオンの濃度Cを算出する。
【0137】
最後に、図15のステップS9に示すように、制御部11が演算結果として、測定対象液中の特定イオンの濃度Cを表す情報を、表示部20に表示させる。
【0138】
このようにして、ユーザは簡単な操作で測定を行うことができる。
【0139】
(第4実施形態)
図9は、図3に示したセンサヘッド30Aがイオンセンサとして取り得る別の構成例(符号30A−2で表す。)を示している。
【0140】
この構成例のセンサヘッド30A−2では、第1電極41は、導電性をもつ第1芯材41mと、この第1芯材41mの表面に接して設けられた第1イオン選択膜41iとからなり、イオン選択電極を構成している(適宜「イオン選択電極41」と呼ぶ。)。同様に、第2電極42は、導電性をもつ第2芯材42と、この第2芯材42の表面に接して設けられた第2イオン選択膜42iとからなり、イオン選択電極を構成している(適宜「イオン選択電極42」と呼ぶ。)。第1イオン選択膜41i、第2イオン選択膜42iは、それぞれ測定対象液に含まれた互いに異なるイオン種(これらを適宜「第1イオン」、「第2イオン」と呼ぶ。)を選択的に透過または吸着する性質を有している。
【0141】
この図9のセンサヘッド30A−2によって、測定対象液に含まれた第1イオン、第2イオン間の濃度比が、次のような原理によって求められる。
【0142】
イオン選択電極41は第1イオンに対して電位勾配Sで応答し、イオン選択電極42は第2イオンに対して電位勾配Sで応答するものとする。ここで、溶液(標準液、測定対象液を含む。)中で、第1イオンの濃度がC、第2イオンの濃度がCであるものとする。このき、系での基準電位をE0_bとすれば、イオン選択電極41,42間の電位差Ew_bは、式(5)のように表される。
w_b=E0_b+SlogC−SlogC …(5)
【0143】
ここで、イオン選択電極41,42がそれぞれ第1イオン、第2イオンに対して同等の電位勾配(ネルンスト定数)S=Sを示す場合、Ew_bは、式(6)のように表される。
w_b=E0_b+Slog(C/C) …(6)
【0144】
測定対象液に含まれた第1イオン、第2イオン間の濃度比を求めるためには、系での電位勾配(ネルンスト定数)Sと基準電位E0_bを予め求めておく必要がある。これらの値S、E0_bを校正により求める。ここで、第3実施形態におけるのと同様に、電位勾配Sについては、作製したセンサのロット内では一定と仮定し、予め測定しておいた既知の一定の値を採用する。基準電位E0_bについては、保液性シート51に含浸された標準液について、イオン選択電極41と基準電極42との間の電位差を検出することにより求めることができる。すなわち、標準液における第1イオン、第2イオン間の濃度比(既知)をMref_bとし、標準液について検出された電位差をEref_bとすると、式(6)から、
0_b=Eref_b−Slog(Mref_b) …(7)
【0145】
保液性シート51に測定対象液を振り掛けるか、または保液性シート51を測定対象液に浸漬する等によって、保液性シート51中の標準液が測定対象液で置換された状態で、測定対象液についてイオン選択電極41,42間の電位差を検出する。測定対象液中の第1イオン、第2イオン間の濃度比をMs_bとし、測定対象液について検出された電位差をEs_bとすると、
logMs_b=(Es_b−E0_b)/S
となる。
【0146】
よって、測定対象液中の第1イオン、第2イオン間の濃度比Ms_bは、式(8)のように求められる。

…(8)
【0147】
図16は、図9のセンサヘッド30A−2を用いて、ユーザが電気化学的センサ90を使用する際の使用方法のフローを示している。
【0148】
まず、図16のステップS11に示すように、ユーザはセンサヘッド30A−2から密封部材としての密封シート71を除去する。なお、既述のように、ユーザがセンサヘッド30A−2を使おうと思った時点で、既に保液性シート51から標準液がしみ出して第1電極41および第2電極42に接触する状態になっている。
【0149】
続いて、図16のステップS12に示すように、ユーザはセンサヘッド30A−2をセンサ本体10に装着する。具体的には、センサヘッド30A−2の電極パッド部30x(図3参照)をコネクタ21に装着する。
【0150】
これに応じて、図16のステップS13に示すように、本体10内のセンサヘッド接続検知部14は、センサヘッド30A−2が本体10に装着されたことを検出する。
【0151】
すると、制御部11が第1の制御部として働いて第1の制御を開始して、図16のステップS14に示すように、検出部としての演算部15を動作させて標準液について電位差Eref_bを検出する。具体的には、センサヘッド30A−2の第1電極41と第2電極42との間の電位差Eref_bを、図1中のコネクタ21を介して、データ入力部12が入力し、校正試料測定電位記録部16が記憶する。演算式計算部17は、標準液についての電位差Eref_bを用いて、測定対象液についての電位差Eを校正するために、式(7)に基づいて基準電位E0_bを算出する演算を行う。これにより、ユーザが校正のための操作を意識的に行わなくても、校正が可能となる。
【0152】
この演算式計算部17による演算が完了すると、制御部11は表示部20に測定対象液についての測定準備が完了した旨(例えば「測定準備ができました」という文字列)を表示して、ユーザに知らせる。
【0153】
次に、図16のステップS15に示すように、ユーザは、センサヘッド30A−2に測定対象液を振り掛けるか、またはセンサヘッド30A−2を測定対象液に浸漬する。測定対象液の振り掛けまたは測定対象液への浸漬を20〜30秒間継続すれば、保液性シート51中の標準液が測定対象液で置換された状態になる。したがって、測定対象液が保液性シート51を透過して第1電極41および第2電極42に接触する状態になる。
【0154】
この状態で、図16のステップS16に示すように、ユーザは、本体10の操作部13を操作して、測定対象液についての測定開始の指示を入力する。
【0155】
すると、制御部11が第2の制御部として働いて第2の制御を開始して、図16のステップS17に示すように、検出部としての演算部15を動作させて測定対象液について電位差Es_bを検出する。具体的には、センサヘッド30A−2の第1電極41と第2電極42との間の電位差Es_bを、図1中のコネクタ21を介して、データ入力部12が入力し、検体測定電位記録部18が記憶する。
【0156】
続いて、制御部11が第3の制御部として働いて第3の制御を開始して、図16のステップS18に示すように、標準液についての電位差を用いて測定対象液についての電位差を校正し、測定対象液中の第1イオン、第2イオン間の濃度比を算出する。具体的には、濃度換算処理部19が、式(8)に基づいて、測定対象液中の第1イオン、第2イオン間の濃度比Ms_bを算出する。
【0157】
最後に、図16のステップS19に示すように、制御部11が演算結果として、測定対象液中の第1イオン、第2イオン間の濃度比Ms_bを表す情報を、表示部20に表示させる。
【0158】
このようにして、ユーザは簡単な操作で測定を行うことができる。
【0159】
(第5実施形態)
図11は、図3に示したセンサヘッド30Aがイオンセンサとして取り得るさらに別の構成例(符号30A−3で表す。)を示している。
【0160】
この構成例のセンサヘッド30A−3では、第1電極41は、導電性をもつ第1芯材41mと、第1芯材41mを取り囲む絶縁性をもつ第1外囲器41uと、第1外囲器41uと第1芯材41mとの間に満たされたイオン濃度測定のための第1内部液41sとを含んでいる。第2電極42は、導電性をもつ第2芯材42mと、第2芯材42mを取り囲む絶縁性をもつ第2外囲器42uと、第2外囲器42uと第2芯材42mとの間に満たされたイオン濃度測定のための第2内部液42sとを含んでいる。
【0161】
第1芯材41m、第2芯材42mは、面方向に関して、図2(A)中に示した第1電極41、第2電極42の形状と略等しい円形の形状を有している。
【0162】
図11のセンサヘッド30A−3では、第1外囲器41u、第2外囲器42uは、概ね、密封シート71の面方向サイズと略同じ面方向サイズをもつ矩形板状の絶縁性基材40に、それぞれ第1芯材41m、第2芯材42mの面方向サイズと略同じ面方向サイズをもつ丸穴を設けて形成されている。絶縁性基材40自体は、図示しない接着剤によって、搭載面31a上に密着して貼り付けられている。
【0163】
絶縁性基材40の上面40aのうち第1外囲器41uに対応する部分には、第1外囲器41uをなす丸穴をそのまま板厚方向に貫通させた態様で、第1窓部41wが形成されている。一方、絶縁性基材40の上面40aのうち第2外囲器42uに対応する部分には、第2外囲器42uをなす丸穴よりも小径の丸穴を板厚方向に貫通させた態様で、第2窓部42vが形成されている。
【0164】
第1窓部41wには、測定対象液に含まれた特定のイオン種を選択的に透過または吸着するイオン選択膜41iが設けられている。一方、第2窓部42vには、標準液または測定対象液と第2内部液42sとの間の流通を許容する液絡42jが設けられている。液絡42jの材料としては、セラミックスや寒天などが用いられる。
【0165】
なお、絶縁性基材40の上面40aには、図2(A)中に示したのと同じ保液性シート51が設けられ、さらに両面テープ61を介して密封シート71が設けられている。
【0166】
この結果、この図11のセンサヘッド30A−3では、第1電極41はイオン選択電極を構成する一方、第2電極42は不感応性電極である基準電極を構成している。不感応性電極である基準電極の材料としては、銀/塩化銀電極、銀/ヨウ化銀電極、カロメル電極などが用いられる。
【0167】
この図11のセンサヘッド30A−3によって、測定対象液に含まれた特定のイオン種の濃度が、第3実施形態で述べたのと同じ原理、方法によって求められる。
【0168】
また、第1内部液41s、第2内部液42sとして様々な材料を選択して設定することによって、様々なイオン種を対象とする電気化学的測定用のセンサヘッドを構成できる。
【0169】
なお、第1内部液41s、第2内部液42sはそれぞれ保液性シート51に含浸された標準液と同じであるのが望ましい。その場合、第1窓部41w、第2窓部42vを通してそれぞれ第1内部液41s、第2内部液42sと標準液との間の混合が生じても、第1内部液41s、第2内部液42s、標準液の組成に変動が生じない。したがって、高精度の校正が可能になる。また、このことは、例えばこの図11のセンサヘッド30A−3を市販品として市場に出した場合に、このセンサヘッドを標準液によって高精度に校正できる期間を長く確保でき、有益である。
【0170】
また、絶縁性基材40は、第1内部液41s、第2内部液42sおよび標準液に対する耐性をもつのが望ましい。これにより、第1外囲器41u、第2外囲器42uが第1内部液41s、第2内部液42sを保持できる状態を長期間維持することができる。このことは、例えばこの図11のセンサヘッド30A−3を市販品として市場に出した場合に有益である。
【0171】
(第6実施形態)
図13は、図3に示したセンサヘッド30Aがイオンセンサとして取り得るさらに別の構成例(符号30A−4で表す。)を示している。
【0172】
この構成例のセンサヘッド30A−4では、図11の構成例30A−3に対して、第2電極42の構成が変更されている。その他の要素は、図11の構成例30A−3におけるのと同様に構成されている。
【0173】
図13のセンサヘッド30A−4では、絶縁性基材40の上面40aのうち第1外囲器41uに対応する部分の第1窓部41wと同様に、絶縁性基材40の上面40aのうち第2外囲器42uに対応する部分には、第2外囲器42uをなす丸穴をそのまま板厚方向に貫通させた態様で、第2窓部42wが形成されている。
【0174】
第1窓部41w、第2窓部42wにそれぞれ、測定対象液に含まれた互いに異なるイオン(これらを適宜、「第1イオン」、「第2イオン」と呼ぶ。)を選択的に透過または吸着する第1イオン選択膜41i、第2イオン選択膜42iが設けられている。
【0175】
この結果、この図13のセンサヘッド30A−4では、第1電極41、第2電極42はいずれもイオン選択電極を構成している。
【0176】
このセンサヘッド30A−4によって、測定対象液に含まれた第1イオン、第2イオン間の濃度比が、第4実施形態で述べたのと同じ原理、方法によって求められる。
【0177】
また、第1内部液41s、第2内部液42sとして様々な材料を選択して設定することによって、様々なイオン種を対象とする電気化学的測定用のセンサヘッドを構成できる。
【0178】
なお、第5実施形態で述べたのと同様に、第1内部液41s、第2内部液42sはそれぞれ保液性シート51に含浸された標準液と同じであるのが望ましい。また、絶縁性基材40は、第1内部液41s、第2内部液42sおよび標準液に対する耐性をもつのが望ましい。
【0179】
(第7実施形態)
図2(B)は、図1のセンサヘッド30の一例としての引き抜きタイプのセンサヘッド30Bを分解状態で示している。図6は、センサヘッド30Bの完成状態の断面を示している。理解の容易のため、これらの図において、図2(A)中の構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付している。なお、「引き抜きタイプ」とは、保液性材料51と電極41,42との間に使用に際して引き抜かれるべき液遮断膜81が存在するものを意味する。
【0180】
図2(B)によって良く分かるように、このセンサヘッド30Bは、図2(A)のセンサヘッド30Aと同様に、所定のサイズを持つ矩形状の基板31と、この基板31の一方の主面である搭載面31a上に、1つの辺31cに沿って互いに離間して配置された円板状または円柱状の第1電極41および第2電極42と、これらの第1電極41、第2電極42からそれぞれ基板31の反対側の辺(縁部)31eへ向かって互いに平行に延在する第1引出電極43および第2引出電極44を備えている。
【0181】
さらに、このセンサヘッド30Bは、基板31の搭載面31a上に、第1電極41および第2電極42を一体として覆うように配置された略矩形状の液遮断膜81を備えている。この液遮断膜81は、搭載面31a上の辺31cに近い略1/3の領域を覆っている。
【0182】
この液遮断膜81は、保液性シート51によって覆われている。この保液性シート51は、搭載面31a上の辺31cに近い略半分の領域を覆っている。言い換えれば、保液性シート51と第1電極41および第2電極42との間に、液遮断膜81が配置されている。
【0183】
液遮断膜81の4辺のうち1つの辺81cは、基板31の辺31c(したがって密封シート71の辺71c)と一致した位置にあり、したがって、保液性シート51の辺51cから外向き(−X方向)に突出した位置にある。つまり、液遮断膜81は、保液性シート51が存する領域から−X方向に突出した突出部81xを有している。この突出部81xには、引き抜きの便宜のために−X方向に突出したタブ81gが形成されている。また、この突出部81xは、矩形枠状の両面テープ61の4辺61c,61d,61e,61fのうち対応する辺61cを介して、密封シート71の対応する辺71cに沿った縁部と貼り合わされて結合されている。つまり、このセンサヘッド30Bでは、密封シート71の辺71cに沿った縁部は、搭載面31aではなく、液遮断膜81の突出部81xに貼り付けられている。
【0184】
液遮断膜81の4辺のうち辺81cに隣り合う2つの辺81d,81fは、保液性シート51の対応する2つの辺51d,51fと一致した位置にあり、したがって、基板31の辺31d,31fよりも一定寸法だけ内側に後退した位置にある(図6参照)。
【0185】
また、図2(B)中に示すように、液遮断膜81の4辺のうち残りの辺81eは保液性シート51の辺51eから−X方向に後退した位置にある。つまり、保液性シート51は、液遮断膜81を越えて+X方向に延在する延在部51xを有している。この延在部51xは、図示しない接着剤(両面テープでも良い。)によって搭載面31aに接着されている。
【0186】
液遮断膜81は、搭載面31a、第1電極41、第2電極42、保液性シート51とは、接着等によって結合されていない。
【0187】
このセンサヘッド30Bでは、図6によって良く分かるように、保液性シート51と第1電極41および第2電極42との間に、液遮断膜81が配置されている。液遮断膜81の材料は、例えばポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリアミド系樹脂(ナイロン)、ポリプロピレン、ポり塩化ビニル、アルミホイルなどからなる。この液遮断膜81は、非透水性の膜であり、液の透過を遮断する性質を有する。したがって、保液性シート51に含浸されている標準液が第1電極41、第2電極42に長期間接触することよって変質するような不具合を防止できる。このことは、例えばこのセンサヘッド30Bを市販品として市場に出した場合に、このセンサヘッド30Bを上記標準液によって高精度に校正できる期間を長く確保でき、有益である。
【0188】
特に、第1電極41、第2電極42がイオン濃度測定のための内部液を含む構成になっている場合、保液性シート51に含浸されている標準液とそれらの内部液とが液遮断膜81によって遮断されて、混合することがない。したがって、液同士の混合を考慮する必要が無く、第1電極41、第2電極42に最適な内部液と標準液とを採用できる。
【0189】
液遮断膜81は、このセンサヘッド30Bが使用される直前に、ユーザによって取り除かれることを予定している。
【0190】
ここで、図2(B)中に示す液遮断膜81の突出部81xは密封シート71と結合されている。したがって、ユーザがこのセンサヘッド30Aを使用する直前に、密封シート71を除去するとき、密封シート71が突出部81xを介して液遮断膜81と結合されていることに気付き、液遮断膜81を引き抜くことを促される。これに応じて、このセンサヘッド30Bを使用する直前に、ユーザは液遮断膜81の突出部81xやタブ81gと密封シート71とを指でつまんで、液遮断膜81を保液性シート51と第1電極41および第2電極42との間から搭載面31aに沿った−X方向に引き抜くことができる。つまり、密封シート71を除去する1回の操作で、液遮断膜81を同時に引き抜くことができる。この場合、ユーザが液遮断膜81を引き抜くことを忘れるような事態を防止できる。
【0191】
また、搭載面31a上で、保液性シート51は液遮断膜81を越えて+X方向に延在する延在部を有し、この延在部が搭載面に密着して貼り付けられている。したがって、液遮断膜81が−X方向に引き抜かれたとき、保液性シート51は、液遮断膜81に伴って除去されることなく、第1電極41および第2電極42に直接接する状態になる。したがって、保液性シート51から標準液がしみ出して第1電極41および第2電極42に接触する状態になる。この状態で、既述の接触タイプのセンサヘッド30Aにおけるのと同様に、第1電極41と第2電極42との間の電位差または電流を検出することによって、標準液についての測定データが精度良く得られる。この標準液についての測定データを用いて校正が行われる。
【0192】
この引き抜きタイプのセンサヘッド30Bは、既述の接触タイプのセンサヘッド30Aに対して液遮断膜81を介挿しただけであるから、比較的構成要素が少なく、小型かつ低価格で構成できる。
【0193】
図8、図10、図12、図14は、引き抜きタイプのセンサヘッド30Bの具体的な様々な構成例30B−1,30B−2,30B−3,30B−4を、それぞれ既述の図7、図9、図11、図13の構成例30A−1,30A−2,30A−3,30A−4に対応させて示している。
【0194】
図8、図10、図12、図14の構成例30B−1,30B−2,30B−3,30B−4は、それぞれ図7、図9、図11、図13の構成例30A−1,30A−2,30A−3,30A−4に液遮断膜81を介挿しただけの構成になっている。したがって、ユーザがこれらの構成例30B−1,30B−2,30B−3,30B−4のセンサヘッドを使用する直前に液遮断膜81を引き抜けば、それぞれ図7、図9、図11、図13の構成例30A−1,30A−2,30A−3,30A−4のセンサヘッドと同じ状態になり、同じ測定を行うことができる。
【0195】
(検証実験その1)
本発明者は、検証実験として、様々な測定対象液について、市販品センサヘッドを校正(本明細書の背景技術欄で述べた1液校正)し測定したときの濃度測定値と、本発明に従う接触タイプのセンサヘッド(適宜「実施例センサヘッド」と呼ぶ。)を校正し測定したときの濃度測定値とを比較した。
【0196】
i) 市販品センサヘッドによる測定
市販のイオンセンサとして、ナトリウムイオンセンサとカリウムイオンセンサ(堀場製作所製:コンパクトナトリウムイオンメータC−122形、コンパクトカリウムイオンメータC−131形)とを用意した。これらの市販のイオンセンサはそれぞれ、図17(A)に示すように、センサヘッド(これを適宜「市販品センサヘッド」と呼ぶ。)130と、本体110とを備えている。センサヘッド130は、測定対象液中に含まれたナトリウムイオン(またはカリウムイオン)を選択的に透過または吸着するイオン選択膜を有するイオン選択電極141と、不感応性電極である基準電極142とを備えている。本体110には、センサヘッド130の出力に基づいて測定対象液中のナトリウムイオン(またはカリウムイオン)の濃度を求める検出部115と、検出部115が求めた濃度を表示する濃度表示部120とを備えている。
【0197】
これらの市販品センサヘッドについて、それぞれそのイオンセンサ付属の校正液(Na濃度測定用、K濃度測定用)を用いて、既述の1液校正を行った。
【0198】
測定対象液としては、塩化ナトリウムを用いて様々な濃度のNa溶液(濃度範囲230ppm〜4600ppm)を調整するとともに、塩化カリウムを用いて様々な濃度のK溶液(濃度範囲391ppm〜7820ppm)を調整した。
【0199】
ナトリウムイオンセンサ、カリウムイオンセンサにそれぞれ、調整した様々な濃度のNa溶液、K溶液を滴下して、濃度表示部120に表示される濃度測定値を記録した。
【0200】
ii) 実施例センサヘッドによる測定
この例では、本発明に従う接触タイプのセンサヘッドとして、図7の構成例30A−1に相当する実施例センサヘッド(図17(B)中に符号30A−1′で表す。)を、図17(A)に示した市販品センサヘッド130を利用して、次のように簡易に作製した。
【0201】
すなわち、市販品センサヘッド130に、イオン選択電極141および基準電極142を一体として覆うように、保液性シート51の材料として、濾紙(MUNKTELL製、型番389)を配置した。上記濾紙の面方向サイズは、市販品センサヘッド130の基板の面方向サイズと同じにした。上記濾紙の縁部のみを両面テープで市販品センサヘッド130の基板に貼り付けて、上記濾紙の中央部(上記縁部よりも内側の領域)がイオン選択電極141および基準電極142と直接接するようにした。上記濾紙上に、標準液として、上記イオンセンサ付属のNa濃度測定用(またはK濃度測定用)の校正液を滴下して含浸させた。これにより、上記濾紙から上記校正液がしみ出してイオン選択電極141および基準電極142に接触している状態にした。密封シート71の材料としてパラフィルムを用い、イオン選択電極141、基準電極142、保液性シート51とともにセンサヘッド基板の全部を覆った。このようにして、Na濃度測定用、K濃度測定用の実施例センサヘッド30A−1′をそれぞれ作製した。
【0202】
これらのNa濃度測定用、K濃度測定用の実施例センサヘッド30A−1′について、密封シート71で覆われた保管状態のまま、本体110を利用して(検出部115を動作させて)、保液性シート51に含浸された校正液について1点校正を行った。
【0203】
Na濃度測定用、K濃度測定用の実施例センサヘッド30A−1′にそれぞれ、上記i)で調整した様々な濃度のNa溶液、K溶液を滴下して、濃度表示部120に表示される濃度測定値を記録した。
【0204】
iii)検証結果
図20は、測定対象液としてのNa溶液中のNa、測定対象液としてのK溶液中のKの様々な濃度についての、市販品センサヘッド130による濃度測定値(横軸x)と実施例センサヘッド30A−1′による濃度測定値(縦軸y)との相関を示している。図中の◆印はNaについての測定点を示している。Naについては、直線近似(L1)でy=1.0309xと表され、分散がR=0.9994であった。図中の□印はKについての測定点を示している。Kについては、直線近似(L2)でy=0.9507xと表され、分散がR=0.9997であった。
【0205】
このように、市販品センサヘッド130による濃度測定値(横軸x)と実施例センサヘッド30A−1′による濃度測定値(縦軸y)との間に、非常に良好な相関があることが確認された。したがって、実施例センサヘッド30A−1′でも、市販品センサヘッド130と同等の測定精度が得られることが分かった。
【0206】
(検証実験その2)
本発明に従う接触タイプのセンサヘッドとして、図13の構成例30A−4に相当する実施例センサヘッド(符号30A−4′で表す。)を作製して、測定対象液(組成は既知)に含まれた互いに異なるイオン間の濃度比を測定した。
【0207】
i)実施例センサヘッドの作製
図19(A)は、本発明に従う接触タイプのセンサヘッドとして作製した実施例センサヘッド30A−4′を分解状態で示している。図19(B)は、完成状態のセンサヘッド30A−4′の断面を示している。
【0208】
まず、図19(A)に示すように、PET基板の主面上に、第1電極41、第2電極42を形成するために、スクリーン印刷法にてAgペーストを印刷して、第1芯材下層41m′、第2芯材下層42m′、第1引出電極43および第2引出電極44を形成した。第1芯材下層41m′、第2芯材下層42m′は、それぞれ直径7mmのパターンとした。第1引出電極43、第2引出電極44は、それぞれ、X方向寸法40mm、Y方向寸法1.5mmのパターンとし、第1引出電極43と第2引出電極44との間の間隔は10mmとした。上記PET基板を、X方向寸法50mm×Y方向寸法20mmのサイズに切り出して、図中に示す矩形状の基板31とした。
【0209】
次に、スクリーン印刷法にてAgClペーストを印刷して、第1芯材下層41m′、第2芯材下層42m′上に、それぞれ同じ直径7mmのパターンで第1芯材上層41m″、第2芯材上層42m″を形成した。これにより、第1芯材41m、第2芯材42mを内部電極として形成した。
【0210】
この上に、絶縁性基材として、第1芯材41m、第2芯材42mのパターンとそれぞれ同心となる貫通穴(直径4mm)41u′,42u′が形成された3M製フィルム基材両面粘着テープ(X方向寸法40mm×Y方向寸法20mm×厚さ0.05mm)40′と、同様の貫通穴(直径4mm)41u″,42u″が形成されたPET基材・アクリル系粘着剤の強力両面テープ(X方向寸法10mm×Y方向寸法20mm×厚さ0.33mm)40とを貼り付けた。これにより、第1芯材41m、第2芯材42mを絶縁するための絶縁層と、液だめとしての第1外囲器41u、第2外囲器42uを形成した(図19(B)参照)。
【0211】
次に、第1外囲器41u、第2外囲器42u内に、それぞれ第1内部液41s、第2内部液42sとして、同じ塩化ナトリウムと塩化カリウムとの混合液(ナトリウムイオンとカリウムイオンとの間の濃度比Mref_bは既知)を滴下した。
【0212】
次に、公知の方法(例えば、(株)同仁化学研究所、「P−37 イオン濃度を電極で測りたい」、[平成23年7月15日検索]、インターネット<URL:http://www.dojindo.co.jp/technical/protocol/p37.pdf>を参照)で、ナトリウムイオン選択膜とカリウムイオン選択膜とを作製した。これらのナトリウムイオン選択膜、カリウムイオン選択膜をそれぞれ直径6mmのサイズに円形に切り出して、第1イオン選択膜41i、第2イオン選択膜42iとした。そして、これらの第1イオン選択膜41i、第2イオン選択膜42iを、それぞれ第1外囲器41u、第2外囲器42uの第1窓部41w、第2窓部42wを覆うように両面テープ40上に貼り付けて固定した。
【0213】
その上に、保液性シート51として、キムワイプ(日本製紙クレシア株式会社の登録商標)を、X方向寸法10mm×Y方向寸法20mmのサイズに切り出して、第1電極41、第2電極42を一体として覆うように貼り付けた。
【0214】
保液性シート51上に、標準液として、第1内部液41s、第2内部液42sとして用いた混合液と同じ混合液を滴下して、含浸させた。
【0215】
最後に、密封部材71としてパラフィルムからなる真空パック(簡単のため、図19(A)、図19(B)では図示を省略している。)を用いて、第1電極41、第2電極42、保液性シート51、基板31の全部を密封した。このようにして、実施例センサヘッド30A−4′を作製した。
【0216】
ii)測定系の構成
図18(A)は、実施例センサヘッド30A−4′を含む測定系の構成を示している。なお、この測定系を構成する直前に、実施例センサヘッド30A−4′から密封部材71としての真空パックを除去した。
【0217】
この測定系は、実施例センサヘッド30A−4′に接続された市販のポテンショスタット(北斗電工製:HZ−5000)111と、このポテンショスタット111の出力を受けるパーソナルコンピュータ(以下「パソコン」という。)112と、パソコン112に接続されたモニタ113とを含んでいる。
【0218】
ポテンショスタット111は、実施例センサヘッド30A−4′の第1電極41、第2電極42間の電位差を検出して、検出した電位差(検出電位差)を表す信号を出力する。
【0219】
パソコン112は、測定電位差記録部112aを備え、この測定電位差記録部112aにポテンショスタット111が出力する検出電位差を記憶するとともに、検出電位差を表す信号をリアルタイムでモニタ113へ出力する。
【0220】
モニタ113は、測定電位表示部113aを備え、この測定電位表示部113aによって検出電位差をリアルタイムで表示する。
【0221】
iii)標準液についての測定
上記測定系によって、実施例センサヘッド30A−4′の保液性シート51に含浸されている標準液についての測定データ(電位差Eref_b[mV])を得て、測定電位差記録部112aに記録した。
【0222】
iv)測定対象液についての測定
測定対象液として、ナトリウムイオンとカリウムイオンとの間の濃度比(Na[ppm]/K[ppm])を可変して設定したものを4種類調整した(この濃度比を「設定濃度比」と呼ぶ。)。実施例センサヘッド30A−4′の保液性シート51にこれらの測定対象液をそれぞれ直接振り掛けて、測定対象液についての測定データ(電位差Es_b[mV])を得て、測定電位差記録部112aに記録した。
【0223】
この後、標準液についての濃度比Mref_b、電位差Eref_b[mV]、および測定対象液についての電位差Es_b[mV]を用いて、既述の式(8)によって、測定対象液についての濃度比Ms_b(この濃度比を「計測濃度比」と呼ぶ。)を求めた。
【0224】
v)検証結果
図21は、上記4種類の測定対象液についての設定濃度比(横軸x)と計測濃度比(縦軸y)との間の相関を示している。図中の●印は測定点を示している。この結果、直線近似でy=1.0332xと表され、分散がR=0.9947であった。
【0225】
このように、測定対象液についての設定濃度比(横軸x)と計測濃度比(縦軸y)との間に、非常に良好な相関があることが確認された。したがって、実施例センサヘッド30A−4′によって、互いに異なるイオン種の間の濃度比について、良好な測定精度が得られることが分かった。
【0226】
(検証実験その3)
本発明に従う接触タイプのセンサヘッドを用いて、測定対象液についての測定データの再現性を評価した。
【0227】
i)実施例センサヘッドおよび測定系の構成
本発明に従う接触タイプのセンサヘッドとして、検証実験その1で作製した図17(B)中の実施例センサヘッド30A−1′を用いた。ただし、この例では、保液性シート51の材料として濾紙に代えてキムワイプ(面積約1cm)を用い、このキムワイプに標準液として塩化ナトリウム水溶液を含浸させた。
【0228】
測定系は、図18(B)中に示すように、市販のポテンショスタット111と、パソコン112と、モニタ113とを含むものとした。
【0229】
ii)標準液についての測定
上記測定系によって、実施例センサヘッド30A−1′の保液性シート51に含浸されている標準液についての測定データ(電位差Eref[mV])を得て、校正のための基準電位Eを算出した。これにより、次に述べる測定対象液についての検出電位差の校正を行った。
【0230】
iii)測定対象液についての測定
測定対象液として、塩化ナトリウムを純水に溶解して、NaCl濃度を可変して設定したものを3種類調整した(この濃度を「設定NaCl濃度」と呼ぶ。)。設定NaCl濃度は、10[mM/L]、100[mM/L]、500[mM/L]とした。
【0231】
次に、実施例センサヘッド30A−1′の搭載面31a(したがって、保液性シート51)を、下向きに斜め45度の角度でスタンドに固定した。この状態で、ポテンショスタット111とパソコン112を用いて、イオン選択電極41と基準電極42との間の電位差(自然電位)の観測を開始した。
【0232】
上記電位差を観測しながら、次のような操作を行った。
【0233】
a)保液性シート51に設定NaCl濃度100[mM/L]のNaCl水溶液を、ピペットマンを用いて、約5秒間かけて5mLだけ直接振り掛けた。
【0234】
b)続いて、振り掛けを60秒間中断した。
【0235】
c)続いて、上記保液性シート51に設定NaCl濃度10[mM/L]のNaCl水溶液を、ピペットマンを用いて、約5秒間をかけて5mLだけ直接振り掛けた。
【0236】
d)続いて、振り掛けを60秒間中断した。
【0237】
e)続いて、上記保液性シート51に設定NaCl濃度500[mM/L]のNaCl水溶液を、ピペットマンを用いて、約5秒間をかけて5mLだけ直接振り掛けた。
【0238】
f)続いて、振り掛けを60秒間中断した。
【0239】
このようなa)〜f)の一連の操作を連続して4回繰り返した。
【0240】
iv)検証結果
図22は、実施例センサヘッド30A−1′に対して、測定対象液としての濃度の異なる3種類のNaCl水溶液を順次繰り返して振り掛けた場合の、検出電位差の経時変化を示している。図中、符号E100は上記a)の操作(設定NaCl濃度100[mM/L]のNaCl水溶液の振り掛け)を行っている箇所を示し、符号E10は上記c)の操作(設定NaCl濃度10[mM/L]のNaCl水溶液の振り掛け)を行っている箇所を示し、また、符号E500は上記e)の操作(設定NaCl濃度500[mM/L]のNaCl水溶液の振り掛け)を行っている箇所を示している。
【0241】
上記a)〜f)の一連の操作を連続して4回繰り返す過程で、上記a),c),e)の各操作の開始後20秒間経過した時点での検出電位差を、測定電位差記録部112aに記録した。図23は、各設定NaCl濃度(横軸x)と記録された検出電位差(縦軸y)との相関を示している。
【0242】
そして、各設定NaCl濃度での、それらの検出電位差の平均値と標準偏差を計算した。その結果、各設定NaCl濃度でのCV値(標準偏差/平均値)は、3.1%以下であった。この測定ばらつきは、市販品センサヘッド130による場合と同等であった。また、片対数グラフ上での直線近似により得られた検量線L3(近似式y=27.2Ln(x)−127.31)の分散はR=0.9999と非常に高い値となった。
【0243】
これにより、実施例センサヘッド30A−1′によれば、保液性シート51を或る設定NaCl濃度の測定の度に剥がさなくても、再現性の良い測定ができることが確認された。
【0244】
また、この検証実験で、保液性シート51として用いたキムワイプの表面積は約1cmであった。各設定NaCl濃度の測定対象液(NaCl水溶液)の1回当たりの振り掛け量は5mLであった。この結果、保液性シート51に振り掛けるべき測定対象液の量は、保液性シート51の表面積1cm当たり5mLで十分であることが確認された。
【0245】
(検証実験その4)
本発明に従う接触タイプのセンサヘッドを用いて、測定対象液についての測定データの信頼性と応答速度を評価した。
【0246】
i)実施例センサヘッドおよび測定系の構成
本発明に従う接触タイプのセンサヘッドとして、検証実験その3で用いたのと同じ実施例センサヘッド30A−1′と測定系を用いた(図18(B)参照)。
【0247】
ii)標準液についての測定
上記測定系によって、実施例センサヘッド30A−1′の保液性シート51に標準液が含侵された状態から測定を開始した。
【0248】
iii)測定対象液についての測定
測定対象液として、塩化ナトリウムを純水に溶解して、設定NaCl濃度100[mM/L]のNaCl水溶液を調整した。
【0249】
次に、検証実験その3におけるのと同様に、実施例センサヘッド30A−1′の搭載面31a(したがって、保液性シート51)を、下向きに斜め45度の角度でスタンドに固定した。この状態で、ポテンショスタット111とパソコン112を用いて、イオン選択電極41と基準電極42との間の電位差(自然電位)の観測を開始した。
【0250】
上記電位差を観測しながら、次のような操作を行った。
【0251】
a)保液性シート51に設定NaCl濃度100[mM/L]のNaCl水溶液を、洗浄瓶を用いて、1秒間当たり1mL程度の割合で、30秒間にわたって直接振り掛けた。
【0252】
b)続いて、振り掛けを中止して、50秒間にわたって電位差を観測した。このような操作a),b)によって、実施例センサヘッド30A−1′を用いて、測定対象液としてのNaCl水溶液について得られた電位差を「測定データD」と呼ぶ。
【0253】
c)この後、実施例センサヘッド30A−1′から保液性シート51を剥がした(この状態のセンサヘッドを「比較例センサヘッド30A−1″」と呼ぶ。)。そして、比較例センサヘッド30A−1″のイオン選択電極41と基準電極42に、設定NaCl濃度100[mM/L]のNaCl水溶液を、洗浄瓶を用いて、1秒間当たり1mL程度の割合で、30秒間にわたって直接振り掛けた。
【0254】
d)続いて、振り掛けを中止して、50秒間にわたって電位差を観測した。このような操作c),d)によって、このようにして、比較例センサヘッド30A−1″を用いて、測定対象液としてのNaCl水溶液について得られた電位差を「測定データD」と呼ぶ。
【0255】
e)この後、比較例センサヘッド30A−1″を、ビーカーに溜めた設定NaCl濃度100[mM/L]のNaCl水溶液に、80秒間にわたって浸漬した。このような操作e)によって、比較例センサヘッド30A−1″を用いて、測定対象液としてのNaCl水溶液について得られた電位差を「測定データD」と呼ぶ。
【0256】
iv)検証結果
図24は、操作a)の開始時点からの測定データD、操作c)の開始時点からの測定データD、操作e)の開始時点からの測定データDを、併せて示している。図24の横軸は、各操作の開始時点を基準時(時刻ゼロ)としたときの経過時間[sec]を示し、縦軸は検出電位差[mV]を表している。また、図25の表は、20秒経過時点から30秒経過時点までの期間をOP1とし、35秒経過時点から80秒経過時点までの期間をOP2としたとき、期間OP1,OP2について、測定データD,D,Dが示す検出電位差の標準偏差σ[mV]を算出した結果を示している。なお、表中の欄(A),(B),(C)は、それぞれ測定データD,D,Dが観測された条件を表している。
【0257】
図24から、比較例センサヘッド30A−1″を用いて直接振り掛けにより得られた測定データDは、不安定であることが分かった。それに対して、実施例センサヘッド30A−1′を用いて直接振り掛けにより得られた測定データD、比較例センサヘッド30A−1″を用いて浸漬により得られた測定データDは、安定して変化することが分かった。実際に、図25の欄(B)に示すように、比較例センサヘッド30A−1″を用いて得られた測定データDについては、期間OP1(測定対象液の振り掛け中)での検出電位差の標準偏差がσ=6.02[mV]と大きかった。それに対して、図25の欄(A)で、実施例センサヘッド30A−1′を用いて直接振り掛けにより得られた測定データDでは、期間OP1での検出電位差の標準偏差がσ=1.06[mV]と少なかった。また、図25の欄(C)に示すように、比較例センサヘッド30A−1″を用いて浸漬により得られた測定データDでは、期間OP1での検出電位差の標準偏差がσ=0.29[mV]と少なかった。
【0258】
また、比較例センサヘッド30A−1″を用いて直接振り掛けにより得られた測定データDでは、期間OP2(振り掛け中止後)の検出電位差は、浸漬により得られた測定データDの期間OP2の検出電位差に対して大きく異なり、信頼性に欠けることが分かった。この理由は、比較例センサヘッド30A−1″では保液性シート51が除去されているため、測定対象液がイオン選択電極41と基準電極42の表面に保持されないからだと考えられる。それに対して、実施例センサヘッド30A−1′を用いて直接振り掛けにより得られた測定データDでは、期間OP2の検出電位差は、浸漬により得られた測定データDの期間OP2の検出電位差に略等しく、信頼性があることが分かった。特に、実施例センサヘッド30A−1′が下向きに斜めの姿勢をとったとしても、測定データの信頼性があることが分かった。
【0259】
また、図25の表の下欄には、実施例センサヘッド30A−1′を用いて直接振り掛けにより得られた測定データDと、比較例センサヘッド30A−1″について浸漬により得られた測定データDとについて、上記基準時からそれぞれ検出電位差が飽和値の90%に達するまでの時間(これを「90%応答時間」と呼ぶ。)を示している。この欄に示すように、測定データDの90%応答時間は29[sec]であり、測定データDの90%応答時間は25[sec]であった。したがって、両者の間に殆ど差が無いことが確かめられた。
【0260】
以上により、実施例センサヘッド30A−1′を用いて直接振り掛けにより得られた測定データDは、信頼性があり、応答速度も十分に速いことが確認された。
【0261】
以上、幾つかの実施形態について、主にナトリウムイオン、カリウムイオンの濃度または濃度比を測定する場合について説明したが、それに限られるものではない。この発明のセンサヘッドおよびそれを備えた電気化学的センサによれば、ナトリウムイオン、カリウムイオン以外に、例えばカルシウムイオン、塩化物イオン、 リチウムイオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、ヨウ化物イオン、マグネシウムイオン、臭化物イオン、過塩素酸イオン、水素イオンなどの、様々なイオンの濃度またはイオン間の濃度比を測定できる。
【0262】
この発明のセンサヘッドおよび電気化学的センサは、例示した既述の実施形態に限られず、様々な態様をとり得る。
【産業上の利用可能性】
【0263】
この発明のセンサヘッドおよび電気化学的センサは、様々な用途に利用可能である。例えば、この発明の電気化学的センサは、生化学検査・臨床検査の分野では、血中、尿中のナトリウムイオン、カリウムイオン、塩化物イオンを測定するイオンセンサ、クレアチニン、グルコースなどを測定する酵素センサとして利用可能である。また、環境計測の分野では、水質中のpHを測定するセンサ、溶存酸素を測定するガスセンサ、土壌中の硝酸イオンセンサ、気相中のアンモニアや二酸化炭素濃度を測定するガスセンサとして利用可能である。また、食品検査の分野では、食品のpHを計測するセンサとして利用可能である。
【0264】
また、この発明の電気化学的センサの使用方法は、そのような様々な用途に適用された電気化学的センサを使用するのに利用可能である。
【符号の説明】
【0265】
10 本体
21 コネクタ
30,30A,30B センサヘッド
41 第1電極
42 第2電極
43 第1引出電極
44 第2引出電極
51 保液性シート
71 密封シート
72 密封パック
81 液遮断膜
90 電気化学的センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学的測定を行うためのセンサヘッドであって、
絶縁性をもつ搭載面と、
上記搭載面上に、互いに離間して配置された第1電極および第2電極と、
上記搭載面上に、上記第1電極および上記第2電極を一体として覆うように配置された保液性材料とを備え、
上記保液性材料に上記電気化学的測定の基準となる標準液が含浸されていることを特徴とするセンサヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサヘッドにおいて、
上記保液性材料は、シートの形態をもち、このシートを通して測定対象液を上記第1電極および上記第2電極へ向けて透過させる透液性を有することを特徴とするセンサヘッド。
【請求項3】
請求項1または2に記載のセンサヘッドにおいて、
上記保液性材料に含浸された上記標準液の変化を防止するように、少なくとも上記保液性材料を覆う密封部材を備えたことを特徴とするセンサヘッド。
【請求項4】
請求項3に記載のセンサヘッドにおいて、
上記密封部材は、上記保液性材料の面方向サイズよりも大きい面方向サイズをもつシートの形態をもち、上記シートの縁部が上記搭載面に密着して貼り付けられていることを特徴とするセンサヘッド。
【請求項5】
請求項3に記載のセンサヘッドにおいて、
上記密封部材は、袋の形態をもち、上記第1電極、上記第2電極および上記保液性材料とともに上記搭載面をなす基板の全部または一部を覆っていることを特徴とするセンサヘッド。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一つに記載のセンサヘッドにおいて、
上記保液性材料と上記第1電極および上記第2電極との間に配置された、液の透過を遮断する液遮断膜を備えたことを特徴とするセンサヘッド。
【請求項7】
請求項6に記載のセンサヘッドにおいて、
上記液遮断膜は、上記保液性材料と上記第1電極および上記第2電極との間から上記搭載面に沿った一方向に引き抜かれるように、上記保液性材料が存する領域から上記一方向に突出した突出部を有する一方、上記保液性材料は、上記液遮断膜を越えて上記一方向と反対側の方向に延在する延在部を有し、この延在部が上記搭載面に密着して貼り付けられていることを特徴とするセンサヘッド。
【請求項8】
請求項7に記載のセンサヘッドにおいて、
上記液遮断膜の上記突出部は上記密封部材と結合されていることを特徴とするセンサヘッド。
【請求項9】
請求項1に記載のセンサヘッドにおいて、
上記保液性材料が上記第1電極および上記第2電極と直接接していることを特徴とするセンサヘッド。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか一つに記載のセンサヘッドにおいて、
上記保液性材料はゲル状であることを特徴とするセンサヘッド。
【請求項11】
請求項1から9までのいずれか一つに記載のセンサヘッドにおいて、
上記保液性材料は繊維を集合させた布状または紙状であることを特徴とするセンサヘッド。
【請求項12】
請求項1から9までのいずれか一つに記載のセンサヘッドにおいて、
上記保液性材料は多孔質材料であることを特徴とするセンサヘッド。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか一つに記載のセンサヘッドにおいて、
上記保液性材料は上記標準液に対する耐性をもつことを特徴とするセンサヘッド。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか一つに記載のセンサヘッドにおいて、
上記第1電極は、導電性をもつ第1芯材と、この第1芯材の表面に接して設けられた、測定対象液に含まれた特定のイオン種を選択的に透過または吸着するイオン選択膜とからなり、
上記第2電極は、導電性材料のみからなることを特徴とするセンサヘッド。
【請求項15】
請求項1から13までのいずれか一つに記載のセンサヘッドにおいて、
上記第1電極は、導電性をもつ第1芯材と、この第1芯材の表面に接して設けられた第1イオン選択膜とからなり、
上記第2電極は、導電性をもつ第2芯材と、この第2芯材の表面に接して設けられた第2イオン選択膜とからなり、
上記第1イオン選択膜、上記第2イオン選択膜は、それぞれ上記測定対象液に含まれた互いに異なるイオン種を選択的に透過または吸着することを特徴とするセンサヘッド。
【請求項16】
請求項1から13までのいずれか一つに記載のセンサヘッドにおいて、
上記第1電極は、導電性をもつ第1芯材と、上記第1芯材を取り囲む絶縁性をもつ第1外囲器と、上記第1外囲器と上記第1芯材との間に満たされたイオン濃度測定のための第1内部液とを含み、
上記第2電極は、導電性をもつ第2芯材と、上記第2芯材を取り囲む絶縁性をもつ第2外囲器と、上記第2外囲器と上記第2芯材との間に満たされたイオン濃度測定のための第2内部液とを含み、
上記第1外囲器、上記第2外囲器の上記保液性材料に対向する面に、それぞれ上記第1内部液、上記第2内部液と上記標準液または測定対象液との間の接触を許容し得る第1窓部、第2窓部が設けられていることを特徴とするセンサヘッド。
【請求項17】
請求項16に記載のセンサヘッドにおいて、
上記第1内部液、上記第2内部液はそれぞれ上記標準液と同じであることを特徴とするセンサヘッド。
【請求項18】
請求項16または17に記載のセンサヘッドにおいて、
上記第1窓部に、上記測定対象液に含まれた特定のイオン種を選択的に透過または吸着するイオン選択膜が設けられ、
上記第2窓部に、上記標準液または測定対象液と上記第2内部液との間の流通を許容する液絡が設けられていることを特徴とするセンサヘッド。
【請求項19】
請求項16または17に記載のセンサヘッドにおいて、
上記第1窓部、上記第2窓部にそれぞれ、上記測定対象液に含まれた互いに異なるイオン種を選択的に透過または吸着する第1イオン選択膜、第2イオン選択膜が設けられていることを特徴とするセンサヘッド。
【請求項20】
請求項1から19までのいずれか一つに記載のセンサヘッドにおいて、
上記搭載面は、所定のサイズをもつ基板の一方の主面であり、
上記搭載面上で、上記第1電極、上記第2電極からそれぞれ上記基板の縁部へ向かって延在する第1引出電極および第2引出電極を備えたことを特徴とするセンサヘッド。
【請求項21】
請求項1から19までのいずれか一つに記載のセンサヘッドと、
上記第1電極と上記第2電極との間の電位差または電流を検出する検出部とを備えたことを特徴とする電気化学的センサ。
【請求項22】
請求項20に記載のセンサヘッドと、
上記センサヘッドの上記第1引出電極、上記第2引出電極が延在する電極パッド部が着脱可能に装着されるコネクタを備えた本体と、
上記本体に搭載され、上記コネクタに装着された上記センサヘッドの上記第1引出電極、上記第2引出電極を介して、上記第1電極と上記第2電極との間の電位差または電流を検出する検出部とを備えたことを特徴とする電気化学的センサ。
【請求項23】
請求項22に記載の電気化学的センサにおいて、
上記標準液について上記検出部を動作させて上記電位差または電流を検出する第1の制御を行う第1の制御部と、
上記測定対象液について上記検出部を動作させて上記電位差または電流を検出する第2の制御を行う第2の制御部と、
上記標準液の特定成分の濃度、上記標準液について検出された上記電位差または電流、および上記測定対象液について検出された上記電位差または電流を用いて演算を行って、上記測定対象液の電気化学的測定データを表す信号を出力する第3の制御部とを備えたことを特徴とする電気化学的センサ。
【請求項24】
請求項23に記載の電気化学的センサにおいて、
上記第1の制御部は、上記コネクタに上記センサヘッドの上記電極パッド部が装着されたことを条件として上記第1の制御を開始し、
上記第2の制御部は、上記第1の制御の終了後、所定の指示の入力を条件として上記第2の制御を開始することを特徴とする電気化学的センサ。
【請求項25】
請求項9に記載のセンサヘッドと、上記第1電極と上記第2電極との間の電位差または電流を検出する検出部とを備えた電気化学的センサを使用する電気化学的センサの使用方法であって、
上記標準液について上記検出部を動作させて上記電位差または電流を検出し、
続いて、上記保液性材料に測定対象液を振り掛けるか、または上記保液性材料を測定対象液に浸漬することによって、上記保液性材料中の上記標準液を上記測定対象液で置換した状態で、上記測定対象液について上記検出部を動作させて上記電位差または電流を検出することを特徴とする電気化学的センサの使用方法。
【請求項26】
請求項6から8までのいずれか一つに記載のセンサヘッドと、上記第1電極と上記第2電極との間の電位差または電流を検出する検出部とを備えた電気化学的センサを使用する電気化学的センサの使用方法であって、
上記保液性材料と上記第1電極および上記第2電極との間から上記液遮断膜を引き抜いて、上記保液性材料を上記第1電極および上記第2電極に接触させて、上記標準液について上記検出部を動作させて上記電位差または電流を検出し、
続いて、上記保液性材料に測定対象液を振り掛けるか、または上記保液性材料を測定対象液に浸漬することによって、上記保液性材料中の上記標準液を上記測定対象液で置換した状態で、上記測定対象液について上記検出部を動作させて上記電位差または電流を検出することを特徴とする電気化学的センサの使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2013−32945(P2013−32945A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168619(P2011−168619)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)