説明

センサモジュール及び表示装置

【課題】 サイズの小型化を図ることができる、動作の安定性に優れたセンサモジュール及びセンサモジュールを備えた表示装置を提供する。
【解決手段】 センサモジュールは、第1センサ回路1と、第2センサ回路2と、差分回路20と、を備える。第1センサ回路1は、第1検知電極DE1と、薄膜トランジスタで形成された第1アンプAMP1と、第1カップリング容量Ccp1と、を有する。第2センサ回路2は、第2検知電極DE2と、薄膜トランジスタで形成された第2アンプAMP2と、第2カップリング容量Ccp2と、を有する。差分回路20は、第1アンプAMP1のドレイン電極及び第2アンプAMP2のドレイン電極に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、センサモジュール及びセンサモジュールを備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、指接触位置検出のための平型のセンサモジュール、いわゆるタッチパネルが、OA機器を初め多くの家電製品に応用されている。このようなタッチパネル機能を具備した電子機器では、液晶表示装置や有機EL表示装置などの表示装置に、別途タッチパネル基板を貼り合わせることでタッチパネル機能を付加することが検討されている。
【0003】
抵抗式のタッチパネルは、マトリクス状に配置された配線の各交点に機械的なスイッチを配置し、各アドレス線に順次パルス電圧を印加し、随時信号線の電位変化を測定し、信号処理することで、指にて接触(押圧)される個所の位置情報を抽出することができる。また、静電容量式のタッチパネルは、検知電極と指との間の静電容量の変化を取り出すことで、入力手段にて接触される個所の位置情報を抽出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−3414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、機械的なスイッチで構成される抵抗式のタッチパネルでは、入力面を変形(信号線の電位を変化)させるための力が必要、感度が低い、また塑性変形による接触不良が生じ易い、といった問題があった。一方、静電容量式のタッチパネルでは、静電容量を測定するため、広い面積の検知電極を用いる必要があり、正確な入力位置座標を得ることが困難であった。このため、検知電極における静電容量の変化をアンプで個別に増幅し、信号を取り出す方法が検討されている。しかしながら、この場合、タッチパネルは、検知電極への外来ノイズにより、接触動作と誤認し、動作が不安定となることがあった。
【0006】
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、サイズの小型化を図ることができる、動作の安定性に優れたセンサモジュール及びセンサモジュールを備えた表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係るセンサモジュールは、
第1プリチャージ電圧が与えられた後に入力手段による入力動作に応じて検知容量が変化する第1検知電極と、前記第1検知電極に接続されたゲート電極を含む薄膜トランジスタで形成され、前記第1検知電極における前記第1プリチャージ電圧の減衰量に応じてソース電極に与えられる第1カップリング信号を調整してドレイン電極から出力する第1アンプと、前記第1アンプのソース電極及びゲート電極間に接続された第1カップリング容量と、を有した第1センサ回路と、
第2プリチャージ電圧が与えられた後に入力手段による入力動作に応じて検知容量が変化する第2検知電極と、前記第2検知電極に接続されたゲート電極を含む薄膜トランジスタで形成され、前記第2検知電極における前記第2プリチャージ電圧の減衰量に応じてソース電極に与えられる第2カップリング信号を調整してドレイン電極から出力する第2アンプと、前記第2アンプのソース電極及びゲート電極間に接続された第2カップリング容量と、を有した第2センサ回路と、
前記第1アンプのドレイン電極及び前記第2アンプのドレイン電極に接続された差分回路と、を備えている。
【0008】
また、一実施形態に係る表示装置は、
複数の配線と、複数の画素と、を有したアレイ基板を備えた表示パネルと、
上記センサモジュールと、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、第1の実施形態に係るセンサモジュールの一部を示す回路図である。
【図2】図2は、図1に示したセンサモジュールの動作を説明するための図であり、センサモジュールの動作に関係する信号(電圧、電流)の変化を示すタイミングチャートである。
【図3】図3は、上記センサモジュールにおける、電圧(Vg1、Vg2)に対する電流(iamp1、iamp2)の変化をグラフで示した図である。
【図4】図4は、外来ノイズが発生した状態の上記センサモジュールの一部を示す回路図である。
【図5】図5は、図4に示したセンサモジュールの動作を説明するための図であり、センサモジュールの動作に関係する信号(電圧、電流)の変化を示すタイミングチャートである。
【図6】図6は、第2の実施形態に係る液晶表示装置の一部を示す回路図である。
【図7】図7は、上記第2の実施形態に係る第1積分回路を示す回路図である。
【図8】図8は、上記第2の実施形態に係る第2積分回路を示す回路図である。
【図9】図9は、上記第2の実施形態に係る差分回路を示す回路図である。
【図10】図10は、第3の実施形態に係る液晶表示装置の一部を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら第1の実施形態に係るセンサモジュールについて詳細に説明する。
図1に示すように、センサモジュールは、第1センサ回路1と、第2センサ回路2と、第1積分回路11と、第2積分回路12と、これらセンサ回路の出力の差分を出力する差分回路20と、を備えている。第1検知電極DE1(第1センサ回路1)及び第2検知電極DE2(第2センサ回路2)は、指や導体などの入力手段30の接触幅に比べ、十分短い距離で配置されている。すなわち、第1検知電極DE1及び第2検知電極DE2は、入力手段30による入力動作に応じて検知容量がともに変化するものである。
【0011】
第1センサ回路1は、第1検知電極DE1と、第1アンプAMP1と、第1カップリング容量Ccp1と、第1プリチャージ制御スイッチSW11と、第1出力スイッチSW12と、を有している。また、第1センサ回路1には、寄生容量Cpr1が形成される。
【0012】
図1及び図2に示すように、第1検知電極DE1は、第1プリチャージ電圧Vprc1が与えられた後に入力手段30による入力動作に応じて検知容量が変化する。第1アンプAMP1は、第1検知電極DE1に接続されたゲート電極を含むP型のTFT(薄膜トランジスタ)で形成されている。第1アンプAMP1は、第1検知電極DE1における第1プリチャージ電圧Vprc1の減衰量に応じてソース電極に与えられる第1カップリング信号Vs1(カップリング電圧Vcp3)を調整してドレイン電極から出力する。ここでは、第1プリチャージ電圧Vprc1は負の値である。第1プリチャージ電圧Vprc1の減衰量とは、電圧レベルが負の値から0V側に浅くなる量である。
【0013】
第1カップリング容量Ccp1は、第1アンプAMP1のソース電極及びゲート電極間に接続されている。第1プリチャージ制御スイッチSW11は、第1検知電極DE1に接続され、第1プリチャージ電圧Vprc1を第1検知電極DE1に出力する導通状態又は非導通状態に切替えられる。
【0014】
第1出力スイッチSW12は、第1アンプAMP1のドレイン電極及び差分回路20間に接続されている。第1出力スイッチSW12は、調整された第1カップリング信号Vs1(カップリング電圧Vcp3)を第1積分回路11(差分回路20)に出力する導通状態又は非導通状態に切替えられる。言い換えると、第1出力スイッチSW12は、調整された第1カップリング信号Vs1(カップリング電圧Vcp3)に対応した第1アンプAMP1を流れる第1アンプ電流iamp1を第1積分回路11に出力する導通状態又は非導通状態に切替えられる。
【0015】
第1アンプAMP1のソース電極には、第1プリチャージ電圧Vprc1が与えられる際にカップリング電圧Vcp3(基準電圧)より負側に遷移した電圧レベルのカップリング電圧Vcp1に設定され、かつ第1プリチャージ電圧Vprc1が与えられた後にカップリング電圧Vcp3(基準電圧)に設定された第1カップリング信号Vs1が与えられる。
【0016】
第2センサ回路2は、第2検知電極DE2と、第2アンプAMP2と、第2カップリング容量Ccp2と、第2プリチャージ制御スイッチSW21と、第2出力スイッチSW22と、を有している。また、第2センサ回路2には、寄生容量Cpr2が形成される。
【0017】
第2検知電極DE2は、第2プリチャージ電圧Vprc2が与えられた後に入力手段30による入力動作に応じて検知容量が変化する。第2アンプAMP2は、第2検知電極DE2に接続されたゲート電極を含むP型のTFTで形成されている。第2アンプAMP2は、第2検知電極DE2における第2プリチャージ電圧Vprc2の減衰量に応じてソース電極に与えられる第2カップリング信号Vs2(カップリング電圧Vcp3)を調整してドレイン電極から出力する。ここでは、第2プリチャージ電圧Vprc2は正の値である。第2プリチャージ電圧Vprc2の減衰量とは、電圧レベルが正の値から0V側に浅くなる量である。
【0018】
第2カップリング容量Ccp2は、第2アンプAMP2のソース電極及びゲート電極間に接続されている。第2プリチャージ制御スイッチSW21は、第2検知電極DE2に接続され、第2プリチャージ電圧Vprc2を第2検知電極DE2に出力する導通状態又は非導通状態に切替えられる。
【0019】
第2出力スイッチSW22は、第2アンプAMP2のドレイン電極及び差分回路20間に接続されている。第2出力スイッチSW22は、調整された第2カップリング信号Vs2(カップリング電圧Vcp3)を第2積分回路12(差分回路20)に出力する導通状態又は非導通状態に切替えられる。言い換えると、第2出力スイッチSW22は、調整された第2カップリング信号Vs2(カップリング電圧Vcp3)に対応した第2アンプAMP2を流れる第2アンプ電流iamp2を第2積分回路12に出力する導通状態又は非導通状態に切替えられる。
【0020】
第2アンプAMP2のソース電極には、第2プリチャージ電圧Vprc2が与えられる際にカップリング電圧Vcp3(基準電圧)より正側に遷移した電圧レベルのカップリング電圧Vcp2に設定され、かつ第2プリチャージ電圧Vprc2が与えられた後にカップリング電圧Vcp3(基準電圧)に設定された第2カップリング信号Vs2が与えられる。
【0021】
ここで、カップリング電圧Vcp3(基準電圧)より負側に遷移した電圧レベルとカップリング電圧Vcp3との差の絶対値(|Vcp1−Vcp3|)と、カップリング電圧Vcp3(基準電圧)より正側に遷移した電圧レベルとカップリング電圧Vcp3との差の絶対値(|Vcp2−Vcp3|)と、は、同一の値である。
【0022】
第1積分回路11(電流積分回路)は、第1アンプAMP1のドレイン電極及び差分回路20間に接続されている。第1積分回路11は、第1センサ回路1の出力である第1アンプ電流iamp1を電流積分し第1積分電圧Vout1として差分回路20に出力する。
【0023】
第2積分回路12(電流積分回路)は、第2アンプAMP2のドレイン電極及び差分回路20間に接続されている。第2積分回路12は、第2センサ回路2の出力である第2アンプ電流iamp2を電流積分し第2積分電圧Vout2として差分回路20に出力する。
差分回路20は、第1積分電圧Vout1及び第2積分電圧Vout2の差分をとった結果の出力電圧Voutを出力する。
【0024】
次に、上記センサモジュールの一層詳しい構成を、その動作と併せて説明する。
第1センサ回路1において、検知容量(静電結合容量)Cf1は、入力手段30が絶縁体を挟んで第1検知電極DE1に近接することにより、形成される。検知容量Cf1及び寄生容量Cpr1は、第1アンプAMP1のゲート電極とグランドの間に発生する。
【0025】
第1アンプAMP1のソース電極には第1カップリング信号Vs1が与えられる。第1アンプAMP1のゲート電極には、第1プリチャージ制御スイッチSW11がオン状態となるタイミングt1及びタイミングt2の間の期間に、第1ゲート信号Vg1(第1プリチャージ電圧Vprc1)が与えられる。
【0026】
タイミングt2で、第1プリチャージ制御スイッチSW11がオフ状態に切替えられると、第1カップリング信号Vs1の電圧レベルを、カップリング電圧Vcp1からカップリング電圧Vcp3に変化させる(Vcp3=Vcp1+ΔVs)。入力手段30による入力(接触)が無い場合、第1ゲート信号Vg1の変化量ΔVgは、次の式1で示す値となる。
【0027】
ΔVg=ΔVs・(1/Cpr/(1/Ccp+1/Cpr)) …式1
この際、Cpr=Cpr1、Ccp=Ccp1である。
【0028】
一方、第2センサ回路2において、検知容量(静電結合容量)Cf2は、入力手段30が絶縁体を挟んで第2検知電極DE2に近接することにより、形成される。検知容量Cf2及び寄生容量Cpr2は、第2アンプAMP2のゲート電極とグランドの間に発生する。
【0029】
第2アンプAMP2のソース電極には第2カップリング信号Vs2が与えられる。第2アンプAMP2のゲート電極には、第2プリチャージ制御スイッチSW21がオン状態となるタイミングt1及びタイミングt2の間の期間に、第2ゲート信号Vg2(第2プリチャージ電圧Vprc2)が与えられる。
【0030】
タイミングt2で、第2プリチャージ制御スイッチSW21がオフ状態に切替えられると、第2カップリング信号Vs2の電圧レベルを、カップリング電圧Vcp2からカップリング電圧Vcp3に変化させる(Vcp3=Vcp2−ΔVs)。入力手段30による入力(接触)がない場合、第2ゲート信号Vg2の変化量ΔVgは、上記式1で示す値となる。この際、Cpr=Cpr1、Ccp=Ccp1である。
【0031】
ここで、入力手段30による入力(接触)がない場合における、タイミングt1での第1プリチャージ電圧Vprc1及び第2プリチャージ電圧Vprc2を、それぞれ次の式2、式3で示す値とする。
【0032】
Vprc1=Vprc3−ΔVs・(1/Cpr/(1/Ccp+1/Cpr)) …式2
Vprc2=Vprc3+ΔVs・(1/Cpr/(1/Ccp+1/Cpr)) …式3
入力手段30による入力(接触)がない場合は、タイミングt2で、Vg1=Vg2=Vprc3となり、Vs1=Vs2=Vcp3となるため、第1アンプAMP1に流れる第1アンプ電流iamp1と第2アンプAMP2に流れる第2アンプ電流iamp2が一致する(iamp1=iamp2=i3)。
【0033】
この2つの出力を電流積分すると、第1積分電圧Vout1及び第2積分電圧Vout2となり、第1積分電圧Vout1及び第2積分電圧Vout2の電圧レベルは一致する(Vout1=Vout2=V7)。そして、第1積分電圧Vout1及び第2積分電圧Vout2の差分をとった出力電圧Voutは0Vとなる。
【0034】
なお、上記のように入力手段30による入力(接触)が無い場合、第1アンプAMP1のゲート電極−ソース電極間の電圧Vgs1は、電圧V1から−ΔVgs変化した電圧V3に変化し、第2アンプAMP2のゲート電極−ソース電極間の電圧Vgs2は、電圧V2から+ΔVgs変化した電圧V3に変化する。
【0035】
一方、入力手段30による入力(接触)が有る場合、タイミングt2での第1ゲート信号Vg1及び第2ゲート信号Vg2の変化量ΔVgは、次の式4で示す値となる。
【0036】
ΔVg=ΔVs・(1/(Cf+Cpr))/(1/Ccp+1/(Cf+Cpr)) …式4
入力手段30による入力(接触)が無い場合に比べて、変化量ΔVgが小さくなることが分かる。タイミングt2以降での第1ゲート信号Vg1は次の式5で示す電圧Vg4の値となり、第2ゲート信号Vg2は次の式6で示す電圧Vg5の値となる。
【0037】
Vg4=Vprc3+ΔVs・((1/Cpr/(1/Ccp+1/Cpr))−(1/(Cf+Cpr))/(1/Ccp+1/(Cf+Cpr))) …式5
Vg5=Vprc3−ΔVs・((1/Cpr/(1/Ccp+1/Cpr))−(1/(Cf+Cpr))/(1/Ccp+1/(Cf+Cpr))) …式6
第1アンプ電流iamp1の電流値は電流i1から電流i4に変化し、第2アンプ電流iamp2の電流値は電流i2から電流i5に変化するため、iamp1>iamp2となる。
【0038】
そして、タイミングt3での第1積分電圧Vout1の電圧レベルは電圧V8となり、第2積分電圧Vout2の電圧レベルは電圧V9となり(V8>V9)、出力電圧VoutはV8−V9となる。
【0039】
なお、上記のように入力手段30による入力(接触)が有る場合、第1アンプAMP1のゲート電極−ソース電極間の電圧Vgs1は、電圧V1から−ΔVgs変化した電圧V4に変化し、第2アンプAMP2のゲート電極−ソース電極間の電圧Vgs2は、電圧V2から+ΔVgs変化した電圧V5に変化する。
【0040】
次に、第1アンプAMP1及び第2アンプAMP2の特性及びその動作について説明する。
図3に示すように、第1アンプAMP1及び第2アンプAMP2は、図3に示すような非線形特性であっても、領域での使用であっても動作に影響しないものである。また、第1アンプAMP1及び第2アンプAMP2の特性がずれている場合は、入力手段30による入力動作の無い状態で、調整された第1カップリング信号Vs1と、調整された第2カップリング信号Vs2とが同一のレベルとなるよう、すなわち、iamp1=iamp2となるように、第1プリチャージ電圧Vprc1及び第2プリチャージ電圧Vprc2を調節することで、同様の働きを期待することができる。
【0041】
次に、上記センサモジュールにおいて、入力手段30による入力(接触)が無い状態で、センサモジュールにノイズが発生した場合のセンサモジュールの動作について説明する。
【0042】
図4及び図5に示すように、タイミングt1及びタイミングt2の間は、第1プリチャージ制御スイッチSW11及び第2プリチャージ制御スイッチSW21はオン状態のため、外来ノイズが発生しても第1ゲート信号Vg1及び第2ゲート信号Vg2は変化しない。タイミングt2及びタイミングt3の間では、第1プリチャージ制御スイッチSW11及び第2プリチャージ制御スイッチSW21はオフ状態に切替わるため、外来ノイズの影響を受け、第1ゲート信号Vg1及び第2ゲート信号Vg2が変化することになる。
【0043】
第1センサ回路1及び第2センサ回路2が隣接して配置されている場合、第1センサ回路1において、タイミングt4でΔVnなるノイズ電圧が印加されたものと仮定する。すると、第1アンプAMP1のゲート電極の電圧は、Vg1=Vprc3+ΔVn=Vg6となり、第1積分電圧Vout1はV7からV10に変化する。
【0044】
また、第2センサ回路2においても同様に、タイミングt4でΔVnなるノイズ電圧が印加された場合、第2アンプAMP2のゲート電極の電圧は、Vg2=Vprc3+ΔVn=Vg6となり、第2積分電圧Vout2はV7からV10に変化する。上記のことから分かるように、センサモジュールにノイズが発生しても差分回路20の出力電圧Voutは変化しない。
【0045】
上記のように構成された第1の実施形態に係るセンサモジュールによれば、センサモジュールは、第1センサ回路1と、第2センサ回路2と、第1積分回路11と、第2積分回路12と、差分回路20と、を備えている。差分回路20は、第1積分電圧Vout1及び第2積分電圧Vout2の差分をとることにより、入力手段30による入力動作の有無を判断することができる。
【0046】
また、上記のように第1積分電圧Vout1及び第2積分電圧Vout2の差分をとることにより、外来ノイズ成分をキャンセルすることができる。検知容量Cf1、Cf2の変化のみを考慮して入力手段30による入力動作の有無を判断することができるため、誤動作することのないセンサモジュールを得ることができる。
【0047】
さらに、上記のように外来ノイズ成分をキャンセルすることができるため、第1センサ回路1及び第2センサ回路2の小型化を図ることができ、特に第1検知電極DE1及び第2検知電極DE2の小型化を図ることができる。
上記のことから、サイズの小型化を図ることができる、動作の安定性に優れたセンサモジュールを得ることができる。
【0048】
次に、第2の実施形態に係るセンサモジュールを備えた液晶表示装置について説明する。この実施形態において、他の構成は上述した実施形態と同一であり、同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0049】
図6に示すように、液晶表示装置は、アレイ基板と、アレイ基板に所定の隙間を置いて対向配置された対向基板と、アレイ基板及び対向基板間に挟持された液晶層とを有した液晶表示パネルと、アレイ基板に設けられたセンサモジュール(第1センサ回路1及び第2センサ回路1)とを備えている。アレイ基板は、複数の配線、複数の画素(画素回路)など、を有している。
【0050】
複数の配線としては、アレイ基板に形成された複数の信号線Sig11乃至Sig13、及びSig21乃至Sig23を挙げることができる。これらの信号線は、液晶(液晶表示パネル)駆動とセンサ(センサモジュール)駆動を兼ねている。このため、センサモジュール(第1センサ回路1及び第2センサ回路2)の一部は、アレイ基板の複数の配線と共用されていると言うことができる。
【0051】
アレイ基板には、さらに、画素スイッチ群SW1、液晶駆動スイッチ群SW2及びセンサ駆動スイッチ群SW3が形成されている。画素スイッチ群SW1、液晶駆動スイッチ群SW2及びセンサ駆動スイッチ群SW3をそれぞれ構成するスイッチは、TFTで形成されている。
【0052】
上記信号線には、それぞれ液晶駆動スイッチ及びセンサ駆動スイッチが接続されている。液晶駆動スイッチ及びセンサ駆動スイッチを交互にオン/オフすることにより、液晶駆動用とセンサ駆動用の両方の信号線として利用することができる。これにより、例えば、配線数を最小化とすることができる。
【0053】
センサ動作中の信号線は、常に液晶駆動スイッチ群SW2が常にオフとなる電圧で駆動される。第1センサ回路1と第2センサ回路2は、それぞれ少なくとも1絵素分(1絵素は、例えば、赤、緑、青の3画素)の領域があれば構成できるため、2つのセンサ回路をきわめて近い距離に配置することが可能となる。
【0054】
第1センサ回路1において、第1アンプAMP1のドレイン電極と信号線Sig13との間には、センサ選択用の出力スイッチSW12が接続されている。第1アンプAMP1のゲート電極−ソース電極間には第1カップリング容量Ccp1が接続されている。第1アンプAMP1のゲート電極−グランド間には、寄生容量Cpr1と、入力手段30による入力(接触)がある場合は検知容量Cf1が発生する。
【0055】
第1アンプAMP1のゲート電極と信号線Sig11との間には、第1プリチャージ制御スイッチSW11が接続されている。第1プリチャージ制御スイッチSW11は、信号線Sig11の電位(第1ゲート信号Vg1)を、第1カップリング容量Ccp1、検知容量Cf1、寄生容量Cpr1に書き込む働きをする。信号線Sig12は、第1アンプAMP1のソース電極に接続されている。第1アンプAMP1は、信号線Sig12を介して与えられる第1カップリング信号Vs1を変化させる働きをし、センサ駆動スイッチ(SW3)がオン状態に切替わることにより、第1カップリング信号Vs1の変化に起因した第1アンプ電流iamp1が信号線Sig13及び端子node13を介して出力される。
【0056】
図6及び図7に示すように、端子node13は、第1積分回路11の入力端子に接続され、第1積分回路11の入力端子には第1アンプ電流iamp1が与えられる。端子node13の電圧はオペアンプにより電圧Vref1と等しくなり、一定の第1アンプ電流iamp1が、積分容量C0に蓄積される。積分時間をtとすると、第1積分電圧Vout1は、次の式7で示す値となる。
【0057】
Vout1=iamp1・t/C0 …式7
またリセットスイッチSW14をオン状態に切替えることで、出力はリセットされる。
【0058】
図6に示すように、一方、第2センサ回路2において、第2アンプAMP2のドレイン電極と信号線Sig23との間には、センサ選択用の出力スイッチSW22が接続されている。第2アンプAMP2のゲート電極−ソース電極間には第2カップリング容量Ccp2が接続されている。第2アンプAMP2のゲート電極−グランド間には、寄生容量Cpr2と、入力手段30による入力(接触)がある場合は検知容量Cf2が発生する。
【0059】
第2アンプAMP2のゲート電極と信号線Sig21との間には、第2プリチャージ制御スイッチSW21が接続されている。第2プリチャージ制御スイッチSW21は、信号線Sig21の電位(第2ゲート信号Vg2)を、第2カップリング容量Ccp2、検知容量Cf2、寄生容量Cpr2に書き込む働きをする。信号線Sig22は、第2アンプAMP2のソース電極に接続されている。第2アンプAMP2は、信号線Sig22を介して与えられる第2カップリング信号Vs2を変化させる働きをし、センサ駆動スイッチ(SW3)がオン状態に切替わることにより、第2カップリング信号Vs2の変化に起因した第2アンプ電流iamp2が信号線Sig23及び端子node23を介して出力される。
【0060】
図6及び図8に示すように、端子node23は、第2積分回路12の入力端子に接続され、第2積分回路12の入力端子には第2アンプ電流iamp2が与えられる。
【0061】
端子node23の電圧はオペアンプにより電圧Vref2と等しくなり、一定の第2アンプ電流iamp2が、積分容量C0に蓄積される。積分時間をtとすると、第2積分電圧Vout2は、次の式8で示す値となる。
【0062】
Vout2=iamp2・t/C0 …式8
またリセットスイッチSW24をオン状態に切替えることで、出力はリセットされる。
【0063】
図9に示すように、差分回路20に、第1積分回路11からは第1積分電圧Vout1が、第2積分回路12からは第2積分電圧Vout2がそれぞれ与えられる。差分回路20は、出力電圧Voutを出力する。出力電圧Voutは、次の式9で示す値となる。
【0064】
Vout=R2/R1(Vout2−Vout1) …式9
上記のように構成された第2の実施形態に係るセンサモジュールを備えた液晶表示装置によれば、センサモジュールは、第1センサ回路1と、第2センサ回路2と、第1積分回路11と、第2積分回路12と、差分回路20と、を備えている。差分回路20は、第1積分電圧Vout1及び第2積分電圧Vout2の差分をとることにより、入力手段30による入力動作の有無を判断することができる。このため、上述した第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0065】
また、センサモジュールはアレイ基板に設けられ、センサモジュールの一部は、アレイ基板の複数の配線(信号線)と共用されている。これにより、例えば、配線数を最小化とすることができる。
上記のことから、サイズの小型化を図ることができる、動作の安定性に優れたセンサモジュールを備えた液晶表示装置を得ることができる。
【0066】
次に、第3の実施形態に係るセンサモジュールを備えた液晶表示装置について説明する。この実施形態において、他の構成は上述した第2の実施形態と同一であり、同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0067】
図10に示すように、第1センサ回路1において、信号線Sig13に対し、新たにスイッチSW13が接続されている。スイッチSW13がオン状態に切替わることにより、信号線Sig13に信号線電圧Vprsg1が与えられる。信号線Sig13自体には一定の容量Csig13が存在するため、スイッチSW13をオフ状態に切替えても、電圧は信号線Sig13に保存される。
【0068】
この状態で信号線Sig13を信号線Sig12と異なる電圧にすると、第1アンプ電流iamp1が流れ、∫iamp1dt/Csig13なる電圧変化が信号線Sig13に発生する。一定時間後に第1出力スイッチSW12をオフ状態に切替えることで第1アンプ電流iamp1に応じた第1積分電圧Vout1が出力される。
【0069】
一方、第2センサ回路2において、信号線Sig23に対し、新たにスイッチSW23が接続されている。スイッチSW23がオン状態に切替わることにより、信号線Sig23に信号線電圧Vprsg2が与えられる。信号線Sig23自体には一定の容量Csig23が存在するため、スイッチSW23をオフ状態に切替えても、電圧は信号線Sig23に保存される。
【0070】
この状態で信号線Sig23を信号線Sig22と異なる電圧にすると、第2アンプ電流iamp2が流れ、∫iamp2dt/Csig23なる電圧変化が信号線Sig23に発生する。一定時間後に第2出力スイッチSW22をオフ状態に切替えることで第2アンプ電流iamp2に応じた第2積分電圧Vout2が出力される。
【0071】
センサモジュールは、第1積分回路11の替りにオペアンプ13を備え、第2積分回路12の替りにオペアンプ14を備えている。オペアンプ13は、反転入力端子と、端子node13に接続された非反転入力端子と、差分回路20に接続された出力端子とを有している。オペアンプ14は、反転入力端子と、端子node23に接続された非反転入力端子と、差分回路20に接続された出力端子とを有している。オペアンプ13、14は、非反転のバッファ回路として構成されている。
【0072】
上記のように構成された第3の実施形態に係るセンサモジュールを備えた液晶表示装置によれば、センサモジュールは、第2の実施形態の第1積分回路11及び第2積分回路12は有していないが、積分回路が表示領域を含むアレイ基板(液晶表示パネル)の領域内に組み込みこまれた状態とすることできる。
【0073】
差分回路20は、第1積分電圧Vout1及び第2積分電圧Vout2の差分をとることにより、入力手段30による入力動作の有無を判断することができる。このため、上述した第1及び第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
上記のことから、サイズの小型化を図ることができる、動作の安定性に優れたセンサモジュールを備えた液晶表示装置を得ることができる。
【0074】
なお、この発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
例えば、表示パネルは、液晶表示パネルに限定されるものではなく、有機EL(electroluminescent)パネルなど、画像を表示するように構成されたものであれば良い。
【符号の説明】
【0075】
1…第1センサ回路、DE1…第1検知電極、AMP1…第1アンプ、Ccp1…第1カップリング容量、Cpr1…寄生容量、Cf1…検知容量、SW11…第1プリチャージ制御スイッチ、SW12…第1出力スイッチ、2…第2センサ回路、DE2…第2検知電極、AMP2…第2アンプ、Ccp2…第2カップリング容量、Cpr2…寄生容量、Cf2…検知容量、SW21…第2プリチャージ制御スイッチ、SW22…第2出力スイッチ、11…第1積分回路、12…第2積分回路、13,14…オペアンプ、20…差分回路、30…入力手段、Sig11,Sig12,Sig13,Sig21,Sig22,Sig23…信号線、Vs1…第1カップリング信号、Vs2…第2カップリング信号、Vcp1,Vcp2,Vcp3…カップリング電圧、Vg1…第1ゲート信号、Vg2…第2ゲート信号、Vprc1…第1プリチャージ電圧、Vprc2…第2プリチャージ電圧、Vprc3…第3プリチャージ電圧、iamp1…第1アンプ電流、iamp2…第2アンプ電流、Vout1…第1積分電圧、Vout2…第2積分電圧、Vout…出力電圧。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1プリチャージ電圧が与えられた後に入力手段による入力動作に応じて検知容量が変化する第1検知電極と、前記第1検知電極に接続されたゲート電極を含む薄膜トランジスタで形成され、前記第1検知電極における前記第1プリチャージ電圧の減衰量に応じてソース電極に与えられる第1カップリング信号を調整してドレイン電極から出力する第1アンプと、前記第1アンプのソース電極及びゲート電極間に接続された第1カップリング容量と、を有した第1センサ回路と、
第2プリチャージ電圧が与えられた後に入力手段による入力動作に応じて検知容量が変化する第2検知電極と、前記第2検知電極に接続されたゲート電極を含む薄膜トランジスタで形成され、前記第2検知電極における前記第2プリチャージ電圧の減衰量に応じてソース電極に与えられる第2カップリング信号を調整してドレイン電極から出力する第2アンプと、前記第2アンプのソース電極及びゲート電極間に接続された第2カップリング容量と、を有した第2センサ回路と、
前記第1アンプのドレイン電極及び前記第2アンプのドレイン電極に接続された差分回路と、を備えるセンサモジュール。
【請求項2】
前記第1アンプのソース電極には、前記第1プリチャージ電圧が与えられる際に基準電圧より負側に遷移した電圧レベルに設定され、かつ前記第1プリチャージ電圧が与えられた後に前記基準電圧に設定された前記第1カップリング信号が与えられ、
前記第2アンプのソース電極には、前記第2プリチャージ電圧が与えられる際に前記基準電圧より正側に遷移した電圧レベルに設定され、かつ前記第2プリチャージ電圧が与えられた後に前記基準電圧に設定された前記第2カップリング信号が与えられる請求項1に記載のセンサモジュール。
【請求項3】
前記基準電圧より負側に遷移した電圧レベルと前記基準電圧との差の絶対値と、前記基準電圧より正側に遷移した電圧レベルと前記基準電圧との差の絶対値と、は、同一の値である請求項2に記載のセンサモジュール。
【請求項4】
前記入力手段による入力動作の無い状態で、前記調整された第1カップリング信号と、前記調整された第2カップリング信号とが同一のレベルとなるよう、前記第1プリチャージ電圧及び第2プリチャージ電圧は調節されている請求項1に記載のセンサモジュール。
【請求項5】
前記第1アンプのドレイン電極及び差分回路間に接続された第1積分回路と、
前記第2アンプのドレイン電極及び差分回路間に接続された第2積分回路と、をさらに備えている請求項1に記載のセンサモジュール。
【請求項6】
前記第1センサ回路は、前記第1検知電極に接続され、前記第1プリチャージ電圧を前記第1検知電極に出力する導通状態又は非導通状態に切替えられる第1プリチャージ制御スイッチと、前記第1アンプのドレイン電極及び差分回路間に接続され、前記調整された前記第1カップリング信号を前記差分回路に出力する導通状態又は非導通状態に切替えられる第1出力スイッチと、をさらに有し、
前記第2センサ回路は、前記第2検知電極に接続され、前記第2プリチャージ電圧を前記第2検知電極に出力する導通状態又は非導通状態に切替えられる第2プリチャージ制御スイッチと、前記第2アンプのドレイン電極及び差分回路間に接続され、前記調整された前記第2カップリング信号を前記差分回路に出力する導通状態又は非導通状態に切替えられる第2出力スイッチと、をさらに有する請求項1に記載のセンサモジュール。
【請求項7】
前記第1検知電極及び第2検知電極は、前記入力手段による入力動作に応じて検知容量がともに変化する請求項1に記載のセンサモジュール。
【請求項8】
複数の配線と、複数の画素と、を有したアレイ基板を備えた表示パネルと、
前記第1センサ回路及び第2センサ回路が前記アレイ基板に設けられた請求項1乃至7の何れか1項に記載のセンサモジュールと、を備える表示装置。
【請求項9】
前記第1センサ回路及び第2センサ回路の一部は、前記アレイ基板の複数の配線と共用されている請求項8に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−15329(P2013−15329A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146468(P2011−146468)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(302020207)株式会社ジャパンディスプレイセントラル (2,170)
【Fターム(参考)】