説明

センサーシートおよびその製造方法

【課題】表層パネルの美観を損ねることを抑えることができるセンサーシートを提供すること。
【解決手段】薄板状の基板2と、基板2の厚さ方向の一方の面上に形成された補助電極部3と、補助電極部3を覆うように基板2上に形成された誘電体部材6と、補助電極部3から離間し、且つ基板2の厚さ方向から見たときに少なくとも一部が補助電極部3に重なるように、誘電体部材6上に形成された検出電極7と、検出電極7と固定された板状の表層パネル8と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサーシートおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器等の電源を入れたり操作入力を受け付けたりするためのスイッチとして、指などを入力体として用い、入力体が近接あるいは接触したことを検出するタッチスイッチが知られている。このようなタッチスイッチの例として、特許文献1には、指などが近接あるいは接触したことを、指などとの間の静電容量の変化によって検出する静電容量式スイッチが記載されている。
特許文献1に記載の静電容量式スイッチは、静電容量の変化を検出するための検出電極(検知電極)が複数形成された基板(配線基板)と、この配線基板に重ねて設けられた板状の表層パネル(スイッチパネル)とが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−242571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の静電容量式スイッチにおいて、指と検出電極との間の距離を短くすることができれば、検出感度をさらに高めることができる。この目的で、たとえば基板に代えて表層パネルに検出電極や配線等を形成することが考えられる。
しかしながら、表層パネルに検出電極や配線等を形成する場合には、表層パネルに検出電極や配線等を形成する工程において表層パネルの表面が荒れたりして表層パネルの美観を損ねるおそれがある。また、検出電極や配線を表層パネルにパターン形成した後に、加熱乾燥等の熱処理を表層パネルに対して行うと、表層パネルが変形するおそれがあり、この場合にも表層パネルの美観を損ねるおそれがある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、表層パネルの美観を損ねることを抑えることができるセンサーシートおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明のセンサーシートは、薄板状の基板と、前記基板の厚さ方向の一方の面上に形成された補助電極と、前記補助電極を覆うように前記基板上に形成された誘電体層と、前記補助電極から離間し、且つ前記基板の厚さ方向から見たときに少なくとも一部が前記補助電極に重なるように、前記誘電体層に形成された検出電極と、前記検出電極と固定された板状の表層パネルと、を備えることを特徴とするセンサーシートである。
【0007】
また、前記誘電体層は、前記補助電極と前記検出電極とを貼り合わせるための粘着性の誘電体部材を有することが好ましい。
【0008】
また、前記補助電極は、前記基板の厚さ方向から見たときに、前記検出電極の輪郭の内側において、前記検出電極の周縁に沿って延びていることが好ましい。
【0009】
また、前記表層パネルは、その厚さ方向に凹む凹部を有し、前記検出電極は、前記凹部に配置されていることが好ましい。
【0010】
また、前記表層パネルは光透過性を有する熱可塑性樹脂からなり、前記検出電極は光透過性電極からなっていてもよい。
【0011】
本発明のセンサーシートの製造方法は、入力体が近接あるいは接触した際に前記入力体が近接あるいは接触したことを検出するための検出電極を有するセンサーシートの製造方法であって、薄板状の基板の厚さ方向の一方の面上に補助電極をパターン形成する補助電極形成工程と、前記補助電極形成工程の前又は後に、薄板状の表層パネルに前記検出電極を形成する検出電極形成工程と、前記補助電極形成工程および前記検出電極形成工程の後に、前記基板の厚さ方向から見たときに少なくとも一部において前記補助電極の前記検出電極とが重なるように、前記基板と前記表層パネルとを、薄板あるいは膜状の誘電体部材を介して接着する接着工程と、を備えることを特徴とするセンサーシートの製造方法である。
【0012】
また、前記検出電極形成工程において、前記表層パネルの厚さ方向に凹む凹部を前記表層パネルに形成し、前記検出電極を前記凹部に配置することが好ましい。
【0013】
また、前記表層パネルは光透過性を有する熱可塑性樹脂からなり、前記検出電極は光透過性電極からなっていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のセンサーシートの製造方法によれば、表層パネルに検出電極を形成するとともに基板に補助電極を形成し、その後に表層パネルと基板とを接着するので、表層パネルの美観を損ねることを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態のセンサーシートの平面図である。
【図2】図1のA−A線における断面図である。
【図3】(A)は同センサーシートにおける表層パネルを示す裏面図、(B)は同センサーシートにおける基板を示す平面図である。
【図4】同センサーシートの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態のセンサーシート1およびその製造方法について説明する。
まず、本実施形態の製造方法によって製造されるセンサーシート1の構成について図1ないし図3(B)を参照して説明する。
図1は、本実施形態のセンサーシート1の平面図である。図2は、図1のA−A線における断面図である。図3(A)は、センサーシート1における表層パネル8を示す裏面図である。図3(B)は、センサーシート1における基板2を示す平面図である。
【0017】
図1および図2に示すように、センサーシート1は、基板2と、補助電極部3と、誘電体部材(誘電体層)6と、検出電極7と、表層パネル8とがこの順に重ねて設けられた層状構造に形成されている。以下、センサーシート1において、基板2が設けられている方を下、表層パネル8が設けられている方を上として説明を行う。
【0018】
基板2は、薄板状に形成された絶縁体からなる。基板2の材料は、絶縁性を有する材料であればどのような材料であってもよい。たとえば、基板2の材料として樹脂を採用する場合には、ポリエステル系、ポリプロピレン系、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ナイロン(登録商標)、ビニロン、アセテート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリル、ポリ塩化ビニル、およびアクリル系樹脂などを採用することができる。また、基板2として、たとえばガラス基板やセラミックス基板、あるいは金属コア基板を採用することもできる。
【0019】
図3(B)に示すように、基板2の形状は、その厚さ方向から見たときに、四角形の周縁の一部が外側へ突出した形状になっている。なお、基板2の形状は、これに限定されるものではなく、適宜の形状とすることができる。
【0020】
図2および図3(B)に示すように、補助電極部3は、補助電極本体4(補助電極)と、配線5とを有する。補助電極本体4と配線5とは、基板2の上面にパターン形成された導体である。
補助電極本体4は、基板2の厚さ方向から見たときに、四角形の輪郭形状を有しているとともに中央部が四角く切り取られた形状に形成されている。補助電極本体4の形状は、基板2の厚さ方向からセンサーシート1を見たときに、検出電極7の輪郭の内側において、検出電極7の周縁に沿って延びている。補助電極本体4の材料としては、金属箔や、金属粒子若しくは金属ナノワイヤー、カーボン、グラファイトなどを含有する導電性インク、あるいは導電性高分子を含有する導電性インクなどを採用することができる。
【0021】
配線5は、補助電極本体4の周縁に一端5aが接続され、基板2の突出部分の突出端に他端5bが配置されている。配線5の他端5bは、静電容量の変化を検出するための検出回路Dに接続することができるように、むき出しになっている。なお、配線5において、検出回路Dに接続するためにむき出しとなっている部分以外には、配線5が腐食するのを防止する目的で配線5を被覆する樹脂フィルム等が設けられていてもよい。
【0022】
図2に示すように、誘電体部材6は、薄板状あるいは膜状に形成された誘電体からなる。薄板状あるいは膜状の誘電体部材6の例としては、たとえば、熱可塑性樹脂が熱加工により薄板状とされた誘電体部材や、基板2と表層パネル8との間に接着剤を充填して硬化させることによって形成される膜状の誘電体部材、あるいはこれらが組み合わされた誘電体部材などを挙げることができる。また、誘電体部材6の材料としては、補助電極本体4と検出電極7とを貼り合わせるための粘着性を有するたとえば両面粘着テープなどを採用することもできる。
【0023】
検出電極7は、基板2の厚さ方向から見たときに補助電極本体4に重なる位置に配置された電極である。検出電極7は、基板2の厚さ方向から見たときに補助電極本体4の少なくとも一部と重なるように設けられていればよい。本実施形態では、検出電極7を基板2の厚さ方向から見たときの形状は、基板2の厚さ方向から見たときにおける補助電極本体4の外側輪郭形状と同じである。検出電極7の材料としては、たとえば、金属箔や、金属粒子若しくは金属ナノワイヤーを含有する導電性インク、導電性高分子を含有する導電性インク、あるいは酸化インジウムスズ(ITO)を代表とする透明金属酸化膜などを採用することができる。
【0024】
表層パネル8は、基板2の厚さ方向に基板2と重ねて設けられた薄板状部材である。表層パネル8の下面には、上へ向かって凹む凹部9が形成されており、上述の検出電極7は、凹部9の内部に配置されている。これにより、検出電極7の下面と表層パネル8の下面とは面一になっている。表層パネル8の材料としては、たとえば樹脂やガラスなど、絶縁体を適宜選択して採用することができる。たとえば、表層パネル8の材料として熱可塑性樹脂を採用することができる。
また、表層パネル8の上面は、傷が付きにくいように、あるいは付いた傷が目立たないようにする目的で表面処理が施されていてもよい。また、表層パネル8の上面は、装飾のために凹凸が形成されていたり着色が施されていてもよい。
【0025】
以上に説明した構成のセンサーシート1の製造方法について説明する。図4は、本実施形態のセンサーシート1の製造方法を説明するためのフローチャートである。
まず、基板2および表層パネル8を成形する。基板2および表層パネル8は、それぞれ一定の厚さを有する薄板あるいはシートを材料として成形される。
【0026】
次に、基板2の厚さ方向の一方の面上に補助電極部3をパターン形成する(図4に示す補助電極形成工程S1。)。
補助電極形成工程S1では、たとえばスクリーン印刷によって基板2の厚さ方向の一方の面に銀ペーストのパターンを形成する。この銀ペーストのパターンは、補助電極本体4と配線5とが一続きとなるように同一工程で形成される。続いて、銀ペーストのパターンが形成された基板2を加熱乾燥させて銀ペーストを硬化させる。なお、補助電極形成工程S1における補助電極部3の形成方法はスクリーン印刷には限られない。たとえば補助電極部3の材料として金属箔を採用する場合には、ケミカルエッチングやレーザーエッチングなどの方法を採用することができる。
【0027】
次に、表層パネル8に検出電極7を形成する(図4に示す検出電極形成工程S2。)。
検出電極形成工程S2では、まず、表層パネル8に、検出電極7を配置するための凹部9をたとえば加熱プレスによって形成する。次に、表層パネル8の凹部9に検出電極7を形成する。表層パネル8に検出電極7を形成する方法としては、エッチングやパターンコート法などを適宜採用することができる。表層パネル8が熱可塑性樹脂によって形成されている場合には、熱可塑性樹脂が軟化しない程度の温度範囲で検出電極形成工程S2を行う。
なお、検出電極形成工程S2は、補助電極形成工程S1より先に行われてもよい。
補助電極形成工程S1と検出電極形成工程S2との両方が終了した状態では、補助電極部3が形成された基板2と、検出電極7が形成された表層パネル8とが形成されている。
【0028】
次に、補助電極部3が形成された基板2と、検出電極7が形成された表層パネル8とを、薄板あるいは膜状の誘電体部材6を介して接着する(図4に示す接着工程S3。)。
接着工程S3では、たとえば基板2において補助電極部3が形成された側の面上に、たとえばアクリル系接着剤を塗布し、基板2の厚さ方向から見たときに補助電極本体4と検出電極7とが重なるように位置決めして表層パネル8を基板2に押し付ける。これにより、基板2に塗布されたアクリル系接着剤は押し広げられ、基板2と表層パネル8との間に充填される。この状態で基板2および表層パネル8を静置すると、アクリル系接着剤が硬化して誘電体部材6となる。これにより、補助電極本体4と検出電極7と誘電体部材6とによってキャパシタC(図2参照)が構成される。
これで、センサーシート1の製造は終了する。
【0029】
以上に説明したセンサーシート1の作用について説明する。
図2に示すように、センサーシート1は、表層パネル8の上面に指などの入力体10を近接あるいは接触させて使用するものである。入力体10は導体であればよく、指以外にもたとえば静電容量式の公知のスタイラスペンなどを適宜選択して用いることができる。
【0030】
また、センサーシート1の使用時には、センサーシート1の配線5に検出回路Dが接続され、検出回路Dから補助電極本体4へ、たとえば高周波信号からなる駆動信号が出力される。検出回路Dは、補助電極本体4と検出電極7との間に構成されるキャパシタCの静電容量の変化を検出する。
【0031】
センサーシート1の表層パネル8の上面に入力体10を近接あるいは接触させると、入力体10と検出電極7との間にはキャパシタCとは別のキャパシタC2が構成される。入力体10と検出電極7との間のキャパシタC2の静電容量は、入力体10と検出電極7との間の距離に応じて変化し、入力体10と検出電極7との距離が短くなるにしたがってこの静電容量は増加する。入力体10と検出電極7との間にキャパシタC2が構成されることにより、検出電極7における電荷が変化し、これにより検出電極7と補助電極本体4との間の静電容量も変化する。その結果、検出電極7と補助電極本体4との間の静電容量の変化を検出している検出回路Dは、入力体10が検出電極7に近接したことを検出することができる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態のセンサーシート1およびその製造方法によれば、表層パネル8に検出電極7を形成するとともに基板2に補助電極部3を形成し、その後に表層パネル8と基板2とを接着するので、表層パネル8を加熱乾燥させるなどの工程をなくすことができる。
したがって、たとえば表層パネル8が熱可塑性樹脂によって形成されている場合に、表層パネル8が加熱されることによる表層パネル8表面の白濁や、表層パネル8の変形などを抑え、表層パネル8の美観を損ねることを抑えることができるという効果を奏する。
これにより、センサーシート1を製造するときの歩留まりを向上させることができる。
【0033】
また、表層パネル8に形成された凹部9に検出電極7が配置されているので、表層パネル8に凹部9が形成されていない場合と比較して、表層パネル8の上面により近い位置に検出電極7の上面を配置することができる。これにより、検出電極7と入力体10との間の最短距離を短くすることができる。その結果、検出電極7と入力体10との間に構成されるキャパシタC2の容量を大きくすることができ、検出感度を高めることができる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
たとえば、上述の実施形態で説明したセンサーシート1において、基板2、補助電極部3、誘電体部材6、検出電極7、および表層パネル8の材料として、光透過性を有する材料を適宜選択して採用することができる。この場合、光透過性を有するセンサーシート1とすることができる。
【0035】
また、補助電極本体4および検出電極7は、少なくとも一部において補助電極本体4と検出電極7とが対向してキャパシタCを構成していればよい。すなわち、補助電極本体4および検出電極7の形状はそれぞれ適宜の形状に形成することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 センサーシート
2 基板
3 補助電極部
4 補助電極本体(補助電極)
5 配線
6 誘電体部材
7 検出電極
8 表層パネル
9 凹部
10 入力体
C キャパシタ
C2 キャパシタ
D 検出回路
S1 補助電極形成工程
S2 検出電極形成工程
S3 接着工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板状の基板と、
前記基板の厚さ方向の一方の面上に形成された補助電極と、
前記補助電極を覆うように前記基板上に形成された誘電体層と、
前記補助電極から離間し、且つ前記基板の厚さ方向から見たときに少なくとも一部が前記補助電極に重なるように、前記誘電体層に形成された検出電極と、
前記検出電極と固定された板状の表層パネルと、
を備えることを特徴とするセンサーシート。
【請求項2】
前記誘電体層は、前記補助電極と前記検出電極とを貼り合わせるための粘着性の誘電体部材を有することを特徴とする請求項1に記載のセンサーシート。
【請求項3】
前記補助電極は、前記基板の厚さ方向から見たときに、前記検出電極の輪郭の内側において、前記検出電極の周縁に沿って延びていることを特徴とする請求項1または2に記載のセンサーシート。
【請求項4】
前記表層パネルは、その厚さ方向に凹む凹部を有し、
前記検出電極は、前記凹部に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のセンサーシート。
【請求項5】
前記表層パネルは光透過性を有する熱可塑性樹脂からなり、
前記検出電極は光透過性電極からなる
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のセンサーシート。
【請求項6】
入力体が近接あるいは接触した際に前記入力体が近接あるいは接触したことを検出するための検出電極を有するセンサーシートの製造方法であって、
薄板状の基板の厚さ方向の一方の面上に補助電極をパターン形成する補助電極形成工程と、
前記補助電極形成工程の前又は後に、薄板状の表層パネルに前記検出電極を形成する検出電極形成工程と、
前記補助電極形成工程および前記検出電極形成工程の後に、前記基板の厚さ方向から見たときに少なくとも一部において前記補助電極の前記検出電極とが重なるように、前記基板と前記表層パネルとを、薄板あるいは膜状の誘電体部材を介して接着する接着工程と、
を備えることを特徴とするセンサーシートの製造方法。
【請求項7】
前記検出電極形成工程において、前記表層パネルの厚さ方向に凹む凹部を前記表層パネルに形成し、前記検出電極を前記凹部に配置することを特徴とする請求項6に記載のセンサーシートの製造方法。
【請求項8】
前記表層パネルは光透過性を有する熱可塑性樹脂からなり、
前記検出電極は光透過性電極からなる
ことを特徴とする請求項6または7に記載のセンサーシートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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