説明

センサー材料とその製造方法、および、検出方法

【課題】センサー材料とその製造方法、および、検出方法を提供する。
【解決手段】分子汚染物質を検出するセンサー材料の製造方法は、金属酸化物前駆体の水溶液を準備する工程と、二酸化チタンナノチューブと金属酸化物の水溶液を混合して、混合物を形成する工程と、弱塩基で、混合物のpH値を中性に調整する工程と、混合物を水に分散させて、加熱する工程と、混合物をろ過して、固体部分を残し、酸素の連続流下で、固体部分を焼成して、金属酸化物を担持した二酸化チタンナノチューブを形成する工程とを有している。本発明は、センサー材料およびセンサー材料を用いた検出方法も提供し、分子汚染物質のppm〜pptレベルの濃度を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサー材料に関するものであって、特に、ppm−ppb−pptレベルの濃度レベル検出が可能なセンサー材料、その製造方法、および、センサー材料を用いた分子汚染物質の検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体や光電子工学における製造プロセス中に使用される気体、および、これらの気体の副産物は、空気中の分子汚染物質(Airborne Molecular contamination、AMC)となり、多くの製品欠陥を生じる。5種類のAMCとしては、酸性気体(molecular acids、MA)、アルカリ性気体(molecular bases、MB)、気体凝結物(molecular condensables、MC)、ドーパント気体(molecular dopants、MD)、および、未分類(no classes、MO)がある。例えば、酸性気体は金属層を腐食し、アルカリ性気体は“T-topping”効果に損害を与え、気体凝結物は薄膜特性に影響し、Si−NボンディングをSi−Oボンディングに転換、および、露光メカニズムのフォトレンズを曇らせ、ドーパント気体、例えば、PH3やAsH3は、p型やn型特性をシフトさせ、未分類中のオゾン(O3)は素子のキャパシタンスを低下させる。
【0003】
微汚染による半導体や光電子工学における製造工程の歩留まり低下を防止するため、国際半導体技術ロードマップ(International Technology Roadmap of Semiconductors、ITRS)は、毎年、異なる線幅プロセスに対し、汚染物質許容濃度を提案している。上述のように、PH3はAMCの一種で、室温で無色の毒ガスである。PH3が人体に吸い込まれると、人は呼吸困難になり、場合によっては死に至る。よって、法令により、半導体工場は、PH3センサーの導入を必要とする。例えば、45nmプロセスを例とすると、ITRSは、PH3濃度を10ppt(parts per trillion)より低くすることを提案する。よって、pptレベルの濃度を検出できるガスセンサーの使用が必要である。市販のPH3センサーは、主に、電気化学反応式と色変化式の二種のセンサーで、これらの二種のセンサーは90%以上の占有率である。しかし、これらの市販のPH3センサーの下限は、約100〜10ppb(parts per billion)で、これは、提案される10pptよりも遥かに高い。現在、ドーパント気体の検出に採用される方法は、まず、ウェハを無塵室で24〜48時間暴露し、フッ化水素酸(HF)で、堆積したドーパント気体を溶解し、サンプルを得て、その後、誘導結合プラズマ質量分析法(inductive coupled plasma mass spectroscopy、ICP−MS)によりサンプルを分析する。しかし、この方法は極めて時間がかかり、また、大きな労働力を必要とし、各サンプルは、サンプリングと分析に、2〜7日必要とする。よって、ウェハ汚染が確認される時には、既に、何日も経過しているので、何万のウェハが既に汚染され、廃棄することになり、半導体工場は多くの損失を被る。
【0004】
これにより、空気中の分子汚染物質を検出するセンサー材料と検出方法が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、非常に低濃度、すなわちppbからpptレベルの分子汚染物質を確実に検出することができ、人体への害や微細加工を必要とする半導体装置や光電子工学装置を製造する際の混入を未然に防止することができるセンサー材料とその製造方法、および、そのような微細な不純物の検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、分子汚染物質を検出するセンサー材料の製造方法を提供し、金属酸化物前駆体の水溶液を準備する工程と、二酸化チタンナノチューブと金属酸化物の水溶液を混合して、混合物を形成する工程と、弱塩基により、混合物のpH値を中性に調整する工程と、混合物を水に分散させて、混合物を加熱する工程と、混合物をろ過して、固体部分を残し、酸素の連続流下で、固体部分を焼成して、金属酸化物を担持した二酸化チタンナノチューブを形成する工程とを含む。
【0007】
本発明は、センサー材料も提供し、二酸化チタンナノチューブと、該二酸化チタンナノチューブに均一に分散され、担持された金属酸化物とを含み、該金属酸化物を担持した二酸化チタンナノチューブは、BETが約200〜400m2/gで、金属酸化物の金属のチタニウムに対する原子比率は約10〜50%である。ここにBETとは、比表面積を表すもので、Brunauer、Emmett、Tellerの3名が、単分子吸着理論であるLangmuir理論を多分子層吸着に拡張した、比表面積の計算方法として最も有名なBET吸着理論に基づいていることを意味している。
【0008】
本発明は、更に、分子汚染物質の検出方法も提供し、センサー材料を準備する工程と、気体を入れてセンサー材料と反応させる工程と、ラマン分光法システム、または、フーリエ変換赤外分光システムにより、検出結果を分析する工程とを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明により提供されるセンサー材料は、二酸化チタンナノチューブにCuO、AgO、Au23、Fe23などの金属酸化物を高い担持率および分散度で、二酸化チタンナノチューブに担持しているため、そのBETも非常に大きく、非常に広い表面積で酸化物を雰囲気中に晒すことができる。その結果、この表面に不純物を含む可能性のある気体を流すことにより、非常に濃度の低いpptレベルの不純物を含む気体でも、確実に検出することができる。
【0010】
更に、本発明のセンサー材料の製造方法によれば、二酸化チタンナノチューブと金属酸化物前駆体の水溶液とを混合して、混合物を形成し、その混合物を水に分散させて、加熱し、その固体部分を酸素流下で焼成して、金属酸化物を二酸化チタンナノチューブに担持しているため、高い金属酸化物担持と分散度を有し、pptレベルの濃度を検出することができる。
【0011】
更に、本発明により提供されるセンサー材料を適用した検出方法は、気体のリアルタイム検出を可能にする。これにより、本発明は、従来の技術中の、例えば、pptレベルの濃度の検出ができない、また、リアルタイム検出が実行できない等の問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態によるセンサー材料の製造方法のフローチャートである。
【図2】本発明の実施形態による検出システムを示す図である。
【図3a】実施例1により製造されるセンサー材料のX線回折スペクトルを示す図である。
【図3b】比較例2〜4により製造されるセンサー材料のX線回折スペクトルを示す図である。
【図4】本発明の実施例6のラマンスペクトルを示す図である。
【図5】本発明の実施例7のFT−IRスペクトルを示す図である。
【図6】本発明の実施例8中、異なるセンサー材料の異なる条件下でのFT−IRスペクトルを示す図である。
【図7】本発明の実施例8中、異なるセンサー材料の異なる条件下でのFT−IRスペクトルを示す図である。
【図8】本発明の実施例8中、異なるセンサー材料の異なる条件下でのFT−IRスペクトルを示す図である。
【図9】本発明の実施例8中、異なるセンサー材料の異なる条件下でのFT−IRスペクトルを示す図である。
【図10】本発明の実施例8中、異なるセンサー材料の異なる条件下でのFT−IRスペクトルを示す図である。
【図11】本発明の実施例8中、異なるセンサー材料の異なる条件下でのFT−IRスペクトルを示す図である。
【図12】比較例5中、異なる濃度の検出すべき気体(PH3)のFT−IRスペクトルを示す図である。
【図13】比較例5中、異なる濃度の検出すべき気体(PH3)のFT−IRスペクトルを示す図である。
【図14】比較例5中、異なる濃度の検出すべき気体(PH3)のFT−IRスペクトルを示す図である。
【図15】比較例6のFT−IRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、センサー材料の製造方法を提供し、センサー材料は金属酸化物を担持した二酸化チタンナノチューブで、金属酸化物は、CuO、AgO、Au23、Fe23、または、それらの組み合わせを含んでいる。本発明により提供されるセンサー材料は、気体の検出に用いられ、気体は、リン含有化合物、アルシンAsH3、ジボランB26、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート(DEHP)、または、それらの組み合わせを含む。リン含有化合物は、ホスフィン(PH3)、リン酸(H3PO4)、メチルホスホン酸ジメチル(DMMP)、亜リン酸トリメチル(trimethyl phosphite:TMP)、リン酸トリメチル(trimethyl phosphate、TMPO)、または、それらの組み合わせを含んでいる。本発明の実施形態では、センサー材料は、主に、二酸化チタンナノチューブに担持された金属酸化物と気体間の反応により、気体(の種類)を検出する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態によるセンサー材料の製造方法のフローチャートである。まず、工程10で、金属酸化物前駆体の溶液を準備する。工程10で、適当な金属酸化物前駆体は、二酸化チタン(TiO2)ナノチューブに担持される金属酸化物に基づいて選択される。例えば、Cu(NO3)2はCuOの前駆体として用いられ、AgNO3はAgOの前駆体として用いられ、Fe(NO3)3はFe23の前駆体として用いられ、HAuCl4はAuOの前駆体として用いられる。
【0015】
次に、工程20で、金属酸化物前駆体溶液が、二酸化チタンナノチューブ、または、二酸化チタンナノチューブの溶液と混合されて、混合物を形成する。二酸化チタンナノチューブと金属酸化物前駆体を混合するモル比は約10:1〜1:1である。ある実施例では、比率は4:1である。更に、ある実施例では、高いBET表面積の二酸化チタンナノチューブ(例えば、BET面積が約200〜400m2/gの二酸化チタンナノチューブ)が適用されて、二酸化チタンナノチューブに取り込む金属酸化物を増加させ(二酸化チタンナノチューブに担持される金属酸化物の重量分を増加する)、センサー材料の感度を向上させる。二酸化チタンナノチューブのアスペクト比は約1:35〜1:160で、且つ、二酸化チタン結晶粉末は、二酸化チタンナノチューブを合成するための前駆体として用いられる。実施例では、二酸化チタン結晶粉末が塩基性溶液に加えられ、その後、合成された混合物を高温反応器に入れて焼成する。焼成後、終局産物は酸で洗浄、ろ過されて、二酸化チタンナノチューブの合成を完成する。理解できることは、二酸化チタンナノチューブを合成する上述の方法は単なる例に過ぎず、任意の市販の二酸化チタンナノチューブまたは各種方法により合成される二酸化チタンナノチューブが本発明に用いられることである。
【0016】
その後、工程30で、弱塩基が混合物に加えられて、中性、例えば、pH値が約6.5〜7.5、または、pH値が約7になるまで、混合物のpH値を調整する。弱塩基は、有機、または、無機の弱塩基、例えば、Na2CO3、NH3、C65NH2、CH3NHCH3CH2NH2、または、それらの組み合わせを含む。注意すべきことは、開示される実施例では、強塩基ではなく、弱塩基が用いられて、混合物のpH値を調整していることである。これは、強塩基の使用は、溶液中の金属の局所濃度が高くなりすぎて、凝集を生成し、凝集が金属酸化物の担持量と分散度を低下させるからである。
【0017】
次に、工程40では、pH値が中性に調整された混合物が水に分散され、加熱されて、熱水イオンインターカレーション(hydrothermal ion intercalation)を実行し、金属酸化物が、二酸化チタンナノチューブの表面上に均一に分散され、担持される。注意すべきことは、工程40で、まず、水分散を実行して、次に、熱水イオンインターカレーションを実行することであり、直接、熱水イオンインターカレーションを実行して、水に分散しないのと比較すると、合成されたセンサー材料中の金属酸化物の分散度が増加することである。ある実施例では、工程40の加熱は、90〜100℃で、12〜36時間、好ましくは、18〜24時間行われる。
【0018】
工程40の後、工程50で、混合物がろ過されて、固体部分を残し、金属酸化物前駆体と金属酸化物の両方が担持される二酸化チタンナノチューブは、一部の金属酸化物前駆体が既に酸化されて金属酸化物になっている。未だ金属酸化物に酸化されていない二酸化チタンナノチューブ上に担持される残りの金属酸化物前駆体を完全に酸化するため、固体部分を、酸素が連続的に供給される加熱炉に入れ、まだ金属酸化物に酸化されている金属酸化物前駆体を完全に酸化して二酸化チタンナノチューブに担持する。固体部分は、加熱炉で焼成され、二酸化チタンナノチューブに担持され、これにより、センサー材料の製造を完成する。加熱炉に供給される酸素の流量は約5〜10リットル/分、好ましくは、約5〜6リットル/分である。ある実施例では、固体部分の焼成期間中、空気が継続的に加熱炉に供給される。ある実施例では、固体部分の焼成は、250〜350℃で、3〜9時間、好ましくは、3〜6時間実施される。注意すべきことは、工程50で、酸素を供給しないで、固体部分を焼成するのと比較すると、酸素の連続流下で、固体部分を焼成することにより、センサー材料中の金属酸化物の分散度を増加させることができることである。
【0019】
製造されたセンサー材料のBET表面積を測定すると、約114〜165m2/g、または、134〜165m2/gである。
【0020】
本実施例では、金属酸化物の金属元素のチタニウムに対する原子割合は約10〜50%、好ましくは、20〜40%である。しかし、この原子割合は、別の実施例では、高くもできるし、低くもできる。
【0021】
本発明の検出方法を以下に説明する。検出すべき気体は、気体タンク18から、質量流量コントローラ38を経て、混合チャンバ58に入り、且つ、乾燥圧縮空気は、乾燥圧縮空気タンク28から、ケミカルフィルタ48と質量流量コントローラ38’を経て、混合チャンバ58に入り、検出すべき気体とろ過された乾燥圧縮空気が十分に混合される。十分に混合された検出すべき気体とろ過された乾燥圧縮空気は、混合気体と称される。センサー材料がテストチャンバ68に入れられ、且つ、センサー材料が平坦に配置されて、支持台の表面全体を被覆している。特定濃度の検出すべき気体を含む混合気体は、特定の流量で、混合チャンバ58からテストチャンバ68に供給されて、混合気体が均一、且つ、完全に、センサー材料を通り抜ける。連続検出が可能な反射光モジュールに結合される分光機器の分析システム78がテストチャンバ68に接続され、分析システム78は、センサー材料の表面の光吸収特性を分析する。ある実施例では、連続検出が可能な反射光モジュールに結合されるラマン分光法システムの分析システムが用いられる。別の実施例では、連続検出が可能な反射光モジュールに結合されるフーリエ変換赤外分光(FT−IR)システムの分析システムが用いられる。ある実施例では、反射光モジュールは、混合気体を加熱して、検出時間を短縮する。テストチャンバ68に供給する混合気体の流量は約1〜30リットル/分、例えば、流量は、1リットル/分、15リットル/分、または、30リットル/分である。検出すべき気体の濃度は約1000ppb〜100ppt、例えば、検出すべき気体の濃度は、500ppb、200ppb、1ppb、または、500pptである。本発明により提供されるセンサー材料は高い捕捉効率、例えば、98%以上の捕捉効率を有し、pptレベルの濃度の気体を検出することができる。本発明による検出方法は、リアルタイム検出が可能で、結果が即時に得られる。
【0022】
ある実施例では、本発明により提供されるセンサー材料(金属酸化物を担持した二酸化チタンナノチューブ)は少なくとも以下のような長所がある:(1)高い金属酸化物分散度と高い金属酸化物担持;(2)検出すべき気体の高い捕捉効率;(3)pptレベルの濃度検出;および、(4)スペクトル検出特性を有する。更に、本発明の検出方法は、空気のリアルタイム検出が可能で、低い検出温度、例えば、60℃で実行できる。
【0023】
以下で、本発明によるセンサー材料の製造方法と検出方法の各種実施例と比較例を説明する。
【0024】
(センサー材料の製造方法)
[実施例1]:酸化銅を担持した二酸化チタンナノチューブ
(1)0.625gの二酸化チタン(Degussa P25)が、2.5gのNaOHが12.5mlの脱イオン水中に予め混合された溶液に加えられ、混合物Aを形成した。
(2)工程(1)の混合物Aを高温炉に入れて、24時間焼成した。
(3)加熱された混合物Aを1.3mlの70%HNO3と200mlの脱イオン水に加え、24時間攪拌し、二回ろ過した。
(4)上述の工程(1)〜(3)により製造された0.625gの二酸化チタンナノチューブを200gの水に加えて、混合物Bを形成し、0.156gのCu(NO32粉末を加えて、水溶液Cを形成した。
(5)混合物Bと水溶液Cを混合して、混合物Dを形成し、混合物Dは40℃で3分間攪拌された。
(6)1MのNa2CO3溶液を攪拌された混合物Dに加え、pH値を調整した結果、約7.0になった。
(7)pH値が約7の混合物Dを100gの水に分散して、100℃で24時間加熱した。
(8)工程(7)の加熱された混合物Dをろ過、乾燥して、固体部分Eを残した。
(9)空気が5リットル/分の流量で連続して注入される環境下で、固体部分を焼成して、酸化銅を担持した二酸化チタンナノチューブを形成した。注入される空気は乾燥圧縮空気で、既にケミカルフィルタによりろ過されている。
【0025】
上述の工程(1)〜(9)により製造されるセンサー材料のBET表面積を測定した。その結果は、約165m2/gであった。電子顕微鏡法とエネルギー分散型X線分光学の組み合わせにより、実施例1で製造されるセンサー材料中のCuOのCu担持を測定して、得られたCu/Tiの原子比率は約21%であった。
【0026】
比較例1:CuOを担持した二酸化チタンナノチューブ
工程(4)で、0.156gのCu(NO3)2粉末が0.031gのCu(NO3)2粉末により代替されることを除いては、実施例1と同様のプロセスが実行された。電子顕微鏡法とエネルギー分散型X線分光学の組み合わせにより、比較例1で製造されるセンサー材料中のCuOの担持されたCuを測定した結果、Cu/Tiの原子比率は約5%であった。
【0027】
比較例2:強アルカリ(NaOH)によるpHの調整
工程(6)で、1MのNa2CO3溶液が0.6MのNaOH溶液により代替されることを除いて、実施例1と同様のプロセスを実行した。
【0028】
比較例3:水分散なし
工程(7)で、pH値が約7の混合物Dが100gの水に分散されず、直接、100℃で24時間加熱されることを除いては、実施例1と同様のプロセスを実行した。
【0029】
比較例4:空気が供給されていない環境下での固体部分Eの焼成
固体部分Eの焼成時に、空気を供給しないことを除いては、実施例1と同様のプロセスを実行した。
【0030】
比較例2〜4で製造されるセンサー材料中のCu対Tiの原子比率は約21%であった。X線回折(XRD)は、実施例1と比較例2〜4により製造されるセンサー材料の分散度の分析に用いられ、その結果が図3aと3bに示されている。図3aは、実施例1で製造されたセンサー材料のXRDスペクトルで、図3bは、比較例2〜4で製造された異なるセンサー材料のXRDスペクトルを示す図である。CuOの分散度が高い場合、Cuの結晶性は低く、XRDスペクトル中のピークが小さくなる。しかし、CuOの分散度が低い場合、Cuの結晶性が高く、XRDスペクトル中のピークが高くなる。図3aと3bを参照すると、実施例1のセンサー材料は、Cuのピークが極めて小さく、高いCu分散度を示しているが、比較例2〜4のセンサー材料は、Cuのピークが明らかに大きく、Cu分散度が低いことを示している。
【0031】
[実施例2]:AgOを担持した二酸化チタンナノチューブ
工程(4)で、0.156gのCu(NO3)2粉末が10gの水に加えられるのが、0.156gのAgNO3粉末が10gの水に加えられることにより代替されることを除いて、実施例1と同様のプロセスを実行した。
製造されたセンサー材料のBET表面積が測定された結果は約110〜160m2/gであった。電子顕微鏡法とエネルギー分散型X線分光学の組み合わせにより、実施例2で製造されるセンサー材料中のAgOのAg担持が測定され、Ag/Tiの原子比率は約23.2%であった。
【0032】
[実施例3]:Fe23を担持した二酸化チタンナノチューブ
工程(4)で、0.156gのCu(NO3)2粉末が10gの水に加えられるのが、0.156gのFe(NO3)3粉末が10gの水に加えられることにより代替されることを除いて、実施例1と同様のプロセスが実行された。
製造されたセンサー材料のBET表面積が測定された結果は約105〜165m2/gであった。電子顕微鏡法とエネルギー分散型X線分光学の組み合わせにより、実施例3で製造されたセンサー材料中のFe23のFe担持が測定され、Fe/Tiの原子比率は約16.3%である。
【0033】
[実施例4]:CuOとFe23を担持した二酸化チタンナノチューブ
工程(4)で、0.156gのCu(NO3)2粉末が10gの水に加えられるのが、0.140gのCu(NO3)2粉末と0.0156gのFe(NO3)3粉末を10gの水に加えることにより代替されることを除いて、実施例1と同様のプロセスが実行された。
製造されたセンサー材料のBET表面積が測定された結果は約105〜165m2/gであった。電子顕微鏡法とエネルギー分散型X線分光学の組み合わせにより、実施例3で製造されるセンサー材料中Fe23のCuOとFeの担持が測定され、Cu/TiとFe/Tiの原子比率は、それぞれ、約19%と1.5%である。
【0034】
[実施例5]:AuOを担持した二酸化チタンナノチューブ
Cu(NO3)2がHAuCl4により代替されることを除いて、実施例1と同様のプロセスが実行された。
製造されたセンサー材料のBET表面積が測定された結果は約105〜165m2/gであった。電子顕微鏡法とエネルギー分散型X線分光学の組み合わせにより、実施例5のセンサー材料中のAuOのAu担持が測定され、Au/Tiの原子比率は約11.6%である。
【0035】
(検出すべき気体の検出方法)
図2に示されるような検出システムが提供される。検出すべき気体は、気体タンク18から、質量流量コントローラ38を経て、混合チャンバ58に入り、乾燥圧縮空気は、乾燥圧縮空気タンク28から、ケミカルフィルタ48と質量流量コントローラ38’を経て、混合チャンバ58に入り、検出すべき気体とろ過された乾燥圧縮空気は十分に混合され、混合気体を形成する。各実施例、および/または、比較例により製造されるセンサー材料は、テストチャンバ68に入れられ、センサー材料は平坦に置かれて、支持台の表面全体を被覆した。特定濃度の検出すべき気体を有する混合気体は、混合チャンバ58から、特定の流量で、テストチャンバ68に供給され、混合気体は均一、且つ、完全に、センサー材料を通り抜ける。連続検出が可能な反射光モジュールに結合される分光機器の分析システム78はテストチャンバ68に接続されて、センサー材料の表面の光吸収特性を分析する。
【0036】
本発明により提供されるセンサー材料が、検出すべき気体に対して高い捕捉効率を有するのを確保するため、ドレーゲルセンサー(Drager sensor)がテストチャンバに接続される。実施例1のセンサー材料を設置したテストチャンバに、1リットル/分の流量で、混合気体が供給され、検出すべき気体(PH3)の濃度は500ppbである。ドレーゲルセンサーにより、テストチャンバから出た混合気体中の検出すべき気体の濃度を検出した結果は、濃度がドレーゲルセンサーの下限(10ppb)以下で、これにより、本発明の実施例により提供されるセンサー材料は98%以上の高い捕捉効率を有することが証明される。
【0037】
[実施例6]
実施例6では、実施例2で製造されるセンサー材料が用いられ、ホスフィンが検出されるべき気体である。混合気体の流量は1リットル/分、PH3濃度は500ppbである。反射光モジュールに結合されるラマン分光機器は、混合気体がテストチャンバに供給される時、センサー材料の表面の光吸収特性を分析するのに用いられる。実施例では、テストチャンバ中のホスフィンとセンサー材料間の反応によりP−Oボンディングが形成される場合、これらのボンディングは、ラマン分光機器により検出される。図4は、本発明の実施例6によるラマンスペクトルを示す図である。図4から分かるように、956±2cm-1で顕著な特性ピークが観察され、この特性ピークはリン含有化合物の定性と定量分析(例えば、PH3)に用いられる。
【0038】
[実施例7]
実施例7では、実施例1で製造されるセンサー材料が用いられ、ホスフィンが検出されるべき気体である。センサー材料は60℃に加熱され、混合気体が流量1SLM(standard liter per minute)と1ppmのPH3濃度で、連続的にテストチャンバに入れられる。反射光モジュールに結合されるFT−IR分光機器は、混合気体が連続してテストチャンバを通過する時、異なる時間間隔で、センサー材料表面の光吸収特性を分析するのに用いられる。同様に、実施例では、P−Oボンディングがテストチャンバ中のホスフィンとセンサー材料間の反応により形成される場合、これらのボンディングはFT−IR分光機器により検出される。図5は、0、5、10、30および40分間隔で得られるFT−IRスペクトルで、図5に示される領域Aは、P−Oボンディングの特性ピーク領域である。図5に示されるように、P−O結合特性ピークが5分間観察され、テスト時間が進むにつれて、P−O結合特性ピークが増加する。これにより、実施例では、ppm濃度レベルのホスフィンガスが検出される。
【0039】
[実施例8]
実施例8では、ホスフィンが検出されるべき気体で、反射光モジュールに結合されるFT−IR分光機器は、混合気体がテストチャンバに注入される時、センサー材料の表面の光吸収特性を分析するのに用いられる。表1を参照すると、異なるセンサー材料を使用した異なる検出条件を表にしたもので、合成されたFT−IRスペクトルは図6〜11に示され、P−O結合特性ピークが識別、分析しやすい。例えば、図9〜11では、領域Aは、P−Oボンディングの特性ピーク領域である。これにより、実施例では、pptレベルの濃度のホスフィンガスが検出される。
【0040】
【表1】

【0041】
よって、実施例7〜8に示されるように、本発明により製造されるセンサー材料は、ppm、ppb、および、pptレベルのPH3ガスを検出することができる。
【0042】
[実施例9]
20または24時間連続で、混合気体をテストチャンバに供給して検出を実行したことを除いて、実施例8と同様のプロセスが実行され、異なる時間間隔でのFT−IRスペクトルが得られた。表2は、使用される異なる条件を示し、図12〜14は、その供給を始め、S/Nが2を超えてからの途中の経過時間で得られるスペクトルを示し、900〜1200cm-1の間の吸収強度に顕著な変化があることが観察される。同様に、図12〜14で、示される領域Aは、P−Oボンディングの特性ピーク領域である。すなわち、図12および図13の例では、1時間でS/Nが2以上になり、時間が長いほど検出が顕著であることを示しており、図14の例(検出すべき気体の濃度が200pptの例)では、供給後4時間でS/Nが2以上になることを示している。更に、表3は、図14に示されるスペクトルの信号対ノイズ比(S/N)を示し、S/Nは時間と共に徐々に増加するので、センサー材料が持続的に検出すべき気体を吸収することが分かる。なお、各図で0.00は、各時間での基準値を示している。
【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【0045】
比較例5
センサー材料が、比較例1で製造されたセンサー材料により代替され、混合気体が、20または24時間連続ではなく、4時間連続でテストチャンバに供給され、検出されるべき気体(PH3)の濃度が100ppbになる条件で、図12〜14と同様の吸収度の変化を調べた。得られたFT−IRスペクトルは図15に示され、示される領域Aは、P−Oボンディングの特性ピーク領域である。混合気体が4時間連続で供給された後、センサー材料が、pptレベルの濃度で気体を検出できる実施例9と比較すると、比較例5では、センサー材料は、濃度が100ppbの気体も検出することができない(特性ピーク領域においてピークが表示されず、検出されるべき気体が検出されていない、すなわちS/N<1である)。これは、本発明により製造されるセンサー材料の高いCuO担持(Cu/Tiの原子比率は約21%)が、pptレベルの濃度のガス検出達成の影響因子の一つであることを証明している。
【0046】
総合すると、本発明により提供されるセンサー材料は高い金属酸化物担持と分散度を有し、pptレベルの濃度を検出することができる。更に、上述の本発明により提供されるセンサー材料を適用した検出方法は、気体のリアルタイム検出を可能にする。これにより、本発明は、従来の技術中の、例えば、pptレベルの濃度の検出ができない、および、リアルタイム検出が実行できない等の問題を解決することができる。
【0047】
本発明では好ましい実施例を前述の通り開示したが、本発明は決してこれらの実施例に限定されるものではなく、当該技術を熟知する者なら誰でも、本発明の精神と領域を脱しない範囲内で各種の変動や潤色を加えることができ、従って本発明の保護範囲は、特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。
【符号の説明】
【0048】
10、20、30、40、50、60 工程
18 気体タンク
28 乾燥圧縮空気タンク
38、38’ 質量流量コントローラ
48 ケミカルフィルタ
58 混合チャンバ
68 テストチャンバ
78 分析システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子汚染物質を検出するセンサー材料の製造方法であって、
金属酸化物前駆体の水溶液を準備する工程と、
二酸化チタンナノチューブと前記金属酸化物前駆体の前記水溶液を混合して、混合物を形成する工程と、
弱塩基により、前記混合物のpH値を中性に調整する工程と、
前記混合物を水に分散させて、加熱する工程と、
前記混合物をろ過して、固体部分を残し、酸素の連続流下で、前記固体部分を焼成して、金属酸化物を担持した二酸化チタンナノチューブを形成する工程と、
を含むことを特徴とするセンサー材料の製造方法。
【請求項2】
前記金属酸化物前駆体は、Cu(NO3)2、HAuCl4、AgNO3、およびFe(NO3)3よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1記載のセンサー材料の製造方法。
【請求項3】
前記金属酸化物は、CuO、AgO、Au23、およびFe23よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1記載のセンサー材料の製造方法。
【請求項4】
前記二酸化チタンナノチューブ対前記金属酸化物前駆体を混合するモル比は約10:1〜1:1であることを特徴とする請求項1または2記載のセンサー材料の製造方法。
【請求項5】
前記弱塩基が、Na2CO3、NH3、C65NH2、CH3NH2、およびCH3CH2NH2よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のセンサー材料の製造方法。
【請求項6】
前記混合物を水に分散させて、加熱する前記工程は、12〜36時間、90〜100℃で加熱する工程を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のセンサー材料の製造方法。
【請求項7】
前記混合物をろ過して、固体部分を残し、酸素の連続流下で、前記固体部分を焼成して、金属酸化物を担持した二酸化チタンナノチューブを形成する前記工程は、空気の連続流を注入する工程を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のセンサー材料の製造方法。
【請求項8】
前記混合物をろ過して、固体部分を残し、酸素の連続流下で、前記固体部分を焼成して、金属酸化物を担持した二酸化チタンナノチューブを形成する前記工程は、3〜9時間、250〜350℃で焼成する工程を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のセンサー材料の製造方法。
【請求項9】
センサー材料であって、
二酸化チタニウムナノチューブと、
前記二酸化チタンナノチューブに均一に分散され、担持される金属酸化物と、を含み、前記金属酸化物を担持した二酸化チタンナノチューブはBETが約200〜400m2/gで、前記金属酸化物中の前記金属対チタニウムの原子比率は約10〜50%であることを特徴とするセンサー材料。
【請求項10】
前記金属酸化物は、CuO、AgO、Au23、およびFe23よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項9記載のセンサー材料。
【請求項11】
分子汚染物質の検出方法であって、
請求項10記載の前記センサー材料を準備する工程と、
前記分子汚染物質を含む気体を送り、前記センサー材料と反応させる工程と、
ラマン分光法システムまたはフーリエ変換赤外分光システムにより、検出結果を分析する工程と、
を含むことを特徴とする検出方法。
【請求項12】
前記分子汚染物質の前記気体に対する濃度が5ppm〜50pptであることを特徴とする請求項11記載の検出方法。
【請求項13】
前記気体の流速が1〜30リットル/分であることを特徴とする請求項11または12記載の検出方法。
【請求項14】
検出する前記分子汚染物質が、ホスフィン(PH3)、リン酸(H3PO4)、メチルホスホン酸ジメチル(DMMP)、亜リン酸トリメチル(trimethyl phosphite:TMP)、およびリン酸トリメチル(trimethyl phosphate:TMPO)よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むリン含有化合物であることを特徴とする請求項11〜13のいずれか1項に記載の検出方法。
【請求項15】
検出する前記分子汚染物質が、AsH3、B26、およびジ(2−エチルヘキシル)フタレート(DEHP)よりなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項11〜13のいずれか1項に記載の検出方法。
【請求項16】
更に、前記ラマン分光法システムまたは前記フーリエ変換赤外分光システムと、加熱機能を有する反射光モジュールを結合する工程を含むことを特徴とする請求項11記載の検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−24862(P2013−24862A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−93861(P2012−93861)
【出願日】平成24年4月17日(2012.4.17)
【出願人】(390023582)財團法人工業技術研究院 (524)
【住所又は居所原語表記】195 Chung Hsing Rd.,Sec.4,Chutung,Hsin−Chu,Taiwan R.O.C
【Fターム(参考)】