説明

センサー装置及びセンサーシステム

【課題】環境の物理現象を計測するアクティブ型のセンサー装置において、回路規模等を増加させることなく、計測現場でセンサー装置の電源を投入する際の計時回路の時刻合わせを不要とする。
【解決手段】このセンサー装置は、環境の物理現象を計測して計測データを生成するためのセンサー回路と、時刻を計測して計時データを生成する計時回路と、少なくとも計測データを記憶する記憶回路と、電源が供給されたときに、計時回路に所定の初期時刻を設定し、その後、計時データに基づく所定の動作パターンに従ってセンサー回路を動作させ、及び/又は、計測データを計時データに対応付けて記憶回路に記憶させる制御回路とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境の物理現象を計測するアクティブ型のセンサー装置に関する。さらに、本発明は、そのようなセンサー装置と、該センサー装置から送信される信号を受信して処理するホスト装置とによって構成されるセンサーシステム等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、各種のセンサー素子を用いて温度や水位等の物理現象を計測するセンサー装置において、設定された時刻に計測を行ったり、定期的に計測を行って、計測を行った時刻を表す時刻情報に対応付けて計測情報を記録したりすることが行われている。そのようなセンサー装置は、実際の時刻を計測するためのリアルタイムクロック(実時間計測回路)を内蔵している。
【0003】
また、バッテリーで動作するアクティブ型のセンサー装置においては、バッテリーの消耗を防ぐ目的や、不要な電波の発生を防ぐ目的や、センサー素子の脱着を行う目的で、センサー装置の電源をオフにした状態でセンサー装置を計測現場に持ち込み、計測現場においてセンサー装置の電源を投入することが多く行われている。そのような場合に、従来は、電源をオンにした後に計測に先立ってリアルタイムクロックの時刻合わせを行う必要があった。
【0004】
しかしながら、リアルタイムクロックの時刻合わせを行うためには、センサー装置に正確な時刻情報を提供するホスト装置が必要であり、計測現場にホスト装置を持参してリアルタイムクロックの時刻合わせを行うことは、非常に煩雑である。
【0005】
関連する技術として、特許文献1には、複数のデータロガーを分散配置して同時計測を行い、後で複数データの取得時間の同期を取ることによって正確なデータ処理を行うことができる計測システムが開示されている。この計測システムは、多地点で環境計測する複数のデータロガーにおいて、電波信号で受信した標準時刻を管理する時計手段と、環境計測データを入力しAD変換する入力手段と、該データをタイムスタンプ付きで記憶する記憶手段と、該記憶されたデータをタイムスタンプ付きで外部へ開示する開示手段とを設けたことを特徴とする。
【0006】
特許文献1によれば、電波信号で受信した標準時刻を用いて、正確な時刻を表す時刻情報と計測情報とを関連付けることができる。しかしながら、電波時計用の電波信号を受信するためには電波時計用の受信回路が別途必要となるので、回路規模や消費電力の増加を招いてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−018211号公報(段落0009〜0011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の幾つかの観点によれば、環境の物理現象を計測するアクティブ型のセンサー装置において、回路規模や消費電力を増加させることなく、計測現場でセンサー装置の電源を投入する際の計時回路の時刻合わせを不要とすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するため、本発明の第1の観点に係るセンサー装置は、環境の物理現象を計測して計測データを生成するためのセンサー回路と、時刻を計測して計時データを生成する計時回路と、少なくとも計測データを記憶する記憶回路と、電源が供給されたときに、計時回路に所定の初期時刻を設定し、その後、計時データに基づく所定の動作パターンに従ってセンサー回路を動作させ、及び/又は、計測データを計時データに対応付けて記憶回路に記憶させる制御回路とを含む。ここで、センサー素子がセンサー装置に接続されたときに、センサー装置に内蔵されたバッテリーが電源供給を行うようにしてもよい。
【0010】
本発明の第2の観点に係るセンサー装置は、本発明の第1の観点に係るセンサー装置において、センサー装置に固有の識別子を表す識別子情報が割り当てられており、センサー装置が、識別子情報、計測データ、計測時刻を表す計時データ、及び、送信時刻を表す計時データの内の少なくとも1つを無線で送信する通信回路をさらに含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の第3の観点に係るセンサー装置は、本発明の第2の観点に係るセンサー装置において、制御回路が、センサー装置に内蔵されたバッテリーからの電源供給が開始される際に活性化されるリセット信号に従って、リセット信号及び送信時刻を表す計時データを送信するように通信回路を制御し、その後、リセット信号を非活性化することを特徴とする。
【0012】
本発明の第4の観点に係るセンサーシステムは、本発明の第2の観点に係るセンサー装置と、センサー装置から送信される信号を受信して処理するホスト装置であって、センサー装置から送信される信号を受信する第2の通信回路と、実際の時刻を計測する実時間計測部と、センサー装置から送信された計時データによって表される送信時刻と実時間計測部によって計測された実際の時刻との差分時間を求め、差分時間に基づいて、計測時刻を表す計時データを補正する時刻補正部と、時刻補正部によって求められた差分時間を識別子情報に対応付けて格納する格納部とを有するホスト装置とを含む。
【0013】
本発明の第4の観点に係るセンサーシステムにおいて、ホスト装置が、装置センサーが送信時刻を表す計時データを一旦送信した後に、所定の期間をおいてから、送信時刻を表す計時データを再度送信するようにセンサー装置を制御する制御部をさらに有するようにしてもよい。あるいは、ホスト装置が、差分時間に基づいて、計測を開始又は終了する設定時刻をセンサー装置の計時回路によって計測される時刻に対応するように換算する制御部であって、換算された時刻に計測を開始又は終了するようにセンサー装置を制御する制御部をさらに有するようにしてもよい。
【0014】
本発明の第5の観点に係るセンサーシステムは、本発明の第3の観点に係るセンサー装置と、センサー装置から送信される信号を受信して処理するホスト装置であって、センサー装置から送信される信号を受信する第2の通信回路と、実際の時刻を計測する実時間計測部と、センサー装置から送信された計時データによって表される送信時刻と実時間計測部によって計測された実際の時刻との差分時間を求め、差分時間に基づいて、計測時刻を表す計時データを補正する時刻補正部と、時刻補正部によって求められた差分時間を識別子情報に対応付けて格納する格納部と、センサー装置からリセット信号及び送信時刻を表す計時データが送信されたときに、送信時刻を表す計時データに基づいて、格納部に格納されている差分時間を更新するように時刻補正部を制御する制御部とを有するホスト装置とを含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1〜第5の観点によれば、制御回路が、電源が供給されたときに、計時回路に所定の初期時刻を設定し、その後、計時データに基づく所定の動作パターンに従ってセンサー回路を動作させ、及び/又は、計測データを計時データに対応付けて記憶回路に記憶させるので、回路規模等を増加させることなく、計測現場でセンサー装置の電源を投入する際の計時回路の時刻合わせを不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るセンサーシステムの構成例を示すブロック図。
【図2】センサーシステムのイベント動作を示すフローチャート。
【図3】センサーシステムのロギング動作を示すフローチャート。
【図4】センサーシステムのタイマー動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るセンサーシステムの構成例を示すブロック図である。本実施形態に係るセンサーシステムは、少なくとも1つのセンサー装置10と、該センサー装置10から送信される信号を受信して処理するホスト装置20とによって構成される。
【0018】
図1に示すように、センサー装置10は、少なくとも1つのセンサー回路11と、計時回路12と、記憶回路13と、制御回路14と、通信回路15と、パワーオン検出回路16とを含んでいる。また、センサー装置10は、バッテリー17又は発電機を内蔵して、バッテリー17又は発電機の電力によって動作することができる。さらに、地中等の苛酷な環境に耐えるように、バッテリー17が内蔵された状態でセンサー装置10を密閉してもよい。特に、そのような場合には、センサー装置10の消費電力を削減して、バッテリー17を長持ちさせることが望まれる。
【0019】
センサー素子1は、環境の物理現象を計測するための素子であり、例えば、温度センサー、水位センサー、傾振センサー、又は、歪センサーであってもよい。センサー装置10に複数のセンサー回路11が含まれている場合には、複数のセンサー素子1をセンサー装置10に装着することができる。センサー素子1にはコネクター2aが設けられており、センサー装置10にはコネクター2bが設けられている。コネクター2aをコネクター2bに接続することにより、センサー素子1がセンサー装置10に装着される。
【0020】
また、1つのセンサー素子1に設けられたコネクター2bは、センサー回路11に接続された複数の端子以外に、バッテリー17の一端に接続された端子3と、センサー装置10の各回路の電源端子に接続された端子4とを有している。センサー素子1がセンサー装置10に装着されたときに、コネクター2aに取り付けられたショートプラグ5が端子3と端子4との間をショートするので、バッテリー17から出力される電源電圧がセンサー装置10の各回路に供給される。このようにすれば、センサー装置10に電源スイッチを設けることなく、センサー装置10の電源をオン又はオフすることができる。あるいは、センサー装置10に電源スイッチを設けてもよいが、その場合には、苛酷な環境に耐えるように、電源スイッチ回りの防水対策等を行うことが望ましい。
【0021】
センサー回路11は、センサー素子1がセンサー装置10に装着されたときに、必要に応じてセンサー素子1を駆動し、センサー素子1の出力信号を増幅してA/D(アナログ/ディジタル)変換する。これにより、センサー回路11は、環境の物理現象を計測して、計測結果を表す計測データを生成することができる。
【0022】
計時回路12は、例えば、水晶振動子等を用いて発振動作を行う発振回路を含み、発振回路によって生成されるクロック信号に基づいて時刻を計測することにより、計時データを生成する。
【0023】
記憶回路13は、メモリー等によって構成され、少なくともセンサー回路11によって生成される計測データを記憶する。記憶回路13は、センサー回路11によって生成される計測データを、計時回路12によって生成される計時データに対応付けて記憶してもよい。
【0024】
制御回路14は、予め設定されたプログラムに従って、センサー装置10の各回路を制御すると共に、電源が供給されたときに、計時回路12及び記憶回路13等を初期化して、計時回路12に所定の初期時刻を設定する。通常は、センサー装置の計時回路が、実際の時刻を計測するリアルタイムクロック(実時間計測回路)としての役割りを有しているので、センサー装置の電源を投入した後で計測に先立って計時回路の時刻合わせを行う必要がある。
【0025】
しかしながら、計時回路の時刻合わせを行うためには、センサー装置に正確な時刻情報を提供するホスト装置が必要であり、計測現場にホスト装置を持参して計時回路の時刻合わせを行うことは、非常に煩雑である。そこで、本実施形態においては、制御回路14が、センサー装置10の電源投入後に、実際の時刻とは無関係な所定の初期時刻を計時回路12に設定する。従って、計時回路12によって計測される時刻は、実際の時刻とは異なる時刻であり、以下においては、この時刻のことを「ローカル時刻」ともいう。
【0026】
電源が供給された後に、制御回路14は、ローカル時刻を表す計時データに基づく所定の動作パターンに従って、センサー回路11を動作させてもよい。あるいは、制御回路14は、センサー回路11が計測動作を行うことにより生成された計測データを、ローカル時刻を表す計時データに対応付けて、記憶回路13に記憶させてもよい。
【0027】
通信回路15は、ホスト装置20の通信回路21との間で通信を行う。センサー装置10とホスト装置20との間の通信は、RFIDのように電磁界又は電波を用いる無線通信を利用してもよいし、有線通信を利用してもよい。以下においては、無線通信を利用する場合について説明する。
【0028】
無線通信を利用する場合には、複数のセンサー装置10を用いることを考慮して、センサー装置10に固有の識別子(ID)を表す識別子情報が割り当てられる。これにより、通信回路15がホスト装置20からセンサー装置10の識別子情報を受信した際に、制御回路14は、当該センサー装置10が選択されたことを認識することができる。また、通信回路15がホスト装置20に識別子情報を送信した際に、ホスト装置20は、個々のセンサー装置10を識別することができる。
【0029】
例えば、通信回路15は、ホスト装置20から送信される各種の命令及び識別子情報を受信する。また、通信回路15は、センサー回路11が計測動作を行うことにより生成された計測データと、計測時刻を表す計時データとを含む計測情報を、送信時刻を表す計時データ及び識別子情報と共にホスト装置20に送信する。
【0030】
パワーオン検出回路16は、センサー素子1がセンサー装置10に装着されたときに、コネクター2bの端子4における電源電圧の上昇を検出することにより、センサー装置10の電源がオンされたことを検出してリセット信号(パワーオン・リセット信号)を出力する。
【0031】
ホスト装置20は、通信回路21と、実時間計測部22と、時刻補正部23と、格納部24と、操作部25と、制御部26と、表示部27とを含んでいる。時刻補正部23及び制御部26は、ディジタル回路で構成されてもよいし、CPU(中央演算装置)とソフトウェア(計測プログラム)とによって構成されてもよい。計測プログラムは、ハードディスク又はメモリー等によって構成される格納部24に格納される。
【0032】
通信回路21は、センサー装置10の通信回路15との間で通信を行う。例えば、通信回路21は、各種の命令を識別子情報と共にセンサー装置10に送信する。また、通信回路21は、センサー装置10から送信される計測情報、送信時刻を表す計時データ、及び、識別子情報を受信する。
【0033】
実時間計測部22は、例えば、水晶振動子等を用いて発振動作を行う発振回路を含み、発振回路によって生成されるクロック信号に基づいて、実際の時刻を計測する。実時間計測部22によって計測される時刻は、ネットワークから供給される時刻情報、電波度計用に送信される時刻情報、又は、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)用に送信される時刻情報等に基づいて、正確な時刻に校正することが可能である。以下においては、実時間計測部22によって計測される時刻のことを「グローバル時刻」ともいう。
【0034】
時刻補正部23は、センサー装置10から送信時刻を表す計時データが送信された場合に、その計時データによって表される送信時刻と実時間計測部22によって計測された実際の時刻との差分時間を求める。この差分時間は、センサー装置10の計時回路12に電源が供給されている限り一定である。
【0035】
格納部24は、時刻補正部23によって求められた差分時間をセンサー装置10の識別子情報に対応付けて格納する。時刻補正部23は、センサー装置10から計測時刻を表す計時データが送信された場合に、当該センサー装置10の識別子情報を格納部24において検索することにより、当該識別子情報に対応して格納されている差分時間を読み出す。さらに、時刻補正部23は、読み出された差分時間に基づいて、計測時のローカル時刻を表す計時データを、計測時のグローバル時刻を表す計時データに補正する。補正された計時データを含む計測情報は、格納部24に格納される。
【0036】
操作部25は、オペレーターがホスト装置20を操作するために用いられる。制御部26は、操作部25を用いたオペレーターの操作に従ってホスト装置20の各部を制御すると共に、格納部24に格納されている計測情報を表す画像データを生成する。表示部27は、制御部26から供給される画像データに基づいて、計測情報を表す画像を表示する。
【0037】
本実施形態に係るセンサーシステムにおいて、センサー装置10は、ホスト装置20から送信される計測命令に従って計測動作を行い、計測情報を記憶回路13に記憶したり、計測情報をホスト装置20に送信することができる。それに加えて、センサー装置10は、計時回路12を用いた次の動作を行うことができる。
【0038】
(1)特定のイベントが発生した際に、例えば、傾振センサーが振動を計測した際に、計測情報を記憶したり、計測情報をホスト装置20に送信する動作(イベント動作)。
(2)定期的に計測動作を行い、計測情報を記憶したり、計測情報をホスト装置20に送信する動作(ロギング動作)。
(3)ホスト装置20によって設定された時刻に計測動作を開始及び/又は終了し、計測情報を記憶したり、計測情報をホスト装置20に送信する動作(タイマー動作)。
(4)上記のイベント動作、ロギング動作、及び、タイマー動作の内の2つ以上を組み合わせて行う動作。
【0039】
まず、本発明の一実施形態に係るセンサーシステムのイベント動作について説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係るセンサーシステムのイベント動作を示すフローチャートである。オペレーターが、センサー装置10の電源がオフとなった状態でセンサー装置10を計測現場に搬送して設置し、計測現場において、センサー装置10の電源をオンにする(ステップS11)。これにより、センサー装置10の各回路に電源が供給され、制御回路14が、予め設定されているプログラムに従って動作を開始する。
【0040】
センサー装置10の制御回路14は、電源が供給されたときに、計時回路12に所定の初期時刻(例えば、「2011年1月1日0時0分」)を設定する(ステップS12)。その後、計時回路12は、所定の初期時刻に経過時間を加算することにより、ローカル時刻を表す計時データを生成する。
【0041】
ステップS13において、センサー回路11が環境の物理現象を計測して、計測データを生成する。また、計時回路12が、計時動作を行うことによって、計測時刻を表す計時データを生成する。ステップS14において、制御回路14が、センサー回路11によって生成された計測データを、予め設定されているイベント発生条件(例えば、振動の大きさ)と比較することにより、計測データがイベント発生条件を満たすか否かを判定する。
【0042】
計測データがイベント発生条件を満たさない場合には、ステップS13及びS14が繰り返される。一方、計測データがイベント発生条件を満たす場合には、ステップS15において、制御回路14が、計測データを計時データに対応付けて記憶回路13に記憶させる。
【0043】
ステップS16において、制御回路14が、ホスト装置20から送信される送信命令に応じて、計測データ、及び、計測時刻を表す計時データを、送信時刻を表す計時データ、及び、識別子情報と共にホスト装置20に送信するように、通信回路15を制御する。
【0044】
通信回路15によって送信された計測データ、計時データ、及び、識別子情報は、ホスト装置20の通信回路21によって受信される。ステップS17において、ホスト装置20の時刻補正部23が、通信回路21によって受信された計時データによって表される送信時刻と実時間計測部22によって計測された実際の時刻との差分時間を求めて格納部24に格納する。
【0045】
ステップS18において、時刻補正部23は、格納部24に格納されている差分時間に基づいて、計測時のローカル時刻を表す計時データを計測時のグローバル時刻を表す計時データに補正し、補正された計時データを格納部24に格納する。これにより、ステップS19において、制御部26が、計測データによって表される計測結果と、計測が行われた実際の時刻とを、表示部27に表示することができる。
【0046】
次に、本発明の一実施形態に係るセンサーシステムのロギング動作について説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係るセンサーシステムのロギング動作を示すフローチャートである。オペレーターが、センサー装置10の電源がオフとなった状態でセンサー装置10を計測現場に搬送して設置し、計測現場において、センサー装置10の電源をオンにする(ステップS21)。これにより、センサー装置10の各回路に電源が供給され、制御回路14が、予め設定されているプログラムに従って動作を開始する。
【0047】
センサー装置10の制御回路14は、電源が供給されたときに、計時回路12に所定の初期時刻を設定する(ステップS22)。その後、計時回路12は、所定の初期時刻に経過時間を加算することにより、ローカル時刻を表す計時データを生成する。
【0048】
制御回路14は、予め設定されているロギング条件(例えば、計測時間間隔及び/又は計測回数)に従って定期的に計測動作を行うようにセンサー回路11を制御する。これにより、ステップS23において、センサー回路11が、環境の物理現象を計測して、計測データを生成する。また、計時回路12が、計時動作を行うことによって、計測時刻を表す計時データを生成する。
【0049】
ステップS24において、制御回路14が、センサー回路11によって生成された計測データを、計時回路12によって生成された計測時の計時データに対応付けて記憶回路13に記憶させる。
【0050】
ステップS25において、制御回路14が、ロギング条件に従って、計測が完了したか否かを判定する。計測が完了していない場合には、ステップS23〜S25が繰り返される。
【0051】
ステップS26において、制御回路14が、ホスト装置20から送信される送信命令に応じて、記憶回路13に蓄積された計測データ、及び、計測時刻を表す計時データを、送信時刻を表す計時データ、及び、識別子情報と共にホスト装置20に送信するように、通信回路15を制御する。
【0052】
通信回路15によって送信された計測データ、計時データ、及び、識別子情報は、ホスト装置20の通信回路21によって受信される。ステップS27において、時刻補正部23が、通信回路21によって受信された計時データによって表される送信時刻と実時間計測部22によって計測された実際の時刻との差分時間を求めて格納部24に格納する。
【0053】
ステップS28において、時刻補正部23は、格納部24に格納されている差分時間に基づいて、計測時のローカル時刻を表す計時データを計測時のグローバル時刻を表す計時データに補正し、補正された計時データを格納部24に格納する。これにより、ステップS29において、制御部26が、計測データによって表される計測結果と、計測が行われた実際の時刻とを、表示部27に表示することができる。
【0054】
イベント動作又はロギング動作において、センサー装置10の電源がオフされない限り、ホスト装置20の格納部24に格納されている差分時間を更新する必要はないので、センサー装置10の電源がオンされている間は、送信時刻を表す計時データを一度だけ送信するようにしてもよい。そのために、以下の動作を行うようにしてもよい。
【0055】
センサー装置10の電源が一旦オフされた後に再びオンされる際に、パワーオン検出回路16は、リセット信号を活性化する。例えば、リセット信号は、1ビットのデータであり、「1」がリセットされた状態を表し、「0」がリセットされていない状態を表す。センサー装置10がホスト装置20からの送信命令に応答する際に、制御回路14は、活性化されたリセット信号に従って、計測情報等と共にリセット信号及び送信時刻を表す計時データを送信するように通信回路15を制御し、その後、リセット信号を非活性化する。一方、リセット信号が非活性化されている場合には、リセット信号及び送信時刻を送信する必要はない。
【0056】
ホスト装置20は、リセット信号「1」を受信することにより、センサー装置10の電源がオフされたことを認識することができる。ホスト装置20の制御部26は、センサー装置10からリセット信号及び送信時刻を表す前記計時データが送信されたときに、送信時刻を表す計時データに基づいて、格納部24に格納されている差分時間を更新するように時刻補正部23を制御する。
【0057】
従って、センサー装置10は、センサー装置10の電源が一旦オフされた後に再びオンされる場合にのみ、送信時刻を表す計時データを送信すればよい。その結果、センサー装置10からホスト装置20に送信されるデータ量が削減され、センサー装置10における消費電力が削減される。
【0058】
あるいは、ホスト装置20の制御部26は、センサー装置10が送信時刻を表す計時データを一旦送信した後に、所定の期間をおいてから、送信時刻を表す計時データを再度送信するように、センサー装置10を制御してもよい。そのために、制御部26は、計測情報等と共に送信時刻を表す計時データの送信を要求する送信命令を一旦送信した後に、所定の期間をおいてから、計測情報等と共に送信時刻を表す計時データの送信を要求する送信命令を送信するように、通信回路21を制御する。それ以外の時点では、制御部26は、送信時刻を表す計時データを除く計測情報等の送信を要求する送信命令を送信するように、通信回路21を制御する。
【0059】
従って、センサー装置10は、送信時刻を表す計時データの送信を要求する送信命令を受信した場合にのみ、送信時刻を表す計時データを送信すればよい。その結果、センサー装置10からホスト装置20に送信されるデータ量が削減され、センサー装置10における消費電力が削減される。
【0060】
次に、本発明の一実施形態に係るセンサーシステムのタイマー動作について説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係るセンサーシステムのタイマー動作を示すフローチャートである。オペレーターが、センサー装置10の電源がオフとなった状態でセンサー装置10を計測現場に搬送して設置し、計測現場において、センサー装置10の電源をオンにする(ステップS31)。これにより、センサー装置10の各回路に電源が供給され、制御回路14が、予め設定されているプログラムに従って動作を開始する。
【0061】
センサー装置10の制御回路14は、電源が供給されたときに、計時回路12に所定の初期時刻を設定する(ステップS32)。その後、計時回路12は、所定の初期時刻に経過時間を加算することにより、ローカル時刻を表す計時データを生成する。
【0062】
オペレーターは、ホスト装置20の操作部25を用いて、設定時刻(例えば、計測開始時刻及び/又は計測終了時刻)を表す設定時刻データを含むタイマー設定情報を、選択されたセンサー装置10の識別子情報と共に、ホスト装置20に入力する。これにより、ホスト装置20の通信回路21が、送信時刻を表す計時データの送信を要求する送信命令を識別子情報と共にセンサー装置10に送信する(ステップS33)。
【0063】
センサー装置10の通信回路15が、送信命令及び識別子情報を受信して制御回路14に出力する。制御回路14は、受信された識別子情報がセンサー装置10に格納されている識別子情報と一致する場合に、計時回路12によって生成された計時データを識別子情報と共にホスト装置20に送信するように通信回路15を制御する(ステップS34)。
【0064】
通信回路15によって送信された計時データ及び識別子情報は、ホスト装置20の通信回路21によって受信される。ステップS35において、ホスト装置20の時刻補正部23が、通信回路21によって受信された計時データによって表される送信時刻と実時間計測部22によって計測された実際の時刻との差分時間を求めて格納部24に格納する。
【0065】
ステップS36において、時刻補正部23は、格納部24に格納されている差分時間に基づいて、タイマー設定情報における設定時刻データによって表される設定時刻を、センサー装置10の計時回路12によって計測されるローカル時刻に対応するように換算する。ステップS37において、通信回路21が、換算された設定時刻を表す設定時刻データを含むタイマー設定情報を識別子情報と共にセンサー装置10に送信する。
【0066】
ステップS38において、センサー装置10の通信回路15が、タイマー設定情報及び識別子情報を受信して制御回路14に出力する。制御回路14は、受信された識別子情報がセンサー装置10に格納されている識別子情報と一致する場合に、タイマー設定情報を記憶回路13に記憶させる。
【0067】
ステップS39において、制御回路14は、計時回路12によって計測されるローカル時刻をタイマー設定情報における設定時刻データによって表される設定時刻と比較して、比較結果に従って、計測動作を開始又は終了するようにセンサー回路11等を制御する。
【0068】
センサー装置10のタイマー設定を行う際に、計時回路12の時刻合わせを行うと、それまでに記憶回路13に蓄積された計時データと計時回路12によって生成される計時データとの整合性がとれなくなってしまう。上記のタイマー動作によれば、計時回路12の時刻合わせを行う必要がないので、計時データの整合性を損なうことなく、計時回路12によって計測されるローカル時刻に基づいてタイマー設定を行うことができる。
【符号の説明】
【0069】
1…センサー素子、2a、2b…コネクター、3、4…端子、5…ショートプラグ、10…センサー装置、11…センサー回路、12…計時回路、13…記憶回路、14…制御回路、15…通信回路、16…パワーオン検出回路、17…バッテリー、20…ホスト装置、21…通信回路、22…実時間計測部、23…時刻補正部、24…格納部、25…操作部、26…制御部、27…表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境の物理現象を計測して計測データを生成するためのセンサー回路と、
時刻を計測して計時データを生成する計時回路と、
少なくとも前記計測データを記憶する記憶回路と、
電源が供給されたときに、前記計時回路に所定の初期時刻を設定し、その後、前記計時データに基づく所定の動作パターンに従って前記センサー回路を動作させ、及び/又は、前記計測データを前記計時データに対応付けて前記記憶回路に記憶させる制御回路と、
を含むセンサー装置。
【請求項2】
センサー素子が前記センサー装置に接続されたときに、前記センサー装置に内蔵されたバッテリーが電源供給を行う、請求項1記載のセンサー装置。
【請求項3】
前記センサー装置に固有の識別子を表す識別子情報が割り当てられており、前記識別子情報、前記計測データ、計測時刻を表す前記計時データ、及び、送信時刻を表す前記計時データの内の少なくとも1つを無線で送信する通信回路をさらに含む、請求項1又は2記載のセンサー装置。
【請求項4】
前記制御回路が、前記センサー装置に内蔵されたバッテリーからの電源供給が開始される際に活性化されるリセット信号に従って、前記リセット信号及び送信時刻を表す前記計時データを送信するように前記通信回路を制御し、その後、前記リセット信号を非活性化する、請求項3記載のセンサー装置。
【請求項5】
請求項3記載のセンサー装置と、
前記センサー装置から送信される信号を受信して処理するホスト装置であって、前記センサー装置から送信される信号を受信する第2の通信回路と、実際の時刻を計測する実時間計測部と、前記センサー装置から送信された前記計時データによって表される送信時刻と前記実時間計測部によって計測された実際の時刻との差分時間を求め、前記差分時間に基づいて、計測時刻を表す前記計時データを補正する時刻補正部と、前記時刻補正部によって求められた前記差分時間を前記識別子情報に対応付けて格納する格納部とを有する前記ホスト装置と、
を含むセンサーシステム。
【請求項6】
請求項4記載のセンサー装置と、
前記センサー装置から送信される信号を受信して処理するホスト装置であって、前記センサー装置から送信される信号を受信する第2の通信回路と、実際の時刻を計測する実時間計測部と、前記センサー装置から送信された前記計時データによって表される送信時刻と前記実時間計測部によって計測された実際の時刻との差分時間を求め、前記差分時間に基づいて、計測時刻を表す前記計時データを補正する時刻補正部と、前記時刻補正部によって求められた前記差分時間を前記識別子情報に対応付けて格納する格納部と、前記センサー装置から前記リセット信号及び送信時刻を表す前記計時データが送信されたときに、送信時刻を表す前記計時データに基づいて、前記格納部に格納されている前記差分時間を更新するように前記時刻補正部を制御する制御部とを有する前記ホスト装置と、
を含むセンサーシステム。
【請求項7】
前記ホスト装置が、前記装置センサーが送信時刻を表す前記計時データを一旦送信した後に、所定の期間をおいてから、送信時刻を表す前記計時データを再度送信するように前記センサー装置を制御する制御部をさらに有する、請求項5記載のセンサーシステム。
【請求項8】
前記ホスト装置が、前記差分時間に基づいて、計測を開始又は終了する設定時刻を前記センサー装置の前記計時回路によって計測される時刻に対応するように換算する制御部であって、換算された時刻に計測を開始又は終了するように前記センサー装置を制御する前記制御部をさらに有する、請求項5記載のセンサーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−233841(P2012−233841A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104097(P2011−104097)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】