説明

センサ付転動装置

【課題】外気に曝される設置個所でも使用でき、耐環境性・防水性に優れたセンサ付転動装置を提供すること
【解決手段】転動装置(17)の運転状態を検出する少なくとも一つの検出素子(30,31,32)と、前記検出素子(30,31,32)を内包するセンサ筐体(21)と、を備える検出器(20)を用いたセンサ付転動装置(10)において、前記センサ筐体(21)を防水構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり軸受装置や直動装置等の転動装置の運転状態を検知するセンサ付転動装置に関し、特に、耐環境性、防水性が要求される機械装置等の予防保全や異常検知、例えば、ばね下で使用される鉄道車両や、自動車、搬送車等の移動体の軸受装置の予防保全や、電気情報機器用の軸受等の異常検知にも適用可能なセンサ付転動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のセンサ付転動装置では、軸受の剥離等、転動装置における異常を早期に検知するため、温度や振動等を検出するセンサを用いて、異常に伴う温度や振動等の変動を検出していた。また、各検出素子をプリント基板に設置して、各検出素子と各種電子素子とを結線する電線を不要とし、コンパクト化を図ると共に経年変化や断線といった不具合のないセンサが知られている。
【0003】
検出素子がプリント基板に実装される技術として、振動、温度、回転速度、湿度等を検出する検出素子と検出用の回路部がプリント基板上に実装され、プリント基板が軌道輪の一部に取り付けられたセンサ付転がり軸受が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、センサ周りの温度変化に対応するため、プリント基板に取り付けられた検出素子や回路部品を軟質樹脂と硬質樹脂で覆ったセンサが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
また、転動装置は外気に曝される条件の下で使用されることが多く、センサの内部に水が浸入してプリント基板上の回路等に作動不良等が発生するという問題がある。このため、従来、プリント基板を防湿するために防湿剤等をプリント基板に塗布していた。しかしながら、防湿剤の塗布は部品実装後のプリント基板単体で行われるため、プリント基板をケースやハウジング等に固定した後、ケーブルを取り出すためのはんだ付けを行う場合には、その部分の防湿がなされていなかった。
【0005】
このような問題に対し、図5に示されるように、回路素子部101、リード線102、電源線103を、防湿・防水用の防水性樹脂層104で充填した圧電型振動センサ装置100が知られている(例えば,特許文献3参照。)。圧電型振動センサ装置100は、一方の面に振動検知部105を備え、他方の面に回路素子部101を搭載した回路基板106がパッケージ107内に設けられ、回路基板106上の回路素子部101を防水性樹脂層104で封止する。また、リード線102及び電源線103は、防水性樹脂層104に一部埋設して回路素子部101から引き出されている。
【特許文献1】特開2002−206528号公報(第2−3頁、第1図)
【特許文献2】特開2003−83774号公報(第3−4頁、第2図)
【特許文献3】特開平7−43205号公報(第3頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3における圧電型振動センサ装置では、温度変化や湿度変化によって安定した感度を得ることができ、また、リード線や電源線も防水性樹脂層に部分的に埋設されて防湿・防水が行われている。しかしながら、特許文献3では、ケーブル取り出し口がパッケージ107の上方に設けられているが、ケーブル取出し口が回路基板106に対して水平方向にある場合には、防水性樹脂がケーブル取り出し口から流出してしまうという問題がある。また、パッケージ107自体のケーブル取出し口では防水対策が十分に為されていないため、リード線102および電源線103と外部の接続ケーブル間が浸水する可能性がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、外気に曝される設置個所でも使用でき、耐環境性・防水性に優れたセンサ付転動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、下記構成により達成される。
(1)転動装置の運転状態を検出する少なくとも一つの検出素子と、前記検出素子を内包するセンサ筐体と、を備える検出器を用いたセンサ付転動装置において、前記センサ筐体を防水構造とすることを特徴とするセンサ付転動装置。
(2)前記検出器は、前記検出素子を内包する収容空間を閉じるように前記センサ筐体に取り付けられた蓋体と、前記検出素子の出力を外部に取り出すため前記センサ筐体に取り付けられたコネクタとをさらに備え、
前記センサ筐体と前記蓋体間はOリングで密閉されており、前記センサ筐体と前記コネクタ間はOリングの装着と防水性樹脂による封止の少なくとも一方で密閉されることを特徴とする(1)に記載のセンサ付転動装置。
(3)前記検出器は、前記検出素子が実装されるプリント基板をさらに備え、前記プリント基板は防水性樹脂で封止されていることを特徴とする(1)又は(2)に記載のセンサ付転動装置。
(4)前記検出素子は振動検出素子であって、前記振動検出素子が前記プリント基板の面に対して垂直な方向の振動を検出するように、前記プリント基板は前記センサ筐体上に水平に設置され、前記センサ筐体に設けられたケーブル取り出し用の穴の下端は、前記プリント基板を封止した前記防水性樹脂より上方に位置することを特徴とする(3)に記載のセンサ付転動装置。
(5)前記プリント基板は前記センサ筐体上に水平に設置され、前記センサ筐体に水平方向に貫通されたケーブル取り出し用の穴の下端は、前記プリント基板を封止した前記防水性樹脂より上方に位置することを特徴とする(3)に記載のセンサ付転動装置。
(6)前記検出器を前記転動装置に取り付けるため前記センサ筐体に設けられた筐体取り付け用の穴と前記ケーブル取り出し用の穴はオフセットされていることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のセンサ付転動装置。
(7)前記転動装置が転がり軸受であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のセンサ付転動装置。
(8)前記転動装置がボールねじであることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のセンサ付転動装置。
(9)前記転動装置がリニアガイドであることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のセンサ付転動装置。
(10)前記転動装置がリニアボールベアリングであることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のセンサ付転動装置。
ここで、転がり軸受とは、複数の転がり軸受の外輪にハウジングが外嵌されてなる、いわゆる軸受装置も含まれる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るセンサ付転動装置によれば、検出素子を内包するセンサ筐体を防水構造にしたので、外気に曝される設置個所でも使用でき、耐環境性・防水性に優れたセンサ付転動装置を提供することができる。また、センサ筐体に設けられたケーブル取り出し用の穴の下端は、プリント基板を封止した防水性樹脂より上方に位置しているので、防水性樹脂がケーブル取り出し用の孔から流出することがなく、封入性が良く、組立の工数を削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係るセンサ付転動装置10について詳細に説明する。
図1に示されるように、センサ付転動装置であるセンサ付軸受装置10は、軸方向に間隔をあけて配された一対の転がり軸受(ここでは玉軸受)11と、各転がり軸受11の外輪12に外嵌されたハウジング18と、各転がり軸受11の内輪13に内嵌された軸15とを備えた転がり軸受装置17に、検出器であるセンサユニット20が取り付られた構成からなる。
【0011】
外輪12と内輪13の間には、複数の転動体(ここでは玉)14が配されている。本実施形態の転がり軸受装置17は、軸15と内輪13が一体に回転し、外輪12及びハウジング18が静止した、いわゆる、内輪回転型のものである。
【0012】
ハウジング18は円筒形状に形成されており、一方の(図中右方の)転がり軸受11よりも軸方向に突出して延びており、その端部には、エンドカバー19が固定されている。軸15は、ハウジング18内で、エンドカバー19に至る手前で終端している。ハウジング18のセンサユニット取付部は、円筒状でも、平面状でもよい。
【0013】
センサユニット20は、上方に開放した収容空間を構成するセンサ筐体であるケース本体21と、ケース本体21の開放部を覆う蓋体22とで構成される検出器ケース23とを備える。検出器ケース23は、ケース本体21に設けられた筐体取り付け穴24に挿入される複数のボルト25を介してハウジング18に固定される。ケース本体21の上面には、収容空間を囲むようにOリング溝26(図2)が形成されており、Oリング溝26に収容されたOリング27によりケース本体21と蓋体22間を密閉して防水性を高めている。
【0014】
ケース本体21は、図3に示されるように、ハウジング18の外周面上に隙間無く置かれる取付部21aと、取付部21aの側方から立設する側部21bとを有する。また、取付部21aの取付面(ハウジング18外周面に対向して固定される面)は、ハウジング18の外周面に沿った形状を備える。
【0015】
センサ筐体であるケース本体21を被測定物である軸受装置17に取り付ける箇所(ボルト25の固定位置)は、軸受装置17の一番高い位置としている。軸受装置17に検出器ケース23を取り付ける場合には、作業スペースが軸方向にしかないこと(図1の右側)が多く、筐体取り付け穴24が一番高い箇所にないと、奥側(図1の左側)のボルト25を取り付けるための工具が入らない。なお、鉄道車両等の落下防止対策を行う場合には、筐体取り付け穴24が一番高い位置にあるとワイヤー等で補強することができる。
【0016】
センサ筐体であるケース本体21の材質は任意であるが、強度等を考慮してステンレス鋼やアルミニウム合金等の金属製のセンサ筐体が好ましい。ただし、センサ筐体の腐食を防止するために、取付部分(ハウジング18)と同じ材質を使用したり、ステンレス鋼としてSUS303等のオーステナイト系ステンレス鋼を用いたり、アルミニウム合金であれば表面をアルマイト処理する等の対策を行うことが好ましい。また、ケース本体21の形状は、箱型に限らず、円筒形状等、その他の形状であってもよい。
【0017】
ケース本体21内にはプリント基板28が固定されており、振動検出素子(加速度センサ)、温度検出素子等の検出素子及び信号を処理するため信号処理部等からなる電子部品がプリント基板28を介して取付部21aと側部21bとで囲まれた収容空間に設置される。取付部21aは、側部21bの内側に設けられ、プリント基板28を固定するための面一な支持面21cを有する基板支持部21dと、プリント基板28に対向する位置で、基板支持部21dの内側に段差を設けて形成された凹部であるざぐり部21eとを構成する。
【0018】
プリント基板28は、図3に示すように、その周縁部が基板支持部21d上に面するようにして、プリント基板28のコーナー部に配した複数の止めねじ29(本実施形態では、4本)により固定されている。なお、プリント基板28は、全周が基板支持部21dに支持されているが、両端支持であってもよい。また、プリント基板28を基板支持部21d上に固定する固定具として止めねじ29を用いたが、接着剤等を用いてもよい。
【0019】
プリント基板28の一方の面(図では上面;ケースカバー22側の面)には振動検出素子30および速度検出素子31が実装されている。また、プリント基板28の他方の面(図では下面;取付板21a側の面)には温度検出素子32が実装されており、温度検出素子32は、取付部21aに形成されたざぐり部21eに収容される。
なお、速度検出素子31、温度検出素子32の取り付けは、プリント基板28に対して逆に配置されてもよく、一方の面のみでもよい。
ざぐり部21eは、電子部品実装面やパターンがある部分とケーブルをはんだ付けする部分を含む。電子部品やパターンがプリント基板裏面にない場合には、ケーブルのはんだ付け部分が含まれればよい。
【0020】
振動検出素子30は、図1に示されるように、その振動検出方向がプリント基板28の面に垂直な方向(板厚方向)となるように構成されている。即ち、振動検出素子30は、図中符号Vで示す方向の振動(ここではハウジング18及び軸15の軸線に直交するラジアル方向の振動)を検出可能に構成されている。このため、振動検出素子30は、その振動検出方向がV方向となるようにプリント基板28に取り付けられており、プリント基板28は板厚方向がV方向、即ち、振動検出方向となるようにセンサ筐体であるケース本体21に水平に設置されている。
【0021】
また、振動検出素子30が実装されるプリント基板28の部分の裏面は、プリント基板自体の曲げ方向(板厚方向)の固有振動数を高くするため、接着剤でケース本体21の基板支持部21dに接着されている。なお、振動検出素子30は、プリント基板28を固定するための止めねじ29間で、かつ、2つの筐体取り付け穴24の中心間に沿って配置されており、これによりプリント基板28の固有振動数の影響をより小さくすることができる。
なお、本実施形態では、軸受装置の状態を監視するための検出素子として、振動検出素子30、速度検出素子31、温度検出素子32、その他の運転状態を検出する検出素子の少なくとも一つが装備されていればよい。
【0022】
さらに、プリント基板28の一方の面或いは他方の面上には、これらの検出素子以外に、検出信号の高周波成分を減衰除去するためのローパスフィルタ(LPF)や、上記の各検出素子の出力信号を増幅するための増幅回路、検出信号を電圧出力又は電流出力(電流ループ出力)で出力するための出力回路及びそれらの回路を構成する電子部品などが表面実装されている。
【0023】
また、電子部品が実装されたプリント基板28を取り付けたケース本体21の収容空間には、防水性樹脂33が封止されている。防水性樹脂33は、例えば、シリコンゲル等を用いることができる。防水性樹脂33は、プリント基板28の両側に設けられた電子部品を覆うとともに、はんだ付けによりプリント基板28に接続されたケーブル34の接続部分を覆う。従って、プリント基板28をセンサ筐体に固定した後にプリント基板28とケーブル34を接続するためにはんだ付けしても、その後に防水性樹脂33で封止できるので、プリント基板25、電子部品及びケーブルのはんだ付け部のすべてを防湿・防水することができる。
【0024】
なお、本実施形態のように、基板の裏面にざぐり部21eがある場合には、防水性樹脂33がざぐり部21eへ確実に流れるように、ざぐり部21eの空間部分がプリント基板28の上面と連通するように連通穴(図示せず)を設けておくとより好ましい。
【0025】
振動検出素子30、速度検出素子31、温度検出素子32は、軸受装置17に作用する運転状態を常時検出して信号(値)を出力し、その信号(値)をプリント基板28に実装された電子部品に供給する。電子部品は、これらの検出素子30,31,32から与えられた信号(値)を処理し、電圧信号又は電流信号として出力する。
【0026】
また、プリント基板28から延びたケーブル34は、ケース本体21に貫通形成されたケーブル取り出し用の穴35を通じて、ケース本体21の側面に取り付けられたコネクタ36の内端部に接続される。また、コネクタ36の外端部には、外部の測定器に接続する別のケーブル37が接続されている。ケーブル37を介して外部に伝送する信号は、電圧出力でもよいし、電流出力でもよい。電流出力の場合は、電流ループ出力にすると、ノイズの影響を受けにくくなるので好ましい。電流ループ出力の場合は、ケーブル37の信号線と電源線をツイストしておくとノイズの影響をさらに受けにくくなるのでより好ましい。また、電圧出力の場合も、ケーブル37の信号線をツイストしておく方がノイズの影響を受けにくいので好ましい。ケーブル37は、プリント基板28の表面(上面)から取り出しても裏面(下面)から取り出してもよい。
【0027】
ケーブル取り出し用の穴35は、水平方向である軸15の軸方向に沿って貫通形成されており、ケーブル取り出し用の穴35の開口を覆うようにコネクタ36が取り付けられている。また、ケーブル取り出し用の穴35は、省スペース化のため、筐体取り付け穴24と軸方向に重ならない位置、即ち、筐体取り付け穴24とオフセットした位置に配置されている。
ここで、筐体取り付け穴24とケーブル取り出し用の穴35に取り付けられたコネクタ36とが同軸上に配置されている場合にはボルトの出し入れが困難になってしまう。また、コネクタ36をケース本体21の上面(図1の上方向)につけると、上方向へのオーバーハングによる大きな取り付けスペースを必要としてしまう。このため、筐体取り付け穴24とケーブル取り出し用の穴35をオフセットさせることで、ボルトの取り付け、取り外しが自由にでき、上方向へのオーバーハングを小さくできる。
【0028】
ケーブル取り出し用の穴35は、充填される防水性樹脂33の高さ、即ち、プリント基板25に実装した電子部品の高さより上方に位置する。これにより、防水性樹脂33をケース本体21の収容空間に流し込んでも、防水性樹脂33がケーブル取り出し用の穴35から外部へ流出するのを防止することができる。
【0029】
また、コネクタ36のケース本体21に対向する面にはOリング溝38が形成されており、Oリング溝38に収容されたOリング39によりケース本体21とコネクタ33間を密閉して防水性を高めている。
さらに、外部のケーブル被覆が損傷した場合の防水処置として、ケーブル取り出し用の穴35内で、ケーブル被覆にシリコン樹脂等の防水性樹脂40をモールドして内側から樹脂封止するようにしてもよい。この場合、ケーブル取り出し用孔35は、プリント基板28上に封止された防水性樹脂33よりも上方に位置しているので、ケーブル取り出し用の穴35を封止する防水性樹脂40と、プリント基板28を封止する防水性樹脂33が混ざり合うことがない。このため、互いの樹脂が硬化阻害物質であっても問題は起きない。
【0030】
なお、外部から配線されるケーブル37の線径が大きい場合には、ケース本体21内で端子台もしくは圧着端子等で接続してもよい。
また、ケーブル34は、ケース本体21内で結束バンド等で固定しておくと、プリント基板28がケーブル34で引っ張られることを防止できるのでより好ましい。
【0031】
上記のように、本実施形態によれば、検出素子を内包するセンサ筐体であるケース本体21を防水構造にしたので、外気に曝される設置個所でも使用でき、耐環境性・防水性に優れたセンサ付転動装置を構成することができる。
特に、ケース本体21と蓋体22との間はOリング27で密閉されており、ケース本体21とコネクタ36との間はOリング39の装着と防水性樹脂40による封止で密閉されていることから、検出素子を内包する収容空間が外気に曝されることを確実に防止することができる。また、電子部品、はんだ付け後のケーブル34が実装されたプリント基板28は防水性樹脂33で封止されていることから、これらの部品も確実に防湿・防水されている。また、Oリング溝を形成するスペースがない場合は、ケース本体21と蓋体22との間に液体パッキン等を入れて防水してもよい。
【0032】
さらに、ケーブル取り出し用の穴35の下端は、プリント基板28を封止した防水性樹脂33より上方に位置しているので、防水性樹脂33がケーブル取り出し用の穴35から流出することがなく、封入性が良く、組立の工数を削減できる。
加えて、ケース本体21は、筐体取り付け穴24とケーブル取り出し用の穴35とをオフセットさせているので、ボルトの取り付け、取り外しが自由にでき、上方向へのオーバーハングを小さくできる。
【0033】
なお、本実施形態に用いられる振動検出素子28は、シリコン加速度センサや、圧電素子を使用したバイモルフ型の振動検出素子、圧電素子と重錘を組合せた振動検出素子、あるいは片持ちはり構造の振動検出素子等のほか、圧電素子の代わりにひずみゲージを利用した振動検出素子などが使用される。シリコン加速度センサは、シリコン・マイクロマシン部品(機械素子)を電子回路と同一のシリコン基板上に集積することにより、小型化、高性能化及び低コスト化を図ったものであり、フォトリソグラフィなどICの製造技術を利用して製造される。
また、振動検出素子28は、表面実装タイプの振動検出素子でなく、リードタイプの振動検出素子でもよい。
なお、ケース本体21内にプリント基板25を固定するために、ねじや接着剤を用いる他に、エポキシ樹脂などのモールド材をケース本体21内にモールドして固定してもよい。また、ねじで固定した場合、その後にエポキシ樹脂などでモールドしてもよい。また、防水のため、軟らかいシリコン樹脂やシリコンゲルなどを充填してもよい。
なお、エポキシ樹脂のような硬い樹脂でモールドする場合は、検出素子や電子部品部分をシリコン樹脂等のやわらかい樹脂で被覆した後に、モールド材でモールドすることが好ましい。このとき、発泡性の樹脂(発泡性シリコン樹脂など)をやわらかい樹脂の上に覆った後にモールド材でモールドすることがより好ましい。こうすれば、温度変化による熱膨張率差によって発生する圧力を緩和することで、圧力による検出素子や電子部品の破損を防止できる。
【0034】
また、ローパスフィルタが不要な場合は、ローパスフィルタを省いてもよいが、プリント基板25や振動検出素子28の固有振動数成分の振動を除去するためには、ローパスフィルタを設けることが好ましい。
さらに、ケース本体21とコネクタ36との間は、Oリング39の装着と防水性樹脂40の封入のいずれか一方によって為されてもよい。
【0035】
また、本発明は、以上に説明した各実施の形態に限定されるものではなく、適宜な変形、改良等が可能である。
軸受装置17における転がり軸受は玉軸受に限らず、円筒ころ軸受、円錐ころ軸受や、各種の複列軸受でもよい。
【0036】
更に、軸受装置17に限らず、図4に示すようにボールねじ50に本発明を適用することもできる。ボールねじ50では、ナット51に本発明に係るセンサユニット(検出器)60を取り付けることにより、ねじ軸52とナット51との係合部における剥離等の異常を検知することができる。なお、センサユニット60の取付け相手はナット51に限らず、ねじ軸52をサポートしている固定側のサポートユニット53や単純支持側のサポートユニット54に取り付けてもよい。ねじ軸52はロックナット55により固定側のサポートユニット53に軸方向に固定されており、カップリング56を介して結合された駆動モータ57によって回転する。
また、ボールねじに限らず、リニアガイドやリニアボールベアリング等、その他の直同部品における可動部やレールにセンサユニット60を取り付けることによって、剥離等の異常を検知することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係るセンサ付転動装置の一実施形態の縦断面図である。
【図2】図1に示した蓋体を外したセンサユニットの上面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】本発明に係るセンサ付転動装置の検出器がボールねじに適用された例を示す側面図である。
【図5】従来のセンサ付転動装置の断面図である。
【符号の説明】
【0038】
10 センサ付軸受装置(センサ付転動装置)
11 転がり軸受
12 外輪
13 内輪
15 軸
17 転がり軸受装置(転動装置)
20,60 センサユニット(検出器)
21 ケース本体
22 蓋体
23 検出器ケース
27 Oリング
28 プリント基板
30 振動検出素子
31 速度検出素子
32 温度検出素子
33 防水性樹脂
34 ケーブル
36 コネクタ
39 Oリング
40 防水性樹脂
60 ボールねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転動装置の運転状態を検出する少なくとも一つの検出素子と、前記検出素子を内包するセンサ筐体と、を備える検出器を用いたセンサ付転動装置において、前記センサ筐体を防水構造とすることを特徴とするセンサ付転動装置。
【請求項2】
前記検出器は、前記検出素子を内包する収容空間を閉じるように前記センサ筐体に取り付けられた蓋体と、前記検出素子の出力を外部に取り出すため前記センサ筐体に取り付けられたコネクタとをさらに備え、
前記センサ筐体と前記蓋体間はOリングで密閉されており、前記センサ筐体と前記コネクタ間はOリングの装着と防水性樹脂による封止の少なくとも一方で密閉されることを特徴とする請求項1に記載のセンサ付転動装置。
【請求項3】
前記検出器は、前記検出素子が実装されるプリント基板をさらに備え、前記プリント基板は防水性樹脂で封止されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のセンサ付転動装置。
【請求項4】
前記検出素子は振動検出素子であって、前記振動検出素子が前記プリント基板の面に対して垂直な方向の振動を検出するように、前記プリント基板は前記センサ筐体上に水平に設置され、前記センサ筐体に設けられたケーブル取り出し用の穴の下端は、前記プリント基板を封止した前記防水性樹脂より上方に位置することを特徴とする請求項3に記載のセンサ付転動装置。
【請求項5】
前記プリント基板は前記センサ筐体上に水平に設置され、前記センサ筐体に水平方向に貫通されたケーブル取り出し用の穴の下端は、前記プリント基板を封止した前記防水性樹脂より上方に位置することを特徴とする請求項3に記載のセンサ付転動装置。
【請求項6】
前記検出器を前記転動装置に取り付けるため前記センサ筐体に設けられた筐体取り付け用の穴と前記ケーブル取り出し用の穴はオフセットされていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のセンサ付転動装置。
【請求項7】
前記転動装置が転がり軸受であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のセンサ付転動装置。
【請求項8】
前記転動装置がボールねじであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のセンサ付転動装置。
【請求項9】
前記転動装置がリニアガイドであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のセンサ付転動装置。
【請求項10】
前記転動装置がリニアボールベアリングであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のセンサ付転動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−203267(P2008−203267A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69390(P2008−69390)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【分割の表示】特願2003−277435(P2003−277435)の分割
【原出願日】平成15年7月22日(2003.7.22)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】