説明

センサ取付構造

【課題】 ケースにおいてセンサの嵌合部分からの空気漏れをコスト安に防止する。
【解決手段】 ブラケット5の嵌合部分51の外周面には、この外周面から半径方向外方にわずかに突出し、かつ、円周方向に連続してのびる第1リブ57が一体に成形されている。この第1リブ57は、嵌合部分51の外周面において、上記第2の溝56b側からこの溝56bの反対側部分51c側に向かって高さが高くなるような三日月形状である。また、この第1リブ57は軸方向厚さが小さい薄肉状で、かつ、この第1リブ57の外周形状は、ケース4の貫通孔41の内周形状とほぼ同じである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、センサをケースに取り付けるセンサ取付構造に関するもので、例えば、車両用空調装置のケースに温度センサを取り付ける際の温度センサ取付構造に用いて好適である。
【0002】
【従来の技術】従来、例えば、車両用空調装置のケース4に温度センサ3を取り付ける場合、図5(a)に示すように、このケース4に貫通孔41を設け、温度センサ3のリード線32、33を保持した状態のブラケット5を、貫通孔41に挿入していた。なお、このブラケット5には、引っ掛け形状の係止片53が、図5(a)中紙面手前側および紙面奥側の2か所に一体に成形されており、この係止片53をケース4の貫通孔41周囲のガイド部42に係止して、ケース4にブラケット5を固定している。
【0003】ここで、ブラケット5を貫通孔41にスムースに挿入するため、図5(a)に示すように、貫通孔41の径がブラケット5の嵌合部分51の外周径よりも大きく構成されている。また、一般に、リード線32、33の外周部にはビニール製のチューブ34が設けられており、図5(b)に示すように、このチューブ34の断面形状は、ブラケット5の溝56aの断面形状よりもわずかに大きいものである。
【0004】そして、ブラケット5をケース4の貫通孔41に嵌合すると、チューブ34がガイド部43内周面の一部(図5(b)中下方)に軽く当接し、ブラケット5の嵌合部分51が、上記一部の反対側部分(図5(b)中上方)に軽く当接した状態となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、この従来技術では、上述のように貫通孔41の径が嵌合部分51の外周径よりも大きく構成されているので、図5(b)に示すように、ガイド部43とブラケット5との間に嵌合隙間A、および、チューブ34とブラケット5の溝56aとの微小隙間Bが存在する。このため、これら嵌合隙間Aおよび微小隙間Bから、ケース4内部の空気が外部へ漏れてしまい、温度制御前の空気が車室内に漏れる、という問題が発生する。これに対して、この嵌合隙間A、Bにパッキンを設けてシールするなどして空気漏れを防止してきたが、パッキンの材料費がかかり、パッキンを設ける工程が必要であるため、コスト高を招くという問題が発生する。
【0006】本発明は上記点に鑑みてなされたもので、ケースにおいてセンサの嵌合部分からの空気漏れをコスト安に防止することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、請求項1ないし4に記載の発明では、ケース(4)の貫通孔(41)に嵌合する嵌合部分(51)を有し、ケース(4)に固定されるブラケット(5)を備え、このブラケット(5)の嵌合部分(51)には、軸方向に延びる溝(56a)、および、嵌合部分(51)の外周面から外方側に突出し、かつ、周方向に連続して、嵌合部分(51)の外周面に一体に成形されるリブ(57)が備えられている。
【0008】リブ(57)は軸方向厚さが小さい薄肉状で、かつ、リブ(57)の外周形状は貫通孔(41)の内周形状とほぼ同じであり、このリブ(57)の突出高さは、嵌合部分(51)の外周面において、溝(56a)側からこの溝(56a)の反対側部分(51c)に向かって高くなるようになっている。そして、この溝(56a)にセンサ(3)のリード線(32、33)を配置し、このリード線(32、33)を溝(56a)の内壁面、および、貫通孔(41)の内壁面に圧接した状態で、ブラケット(5)をケース(4)の貫通孔(41)に固定していることを特徴としている。
【0009】このような技術的手段によれば、リブ(57)の外周形状が貫通孔(41)の内周形状とほぼ同じであるため、ブラケット(5)のリブ(57)と貫通孔(41)の内壁面との間にはほとんど隙間が存在せず、しかも、リード線(32、33)を溝(56a)の内壁面および貫通孔(41)の内壁面に圧接しているので、リード線(32、33)と、溝(56a)の内壁面および貫通孔(41)の内壁面との間にもほとんど隙間が存在しない。
【0010】よって、ケース(4)の貫通孔(41)から、ケース(4)内の空気が外部へ漏れる、といった問題を防止できる。また、ブラケット(5)の嵌合部分(51)にリブ(57)を一体に設けるだけでよく、従来のように別体のパッキンを設ける必要はないので、従来に比べてコスト安に上記問題を防止できる。また、リブ(57)は、軸方向厚さが小さい薄肉状であるため、このリブ(57)と貫通孔(41)の内壁面との間の接触面積は小さく、ひいては、これらの間の接触抵抗は小さい。従って、ブラケット(5)を貫通孔(41)にスムースに挿入することができる。
【0011】また、請求項3に記載の発明では、嵌合部分(51)の溝(56a)の反対側部分(51c)から外方側に突出し、かつ、軸方向に延びる副リブ(58)が備えられている。従って、この副リブ(58)により、嵌合部分(51)の溝(56a)側を軸方向に沿って貫通孔(41)の内壁面に押し付けることで、リード線(32、33)に、このリード線(32、33)の配線方向の力を加えることができ、リード線(32、33)を軸方向に沿って貫通孔(41)の内壁面に安定的に圧接させることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図に示す実施形態について説明する。本実施形態は、図4に示すように、車両用空調装置1の蒸発器11の空気下流側で、かつ、ヒータコア12の上流側の温度を測定する温度センサ3をケース4に固定するセンサ固定用のブラケット5の取付構造に適応したものである。
【0013】ここで、図1(a)は、ブラケット5をケース4の貫通孔41(後述する)に配置させた状態の斜視図で、図1(b)は図1(a)におけるブラケット5のA矢視図である。また、図2(a)は、ブラケット5のケース4への組付構造を示す側面図で、図2(b)は図2(a)のB−B断面図で、図2(c)は、ブラケット5の図2(a)中D矢視図である。また、図3は温度センサ3を保持した状態のブラケット5を示す図である。
【0014】図1(a)および図2(a)に示すように、ケース4には、ブラケット5を挿入するための円形状の貫通孔41が形成されており、この貫通孔41の外周部には、ケース4の内側および外側に向かって円筒状に突出するガイド部42、43が、ケース4に一体に成形されている。このケース4は、加工性に優れた樹脂材料、例えば、ポリプロピレンからなり、貫通孔41の直径は、本実施形態では、12mmである。
【0015】また、図2(a)に示すように、温度センサ3は、センサ部31と、2本のリード線32、33とからなり、このリード線32、33の外周部には、リード線32、33をまとめて覆うビニール製のチューブ34が設けられている。このチューブ34により、2本のリード線32、33を1本にまとめて取り扱いやすくしている。なお、このチューブ34の断面形状は、後述する第1の溝56a(図2(b)参照)の断面形状よりもわずかに大きく構成されている。
【0016】以下に、ブラケット5の具体的構造を図に基づいて説明する。まず、図1(a)に示すように、ブラケット5は、ケース4の貫通孔41に嵌合する略円柱状の嵌合部分51と、この嵌合部分51の一端51aから軸方向に延び、温度センサ3を保持する保持部分52と、この嵌合部分51の一端51aから軸方向に延びる、引っ掛け形状の2つの係止片53、53とから主に構成される。本実施形態では、ブラケット5の嵌合部分51の一端51a先端が、ケース4の壁面に相当する部分に位置するようになっている。
【0017】なお、この嵌合部分51の外径は、ケース4の貫通孔41の径よりもわずかに小さく、本実施形態では、例えば、11.5mmであり、この結果、嵌合部分51を貫通孔41にスムースに挿入することができる。また、このブラケット5は、加工性に優れ、弾性を有する樹脂材料、例えばポリプロピレンから形成されている。
【0018】そして、2つの係止片53、53は、嵌合部分51の一端51aの外周縁部側において、互いに対向する位置に形成され、保持部分52は、上記一端51aの外周縁部側において、係止片53、53よりも図1(a)中下方に配置するように形成される。なお、図3に示すように、保持部分52の先端には、温度センサ3を弾性力にて挟持する2枚の矩形状の挟持部52a、52bが一体に成形されている。
【0019】また、嵌合部分51の他端51b側には、この嵌合部分51の円周方向外方に向かって延びる鍔状部54が備えられ、さらに、嵌合部分51の他端51b側の図2(a)中下方部分から、図2(a)中下方に向かって延びる突出部55(図1(a)および図2(c)も参照)が一体に成形されている。なお、図2(c)において、保持部分52および係止片53は図示していない。
【0020】そして、図2(a)に示すように、突出部55および嵌合部分51には、温度センサ3のチューブ34を配置させるための溝56が形成されている。この溝56の幅は、嵌合部分51の一端51aから突出部55の図2(a)中略中央までであり、この溝56の深さは、嵌合部分51の略中央までである。具体的に、この溝56は、嵌合部分51の一端51aから軸方向に延びる第1の溝56aと、この第1の溝56aから略垂直に延びる第2の溝56bとからなり、第2の溝56bの図2R>2(a)中上方部分の底面はなめらかな円弧形状である。
【0021】そして、図1(b)および図2(b)に示すように、嵌合部分51の外周面には、この外周面から半径方向外方にわずかに突出し、かつ、円周方向には連続して延びる第1リブ(リブ)57が一体に成形されている。この第1リブ57は、図2(b)に示すように、嵌合部分51の外周面において、上記第1の溝56a側からこの溝56aの反対側部分51c側に向かって高さが高くなるような三日月形状であり、この第1リブ57の外周形状は、ケース4の貫通孔41の内周形状とほぼ同じ円形状である。なお、本実施形態では、第1リブ57の第1の溝56a側の突出高さは、ほとんどゼロで、溝56aの反対側部分51c側の突出高さは、0.5mmであり、第1リブ57の外径は、12mmである。
【0022】この結果、嵌合部分51の第1の溝56a側がガイド部43に接するので、温度センサ3のチューブ34は第1の溝56aの内壁面およびガイド部43に圧接した状態となる。さらに、図2(a)に示すように、第1リブ57は、その突出端に向かって厚さがほぼゼロとなるようなテーパ形状であり、この第1リブ57の上記反対側部分51c側における、嵌合部分51側厚さdは約0.5mmである。
【0023】また、図1(b)および図2(a)に示すように、嵌合部分51の外周部において、第1の溝56aの反対側部分51cには、軸方向に延びる第2リブ(副リブ)58が一体に成形されている。この第2リブ58において、上記一端51a側には、上記一端51aに向かって高さがほぼゼロとなるようなテーパ部58aが形成されている。さらに、図2(b)に示すように、第2リブ58は、その突出端に向かって厚さがほぼゼロとなるようなテーパ形状である。
【0024】そして、上記構成のブラケット5をケース4へ組付けるには、まず、図1(a)において、ブラケット5の係止片53、53の先端をブラケット5の中心部側に撓ませた状態で、係止片53、53をガイド部43、42の内周面に沿って挿入してゆき、この係止片53、53の先端部をガイド部42の突出端に係止させる。この結果、図2(b)に示すように、リード線32、33を覆うチューブ34を、第1の溝56aの内壁面、および、ガイド部43の内壁面に圧接した状態で、ブラケット5をケース4に固定することができる。
【0025】以下に、上記実施形態の奏する効果を述べる。まず、ブラケット5の第1リブ57の外周形状がケース4の貫通孔41の内周形状とほぼ同じであるため、第1リブ57とガイド部43の内壁面との間にはほとんど隙間が存在せず、しかも、温度センサ3のチューブ34が第1の溝56aの内壁面およびガイド部43に圧接しているため、リード線32、33を覆うチューブ34と、第1の溝56aの内壁面およびガイド部43の内壁面との間にもほとんど隙間が存在しない。よって、貫通孔41からケース4内の空気が外部へ漏れる、といった問題を防止できる。
【0026】また、第2リブ58が形成されているので、嵌合部分51の第1の溝56a側を軸方向に沿ってガイド部43の内壁面に押し付けることで、リード線32、33に、このリード線32、33の配線方向の力を加えることができ、リード線32、33を軸方向に沿って貫通孔41の内壁面に安定的に圧接させることができる。
【0027】また、第1、第2リブ57、58は、その突出端に向かって厚さがほぼゼロとなるようなテーパ形状であるため、ブラケット5をケース4のガイド部43、42に挿入する際、この第1、第2リブ57、58とガイド部43内周面との接触面積が非常に小さく、これらの接触摩擦を非常に小さく抑えることができる。よって、ブラケット5の貫通孔41への挿入をスムースに行うことができる。
【0028】また、第2リブ58にはテーパ部58aが形成されているため、ブラケット5の貫通孔41への挿入をよりスムースに行える。なお、上記実施形態において、第1リブ57の高さは第1の溝56aの反対側部分51cが最も高かったが、本発明はこれに限定されることはなく、上記反対側部分51c近傍で最も高くなるように第1リブ57を形成してももよい。
【0029】また、上記実施形態では、ブラケット5の嵌合部分51の一端51a先端がケース4の壁面に相当する部分に位置し、第1リブ57がガイド部43に位置するようになっていたが、本発明はこれに限定されることはなく、ブラケット5の嵌合部分51の一端51a先端がガイド部42の突出端に位置して、第1リブ57がケース4の壁面に相当する部分に位置していてもよいし、ガイド部42に位置していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の実施形態におけるブラケットのケースへの組付構造を説明する斜視図で、(b)は(a)のA矢視図である。
【図2】(a)は本発明の実施形態におけるブラケットのケースへの組付構造を示す側面図で、(b)は(a)のB−B断面図で、(c)はブラケットの概略正面図である。
【図3】本発明の実施形態において、温度センサを保持した状態のブラケットを示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態における温度センサの配置場所を示す車両用空調装置の概略断面図である。
【図5】(a)は従来技術におけるブラケットのケースへの組付構造を示す側面図で、(b)は(a)のC−C断面図である。
【符号の説明】
3…温度センサ、32、33…リード線、4…ケース、41…貫通孔、5…ブラケット、51…嵌合部分、52…保持部分、56a…第1の溝、57…第1リブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 内部に空間を形成するケース(4)と、前記ケースに形成された貫通孔(41)と、前記貫通孔(41)から挿入され、前記ケース(4)内の空間の物理量を検知するセンサ(3)と、前記センサ(3)を保持する保持部分(52)、および、前記貫通孔(41)に嵌合する嵌合部分(51)を有し、前記ケース(4)に固定されるブラケット(5)と、前記ブラケット(5)の前記嵌合部分(51)の外周面において、軸方向に凹むように形成された溝(56a)と、前記嵌合部分(51)の外周面から外方側に突出し、かつ、周方向に連続して、前記嵌合部分(51)の外周面に一体に成形されるリブ(57)とを備え、前記リブ(57)は軸方向厚さが小さい薄肉状で、かつ、前記リブ(57)の外周形状は前記貫通孔(41)の内周形状とほぼ同じであり、また、前記リブ(57)の外方側への突出高さは、前記嵌合部分(51)の外周面において、前記溝(56a)側から前記溝(56a)の反対側部分(51c)側に向かって高くなるようになっており、前記嵌合部分(51)の前記溝(56a)に前記センサ(3)のリード線(32、33)を配置し、このリード線(32、33)を前記溝(56a)の内壁面、および、前記貫通孔(41)の内壁面に圧接した状態で、前記ブラケット(5)を前記ケース(4)の前記貫通孔(41)に固定していることを特徴とするセンサ取付構造。
【請求項2】 前記貫通孔(41)は円形状であり、前記嵌合部分(51)は円柱形状であり、前記リブ(57)は略環状であることを特徴とする請求項1に記載のセンサ取付構造。
【請求項3】 前記嵌合部分(51)の前記溝(56a)の反対側部分(51c)から外方側に突出し、かつ、軸方向に延びる副リブ(58)が備えられていることを特徴とする請求項1または2に記載のセンサ取付構造。
【請求項4】 請求項1ないし3のいずれか1つに記載のセンサ取付構造を有しており、前記ケース(4)内には、空気と熱交換を行う熱交換器(11、12)を備えており、前記センサ(3)は、前記熱交換器(11、12)により熱交換された空気の温度を検出するものであることを特徴とする熱交換ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平9−193650
【公開日】平成9年(1997)7月29日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−7638
【出願日】平成8年(1996)1月19日
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)