説明

センサ回路

【課題】センサ回路が正常に動作している状態において2つのコンパレータの出力信号が異なる値をとることを抑制することが可能なセンサ回路を提供する。
【解決手段】ストップランプスイッチの信号処理回路8は、磁気センサ4,5からブレーキペダルの踏み込み操作に伴うプランジャピンの移動量に応じた値の入力信号Vin1,Vin2がそれぞれ入力される第1及び第2コンパレータ11,12を備えている。信号処理回路8には、一方のコンパレータ12,11の出力信号Vout2,Vout1の値が反転準すると、このときの他方のコンパレータ11,12の出力信号Vout1,Vout2の値も反転するように該他方のコンパレータ11,12の基準信号Vref1,Vref2の値を予め設定された値に変更する第1及び第2基準信号変更回路13,14が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ素子から入力される入力信号と、基準信号とを比較し、該比較結果に応じた出力信号を出力するセンサ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検出対象の状態を検出するセンサ装置として、例えば特許文献1に記載されているようなセンサ回路を有するものがある。このセンサ回路は、検出対象の状態を検出するセンサ素子から検出対象の状態に応じた値の入力信号が入力されるコンパレータを備えている。コンパレータは、このセンサ素子から入力された入力信号と、検出対象の状態の判断基準となる基準信号とを比較し、該比較結果に応じた出力信号(Hレベル若しくはLレベルの二値化信号)を出力する。センサ装置は、このコンパレータから出力される出力信号に基づいて、検出対象の状態を検出する。
【0003】
また、従来、検出信頼性の確保を目的として、1つの検出対象に対して2つのセンサ素子が設けられる場合がある。この場合、センサ回路には、2つのセンサ素子にそれぞれ対応するコンパレータが設けられる。センサ回路が正常に動作している場合、検出対象の状態の変化に応じて2つのセンサ素子からの入力信号がともに変化するため、検出対象の状態が充分に変化すると2つのコンパレータから同一の値の出力信号が出力される。一方、例えば1つのセンサ素子が故障したり断線したりした場合、検出対象の状態が変化しても一方のセンサ素子からの入力信号が変化しなくなるため、検出対象の状態が充分に変化しても2つのコンパレータからの出力信号は一致しない。センサ装置は、2つのコンパレータから異なる値の出力信号が出力されたことに基づいて、センサ回路の異常を検知する。
【特許文献1】特開2006−303923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、2つのセンサ素子は検出対象に対して個別に設けられるため、検出対象に対するセンサ素子の組み付けばらつきや、センサ素子毎の特性のばらつき等により、検出対象の状態に応じてコンパレータに入力される入力信号にずれが生じる。このため、検出対象の状態の変化に伴いセンサ素子からの入力信号が変化している過渡状態において、2つのコンパレータの出力信号が変化するタイミングにずれが生じ、センサ回路が正常に動作しているにもかかわらず、センサ回路に異常が生じた場合と同様、2つのコンパレータから異なる値の出力信号が出力される場合がある。よって、検出対象が過渡状態であるにもかかわらずセンサ回路に異常があると判断したり、センサ回路に異常があるにもかかわらず検出対象が過渡状態であると判断したりすることがないよう、2つの出力信号に基づいて検出対象の状態を検出する際に出力信号が変化する前の状態や変化するタイミング等を加味するといった複雑なロジックが必要となる。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、1つの検出対象の状態を個別に検出する2つのセンサ素子から入力信号がそれぞれ与えられる2つのコンパレータを備えたセンサ回路において、センサ回路が正常に動作している状態において2つのコンパレータの出力信号が異なる値をとることを抑制することが可能なセンサ回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、検出対象の状態を検出する検出手段から入力される前記検出対象の状態に応じた入力信号と、前記検出対象の状態の判断基準となる基準信号とを比較し、該比較結果に応じた前記検出対象の状態に対応する値の出力信号をそれぞれ出力する2つのコンパレータを備えたセンサ回路であって、一方のコンパレータの出力信号の値が反転したことを検知すると、このときの他方のコンパレータの出力信号の値も反転するように該他方のコンパレータの基準信号の値を予め設定された値に変更する基準信号変更手段を備えることをその要旨とする。
【0007】
本発明によれば、基準信号変更手段により、一方のコンパレータの出力信号の値が反転すると、このときの他方のコンパレータの基準信号の値が予め設定された値に変更されることにより、このときの他方のコンパレータの出力信号の値も反転する。このため、検出手段の組み付けばらつきや、検出手段毎の特性のばらつき等により、2つのコンパレータに入力される入力信号の値にずれが生じた場合でも、2つのコンパレータからの出力信号を同時に切り替えることができる。よって、センサ回路が正常に動作している状態において2つのコンパレータの出力信号が異なる値をとることを抑制することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記基準信号変更手段は、一方のコンパレータの入力信号の値が増大する方向において前記基準信号の値を上回ったことを検知すると、前記2つのコンパレータの基準信号の値を前記基準信号の値よりも低い値に変更する一方、前記一方のコンパレータの入力信号の値が減少する方向において前記基準信号の値を下回ったことを検知すると、前記2つのコンパレータの基準信号の値を前記基準信号の値よりも高い値に変更することをその要旨とする。
【0009】
本発明によれば、基準信号変更手段により、一方のコンパレータの出力信号の値が反転すると他方のコンパレータの基準信号の値が予め設定された値に変更されることにより、このときの他方のコンパレータの出力信号の値も反転する。また、一方のコンパレータの出力信号の値が反転すると一方のコンパレータの基準信号の値が予め設定された値に変更されることにより、一方のコンパレータの入力信号の値と基準信号の値との差が大きくなる。このため、2つのコンパレータからの出力信号を同時に切り替えることができるとともに、例えばノイズ等による入力信号の微小な変化により該入力信号が基準信号の値付近を変動してしまうことを好適に防止することが可能となり、出力信号の値を安定させることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記基準信号変更手段は、一方のコンパレータの入力信号の値が増大する方向において前記基準信号の値を上回ったことを検知すると、前記一方のコンパレータの基準信号の値を前記基準信号の値よりも低い値に変更する一方、前記一方のコンパレータの入力信号の値が減少する方向において前記基準信号の値を下回ったことを検知すると、前記一方のコンパレータの基準信号の値を前記基準信号の値よりも高い値に変更することをその要旨とする。
【0011】
本発明によれば、基準信号変更手段により、一方のコンパレータの出力信号の値が反転すると一方のコンパレータの基準信号の値が予め設定された値に変更されることにより、このときの一方のコンパレータの入力信号の値と基準信号の値との差が大きくなる。このため、他方のコンパレータに対する入力信号の変化にかかわらず、例えばノイズ等による入力信号の微小な変化により一方のコンパレータの該入力信号が基準信号の値付近を変動してしまうことを好適に防止することができる。よって、他方のコンパレータが適切に動作していない状態においても、一方のコンパレータの出力信号の値を安定させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、1つの検出対象の状態を個別に検出する2つのセンサ素子から入力信号がそれぞれ与えられる2つのコンパレータを備えたセンサ回路において、センサ回路が正常に動作している状態において2つのコンパレータの出力信号が異なる値をとることを抑制することが可能なセンサ回路を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を車両に設けられたブレーキペダルの位置検出に用いられるストップランプスイッチに具体化した一実施の形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、運転席前方に設けられた図示しないインストルメントパネルの下方には、ブレーキペダルPが設けられている。ブレーキペダルPは、図示しない車体のフレームに対して、当該ブレーキペダルPの上端部に設けられた支持軸Paを中心として前後方向へ揺動可能に設けられている。ブレーキペダルPの後方(図1において右側)には、ストップランプスイッチ1が設けられている。
【0014】
ストップランプスイッチ1のケース2は、ブレーキペダルPよりも後方で前記フレームに固定されており、ブレーキペダルP側に開口する略箱体状に形成されている。ケース2の内側面には、基板3が固定されるとともに、当該基板3上には検出手段としての第1及び第2磁気センサ4,5が設けられている。ケース2の内側には、検出対象としてのプランジャピン6が摺動可能に設けられている。ケース2の底部2aとプランジャピン6との間には、コイルばねSPが設けられている。プランジャピン6は、コイルばねSPによってブレーキペダルP側へ常に付勢されている。ケース2内において、プランジャピン6には、磁性体7が埋設されている。
【0015】
図1において実線にて示すように、ブレーキペダルPが踏込まれていない状態において、プランジャピン6は、ブレーキペダルPの押圧部Pbに押圧されてケース2の最も内方に位置し、磁性体7は、第1及び第2磁気センサ4,5よりもケース2の底部2a側に配置される。図1において二点鎖線で示すように、車両の速度を減速させる際に運転者によってブレーキペダルPが踏み込み操作されてその押圧部Pbが前方へ変位すると、プランジャピン6は、コイルばねSPに付勢されてケース2の外方へ突出する方向に変位し、磁性体7は、第1及び第2磁気センサ4,5に近づく方向へ移動する。また、運転者による踏み込み操作が解除され、図示しない復帰機構によりその押圧部Pbが後方へ変位すると、プランジャピン6は、ブレーキペダルPの押圧部Pbに押圧されてコイルばねSPの弾性力に抗してケース2の内方に後退し、磁性体7は、最もケース2の底部2aに近い位置に配置される。ストップランプスイッチ1は、第1及び第2磁気センサ4,5に対する磁性体7の位置の変化に基づいてブレーキペダルPの踏み込み操作を検出する。本実施形態では、図1において実線で示すようにブレーキペダルPが踏み込み操作されていない状態におけるケース2の底部2a側の磁性体7の側面の位置を、基準位置G0とし、磁性体7の前記基準位置G0を基点とした変位量を、ブレーキペダルPの操作量Gとする。
【0016】
第1及び第2磁気センサ4,5は、それぞれ図示しない磁気抵抗素子回路が単一のICチップとして集積回路化されたものである。磁気抵抗素子回路は、4つの異方性磁気抵抗素子(いわゆるAMR素子)をブリッジ状に接続した回路である。この異方性磁気抵抗素子は、異方性磁気抵抗効果を有するNi−Co等の強磁性体からなり、その抵抗値は与えられる磁界(正確には、磁束の向き)に応じて変化する。そして、2つの磁気センサ4,5は、それらに与えられる磁界の変化に応じて前記ブリッジ状の回路の中点電位を磁束の検出信号として出力する。ここでは、第1及び第2磁気センサ4,5は、ブレーキペダルPの操作量Gが増大するにつれて、言い換えれば磁性体7が図1において実線にて示す位置から同図1において二点鎖線にて示す位置へ変位するにつれて、高い電位の検出信号(入力信号Vin1,Vin2)をそれぞれ出力するように、磁気抵抗素子回路が設けられている(図4参照)。
【0017】
次に、ストップランプスイッチの電気的構成について説明する。
図2に示すように、ストップランプスイッチ1には、前記第1及び第2磁気センサ4,5に加えて、センサ回路としての信号処理回路8及び踏み込み操作判定ECU9が設けられている。信号処理回路8は、第1及び第2磁気センサ4,5と同様、前記基板3上に実装されている。信号処理回路8の入力側には第1及び第2磁気センサ4,5が電気的に接続されており、出力側には踏み込み操作判定ECU9が電気的に接続されている。即ち、第1及び第2磁気センサ4,5は、信号処理回路8を介して踏み込み操作判定ECU9の入力側に接続されている。踏み込み操作判定ECU9の出力側には、ストップランプ9aとインジケータランプ9bとがそれぞれ電気的に接続されている。
【0018】
図3に示すように、信号処理回路8は、第1及び第2磁気センサ4,5にそれぞれ対応する第1及び第2コンパレータ11,12と、該第1及び第2コンパレータ11,12にそれぞれ対応する第1及び第2基準信号変更回路13,14と、第1及び第2バッファ15,16を備えている。なお、第1及び第2基準信号変更回路13,14が、本発明の基準信号変更手段に相当する。
【0019】
第1コンパレータ11の非反転入力端子には、第1磁気センサ4が接続されており、同第1コンパレータ11の反転入力端子には、第1基準信号変更回路13の出力端子が接続されている。第1コンパレータ11の出力端子は、踏み込み操作判定ECU9に接続されている。第1コンパレータ11の出力端子と踏み込み操作判定ECU9との間には、第1バッファ15の入力端子が接続されている。第1バッファ15の出力端子は、第2基準信号変更回路14の入力端子に接続されている。
【0020】
第2コンパレータ12の非反転入力端子には、第2磁気センサ5が接続されており、同第2コンパレータ12の反転入力端子には、第2基準信号変更回路14の出力端子が接続されている。第2コンパレータ12の出力端子は、踏み込み操作判定ECU9に接続されている。第2コンパレータ12の出力端子と、踏み込み操作判定ECU9との間には、第2バッファ16の入力端子が接続されている。第2バッファ16の出力端子は、第1基準信号変更回路13の入力端子に接続されている。
【0021】
第1コンパレータ11は、第1磁気センサ4から非反転入力端子に入力される入力信号(入力電圧)Vin1の値が、第1基準信号変更回路13から反転入力端子に入力される基準信号(基準電圧)Vref1の値よりも低い値をとる場合、Lレベルの出力信号Vout1を出力する。また、第1コンパレータ11は、第1磁気センサ4から非反転入力端子に入力される入力信号Vin1の値が、第1基準信号変更回路13から反転入力端子に入力される基準信号Vref1の値以上である場合、Hレベルの出力信号Vout1を出力する。
【0022】
第2コンパレータ12は、第2磁気センサ5から非反転入力端子に入力される入力信号(入力電圧)Vin2の値が、第2基準信号変更回路14から反転入力端子に入力される基準信号(基準電圧)Vref2の値よりも低い値をとる場合、Lレベルの出力信号Vout2を出力する。また、第2コンパレータ12は、第2磁気センサ5から非反転入力端子に入力される入力信号Vin2の値が、第2基準信号変更回路14から反転入力端子に入力される基準信号Vref2の値以上である場合、Hレベルの出力信号Vout2を出力する。
【0023】
第1及び第2基準信号変更回路13,14は、ブレーキペダルPが踏み込み操作されているか否かを判断する基準となる基準信号Vref1,Vref2を、対応するコンパレータ11,12の反転入力端子に入力する。また、第1及び第2基準信号変更回路13,14は、一方のコンパレータ12,11の出力信号Vout2,Vout1の値が反転したことを検知すると、そのコンパレータ12,11とは別の他方のコンパレータ11,12の出力信号Vout1,Vout2の値も反転するように該他方のコンパレータ11,12の基準信号Vref1,Vref2の値を変更する。
【0024】
具体的には、第2コンパレータ12の入力信号Vin2の値が増大する方向において基準信号Vref2の値を上回ると、第2コンパレータ12からの出力信号Vout2がLレベルからHレベルに変化する。第1基準信号変更回路13は、自身に入力される第2コンパレータ12からの出力信号Vout2がLレベルからHレベルに変化することにより、該第2コンパレータ12の入力信号Vin2の値が増大する方向において基準信号Vref2の値を上回ったことを検知し、そのときの基準信号Vref1の値よりも低い値に、第1コンパレータ11の基準信号Vref1の値を変更する。また、第2コンパレータ12の入力信号Vin2の値が減少する方向において基準信号Vref2の値を下回ると、第2コンパレータ12からの出力信号Vout2がHレベルからLレベルに変化する。第1基準信号変更回路13は、自身に入力される第2コンパレータ12からの出力信号Vout2がHレベルからLレベルに変化することにより該第2コンパレータ12の入力信号Vin2の値が減少する方向において基準信号Vref2の値を下回ったことを検知し、そのときの基準信号Vref1の値よりも高い値に、第1コンパレータ11の基準信号Vref1の値を変更する。
【0025】
一方、第1コンパレータ11の入力信号Vin1の値が増大する方向において基準信号Vref1の値を上回ると、第1コンパレータ11からの出力信号Vout1がLレベルからHレベルに変化する。第2基準信号変更回路14は、自身に入力される第1コンパレータ11からの出力信号Vout1がLレベルからHレベルに変化することにより該第1コンパレータ11の入力信号Vin1の値が増大する方向において基準信号Vref1の値を上回ったことを検知し、そのときの基準信号Vref2の値よりも低い値に、第2コンパレータ12の基準信号Vref2の値を変更する。また、第1コンパレータ11の入力信号Vin1の値が減少する方向において基準信号Vref1の値を下回ると、第1コンパレータ11からの出力信号Vout1がHレベルからLレベルに変化する。第2基準信号変更回路14は、自身に入力される第1コンパレータ11からの出力信号Vout1がHレベルからLレベルに変化することにより該第1コンパレータ11の入力信号Vin1の値が減少する方向において基準信号Vref1の値を下回ったことを検知し、そのときの基準信号Vref2の値よりも高い値に、第2コンパレータ12の基準信号Vref2の値を変更する。
【0026】
踏み込み操作判定ECU9は、第1及び第2コンパレータ11,12から入力される出力信号Vout1,Vout2の値がともにHレベルの場合、ブレーキペダルPの踏み込み操作が行われていると判断し、前記ストップランプ9aを点灯させる。一方、第1及び第2コンパレータ11,12から入力される出力信号Vout1,Vout2の値がともにLレベルの場合、踏み込み操作判定ECU9は、踏み込み操作が行われていないと判断し、ストップランプ9aを消灯状態に保つ。即ち、踏み込み操作判定ECU9は、第1及び第2磁気センサ4,5の検出信号に基づいて運転者によるブレーキペダルPの踏み込み操作量Gを検出し、ブレーキペダルPがあそびの範囲を越えて踏み込み操作された場合にストップランプ9aを点灯する。また、第1及び第2コンパレータ11,12から入力される出力信号Vout1,Vout2が異なる値を取る場合、踏み込み操作判定ECU9は、踏み込み操作を検出不能と判断し、インジケータランプ9bの点灯若しくは点滅を通じてその旨を報知する。
【0027】
次に、このストップランプスイッチの作用について説明する。
上述したように、第1及び第2磁気センサ4,5は、それぞれ個別に設けられるため、ケース2(基板3)に対する第1及び第2磁気センサ4,5の組み付けばらつきや、第1及び第2磁気センサ4,5毎の特性のばらつき等により、第1及び第2磁気センサ4,5からプランジャピン6の操作量(位置)に応じて信号処理回路8に入力される入力信号Vin1,Vin2にずれが生じる場合がある。
【0028】
本実施の形態のストップランプスイッチ1では、こうした問題を次のようにして解消している。
ここでは、第1及び第2磁気センサ4,5及び信号処理回路8が正常に動作している状態において、例えば、組み付けばらつき等により、第2磁気センサ5から信号処理回路8に入力される入力信号Vin2が、第1磁気センサ4から信号処理回路8に入力される入力信号Vin1の値よりも常に低い値をとる場合を想定する。
【0029】
図4に示すように、ブレーキペダルPの非操作状態(操作量G=0)において、第1及び第2コンパレータ11,12の反転入力端子には、第1の基準値Vth1を有する基準信号Vref1,Vref2が入力される。このとき、第1及び第2コンパレータ11,12の非反転入力端子には、第1及び第2磁気センサ4,5から、第1の基準値Vth1よりも低い値の入力信号Vin1,Vin2が入力される。このため、第1及び第2コンパレータ11,12から、Lレベルの出力信号Vout1,Vout2がそれぞれ出力される。踏み込み操作判定ECU9は、各コンパレータ11,12から出力される出力信号Vout1,Vout2に基づいてブレーキペダルPが操作されていないと判断し、ストップランプ9aを消灯状態に保持する。
【0030】
ブレーキペダルPが踏み込み操作されると、プランジャピン6に固定された磁性体7がケース2から突出する方向へ移動し、第1及び第2磁気センサ4,5から第1及び第2コンパレータ11,12の反転入力端子に付与される電位、即ち入力信号Vin1,Vin2の値が徐々に増加する。そして、ブレーキペダルPがあそびの範囲を越えて操作され、第1磁気センサ4からの入力信号Vin1の値が第1の基準値Vth1を上回ると、第1コンパレータ11からHレベルの出力信号Vout1が出力され、これが第2基準信号変更回路14に入力される。第2基準信号変更回路14は、このHレベルの出力信号Vout1の入力により第1コンパレータ11からの出力信号がLレベルからHレベルに変化したことを検知すると、第2コンパレータ12の基準信号Vref2の値を前記第1の基準値Vth1よりも低い第2の基準値Vth2に変更する。なお、第1及び第2の基準値Vth1,Vth2の値は、これらの値とブレーキペダルPの非操作状態における第1及び第2磁気センサ4,5の出力信号Vout1,Vout2の値との差が、ブレーキペダルPの踏み込み操作のあそびの範囲に対応する距離d(所定の操作量)だけプランジャピン6(磁性体7)が前記基準位置G0から移動するまでの出力信号Vout1,Vout2の値の変化量から逸脱しない程度に予め設定されている。これにより、第2磁気センサ5からの入力信号Vin2の値が第2コンパレータ12の反転入力端子に入力されている第2の基準値Vth2を上回り、第2コンパレータ12からHレベルの出力信号Vout2が出力される。即ち、第1コンパレータ11に入力される入力信号Vin1の値が基準信号Vref1の値を上回るのと略同時に、第2コンパレータ12に入力される入力信号Vin2の値も基準信号Vref2の値を上回ることとなり、2つのコンパレータ11,12からの出力信号が略同時にLレベルからHレベルへ切り替わる。踏み込み操作判定ECU9は、各コンパレータ11,12から出力される出力信号Vout1,Vout2に基づいてブレーキペダルPが操作されたと判断し、ストップランプ9aを点灯させる。
【0031】
また、このとき、第2コンパレータ12からHレベルの出力信号Vout2が第1基準信号変更回路13に入力される。第1基準信号変更回路13は、このHレベルの出力信号Vout2の入力により第2コンパレータ12からの出力信号がLレベルからHレベルに変化したことを検知すると、第1コンパレータ11の基準信号Vref1の値を前記第1の基準値Vth1よりも低い第2の基準値Vth2に変更する。なお、第1及び第2基準信号変更回路13,14からこれらに対応するコンパレータ11,12に入力される第2の基準値Vth2は、互いに等しい値に設定されているのが好ましい。これにより、このときの第1磁気センサ4からの入力信号Vin1の値と、第1コンパレータ11の反転入力端子に入力される電位、即ち基準信号Vref1の値との差が大きくなる。このため、例えばノイズ等による入力信号Vin1,Vin2の微小な変化により該入力信号Vin1,Vin2が基準信号Vref1,Vref2の値付近を変動し、出力信号Vout1,Vout2の値が変化してしまうことが好適に抑制される。
【0032】
この状態においてブレーキペダルPの踏み込み操作が解除されると、同ブレーキペダルPの基準位置G0への復帰に伴い、プランジャピン6に固定された磁性体7がコイルばねSPの弾性力に抗してケース2に侵入する方向へ移動し、第1及び第2磁気センサ4,5から第1及び第2コンパレータ11,12の非反転入力端子に付与される電位、即ち入力信号Vin1,Vin2の値が徐々に低下する。そして、ブレーキペダルPの操作量が遊びの範囲内になり、第2磁気センサ5からの入力信号Vin2の値が第2コンパレータ12の反転入力端子に入力される第2の基準値Vth2を下回ると、第2コンパレータ12からLレベルの出力信号Vout2が出力され、これが第1基準信号変更回路13に入力される。第1基準信号変更回路13は、このLレベルの出力信号Vout2の入力により第2コンパレータ12からの出力信号がHレベルからLレベルに変化したことを検知すると、第1コンパレータ11の基準信号Vref1の値を前記第2の基準値Vth2よりも高い第1の基準値Vth1に変更する。これにより、このときの第1磁気センサ4からの入力信号Vin1の値が第1コンパレータ11の反転入力端子に入力される第1の基準値Vth1を下回り、第1コンパレータ11からもLレベルの出力信号Vout1が出力される。即ち、第2コンパレータ12に入力される入力信号Vin2の値が基準信号Vref2の値を下回るのと同時に、第1コンパレータ11に入力される入力信号Vin1の値も基準信号Vref1を下回ることとなり、2つのコンパレータ11,12からの出力信号が略同時にHレベルからLレベルへ切り替わる。踏み込み操作判定ECU9は、各コンパレータ11,12から出力される出力信号Vout1,Vout2を受けて、ブレーキペダルPの踏み込み操作が解除されたと判断し、ストップランプ9aを消灯させる。
【0033】
また、このとき、第1コンパレータ11からLレベルの出力信号Vout1が第2基準信号変更回路14に入力される。第2基準信号変更回路14は、このLレベルの出力信号Vout1の入力により第1コンパレータ11からの出力信号がHレベルからLレベルに変化したことを検知すると、第2コンパレータ12の基準信号Vref2の値を前記第2の基準値Vth2よりも高い第1の基準値Vth1に変更する。これにより、このときの第2磁気センサ5からの入力信号Vin2の値と、第2コンパレータ12の反転入力端子に入力される電位、即ち基準信号Vref2の値との差が大きくなる。このため、このような場合においても、例えばノイズ等による入力信号Vin1,Vin2の微小な変化により該入力信号Vin1,Vin2が基準信号の値付近を変動し、出力信号Vout1,Vout2の値が変化してしまうことが好適に抑制される。
【0034】
従って、第1及び第2磁気センサ4,5の組み付けばらつきや、第1及び第2磁気センサ4,5毎の特性のばらつき等により、2つのコンパレータ11,12に入力される入力信号Vin1,Vin2の値にずれが生じた場合でも、2つのコンパレータ11,12からの出力信号Vout1,Vout2がLレベルからHレベルへ、或いはHレベルからLレベルへ同時に切り替わる。このため、第1及び第2磁気センサ4,5及び信号処理回路8が正常に動作している状態において2つのコンパレータ11,12の出力信号が異なる値をとることはないため、簡単に故障判定ができる。
【0035】
ここで、例えば故障や断線によって、1つの磁気センサ(ここでは第2磁気センサ5)からコンパレータ(ここでは第2コンパレータ12)に入力される入力信号Vin2の値が常に0となっている場合を想定する。
【0036】
この状態においてブレーキペダルPが踏み込み操作されると、プランジャピン6に固定された磁性体7がケース2から突出する方向へ移動し、第1磁気センサ4から信号処理回路8に入力される入力信号Vin1の値が徐々に増加する。そして、ブレーキペダルPが所定の操作量dだけ操作され、第1磁気センサ4からの入力信号Vin1の値が第1の基準値Vth1を上回ると、第1コンパレータ11からHレベルの出力信号Vout1が出力され、これが第2基準信号変更回路14に入力される。第2基準信号変更回路14は、このHレベルの出力信号Vout1の入力により第1コンパレータ11からの出力信号がLレベルからHレベルに変化したことを検知すると、第2コンパレータ12の基準信号Vref2の値を前記第1の基準値Vth1よりも低い第2の基準値Vth2に変更する。この場合、第2コンパレータ12の非反転入力端子の値は、第2コンパレータ12の反転入力端子に入力されている基準信号Vref2の値を下回るため、第2コンパレータ12からはLレベルの出力信号Vout2が出力される。即ち、2つのコンパレータ11,12から異なる値の出力信号が出力される。踏み込み操作判定ECU9は、各コンパレータ11,12から出力される出力信号Vout1,Vout2に基づいてブレーキペダルPの操作位置の検出が不能と判断し、その旨を前記インジケータランプ9bを通じて報知する。
【0037】
次に、上記実施の形態の作用効果を以下に記載する。
(1)第1及び第2基準信号変更回路13,14により、一方のコンパレータ12,11の出力信号Vout2,Vout1の値が反転すると、このときの他方のコンパレータ11,12の基準信号Vref1,Vref2の値が予め設定された値に変更されることにより、このときの他方のコンパレータ11,12の出力信号Vout1,Vout2の値も反転する。このため、磁気センサ4,5の組み付けばらつきや、磁気センサ4,5毎の特性のばらつき等により、2つのコンパレータ11,12に入力される入力信号Vin1,Vin2の値にずれが生じた場合でも、2つのコンパレータ11,12からの出力信号Vout1,Vout2を同時に切り替えることができる。よって、第1及び第2磁気センサ4,5及び信号処理回路8が正常に動作している状態において2つのコンパレータ11,12の出力信号Vout1,Vout2が異なる値をとることを抑制することができる。
【0038】
(2)第1及び第2基準信号変更回路13,14により、一方のコンパレータ12,11の出力信号Vout2,Vout1の値が反転すると他方のコンパレータ11,12の基準信号Vref1,Vref2の値が予め設定された値に変更されることにより、このときの他方のコンパレータ11,12の出力信号Vout1,Vout2の値も反転する。また、一方のコンパレータ12,11の出力信号Vout2,Vout1の値が反転すると該一方のコンパレータ12,11の基準信号Vref2,Vref1の値が予め設定された値に変更されることにより、一方のコンパレータ12,11の入力信号Vin2,Vin1の値と基準信号Vref2,Vref1との差が大きくなる。このため、2つのコンパレータ11,12からの出力信号Vout1,Vout2を同時に切り替えることができるとともに、例えばノイズ等による入力信号Vin1,Vin2の微小な変化により該入力信号Vin1,Vin2が基準信号Vref1,Vref2の値付近を変動してしまうことを好適に防止することが可能となり、出力信号Vout1,Vout2の値を安定させることができる。
【0039】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。本実施の形態は、上述した第1及び第2基準信号変更回路13,14に加えて、第1コンパレータ11からの出力信号の変化に基づいて、対応する第1コンパレータ11の基準信号の値を変更する第3基準信号変更回路21と、第2コンパレータ12からの出力信号の変化に基づいて、対応する第2コンパレータ12の基準信号の値を変更する第4基準信号変更回路22が設けられている。そして、一方の磁気センサ4,5が故障したり断線したりした場合は、他方の磁気センサ5,4のみの出力信号に基づいてブレーキペダルPの踏み込み操作の検出を継続するようになっている点で前記第1の実施の形態と異なる。従って、前記第1の実施の形態と同様の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。なお、第1〜第4基準信号変更回路13,14,21,22が、基準信号変更手段に相当する。
【0040】
図5に示すように、第3基準信号変更回路21の入力端子は、第1コンパレータ11の出力端子と踏み込み操作判定ECU9との間に接続されており、第3基準信号変更回路21の出力端子は、第1コンパレータ11の反転入力端子に接続されている。第4基準信号変更回路22の入力端子は、第2コンパレータ12の出力端子と踏み込み操作判定ECU9との間に接続されており、第4基準信号変更回路22の出力端子は、第2コンパレータ12の反転入力端子に接続されている。
【0041】
第3基準信号変更回路21は、自身に入力される第1コンパレータ11からの出力信号Vout1がLレベルからHレベルに変化することにより該第1コンパレータ11の入力信号Vin1の値が増大する方向において基準信号Vref1の値を上回ったことを検知すると、そのときの基準信号Vref1の値よりも低い値に、第1コンパレータ11の基準信号Vref1の値を変更する。また、第3基準信号変更回路21は、自身に入力される第1コンパレータ11からの出力信号Vout1がHレベルからLレベルに変化することにより該第1コンパレータ11の入力信号Vin1の値が減少する方向において基準信号Vref1の値を下回ったことを検知すると、そのときの基準信号Vref1の値よりも高い値に、第1コンパレータ11の基準信号Vref1の値を変更する。
【0042】
一方、第4基準信号変更回路22は、自身に入力される第2コンパレータ12からの出力信号Vout2がLレベルからHレベルに変化することにより該第2コンパレータ12の入力信号Vin2の値が増大する方向において基準信号Vref2の値を上回ったことを検知すると、そのときの基準信号Vref2の値よりも低い値に、第2コンパレータ12の基準信号Vref2の値を変更する。また、第4基準信号変更回路22は、自身に入力される第2コンパレータ12からの出力信号Vout2がHレベルからLレベルに変化することにより該第2コンパレータ12の入力信号Vin2の値が減少する方向において基準信号Vref2の値を下回ったことを検知すると、そのときの基準信号Vref2の値よりも高い値に、第2コンパレータ12の基準信号Vref2の値を変更する。
【0043】
踏み込み操作判定ECU9は、第1及び第2コンパレータ11,12から入力される出力信号Vout1,Vout2が異なる値を取る場合、一方の磁気センサ4,5が故障していると判断し、インジケータランプ9bの点灯若しくは点滅を通じてその旨を報知するとともに、正常に動作している側のコンパレータ11から入力される出力信号Vout1,Vout2のみに基づいてブレーキペダルPの踏み込み操作の検出を継続する。
【0044】
次に、このストップランプスイッチの作用について説明する。
ここでは、第1及び第2磁気センサ4,5及び信号処理回路8aが正常に動作している状態において、例えば、組み付けばらつき等により、第2磁気センサ5から信号処理回路8aに入力される入力信号Vin2が、第1磁気センサ4から信号処理回路8aに入力される入力信号Vin1の値よりも常に低い値をとる場合を想定する。
【0045】
図6に示すように、ブレーキペダルPの非操作状態(操作量G=0)において、第1及び第2コンパレータ11,12の反転入力端子には、第1の基準値Vth1を有する基準信号Vref1,Vref2が入力される。このとき、第1及び第2コンパレータ11,12の非反転入力端子には、第1及び第2磁気センサ4,5から、第1の基準値Vth1よりも低い値の入力信号Vin1,Vin2が入力される。このため、第1及び第2コンパレータ11,12から、Lレベルの出力信号Vout1,Vout2がそれぞれ出力される。踏み込み操作判定ECU9は、各コンパレータ11,12から出力される出力信号Vout1,Vout2に基づいてブレーキペダルPが操作されていないと判断し、ストップランプ9aを消灯状態に保持する。
【0046】
ブレーキペダルPが踏み込み操作されると、プランジャピン6に固定された磁性体7がケース2から突出する方向へ移動し、第1及び第2磁気センサ4,5から第1及び第2コンパレータ11,12の非反転入力端子に付与される電位、即ち入力信号Vin1,Vin2の値が徐々に増加する。そして、ブレーキペダルPが所定の操作量dだけ操作され、第1磁気センサ4からの入力信号Vin1の値が第1の基準値Vth1を上回ると、第1コンパレータ11からHレベルの出力信号Vout1が出力され、これが第2基準信号変更回路14と第3基準信号変更回路21とに入力される。第2基準信号変更回路14は、このHレベルの出力信号Vout1の入力により第1コンパレータ11からの出力信号がLレベルからHレベルに変化したことを検知すると、第2コンパレータ12の基準信号Vref2の値を前記第1の基準値Vth1よりも低い第3の基準値Vth3に変更する。また、第3基準信号変更回路21は、Hレベルの出力信号Vout1の入力により第1コンパレータ11からの出力信号がLレベルからHレベルに変化したことを検知すると、第1コンパレータ11の基準信号Vref1の値を前記第1の基準値Vth1よりも低い第3の基準値Vth3に変更する。なお、第3の基準値Vth3の値は、第1の基準値Vth1と第2の基準値Vth2の値との間に設定されている。また、第3及び第4基準信号変更回路21,22からこれらに対応するコンパレータ11,12に入力される第3の基準値Vth3は、互いに等しい値に設定されているのが好ましい。これにより、第2磁気センサ5からの入力信号Vin2の値が第2コンパレータ12の反転入力端子に入力されている基準信号Vref2の値を上回り、第2コンパレータ12からHレベルの出力信号Vout2が出力される。即ち、第1コンパレータ11に入力される入力信号Vin1の値が基準信号Vref1の値を上回るのと略同時に、第2コンパレータ12に入力される入力信号Vin2の値も基準信号Vref2の値を上回ることとなり、2つのコンパレータ11,12からの出力信号が略同時にLレベルからHレベルへ切り替わる。踏み込み操作判定ECU9は、各コンパレータ11,12から出力される出力信号Vout1,Vout2に基づいてブレーキペダルPが操作されたと判断し、ストップランプ9aを点灯させる。
【0047】
また、このとき、第2コンパレータ12からHレベルの出力信号Vout2が第1基準信号変更回路13と第4基準信号変更回路22とに入力される。第1基準信号変更回路13は、このHレベルの出力信号Vout2の入力により第2コンパレータ12からの出力信号がLレベルからHレベルに変化したことを検知すると、第1コンパレータ11の基準信号Vref1の値を前記第3の基準値Vth3よりも低い第2の基準値Vth2に変更する。また、第4基準信号変更回路22は、Hレベルの出力信号Vout2の入力により第2コンパレータ12からの出力信号がLレベルからHレベルに変化したことを検知すると、第2コンパレータ12の基準信号Vref2の値を前記第3の基準値Vth3よりも低い第2の基準値Vth2に変更する。これにより、このときの第1磁気センサ4からの入力信号Vin1の値と、第1コンパレータ11の反転入力端子に入力される電位、即ち基準信号Vref1の値との差が大きくなる。このため、例えばノイズ等による入力信号Vin1,Vin2の微小な変化により該入力信号Vin1,Vin2が基準信号Vref1,Vref2の値を超えて変動してしまうことが好適に抑制される。
【0048】
この状態においてブレーキペダルPの踏み込み操作が解除されると、プランジャピン6に固定された磁性体7がケース2に侵入する方向へ移動し、第1及び第2磁気センサ4,5から第1及び第2コンパレータ11,12の非反転入力端子に付与される電位、即ち入力信号Vin1,Vin2の値が徐々に低下する。そして、ブレーキペダルPの操作量が所定の操作量dよりも小さくなり、第2磁気センサ5からの入力信号Vin2の値が第2コンパレータ12の反転入力端子に入力される第2の基準値Vth2を下回ると、第2コンパレータ12からLレベルの出力信号Vout2が出力され、これが第1基準信号変更回路13と第4基準信号変更回路22とに入力される。第1基準信号変更回路13は、このLレベルの出力信号Vout2の入力により第2コンパレータ12からの出力信号がHレベルからLレベルに変化したことを検知すると、第1コンパレータ11の基準信号Vref1の値を前記第2の基準値Vth2よりも高い第3の基準値Vth3に変更する。また、第4基準信号変更回路22は、Lレベルの出力信号Vout2の入力により第2コンパレータ12からの出力信号がHレベルからLレベルに変化したことを検知すると、第2コンパレータ12の基準信号Vref2の値を前記第2の基準値Vth2よりも高い第3の基準値Vth3に変更する。これにより、このときの第1磁気センサ4からの入力信号Vin1の値が第1コンパレータ11の反転入力端子に入力される第1の基準値Vth1を下回り、第1コンパレータ11からもLレベルの出力信号Vout1が出力される。即ち、第2コンパレータ12に入力される入力信号Vin2の値が基準信号Vref2の値を下回るのと同時に、第1コンパレータ11に入力される入力信号Vin1の値も基準信号Vref1の値を下回ることとなり、2つのコンパレータ11,12からの出力信号が略同時にHレベルからLレベルへ切り替わる。踏み込み操作判定ECU9は、各コンパレータ11,12から出力される出力信号Vout1,Vout2を受けて、ブレーキペダルPの踏み込み操作が解除されたと判断し、ストップランプ9aを消灯させる。
【0049】
また、このとき、第1コンパレータ11からLレベルの出力信号Vout1が第2基準信号変更回路14と第3基準信号変更回路21とに入力される。第2基準信号変更回路14は、このLレベルの出力信号Vout1の入力により第1コンパレータ11からの出力信号がHレベルからLレベルに変化したことを検知すると、第2コンパレータ12の基準信号Vref2の値を前記第3の基準値Vth3よりも高い第1の基準値Vth1に変更する。また、第3基準信号変更回路21は、Lレベルの出力信号Vout1の入力により第1コンパレータ11からの出力信号がHレベルからLレベルに変化したことを検知すると、第1コンパレータ11の基準信号Vref1の値を前記第3の基準値Vth3よりも低い第1の基準値Vth1に変更する。これにより、このときの第2磁気センサ5からの入力信号Vin2の値と、第2コンパレータ12の反転入力端子に入力される電位、即ち基準信号Vref2の値との差が大きくなる。このため、このような場合においても、例えばノイズ等による入力信号Vin1,Vin2の微小な変化により該入力信号Vin1,Vin2が基準信号Vref1,Vref2の値付近を変動してしまうことが好適に抑制される。
【0050】
従って、第1及び第2磁気センサ4,5の組み付けばらつきや、第1及び第2磁気センサ4,5毎の特性のばらつき等により、2つのコンパレータ11,12に入力される入力信号Vin1,Vin2の値にずれが生じた場合でも、2つのコンパレータ11,12からの出力信号が同時に切り替わる。このため、第1及び第2磁気センサ4,5及び信号処理回路8aが正常に動作している状態において2つのコンパレータ11,12の出力信号が異なる値をとることはない。
【0051】
ここで、例えば故障や断線によって、1つの磁気センサ(ここでは第2磁気センサ5)からコンパレータ(ここでは第2コンパレータ12)に入力される入力信号Vin2の値が常に0となっている場合を想定する。
【0052】
図7に示すように、この状態においてブレーキペダルPが踏み込み操作されると、プランジャピン6に固定された磁性体7がケース2から突出する方向へ移動し、第1磁気センサ4から信号処理回路8aに入力される入力信号Vin1の値が徐々に増加する。そして、ブレーキペダルPが所定の操作量dだけ操作され、第1磁気センサ4からの入力信号Vin1の値が第1の基準値Vth1を上回ると、第1コンパレータ11からHレベルの出力信号Vout1が出力され、第2基準信号変更回路14と第3基準信号変更回路21とに入力される。第2基準信号変更回路14は、このHレベルの出力信号Vout1の入力により第1コンパレータ11からの出力信号がLレベルからHレベルに変化したことを検知すると、第2コンパレータ12の基準信号Vref2の値を前記第1の基準値Vth1よりも低い第3の基準値Vth3に変更する。この場合、第2コンパレータ12の非反転入力端子の値は、第2コンパレータ12の反転入力端子に入力されている基準信号Vref2の値を下回るため、第2コンパレータ12からはLレベルの出力信号Vout2が出力される。即ち、2つのコンパレータ11,12から異なる値の出力信号が出力される。踏み込み操作判定ECU9は、各コンパレータ11,12から出力される出力信号Vout1,Vout2に基づいて一方の磁気センサ5が故障していると判断し、その旨を前記インジケータランプ9bを通じて報知する。また、踏み込み操作判定ECU9は、第1コンパレータ11から出力される出力信号Vout1に基づいてブレーキペダルPが操作されたと判断し、ストップランプ9aを点灯させる。
【0053】
また、第3基準信号変更回路21は、Hレベルの出力信号Vout1の入力により第1コンパレータ11からの出力信号がLレベルからHレベルに変化したことを検知すると、第1コンパレータ11の基準信号Vref1の値を前記第1の基準値Vth1よりも低い第1の基準信号の値Vth3に変更する。このため、このときに第1コンパレータ11に入力される入力信号Vin1の値と同第1コンパレータ11の基準信号Vref1の値との差が大きくなる。このため、例えばノイズ等による入力信号Vin1の微小な変化により第1コンパレータ11に対する入力信号Vin1が基準信号Vref1の値を超えて変動してしまうことが好適に抑制される。
【0054】
この状態においてブレーキペダルPの踏み込み操作が解除されると、プランジャピン6に固定された磁性体7がケース2に侵入する方向へ移動し、第1磁気センサ4から第1コンパレータ11の非反転入力端子に付与される電位、即ち入力信号Vin1の値が徐々に低下する。そして、ブレーキペダルPの操作量が所定の操作量dよりも小さくなり、第1磁気センサ4からの入力信号Vin1の値が第1コンパレータ11の反転入力端子に入力される第3の基準値Vth3を下回ると、第1コンパレータ11からLレベルの出力信号Vout1が出力され、これが第2基準信号変更回路14と第3基準信号変更回路21とに入力される。第2基準信号変更回路14は、このLレベルの出力信号Vout1の入力により第1コンパレータ11からの出力信号がHレベルからLレベルに変化したことを検知すると、第2コンパレータ12の基準信号Vref2の値を前記第3の基準値Vth3よりも高い第1の基準値Vth1に変更する。また、第3基準信号変更回路21は、Lレベルの出力信号Vout1の入力により第1コンパレータ11からの出力信号がHレベルからLレベルに変化したことを検知すると、第1コンパレータ11の基準信号Vref1の値を前記第3の基準値Vth3よりも高い第1の基準値Vth1に変更する。このため、このときに第1コンパレータ11に入力される入力信号Vin1の値と同第1コンパレータ11の基準信号Vref1の値との差が大きくなる。このため、この場合においても、例えばノイズ等による入力信号Vin1の微小な変化により第1コンパレータ11に対する入力信号Vin1が基準信号Vref1の値を超えて変動してしまうことが好適に抑制される。
【0055】
従って、このように一方のコンパレータ(この場合、第2コンパレータ12)が故障したり断線したりした場合でも、他方のコンパレータ(この場合、第1コンパレータ11)から出力される出力信号Vout1が安定する。よって、一方の磁気センサ4,5の故障や断線によって一方のコンパレータ11,12からの出力信号Vout1,Vout2が適切な値となっていない場合に、他方の磁気センサ5,4のみの出力信号に基づいてブレーキペダルPの踏み込み操作の検出を継続するようになっている場合においても、踏み込み操作判定ECU9によるブレーキペダルPの操作位置(操作量)の検出が安定する。
【0056】
次に、上記実施の形態の作用効果を以下に記載する。
(1)第3及び第4基準信号変更回路21,22により、一方のコンパレータ11,12の出力信号Vout1,Vout2の値が反転すると同一方のコンパレータ11,12の基準信号Vref1,Vref2の値が予め設定された値に変更されることにより、このときの一方のコンパレータ11,12の入力信号Vin1,Vin2の値と基準信号Vref1,Vref2の値との差が大きくなる。このため、他方のコンパレータ12,11に対する入力信号Vin2,Vin1の変化にかかわらず、例えばノイズ等による入力信号Vin1,Vin2の微小な変化により一方のコンパレータ11,12の該入力信号Vin1,Vin2が基準信号Vref1,Vref2の値付近を変動してしまうことを好適に防止することができる。よって、他方のコンパレータ12,11が適切に動作していない状態においても、一方のコンパレータ11,12の出力信号Vout1,Vout2の値を安定させることができる。従って、一方の磁気センサ4,5の故障や断線によって一方のコンパレータ11,12からの出力信号Vout1,Vout2が適切な値となっていない場合に、他方の磁気センサ5,4のみの出力信号に基づいてブレーキペダルPの踏み込み操作の検出を継続するようになっている場合においても、踏み込み操作判定ECU9によるブレーキペダルPの操作位置の検出を安定させることができる。
【0057】
尚、本実施の形態は、以下のように変更してもよい。
・上記第2の実施の形態では、第1の基準値Vth1と第2の基準値Vth2との間に第3の基準値Vth3を設定したが、このような態様に限定されない。例えば、第3の基準値Vth3を省略し、第1の基準値Vth1若しくは第2の基準値Vth2に設定するようにしてもよい。
【0058】
・上記第1及び第2の実施の形態では、磁気センサ4,5及び信号処理回路8,8aが正常に動作している状態において、一方のコンパレータ11,12の出力信号の値が反転した場合に2つのコンパレータ11,12の基準信号の値を変更するようにしたが、このような態様に限定されない。例えば、一方のコンパレータ11,12の出力信号の値が反転した場合に、他方のコンパレータ12,11のみの基準信号の値を変更するようにしてもよい。
【0059】
・上記実施の形態では、磁気センサ4,5からプランジャピン6の位置に応じて入力される入力信号Vin1,Vin2を二値化するコンパレータ11,12を備えた信号処理回路8,8aに具体化したが、このような態様に限定されない。例えば、歪みゲージから例えば部材の変形量に応じて入力される入力信号を二値化するコンパレータを備えたセンサ回路に具体化してもよい。
【0060】
・上記実施の形態では、ブレーキペダルPの位置を検出するストップランプスイッチ1に具体化したが、例えば、車両ドアの開閉状態を検出するカーテシランプスイッチや、シートベルト装置のバックルスイッチ等、他の車載機器や、車載機器以外のスイッチに具体化してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】ブレーキランプスイッチの概略図。
【図2】ブレーキランプスイッチの電気的構成を示すブロック図。
【図3】第1の実施の形態の信号処理回路の回路図。
【図4】第1の実施の形態の信号処理回路の作用を説明するための説明図。
【図5】第2の実施の形態の信号処理回路の回路図。
【図6】第2の実施の形態の信号処理回路の作用を説明するための説明図。
【図7】第2の実施の形態の信号処理回路の作用を説明するための説明図。
【符号の説明】
【0062】
4,5…検出手段としての第1及び第2磁気センサ、6…検出対象としてのプランジャピン、8,8a…センサ回路としての信号処理回路、11,12…コンパレータ、13,14,21,22…基準信号変更手段を構成する第1及び第2基準信号変更回路、Vin1,Vin2…入力信号、Vout1,Vout2…出力信号、Vref1,Vref2…基準信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象の状態を検出する検出手段から入力される前記検出対象の状態に応じた入力信号と、前記検出対象の状態の判断基準となる基準信号とを比較し、該比較結果に応じた前記検出対象の状態に対応する値の出力信号をそれぞれ出力する2つのコンパレータを備えたセンサ回路であって、
一方のコンパレータの出力信号の値が反転したことを検知すると、このときの他方のコンパレータの出力信号の値も反転するように該他方のコンパレータの基準信号の値を予め設定された値に変更する基準信号変更手段を備えることを特徴とするセンサ回路。
【請求項2】
前記基準信号変更手段は、
一方のコンパレータの入力信号の値が増大する方向において前記基準信号の値を上回ったことを検知すると、前記2つのコンパレータの基準信号の値を前記基準信号の値よりも低い値に変更する一方、
前記一方のコンパレータの入力信号の値が減少する方向において前記基準信号の値を下回ったことを検知すると、前記2つのコンパレータの基準信号の値を前記基準信号の値よりも高い値に変更することを特徴とする請求項1に記載のセンサ回路。
【請求項3】
前記基準信号変更手段は、
一方のコンパレータの入力信号の値が増大する方向において前記基準信号の値を上回ったことを検知すると、前記一方のコンパレータの基準信号の値を前記基準信号の値よりも低い値に変更する一方、
前記一方のコンパレータの入力信号の値が減少する方向において前記基準信号の値を下回ったことを検知すると、前記一方のコンパレータの基準信号の値を前記基準信号の値よりも高い値に変更することを特徴とする請求項1に記載のセンサ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−281866(P2009−281866A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−134330(P2008−134330)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】