説明

センサ支持機構、及び、当該センサ支持機構を用いる紙葉類取扱装置

【課題】センサの位置ズレを抑制する。
【解決手段】略全域が堅い領域50Aとして形成された基準側成形フレーム51と、部分的に堅い領域と変形し易い領域50Bとに区画されており、基準側成形フレームとともに搬送路16を構成する検知側成形フレーム52と、検知側成形フレーム及び検知側成形フレームの一方又は双方に配置され、周囲に軽度の曲げ応力しか与えない第1種センサ(光学センサ22、磁気センサ23)と、基準側成形フレーム及び検知側成形フレームの双方に分断されて配置され、周囲に第1種センサよりも強度の曲げ応力を与える第2種センサ(厚みセンサ21)とを有し、第1種センサは、堅い領域に配置されており、第2種センサは、センサモジュールとして形成されているとともに、変形し易い領域に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサを支持するセンサ支持機構、及び、当該センサ支持機構を用いる紙葉類取扱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙葉類を取り扱う紙葉類取扱装置としては、例えば、自動取引装置(ATM)や通帳記帳機、発券機、プリンタ等がある。自動取引装置は、金融機関や流通機関等に設置され、紙幣を入出金するための装置である。通帳記帳機は、主に金融機関に設置され、通帳を記帳するための装置である。発券機は、交通機関や流通機関等に設置され、チケットを発行するための装置である。なお、紙葉類は、紙幣やチケット等のように一枚のシート状のものもあれば、通帳のように冊子状のものもある。
【0003】
紙葉類取扱装置は、各種のセンサが搬送路上に設けられており、紙葉類を搬送路に沿って搬送させながら、各種のセンサによって紙葉類に関する様々な情報(以下、「紙葉類情報」と称する)を取得する。例えば、紙葉類取扱装置の一種である自動取引装置は、光学センサや、磁気センサ、厚みセンサ等が搬送路上に設けられている。
【0004】
光学センサは、紙葉類情報として、紙幣の先頭位置情報や紙幣の模様情報等を取得するセンサである。光学センサは、発光側センサと受光側センサの2つのセンサによって構成されている。光学センサは、発光側センサが搬送路に向けて射出した光を受光側センサで検知して、搬送される紙幣による光の遮断や反射光等に応じて、紙幣の先頭位置情報や紙幣の模様情報等を取得する。
【0005】
磁気センサは、紙葉類情報として、紙幣の磁気記録情報を取得するセンサである。磁気センサは、搬送される紙幣に書き込まれた磁気記録情報を読み取ることによって、紙幣の磁気記録情報を取得する。
【0006】
厚みセンサは、紙葉類情報として、紙幣の厚み情報を取得するセンサである。厚みセンサは、搬送路を構成する、対向して配置された2つのフレームに、互いに対向して配置された2つのローラと、2つのローラの一方を他方に押し付ける押圧用スプリングと、一方のローラの変位量を検知する変位センサとを有する構成となっている。厚みセンサは、変位センサが、一方のローラの変位量を検知することによって、紙幣の厚み情報を取得する。
【0007】
なお、厚みセンサの一方のローラは、搬送される紙葉類の厚みに応じて位置が変動する、回転自在なローラである。以下、「一方のローラ」を「検知ローラ」と称する。また、厚みセンサの他方のローラは、位置が固定された、回転自在なローラである。厚みセンサの他方のローラは、検知ローラが押圧用スプリングによって押し付けられており、検知ローラと他方のローラとの接触位置が検知ローラの変位の基準位置となる。以下、「他方のローラ」を「基準ローラ」と称する。係る構成において、押圧用スプリングは、検知ローラを基準ローラに押し付ける。そして、変位センサは、搬送された紙幣の厚みに応じて検知ローラが変動すると、その検知ローラの変位量を検知する。
【0008】
なお、厚みセンサは、検知ローラを基準ローラに押し付けるための押圧用スプリングを有しているため、周囲のフレームを固定する必要がある。そのため、厚みセンサは、通常、周囲のフレームを固定するロック用スプリングとロックレバーとを備えており、ロック用スプリングの張力を利用して、ロックレバーで、周囲のフレームを接近方向に押圧する構成となっている。
【0009】
このような構成の厚みセンサは、周囲のフレームに強度の曲げ応力を与える。これに対して、光学センサ及び磁気センサは、スプリングを有していないため、周囲のフレームに軽度の曲げ応力しか与えない(若しくは、ほとんど曲げ応力を与えない)。
【0010】
これらの光学センサ、磁気センサ、及び厚みセンサは、例えば、紙葉類鑑別ユニットとして自動取引装置に一括して取り付けできるように、一体化されたセンサ支持機構に取り付けられる(例えば、特許文献1参照)。なお、特許文献1では、「紙葉類鑑別ユニット」を「紙幣鑑別装置」と称している。
【0011】
特許文献1に開示されたセンサ支持機構は、光学センサ、磁気センサ、及び厚みセンサが、搬送路を構成する、対向して配置された2つのフレームに、取り付けられた構成となっている。
【0012】
なお、特許文献2には、センサ支持機構の他の例が開示されている。特許文献2に開示されたセンサ支持機構は、紙幣を通過させるスリットが一体成形によって形成されたフレームを有しており、そのスリットに紙幣の通過の有無を検出する2つの第1磁気センサと、同じスリット内の異なる位置にて2つの第1磁気センサの磁気回路の磁気状態を検出する1つの第2磁気センサとを有する構成となっている。特許文献2に開示されたセンサ支持機構は、2つの第1磁気センサの出力と1つの第2磁気センサとの出力の差を標準データと比較することによって、通過紙幣を鑑別する。
【0013】
また、特許文献3にも、センサ支持機構のさらに他の例が開示されている。特許文献3に開示されたセンサ支持機構は、紙幣を通過させるスリットが一体成形によって形成されたフレームを有しており、そのスリットに紙幣の通過の有無を検出する2つの磁気センサを有する構成となっている。特許文献3に開示されたセンサ支持機構は、2つの磁気センサの出力と標準データとを比較することによって、通過紙幣を鑑別する。なお、スリットが形成されたフレームは、スリットがフレームのほぼ重心位置に配置されており、スリットの延長線上の側部で周囲の部材に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平7−14048号公報(図1、図2)
【特許文献2】特開昭61−28185号公報(第2図、第3図)
【特許文献3】特開昭61−202298号公報(第2図、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献1に開示されたセンサ支持機構は、搬送路を構成する2つのフレームが、高い剛性を得るために、ステンレススチール等の金属材で構成されている。
しかしながら、金属材で構成されたフレームは、高価であり、また、各センサの所定の位置への位置合わせ調整が困難である。また、金属材で構成されたフレームは、振動をセンサに伝達し易いため、特に、厚みセンサの検出情報に振動ノイズが混入し易い。
そのため、特許文献1に開示されたセンサ支持機構は、安価で、かつ、各センサの所定の位置への位置合わせ調整が容易な、樹脂材で構成することが求められていた。
【0016】
そこで、発明者は、特許文献1に開示されたセンサ支持機構に対し、従来、金属材で構成されていたフレームを、樹脂材で構成することを試みた。
ところが、その樹脂材で構成されたフレーム(以下、「成形フレーム」と称する)を用いたセンサ支持機構は、厚みセンサがロック用スプリングを有しており、このロック用スプリングの張力が強力なため、ロック用スプリングの張力が強度の曲げ応力として成形フレームにかかり、これによって成形フレームに歪みが発生し、その結果、光学センサ及び磁気センサの位置合わせ精度が低下することが判明した。
【0017】
そこで、発明者は、樹脂材で構成された成形フレームを用いたセンサ支持機構に対し、さらに、厚みセンサの構成部材を金属材のフレーム(以下、「センサフレーム」と称する)で封止する(囲む)ことによって、厚みセンサをモジュール化し、もって、厚みセンサのロック用スプリングの張力を金属材のセンサフレームで支えることを試みた。以下、厚みセンサを「厚みセンサモジュール」と称する。
【0018】
しかしながら、樹脂材で構成された成形フレーム及び厚みセンサモジュールを用いたセンサ支持機構は、それでも、厚みセンサモジュールのロック用スプリングの張力によって、金属材のセンサフレームに歪みが発生した場合に、これによって、ロック用スプリングの張力が曲げ応力として成形フレームにかかり、これによって成形フレームに歪みが発生し、その結果、光学センサ及び磁気センサの位置合わせ精度が低下する可能性がある、という課題があることが判明した。
【0019】
そこで、発明者は、樹脂材で構成された成形フレーム及び厚みセンサモジュールを用いたセンサ支持機構に対し、厚みセンサモジュールの周囲で発生した成形フレームの歪みの影響が光学センサ及び磁気センサの周囲に及ばない構成にすることができれば、この課題を解決することができると考えた。
【0020】
本発明は、前記した課題を解決するためになされたものであり、センサの位置ズレを起こし難いセンサ支持機構、及び、当該センサ支持機構を用いる紙葉類取扱装置を提供することを主な目的とする。
【0021】
なお、特許文献2に開示されたセンサ支持機構は、2つの第1磁気センサの出力と1つの第2磁気センサとの出力との振動ノイズのタイミングが一致しない場合があるため、2つの第1磁気センサの出力と1つの第2磁気センサとの出力の差に対して振動ノイズをキャンセルすることができず、その結果、標準データとの比較を適正に行えないときがある、という課題があった。
【0022】
また、特許文献3に開示されたセンサ支持機構は、耐振性が考慮された配置になっている。しかしながら、特許文献3に開示されたセンサ支持機構は、機構全体の固有振動数と紙葉類の搬送による振動数とが一致する場合に、フレームが振動してしまい、振動ノイズを確実に削除できないときがある、という課題があった。
【0023】
さらに、特許文献2に開示されたセンサ支持機構及び特許文献3に開示されたセンサ支持機構は、磁気センサに特化した構成になっているが、紙葉類(特に、紙幣)の鑑別では、各国の紙幣が様々な物理量情報(例えば、セキュリティスレッドや、OVI(Optically Variable Ink;光学的変化インク)、透かし等)を有しているため、磁気センサだけでなく、光学センサ、厚みセンサ等の、様々な紙葉類情報を取得するための構成が必要である。そのため、すべてのセンサの特性を満足するようなセンサ支持機構が望まれている、という課題もあった。なお、「OVI」とは、偏光等で光学性質が変化するインクである。
【0024】
また、特許文献2に開示されたセンサ支持機構及び特許文献3に開示されたセンサ支持機構は、仮に各センサの周囲を金属材で固めた場合に、コストが高騰し、各センサの所定の位置への位置合わせ調整が困難になるとともに、振動をセンサに伝達し易くなるため、特に、厚みセンサの検出情報に振動ノイズが混入し易くなる。そのため、特許文献2に開示されたセンサ支持機構及び特許文献3に開示されたセンサ支持機構は、安価で、かつ、各センサの所定の位置への位置合わせ調整が容易な構成にすることが求められている、という課題もあった。
【0025】
本発明は、これらの課題を解決することもできるセンサ支持機構、及び、当該センサ支持機構を用いる紙葉類取扱装置を提供することを副次的な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
前記目的を達成するため、第1発明は、紙葉類情報を取得する複数種類のセンサを支持するためのセンサ支持機構であって、前記紙葉類が搬送面に沿って搬送される搬送路と、略全域が堅い領域として形成された基準側成形フレームと、部分的に堅い領域と変形し易い領域とに区画されており、前記基準側成形フレームと対向して配置されることにより、前記基準側成形フレームとともに前記搬送面を形成する検知側成形フレームと、周囲に軽度の曲げ応力しか与えない第1種センサと、周囲に前記第1種センサよりも強度の曲げ応力を与える第2種センサとを有し、前記第1種センサは、略全域が堅い領域として形成された前記基準側成形フレーム及び前記検知側成形フレームの前記堅い領域のいずれか一方又は双方に配置されており、前記第2種センサは、構成部材が金属材のセンサフレームによって覆われたセンサモジュールとして形成されているとともに、略全域が堅い領域として形成された前記基準側成形フレームと前記検知側成形フレームの前記変形し易い領域とに分断されて配置されている構成とする。
【0027】
ここで、「第1種センサ」とは、例えば、光学センサや磁気センサ等を意味しており、また、「第2種センサ」とは、例えば、厚みセンサを意味している。「第2種センサ」は、金属材のフレームによって覆われたセンサモジュールとして形成されている。これにより、このセンサ支持機構は、周囲に与える強度の曲げ応力をセンサモジュール内に封止する。
【0028】
ただし、センサモジュールは、それでも、強度の曲げ応力によって、弾性係数を有する金属材のセンサフレームに歪みが発生した場合に、曲げ応力が成形フレームにかかり、これによって成形フレームに歪みが発生し、その結果、第1種センサの位置合わせ精度が低下する可能性がある。そこで、このセンサ支持機構は、第1種センサを堅い領域に配置するとともに、第2種センサを基準側成形フレームと変形し易い領域との双方に配置することによって、成形フレームにかかる曲げ応力を第2種センサの周囲の成形フレームで吸収する。これによって、このセンサ支持機構は、金属材のセンサフレームに歪みが発生した場合に、成形フレームにかかる曲げ応力を第2種センサの周囲に留める(限定する)。
【0029】
したがって、このセンサ支持機構は、第2種センサの周囲で発生した成形フレームの歪みの影響が第1種センサの周囲に及ばない構成となっている。その結果、このセンサ支持機構は、センサ支持機構のセンサの位置ズレを起こし難い構成となっている。
【0030】
なお、第2種センサは、強度の曲げ応力の程度次第で、構成部材を金属材のセンサフレームによって覆わない構成にすることも可能である。そこで、第2発明は、紙葉類情報を取得する複数種類のセンサを支持するためのセンサ支持機構であって、前記紙葉類が搬送面に沿って搬送される搬送路と、略全域が堅い領域として形成された基準側成形フレームと、部分的に堅い領域と変形し易い領域とに区画されており、前記基準側成形フレームと対向して配置されることにより、前記基準側成形フレームとともに前記搬送面を形成する検知側成形フレームと、周囲に軽度の曲げ応力しか与えない第1種センサと、周囲に前記第1種センサよりも強度の曲げ応力を与える第2種センサとを有し、前記第1種センサは、略全域が堅い領域として形成された前記基準側成形フレーム及び前記検知側成形フレームの前記堅い領域のいずれか一方又は双方に配置されており、前記第2種センサは、略全域が堅い領域として形成された前記基準側成形フレームと前記検知側成形フレームの前記変形し易い領域とに分断されて配置されている構成とする。
【0031】
第2発明に係るセンサ支持機構は、第1発明に係るセンサ支持機構と同様に、第1種センサを堅い領域に配置するとともに、第2種センサを変形し易い領域に配置することによって、成形フレームにかかる曲げ応力を第2種センサの周囲の成形フレームで吸収する。したがって、このセンサ支持機構は、第2種センサの周囲で発生した成形フレームの歪みの影響が第1種センサの周囲に及ばない構成となっている。その結果、このセンサ支持機構は、センサ支持機構のセンサの位置ズレを起こし難い構成となっている。
【0032】
また、第3発明は、紙葉類を取り扱う紙葉類取扱装置であって、紙葉類を搬送させる搬送路上に、第1発明又は第2発明に係るセンサ支持機構を有する構成とする。
この紙葉類取扱装置は、第1発明又は第2発明に係るセンサ支持機構を用いるため、センサの位置ズレを抑制することができる。
【発明の効果】
【0033】
第1発明又は第2発明によれば、センサの位置ズレを抑制するセンサ支持機構を提供することができる。
また、第3発明によれば、第1発明又は第2発明に係るセンサ支持機構を用いる紙葉類取扱装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施形態1に係る紙葉類取扱装置の構成を示す図である。
【図2】実施形態1に係るセンサ支持機構の構成を示す図である。
【図3】実施形態1で用いる厚みセンサモジュールの構成を示す図(1)である。
【図4】実施形態1で用いる厚みセンサモジュールの構成を示す図(2)である。
【図5】比較例の構成を示す図である。
【図6】実施形態2に係る紙葉類取扱装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)につき詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0036】
[実施形態1]
<紙葉類取扱装置の構成>
以下、図1を参照して、本実施形態1に係る紙葉類取扱装置の構成につき説明する。なお、図1は、実施形態1に係る紙葉類取扱装置の構成を示す図である。
【0037】
本実施形態1に係る紙葉類取扱装置10は、例えば、自動取引装置(ATM)や通帳記帳機、発券機、プリンタ等である。ここでは、紙葉類取扱装置10として、自動取引装置を想定して説明する。以下、紙葉類取扱装置10を「自動取引装置10」と称する。また、紙葉類を「紙幣」と称する場合がある。
【0038】
図1に示すように、自動取引装置10は、筐体11の内部に、入出金口12、一括カセット13、リジェクトカセット14、金種別金庫15、搬送路16、搬送ローラ17、及び、紙葉類鑑別ユニット18を有している。
【0039】
入出金口12は、紙幣が投入及び放出される接客部である。
一括カセット13は、自動取引装置10に対して紙幣を補充したり、回収したりするための収納庫である。一括カセット13は、自動取引装置10に対して装着及び取り外しが自在な構成になっている。自動取引装置10は、補充時に、一括カセット13から紙幣を繰り出して、紙葉類鑑別ユニット18で鑑別した後、金種別金庫15に収納する。また、自動取引装置10は、回収時に、金種別金庫15から紙幣を繰り出して、一括カセット13に収納する。なお、一括カセット13は、内部が紙幣で満杯になると、回収員によって別の空の一括カセット13と交換される。一括カセット13は、回収員によって図示せぬ現金管理センタに持ち運ばれ、現金管理センタで、内部の紙幣が回収される。そして、一括カセット13は、内部が空になると、回収員によって自動取引装置10に持ち運ばれ、再び、自動取引装置10の内部に装着されて使用される。
【0040】
リジェクトカセット14は、再使用が不能なリジェクト紙幣を保管するための収納庫である。自動取引装置10は、入金時や出金時に、紙葉類鑑別ユニット18によって、再使用が不能であると鑑別されたリジェクト紙幣を、リジェクトカセット14に収納する。
【0041】
金種別金庫15は、金種別に紙幣を収納する収納庫である。
搬送路16は、紙幣が搬送される通路である。
搬送ローラ17は、紙幣を搬送する搬送手段である。
紙葉類鑑別ユニット18は、紙幣の真鴈や、金種、汚損の度合い等を鑑別する鑑別装置である。紙葉類鑑別ユニット18は、厚みセンサ21、光学センサ22、及び磁気センサ23(図2参照)を有している。なお、図2は、実施形態1に係るセンサ支持機構の構成を示す図である。紙葉類鑑別ユニット18は、図2に示すセンサ支持機構1によって、これらのセンサ21,22,23を支持している。
【0042】
<センサ支持機構の構成>
センサ支持機構1は、各センサ21,22,23に以下の特性が要求されるため、その特性を満たすための構成となっている。
【0043】
(各センサに要求される特性)
各センサ21,22,23は、以下の特性が要求される。なお、厚みセンサ21は、特許請求の範囲に記載された「第2種センサ」に相当する。また、光学センサ22及び磁気センサ23は、特許請求の範囲に記載された「第1種センサ」に相当する。各センサ21,22,23は、取り外しが可能な構成になっている。
【0044】
(1)厚みセンサ21は、スプリング33a,33b(図3(a)参照)を有しているが、特にスプリング33bの張力が強力であり、そのスプリング33bが周囲に強度の曲げ応力を与えるため、周囲を高い剛性のフレーム部材(少なくとも金属材で構成する必要がある程度に、高い剛性の部材)で構成し、その高い剛性のフレーム部材で、検知ローラ32(図3(a)参照)や変位センサ34(図3(a)参照)等の構成部材を覆うことが要求される。
(2)光学センサ22及び磁気センサ23は、紙幣の所定の部位から紙葉類情報を取得するために、高い位置合わせ精度が要求される。例えば、光学センサ22は、焦点距離にズレが発生した場合に、出力が変動するため、高い位置合わせ精度が要求される。また、磁気センサ23は、センサの検出面から検出物までのギャップの変動によって、出力が変動するため、高い位置合わせ精度が要求される。
【0045】
(各センサに要求される特性を満たすための構成)
センサ支持機構1は、各センサに要求される特性を満たすために、以下の特徴を有している。
【0046】
(1)厚みセンサ21の構成部材を、例えばステンレススチール等の金属材のフレーム(以下、「センサフレーム36,37」と称する)で封止する(囲む)ことによって、厚みセンサ21をモジュール化し、もって、厚みセンサ21のスプリング33b(図3(a)参照)の張力を金属材のセンサフレーム36,37で支える。
(2)コストの抑制、各センサ21,22,23の所定の位置への位置合わせ調整の容易化、及び、各センサ21,22,23の検出情報へのノイズの混入の防止を図るために、成形フレーム50(図2参照)を、安価で、かつ、各センサの所定の位置への位置合わせ調整が容易な、樹脂材で構成する。
(3)厚みセンサ21の周囲で発生した成形フレーム50の歪みの影響が光学センサ22及び磁気センサ23の周囲に及ばないように、成形フレーム50を堅い領域50Aと変形し易い領域50Bとに区画する。
【0047】
すなわち、厚みセンサ21(図3(a)参照)は、スプリング33aの押圧を利用して検知ローラ32を基準ローラ31に押し付けるとともに、スプリング33bの張力を利用してロックレバー41で周囲の成形フレーム50を接近方向に押圧している。しかしながら、スプリング33bの張力は、非常に強力である。そのため、厚みセンサ21の周囲は、歪みが発生し易い。そこで、本実施形態1では、厚みセンサ21を剛性の高いステンレススチール等の金属材によるセンサフレーム36,37で封止したモジュール構造とし、スプリング33bの張力を金属材のセンサフレーム36,37で支えることによって、厚みセンサ21の周囲の歪みを抑制している。以下、厚みセンサ21を「厚みセンサモジュール21」と称する場合もある。また、センサフレーム36とセンサフレーム37とは、互いに分断されており、互いを区別する場合に、センサフレーム36を「基準側センサフレーム36」と称し、センサフレーム37を「検知側センサフレーム37」と称する。
【0048】
ただし、センサ支持機構1は、その構成だけでは、金属材のセンサフレーム36,37に歪みが発生して、その金属材のセンサフレーム36,37の歪みがさらに厚みセンサモジュール21の周囲の成形フレーム50を歪ませる可能性がある。
【0049】
そこで、センサ支持機構1は、樹脂材によって成形フレーム50を成形する際に、さらに、基準ローラ31が設けられた側の成形フレーム50(後記する基準側成形フレーム51)の全体を堅い領域50Aによって形成された構成にするとともに、検知ローラ32が設けられた側の成形フレーム50(後記する検知側成形フレーム52)を堅い領域50Aと変形し易い領域50Bとに区画された構成とする。そして、センサ支持機構1は、厚みセンサモジュール21を、変形し易い領域50Bで支持することによって、金属材のセンサフレーム36,37の歪みを成形フレーム50の変形し易い領域50Bに吸収させる。また、センサ支持機構1は、光学センサ22及び磁気センサ23を、堅い領域50Aで支持することによって、組み立て時の光学センサ22及び磁気センサ23の位置ズレを回避する。
【0050】
以下、まず、厚みセンサモジュール21の構成を説明し、次に、センサ支持機構1の成形フレーム50の構成を説明する。
【0051】
(厚みセンサモジュールの構成)
以下、図3及び図4を参照して、厚みセンサモジュール21の構成につき説明する。なお、図3及び図4は、それぞれ、実施形態1で用いる厚みセンサモジュールの構成を示す図である。図3(a)は、側面側から見た厚みセンサモジュール21の構成を示しており、図3(b)は、斜め側から見た厚みセンサモジュール21の構成を示している。また、図4(a)は、厚みセンサモジュール21の基準側センサフレーム36の金属材による構成部分を示しており、図4(b)は、厚みセンサモジュール21の基準側センサフレーム36の金属材による構成部分を示している。
【0052】
図3及び図4に示すように、厚みセンサモジュール21は、基準ローラ31、検知ローラ32、スプリング33a,33b、変位センサ34、及び、ロックレバー41を有している。
【0053】
基準ローラ31は、位置が固定された、回転自在なローラである。
検知ローラ32は、搬送される紙葉類の厚みに応じて位置が変動する、回転自在なローラである。
スプリング33aは、検知ローラ32を基準ローラ31に押し付ける押圧用スプリングである。
スプリング33bは、ロックレバー41を引っ張って、ロックレバー41で基準側センサフレーム36と検知側センサフレーム37とを固定するロック用スプリングである。
変位センサ34は、検知ローラ32の変位量を検知するセンサである。
ロックレバー41は、基準側センサフレーム36と検知側センサフレーム37とをロックレバーで固定するロック部材である。
【0054】
係る構成において、スプリング33aは、検知ローラ32を基準ローラ31に押し付ける。そして、変位センサ34は、搬送された紙幣の厚みに応じて検知ローラ32が変動すると、その検知ローラ32の変位量を検知する。これによって、厚みセンサモジュール21は、紙葉類情報としての紙幣の厚み情報を取得する。なお、検知ローラ32と基準ローラ31との接触位置が検知ローラ32の変位の基準位置となる。
【0055】
図3(b)に示すように、基準ローラ31は、例えばステンレススチール等の金属材によって形成された円柱状のシャフト31aの表面に、ゴム材によって形成された円筒状のローラ(以下、「下部ローラ31b」と称する)が設けられた構成となっている。
【0056】
基準ローラ31は、基準側センサフレーム36によって回転自在に封止されている。なお、図4(a)に示すハッチング部分は、基準側センサフレーム36が金属材によって構成された部材であることを示している。ハッチング部分は、一体成形や、ネジ止め、又は、溶接等の手段によって、強固に固定されている。例えば、図4(a)に示す例では、基準側センサフレーム36は、一枚の板材が折り曲げられることによって、基準ローラ31を両側から挟み込む2つの側板36aと、基準ローラ31の下方をカバーする底板36bとが、一体に設けられた構成となっている。2つの側板36aは、基準ローラ31のシャフト31aを回転自在に支持している。また、2つの側板36aは、ロックレバー41の後記する爪41bと係合する突起状の係止部36cが設けられている。
【0057】
なお、基準ローラ31は、シャフト31aの軸方向の端部に間隔調整用ローラ31cが設けられている。間隔調整用ローラ31cは、検知側センサフレーム37に設けられた間隔調整用突出部37cと当接することにより、基準側センサフレーム36に対する検知側センサフレーム37の間隔を一定に調整する。
【0058】
検知ローラ32は、例えばステンレススチール等の金属材によって形成された円柱状のシャフト32aの表面に、ゴム材によって形成された円筒状のローラ(以下、「上部ローラ32b」と称する)が設けられた構成となっている。
【0059】
検知ローラ32は、検知側センサフレーム37によって回転自在に封止されている。なお、図4(b)に示すハッチング部分は、検知側センサフレーム37が金属材によって構成された部材であることを示している。例えば、図4(b)に示す例では、検知側センサフレーム37は、一枚の板材が折り曲げられることによって、検知ローラ32を両側から挟み込む2つの側板37aと、検知ローラ32の上方をカバーする天板37bとが設けられた構成となっている。2つの側板37aは、検知ローラ32のシャフト32aを回転自在に支持している。
【0060】
なお、検知側センサフレーム37は、一方の側板37aが、基準ローラ31に設けられた間隔調整用ローラ31cと対向している。その一方の側板37aは、間隔調整用ローラ31cと対向する位置に、間隔調整用突出部37cが設けられている。間隔調整用突出部37cは、基準ローラ31の間隔調整用ローラ31cと当接することにより、基準側センサフレーム36に対する検知側センサフレーム37の間隔を一定に調整する。
【0061】
検知側センサフレーム37の天板37bの上方には、シャフト42が設けられている。また、検知側センサフレーム37の両側には、それぞれ、ロックレバー41が設けられている。
【0062】
シャフト42は、検知側センサフレーム37の両側に設けられた2つのロックレバー41を連結する部材であり、かつ、2つのロックレバー41の回転軸となる部材である。シャフト42は、検知側センサフレーム37の天板37bと接触した状態になっている。シャフト42は、組立作業者が一方のロックレバー41(図示例では、左側のロックレバー41)をリリース方向(図示例では、時計回り方向)に回転させると、これに合わせて、他方のロックレバー41もリリース方向に回転させる。
【0063】
なお、2つのロックレバー41のいずれか一方又は双方は、スプリング33bの強力な張力によってロック方向(図示例では、反時計回り方向)に付勢されている。そのため、組立作業者が一方のロックレバー41から手を離すと、2つのロックレバー41は、ロック方向に回転する。このとき、2つのロックレバー41の先端に設けられた爪41bが、基準側センサフレーム36の2つの側板36aに設けられた突起状の係止部36cと係合する。
【0064】
ロックレバー41の爪41bは、図2及び図3(a)に示すように、先端側から後端側に向けてテーパが設けられている。そのため、ロックレバー41を付勢するスプリング33bは、ロック時に、ロックレバー41を介して基準側センサフレーム36と検知側センサフレーム37とを接近方向に押圧する。例えば、スプリング33bは、ロック時に、ロックレバー41をロック方向に回転させる。このとき、ロックレバー41の先端に設けられた爪41bが、基準側センサフレーム36の2つの側板36aに設けられた突起状の係止部36cと係合する。そして、スプリング33bは、ロックレバー41の爪41bで基準側センサフレーム36を上方向に押圧するとともに、検知側センサフレーム37の天板37bと接触しているシャフト42で検知側センサフレーム37を下方向に押圧する。
【0065】
なお、厚みセンサモジュール21は、後記する検知側成形フレーム52の変形し易い領域50B(図2参照)に設けられている。そのため、検知側成形フレーム52が、厚みセンサモジュール21の周囲で変形する。その結果、検知側センサフレーム37が、基準側センサフレーム36に接近する。接近は、検知側センサフレーム37の間隔調整用突出部37cが基準ローラ31の間隔調整用ローラ31cに突き当たることにより、停止する。これにより、検知ローラ32は、基準ローラ31に対して所定の間隔に、位置決めされる。
【0066】
このような構成の厚みセンサモジュール21は、図4に示すように、構成部材が金属材のセンサフレーム36,37で封止された(囲まれた)モジュール構造となっている。これにより、厚みセンサモジュール21は、スプリング33b(図3(a)参照)の張力をセンサフレーム36,37で支えている。
【0067】
(センサ支持機構の成形フレームの構成)
以下、図2を参照して、センサ支持機構1の成形フレーム50の構成につき説明する。
【0068】
センサ支持機構1は、図2に示すように、2つの成形フレーム50を有している。2つの成形フレーム50は、それぞれ、金属材よりも安価で剛性の低い、樹脂材によって構成されている。その理由は、成形フレーム50を金属材で構成すると、以下の(1)〜(3)の欠点が発生し、それらの欠点を解消する必要があるためである。
(1)金属材は樹脂材よりも高価であるため、コストが高騰する。
(2)金属材は剛性が高くまた加工し難いため、センサの所定の位置への位置合わせ調整が困難になる。
(3)金属材は振動をセンサに伝達し易いため、特に厚みセンサモジュール21の検出情報に振動ノイズが混入し易くなる。
【0069】
したがって、2つの成形フレーム50は、(1)コストの高騰を抑制するために、(2)各センサ21,22,23の所定の位置への位置合わせ調整を容易にするために、及び、(3)成形フレーム50からセンサ(特に、厚みセンサモジュール21)への振動の伝達を抑制して、検出情報への振動ノイズの混入を抑制するために、樹脂材によって構成されている。
【0070】
なお、成形フレーム50は、紙葉類を搬送する必要があるため、静電気の影響を受け易い。そのため、成形フレーム50は、導電性の材料で構成することが好ましい。成形フレーム50の材料としては、例えば、ザイロン(変性PPE)等を用いると良い。
【0071】
2つの成形フレーム50は、互いに対向して配置されることによって、互いの対向面で搬送路16(搬送面)を構成する。そのため、互いの対向面は、略平坦に形成されている。
【0072】
2つの成形フレーム50は、紙葉類情報を取得するための各センサ21,22,23が、いずれか一方又は双方の内部に取り付けられている。また、2つの成形フレーム50は、紙葉類を搬送するための複数の搬送ローラ17が、双方の内部に取り付けられている。各搬送ローラ17は、成形フレーム50の内部から搬送路16に突出するように、かつ、紙葉類の搬送方向に沿って回転するように、配置されている。
【0073】
図2に示す例では、2つの成形フレーム50のうち、下側に配置された成形フレーム50は、厚みセンサモジュール21の基準ローラ31(図3参照)を支持する。一方、上側に配置された成形フレーム50は、厚みセンサモジュール21の検知ローラ32(図3参照)を支持する。以下、2つの成形フレーム50を区別する場合に、下側の成形フレーム50を「基準側成形フレーム51」と称し、上側の成形フレーム50を「検知側成形フレーム52」と称する。
【0074】
基準側成形フレーム51及び検知側成形フレーム52は、連結部材59によって連結されている。連結部材59は、2つの成形フレーム50の少なくとも一方(図示例では、検知側成形フレーム52)を回転軸59aで回転自在に支持している。そのため、検知側成形フレーム52は、基準側成形フレーム51に対し、回転軸59aをオープン支点にして回動する。これによって、搬送路16が、開放状態又は閉鎖状態となる。センサ支持機構1の組立作業者は、センサ支持機構1の組み立て時に、搬送路16を開放状態にすることにより、各センサ21,22,23の位置合わせを調整することができる。
【0075】
なお、連結部材59は、搬送路16の先端及び後端のいずれか一方に設けられている。そして、厚みセンサモジュール21は、連結部材59から離れた側に取り付けられ、一方、光学センサ22及び磁気センサ23は、連結部材59に近い側に取り付けられる。それは、光学センサ22及び磁気センサ23が高い位置合わせ精度を要求しており、光学センサ22及び磁気センサ23を連結部材59に近い側に設けることによって、位置合わせ精度を向上させるためである。
【0076】
なお、厚みセンサモジュール21は、基準側センサフレーム36と検知側センサフレーム37とに分断されて、それぞれに対応する側の成形フレーム50に直接取り付けられる。また、光学センサ22及び磁気センサ23は、センサの検出用開口部が成形フレーム50に一体成形されており、成形フレーム50に直接取り付けられる。
【0077】
基準側成形フレーム51及び検知側成形フレーム52は、厚みセンサモジュール21のロックレバー41(図3参照)によって固定される。
【0078】
「基準側成形フレーム51」は、全体が堅い領域50Aとして構成されている。また、「検知側成形フレーム52」は、部分的に堅い領域50Aと変形し易い領域50Bとに区画されている。ここでは、「堅い領域50A」とは、補強リブ53が設けられた領域を意味しており、一方、「変形し易い領域50B」とは、補強リブ53が設けられていない領域を意味している。したがって、検知側成形フレーム52は、補強リブ53が部分的に設けられた構成となっている。
【0079】
補強リブ53は、成形フレーム50の曲げ強度を補強するために設けられた部位である。補強リブ53は、成形フレーム50の一定以上の強度を必要とする箇所に、1乃至複数設けられている。補強リブ53は、成形フレーム50とは別体の部材として構成することができるが、ここでは、センサ支持機構1のコストの高騰を抑制するために、成形フレーム50と一体に成形された部位であるものとする。補強リブ53は、例えば、成形フレーム50が箱形状に成形された場合に、成形フレーム50の側板の倒れ等の発生を防止する。
【0080】
「検知側成形フレーム52」を堅い領域50Aと変形し易い領域50Bとに区画する理由は、以下の(1)〜(3)の通りである。
(1)理由は、検知側成形フレーム52が厚みセンサモジュール21のスプリング33bの張力によって変形することを予期して、剛性の低い、変形し易い領域50Bで厚みセンサモジュール21を支持するためである。
(2)理由は、厚みセンサモジュール21を変形し易い領域50Bに配置することにより、厚みセンサモジュール21のセンサフレーム36,37に歪みが発生した場合に、厚みセンサモジュール21のスプリング33bの張力によって発生する成形フレーム50の歪みを厚みセンサモジュール21の周囲に留め(限定し)、厚みセンサモジュール21の周囲で発生した成形フレーム50の歪みの影響が光学センサ22及び磁気センサ23の周囲に及ばないようにするためである。
(3)理由は、高い位置合わせ精度が要求される光学センサ22及び磁気センサ23を堅い領域50Aに配置することにより、光学センサ22及び磁気センサ23の位置合わせを、剛性の高い堅い領域50Aの寸法に基づいて行い、もって、光学センサ22及び磁気センサ23を所定の位置に高い精度で位置合わせして、組み立て時の光学センサ22及び磁気センサ23の位置ズレを極力抑制するためである。
【0081】
<センサ支持機構の動作>
以下、図2及び図5を参照して、センサ支持機構1の動作につき説明する。なお、図5は、比較例の構成を示す図である。図5に示す比較例としてのセンサ支持機構2は、成形フレーム50の全体が堅い領域50Aで構成されている。図2に示す本実施形態1に係るセンサ支持機構1紙葉類P(図5参照)が搬送されると、以下のように動作する。
【0082】
厚みセンサモジュール21は、基準側成形フレーム51及び検知側成形フレーム52の双方に、分断されて設けられている。厚みセンサモジュール21は、スプリング33によって検知ローラ32が基準ローラ31に押し付けらており、紙葉類P(図5参照)が搬送されると、検知ローラ32が変位し、変位センサ34が検知ローラ32の変位量を検知する。これによって、厚みセンサモジュール21は、紙葉類情報としての紙葉類Pの厚み情報を取得する。
【0083】
光学センサ22及び磁気センサ23は、基準側成形フレーム51及び検知側成形フレーム52のいずれか一方又は双方に、紙葉類情報を取得するのに必要な搬送路ギャップ位置に設けられている。光学センサ22及び磁気センサ23は、紙葉類P(図5参照)が搬送されると、紙葉類情報としての紙葉類Pの光学情報及び磁気情報を取得する。
【0084】
ところで、厚みセンサモジュール21は、仮に、金属材のモジュールとして構成されていなければ、以下のような障害が発生する。すなわち、検知側成形フレーム52は、厚みセンサ21のようにスプリング等で大きな荷重をかけた場合に、樹脂材が金属材に比べて低剛性であるため、弾性変形する。検知側成形フレーム52が弾性変形すると、厚みセンサ21の基準ローラ31の位置が変化したり、又は、ロックレバー41のロックが機能しなくなったりする。これにより、厚みセンサ21は、検知ローラ32に適切な荷重をかけることができなくなり、検知ローラ32を正常に動作させることができなくなる。その結果、厚みセンサ21は、厚み情報を正確に取得できなくなる。
【0085】
そこで、本実施形態1に係るセンサ支持機構1は、厚みセンサ21を金属材のセンサフレーム36,37で封止し、その金属材のセンサフレーム36,37にロックレバー41を取り付けることによって、厚みセンサモジュール21として、厚みセンサ21をモジュール化して、厚みセンサ21に高い剛性を付与している。
【0086】
なお、厚みセンサモジュール21は、金属材のセンサフレーム36,37で封止されることにより、すべての構成部材が金属材で連結されているため、紙葉類Pの高速搬送時に発生する静電気を、金属材を介して逃がすことができる。これによって、紙葉類P及び構成部材の帯電を防止することができ、その結果、本実施形態1に係るセンサ支持機構1は、紙葉類Pの高速搬送時に、紙葉類Pのジャムの発生を抑制することができる。
【0087】
ただし、厚みセンサモジュール21は、スプリング33bの張力によって、センサフレーム36,37に歪みが発生する可能性がある。センサフレーム36,37が歪むと、スプリング33bの張力が強度の曲げ応力として成形フレーム50にかかり、これによって成形フレーム50に歪みが発生し、その結果、光学センサ22及び磁気センサ23の位置合わせ精度が低下する可能性がある。
【0088】
また、厚みセンサモジュール21は、検知ローラ32が紙葉類Pに直接接触する構成となっているため、光学センサ22及び磁気センサ23よりも、成形フレーム50の振動が検知情報に混入し易い。
【0089】
そこで、本実施形態1に係るセンサ支持機構1は、成形フレーム50の、厚みセンサモジュール21が取り付けられる領域を、補強リブ53が設けられていない、変形し易い領域50Bとして構成している。センサ支持機構1は、この変形し易い領域50Bによって、センサフレーム36,37の歪みを吸収する。そのため、センサ支持機構1は、光学センサ22及び磁気センサ23の位置合わせ精度が低下するのを抑制することができ、もって、光学センサ22及び磁気センサ23の位置ズレを抑制することができる。
【0090】
また、本実施形態1に係るセンサ支持機構1は、この変形し易い領域50Bによって、成形フレーム50の振動を減衰させる。そのため、センサ支持機構1は、成形フレーム50の振動が厚みセンサモジュール21に伝達するのを抑制することができる。
【0091】
また、本実施形態1に係るセンサ支持機構1は、成形フレーム50の、光学センサ22及び磁気センサ23が取り付けられる領域を、補強リブ53が設けられた、堅い領域50Aとして構成する。センサ支持機構1は、成形フレーム50が1部品として成形されているため、この堅い領域50Aによって、部品の公差を光学センサ22及び磁気センサ23に累積させることなく、光学センサ22及び磁気センサ23を所望の位置に確実に取り付けることができる。
【0092】
このように、センサ支持機構1は、堅い領域50Aと変形し易い領域50Bとを成形フレーム50に設け、スプリングによる加圧が必要なセンサ(ここでは、厚みセンサ21)を変形し易い領域50Bに配置し、スプリングによる加圧が不要なセンサ(ここでは、光学センサ22及び磁気センサ23)を堅い領域Aに配置することによって、少ない部品数で各センサ21,22,23の特性を満たすことができる。
【0093】
これに対して、図5に示す比較例としてのセンサ支持機構2は、成形フレーム50の略全域が堅い領域50Aとして構成されている。そのため、センサ支持機構2は、センサフレーム36,37の歪みがさらに成形フレーム50に歪みを発生させ、これによって、光学センサ22及び磁気センサ23の位置合わせ精度が低下する可能性がある。そのため、センサ支持機構2は、光学センサ22及び磁気センサ23の位置ズレを起こす可能性がある。
また、センサ支持機構2は、成形フレーム50の振動が厚みセンサモジュール21に伝達するのを抑制することができない。
【0094】
以上の通り、本実施形態1に係るセンサ支持機構1によれば、成形フレーム50の全体が樹脂材で構成されているため、安価でかつ各センサ21,22,23の位置合わせが容易な構成を提供することができる。
【0095】
また、センサ支持機構1によれば、変形し易い領域50Bによって、センサフレーム36,37の歪みを吸収して、光学センサ22及び磁気センサ23の位置合わせ精度が低下するのを抑制することができ、もって、光学センサ22及び磁気センサ23の位置ズレを抑制することができる。
【0096】
さらに、センサ支持機構1によれば、少ない部品数で、厚みセンサ21に要求される特性と光学センサ22及び磁気センサ23に要求される特性とを満たすことができる。
【0097】
なお、本実施形態1では、1つの光学センサ22と1つの磁気センサ23とが、センサ支持機構1の堅い領域50Aに取り付けられている。しかしながら、センサ支持機構1は、複数の光学センサ22及び複数の磁気センサ23が堅い領域50Aに取り付けられる構成にしてもよい。
【0098】
ただし、このような構成にした場合に、センサ支持機構1は、例えば、特許文献2又は特許文献3に開示された機構と同様に、振動ノイズが、第1の光学センサ22の出力と第2の光学センサ22の出力との間、又は、第1の磁気センサ23の出力と第2の磁気センサ23の出力との間に、混入する可能性がある。
【0099】
しかしながら、仮に、振動ノイズが混入したとしても、センサ支持機構1を用いる紙葉類鑑別ユニット18は、特許文献2又は特許文献3に開示された機構と異なり、光学センサ22及び磁気センサ23が堅い領域50Aに取り付けられており、振動ノイズのタイミングが一致するため、それぞれの出力差に対して振動ノイズを容易かつ確実にキャンセルすることができる。そのため、センサ支持機構1を用いる紙葉類鑑別ユニット18は、標準データとの比較を安定して適正に行うことができる。
【0100】
また、センサ支持機構1を用いる紙葉類鑑別ユニット18は、センサ支持機構全体の固有振動数と紙葉類Pの搬送による振動数とが一致する場合に、特許文献2又は特許文献3に開示された機構と異なり、変形し易い領域50Bで振動を吸収して、堅い領域50Aへの影響を抑制することができるため、振動ノイズを確実にキャンセルすることができる。
【0101】
[実施形態2]
本実施形態2に係る紙葉類取扱装置は、各センサ21,22,23が一体化された紙葉類鑑別ユニットを取り付けるのではなく、各センサ21,22,23を別々に取り付ける構成となっている。なお、別々に取り付けられた各センサ21,22,23は、検出情報を紙葉類取扱装置の制御部に出力することよって、紙葉類鑑別部として機能する。
【0102】
以下、図6を参照して、本実施形態2に係る紙葉類取扱装置の構成につき説明する。なお、図6は、実施形態2に係る紙葉類取扱装置の構成を示す図である。
【0103】
本実施形態2に係る紙葉類取扱装置としての自動取引装置10Bは、各センサ21,22,23を別々に取り付ける構成となっている。そのため、自動取引装置10Bは、例えば、図6に示すように、各センサ21,22,23を搬送路16の複数の部分に分散して配置することができる。
【0104】
図6に示す例では、自動取引装置10Bは、センサ支持機構1BをL字型に屈曲された搬送路16に用いている。センサ支持機構1Bは、搬送路16の縦方向の部分を堅い領域50Aで構成し、搬送路16の横方向の部分を変形し易い領域50Bで構成している。これにより、センサ支持機構1Bは、光学センサ22と磁気センサ23とを搬送路16の縦方向の部分に配置し、厚みセンサモジュール21を搬送路16の横方向の部分に配置することができる。ただし、センサ支持機構1Bは、各センサ21,22,23に供給する電源のルートを確保する必要がある。
【0105】
本実施形態2に係るセンサ支持機構1Bは、実施形態1に係るセンサ支持機構1と同様に動作する。
【0106】
そのため、本実施形態2に係るセンサ支持機構1Bによれば、実施形態1に係るセンサ支持機構1と同様に、成形フレーム50の全体が樹脂材で構成されているため、安価でかつ各センサ21,22,23の位置合わせが容易な構成を提供することができる。
【0107】
また、センサ支持機構1Bによれば、実施形態1に係るセンサ支持機構1と同様に、変形し易い領域50Bによって、センサフレーム36,37の歪みを吸収して、光学センサ22及び磁気センサ23の位置合わせ精度が低下するのを抑制することができ、もって、光学センサ22及び磁気センサ23の位置ズレを抑制することができる。
【0108】
さらに、センサ支持機構1Bによれば、実施形態1に係るセンサ支持機構1と同様に、少ない部品数で、厚みセンサ21に要求される特性と光学センサ22及び磁気センサ23に要求される特性とを満たすことができる。
【0109】
しかも、センサ支持機構1Bによれば、紙葉類取扱装置10内に、紙葉類鑑別部という領域分割を行うことなく、搬送路16の一部として各センサ21,22,23を配置することができる。
【0110】
本発明は、前記した実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や変形を行うことができる。
例えば、実施形態1及び実施形態2では、紙葉類取扱装置として自動取引装置を用いて説明したが、本発明は、通帳記帳機や発券機、プリンタ、その他の紙葉類取扱装置に適用することができる。
また、第2種センサである厚みセンサ21は、スプリング33bの張力の程度次第で、構成部材を金属材のセンサフレーム36,37によって覆わない構成にすることも可能である。
【符号の説明】
【0111】
1 センサ支持機構
2 センサ支持機構(比較例)
10 紙葉類取扱装置
11 筐体
12 入出金口
13 一括カセット
14 リジェクトカセット
15 金種別金庫
16 搬送路
17 搬送ローラ
18 紙葉類鑑別ユニット
21 厚みセンサモジュール(厚みセンサ)
22 光学センサ
23 磁気センサ
31 基準ローラ
31a シャフト
31b 下部ローラ
31c 間隔調整用ローラ
32 検知ローラ
32a シャフト
32b 上部ローラ
33a,33b スプリング(付勢部材)
34 変位センサ
36 基準側センサフレーム
36a 側板
36b 底板
36c 係止部
37 検知側センサフレーム
37a 側板
37b 天板
37c 間隔調整用突出部
41 ロックレバー(ロック部材)
41a 軸受け
41b 爪
42 シャフト
50 成形フレーム
50A 堅い領域
50B 変形し易い領域
51 基準側成形フレーム
52 検知側成形フレーム
53 補強リブ
59 連結部材
59a 回転軸
P 紙葉類

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類情報を取得する複数種類のセンサを支持するためのセンサ支持機構において、
前記紙葉類が搬送面に沿って搬送される搬送路と、
略全域が堅い領域として形成された基準側成形フレームと、
部分的に堅い領域と変形し易い領域とに区画されており、前記基準側成形フレームと対向して配置されることにより、前記基準側成形フレームとともに前記搬送面を形成する検知側成形フレームと、
周囲に軽度の曲げ応力しか与えない第1種センサと、
周囲に前記第1種センサよりも強度の曲げ応力を与える第2種センサとを有し、
前記第1種センサは、略全域が堅い領域として形成された前記基準側成形フレーム及び前記検知側成形フレームの前記堅い領域のいずれか一方又は双方に配置されており、
前記第2種センサは、構成部材が金属材のセンサフレームによって覆われたセンサモジュールとして形成されているとともに、略全域が堅い領域として形成された前記基準側成形フレームと前記検知側成形フレームの前記変形し易い領域とに分断されて配置されている
ことを特徴とするセンサ支持機構。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサ支持機構において、
前記基準側成形フレーム及び前記検知側成形フレームは、ともに、樹脂材で形成されており、
さらに、前記基準側成形フレームは、略全域が曲げ強度を補強するための補強リブによって補強された前記堅い領域として形成されており、
前記検知側成形フレームは、部分的に、前記補強リブによって補強された前記堅い領域と、前記補強リブによって補強されていない前記変形し易い領域とに区画されている
ことを特徴とするセンサ支持機構。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のセンサ支持機構において、
前記センサフレームは、変位量を検知するための変位センサを覆っているとともに、前記基準側成形フレームに係合する基準側センサフレームと、前記検知側成形フレームに係合する検知側センサフレームとに区画されており、
前記検知側成形フレームは、前記検知側センサフレームを前記基準側センサフレーム側に押し付けて固定した状態で、前記基準側成形フレームと前記検知側成形フレームとを固定するロック部材を備えている
ことを特徴とするセンサ支持機構。
【請求項4】
請求項3に記載のセンサ支持機構において、
前記ロック部材は、先端に爪を備えるロックレバーとして構成されているとともに、
前記基準側センサフレームは、前記ロックレバーの前記爪と係合する係止部を備えており、
前記ロックレバーは、前記爪が前記基準側センサフレームの前記係止部と係合することによって、前記基準側成形フレームと前記検知側成形フレームとを固定する
ことを特徴とするセンサ支持機構。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載のセンサ支持機構において、
前記第1種センサは、前記紙葉類の光学情報を検知する光学センサ、又は、前記紙葉類の磁気記録情報を検知する磁気センサであり、
前記第2種センサは、前記紙葉類の厚み情報を検知する厚みセンサである
ことを特徴とするセンサ支持機構。
【請求項6】
請求項5に記載のセンサ支持機構において、
前記第2種センサは、前記紙葉類の厚み情報を検知する厚みセンサモジュールとして形成されており、
前記厚みセンサモジュールは、
前記基準側センサフレーム内に、位置が固定された、前記搬送路に沿って回転自在な基準ローラを備えるとともに、
前記検知側センサフレーム内に、前記基準ローラに対向するように配置され、前記紙葉類の厚みに応じて位置が変動する、前記搬送路に沿って回転自在な検知ローラと、当該検知ローラの変位量を検知する前記変位センサとを備えている
ことを特徴とするセンサ支持機構。
【請求項7】
請求項6に記載のセンサ支持機構において、
さらに、前記検知ローラは、軸方向の端部に、間隔調整用ローラを備えるとともに、
前記検知側センサフレームは、間隔調整用突出部を備えており、
前記間隔調整用突出部は、前記ロック部材による前記基準側成形フレームと当該検知側成形フレームとの固定時に、前記間隔調整用ローラと接触することによって、前記基準側センサフレームに対する前記検知側センサフレームの間隔を一定に調整する
ことを特徴とするセンサ支持機構。
【請求項8】
紙葉類情報を取得する複数種類のセンサを支持するためのセンサ支持機構において、
前記紙葉類が搬送面に沿って搬送される搬送路と、
略全域が堅い領域として形成された基準側成形フレームと、
部分的に堅い領域と変形し易い領域とに区画されており、前記基準側成形フレームと対向して配置されることにより、前記基準側成形フレームとともに前記搬送面を形成する検知側成形フレームと、
周囲に軽度の曲げ応力しか与えない第1種センサと、
周囲に前記第1種センサよりも強度の曲げ応力を与える第2種センサとを有し、
前記第1種センサは、略全域が堅い領域として形成された前記基準側成形フレーム及び前記検知側成形フレームの前記堅い領域のいずれか一方又は双方に配置されており、
前記第2種センサは、略全域が堅い領域として形成された前記基準側成形フレームと前記検知側成形フレームの前記変形し易い領域とに分断されて配置されている
ことを特徴とするセンサ支持機構。
【請求項9】
紙葉類を取り扱う紙葉類取扱装置において、
紙葉類を搬送させる搬送路上に、請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載のセンサ支持機構を有する
ことを特徴とする紙葉類取扱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−84059(P2012−84059A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231584(P2010−231584)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】