説明

センサ機能を有する無線端末機器、該端末機器の省電力化方法およびコンピュータプログラム

【課題】 加速度センサを設け検出した情報を無線で外部に送信する公知の無線端末機器は端末が静止しているときのみセンサ機能をオフにし省電力化を図っている。このため端末が動いている間は常にセンサ機能がオンになるため省電力化できないという問題を解決する。
【解決手段】 センサ機能と該センサ機能が検出した情報を外部に送信する無線通信機能を具備する無線端末機器に、該端末の位置情報を取得する位置情報取得機能と前記センサ機能を駆動させる圏内を表示する駆動圏内情報を保持する保持機能とを備え、前記位置情報が該駆動圏内情報に該当するか否かを判定しその判定結果に基づき前記センサ機能を駆動することにより省電力化を図る。更に、無線圏内判定機能を前記端末機器に設けることにより、検出された情報を端末が無線圏内にいるときのみ送信することにより無線通信機能の効率的使用を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は利用者が携帯する無線端末機器の電力制御に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザの動作を検出する機能として歩数計が知られている。また、加速度センサが搭載された携帯電話を歩数計として使うことも公知となっている。さらに、スポーツ選手に心拍計端末を携帯させ無線で遠隔監視することも公知である。歩数計などのセンサは基本的にユーザが常時使うことを前提としているためユーザ自身が手動で電源をオンオフしている。
【0003】
携帯機器の電源を自動的にオンオフ制御することで省電力化を図る技術として加速度センサを用いることが知られている。特許文献1に開示されている技術は、加速度センサを用いて装置の動きを検出し、装置が動いていないときには省電力モードに入り、装置が動いたことを検出すると通常動作モードに移行することで、装置が使われていないときの省電力化を実現している。
【0004】
一方、特許文献2または3は端末の位置に基づいて無線通信機能をオンオフすることで、端末機器の省電力化を実現する技術を開示している。この公知技術によると端末がGPSや車載ナビゲーションシステムで取得した位置情報と、通信相手である基地局の領域情報や自動料金収受システム(ETC)の位置情報を比較し、通信相手の装置との距離が近く通信が可能である確率が高いと判断したときには無線インターフェースやETC車載機などの無線通信機能をオンにし、通信相手との距離が遠く通信が可能である確率が低いと判断した場合には無線通信機能をオフにすることで省電力化を図っている。
【特許文献1】特開2007−102370
【特許文献2】特開2002−246977
【特許文献3】特開2003−346204
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は使われないときは静止している無線端末機器の省電力化は可能であるが、使われていないときもユーザが持ち歩くような無線端末機器の省電力化を実現することはできない。
【0006】
特許文献2は、センサ機能付きの端末機器に関するものではなく無線通信装置に関するものであり、無線通信機能のオンオフが通信相手の基地局の領域情報や設置位置を基に決定されている。そのため通信相手がいないセンサ機能の電源制御に適用することができない。殊に、本技術を無線端末機器のセンサ機能のオンオフに適用することを考えると、この端末機器が通信相手の基地局の領域内にいるときには常にセンサ機能がオンになるため省電力化はできない。
【0007】
さらに、センサ機能付き無線端末機器の電力消費の大部分はセンサが検出した情報を無線で送信する際に発生するため無線送信機能を効率的に使用し、無駄な送信を出来る限り少なくする必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の無線端末機器は、該端末機器の環境を監視しその結果を表す情報を出力するセンサ機能と、該情報を外部に送信する無線通信機能と、前記無線端末機器の位置情報を取得する位置情報取得機能と、前記センサ機能を駆動させる圏内を表す駆動圏内情報を保持する保持機能と、前記位置情報が該駆動圏内情報に該当するか否かを判定する駆動圏内判定機能と、該駆動圏内判定機能の判定結果に基づき前記センサ機能を駆動する制御機能からなる。
【0009】
本発明の無線端末機器の省電力化方法は(a)無線端末機器の位置情報を取得する処理と、(b)該位置情報が所定の駆動圏内情報に該当するか否かを判定する処理と、(c)該処理(b)の判定結果に基づき前記端末機器の環境を監視しその結果を表す情報を出力する処理と、(d)該出力情報を外部に送信する処理とからなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の無線端末機器101を利用するシステム全体を示す。無線端末機器101は無線ネットワークの一部を構成する無線基地局105を介し通信網104に接続され、無線端末機器101が得た自端末のセンサの情報を通信網104を介してサーバ装置103に送信する。サーバ装置103は無線端末101から収集した情報を解析処理する。また、ネットワーク側のユーザ端末102はサーバ装置10をアクセスし、処理された情報を参照する。
【0011】
図2は無線センサ端末101の最良の実施の形態を示す。無線端末機器101はCPU201と、サーバ装置103などの外部装置との通信を行なう無線通信機能202と、自端末の位置情報を取得する位置情報取得機能203と、自端末の状態や周辺環境などの情報を取得するセンサ機能204と、センサ機能204を駆動するエリア情報を格納するメモリ205とから成る。
【0012】
CPU201は、無線通信機能202が得た情報に基づいて自端末が無線通信圏内にいるか否かを判別する無線圏内判定機能211と、位置情報取得機能203が取得した位置情報とメモリ205が保持するエリア情報とに基づいて無線端末機器101がセンサ機能204を駆動するエリア内であるか否かを判定するセンサ駆動圏内判定機能213と、無線圏内判定機能211と駆動圏内判定機能213の判定結果に基づいてセンサ機能204を駆動する省電力制御機能212とから成る。
【0013】
無線通信機能202としては、特定小電力無線、RFID、Zigbee、Bluetooth、無線LANなど、様々な無線通信システムが利用できる。
【0014】
位置情報取得機能203としては、GPSなどの衛星を使う方法、無線通信相手の基地局情報を使う方法、無線周波数を用いて測量を行なう方法、超音波を用いて測量を行なう方法、赤外線やRFIDを用いて位置を特定する方法など様々な方法が利用できる。外部のネットワーク上に端末位置管理機能が存在する場合には、無線通信を用いて外部の位置管理機能から自端末の位置情報を取得することも考えられる。例えば、入退場管理システムなどによって無線端末を保持するユーザの特定エリアへの入退出が管理されている場合には、入退管理システムから無線センサ端末の位置情報を取得することも考えられる。また、センサ機能としては、加速度センサ、温度センサ、照度センサ、などさまざまなセンサが利用できる。
【0015】
図3は位置情報を赤外線により複数箇所から発信する例を示す。この例で、赤外線送信器301,302,303が互いに異なる位置ID情報を下方に向けて発信される。無線端末機器101は、位置情報取得機能として赤外線受信器を使用し、この無線端末が赤外線受信エリア304、305,306に順次入ると赤外線送信器301、302,303が発信する位置IDを順次受信する。
【0016】
図4は、実際の環境における無線通信エリアと赤外線受信エリアの設置例を示した図である。フロア401は2つの無線通信エリア402、403でカバーされ、さらに複数の赤外線受信エリア404でカバーされている。
【0017】
図5にセンサ機能204を駆動するエリア情報を格納するメモリ205の構成を示す。センサ駆動エリアの情報は、2組の座標情報(x1、y1、x2、y2)で与えられる矩形エリアで管理する場合(501)、1組の座標情報(x3、y3)と1つの半径情報(r1)で管理する場合(502)、接続する無線基地局の基地局番号などの情報で管理する場合(503、504)、位置情報取得用に設置される位置管理用ID番号で管理する場合(505、506)などが考えられる。また、これらの管理方法を複数併用してもよい。さらに、位置情報取得機能が赤外線受信器である場合、参照番号505が示すように位置情報として位置ID“00001001”がメモリ205に格納される。また、参照番号506は位置IDの範囲「00001200」乃至「00001250」を示す。また、参照番号507は「0002」で始まる全ての位置IDを表す赤外線位置情報を示している。
【0018】
図6は図2の無線端末機器101のCPUが実行する処理の例を示すフローチャートである。無線圏内判定機能211は端末機器101が無線基地局の圏内であるか否かを判定し圏内であれば外部と通信が可能であると判定する(ステップ601)。CPU201は無線基地局圏内ではないと判定するとステップ601の処理を連続的又は周期的に繰り返し実行する。無線基地局圏内であると判定すると(ステップ601のYes)、CPU201は位置情報取得機能203を用いて位置ID情報を受信する(ステップ602)。CPU201はステップ603でメモリ205を参照し、受信した位置IDが駆動圏内情報に該当するか否かを判定する。CPU201は、無線端末101がセンサ駆動圏内にいると判定すると、無線端末101が引き続き無線基地局圏内に止まっているか否かをステップ604で判定し、無線基地局圏外であると判定した場合ステップ601に戻り、無線基地局圏内に引き続き止まっていると判定するとステップ605でセンサ機能204を駆動する。センサ機能204が得た情報は無線通信機能202を介し外部に送信される。ステップ605が実行されるとCPU201はステップ601に戻る。あるいは、一定時間センサ機能204を連続定期または周期的に駆動した後ステップ601に戻ってもよい。
【0019】
一方、CPU201は、ステップ603でセンサ駆動圏内であると判定すると、センサ機能204が動作中であれば(ステップ606)該センサ機能を停止し(ステップ607)ステップ601に戻り、動作中でなければステップ606から直ちにステップ601に戻る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の無線端末機器が使用されるシステム全体を示すブロック図。
【図2】図1の無線端末機器の構成を示すブロック図。
【図3】赤外線により無線端末機器の位置IDを送信する複数の赤外線送信器を示す図。
【図4】複数の無線基地局と赤外線送信器がカバーするエリアを示す図。
【図5】無線端末機器が有するセンサ機能を駆動するための駆動圏情報を保持するメモリの内容を示す図。
【図6】図2の無線端末機器の動作を表すフローチャート。
【符号の説明】
【0021】
201 CPU
202 無線通信機能
203 位置情報取得機能
204 センサ機能
205 センサ駆動エリア情報を保持するメモリ
211 無線圏内判定機能
212 省電力制御機能
213 センサ駆動圏内判定機能
301,302,302 赤外線送信器
304,305,306 赤外線送信器がカバーするエリア
401 フロア
402,403 無線通信エリア
404 赤外線位置ID情報受信エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線端末機器の環境を監視しその結果を表す情報を出力するセンサ機能と、
該情報を外部に送信する無線通信機能と、
前記無線端末機器の位置情報を取得する位置情報取得機能と、
前記センサ機能を駆動させる圏内を表す駆動圏内情報を保持する保持機能と、
前記位置情報が該駆動圏内情報に該当するか否かを判定する駆動圏内判定機能と、
該駆動圏内判定機能の判定結果に基づき前記センサ機能を駆動する制御機能からなることを特徴とする無線端末機器。
【請求項2】
請求項1項において、前記無線通信機能が取得する情報に基づいて外部との無線通信が可能か否かを判定する無線圏内判定機能を有し、前記制御機能は該無線圏内判定機能が無線通信が可能であることを示すとき、前記センサ機能を駆動することを特徴とする無線端末機器。
【請求項3】
請求項2項において、前記制御機能は、前記センサ機能が駆動された時点で前記無線圏内判定機能が引き続き外部との無線通信が可能であることを示す場合、前記センサ機能から出力された情報により前記無線通信機能を駆動することを特徴とする無線端末機器。
【請求項4】
請求項1、2又は3において、前記駆動圏内判定機能が、前記位置情報は該駆動圏内情報に該当しないと判定した場合、前記制御機能は前記センサ機能が動作中であれば該センサ機能を停止することを特徴とする無線端末機器。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4項において、前記位置情報は位置ID情報により表され赤外線に変調され空間に送出された赤外線信号であり、前記位置情報取得機能は該赤外線信号を受信し該位置ID情報を検出する赤外線受信器であることを特徴とする無線端末機器。
【請求項6】
請求項1、2、3又は4項において、前記位置情報は位置ID情報により表され無線周波数帯の信号に変調され空間に送出された無線信号であり、前記位置情報取得機能は該無線信号を受信し該位置ID情報を検出する無線受信器であることを特徴とする無線端末機器。
【請求項7】
請求項1、2、3又は4項において、前記位置情報取得機能は無線通信により外部の位置管理機能から前記位置情報を取得することを特徴とする無線端末機器。
【請求項8】
請求項1、2、3又は4項において、前記位置情報はGPS信号であり前記位置情報取得機能はGPS受信器であることを特徴とする無線端末機器。
【請求項9】
請求項1、2、3又は4項において、前記センサ機能は加速度センサであることを特徴とする無線端末機器。
【請求項10】
請求項1、2、3又は4項において、前記センサ機能は温度センサであることを特徴とする無線端末機器。
【請求項11】
請求項1、2または3において、前記センサ機能は地磁気センサであることを特徴とする無線端末機器。
【請求項12】
請求項1、2、3又は4項において、前記センサ機能はマイクロフォンであることを特徴とする無線端末機器。
【請求項13】
請求項1、2、3又は4項において、前記センサ機能はカメラであることを特徴とする無線端末機器。
【請求項14】
a)無線端末機器の位置情報を取得する処理と、
b)該位置情報が所定の駆動圏内情報に該当するか否かを判定する処理と、
c)該処理(b)の判定結果に基づき前記端末機器の環境を監視しその結果を表す情報を出力する処理と、
d)該出力情報を外部に送信する処理とからなることを特徴とする無線端末機器の省電力化方法。
【請求項15】
請求項14項において、前記無線端末機器が外部との無線通信が可能であるとき前記処理(a)を実行することを特徴とする無線端末機器の省電力化方法。
【請求項16】
請求項15項において、前記処理(c)は、前記無線端末機器が外部との無線通信が可能であるとき、実行されることを特徴とする無線端末機器の省電力化方法。
【請求項17】
請求項14、15又は16項において、前記位置情報は位置ID情報により表され赤外線に変調され空間に送出される赤外線信号であり、前記処理(b)は該赤外線信号を受信し該位置ID情報を検出することを特徴とする無線端末機器の省電力化方法。
【請求項18】
請求項14、15又は16項において、前記位置情報は位置ID情報により表され無線周波数帯の信号に変調され空間に送出された無線信号であり、前記処理(b)は該無線信号を受信し該位置ID情報を検出する無線受信器であることを特徴とする無線端末機器の省電力化方法。
【請求項19】
請求項14、15又は16項において、前記処理(b)は無線通信により外部の位置管理機能から前記位置情報を取得することを特徴とする無線端末機器の省電力化方法。
【請求項20】
請求項14、15又は16項において、前記位置情報はGPS信号であり前記処理(b)は該GPS信号を受信することを特徴とする無線端末機器の省電力化方法。
【請求項21】
請求項14、15又は16項において、前記処理(c)は加速度を検出することを特徴とする無線端末機器の省電力化方法。
【請求項22】
請求項14、15、又は16項において、前記処理(c)は温度を検出することを特徴とする無線端末機器の省電力化方法。
【請求項23】
請求項14、15又は16において、前記処理(c)は地磁気を検出することを特徴とする無線端末機器の省電力化方法。
【請求項24】
請求項14、15又は16項において、前記処理(c)は音波を検出することを特徴とする無線端末機器の省電力化方法。
【請求項25】
請求項14、5又は16項において、前記処理(c)は画像を検出することを特徴とする無線端末機器の省電力化方法。
【請求項26】
請求項14ないし25の何れかの省電力化方法を実施するためのコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−35438(P2011−35438A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−276697(P2007−276697)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
2.Bluetooth
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】