説明

センサ端末装置及びセンサネットワークシステム

【課題】センシング対象の自由度が高く且つ低消費電力化を実現することができるセンサ端末装置及びセンサネットワークシステムを提供する。
【解決手段】計測対象の物理量を計測する計測用センサと、起動された場合に計測用センサを非起動状態から起動状態へ切り替える制御部と、計測用センサに比べ低消費電力で駆動し、計測対象の物理量と相関を有する物理量が、所定の起動条件として満たされた場合に制御部を起動させる起動部と、を備えたセンサ端末と、計測用センサによる計測結果の情報を送信する通信部と、端末装置から送信された情報を受信する基地局と、を含むセンサネットワークシステムであって、制御部が起動条件を記憶する記憶部を備えており、基地局が記憶部に記憶された起動条件を更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測用センサにより物理量を計測(測定)した結果を送信するセンサ端末装置、及び当該センサ端末装置を有するセンサネットワークシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信技術、特に無線通信技術の進歩に伴い、複数の計測用センサ付端末(センサ端末装置)を散在させ、その端末同士が協調して環境や物理的状況を採取する無線ネットワークシステムが提唱されている。このようなシステム概念はセンサネットワークシステムと呼ばれており、多様な分野への応用が期待されている。
【0003】
このようなセンサネットワークシステムでは、複数のセンサ端末装置が計測用センサにより計測した結果を集約する基地局装置へ、各センサ端末装置の計測結果を送信することが行われる。
【0004】
例えば、無電力で作動する計測用センサがON状態の時に電源部からの電力を供給可能とする一方、当該計測用センサがOFF状態の時には電源部からの電力を供給不能とした構成からなり、発信部が当該電源部から電力供給された状態で所定の情報を無線で外部(基地局装置)に発信できるワイヤレスセンサが知られている(特許文献1等参照)。つまり、計測用センサが無電力で作動するので、OFF状態の時のワイヤレスセンサ(センサネットワークシステム)の省電力化を図ることが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−108884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のようなワイヤレスセンサでは、無電力で作動する計測用センサ、具体的には、磁性体、形状記憶合金、圧電素子などからなるセンサを用いる必要があるため、物理量を計測するセンサの選択肢が狭い(センシング対象の自由度が低い)という問題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み為されたもので、その目的は、センシング対象の自由度が高く且つ低消費電力化を実現することができるセンサ端末装置及びセンサネットワークシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、計測対象の物理量を計測する計測用センサを有するセンサ端末装置であって、前記計測用センサに比べて低消費電力で駆動可能であり、前記計測対象の物理量と相関性を有する物理量を検出し、検出した物理量に応じた信号を生成する検出部と、
前記検出部により生成された信号を入力し、入力した信号のレベルが予め設定した起動条件を満たす場合に停止状態から起動状態へ移行するとともに、前記計測用センサを停止状態から前記物理量を計測可能な状態である駆動状態へ切り替える切り替え部と、前記起動条件を更新するための更新情報を取得し、取得した更新情報に基づいて前記起動条件を更新する更新部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のセンサ端末装置において、前記起動条件は、入力した信号のレベルが定められた閾値のレベルを上回る場合に満たされ、前記更新情報は、前記閾値のレベルを設定するための情報であることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のセンサ端末装置と、前記センサ端末装置とネットワークを介して接続され当該センサ端末装置との情報の送受信が可能な基地局装置と、を含むセンサネットワークシステムにおいて、前記センサ端末装置は、自機の各部に電力を供給する電源部と、前記駆動状態に切り替えられた計測用センサによる計測結果の情報を前記基地局装置に送信する送信部と、を備え、前記基地局装置は、前記送信された計測結果の情報に基づいて、前記更新情報を生成する更新情報生成部と、前記生成された更新情報を前記センサ端末装置へ送信する基地局送信部と、を有し、前記センサ端末の更新部は、前記基地局送信部より送信された更新情報を取得することを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のセンサネットワークシステムにおいて、前記更新情報生成部は、予め定めた時間内に、前記基地局装置に複数の計測結果の情報が送信された場合に、当該送信された回数に応じて前記更新情報を生成することを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のセンサネットワークシステムにおいて、前記更新情報生成部は、前記送信された回数が予め定めた回数を上回る場合、前記閾値のレベルを現在のレベルよりも高くした更新情報を生成することを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載のセンサネットワークシステムにおいて、前記更新情報生成部は、前記送信された回数が予め定めた回数を下回る場合、前記閾値のレベルを現在のレベルよりも低くした更新情報を生成することを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項3に記載のセンサネットワークシステムにおいて、前記更新情報生成部は、前記送信された計測結果の情報に含まれる計測値に応じて前記更新情報を生成することを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載のセンサネットワークシステムにおいて、前記更新情報生成部は、所定の時間内に連続して予め定めた値を下回る計測値を取得した場合、前記閾値のレベルを現在のレベルよりも高くした更新情報を生成することを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項7に記載のセンサネットワークシステムにおいて、前記更新情報生成部は、所定の時間内に連続して予め定めた値を上回る計測値を取得した場合、前記閾値のレベルを現在のレベルよりも低くした更新情報を生成することを特徴とする。
【0017】
請求項10に記載の発明は、請求項3に記載のセンサネットワークシステムにおいて、前記送信部は、前記電源部より電力の残量に関する電力情報を取得し、取得した電力情報を前記基地局装置に送信可能であり、前記更新情報生成部は、前記送信された電力情報に基づいて、前記電力の残量が予め設定された値以下である場合に、前記閾値のレベルを現在のレベルよりも高くした更新情報を生成することを特徴とする。
【0018】
請求項11に記載の発明は、請求項3〜10の何れか1項に記載のセンサネットワークシステムにおいて、前記センサ端末装置は、前記検出部が周囲環境の物理量の変化に応じて発電することにより駆動する起動用のセンサを含み、前記起動用のセンサにより発電した電力を蓄電可能な蓄電部を有し、前記切り替え部の起動条件が満たされない場合に、前記起動用のセンサで発電した電力が前記蓄電部に蓄電され、前記計測用センサが前記蓄電部に蓄電された電力を使用して自機の故障の有無を検査するメンテナンスモードの動作を実行することを特徴とする。
【0019】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載のセンサネットワークシステムにおいて、前記切り替え部は、前記起動条件が満たされたか否かを複数回にわたって判断した後の時点で、前記起動条件が満たされずに前記計測用センサが前記メンテナンスモードの動作を実行した回数が前記起動条件の満たされた回数を上回る際、次回入力する信号のレベルが予め設定した起動条件を満たす場合に、前記計測用センサへ前記蓄電部に蓄電された電力を給電させて当該計測用センサを前記駆動状態へ切り替えることを特徴とする。
【0020】
請求項13に記載の発明は、請求項11に記載のセンサネットワークシステムにおいて、前記切り替え部は、前記起動条件が満たされたか否かを複数回にわたって判断した後の時点で、前記電源部の電力の残量が予め設定された値以下である際、次回入力する信号のレベルが予め設定した起動条件を満たす場合に、前記計測用センサへ前記蓄電部に蓄電された電力を給電させて当該計測用センサを前記駆動状態へ切り替えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、センシング対象の自由度が高く且つ低消費電力化を実現することができるセンサネットワークシステムを提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るセンサネットワークシステムの構成を示す概略ブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るセンサ端末装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るセンサ端末装置により行われる動作のフローチャートを示す図である。
【図4】本発明の変形例1に係るセンサ端末装置により行われる動作のフローチャートを示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るセンサ端末装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るセンサ端末装置により行われる動作のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るセンサネットワークシステム100の構成を示す概略ブロック図である。
【0024】
本実施形態に係るセンサネットワークシステム100は、複数であるr個のセンサ端末装置101−1〜101−r(端末装置の一例)と、複数の中継局装置111〜117と、複数の基地局装置121〜123と、を備えている。なお、センサ端末装置や中継局装置や基地局装置のそれぞれの個数は、図1に図示されるものに限られるものではなく、任意の数が用いられてもよい。
【0025】
各センサ端末装置101−1〜101−rは、後述するそれぞれに備えられた計測用センサによる計測結果の情報(データ)を無線で送信する。
各中継局装置111〜117は、それぞれが通信する領域に存在するセンサ端末装置101−1〜101−rから無線送信された情報を受信して、その情報を有線で送信する。
各基地局装置121〜123は、それぞれの配下に存在する中継局装置111〜117から有線で送信された情報を受信する。
【0026】
これにより、本実施形態に係るセンサネットワークシステム100では、各センサ端末装置101−1〜101−rに備えられた計測用センサによる計測結果の情報を基地局装置121〜123により収集して、その情報を記憶装置(図示せず)に記憶するなどして管理することができる。
【0027】
なお、本実施形態では、センサ端末装置101−1〜101−rから送信された情報が中継局装置111〜117を介して基地局装置121〜123へ伝送される構成を示したが、他の例として、センサ端末装置101−1〜101−rから送信された情報が直接に基地局装置121〜123へ伝送される構成が用いられてもよい。また、センサ端末装置と中継局装置間、あるいは中継局装置と基地局装置間それぞれの通信については、上記通信方式に限られず、センサ端末装置と中継局装置間に有線の通信が用いられてもよく、或いは、中継局装置と基地局装置間に無線の通信が用いられてもよい。
【0028】
次いで、センサ端末装置101−1〜101−rに備わる各部構成について説明する。なお、以下では、同一構成を備えるセンサ端末装置101−1〜101−rについて区別することなく言及する場合、便宜上「センサ端末装置101」として説明する。図2は、本発明の第1の実施形態に係るセンサ端末装置101(端末装置の一例)の構成を示す概略ブロック図である。
【0029】
本実施形態に係るセンサ端末装置101は、起動部11と、制御部12と、センサ部13と、通信部14と、電源15と、を備えている。ここで、センサ部13は、計測用センサ21−1〜21−nを備えている。なお、図2では、センサ部13に計測用センサが複数個備わる例を示しているが、単数でも良い。
【0030】
起動部11は、センサ端末装置101の周囲の環境の変化を検出する起動用センサを1つ以上備えている。ここで、起動用センサは、周囲の環境の変化を検出する上で電力を必要としないセンサである。このため、起動部11は電源15に接続されていない。具体的には、起動用センサとしては、例えば、磁性体、熱電素子、圧電素子、焦電素子などの材料を使用したセンサを用いることができる。このような起動用センサは、待機中の消費電力が実質上ゼロであるにもかかわらず、センサ端末装置101の配設位置近傍の環境(例えば、電磁波、温度、圧力、空気流、音波、微粒子流などのいずれか)の変化を検出できる。
【0031】
例えば、起動用センサとして圧電体を使用したフローセンサを用いると、空気流の流速に応じた電圧を発生する。この場合、センサ端末装置101の周囲の流体の速度が一定速度を超えると、発生する電圧レベルが高まるため、センサ端末装置101の周囲の環境に変化が生じたことを検知できる。
【0032】
なお、本実施形態では、起動用センサとして、周囲の環境の変化を検出するために外部からの電力の供給を必要としないセンサが用いられているが、他の例として、周囲の環境の変化を検出するために外部から計測用センサに比べ低電力の供給を必要とするセンサが用いられてもよい。この場合には、例えば、起動用センサに電池を備えて、当該電池からの電力を当該起動用センサへ供給する構成や、或いは、センサ端末装置101に備えられた電源15からの電力を起動用センサへ供給する構成を用いることができる。外部からの電力の供給を受けながらも、計測用センサに比べ低消費電力で駆動する起動用センサを用いることで、低消費電力のセンサ端末装置を実現することができる。
【0033】
そして、起動部11は、起動用センサによりセンサ端末装置101の周囲の環境に変化が生じたことを検知した場合に、検知時の電圧レベルに応じた信号(割り込み信号)を生成し、生成した割り込み信号を制御部12へ向けて送信する。ここで、制御部12は、常に電源15から電力が供給されているが、通常時はスリープ状態(制御部12の停止状態)にある。そして、制御部12は、起動部11から割り込み信号を取得した場合に、スリープ状態から起動状態へ移行する。その結果、起動部11は、起動のためのスイッチとして機能する。なお、本実施形態では、制御部12が起動していない時の状態として、スリープ状態を例示しているが、起動状態よりも消費電力が少ない他の状態を用いてもよい。
【0034】
なお、本実施形態では、起動部11は、センサ端末装置101の周囲の環境に変化が生じたことを検知した場合に、制御部12へ割り込み信号を送信するように構成したが、他の例として、センサ端末装置101の周囲の環境に変化が生じたか否かにかかわらず、起動部11が起動用センサによる検出結果(検出レベル)に応じた信号を逐次生成し、生成した信号を割り込み信号として毎回制御部12へ送信するように構成してもよい。この場合、制御部12は、入力される割り込み信号のレベルが予め定めた閾値を超えたときに、実際に起動部11による割り込み処理を実行する。
【0035】
さらに、本実施形態では、起動部11が制御部12を起動させるための信号として、割り込み信号を用いるが、他の信号が用いられてもよい。具体的には、電源が入ると制御部が起動するといった電源の立ち上がり信号等の信号であってもよい。
【0036】
また、起動部11に複数の起動用センサが備えられる場合には、一例として、各々の起動用センサが、独立に動作して、所定の起動条件を満たす周囲の環境の変化を検出した場合に制御部12へ割り込み信号を送信する構成を用いることができ、本実施形態ではこの構成を用いている。ただし、他の例として、起動部11に備えられた複数の起動用センサの検出状況の組み合わせが所定の起動条件を満たした場合に、起動部11が制御部12へ割り込み信号を送信する構成を用いることもできる。また、起動部11に複数の起動用センサが備えられる場合には、これら複数の起動用センサとしては、同じ物理量を同じ感度や分解能で検出するセンサが用いられてもよく、或いは、同じ物理量を異なる感度や分解能で検出するセンサが用いられてもよく、或いは、異なる物理量を検出するセンサが用いられてもよく、或いは、これらの組み合わせが用いられてもよい。
【0037】
制御部12は、起動部11より出力された割り込み信号を入力するための複数の信号入力端子121と、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)等で構成された記憶部16と、を備えている。
【0038】
信号入力端子121は、それぞれ、予め電圧値等の信号レベルの閾値が設定され、当該閾値を上回る信号が入力された場合に、その信号を制御部12に対して出力するように構成された端子である。そして、信号入力端子121各々には異なる閾値が設定されている。
【0039】
記憶部16は、CPU(図示省略)が、入力された割り込み信号に応じて、制御部12をスリープ状態から起動状態へ移行させるための条件(起動条件)を設定する起動プログラム91を記憶する。また、制御部12は、起動状態になると、センサ部13に備えられた各計測用センサ21−1〜21−nへ電源15からの電力を供給することにより、当該各計測用センサ21−1〜21−nを起動する。そして、制御部12は、各計測用センサ21−1〜21−nから入力されて取得した計測結果を通信部14へ出力する。
【0040】
ここで、起動プログラム91には、CPUによって実行された際に、複数の信号入力端子121のうち、何れの信号入力端子121より割り込み信号が入力された場合に起動するかが記載されている。つまり、CPUは、当該起動プログラム91を実行することによって、使用する信号入力端子121を適宜選択することができるので、入力された割り込み信号が選択された信号入力端子121に設定される閾値を上回るか否かによって、制御部12をスリープ状態から起動状態へ移行させるための条件を予め設定することが出来る。
【0041】
なお、制御部12は、デジタル信号の処理で動作する。そのため、各計測用センサ21−1〜21−nが計測結果をアナログ信号で出力する場合、各計測用センサ21−1〜21−nと制御部12との間には図示しないA/D(Analog to Digital)変換器が設けられる。つまり、計測用センサ21−1〜21−nの出力する計測結果(アナログ信号)はA/D変換機にてデジタル信号へ変換された上で、制御部12へ入力される。
センサ部13は、複数の計測用センサ21−1〜21−nを含んで構成される。
【0042】
各計測用センサ21−1〜21−nは、制御部12によって起動されると(停止状態から物理量を計測可能な駆動状態に切り替えられると)、準備時間を経た後(計測時間)に、各々の計測対象(物理量)を計測する。この計測結果は制御部12へ出力される。ここで、各計測用センサ21−1〜21−nとしては、例えば、振動センサ、加速度センサ、ビデオカメラ、煙センサ、湿度センサなど様々なセンサを用いることができる。そして、各計測用センサ21−1〜21−nにより、例えば、温度、湿度、流量、流速、照度、人感など、多様な物理量を計測することができる。なお、計測用センサ21−1〜21−nの停止状態は、電源部15からの電力供給が無い(つまり、電力消費の無い)状態である。
【0043】
ここで、計測用センサ21−1〜21−nが計測する対象(物理量)と起動用センサが検出する対象(物理量)には、相関性(因果関係)がある。相関性とは、例えば、計測用センサ21−1〜21−nが計測する物理量と起動用センサが検出する物理量とが同じ物理量からなる場合や、起動用センサにより検出される物理量の変化度合いに応じて、計測用センサ21−1〜21−nが計測する物理量が一定の規則性をもって変化する場合などを指す。具体的には、センサの設置位置近傍を人が往来すると、当該センサにより検出される光量、振動(周波数や振幅)、温度値、などの物理量が相関的に変化し得る。そこで、本実施形態では、起動用センサが上述の物理量のうちの一以上の物理量を検出し、計測用センサ21−1〜21−nが起動用センサと同一又は異なる1つ以上の物理量を計測するように構成する。
【0044】
なお、本実施形態では、各計測用センサ21−1〜21−nとして、周囲の環境の変化を検出するために電力を必要とするセンサを用いているが、周囲の環境の変化を検出するために電力を必要としないセンサが一部に用いられてもよい。そして、このような電力を要しないセンサは起動用センサとしても用いることが可能である。
【0045】
本実施形態では、各計測用センサ21−1〜21−nとしては、計測時間においてその計測結果をアナログ信号で出力するセンサが用いられているが、計測結果をデジタル信号で出力するセンサを用いてもよい。
【0046】
通信部14は、制御部12から入力された計測結果を、中継局装置111〜117を介して基地局装置121〜123へ送信する。また、通信部14は、電源15の電力の残量を表す残量情報を電源15(あるいは制御部12)より取得し、上記計測結果とともに基地局装置121〜123へ送信する。なお、通信部14では、有線の通信が行われてもよく、或いは、無線の通信が行われてもよい。
【0047】
電源15は、制御部12や、センサ部13に備えられた各計測用センサ21−1〜21−nや、通信部14へ電力を供給する。本実施形態では、制御部12が、電源15からセンサ部13に備えられた各計測用センサ21−1〜21−nへの電力の供給を制御する。なお、電源15としては、例えば、蓄電池などの電池を用いることができる。
【0048】
次いで、基地局121〜123について説明する。
基地局121〜123は、図示は省略するが、当該基地局121〜123の動作全般を包括的に制御する制御部、中継装置との通信を行うための通信部、等を含んで構成される。
【0049】
当該基地局121〜123は、通信部により各センサ端末装置101−1〜101−rから中継局装置111〜117を介して計測用センサによる計測結果の情報(データ)、電源15の電力の残量情報を取得する。そして、基地局121〜123は、制御部により予め定めた時間内において取得した計測結果及び/又は当該時間内における計測結果の受信回数、電力の残量情報等を基に更新プログラム911を作成する。そして、基地局121〜123が、通信部を介して作成した更新プログラム911を制御部12に送信すると、制御部12(CPU)が受信した更新プログラム911に基づいて、記憶部16に予め記憶されている起動プログラム91を更新する。
【0050】
ここで、更新プログラム911は、センサ端末装置101の記憶部16に記憶された起動プログラム91の更新用の(アップデート用)プログラムであり、使用する信号入力端子121を変更するためのプログラム(更新情報)である。つまり、更新プログラム911は、計測結果の情報(データ)及び/又は受信回数、電力の残量情報等に基づいて、制御部12が起動部11より出力された割り込み信号を取得するか否か(制御部12をスリープ状態から起動状態に移行させるか否か)の起動条件を変更するためのプログラムである。
【0051】
具体的には、例えば、予め定めた時間内における計測結果の受信回数がある設定回数よりも多いような場合、頻繁に制御部12やセンサ部13が起動しており、電源15による電力消費量が嵩んでいることを示唆する。そのため、このような場合、基地局121〜123は、現在よりも設定された閾値の大きい信号入力端子121が使用されるための更新プログラム911を生成する。反対に、予め定めた時間内における計測結果の受信回数がある設定回数よりも少ないような場合、現在制御部12に設定された起動条件が適切でない(つまり、制御部12を起動状態に移行させるための閾値が高すぎる)ため、十分な量の計測結果が取得出来ていないと推測される。そのため、このような場合、基地局121〜123は、現在よりも設定された閾値の小さい信号入力端子121が使用されるための更新プログラム911を生成する。
【0052】
また、例えば、予め定めた閾値を下回る計測結果(に係る物理量)を、一定時間連続して受信したような場合、本来起動/計測すべきでないようなタイミングで制御部12やセンサ部13が起動しており、電源15による電力消費量が嵩んでいる可能性がある。そのため、このような場合、基地局121〜123は、現在よりも設定された閾値の大きい信号入力端子121が使用されるための更新プログラム911を生成する。反対に、予め定めた閾値を上回る計測結果を、一定時間連続して受信したような場合、現在のセンサ部13による計測間隔が粗すぎる可能性がある。そのため、このような場合、基地局121〜123は、現在よりも設定された閾値の小さい信号入力端子121が使用されるための更新プログラム911を生成する。
【0053】
さらに、制御部12やセンサ部13の停止/起動を繰り返していくうちに、残量情報に係る電源15の電力残量がある設定値以下になったような場合、基地局121〜123は、現在よりも設定された閾値の大きい信号入力端子121が使用されるための更新プログラム911を生成することで、制御部12やセンサ部13の起動頻度を低下させて、電源15の長寿命化を図ることができる。
【0054】
なお、好ましい実施形態の例として、制御部12は、各計測用センサ21−1〜21−nが準備時間である間、スリープ状態になり、電力の消費を抑制する。そして、各計測用センサ21−1〜21−nが準備時間を終えると、制御部12は、再び起動して、当該各計測用センサ21−1〜21−nによる計測結果を取得する。ここで、各計測用センサ21−1〜21−nが準備時間である間に制御部12がスリープ状態になる構成としては、例えば、各計測用センサ21−1〜21−nの準備時間が終了するよりも少し前に制御部12がスリープ状態から起動状態へ戻るような構成が用いられてもよい。また、ある計測用センサが準備時間であるが他の計測用センサによる計測結果を取得する必要があるときには、制御部12はスリープ状態にはならずに起動状態となる。
【0055】
(起動プログラムの更新処理)
図3は、本実施形態に係るセンサネットワークシステム100により行われる起動プログラムの更新処理を説明するためのフローチャートである。なお、このフローチャートの説明では、起動部11に備えられた起動用センサによる検出対象の検出の有無に応じた動作を1回の動作として説明するが、本実施形態では、このような動作が常時行われている。また、本フローチャートにおいて、ステップS6の時点で、予め定めた時間が経過するまでステップS1〜S5までの処理が繰り返し実行されているものとする。
【0056】
まず、制御部12がスリープ状態である時に、起動部11に備えられた起動用センサが周囲の環境に変化が生じたか否かを判断する(ステップS1)。そして、起動用センサは、ステップS1にて変化が生じたと判断する場合(ステップS1;Y)、割り込み信号を生成して制御部12に向けて送信する。 次いで、起動条件を満たす場合(ステップS2;Y)、即ち、送信された割り込み信号が、制御部12が起動用プログラムを実行して選択した信号入力端子121の信号レベルの閾値を上回る場合、割り込み信号がCPUへ入力されて、制御部12はスリープ状態から起動状態に移行する(ステップS3)。一方、起動条件を満たさない場合(ステップS2;N)、即ち、送信された割り込み信号が、選択した信号入力端子121の信号レベルの閾値を下回る場合、割り込み信号がCPUへ入力されず、制御部12はスリープ状態を継続する。
【0057】
次いで、制御部12は、電源15からの電力を各計測用センサ21−1〜21−nへ供給することで各計測用センサ21−1〜21−nを起動して、当該計測用センサ21−1〜21−nに計測させる(ステップS4)。そして、制御部12は、各計測用センサ21−1〜21−nから取得した計測結果、電源15の電力の残量情報を中継局装置111〜117を介して基地局装置121〜123へ送信する(ステップS5)。
【0058】
次いで、基地局装置121〜123は、予め定めた時間内においてセンサ端末装置101より取得した計測結果及び/又は当該時間内における計測結果の受信回数、残量情報を基に更新プログラム911を作成する(ステップS6)。そして、基地局装置121〜123は、中継局装置111〜117を介して作成した更新プログラム911をセンサ端末装置101に送信する(ステップS7)。
【0059】
次いで、制御部12は、ステップS7にて送信された更新プログラム911に基づいて、記憶部16に予め記憶されている起動プログラム91を更新する(ステップS8)。そして、制御部12は、更新した起動プログラム91を実行することにより、起動条件を変更する(ステップS9)。なお、制御部12は、ステップS12の終了後、再びスリープ状態に移行する。
【0060】
以上のように、本実施形態に係るセンサ端末装置101及びセンサネットワークシステム100では、制御部12が起動条件を満たすまでは計測用センサ21−1〜21−nが電力を消費しないため、消費電力が低減する。但し、制御部12がスリープ状態時に電力を消費する構成をとる場合、制御部12が起動条件を満たす前でもその分の電力のみ消費される。しかも、本センサ端末装置101及びセンサネットワークシステム100では、計測用センサが、磁性体、形状記憶合金、圧電素子などからなる無電力で作動するセンサに限定されないので、センシング対象の自由度が高い。
【0061】
したがって、センサ端末装置101及びセンサネットワークシステム100は、センシング対象の自由度が高く且つ低消費電力化を実現することができるセンサネットワークシステムといえる。
【0062】
なお、この効果は、起動用センサが自己で発電せずに電源15から計測用センサに比べ低電力の供給を受けて駆動する場合にも得られる。また、起動用センサが環境変化に応じて自己で発電して駆動する場合には、更に節電の効果を得ることができる。
特に、センシングが必要な時間が実時間に占める割合の低い環境下でセンサネットワークシステム100が使用される場合には、消費電力の低減効果が大きい。
【0063】
従って、本実施形態に係るセンサ端末装置101及びセンサネットワークシステム100では、消費電力(待機電力)を大幅に削減することができ、例えば電池からなる電源15の寿命を延ばすことができる。これにより、センサ端末装置101に対する電池の交換などのメンテナンスの頻度や費用を削減することができ、また、センサネットワークが環境に与える影響(例えば、電力消費量や電池の廃棄)を低減することができる。また、本実施形態によらないものと比べて電源15の寿命を同じにすればよい場合には、電源15として用いられる例えば電池の大きさを小さくすることができ、これにより、センサ端末装置101の大きさを小さくすることができる。
【0064】
また、周囲の環境の変化に基づいて、所定の起動条件が満たされたときにだけ、制御部12や計測用センサ21−1〜21−nが動作するため、効率的である。
また、起動用センサとして発電型のセンサが用いられる場合には、制御部12への割り込み信号の生成が容易である。
【0065】
また、本実施形態に係るセンサ端末装置101では、起動用センサとは別に、計測用センサ21−1〜21−nを備えているため、これらを異ならせることが可能である。これにより、計測用センサ21−1〜21−nについて、センサの選択の自由度(設計の自由度)を高めることができ、様々な種類のセンサを用いることができ、センサ端末装置101を高機能化することができる。
【0066】
従って、本実施形態に係るセンサ端末装置101では、高性能なセンシングと低消費電力化を実現することができる。
ここで、本実施形態に係るセンサ端末装置101の構成は、次のようにとらえることも可能である。
【0067】
すなわち、センサ端末装置101は、1つ以上の計測用センサ21−1〜21−nと、計測用センサ21−1〜21−nが非起動状態である第一消費電力状態と、計測用センサ21−1〜21−nが起動状態であり前記第一消費電力状態よりも電力を消費する第二消費電力状態とで切り替える制御部12と、制御部12に対して当該制御部12を起動する割り込み信号を送信する起動部11と、計測用センサ21−1〜21−nから制御部12を介して得られる計測結果の情報を外部と通信する通信部14と、計測用センサ21−1〜21−nと制御部12と通信部14へ電力を供給する電源15と、を備える。
また、このようなセンサ端末装置101の起動方法は、次のようにとらえることも可能である。
【0068】
すなわち、センサ端末装置101では、環境の変化に基づいて起動部11が起動するステップと、起動した起動部11が割り込み信号を制御部12へ送信して当該制御部12を起動するステップと、制御部12が、その起動状態に応じて、計測用センサ21−1〜21−nが非起動状態である第一消費電力状態と、計測用センサ21−1〜21−nが起動状態であり前記第一消費電力状態よりも電力を消費する第二消費電力状態とで切り替えるステップと、を有する。
ここで、第一消費電力状態では、必ずしも制御部12の消費電力がゼロである状態が用いられなくてもよく、例えば、制御部12で起動時よりも少ない電力を消費してもよい。
【0069】
(変形例1)
上記第1の実施形態に係るセンサネットワークシステム100では、制御部12の起動条件は基地局装置121〜123の判断に基づいて更新されるように構成したが、本変形例1に係るセンサ端末装置101bのごとく、制御部12自身が更新を行ってもよい。なお、本変形例において、センサ端末装置101bは、必ずしも基地局装置121〜123や中継局装置111〜117と接続されている必要はない。
【0070】
この場合、制御部12は、計測用センサより計測結果の情報(データ)を取得すると、当該情報に基づいて自機の起動条件を更新するための更新プログラム911(起動プログラム91のアップデート用のプログラム)を作成する。そして、制御部12は、作成した更新プログラム911に基づいて起動条件の更新(使用する信号入力端子121の変更)を行う。
【0071】
ここで、本変形例では、図3にて説明したセンサネットワークシステム100による起動プログラムの更新処理は、センサ端末装置101bにより図4に示す処理で代替される。
【0072】
具体的には、制御部12は、ステップS4にて、計測用センサ21−1〜21−nを起動して、当該計測用センサ21−1〜21−nに計測を実施させると、当該計測結果及び電源15の電力の残量情報を取得する(ステップS5b)。次いで、制御部12は、ステップS5bにて取得した計測結果及び残量情報に基づいて、更新プログラム911を作成する(ステップS6b)。そして、制御部12は、ステップS8以降の処理を実施することにより、起動プログラムの更新処理を実行できる。
【0073】
以上、本変形例に係るセンサ端末装置101bよると、第1の実施形態に係るセンサネットワークシステム100と同様の効果が得られることは勿論、基地局装置121〜123(や中継局装置111〜117)との接続が出来ないような状態にあっても、制御部12の起動条件を逐次適切なものに更新することができる。なお、本変形例では、センサ端末装置101bを、自機に備わる計測用センサ21−1〜21−nの計測結果に基づいて起動条件を更新するように構成したが、第1の実施形態の如く、中継局装置111〜117を介して他のセンサ端末装置101bからも計測結果を取得して、複数のセンサ端末装置101bによる計測結果に基づいて起動条件を更新するように構成しても勿論良い。
【0074】
(第2の実施形態)
次いで、第2の実施形態に係るセンサ端末装置101aについて説明する。図5は、本発明の第2の実施形態に係るセンサ端末装置101a(端末装置の一例)の構成を示す概略ブロック図である。
【0075】
本実施形態に係るセンサ端末装置101aは、図1に示される第1の実施形態に係るセンサ端末装置101に備わるものと同様の構成として、起動部11と、制御部12と、センサ部13と、通信部14と、電源15と、がある。更に、センサ端末装置101aは、充電部41を備える。
【0076】
ここで、本実施形態に係るセンサネットワークシステム100の構成や動作は、図1および図2に示される第1の実施形態に係るセンサ端末装置101と比べて、充電部41を備えている点に関連する部分以外は同様であるので、説明を省略する。以下では、第1実施形態とは異なる点について詳しく説明する。
【0077】
本実施形態では、起動部11に備えられる起動用センサとして、周囲の環境の変化を検出するために電力を必要とせず、環境変化に応じて自己で発電して駆動するセンサを用いる。自己で発電して駆動するセンサとは、具体的には、風速計のように空気流を受けて自己発電するものなどである。
【0078】
そして、起動部11は、起動用センサによる発電の量が制御部12を起動させるのに十分ではなかった場合、すなわち、所定の起動条件を満たさない(制御部12の起動電力に満たなかった)場合には、発電した電力を充電部41に蓄電(充電)する。
【0079】
ここで、起動部11は、起動用センサによる発電の量が制御部12を起動させるのに十分である場合、すなわち、所定の起動条件を満たす(制御部12の起動電力を満たす)場合には、発電した電力を使用して制御部12を起動させて駆動させるとともに、発電した電力のうちで余った電力を充電部41に蓄電する。また、例えば、起動部11が、所定の起動条件を満たさない場合にも、発電した電力を充電部41に蓄電する構成としてもよい。
【0080】
充電部41は、起動部11から供給される電力により蓄電する蓄電池等である。そして、充電部41は、蓄電した電力を制御部12や、センサ部13に備えられた計測用センサ21−1〜21−nや、通信部14へ供給することが可能である。ここで、充電部41は、当該充電部41が完全に充電された場合に、計測用センサ21−1〜21−nへの電力供給を行う。また、充電部41が完全に充電された場合に、当該充電部41の電力を使用して、計測用センサ21−1〜21−nの故障の有無を検査するメンテナンスモードの動作が実行される。ここで、メンテナンスモードの動作を実行する機能は、例えば、センサ部13に備わる。
【0081】
また、充電部41は、本実施形態では、蓄電池(2次電池)が用いられているが、コンデンサなどを用いてもよい。
なお、本実施形態では、充電部41が完全に充電された場合に、計測用センサ21−1〜21−nへの電力供給や、計測用センサ21−1〜21−nの故障の有無を検査するメンテナンスモードの動作の実行を行う構成としたが、充電部41が、任意に設定された所定の閾値以上の量、充電された場合に、このような電力供給やメンテナンスモードの動作の実行を行う構成としてもよい。
【0082】
(起動プログラムの更新処理)
次いで、第二の実施形態に係るセンサネットワークシステム100により行われる起動プログラムの更新処理を説明する。
図6は、本実施形態に係るセンサ端末装置101aにより行われる動作のフローチャートを示す図である。なお、図6において、図3に示す起動プログラムの更新処理と同一の処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0083】
まず、ステップS2にて起動条件を満たさない(すなわち、起動用センサによる発電量が制御部12の起動電力に満たない)場合(ステップS2;N)に、充電部41の充電がフルになって完了しているときには(ステップS16a;Y)、当該充電部41に蓄電された電力を使用してセンサ部13がメンテナンスモードの動作を実行する(ステップS17a)。一方、充電部41の充電がフルになっておらず完了していないときには(ステップS16a;N)、起動部11から充電部41への充電を行う(ステップS18a)。ここで、充電が完了すると充電部41より充電完了を示唆する割り込み信号が制御部12の割り込み信号端子121に入力される。つまり、制御部12はその割り込み信号が入力されたか否かに応じて、ステップS16aの判断を行う。そして、制御部12に当該充電完了を示唆する割り込み信号が入力され制御部12が起動した場合、センサ部13に対して充電部41の電力を供給させることで、センサ部13はメンテナンスモードの動作を実行可能となる。
【0084】
さらに、制御部12は、ステップS4aにおいて、各計測用センサ21−1〜21−nを起動して計測させる上で、以下の処理を行う。具体的には、制御部12は、現時点(起動条件が満たされたか否かを複数回にわたって判断した後の時点)で、起動条件を満たした回数(つまり、ステップS3〜S9までの処理を行った回数)と、起動条件を満たさずにメンテナンスモードの動作を実行した回数(つまり、ステップS17の処理を行った回数)と、をそれぞれカウントする。そして、制御部12は、メンテナンスモードの動作を実行した回数が起動条件を満たした回数を上回る場合、ステップS4aにおいて、計測用センサ21−1〜21−nへ充電部41に蓄電された電力を給電させて、その電力で計測させる(計測用センサ21−1〜21−nを駆動状態へ切り替える)。さらに、制御部12は、ステップS4aにおいて、電源15の電力の残量が予め設定された値以下であるような場合には、メンテナンスモードの動作を実行した回数が起動条件を満たした回数を上回らなくとも、計測用センサ21−1〜21−nへ充電部41に蓄電された電力を給電させて、その電力で計測させる。
【0085】
なお、本実施形態では、制御部12がスリープ状態である時に、起動部11により制御部12が起動され、制御部12により各計測用センサ21−1〜21−nへ電源15からの電力を供給するように制御することで各計測用センサ21−1〜21−nが起動され、各計測用センサ21−1〜21−nによる計測が行われて、その計測結果が制御部12を介して通信部14から送信される場合に、制御部12は、計測結果の取得が終了した計測用センサ21−1〜21−nへの電源15からの電力の供給を停止するように制御し、当該制御部12は再びスリープ状態へ移行する。
【0086】
以上のように、本実施形態に係るセンサ端末装置101aでは、第1の実施形態に係るセンサ端末装置101と同様に、高性能なセンシングと低消費電力化を実現することができる。
また、本実施形態に係るセンサ端末装置101aでは、起動部11が発電した電力を充電部41に蓄電して、蓄電した電力を使用することにより、電源15の電力の消費を減らすことができる。
【0087】
また、本実施形態に係るセンサ端末装置101aでは、充電部41に蓄電された電力を使用して計測用センサ21−1〜21−nのメンテナンスの動作を実行することにより、例えば、計測用センサ21−1〜21−nにより実際に計測を行うよりも事前に故障を知ることができ、故障した計測用センサ21−1〜21−nが駆動しないことによるエラーを防ぐことができる。
【0088】
ここで、例えば、定期的に通信を行うセンサ端末装置では、定期的に通信を行うことで、故障が発見されやすいが、本実施形態に係るセンサ端末装置101aでは、起動部11における起動条件が満たされたときに通信を行うため、不定期に通信を行うこととなり、故障が発見されにくいと考えられる。これに対して、本実施形態に係るセンサ端末装置101aでは、制御部12が起動していない時においても、メンテナンスの動作を実行することで、故障を発見することができ、大きな効果を奏することができる。なお、このようなメンテナンスに関して、本実施形態に係るセンサ端末装置101aでは、例えば、タイマーを備えて、定期的に起動して計測用センサの故障の有無を検出するような構成や動作が不要であるため、このような構成や動作に必要なタイマーをなくして、消費電力を低減することができる。
【0089】
ここで、本実施形態に係るセンサネットワークシステムは、様々な場面に適用されてもよく、例えば、クリーンルーム内のセンサネットワークや、ホームセキュリティのセンサネットワークや、環境モニタリングのセンサネットワークなどに適用することが可能である。一例として、クリーンルーム内のセンサネットワークにおいて、各センサ端末装置101−1〜101−rに計測用センサとしてパーティクルセンサやフローセンサなどを備え、これらの計測用センサによる計測結果を基地局装置121〜123により収集して管理することができる。パーティクルセンサやフローセンサなどの計測用センサから連続してクリーンルームの管理上問題とならないような数値の測定結果が送られてきた場合、起動プログラム91に記載されている閾値は、低すぎると考えられる。その場合は、基地局装置121〜123はより高い閾値を持った起動プログラム91を作成し、記憶部16の起動プログラム91を更新する。それにより、各センサ端末装置101−1〜101−rの起動回数が減少し、電源15の寿命を延ばすことができる。他方、パーティクルセンサやフローセンサなどの計測用センサから連続してクリーンルームの管理上問題となる数値を大幅に上回った測定結果が送られてきた場合、起動プログラム91に記載されている閾値は、高すぎると考えられる。その場合は、基地局装置121〜123はより低い閾値を持った起動プログラム91を作成し、記憶部16の起動プログラム91を更新する。それにより、各センサ端末装置101−1〜101−rの起動回数が増加し、極め細やかな管理を行うことができる。
【0090】
また、パーティクルセンサやフローセンサなどの計測用センサから一定時間内に測定結果が送られてくる回数が一定値、例えば、1分に1回、を超えた場合は起動プログラム91に記載されている閾値は、低すぎると考えられる。その場合は、基地局装置121〜123はより高い閾値を持った起動プログラム91を作成し、記憶部16の起動プログラム91を更新する。
【0091】
同様にパーティクルセンサやフローセンサなどの計測用センサから一定時間内に測定結果が送られてくる回数が一定値、例えば、10日に1回、を下回った場合は起動プログラム91に記載されている閾値は、高すぎると考えられる。その場合は、基地局装置121〜123はより低い閾値を持った起動プログラム91を作成し、記憶部16の起動プログラム91を更新する。
【0092】
これらの動作を繰り返すことにより、各センサ端末装置101−1〜101−rは適切な起動プログラム91に基づいて動作することになる。
従って、本実施形態に係るセンサネットワークシステムでは、高性能なセンシングと低消費電力化を実現することができる。
【0093】
なお、第2の実施形態においても、変形例1に係るセンサ端末装置101bのごとく、制御部12自身が起動条件を更新するように構成しても当然良い。
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はその実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明に係る端末装置、通信システム及び端末装置の起動方法は、例えば、様々なセンサネットワークに適用することが可能なものである。
【符号の説明】
【0095】
11・・・起動部(検出部)
12・・・制御部(切り替え部、更新部)
13・・・センサ部
14・・・通信部(送信部)
15・・・電源(電源部)
16・・・記憶部
21−1〜21−n・・・計測用センサ
41・・・充電部(蓄電部)
91・・・起動プログラム
100・・・センサネットワークシステム
101−1〜101−r(101、101a)・・・センサ端末装置
111〜117・・・中継局装置
121〜123・・・基地局装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象の物理量を計測する計測用センサを有するセンサ端末装置であって、
前記計測用センサに比べて低消費電力で駆動可能であり、前記計測対象の物理量と相関性を有する物理量を検出し、検出した物理量に応じた信号を生成する検出部と、
前記検出部により生成された信号を入力し、入力した信号のレベルが予め設定した起動条件を満たす場合に停止状態から起動状態へ移行するとともに、前記計測用センサを停止状態から前記物理量を計測可能な状態である駆動状態へ切り替える切り替え部と、
前記起動条件を更新するための更新情報を取得し、取得した更新情報に基づいて前記起動条件を更新する更新部と、
を備えることを特徴とするセンサ端末装置。
【請求項2】
前記起動条件は、入力した信号のレベルが定められた閾値のレベルを上回る場合に満たされ、
前記更新情報は、前記閾値のレベルを設定するための情報であることを特徴とする請求項1に記載のセンサ端末装置。
【請求項3】
請求項2に記載のセンサ端末装置と、前記センサ端末装置とネットワークを介して接続され当該センサ端末装置との情報の送受信が可能な基地局装置と、を含むセンサネットワークシステムにおいて、
前記センサ端末装置は、
自機の各部に電力を供給する電源部と、
前記駆動状態に切り替えられた計測用センサによる計測結果の情報を前記基地局装置に送信する送信部と、を備え、
前記基地局装置は、
前記送信された計測結果の情報に基づいて、前記更新情報を生成する更新情報生成部と、
前記生成された更新情報を前記センサ端末装置へ送信する基地局送信部と、を有し、
前記センサ端末の更新部は、前記基地局送信部より送信された更新情報を取得することを特徴とするセンサネットワークシステム。
【請求項4】
前記更新情報生成部は、予め定めた時間内に、前記基地局装置に複数の計測結果の情報が送信された場合に、当該送信された回数に応じて前記更新情報を生成することを特徴とする請求項3に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項5】
前記更新情報生成部は、前記送信された回数が予め定めた回数を上回る場合、前記閾値のレベルを現在のレベルよりも高くした更新情報を生成することを特徴とする請求項4に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項6】
前記更新情報生成部は、前記送信された回数が予め定めた回数を下回る場合、前記閾値のレベルを現在のレベルよりも低くした更新情報を生成することを特徴とする請求項4に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項7】
前記更新情報生成部は、前記送信された計測結果の情報に含まれる計測値に応じて前記更新情報を生成することを特徴とする請求項3に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項8】
前記更新情報生成部は、所定の時間内に連続して予め定めた値を下回る計測値を取得した場合、前記閾値のレベルを現在のレベルよりも高くした更新情報を生成することを特徴とする請求項7に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項9】
前記更新情報生成部は、所定の時間内に連続して予め定めた値を上回る計測値を取得した場合、前記閾値のレベルを現在のレベルよりも低くした更新情報を生成することを特徴とする請求項7に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項10】
前記送信部は、前記電源部より電力の残量に関する電力情報を取得し、取得した電力情報を前記基地局装置に送信可能であり、
前記更新情報生成部は、前記送信された電力情報に基づいて、前記電力の残量が予め設定された値以下である場合に、前記閾値のレベルを現在のレベルよりも高くした更新情報を生成することを特徴とする請求項3に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項11】
前記センサ端末装置は、
前記検出部が周囲環境の物理量の変化に応じて発電することにより駆動する起動用のセンサを含み、前記起動用のセンサにより発電した電力を蓄電可能な蓄電部を有し、前記切り替え部の起動条件が満たされない場合に、前記起動用のセンサで発電した電力が前記蓄電部に蓄電され、前記計測用センサが前記蓄電部に蓄電された電力を使用して自機の故障の有無を検査するメンテナンスモードの動作を実行することを特徴とする請求項3〜10の何れか1項に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項12】
前記切り替え部は、前記起動条件が満たされたか否かを複数回にわたって判断した後の時点で、前記起動条件が満たされずに前記計測用センサが前記メンテナンスモードの動作を実行した回数が前記起動条件の満たされた回数を上回る際、次回入力する信号のレベルが予め設定した起動条件を満たす場合に、前記計測用センサへ前記蓄電部に蓄電された電力を給電させて当該計測用センサを前記駆動状態へ切り替えることを特徴とする請求項11に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項13】
前記切り替え部は、前記起動条件が満たされたか否かを複数回にわたって判断した後の時点で、前記電源部の電力の残量が予め設定された値以下である際、次回入力する信号のレベルが予め設定した起動条件を満たす場合に、前記計測用センサへ前記蓄電部に蓄電された電力を給電させて当該計測用センサを前記駆動状態へ切り替えることを特徴とする請求項11に記載のセンサネットワークシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−11963(P2013−11963A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143078(P2011−143078)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】