センサ装置
【課題】汎用性の高い計測システムを簡易に構成でき得るセンサ装置を提供する。
【解決手段】センサ装置10は、付加された荷重に応じた電圧信号を出力するロードセル(センサ本体)12と、回路基板14と、電源部16と、を備えており、これらは単一の筐体18に収容される。回路基板14には、ひずみアンプ24、A/D変換回路26、CPU30等が搭載されており、これらは、ロードセル12から出力された電圧信号に対して所定の信号処理を施して計測結果データを取得する信号処理手段として機能する。また、回路基板14には、USB通信により、前記計測結果データを含む各種情報を外部情報処理装置との間で遣り取りする通信手段として機能するUSBインターフェース28も搭載されている。USBインターフェース28を設けることにより、単一の外部情報処理装置に接続されるセンサ装置10の数を簡易に増減できる。
【解決手段】センサ装置10は、付加された荷重に応じた電圧信号を出力するロードセル(センサ本体)12と、回路基板14と、電源部16と、を備えており、これらは単一の筐体18に収容される。回路基板14には、ひずみアンプ24、A/D変換回路26、CPU30等が搭載されており、これらは、ロードセル12から出力された電圧信号に対して所定の信号処理を施して計測結果データを取得する信号処理手段として機能する。また、回路基板14には、USB通信により、前記計測結果データを含む各種情報を外部情報処理装置との間で遣り取りする通信手段として機能するUSBインターフェース28も搭載されている。USBインターフェース28を設けることにより、単一の外部情報処理装置に接続されるセンサ装置10の数を簡易に増減できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測の対象となる物理量を検出するセンサ本体と当該センサ本体に関連する各種機器をユニット化したセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ロードセル等のセンサが広く知られている。センサは、計測対象となる物理量を示すアナログの検出信号、例えば、電圧信号等を出力する。センサから出力された電圧信号等のアナログ検出信号は、アンプで増幅された後、A/Dコンバータでデジタル値に変換され、RS232C等の通信線を介して情報処理装置に出力されていた。ここで、従来においては、アンプやA/Dコンバータ等は、センサとは別個の独立した装置が用いられていた。そのため、ユーザは、物理量計測に際して、センサや、アンプ、A/Dコンバータ等をそれぞれ接続する必要があり手間であった。さらに、それぞれ別個の独立した装置を用いる場合、アナログの信号線が長くなりがちで、ノイズの影響を受けやすいという問題もあった。
【0003】
そこで、下記特許文献1,2には、アンプやA/Dコンバータをセンサの一種であるロードセルと同一の筐体内に収容し、ロードセルと一体化したロードセル装置が開示されている。これによれば、各々を接続する手間を省略でき、また、アナログの信号線を省略できるのでノイズの影響を低減できる。
【0004】
【特許文献1】特開昭54−030881号公報
【特許文献2】特開平08−075572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、センサは、同時に複数用いられることが多い。例えば、ロードセル装置を四点支持のホッパーに用いる場合、四つの支持部にそれぞれ一つずつ、計四つのロードセル装置を設けていた。そして、この四つのロードセル装置の計測結果を情報処理装置に出力し、加算した値をホッパー重量として得ていた。また、検出精度向上を目的として、複数のセンサで同一の物理量を検出し、得られた複数のセンサからの検出値を情報処理装置で平均化する場合も多い。このセンサと情報処理装置との接続は、従来、RS232Cの通信線を用いていた。しかし、RS232Cで接続する場合、情報処理装置に設けられた一つのRS232Cポートには、一つのセンサしか接続できない。そのため、単一の情報処理装置に接続できるセンサの数は、当該情報処理装置が備えるRS232Cポートの数に制限されていた。したがって、計測システムの構成変更に伴い、センサの数が増えた場合には、情報処理装置の数も増やす必要があり、システムの汎用性を低下させていた。特許文献1,2には、かかる情報処理装置との接続、特に、柔軟性の高い接続は考慮されていなかった。
【0006】
そこで、本発明では、汎用性の高い計測システムが簡易に構成でき得るセンサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のセンサ装置は、計測の対象となる物理量を検出するセンサ本体と、センサ本体から出力された検出信号に対して所定の信号処理を施して計測結果データを取得する信号処理手段と、ネットワーク通信、USB通信、および、電力線通信のいずれかを介して、前記計測結果データを含む各種情報を外部情報処理装置との間で遣り取りする通信手段と、少なくとも、センサ本体、信号処理手段、通信手段を収容する単一の筐体と、を備えることを特徴とする。
【0008】
好適な態様で、センサ本体は、対象物の運動量を検出する運動量センサ、または、対象物の力学量を検出する力学量センサである。力学量センサとしては、付加された圧力を計測するロードセルなどが該当する。運動量センサとしては、対象物の加速度を計測する加速度センサなどが該当する。
【0009】
他の好適な態様では、信号処理手段は、少なくとも、センサ本体から出力されたアナログの検出信号を増幅する増幅手段と、増幅されたアナログの検出信号をデジタル信号に変換するA/D変換手段と、を備える。信号処理手段は、さらに、A/D変換手段によりデジタル変換された検出信号に基づき、センサ本体で検出された検出値を計測対象の物理量の単位に変換して計測結果データとして算出する物理量変換手段を備えることが望ましい。信号処理手段は、さらに、校正作業により得られた補正値に基づき、計測結果データを補正する補正手段を備えることも望ましい。
【0010】
他の好適な態様として、さらに、センサ本体に基準の物理量が付与された場合に、本来、センサ本体から出力されるべき検出値を基準検出値として記憶する記憶手段と、実際にセンサ本体に基準の物理量が付与された場合に、センサ本体から実際に出力された実測検出値と、記憶手段に記憶された基準検出値と、の比較に基づき計測結果データの補正に用いられる補正値を算出する校正手段と、を備える。
【0011】
他の好適な態様として、さらに、外部情報処理装置と共通の複数のコマンドと、各コマンドが示す処理内容と、を記憶するコマンド記憶手段と、外部情報処理装置との間で送受信されるコマンドの内容をコマンド記憶手段を参照して解釈するコマンド解釈手段と、を有し、外部情報処理装置との間での命令の遣り取りは、コマンドを介して行われる。
【0012】
他の好適な態様として、前記筐体の外表面には、外部情報処理装置で認識される当該センサ装置の識別子が掲示される。また、さらに、前記通信手段とは別に当該センサ装置をモニタするための信号を出力する出力ポートを備えることも好適である。この場合、さらに、外部情報処理装置から特定の信号が送信された場合に、その旨を前記出力ポートを介してユーザに提示する提示手段を備えることが望ましい。また、さらに、前記通信手段とは別に当該センサ装置の測定をサポートするための信号を入力する入力ポートを備えることも好適である。この場合、さらに、ユーザによりON/OFF操作される操作子を備え、前記通信手段は、前記入力ポートを介して入力される当該操作子のON/OFF状況を外部情報処理装置に送信することが望ましい。
【0013】
本発明をロードセル装置に適用することにより、付加された荷重に応じた電圧信号を出力するロードセルと、ロードセルから出力された電圧信号に対して所定の信号処理を施して計測結果データを取得する信号処理手段と、ネットワーク通信またはUSB通信により、前記計測結果データを含む各種情報を外部情報処理装置との間で遣り取りする通信手段と、信号処理手段およびロードセルに駆動電力を供給する電力供給手段と、ロードセル、信号処理手段、通信手段、および、電力供給手段を収容する単一の筐体と、を備えるロードセル装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ネットワーク通信、USB通信、および、電力線通信のいずれかの通信インターフェースを備えている。これらの通信インターフェースによれば、外部情報処理装置に接続されるセンサ装置の数を適宜、簡易に増減できる。その結果、汎用性の高い計測システムが簡易に構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態であるセンサ装置10の概略構成を示すブロック図である。このセンサ装置10は、センサ本体として、ひずみゲージ22等の性質を利用して荷重を計測するロードセルを、用いた装置である。本実施形態のセンサ装置10は、その計測結果を外部の情報処理装置(例えば、パーソナルコンピュータなど)で利用する場合に特に好適な構成となっている。特に、複数のセンサ装置10での計測結果を単一の情報処理装置で利用する場合に好適な構成となっている。
【0016】
ロードセル12は、センサ本体として機能するもので、起歪部20とひずみゲージ22とを備えており、荷重付加により起歪部20が変形すれば、ひずみゲージ22から電圧信号が出力される。起歪部20は、柱状や梁状、あるいは、ダイアフラム状の弾性体で、荷重を受けて微小変形する。ひずみゲージ22は、この起歪部20に貼着されており、起歪部20の変形量に応じた電圧を生じる。ひずみゲージ22で生じた電圧は、ブリッジ回路(図示せず)により検出され、回路基板14へと出力される。
【0017】
回路基板14は、CPU30やメモリ32、A/D変換回路26、ひずみアンプ24などが搭載された基板である。この回路基板14は、ロードセル12とともに筐体18の内部に収容される。回路基板14のひずみアンプ24には、ブリッジ回路で検出された電圧が入力される。ひずみアンプ24は、ロードセル12から出力された電圧を増幅したうえで、A/D変換回路26に出力する。このとき、必要に応じて、ノイズ除去などの処理が施される。A/D変換回路26は、ひずみアンプ24から出力されたアナログの電圧信号を、デジタル値に変換する。デジタル値に変換された電圧信号は、オリジナルデータとして、メモリ32に記憶される。
【0018】
メモリ32には、このオリジナルデータのほか、各種設定値や、メモデータ、プログラム、コマンド情報等が記憶される。メモリ32に記憶される設定値としては、オリジナルデータの補正処理に用いられる補正値などがある。この補正値は、定期的に行われるセンサ装置10の校正作業時に取得され、修正される。
【0019】
メモデータは、ユーザが必要とする各種情報であり、出荷時に記録される当該センサ装置10の性能情報や、ユーザによって記録されるユーザ情報などを含む。性能情報としては、当該ロードセル12の計測荷重の上限値や下限値、許容温度範囲などの情報が含まれる。これらの情報は、出荷時に記憶され、その後、変更されることは無い。一方、ユーザ情報は、適宜、ユーザが記録、変更、削除が可能な情報で、例えば、当該センサ装置10の管理番号や、設置場所などが含まれる。ユーザは、後述するUSB通信を介して、これらの情報をメモリ32に記憶させることができる。また、メモデータは、適宜、USB通信を介して、情報処理装置で読み出すことができる。したがって、ユーザは、センサ装置10から離れた場所でも、各センサ装置10の性能情報や、設置場所等を知ることができる。
【0020】
また、メモリ32に記憶されたオリジナルデータは、CPU30により、補正処理、物理量換算処理などの信号処理が施された後、計測結果データとして、USBインターフェース28を介して、外部情報処理装置に出力される。CPU30にて行われる信号処理の内容については、後に詳説する。
【0021】
さらに、メモリには、コマンド情報も記憶される。コマンドは、外部情報処理装置と遣り取りされる命令文である。メモリには、複数のコマンドと、各コマンドが示す処理内容と、が関連付けられてコマンド情報として記憶されている。CPUは、このコマンド情報を参照して、外部情報処理装置との間で遣り取りされるコマンドを解釈する。
【0022】
USBインターフェース28は、外部情報処理装置との間で、USB通信を可能とするためのインターフェースで、USBポートや、USB通信に必要なプログラムなどを備える。USBは、周知の通り、シリアルインターフェース規格の一つである。センサ装置10で計測された計測結果データや、メモデータなどは、このUSBインターフェース28により、外部情報処理装置へと出力される。このUSBインターフェース28を設けることにより、センサ装置10は外部情報処理装置にとって一種のUSB機器として機能する。そして、センサ装置10を一種のUSB機器として機能させることにより、外部情報処理装置に接続でき得るロードセル装置の数を容易に増減できる。すなわち、通常、情報処理装置は、複数のUSBポートを有しており、このポート数分だけUSB機器を接続できる。また、情報処理装置とUSB機器との間に、複数のUSBケーブルを分岐、中継する集線装置であるUSB用HUBを設けることで、より多数のUSB機器を接続できる。換言すれば、適宜、USB用HUBを利用することにより、接続可能なUSB機器の数を適宜、増減できる。したがって、情報処理装置とロードセル装置との間にUSB用HUB100を介在させれば、単一の情報処理装置に接続されるセンサ装置10の数を容易に増やすことができる。その結果、汎用性の高い荷重計測システムを簡易に構成できる。
【0023】
CPU30は、記述のひずみアンプ24や、A/D変換回路26、USBインターフェース28等を制御する制御部として機能する。また、CPU30は、USBインターフェース28を介して、情報処理装置から送られたコマンドを解釈し、当該コマンドに応じた処理を実行する。このコマンドについては、後に詳説する。さらに、CPU30は、必要に応じて、メモリ32に記憶されているオリジナルデータに対して補正処理や物理量換算処理などの信号処理を施す。これについても、後に、詳説する。
【0024】
電源部16は、回路基板14およびロードセル12の駆動電力を供給するもので、乾電池やバッテリ等の携帯電源である。なお、かかる携帯電源を用いず、外部から電力供給を受ける形態としてもよい。また、USBインターフェース28にバスパワー機能を備えたものを用いれば、この電源部16は不要となり、USBインターフェースが電力供給手段として機能することになる。すなわち、近年のUSBインターフェース28の中には、USBケーブルを介して電力供給可能なバスパワー機能を備えたものがある。このパスパワー機能搭載のUSBインターフェース28を用いれば、5V,500mAの電力供給が可能となるため、電源部16は不要となる。
【0025】
以上のロードセル12、回路基板14、および、電源部16は、全て、単一の筐体18の内部に固定され、収容される。そのため、ユーザは、ひずみアンプ24やA/D変換回路26等を意識することなく、センサ装置10を簡易に取り扱うことができる。すなわち、従来では、ロードセルや、ひずみアンプ、A/D変換装置等は、全て、別個の筐体に収容された別個の装置であった。そのため、ユーザは、ロードセルを用いて荷重計測する場合には、ロードセルの性能に応じたひずみアンプ、A/D変換装置、電源装置等をそれぞれ、選択、用意し、これらを接続する必要があった。現在、市場には、多種類のひずみアンプ等が流通しており、これらの中からロードセルの性能に応じたものを選択するのは、煩雑であった。また、選択されたひずみアンプ等を接続する作業もユーザにとって手間であった。一方、本実施形態では、予め、ロードセル12の性能に応じたひずみアンプ24等が回路基板14に組み込まれ、さらに、この回路基板14がロードセル12と共通の筐体18の内部に収容されている。したがって、荷重計測の際に、ひずみアンプ等の選択や接続といった手間が不要となり、ユーザは簡易に荷重計測を行うことができる。また、アンプ等をロードセル12と同一の筐体18に収容することにより、アナログの信号線の距離を短くでき、ノイズの影響を低減できる。
【0026】
次に、このセンサ装置10のCPU30が行うオリジナルデータに対する信号処理について説明する。ロードセル12から出力された電圧信号は、ひずみアンプ24で増幅された後、A/D変換回路26でデジタル値に変換され、オリジナルデータとしてメモリ32に記憶される。ロードセル12から出力される電圧値は、センサ装置10に付加された荷重に比例するため、当該電圧値を増幅、A/D変換したオリジナルデータがあれば、付加荷重の大きさが一応は分かるようになっている。しかし、荷重計測を目的とするユーザにとって、電圧値を示すオリジナルデータは、取り扱いづらいデータである。そこで、CPU30は、当該オリジナルデータを、ユーザが所望する物理量に換算する信号処理を実行する。具体的には、オリジナルデータで示される電圧値を、ユーザが所望する荷重値(N)に変換する。変換されたデータは、計測結果データとして、USBインターフェース28を介して外部情報処理装置に出力される。外部情報処理装置では、荷重値に変換済みのデータが表示されるため、ユーザは計測結果を容易に認識することができる。
【0027】
ところで、この電圧/荷重変換は、予め設定された電圧出力特性(付加荷重に対する出力電圧値の比)に基づいて行われる。この電圧出力特性は、センサ装置10の出荷時に所定の値に設定される。したがって、出荷直後のセンサ装置10であれば、予め設定された初期電圧出力特性に基づいて電圧/荷重変換すれば、正確な付加荷重値が得られる。しかし、この電圧出力特性は、センサ装置10の使用環境や、経年変化により、変化する。例えば、出荷時には、1Nで1mVの電圧出力していたロードセル12が、劣化等により1Nで0.9mVの電圧出力となる場合がある。この場合に、初期設定された電圧出力特性に基づいて物理量換算を行った場合、正確な付加荷重量が得られない。
【0028】
そこで、従来から、ユーザは、定期的に校正作業を行い、その時点での電圧出力特性を取得していた。具体的には、基準荷重をロードセル12に付加し、その際、出力される電圧値に基づいて、その時点での電圧出力特性を算出していた。そして、校正作業の結果、得られた電圧出力特性に基づいて、出力電圧の値を補正していた。しかし、この出力電圧値の補正をユーザが行うのは煩雑であるばかりでなく、補正の計算ミスや計算忘れに起因する最終計測結果の不正確さも招いていた。
【0029】
そこで、本実施形態のセンサ装置10のCPU30は、この計測結果の補正処理も行う。すなわち、予めメモリ32に記憶されている補正値に基づき、オリジナルデータ、または、オリジナルデータを物理量変換した後の計測結果データの補正を行う。センサ装置10で、一括して、補正処理を行うことにより、ユーザはより簡易に、より正確な計測値を得ることができる。なお、メモリ32に記憶される補正値は、校正作業のたびに、更新される。また、本実施形態のセンサ装置10では、このメモリ32に記憶される補正値は、校正作業時においてCPU30により自動的に算出される。
【0030】
次に、センサ装置10と外部情報処理装置とのUSB通信において用いられるコマンドについて説明する。コマンドは、所定の処理内容を示す命令文で、センサ装置10および外部情報処理装置は、互いに共通のコマンドを記憶している。センサ装置10のCPU30は、外部情報処理装置からコマンドを受信すれば、当該コマンドを解釈し、その内容に応じた処理を実行する。両装置間で遣り取りされるコマンドの種類としては、データ送受信開始・終了コマンド、校正作業開始・終了コマンド、メモデータ記録・読出コマンド、各種エラー通知コマンドなどがある。データ送受信開始コマンドは、外部情報処理装置からセンサ装置10へ送信されるコマンドであり、当該コマンドを受信したセンサ装置10は計測された結果データを外部情報処理装置へと送信する。この計測結果データの送信は、外部情報処理装置からデータ送受信終了コマンドが送信されるまで継続して行われる。なお、このとき、送信される計測結果データは、物理量変換処理、および、補正処理がなされたデータである。したがって、ユーザは、外部情報処理装置に送信されたデータをそのまま使用することができる。
【0031】
校正作業開始コマンドは、外部情報処理装置からセンサ装置10に送信されるコマンドである。このコマンドは、センサ装置10の校正作業を行う際に送信される。当該コマンドを受信したセンサ装置10は、その駆動モードを通常計測モードから校正モードへと切り替える。通常計測モードは、通常の荷重計測を行うモードである。校正モードは、校正作業用のモードである。ユーザは、センサ装置10の駆動モードが校正モードになれば、センサ装置10に対して、所定の基準荷重(例えば1Nなど)を付加する。この基準荷重付加に対するロードセル12からの出力電圧は、校正電圧値としてメモリ32に一時記憶される。また、メモリ32には、基準荷重を付加した際に、本来得られるべき出力電圧値、すなわち、基準電圧値が予め記憶されている。CPU30は、この校正電圧値と、基準電圧値と、の差異量を算出し、当該差異量を補正値として、メモリ32に記憶する。以降の荷重計測においては、この補正値に基づき、出力電圧値の補正が行われる。CPU30は、補正値の算出が終了すれば、外部情報処理装置に対して、校正作業終了コマンドを送信するとともに、その駆動モードを通常計測モードへと切り替える。外部情報処理装置は、校正作業終了コマンドを受信すれば、校正作業の正常終了をユーザに提示する。なお、センサ装置10のCPU30は、校正電圧値と基準電圧値との差異量があまりに大きい場合には、校正作業に何らかの問題があったと判断し、外部情報処理装置に対して校正エラー通知コマンドを送信するとともに、校正モードを終了する。
【0032】
メモデータ記録コマンドは、外部情報処理装置からセンサ装置10に送信されるコマンドである。外部情報処理装置は、当該コマンドとともに、記録対象データであるメモデータも送信する。当該コマンドを受信したCPU30は、一緒に送信されたメモデータをメモリ32に記憶させる。このメモデータの内容は、ユーザが適宜、設定可能であり、例えば、センサ装置10の設置場所や管理番号などがメモデータとして送信される。メモデータ読出コマンドも外部情報処理装置からセンサ装置10に送信されるコマンドであり、当該コマンドを受信したセンサ装置10は、メモリ32に記憶されているメモデータを外部情報処理装置に送信する。ここで、送信されるメモデータとしては、メモデータ記録コマンドで記録されたユーザ設定のメモデータのほかに、出荷時にメモリ32に記憶されたセンサ装置10の性能情報なども送信される。外部情報処理装置は、送信されたメモデータをユーザに提示する。これにより、ユーザは、センサ装置10から離れた場所でも、各センサ装置10に記憶されたメモデータ、例えば、設置場所や、性能情報などを認識することができる。
【0033】
各種エラー通知コマンドは、センサ装置10から外部情報処理装置へと送信されるコマンドであり、エラー内容に応じて複数種類のエラー通知コマンドがある。エラー通知コマンドとしては、例えば、校正作業時の問題を通知する校正エラー通知コマンドや、計測された荷重が上限値を超えた場合に通知される超過荷重通知エラーなどがある。
【0034】
このように、コマンドを用いることにより、接続される外部情報処理装置が変更されても、センサ装置10は影響を受けない。すなわち、外部情報処理装置が変更(例えば、計測専用コンピュータからパーソナルコンピュータへの変更)されても、変更後の外部情報処理装置に、コマンドの送受信および解釈用のプログラムをインストールすれば、センサ装置10をそのまま使用し続けることができる。その結果、センサ装置10の汎用性をより向上できる。
【0035】
次に、このセンサ装置10を用いて、荷重計測を行う場合の例について図2を用いて説明する。図2は、四箇所の計測点における荷重を四つのセンサ装置10で計測し、その計測結果を単一のパーソナルコンピュータ(以下「PC102」という)で処理する計測システムの構成例である。
【0036】
四箇所の計測点には、それぞれ、一つのセンサ装置10が配置される。ユーザは、計測開始に先立って、各センサ装置10のメモリ32に、その設置場所や管理番号をメモデータとして記憶させることが望ましい。メモデータの記憶は、情報処理装置を介して行われる。すなわち、ユーザは、記憶させたいメモデータを情報処理装置に入力するとともに、当該メモデータの記憶を指示する。当該指示を受けた情報処理装置は、メモデータ記憶コマンドとともに、入力されたメモデータをセンサ装置10に送信する。センサ装置10は、送信されたメモデータをメモリ32に記憶する。ここで、本実施形態のセンサ装置10は、情報処理装置との接続にUSBを用いている。USBは、USBケーブル40を抜き差しすることで、容易に接続または接続解除が可能である。したがって、メモデータ、特に設置場所の記録などの際には、情報処理装置としてノートパソコン等の携帯型情報処理装置104を用いることができる。その結果、ユーザは、実際に、ロードセル12近傍に行き、その設置場所を目視で確認した上で、センサ装置10にメモデータを記憶させることができる。
【0037】
メモデータの記憶が終了すれば、四つのセンサ装置10は、単一のPC102にUSB接続される。このとき、センサ装置10とPC102は、USB用HUB100を介して接続されてもよい。USB用HUB100を介在させることにより、単一のPC102に多数のセンサ装置10を接続できる。また、PC102が複数のUSBポートを有するのであれば、複数のセンサ装置10とPC102とを直接接続させてもよい。いずれにしても、センサ装置10に、USBインターフェース28を設けることにより、PC102との接続が容易となり、また、単一のPC102に複数のセンサ装置10を接続できる。
【0038】
四つのセンサ装置10が単一のPC102に接続されれば、以降、ユーザはこのPC102を操作して四つのセンサ装置10の計測結果データの取得や処理を行う。すなわち、ユーザは、計測結果データを必要とする場合は、PC102を操作してデータ送信開始を指示する。ここで、PC102は、接続されている四つのセンサ装置10それぞれに固有のドライブ名や装置名等を割り当てている。ユーザは、データ送信開始などを指示する際、このドライブ名等も選択する。PC102は、選択されたドライブ名等から、どのセンサ装置10に対する指示であるかを判断し、そのセンサ装置10に指示に応じたコマンドを送信する。
【0039】
例えば、あるセンサ装置10の計測結果データが必要な場合、ユーザは、当該センサ装置10のドライブ名(や装置名等)とデータ送信開始指示をPC102に入力する。当該入力を受けたPC102は、ドライブ名から指示対象のセンサ装置10を特定する。そして、特定されたセンサ装置10に対してデータ送信開始のコマンドを送信する。当該コマンドを受けたセンサ装置10は、PC102に計測結果データを送信する。PC102は、送信された計測結果データをディスプレイ等に表示する。
【0040】
ここで、表示される計測結果データは、物理量換算や補正処理などが既に施されたデータである。従来のロードセル装置では、電圧値から荷重値への変換や、ロードセルの電圧出力特性の変化に起因する誤差の補正などは、ユーザ自身が行わなければならなかった。しかし、本実施形態のセンサ装置10では、これらの処理は、センサ装置10で行われる。したがって、ユーザは、各センサ装置10から出力された計測結果データを見れば、即座に、正確な荷重値を知ることができる。これにより、ユーザはより簡易に正確な荷重計測が可能となる。
【0041】
また、各センサ装置10の性能や設置場所等が知りたい場合、ユーザは、センサ装置10を示すドライブ名と、メモデータ読出指示と、をPC102に入力すればよい。当該入力を受けたPC102は、ドライブ名からセンサ装置10を特定し、この特定されたセンサ装置10に対してメモデータ読出コマンドを送信する。当該コマンドを受信したセンサ装置10は、メモリ32に記憶されているメモデータをPC102に返信する。PC102は、返信されたメモデータをディスプレイ等に表示する。ここで、表示されるメモデータは、当該センサ装置10の性能(計測上限値や分解能など)やユーザ自身が登録した設置場所などの情報である。このメモデータを見ることで、ユーザは、センサ装置10から離れた場所にいても、各センサ装置10の性能や設置場所等を把握することができる。
【0042】
また、センサ装置10に、何らかの問題が発生した場合には、センサ装置10からPC102に対してエラー通知コマンドが送信される。当該コマンドを受信したPC102は、その送信元のセンサ装置10を特定するとともに、当該コマンドが示すエラー内容を特定する。そして、当該センサ装置10を示すドライブ名と、エラー内容をユーザに提示する。ユーザは提示されたエラー内容およびドライブ名から、どのセンサ装置10にどのようなエラーが生じているかを判断できる。これにより、ユーザは、センサ装置10から離れたところからでも、センサ装置10の状態を知ることができる。
【0043】
つまり、センサ装置10にUSBインターフェース28を搭載し、PC102に接続可能とすることで、ユーザは離れた場所でもセンサ装置10の操作や状態監視が可能となる。また、USBの場合、単一のPC102に複数のUSB機器を接続できる。そのため、ユーザは、単一のPC102で複数のセンサ装置10の操作や状態監視が可能となる。さらに、USBの場合、接続されるUSB機器の数を簡易に増減できる。それにより、計測システム全体の構成を、簡易に変更できる。
【0044】
次に、このセンサ装置10の校正作業の流れについて簡単に説明する。記述したように、センサ装置10に搭載されるロードセル12から出力される電圧は、付加荷重に比例する。しかし、この付加荷重と出力電圧との比、出力電圧特性は、ロードセル12の使用環境や経年変化により僅かに変化してくる。出力電圧特性が変化した状態では、正確な荷重計測はできないため、定期的に、ロードセル12の出力電圧特性を計測し、その結果を以降の計測値算出に反映させる校正作業が必要となる。本実施形態のセンサ装置10では、この校正作業をより簡易に行えるような構成となっている。
【0045】
校正作業を行いたい場合、ユーザは、まず、校正対象のセンサ装置10を情報処理装置にUSB接続する。このとき、接続される情報処理装置としてノートパソコン104などの携帯型情報処理装置を用い、ユーザはセンサ装置10の近傍に位置することが望ましい。
【0046】
続いて、ユーザは、情報処理装置を操作して、接続されたセンサ装置10に対して校正作業の開始を指示する。当該指示を受けた情報処理装置は、センサ装置10に校正作業開始コマンドを送信する。当該コマンドを受信したセンサ装置10は、その駆動モードを校正モードに切り替える。
【0047】
一方、情報処理装置を介して校正作業開始を指示したユーザは、センサ装置10に基準の荷重を付加する。この基準荷重の付加は、例えば、基準重量の試験片をセンサ装置10に載置することで行われる。センサ装置10のロードセル12は、基準荷重の付加に応じた電圧を出力する。出力された電圧は、増幅、A/D変換された後、メモリ32に一時記憶される。CPU30は、メモリ32に一時記憶された電圧値の平均の値を校正電圧値として取得する。そして、メモリ32に予め記憶されている基準電圧値と、校正電圧値と、を比較し、その差異量を算出する。算出された差異量は、補正値としてメモリに記憶される。補正値がメモリに記憶されれば、センサ装置10は、校正作業終了コマンドを外部情報処理装置に送信するとともに、駆動モードを通常計測モードに変更する。そして、以降では、校正作業で得られた補正値(基準電圧値と校正電圧値との差異量)に基づき、オリジナルデータの補正を行う。
【0048】
以上、本実施形態によれば、センサ装置10内で物理量変換や補正処理がなされるため、より簡易に正確な計測値を得ることができる。また、USBインターフェース28を搭載し、情報処理装置とUSB接続が可能とすることで、計測システム全体の汎用性をより向上できる。また、校正作業専用の駆動モード、校正作業モードを設けることにより、従来煩雑であった校正作業がより簡易に行える。
【0049】
なお、本実施形態では、センサ本体としてロードセルを用いたセンサ装置を説明したが、他の種類のセンサをセンサ本体として用いてもよい。例えば、図3に図示するように、ひずみゲージ式の圧力センサ(ロードセル12)に代えて、半導体式の圧力センサ12aをセンサ本体として用いてもよい。この場合、圧力センサ12aとA/D変換回路26との間には、ひずみアンプ24ではなく直流アンプ24aを設ければよい(図1参照)。
【0050】
また、図4に図示するように、本実施形態を加速度センサ12bに応用してもよい。加速度センサ12bとA/D変換回路26との間に設けられるアンプ24bは、加速度センサ12bの種類に応じて適宜変更する。例えば、加速度センサ12bがひずみゲージ式の場合にはひずみアンプを、加速度センサ12bが圧電型の場合にはチャージアンプを用いる。さらに、図5に図示するように本実施形態をトルクセンサ12cに応用してもよい。この場合も、トルクセンサ12cの種類に応じたアンプ24を、トルクセンサ12cとA/D変換回路26との間に設ければよい。
【0051】
そして、いずれのセンサを用いた場合でも、上述の実施形態と同様に、これらセンサ本体を、当該センサ本体に応じて選定されたアンプやA/D変換回路等とともに同一の筐体18に収容し、検出信号の信号処理を施したうえで、USBインターフェースを介して情報の遣り取りを行うように構成すれば、汎用性の高い計測システムを構成できる。
【0052】
また、本実施形態では、通信インターフェースとしてUSBインターフェース28を用いたが、LANインターフェースを用いてもよい。この場合の計測システムの構成を図6に示す。図6において実線の接続線はLANケーブル42を、破線の接続線は電源ケーブル44を示している。LANインターフェースを設けた場合、各センサ装置10は、HUB110やルータ112の中継により、LANやインターネットなどのネットワーク網114を介して情報処理装置(PC102)に接続される。このようにセンサ装置10とPC102とをネットワーク接続することにより、計測システムの汎用性をより高めることができる。
【0053】
すなわち、USB接続はそのケーブル長に限界があるため、センサ装置10とPC102との距離をあまり大きくすることはできなかった。一方、ネットワーク接続の場合には、接続間距離には制限は無く、センサ装置10とPC102とが長距離離れていてもよい。また、PC102に接続されるセンサ装置10の数にも上限が無く、より多数のセンサを接続できる。
【0054】
さらに、ネットワーク接続の場合、当該ネットワークに接続されていれば、いずれのPC102からでも、センサ装置10との通信が可能となる。そのため、二台以上のPC102で同時に、複数のセンサ装置10の計測結果を取り扱うこともできる。また、校正作業等は、センサ装置10近傍に配置されたPC(例えば、携帯型PCなど)で行い、計測結果データのモニタはセンサ装置10から離れた位置に配置されたPCで行うことも可能である。つまり、USBインターフェースに代えてLANインターフェースを設けることにより、計測システムの汎用性をより向上できる。
【0055】
なお、図6では、各センサ装置10が外部から電力供給を受ける場合のシステム構成を示している。すなわち、各センサ装置10は電源ケーブル44を介してコンセント50に接続されている。ただし、センサ装置10の内部に乾電池等の携帯電源を設けることで、この電源ケーブル44は省略することができる。また、LANインターフェースとしてPoE(Power over Ethernet(登録商標))の機能を備えたLANインターフェースを用いることで、センサ装置10へ給電することも可能である。PoEのLANインターフェースを用いれば、電源ケーブル44および携帯電源のいずれも不要となる。その結果、センサ装置10のさらなる小型化、また、計測システムの更なる簡易化が可能となる。さらに、無線LAN用のインターフェースを用いれば、センサ装置10の設置場所を自由に変えることができ、より汎用性の高い計測システムを構成できる。
【0056】
また、USB,LAN通信インターフェースのほかに、電力線通信(PLC)インターフェースを用いることも望ましい。PLCは、電源ケーブルに高調波信号を重畳し、電力線を伝送路として双方向の通信を行う通信形態である。このPLCでは、既存のコンセント等がそのまま使用でき、電源ケーブルのプラグをコンセントに差し込むだけで通信環境に接続できるという利点をもつ。
【0057】
図7は、通信インターフェースとしてPLCを用いた場合の計測システムの構成を示す図である。この場合、各センサ装置10は、LANケーブル42およびHUB110を介してPLCモデム120に接続されている。このPLCモデム120は、電源ケーブル44およびコンセント50を介して室内電源配線網122に接続されている。また、情報処理装置102も、LANケーブル42、HUB110、PLCモデム120、電源ケーブル44、コンセント50等を介して、室内電源配線網122に接続されている。PLCにおいて、この室内電源配線網122は、ネットワーク網として機能する。したがって、PLCモデム120等を介してこの室内電源配線網122に接続されたセンサ装置10および情報処理装置102は、双方向通信が可能となる。なお、コンセント50から延びる電源ケーブル44は、双方向通信のためにPLCモデム120に入力する経路と、給電のために各センサ装置10や情報処理装置102に直接入力する経路と、に分岐されている。
【0058】
図8は、PLCモデム120をセンサ装置10等に内蔵した場合の計測システムの構成を示す図である。この図示例では、センサ装置10の内部にPLCモデム120が内蔵されており、各センサ装置10には単一の電源ケーブル44が接続されている。そして、この電源ケーブル44のラインは、センサ装置10の内部で通信用の経路と、電力供給用の経路に分岐される。したがって、この場合、各センサ装置10に接続された電源ケーブル44をコンセント50に差し込むだけで、給電と通信の両方が可能となる。また、情報処理装置102に接続するセンサ装置10の数もコンセント50への抜き差しで適宜増減することができる。その結果、極めて簡易に汎用性の高い計測システムを構成できる。
【0059】
なお、以上で説明した各種通信インターフェースのポート、例えば、USBポートやLANポートとして、防水機能を備えたポートを用いることが望ましい。かかるポートを用いることで、水分の多い場所での計測も可能となる。
【0060】
ところで、複数のセンサ装置10を用いる場合、情報処理装置102に出力表示される各検出値がどのセンサ装置10から出力されたものかを特定したい場合がある。例えば、複数のセンサ装置10から出力される検出値のうち所定位置に配置されたセンサ装置10での検出値のみを利用したい場合がある。この場合、情報処理装置102において、所望のセンサが示す検出値を特定する必要がある。しかし、情報処理装置102では、各センサ装置10の検出値が出力、表示されるだけであり、各検出値を検出したセンサ装置10の配置位置等は認識できない。そのため、所定位置に配置されたセンサ装置10からの検出値を特定することが困難である。そこで、センサ装置10に、各種インターフェースのポートとは別に入力ポート(図示せず)を設け、その入力信号によりセンサ装置を特定するようにしてもよい。例えば、図9に図示するように、センサ装置10の入力ポートに、手動操作される操作子として接点36を設けるとともに、当該接点のON/OFF状態を情報処理装置102に出力、表示するようにしてもよい。この場合、予め、複数のセンサ装置10のうち、計測に利用したいセンサ装置10の接点36のみをONにし、他のセンサ装置10の接点36はOFFにしておく。このON/OFF状態は、情報処理装置102に出力される。したがって、ユーザは、この情報処理装置102に出力された接点ON/OFF状態をモニタリングすることで、所望のセンサ装置10の検出値を簡易に特定することができる。なお、この入力ポートに入力される信号は、検出値特定のためにのみ利用するのではなく、測定開始、終了のタイミング検出等に利用してもよい。
【0061】
また、情報処理装置102に表示される複数の検出値のうち所定の検出値を出力したセンサ装置10を特定したい場合がある。例えば、情報処理装置102において、あるセンサ装置10からエラーが出力されていることが確認された場合、当該エラーを出力しているセンサ装置10を実際に特定し、当該センサ装置10の状況を確認する必要がある。しかし、各センサ装置10は、同一の外観を有するため、複数のセンサ装置10から当該エラーを出力したセンサ装置10のみを特定することは困難である。そこで、センサ装置10に各種インターフェースのポートとは別に出力ポート(図示せず)を設け、当該出力ポートからの出力信号によりセンサ装置を特定するようにしてもよい。例えば、情報処理装置102からの特定の信号が送信された場合に、その旨をユーザに提示する提示手段をセンサ装置10の出力ポートに設け、当該提示手段の状況に基づいてセンサ装置10を特定するようにしてもよい。
【0062】
具体的には、図10に図示するように、情報処理装置102からの出力信号に応じて、点灯または消灯するランプ38を提示手段として設け、当該ランプ38の点灯状態でセンサ装置10を特定するような例が挙げられる。この場合、情報処理装置102において、あるセンサ装置10からのエラー出力が確認された場合、ユーザは当該センサ装置10のランプ点灯を情報処理装置102に指示する。情報処理装置102は、指示されたセンサ装置10に対してランプ点灯を指示する信号を出力する。センサ装置10は、当該信号を受信すれば、ランプ38を点灯させる。このランプ38の点灯状態は、外部から容易に視認できるため、ユーザは、極めて簡易に所望のセンサ装置10を特定できる。なお、ランプ38に限らず、外部からユーザが認識可能な提示手段であれば、ブザー等でもよい。なお、この出力ポートから出力される信号は、センサ装置特定のためにだけ使用するのではなく、各センサ装置10での検出状況を提示手段を介してユーザに提示するための信号として用いてもよい。例えば、測定過程において、各センサ装置10に付与された物理量が、指定の物理量に達したことや指定の物理量範囲内にあることを提示手段を介してユーザに提示するための信号として用いてもよい。
【0063】
また、センサ装置10や検出値を特定するために、予め各センサ装置10に付与された不変の識別子を情報処理装置102で検出するとともに、当該識別子を各センサ装置10の筐体18の外表面に印刷しておいてもよい。例えば、LAN通信を行う場合、各センサ装置10には、IPアドレスが付与されており、このIPアドレスは、情報処理装置102において認識される識別子として機能する。この場合に、図11に図示するように、各センサ装置10の筐体18の外表面にIPアドレス39を印刷しておく。ユーザは、情報処理装置102で認識されたIPアドレスと、筐体18の外表面に印刷されたIPアドレスと、を照合することで、各センサ装置10と検出結果との対応関係を容易に認識することができる。その結果、エラー出力されたセンサ装置の特定や、所望のセンサ装置からの検出値の特定等が容易に行える。また、IPアドレスと同様に、LANインターフェースに付与されているMACアドレスを用いて各センサ装置10を識別するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態であるセンサ装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】複数のセンサ装置を用いた荷重計測システムの構成例を示す図である。
【図3】本実施形態を半導体方式の圧力センサに適用した場合のセンサ装置の概略構成を示す図である。
【図4】本実施形態を加速度センサに適用した場合のセンサ装置の概略構成を示す図である。
【図5】本実施形態をトルクセンサに適用した場合のセンサ装置の概略構成を示す図である。
【図6】通信インターフェースとしてLAN通信インターフェースを用いた場合の計測システムの構成例を示す図である。
【図7】通信インターフェースとしてPLC通信インターフェースを用いた場合の計測システムの構成例を示す図である。
【図8】通信インターフェースとしてPLC通信インターフェースを用いた場合の計測システムの他の構成例を示す図である。
【図9】センサ装置に入力機能を持たせた場合の計測システムの構成を示す図である。
【図10】センサ装置に出力機能を持たせた場合の計測システムの構成を示す図である。
【図11】センサ装置の外観の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0065】
10 センサ装置、12 ロードセル、14 回路基板、16 電源部、18 筐体、20 起歪部、22 ひずみゲージ、24 ひずみアンプ、26 A/D変換回路、28 USBインターフェース、32 メモリ、40 USBケーブル、42 LANケーブル、44 電源ケーブル、50 コンセント、100 USB用HUB、102 PC、104 携帯型情報処理装置、112 ルータ、114 ネットワーク網、122 室内電源配線網。
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測の対象となる物理量を検出するセンサ本体と当該センサ本体に関連する各種機器をユニット化したセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ロードセル等のセンサが広く知られている。センサは、計測対象となる物理量を示すアナログの検出信号、例えば、電圧信号等を出力する。センサから出力された電圧信号等のアナログ検出信号は、アンプで増幅された後、A/Dコンバータでデジタル値に変換され、RS232C等の通信線を介して情報処理装置に出力されていた。ここで、従来においては、アンプやA/Dコンバータ等は、センサとは別個の独立した装置が用いられていた。そのため、ユーザは、物理量計測に際して、センサや、アンプ、A/Dコンバータ等をそれぞれ接続する必要があり手間であった。さらに、それぞれ別個の独立した装置を用いる場合、アナログの信号線が長くなりがちで、ノイズの影響を受けやすいという問題もあった。
【0003】
そこで、下記特許文献1,2には、アンプやA/Dコンバータをセンサの一種であるロードセルと同一の筐体内に収容し、ロードセルと一体化したロードセル装置が開示されている。これによれば、各々を接続する手間を省略でき、また、アナログの信号線を省略できるのでノイズの影響を低減できる。
【0004】
【特許文献1】特開昭54−030881号公報
【特許文献2】特開平08−075572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、センサは、同時に複数用いられることが多い。例えば、ロードセル装置を四点支持のホッパーに用いる場合、四つの支持部にそれぞれ一つずつ、計四つのロードセル装置を設けていた。そして、この四つのロードセル装置の計測結果を情報処理装置に出力し、加算した値をホッパー重量として得ていた。また、検出精度向上を目的として、複数のセンサで同一の物理量を検出し、得られた複数のセンサからの検出値を情報処理装置で平均化する場合も多い。このセンサと情報処理装置との接続は、従来、RS232Cの通信線を用いていた。しかし、RS232Cで接続する場合、情報処理装置に設けられた一つのRS232Cポートには、一つのセンサしか接続できない。そのため、単一の情報処理装置に接続できるセンサの数は、当該情報処理装置が備えるRS232Cポートの数に制限されていた。したがって、計測システムの構成変更に伴い、センサの数が増えた場合には、情報処理装置の数も増やす必要があり、システムの汎用性を低下させていた。特許文献1,2には、かかる情報処理装置との接続、特に、柔軟性の高い接続は考慮されていなかった。
【0006】
そこで、本発明では、汎用性の高い計測システムが簡易に構成でき得るセンサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のセンサ装置は、計測の対象となる物理量を検出するセンサ本体と、センサ本体から出力された検出信号に対して所定の信号処理を施して計測結果データを取得する信号処理手段と、ネットワーク通信、USB通信、および、電力線通信のいずれかを介して、前記計測結果データを含む各種情報を外部情報処理装置との間で遣り取りする通信手段と、少なくとも、センサ本体、信号処理手段、通信手段を収容する単一の筐体と、を備えることを特徴とする。
【0008】
好適な態様で、センサ本体は、対象物の運動量を検出する運動量センサ、または、対象物の力学量を検出する力学量センサである。力学量センサとしては、付加された圧力を計測するロードセルなどが該当する。運動量センサとしては、対象物の加速度を計測する加速度センサなどが該当する。
【0009】
他の好適な態様では、信号処理手段は、少なくとも、センサ本体から出力されたアナログの検出信号を増幅する増幅手段と、増幅されたアナログの検出信号をデジタル信号に変換するA/D変換手段と、を備える。信号処理手段は、さらに、A/D変換手段によりデジタル変換された検出信号に基づき、センサ本体で検出された検出値を計測対象の物理量の単位に変換して計測結果データとして算出する物理量変換手段を備えることが望ましい。信号処理手段は、さらに、校正作業により得られた補正値に基づき、計測結果データを補正する補正手段を備えることも望ましい。
【0010】
他の好適な態様として、さらに、センサ本体に基準の物理量が付与された場合に、本来、センサ本体から出力されるべき検出値を基準検出値として記憶する記憶手段と、実際にセンサ本体に基準の物理量が付与された場合に、センサ本体から実際に出力された実測検出値と、記憶手段に記憶された基準検出値と、の比較に基づき計測結果データの補正に用いられる補正値を算出する校正手段と、を備える。
【0011】
他の好適な態様として、さらに、外部情報処理装置と共通の複数のコマンドと、各コマンドが示す処理内容と、を記憶するコマンド記憶手段と、外部情報処理装置との間で送受信されるコマンドの内容をコマンド記憶手段を参照して解釈するコマンド解釈手段と、を有し、外部情報処理装置との間での命令の遣り取りは、コマンドを介して行われる。
【0012】
他の好適な態様として、前記筐体の外表面には、外部情報処理装置で認識される当該センサ装置の識別子が掲示される。また、さらに、前記通信手段とは別に当該センサ装置をモニタするための信号を出力する出力ポートを備えることも好適である。この場合、さらに、外部情報処理装置から特定の信号が送信された場合に、その旨を前記出力ポートを介してユーザに提示する提示手段を備えることが望ましい。また、さらに、前記通信手段とは別に当該センサ装置の測定をサポートするための信号を入力する入力ポートを備えることも好適である。この場合、さらに、ユーザによりON/OFF操作される操作子を備え、前記通信手段は、前記入力ポートを介して入力される当該操作子のON/OFF状況を外部情報処理装置に送信することが望ましい。
【0013】
本発明をロードセル装置に適用することにより、付加された荷重に応じた電圧信号を出力するロードセルと、ロードセルから出力された電圧信号に対して所定の信号処理を施して計測結果データを取得する信号処理手段と、ネットワーク通信またはUSB通信により、前記計測結果データを含む各種情報を外部情報処理装置との間で遣り取りする通信手段と、信号処理手段およびロードセルに駆動電力を供給する電力供給手段と、ロードセル、信号処理手段、通信手段、および、電力供給手段を収容する単一の筐体と、を備えるロードセル装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ネットワーク通信、USB通信、および、電力線通信のいずれかの通信インターフェースを備えている。これらの通信インターフェースによれば、外部情報処理装置に接続されるセンサ装置の数を適宜、簡易に増減できる。その結果、汎用性の高い計測システムが簡易に構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態であるセンサ装置10の概略構成を示すブロック図である。このセンサ装置10は、センサ本体として、ひずみゲージ22等の性質を利用して荷重を計測するロードセルを、用いた装置である。本実施形態のセンサ装置10は、その計測結果を外部の情報処理装置(例えば、パーソナルコンピュータなど)で利用する場合に特に好適な構成となっている。特に、複数のセンサ装置10での計測結果を単一の情報処理装置で利用する場合に好適な構成となっている。
【0016】
ロードセル12は、センサ本体として機能するもので、起歪部20とひずみゲージ22とを備えており、荷重付加により起歪部20が変形すれば、ひずみゲージ22から電圧信号が出力される。起歪部20は、柱状や梁状、あるいは、ダイアフラム状の弾性体で、荷重を受けて微小変形する。ひずみゲージ22は、この起歪部20に貼着されており、起歪部20の変形量に応じた電圧を生じる。ひずみゲージ22で生じた電圧は、ブリッジ回路(図示せず)により検出され、回路基板14へと出力される。
【0017】
回路基板14は、CPU30やメモリ32、A/D変換回路26、ひずみアンプ24などが搭載された基板である。この回路基板14は、ロードセル12とともに筐体18の内部に収容される。回路基板14のひずみアンプ24には、ブリッジ回路で検出された電圧が入力される。ひずみアンプ24は、ロードセル12から出力された電圧を増幅したうえで、A/D変換回路26に出力する。このとき、必要に応じて、ノイズ除去などの処理が施される。A/D変換回路26は、ひずみアンプ24から出力されたアナログの電圧信号を、デジタル値に変換する。デジタル値に変換された電圧信号は、オリジナルデータとして、メモリ32に記憶される。
【0018】
メモリ32には、このオリジナルデータのほか、各種設定値や、メモデータ、プログラム、コマンド情報等が記憶される。メモリ32に記憶される設定値としては、オリジナルデータの補正処理に用いられる補正値などがある。この補正値は、定期的に行われるセンサ装置10の校正作業時に取得され、修正される。
【0019】
メモデータは、ユーザが必要とする各種情報であり、出荷時に記録される当該センサ装置10の性能情報や、ユーザによって記録されるユーザ情報などを含む。性能情報としては、当該ロードセル12の計測荷重の上限値や下限値、許容温度範囲などの情報が含まれる。これらの情報は、出荷時に記憶され、その後、変更されることは無い。一方、ユーザ情報は、適宜、ユーザが記録、変更、削除が可能な情報で、例えば、当該センサ装置10の管理番号や、設置場所などが含まれる。ユーザは、後述するUSB通信を介して、これらの情報をメモリ32に記憶させることができる。また、メモデータは、適宜、USB通信を介して、情報処理装置で読み出すことができる。したがって、ユーザは、センサ装置10から離れた場所でも、各センサ装置10の性能情報や、設置場所等を知ることができる。
【0020】
また、メモリ32に記憶されたオリジナルデータは、CPU30により、補正処理、物理量換算処理などの信号処理が施された後、計測結果データとして、USBインターフェース28を介して、外部情報処理装置に出力される。CPU30にて行われる信号処理の内容については、後に詳説する。
【0021】
さらに、メモリには、コマンド情報も記憶される。コマンドは、外部情報処理装置と遣り取りされる命令文である。メモリには、複数のコマンドと、各コマンドが示す処理内容と、が関連付けられてコマンド情報として記憶されている。CPUは、このコマンド情報を参照して、外部情報処理装置との間で遣り取りされるコマンドを解釈する。
【0022】
USBインターフェース28は、外部情報処理装置との間で、USB通信を可能とするためのインターフェースで、USBポートや、USB通信に必要なプログラムなどを備える。USBは、周知の通り、シリアルインターフェース規格の一つである。センサ装置10で計測された計測結果データや、メモデータなどは、このUSBインターフェース28により、外部情報処理装置へと出力される。このUSBインターフェース28を設けることにより、センサ装置10は外部情報処理装置にとって一種のUSB機器として機能する。そして、センサ装置10を一種のUSB機器として機能させることにより、外部情報処理装置に接続でき得るロードセル装置の数を容易に増減できる。すなわち、通常、情報処理装置は、複数のUSBポートを有しており、このポート数分だけUSB機器を接続できる。また、情報処理装置とUSB機器との間に、複数のUSBケーブルを分岐、中継する集線装置であるUSB用HUBを設けることで、より多数のUSB機器を接続できる。換言すれば、適宜、USB用HUBを利用することにより、接続可能なUSB機器の数を適宜、増減できる。したがって、情報処理装置とロードセル装置との間にUSB用HUB100を介在させれば、単一の情報処理装置に接続されるセンサ装置10の数を容易に増やすことができる。その結果、汎用性の高い荷重計測システムを簡易に構成できる。
【0023】
CPU30は、記述のひずみアンプ24や、A/D変換回路26、USBインターフェース28等を制御する制御部として機能する。また、CPU30は、USBインターフェース28を介して、情報処理装置から送られたコマンドを解釈し、当該コマンドに応じた処理を実行する。このコマンドについては、後に詳説する。さらに、CPU30は、必要に応じて、メモリ32に記憶されているオリジナルデータに対して補正処理や物理量換算処理などの信号処理を施す。これについても、後に、詳説する。
【0024】
電源部16は、回路基板14およびロードセル12の駆動電力を供給するもので、乾電池やバッテリ等の携帯電源である。なお、かかる携帯電源を用いず、外部から電力供給を受ける形態としてもよい。また、USBインターフェース28にバスパワー機能を備えたものを用いれば、この電源部16は不要となり、USBインターフェースが電力供給手段として機能することになる。すなわち、近年のUSBインターフェース28の中には、USBケーブルを介して電力供給可能なバスパワー機能を備えたものがある。このパスパワー機能搭載のUSBインターフェース28を用いれば、5V,500mAの電力供給が可能となるため、電源部16は不要となる。
【0025】
以上のロードセル12、回路基板14、および、電源部16は、全て、単一の筐体18の内部に固定され、収容される。そのため、ユーザは、ひずみアンプ24やA/D変換回路26等を意識することなく、センサ装置10を簡易に取り扱うことができる。すなわち、従来では、ロードセルや、ひずみアンプ、A/D変換装置等は、全て、別個の筐体に収容された別個の装置であった。そのため、ユーザは、ロードセルを用いて荷重計測する場合には、ロードセルの性能に応じたひずみアンプ、A/D変換装置、電源装置等をそれぞれ、選択、用意し、これらを接続する必要があった。現在、市場には、多種類のひずみアンプ等が流通しており、これらの中からロードセルの性能に応じたものを選択するのは、煩雑であった。また、選択されたひずみアンプ等を接続する作業もユーザにとって手間であった。一方、本実施形態では、予め、ロードセル12の性能に応じたひずみアンプ24等が回路基板14に組み込まれ、さらに、この回路基板14がロードセル12と共通の筐体18の内部に収容されている。したがって、荷重計測の際に、ひずみアンプ等の選択や接続といった手間が不要となり、ユーザは簡易に荷重計測を行うことができる。また、アンプ等をロードセル12と同一の筐体18に収容することにより、アナログの信号線の距離を短くでき、ノイズの影響を低減できる。
【0026】
次に、このセンサ装置10のCPU30が行うオリジナルデータに対する信号処理について説明する。ロードセル12から出力された電圧信号は、ひずみアンプ24で増幅された後、A/D変換回路26でデジタル値に変換され、オリジナルデータとしてメモリ32に記憶される。ロードセル12から出力される電圧値は、センサ装置10に付加された荷重に比例するため、当該電圧値を増幅、A/D変換したオリジナルデータがあれば、付加荷重の大きさが一応は分かるようになっている。しかし、荷重計測を目的とするユーザにとって、電圧値を示すオリジナルデータは、取り扱いづらいデータである。そこで、CPU30は、当該オリジナルデータを、ユーザが所望する物理量に換算する信号処理を実行する。具体的には、オリジナルデータで示される電圧値を、ユーザが所望する荷重値(N)に変換する。変換されたデータは、計測結果データとして、USBインターフェース28を介して外部情報処理装置に出力される。外部情報処理装置では、荷重値に変換済みのデータが表示されるため、ユーザは計測結果を容易に認識することができる。
【0027】
ところで、この電圧/荷重変換は、予め設定された電圧出力特性(付加荷重に対する出力電圧値の比)に基づいて行われる。この電圧出力特性は、センサ装置10の出荷時に所定の値に設定される。したがって、出荷直後のセンサ装置10であれば、予め設定された初期電圧出力特性に基づいて電圧/荷重変換すれば、正確な付加荷重値が得られる。しかし、この電圧出力特性は、センサ装置10の使用環境や、経年変化により、変化する。例えば、出荷時には、1Nで1mVの電圧出力していたロードセル12が、劣化等により1Nで0.9mVの電圧出力となる場合がある。この場合に、初期設定された電圧出力特性に基づいて物理量換算を行った場合、正確な付加荷重量が得られない。
【0028】
そこで、従来から、ユーザは、定期的に校正作業を行い、その時点での電圧出力特性を取得していた。具体的には、基準荷重をロードセル12に付加し、その際、出力される電圧値に基づいて、その時点での電圧出力特性を算出していた。そして、校正作業の結果、得られた電圧出力特性に基づいて、出力電圧の値を補正していた。しかし、この出力電圧値の補正をユーザが行うのは煩雑であるばかりでなく、補正の計算ミスや計算忘れに起因する最終計測結果の不正確さも招いていた。
【0029】
そこで、本実施形態のセンサ装置10のCPU30は、この計測結果の補正処理も行う。すなわち、予めメモリ32に記憶されている補正値に基づき、オリジナルデータ、または、オリジナルデータを物理量変換した後の計測結果データの補正を行う。センサ装置10で、一括して、補正処理を行うことにより、ユーザはより簡易に、より正確な計測値を得ることができる。なお、メモリ32に記憶される補正値は、校正作業のたびに、更新される。また、本実施形態のセンサ装置10では、このメモリ32に記憶される補正値は、校正作業時においてCPU30により自動的に算出される。
【0030】
次に、センサ装置10と外部情報処理装置とのUSB通信において用いられるコマンドについて説明する。コマンドは、所定の処理内容を示す命令文で、センサ装置10および外部情報処理装置は、互いに共通のコマンドを記憶している。センサ装置10のCPU30は、外部情報処理装置からコマンドを受信すれば、当該コマンドを解釈し、その内容に応じた処理を実行する。両装置間で遣り取りされるコマンドの種類としては、データ送受信開始・終了コマンド、校正作業開始・終了コマンド、メモデータ記録・読出コマンド、各種エラー通知コマンドなどがある。データ送受信開始コマンドは、外部情報処理装置からセンサ装置10へ送信されるコマンドであり、当該コマンドを受信したセンサ装置10は計測された結果データを外部情報処理装置へと送信する。この計測結果データの送信は、外部情報処理装置からデータ送受信終了コマンドが送信されるまで継続して行われる。なお、このとき、送信される計測結果データは、物理量変換処理、および、補正処理がなされたデータである。したがって、ユーザは、外部情報処理装置に送信されたデータをそのまま使用することができる。
【0031】
校正作業開始コマンドは、外部情報処理装置からセンサ装置10に送信されるコマンドである。このコマンドは、センサ装置10の校正作業を行う際に送信される。当該コマンドを受信したセンサ装置10は、その駆動モードを通常計測モードから校正モードへと切り替える。通常計測モードは、通常の荷重計測を行うモードである。校正モードは、校正作業用のモードである。ユーザは、センサ装置10の駆動モードが校正モードになれば、センサ装置10に対して、所定の基準荷重(例えば1Nなど)を付加する。この基準荷重付加に対するロードセル12からの出力電圧は、校正電圧値としてメモリ32に一時記憶される。また、メモリ32には、基準荷重を付加した際に、本来得られるべき出力電圧値、すなわち、基準電圧値が予め記憶されている。CPU30は、この校正電圧値と、基準電圧値と、の差異量を算出し、当該差異量を補正値として、メモリ32に記憶する。以降の荷重計測においては、この補正値に基づき、出力電圧値の補正が行われる。CPU30は、補正値の算出が終了すれば、外部情報処理装置に対して、校正作業終了コマンドを送信するとともに、その駆動モードを通常計測モードへと切り替える。外部情報処理装置は、校正作業終了コマンドを受信すれば、校正作業の正常終了をユーザに提示する。なお、センサ装置10のCPU30は、校正電圧値と基準電圧値との差異量があまりに大きい場合には、校正作業に何らかの問題があったと判断し、外部情報処理装置に対して校正エラー通知コマンドを送信するとともに、校正モードを終了する。
【0032】
メモデータ記録コマンドは、外部情報処理装置からセンサ装置10に送信されるコマンドである。外部情報処理装置は、当該コマンドとともに、記録対象データであるメモデータも送信する。当該コマンドを受信したCPU30は、一緒に送信されたメモデータをメモリ32に記憶させる。このメモデータの内容は、ユーザが適宜、設定可能であり、例えば、センサ装置10の設置場所や管理番号などがメモデータとして送信される。メモデータ読出コマンドも外部情報処理装置からセンサ装置10に送信されるコマンドであり、当該コマンドを受信したセンサ装置10は、メモリ32に記憶されているメモデータを外部情報処理装置に送信する。ここで、送信されるメモデータとしては、メモデータ記録コマンドで記録されたユーザ設定のメモデータのほかに、出荷時にメモリ32に記憶されたセンサ装置10の性能情報なども送信される。外部情報処理装置は、送信されたメモデータをユーザに提示する。これにより、ユーザは、センサ装置10から離れた場所でも、各センサ装置10に記憶されたメモデータ、例えば、設置場所や、性能情報などを認識することができる。
【0033】
各種エラー通知コマンドは、センサ装置10から外部情報処理装置へと送信されるコマンドであり、エラー内容に応じて複数種類のエラー通知コマンドがある。エラー通知コマンドとしては、例えば、校正作業時の問題を通知する校正エラー通知コマンドや、計測された荷重が上限値を超えた場合に通知される超過荷重通知エラーなどがある。
【0034】
このように、コマンドを用いることにより、接続される外部情報処理装置が変更されても、センサ装置10は影響を受けない。すなわち、外部情報処理装置が変更(例えば、計測専用コンピュータからパーソナルコンピュータへの変更)されても、変更後の外部情報処理装置に、コマンドの送受信および解釈用のプログラムをインストールすれば、センサ装置10をそのまま使用し続けることができる。その結果、センサ装置10の汎用性をより向上できる。
【0035】
次に、このセンサ装置10を用いて、荷重計測を行う場合の例について図2を用いて説明する。図2は、四箇所の計測点における荷重を四つのセンサ装置10で計測し、その計測結果を単一のパーソナルコンピュータ(以下「PC102」という)で処理する計測システムの構成例である。
【0036】
四箇所の計測点には、それぞれ、一つのセンサ装置10が配置される。ユーザは、計測開始に先立って、各センサ装置10のメモリ32に、その設置場所や管理番号をメモデータとして記憶させることが望ましい。メモデータの記憶は、情報処理装置を介して行われる。すなわち、ユーザは、記憶させたいメモデータを情報処理装置に入力するとともに、当該メモデータの記憶を指示する。当該指示を受けた情報処理装置は、メモデータ記憶コマンドとともに、入力されたメモデータをセンサ装置10に送信する。センサ装置10は、送信されたメモデータをメモリ32に記憶する。ここで、本実施形態のセンサ装置10は、情報処理装置との接続にUSBを用いている。USBは、USBケーブル40を抜き差しすることで、容易に接続または接続解除が可能である。したがって、メモデータ、特に設置場所の記録などの際には、情報処理装置としてノートパソコン等の携帯型情報処理装置104を用いることができる。その結果、ユーザは、実際に、ロードセル12近傍に行き、その設置場所を目視で確認した上で、センサ装置10にメモデータを記憶させることができる。
【0037】
メモデータの記憶が終了すれば、四つのセンサ装置10は、単一のPC102にUSB接続される。このとき、センサ装置10とPC102は、USB用HUB100を介して接続されてもよい。USB用HUB100を介在させることにより、単一のPC102に多数のセンサ装置10を接続できる。また、PC102が複数のUSBポートを有するのであれば、複数のセンサ装置10とPC102とを直接接続させてもよい。いずれにしても、センサ装置10に、USBインターフェース28を設けることにより、PC102との接続が容易となり、また、単一のPC102に複数のセンサ装置10を接続できる。
【0038】
四つのセンサ装置10が単一のPC102に接続されれば、以降、ユーザはこのPC102を操作して四つのセンサ装置10の計測結果データの取得や処理を行う。すなわち、ユーザは、計測結果データを必要とする場合は、PC102を操作してデータ送信開始を指示する。ここで、PC102は、接続されている四つのセンサ装置10それぞれに固有のドライブ名や装置名等を割り当てている。ユーザは、データ送信開始などを指示する際、このドライブ名等も選択する。PC102は、選択されたドライブ名等から、どのセンサ装置10に対する指示であるかを判断し、そのセンサ装置10に指示に応じたコマンドを送信する。
【0039】
例えば、あるセンサ装置10の計測結果データが必要な場合、ユーザは、当該センサ装置10のドライブ名(や装置名等)とデータ送信開始指示をPC102に入力する。当該入力を受けたPC102は、ドライブ名から指示対象のセンサ装置10を特定する。そして、特定されたセンサ装置10に対してデータ送信開始のコマンドを送信する。当該コマンドを受けたセンサ装置10は、PC102に計測結果データを送信する。PC102は、送信された計測結果データをディスプレイ等に表示する。
【0040】
ここで、表示される計測結果データは、物理量換算や補正処理などが既に施されたデータである。従来のロードセル装置では、電圧値から荷重値への変換や、ロードセルの電圧出力特性の変化に起因する誤差の補正などは、ユーザ自身が行わなければならなかった。しかし、本実施形態のセンサ装置10では、これらの処理は、センサ装置10で行われる。したがって、ユーザは、各センサ装置10から出力された計測結果データを見れば、即座に、正確な荷重値を知ることができる。これにより、ユーザはより簡易に正確な荷重計測が可能となる。
【0041】
また、各センサ装置10の性能や設置場所等が知りたい場合、ユーザは、センサ装置10を示すドライブ名と、メモデータ読出指示と、をPC102に入力すればよい。当該入力を受けたPC102は、ドライブ名からセンサ装置10を特定し、この特定されたセンサ装置10に対してメモデータ読出コマンドを送信する。当該コマンドを受信したセンサ装置10は、メモリ32に記憶されているメモデータをPC102に返信する。PC102は、返信されたメモデータをディスプレイ等に表示する。ここで、表示されるメモデータは、当該センサ装置10の性能(計測上限値や分解能など)やユーザ自身が登録した設置場所などの情報である。このメモデータを見ることで、ユーザは、センサ装置10から離れた場所にいても、各センサ装置10の性能や設置場所等を把握することができる。
【0042】
また、センサ装置10に、何らかの問題が発生した場合には、センサ装置10からPC102に対してエラー通知コマンドが送信される。当該コマンドを受信したPC102は、その送信元のセンサ装置10を特定するとともに、当該コマンドが示すエラー内容を特定する。そして、当該センサ装置10を示すドライブ名と、エラー内容をユーザに提示する。ユーザは提示されたエラー内容およびドライブ名から、どのセンサ装置10にどのようなエラーが生じているかを判断できる。これにより、ユーザは、センサ装置10から離れたところからでも、センサ装置10の状態を知ることができる。
【0043】
つまり、センサ装置10にUSBインターフェース28を搭載し、PC102に接続可能とすることで、ユーザは離れた場所でもセンサ装置10の操作や状態監視が可能となる。また、USBの場合、単一のPC102に複数のUSB機器を接続できる。そのため、ユーザは、単一のPC102で複数のセンサ装置10の操作や状態監視が可能となる。さらに、USBの場合、接続されるUSB機器の数を簡易に増減できる。それにより、計測システム全体の構成を、簡易に変更できる。
【0044】
次に、このセンサ装置10の校正作業の流れについて簡単に説明する。記述したように、センサ装置10に搭載されるロードセル12から出力される電圧は、付加荷重に比例する。しかし、この付加荷重と出力電圧との比、出力電圧特性は、ロードセル12の使用環境や経年変化により僅かに変化してくる。出力電圧特性が変化した状態では、正確な荷重計測はできないため、定期的に、ロードセル12の出力電圧特性を計測し、その結果を以降の計測値算出に反映させる校正作業が必要となる。本実施形態のセンサ装置10では、この校正作業をより簡易に行えるような構成となっている。
【0045】
校正作業を行いたい場合、ユーザは、まず、校正対象のセンサ装置10を情報処理装置にUSB接続する。このとき、接続される情報処理装置としてノートパソコン104などの携帯型情報処理装置を用い、ユーザはセンサ装置10の近傍に位置することが望ましい。
【0046】
続いて、ユーザは、情報処理装置を操作して、接続されたセンサ装置10に対して校正作業の開始を指示する。当該指示を受けた情報処理装置は、センサ装置10に校正作業開始コマンドを送信する。当該コマンドを受信したセンサ装置10は、その駆動モードを校正モードに切り替える。
【0047】
一方、情報処理装置を介して校正作業開始を指示したユーザは、センサ装置10に基準の荷重を付加する。この基準荷重の付加は、例えば、基準重量の試験片をセンサ装置10に載置することで行われる。センサ装置10のロードセル12は、基準荷重の付加に応じた電圧を出力する。出力された電圧は、増幅、A/D変換された後、メモリ32に一時記憶される。CPU30は、メモリ32に一時記憶された電圧値の平均の値を校正電圧値として取得する。そして、メモリ32に予め記憶されている基準電圧値と、校正電圧値と、を比較し、その差異量を算出する。算出された差異量は、補正値としてメモリに記憶される。補正値がメモリに記憶されれば、センサ装置10は、校正作業終了コマンドを外部情報処理装置に送信するとともに、駆動モードを通常計測モードに変更する。そして、以降では、校正作業で得られた補正値(基準電圧値と校正電圧値との差異量)に基づき、オリジナルデータの補正を行う。
【0048】
以上、本実施形態によれば、センサ装置10内で物理量変換や補正処理がなされるため、より簡易に正確な計測値を得ることができる。また、USBインターフェース28を搭載し、情報処理装置とUSB接続が可能とすることで、計測システム全体の汎用性をより向上できる。また、校正作業専用の駆動モード、校正作業モードを設けることにより、従来煩雑であった校正作業がより簡易に行える。
【0049】
なお、本実施形態では、センサ本体としてロードセルを用いたセンサ装置を説明したが、他の種類のセンサをセンサ本体として用いてもよい。例えば、図3に図示するように、ひずみゲージ式の圧力センサ(ロードセル12)に代えて、半導体式の圧力センサ12aをセンサ本体として用いてもよい。この場合、圧力センサ12aとA/D変換回路26との間には、ひずみアンプ24ではなく直流アンプ24aを設ければよい(図1参照)。
【0050】
また、図4に図示するように、本実施形態を加速度センサ12bに応用してもよい。加速度センサ12bとA/D変換回路26との間に設けられるアンプ24bは、加速度センサ12bの種類に応じて適宜変更する。例えば、加速度センサ12bがひずみゲージ式の場合にはひずみアンプを、加速度センサ12bが圧電型の場合にはチャージアンプを用いる。さらに、図5に図示するように本実施形態をトルクセンサ12cに応用してもよい。この場合も、トルクセンサ12cの種類に応じたアンプ24を、トルクセンサ12cとA/D変換回路26との間に設ければよい。
【0051】
そして、いずれのセンサを用いた場合でも、上述の実施形態と同様に、これらセンサ本体を、当該センサ本体に応じて選定されたアンプやA/D変換回路等とともに同一の筐体18に収容し、検出信号の信号処理を施したうえで、USBインターフェースを介して情報の遣り取りを行うように構成すれば、汎用性の高い計測システムを構成できる。
【0052】
また、本実施形態では、通信インターフェースとしてUSBインターフェース28を用いたが、LANインターフェースを用いてもよい。この場合の計測システムの構成を図6に示す。図6において実線の接続線はLANケーブル42を、破線の接続線は電源ケーブル44を示している。LANインターフェースを設けた場合、各センサ装置10は、HUB110やルータ112の中継により、LANやインターネットなどのネットワーク網114を介して情報処理装置(PC102)に接続される。このようにセンサ装置10とPC102とをネットワーク接続することにより、計測システムの汎用性をより高めることができる。
【0053】
すなわち、USB接続はそのケーブル長に限界があるため、センサ装置10とPC102との距離をあまり大きくすることはできなかった。一方、ネットワーク接続の場合には、接続間距離には制限は無く、センサ装置10とPC102とが長距離離れていてもよい。また、PC102に接続されるセンサ装置10の数にも上限が無く、より多数のセンサを接続できる。
【0054】
さらに、ネットワーク接続の場合、当該ネットワークに接続されていれば、いずれのPC102からでも、センサ装置10との通信が可能となる。そのため、二台以上のPC102で同時に、複数のセンサ装置10の計測結果を取り扱うこともできる。また、校正作業等は、センサ装置10近傍に配置されたPC(例えば、携帯型PCなど)で行い、計測結果データのモニタはセンサ装置10から離れた位置に配置されたPCで行うことも可能である。つまり、USBインターフェースに代えてLANインターフェースを設けることにより、計測システムの汎用性をより向上できる。
【0055】
なお、図6では、各センサ装置10が外部から電力供給を受ける場合のシステム構成を示している。すなわち、各センサ装置10は電源ケーブル44を介してコンセント50に接続されている。ただし、センサ装置10の内部に乾電池等の携帯電源を設けることで、この電源ケーブル44は省略することができる。また、LANインターフェースとしてPoE(Power over Ethernet(登録商標))の機能を備えたLANインターフェースを用いることで、センサ装置10へ給電することも可能である。PoEのLANインターフェースを用いれば、電源ケーブル44および携帯電源のいずれも不要となる。その結果、センサ装置10のさらなる小型化、また、計測システムの更なる簡易化が可能となる。さらに、無線LAN用のインターフェースを用いれば、センサ装置10の設置場所を自由に変えることができ、より汎用性の高い計測システムを構成できる。
【0056】
また、USB,LAN通信インターフェースのほかに、電力線通信(PLC)インターフェースを用いることも望ましい。PLCは、電源ケーブルに高調波信号を重畳し、電力線を伝送路として双方向の通信を行う通信形態である。このPLCでは、既存のコンセント等がそのまま使用でき、電源ケーブルのプラグをコンセントに差し込むだけで通信環境に接続できるという利点をもつ。
【0057】
図7は、通信インターフェースとしてPLCを用いた場合の計測システムの構成を示す図である。この場合、各センサ装置10は、LANケーブル42およびHUB110を介してPLCモデム120に接続されている。このPLCモデム120は、電源ケーブル44およびコンセント50を介して室内電源配線網122に接続されている。また、情報処理装置102も、LANケーブル42、HUB110、PLCモデム120、電源ケーブル44、コンセント50等を介して、室内電源配線網122に接続されている。PLCにおいて、この室内電源配線網122は、ネットワーク網として機能する。したがって、PLCモデム120等を介してこの室内電源配線網122に接続されたセンサ装置10および情報処理装置102は、双方向通信が可能となる。なお、コンセント50から延びる電源ケーブル44は、双方向通信のためにPLCモデム120に入力する経路と、給電のために各センサ装置10や情報処理装置102に直接入力する経路と、に分岐されている。
【0058】
図8は、PLCモデム120をセンサ装置10等に内蔵した場合の計測システムの構成を示す図である。この図示例では、センサ装置10の内部にPLCモデム120が内蔵されており、各センサ装置10には単一の電源ケーブル44が接続されている。そして、この電源ケーブル44のラインは、センサ装置10の内部で通信用の経路と、電力供給用の経路に分岐される。したがって、この場合、各センサ装置10に接続された電源ケーブル44をコンセント50に差し込むだけで、給電と通信の両方が可能となる。また、情報処理装置102に接続するセンサ装置10の数もコンセント50への抜き差しで適宜増減することができる。その結果、極めて簡易に汎用性の高い計測システムを構成できる。
【0059】
なお、以上で説明した各種通信インターフェースのポート、例えば、USBポートやLANポートとして、防水機能を備えたポートを用いることが望ましい。かかるポートを用いることで、水分の多い場所での計測も可能となる。
【0060】
ところで、複数のセンサ装置10を用いる場合、情報処理装置102に出力表示される各検出値がどのセンサ装置10から出力されたものかを特定したい場合がある。例えば、複数のセンサ装置10から出力される検出値のうち所定位置に配置されたセンサ装置10での検出値のみを利用したい場合がある。この場合、情報処理装置102において、所望のセンサが示す検出値を特定する必要がある。しかし、情報処理装置102では、各センサ装置10の検出値が出力、表示されるだけであり、各検出値を検出したセンサ装置10の配置位置等は認識できない。そのため、所定位置に配置されたセンサ装置10からの検出値を特定することが困難である。そこで、センサ装置10に、各種インターフェースのポートとは別に入力ポート(図示せず)を設け、その入力信号によりセンサ装置を特定するようにしてもよい。例えば、図9に図示するように、センサ装置10の入力ポートに、手動操作される操作子として接点36を設けるとともに、当該接点のON/OFF状態を情報処理装置102に出力、表示するようにしてもよい。この場合、予め、複数のセンサ装置10のうち、計測に利用したいセンサ装置10の接点36のみをONにし、他のセンサ装置10の接点36はOFFにしておく。このON/OFF状態は、情報処理装置102に出力される。したがって、ユーザは、この情報処理装置102に出力された接点ON/OFF状態をモニタリングすることで、所望のセンサ装置10の検出値を簡易に特定することができる。なお、この入力ポートに入力される信号は、検出値特定のためにのみ利用するのではなく、測定開始、終了のタイミング検出等に利用してもよい。
【0061】
また、情報処理装置102に表示される複数の検出値のうち所定の検出値を出力したセンサ装置10を特定したい場合がある。例えば、情報処理装置102において、あるセンサ装置10からエラーが出力されていることが確認された場合、当該エラーを出力しているセンサ装置10を実際に特定し、当該センサ装置10の状況を確認する必要がある。しかし、各センサ装置10は、同一の外観を有するため、複数のセンサ装置10から当該エラーを出力したセンサ装置10のみを特定することは困難である。そこで、センサ装置10に各種インターフェースのポートとは別に出力ポート(図示せず)を設け、当該出力ポートからの出力信号によりセンサ装置を特定するようにしてもよい。例えば、情報処理装置102からの特定の信号が送信された場合に、その旨をユーザに提示する提示手段をセンサ装置10の出力ポートに設け、当該提示手段の状況に基づいてセンサ装置10を特定するようにしてもよい。
【0062】
具体的には、図10に図示するように、情報処理装置102からの出力信号に応じて、点灯または消灯するランプ38を提示手段として設け、当該ランプ38の点灯状態でセンサ装置10を特定するような例が挙げられる。この場合、情報処理装置102において、あるセンサ装置10からのエラー出力が確認された場合、ユーザは当該センサ装置10のランプ点灯を情報処理装置102に指示する。情報処理装置102は、指示されたセンサ装置10に対してランプ点灯を指示する信号を出力する。センサ装置10は、当該信号を受信すれば、ランプ38を点灯させる。このランプ38の点灯状態は、外部から容易に視認できるため、ユーザは、極めて簡易に所望のセンサ装置10を特定できる。なお、ランプ38に限らず、外部からユーザが認識可能な提示手段であれば、ブザー等でもよい。なお、この出力ポートから出力される信号は、センサ装置特定のためにだけ使用するのではなく、各センサ装置10での検出状況を提示手段を介してユーザに提示するための信号として用いてもよい。例えば、測定過程において、各センサ装置10に付与された物理量が、指定の物理量に達したことや指定の物理量範囲内にあることを提示手段を介してユーザに提示するための信号として用いてもよい。
【0063】
また、センサ装置10や検出値を特定するために、予め各センサ装置10に付与された不変の識別子を情報処理装置102で検出するとともに、当該識別子を各センサ装置10の筐体18の外表面に印刷しておいてもよい。例えば、LAN通信を行う場合、各センサ装置10には、IPアドレスが付与されており、このIPアドレスは、情報処理装置102において認識される識別子として機能する。この場合に、図11に図示するように、各センサ装置10の筐体18の外表面にIPアドレス39を印刷しておく。ユーザは、情報処理装置102で認識されたIPアドレスと、筐体18の外表面に印刷されたIPアドレスと、を照合することで、各センサ装置10と検出結果との対応関係を容易に認識することができる。その結果、エラー出力されたセンサ装置の特定や、所望のセンサ装置からの検出値の特定等が容易に行える。また、IPアドレスと同様に、LANインターフェースに付与されているMACアドレスを用いて各センサ装置10を識別するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態であるセンサ装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】複数のセンサ装置を用いた荷重計測システムの構成例を示す図である。
【図3】本実施形態を半導体方式の圧力センサに適用した場合のセンサ装置の概略構成を示す図である。
【図4】本実施形態を加速度センサに適用した場合のセンサ装置の概略構成を示す図である。
【図5】本実施形態をトルクセンサに適用した場合のセンサ装置の概略構成を示す図である。
【図6】通信インターフェースとしてLAN通信インターフェースを用いた場合の計測システムの構成例を示す図である。
【図7】通信インターフェースとしてPLC通信インターフェースを用いた場合の計測システムの構成例を示す図である。
【図8】通信インターフェースとしてPLC通信インターフェースを用いた場合の計測システムの他の構成例を示す図である。
【図9】センサ装置に入力機能を持たせた場合の計測システムの構成を示す図である。
【図10】センサ装置に出力機能を持たせた場合の計測システムの構成を示す図である。
【図11】センサ装置の外観の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0065】
10 センサ装置、12 ロードセル、14 回路基板、16 電源部、18 筐体、20 起歪部、22 ひずみゲージ、24 ひずみアンプ、26 A/D変換回路、28 USBインターフェース、32 メモリ、40 USBケーブル、42 LANケーブル、44 電源ケーブル、50 コンセント、100 USB用HUB、102 PC、104 携帯型情報処理装置、112 ルータ、114 ネットワーク網、122 室内電源配線網。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測の対象となる物理量を検出するセンサ本体と、
センサ本体から出力された検出信号に対して所定の信号処理を施して計測結果データを取得する信号処理手段と、
ネットワーク通信、USB通信、および、電力線通信のいずれかを介して、前記計測結果データを含む各種情報を外部情報処理装置との間で遣り取りする通信手段と、
少なくとも、センサ本体、信号処理手段、および、通信手段を収容する単一の筐体と、
を備えることを特徴とするセンサ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサ装置であって、
センサ本体は、対象物の運動量を検出する運動量センサ、または、対象物の力学量を検出する力学量センサであることを特徴とするセンサ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のセンサ装置であって、
センサ本体は、付加された圧力を計測するロードセルであることを特徴とするセンサ装置。
【請求項4】
請求項2に記載のセンサ装置であって、
センサ本体は、対象物の加速度を計測する加速度センサであることを特徴とするセンサ装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のセンサ装置であって、
信号処理手段は、少なくとも、
センサ本体から出力されたアナログの検出信号を増幅する増幅手段と、
増幅されたアナログの検出信号をデジタル信号に変換するA/D変換手段と、
を備えることを特徴とするセンサ装置。
【請求項6】
請求項5に記載のセンサ装置であって、
信号処理手段は、さらに、A/D変換手段によりデジタル変換された検出信号に基づき、センサ本体で検出された検出値を計測対象の物理量の単位に変換して計測結果データとして算出する物理量変換手段を備えることを特徴とするセンサ装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のセンサ装置であって、
信号処理手段は、さらに、校正作業により得られた補正値に基づき、計測結果データを補正する補正手段を備えることを特徴とするセンサ装置。
【請求項8】
請求項7に記載のセンサ装置であって、さらに、
センサ本体に基準の物理量が付与された場合に、本来、センサ本体から出力されるべき検出値を基準検出値として記憶する記憶手段と、
実際にセンサ本体に基準の物理量が付与された場合に、センサ本体から実際に出力された実測検出値と、記憶手段に記憶された基準検出値と、の比較に基づき計測結果データの補正に用いられる補正値を算出する校正手段と、
を備えることを特徴とするセンサ装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のセンサ装置であって、さらに、
外部情報処理装置と共通の複数のコマンドと、各コマンドが示す処理内容と、を記憶するコマンド記憶手段と、
外部情報処理装置との間で送受信されるコマンドの内容をコマンド記憶手段を参照して解釈するコマンド解釈手段と、
を有し、外部情報処理装置との間での命令の遣り取りは、コマンドを介して行われることを特徴とするセンサ装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載のセンサ装置であって、
前記筐体の外表面には、外部情報処理装置で認識される当該センサ装置の識別子が掲示されることを特徴とするセンサ装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載のセンサ装置であって、さらに、
前記通信手段とは別に当該センサ装置をモニタするための信号を出力する出力ポートを備えることを特徴とするセンサ装置。
【請求項12】
請求項11に記載のセンサ装置であって、さらに、
外部情報処理装置から特定の信号が送信された場合に、その旨を前記出力ポートを介してユーザに提示する提示手段を備えることを特徴とするセンサ装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載のセンサ装置であって、さらに、
前記通信手段とは別に当該センサ装置の測定をサポートするための信号を入力する入力ポートを備えることを特徴とするセンサ装置。
【請求項14】
請求項13に記載のセンサ装置であって、さらに、
ユーザによりON/OFF操作される操作子を備え、
前記通信手段は、前記入力ポートを介して入力される当該操作子のON/OFF状況を外部情報処理装置に送信することを特徴とするセンサ装置。
【請求項1】
計測の対象となる物理量を検出するセンサ本体と、
センサ本体から出力された検出信号に対して所定の信号処理を施して計測結果データを取得する信号処理手段と、
ネットワーク通信、USB通信、および、電力線通信のいずれかを介して、前記計測結果データを含む各種情報を外部情報処理装置との間で遣り取りする通信手段と、
少なくとも、センサ本体、信号処理手段、および、通信手段を収容する単一の筐体と、
を備えることを特徴とするセンサ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサ装置であって、
センサ本体は、対象物の運動量を検出する運動量センサ、または、対象物の力学量を検出する力学量センサであることを特徴とするセンサ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のセンサ装置であって、
センサ本体は、付加された圧力を計測するロードセルであることを特徴とするセンサ装置。
【請求項4】
請求項2に記載のセンサ装置であって、
センサ本体は、対象物の加速度を計測する加速度センサであることを特徴とするセンサ装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のセンサ装置であって、
信号処理手段は、少なくとも、
センサ本体から出力されたアナログの検出信号を増幅する増幅手段と、
増幅されたアナログの検出信号をデジタル信号に変換するA/D変換手段と、
を備えることを特徴とするセンサ装置。
【請求項6】
請求項5に記載のセンサ装置であって、
信号処理手段は、さらに、A/D変換手段によりデジタル変換された検出信号に基づき、センサ本体で検出された検出値を計測対象の物理量の単位に変換して計測結果データとして算出する物理量変換手段を備えることを特徴とするセンサ装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のセンサ装置であって、
信号処理手段は、さらに、校正作業により得られた補正値に基づき、計測結果データを補正する補正手段を備えることを特徴とするセンサ装置。
【請求項8】
請求項7に記載のセンサ装置であって、さらに、
センサ本体に基準の物理量が付与された場合に、本来、センサ本体から出力されるべき検出値を基準検出値として記憶する記憶手段と、
実際にセンサ本体に基準の物理量が付与された場合に、センサ本体から実際に出力された実測検出値と、記憶手段に記憶された基準検出値と、の比較に基づき計測結果データの補正に用いられる補正値を算出する校正手段と、
を備えることを特徴とするセンサ装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のセンサ装置であって、さらに、
外部情報処理装置と共通の複数のコマンドと、各コマンドが示す処理内容と、を記憶するコマンド記憶手段と、
外部情報処理装置との間で送受信されるコマンドの内容をコマンド記憶手段を参照して解釈するコマンド解釈手段と、
を有し、外部情報処理装置との間での命令の遣り取りは、コマンドを介して行われることを特徴とするセンサ装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載のセンサ装置であって、
前記筐体の外表面には、外部情報処理装置で認識される当該センサ装置の識別子が掲示されることを特徴とするセンサ装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載のセンサ装置であって、さらに、
前記通信手段とは別に当該センサ装置をモニタするための信号を出力する出力ポートを備えることを特徴とするセンサ装置。
【請求項12】
請求項11に記載のセンサ装置であって、さらに、
外部情報処理装置から特定の信号が送信された場合に、その旨を前記出力ポートを介してユーザに提示する提示手段を備えることを特徴とするセンサ装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載のセンサ装置であって、さらに、
前記通信手段とは別に当該センサ装置の測定をサポートするための信号を入力する入力ポートを備えることを特徴とするセンサ装置。
【請求項14】
請求項13に記載のセンサ装置であって、さらに、
ユーザによりON/OFF操作される操作子を備え、
前記通信手段は、前記入力ポートを介して入力される当該操作子のON/OFF状況を外部情報処理装置に送信することを特徴とするセンサ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−12019(P2007−12019A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−358733(P2005−358733)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(000003676)ティアック株式会社 (339)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(000003676)ティアック株式会社 (339)
【Fターム(参考)】
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