説明

センサ部及び生体センサ

【課題】更なる小型化の要求に応えるべく、小型で個別部品の組み立て、作製の工程を削減し、量産を可能にして、低コスト化、高信頼性を実現した超小型生体センサ及びセンサ部を提供する。
【解決手段】発光部21と受光部22とが半導体基板表面23に形成された同一の凹部24内に配置され、半導体基板23の上面側に第1の導光部25と第2の導光部26とを有する遮光性のカバー基板27が配置されている。ここでは、受光部22がアレイ状の受光素子28によって形成されているため、受光素子28の数と同数の第2の導光部26が遮光性のカバー基板27に設けられており、受光素子28の受光面は第2の導光部26の各々の一端と合致するように隙間無く連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織からの散乱光などを利用して対象生体組織における血流などの、生体内の液状物質に関する情報を検知する生体センサと、この生体センサで用いられるセンサ部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の血流計において用いられるセンサチップの構造を記載した先行技術文献として、特許文献1がある。図13は特許文献1に示す従来の血流計のセンサチップを示す図である。図13に示される従来のセンサチップは、発光素子の半導体レーザ1、受光素子のフォトダイオード2、発光素子から出射した光を発散光、集束光または平行光にして外部の生体組織に向かって出射するための光導波路3を有しており、これらが同一半導体基板上に集積化されている。
【0003】
また、半導体レーザ1からの光が直接フォトダイオード2に入射するのを防ぐため、半導体レーザ1、フォトダイオード2のそれぞれを被い囲む形に遮蔽ブロック4を形成し基板に接合して用いられている。フォトダイオード2には端面入射屈折型フォトダイオードが用いられ、更にその前面に所定の空隙を有する第2の遮光板が備えられる場合もある。
【0004】
このような血流計では、静止した生体組織からの散乱光と生体組織の毛細血管中を移動している赤血球(散乱粒子)からの散乱光(血流速度に応じてドップラーシフトΔfを受けた散乱光)の干渉光を検出(ヘテロダイン検波)することにより血流量、血液量、血流速度、脈拍を計測する。この測定原理については、例えば、文献M.D.Stern:In vivo eva1uation of microcirculation by coherent light scattering, Nature,vol.254,pp.56−58(1975)に記載されている。
【0005】
また、本発明者らは、小型化を可能とし、個別部品の組み立てを容易にすること等を目的として、発光素子と受光素子の各々を同一半導体基板表面に形成した凹部に配置し、半導体基板の上面に不要散乱光を遮る遮光膜が形成されたカバー基板を配置し、発光素子から出射した光をカバー基板を通して外部の生体組織に向けて出射し、生体組織からの散乱光をカバー基板を通して受光素子が受光する構造を有するセンサ部を有する血流計を発明し、その詳細が、特許文献2に記載されている。
また、被検体から反射してきたレーザ光が光ファイバーのクラッドに衝突することにより生じるドップラーシフトの位相の乱れを防止することを目的として、光ファイバーと光電変換装置との間に、光ファイバーと同心にピンホールを形成し、光ファイバーにより導光されたレーザ光をピンホールを介して光電変換装置に導く組織血流計が、特許文献3に記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−330936号公報
【特許文献2】特開2004−229920号公報
【特許文献3】特開2002−45342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2記載の発明によると、半導体基板の上面に不要散乱光を遮る遮光膜が形成されたカバー基板を配置することにより、少ない工程で従来の遮光板と保護カバーガラスを兼ねた構成を実現できるので、製造コストが安価となり、装置の小型化と、組み立て工程の簡略化に大きく寄与することができる。
しかし、血流計に対する更なる小型化の要求が強く、装置をさらに小型化すると、発光部と受光部が同一の凹部内に配置され、発光部から出射した光の一部が生体組織を通らずに直接受光部に入射され、信号光が相対的に減少し、SN比が悪くなるという問題点を生じる。また、血流の2次元分布を測定するために、受光部としてアレイ状のフォトダイオードを用いると、フォトダイオードと不要散乱光を遮る遮光膜のギャップの存在のために、アレイ状のフォトダイオードの隣接する各受光面に散乱光が回り込み、信号光が相対的に減少し、SN比が悪くなるという問題点を生じる。
【0008】
本発明は上述の課題を解決するためになされたものであり、更なる小型化の要求に応えるべく、小型で個別部品の組み立て、作製の工程を削減し、量産を可能にして、低コスト化、高信頼性を実現した超小型の生体センサ及びこの生体センサで用いられるセンサ部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するために、本発明のセンサ部は、発光部から出射した光が外部の生体組織に向かって出射され、生体組織からの散乱光が受光部で受光されて生体組織内の液状物質に関する値を測定する生体センサにおけるセンサ部であって、前記発光部と前記受光部とが半導体基板表面に形成された同一の凹部内に配置され、前記半導体基板の上面側に導光部を有する遮光性のカバー基板が配置され、前記受光部の受光面は前記導光部の一端と合致するように隙間無く連結され、前記発光部から出射した光が外部の生体組織に向けて出射され、前記生体組織からの散乱光が前記導光部を通して前記受光部によって受光される構造を有することを特徴とする。
【0010】
受光部の受光面が導光部の一端と合致するように隙間無く連結されていることによって、発光部と受光部とを隔てる障壁を設けることなく、受光部への散乱光の回り込み等を防止することができるため、センサ部の小型化を促進しつつ、SN比を改善することができる。また、発光部と受光部との間に障壁を設けずに、同一の凹部内に発光部と受光部とを並べて配置することができるため、センサ部の製造工程を簡略化することができる。
【0011】
本発明のセンサ部は、前記発光部及び前記受光部を前記半導体基板上にモノリシックに集積化したことを特徴とする。ここで、発光部及び受光部を半導体基板上にモノリシックに集積化したとは、発光部と受光部とが1枚の半導体基板上に形成されていることを意味する。
これにより、発光素子、受光素子を個別にアセンブリする必要がなく、フォトリソグラフィの精度で一体形成できるため、製造過程における加工精度が向上し、製造過程の簡略化が可能となる。
【0012】
本発明のセンサ部は、発光部から出射した光が外部の生体組織に向かって出射され、生体組織からの透過光が受光部で受光されて生体組織内の液状物質に関する値を測定する生体センサにおけるセンサ部であって、前記発光部が半導体基板表面に形成された第1の凹部内に配置され、前記受光部が半導体基板表面に形成された他の凹部である第2の凹部内に配置され、前記第2の凹部を覆うように、導光部を有する遮光性のカバー基板が配置され、前記受光部の受光面は前記導光部の一端と合致するように隙間無く連結され、前記発光部から出射した光が外部の生体組織に向けて出射され、前記生体組織を透過した光が前記導光部を通して前記受光部によって受光される構造とすることもできる。
この構造のものでは、発光部と受光部との間に指などを挿入することで、簡便に血流等の生体内の液状物質の測定が可能となる。
【0013】
本発明のセンサ部は、前記受光部がアレイ状の受光素子によって形成されるときは、前記受光素子の数と同数の導光部がカバー基板に設けられ、前記受光素子の受光面は前記導光部の各々の一端と合致するように隙間無く連結されていることを特徴とする。ここで、アレイ状の受光素子とは、同一平面上に複数個配列された受光素子のことをいう。
【0014】
この構成によって、アレイ状の受光素子の各受光面への散乱光の回り込みを防止し、個々の受光素子に後方散乱してくる、可干渉光同士が干渉しあった光が受光素子の受光面に入ることを防止することができるため、ノイズが低減し、SN比が改善される。
以上の構成における第1の導光部と第2の導光部の形成は、ピンホールまたは光導波路を形成することによって可能であり、これによって、SN比の改善を達成できる。
【0015】
本発明においては、前記導光部の開口に対する長さの比を2.5以上とすることが好ましい。
導光部の開口に対する長さの比が2.5未満であると、相対的に開口部の幅が大きくなりすぎて、干渉の防止機能が低下する。
【0016】
本発明の生体センサは、上述した本発明のセンサ部と、発光部を駆動する回路と、前記センサ部から受信した信号を処理して生体内の液状物質に関する値を計算するデジタル信号プロセッサとを備えた集積回路とを有することを特徴とする。
本発明のセンサ部を用いることによって、更なる小型化の要求に応えるとともに、SN比の優れた生体センサを実現することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、小型で個別部品の組み立て、作製の工程を削減し、量産を可能にして、低コスト化、高信頼性を実現した超小型生体センサ及びセンサ部を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明のセンサ部及び生体センサを、その実施形態に基づいて説明する。以下においては、生体センサの一例として血流計に用いた場合について説明する。
図1は、本発明の生体センサの実施の形態に係る構成を示す図である。図1に示すように、本発明の生体センサは、生体組織に光を当てることにより反射した散乱光を受光するセンサチップ11、受光した光を増幅する増幅器12、発光素子(LD)を駆動させ、散乱光を解析することにより血流等を求める駆動/演算装置13、求めた血流等を表示する出力部14を有している。センサチップ11は半導体基板上に集積化されて形成されている。
また、駆動/演算装置13は、A/D変換器15、LDドライバ16、受信信号から血流を求めるための演算を行うデジタル信号プロセッサ(DSP)17、電源供給部18、インターフェース19を有し、小型液晶ディスプレイ等の出力部14に接続される。駆動/演算装置13は、全体をLSIとして構成することが可能であり、センサチップ及び増幅器とあわせて一体として構成でき、人体等に容易に装着できる形状に構成することが可能である。
【0019】
図2、図3に、センサ部の構成の一例を示す。この例は、受光部をアレイ状の受光素子によって形成したものを示している。図2において、発光部21と受光部22とが半導体基板23表面に形成された同一の凹部24内に配置され、半導体基板23の上面側に第1の導光部25と第2の導光部26とを有する遮光性のカバー基板27が配置されている。ここでは、受光部22がアレイ状の受光素子28によって形成されているため、受光素子28の数と同数の第2の導光部26が遮光性のカバー基板27に設けられており、受光素子28の受光面は第2の導光部26の各々の一端と合致するように隙間無く連結されている。勿論、受光部22が単一の受光素子28であるときは、遮光性のカバー基板27に第2の導光部26が一つ形成され、受光部22の受光面は、第2の導光部26の一端と合致するように隙間無く連結される。遮光性のカバー基板27の上側には、透過性の基板29が設けられている。発光部21として半導体レーザを用いることができ、受光部22としてフォトダイオードを用いることができる。半導体レーザは、例えば波長1.3μmのDFB(Distributed Feedback)レーザを用いることができ、波長1.3μmのDFBレーザを用いることにより、光を皮下組織の奥まで透過させ整った波形を検出することができる。
【0020】
この構成によって、発光部21から出射した光が第1の導光部25を通して外部の生体組織30に向けて出射され、この生体組織30からの散乱光が第2の導光部26を通して受光部22によって受光される。
この例においては、発光部21を半導体基板23表面上に設けているが、図3に示すように、発光部21の発光面が、第1の導光部25の一端と合致するように隙間無く連結するように設けても良い。
なお、図2、図3を用いた説明では、発光部21からの光を第1の導光部25を介して
生体組織30に向けて出射しているが、必ずしも第1の導光部25を介する必要はなく、何らかの手段によって発光部21からの光が生体組織30に向けて出射されればよい。
【0021】
本発明においては、図4(a)に示す受光部の受光面31に対して、導光部としてのピンホール32、または光導波路33を、図4(b)、(c)のように、遮光性のカバー基板27内に設け、このピンホール32、または光導波路33が、受光部の受光面31に隙間無く密着して連結されている点に大きな特徴がある。すなわち、導光部の端と受光面31との間の隙間が限りなく0に近く、受光面31が導光部の外壁の内側に位置している。
また、この導光部は、導光部の側面においては光が遮蔽されることと、導光部の開口はその長さに対して小さいことにも特徴がある。
【0022】
図5は、発光部21と受光部22とを半導体基板23上にモノリシックに集積化した例を示している。この例においては、半導体基板23の中央部に発光部21が形成され、この発光部21上に密着して第1の導光部25としてのピンホールが設けられるとともに、その周囲に複数の受光部22が形成され、この受光部22上に密着して第2の導光部26としてのピンホールが設けられている。ここでも、ピンホールに替えて光導波路を形成しても良い。この構成によっても、発光部21から出射した光が第1の導光部25を通して外部の生体組織30に向けて出射され、この生体組織30からの散乱光が第2の導光部26を通して受光部22によって受光される。
【0023】
次に、本発明の上記の構成によるセンサ部を用いることによって得られる血流計のSN比を、従来のものと比較して説明する。
図6に、受光部が単一の受光素子によって形成されている場合を示し、(a)、(b)、(c)が従来のものであり、(d)が本発明の構成のものである。
(a)は、発光部21と受光部22とを、半導体基板23表面に形成された同一の凹部24内において、半導体基板23の表面上に並べて配置し、第1の導光部25と第2の導光部26とを設けた遮光性のカバー基板27と、透過性の基板29とを配置したものであり、受光部22の受光面と、第2の導光部26との間には隙間が生じている。
【0024】
(b)は、発光部21と受光部22とを、障壁40を隔てて半導体基板23の表面上に並べて配置し、透過性の基板42の一部に遮光膜41を設けたものである。(c)は、発光部21と受光部22とを、障壁40を隔てて半導体基板23の表面上に並べて配置し、第1の導光部25と第2の導光部26とを設けた遮光性のカバー基板27と、透過性の基板29とを配置したものであり、受光部22の受光面と、第2の導光部26との間には隙間が生じている。
【0025】
(d)は、発光部21と受光部22とを、半導体基板23表面に形成された同一の凹部24内において、半導体基板23の表面上に並べて配置し、第1の導光部25と第2の導光部26とを設けた遮光性のカバー基板27と、透過性の基板29とを配置したものであり、受光部22の受光面は、第2の導光部26との間に隙間が生じてないように密着して連結されている。
【0026】
図7に、受光部がアレイ状の受光素子によって形成されている場合を示し、(a)、(b)、(c)が従来のものであり、(d)が本発明の構成のものである。
(a)は、発光部21と受光部22とを、半導体基板23表面に形成された同一の凹部24内において、半導体基板23の表面上に並べて配置し、第1の導光部25と第2の導光部26とを設けた遮光性のカバー基板27と、透過性の基板29とを配置したものであり、受光部22の各受光素子の受光面と、各々の第2の導光部26との間には隙間が生じている。
【0027】
(b)は、発光部21と受光部22とを、障壁40を隔てて半導体基板23の表面上に並べて配置し、透過性の基板42の一部に遮光膜41を設けたものである。(c)は、発光部21と受光部22とを、障壁40を隔てて半導体基板23の表面上に並べて配置し、第1の導光部25と第2の導光部26とを設けた遮光性のカバー基板27と、透過性の基板29とを配置したものであり、受光部22の各受光素子の受光面と、各々の第2の導光部26との間には隙間が生じている。
【0028】
(d)は、発光部21と受光部22とを、半導体基板23表面に形成された同一の凹部24内において、半導体基板23の表面上に並べて配置し、第1の導光部25と第2の導光部26とを設けた遮光性のカバー基板27と、透過性の基板29とを配置したものであり、受光部22の各受光素子の受光面は、各々の第2の導光部26との間に隙間が生じてないように密着して連結されている。
【0029】
図8に、センサ部の構造が、図6(a)〜(d)、図7(a)〜(d)に示すものである場合について、血流計のSN比の測定データを示す。図8からわかるように、本発明の構造である場合の実験D、実験HにおけるSN比が極めて良好な結果を示している。特に、受光部がアレイ状の受光素子によって形成されている場合において、SN比の改善が顕著である。
【0030】
図9に基づいて、導光手段としてのピンホールまたは光導波路の形状の最適範囲について説明する。図9は、発光部として端面受光フォトダイオード50を用い、この端面受光フォトダイオード50の受光面に密着して、ピンホール52を有する遮光構造体51を配置したときに、開口部の幅Pに対するピンホール52の長さLの値である、L/P(以下、「アスペクト比」という。)を変えて、SN比の測定を行った。その結果を、表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
この結果から、アスペクト比は、2.5以上とすることが好ましい。アスペクト比が2.5未満であると、相対的に開口部の幅Pが大きくなりすぎて、干渉の防止機能が低下する。本実験条件下では、L/Pが8程度のときに、SN比が良好であることが確認されている。
【0033】
以上説明したように、本発明のセンサ部では、図2、図3、図5に示すように、発光部21から出射した光は、外部の生体組織に照射される。このセンサチップを皮膚などの生体組織に近づけた場合、光散乱が生じ、散乱光が再び受光部22に入射する。この散乱光には、静止した生体組織からの散乱光と生体組織の毛細血管中の移動している赤血球からの散乱光(ドップラーシフトした光)の干渉成分が含まれる。このため、この信号を周波数解析することにより、血流速度を求めることができる。また、散乱光の強度は移動している血液量に相当しており、血流速度と血液量の積で血流量が求められる。更に散乱信号波形には、脈拍による変調成分もあり、脈拍の検出も可能である。
【0034】
発光部の構成は、図2、図3に示したものに限らず、図10、図11に示す構成とすることもできる。
図10は、端面発光の半導体レーザを用いる場合を示しており、凹部24の一部にミラー60を形成し、端面発光型半導体レーザ61の端面から出射する光をミラー60によって上方に反射して、第1の導光部25、コリメートレンズ62を介して外部の生体組織に照射する。生体組織からの散乱光は、遮光性のカバー基板27に設けられた第2の導光部26を介して受光部22によって受光される。
図11は、生体組織30に向けて光を出射する際に、マイクロミラーを用いたものを示しており、マイクロミラー70を走査し、レンズ等により集光させた、マイクロ走査型顕微鏡のビームを用いることにより、生体組織の観察と同時に、その観察地点に対応する血流量や生体内の液体の流れの様子の測定が可能である。なお、図11において、71は半導体レーザフォトダイオードビームスプリッタ、72は貫通穴電極、73はキャビティ構造シリコン、74はレンズ付封止ガラス、75は貫通穴、22は受光部である。
【0035】
図12に、他の実施形態によるセンサ部の構成の一例を示す。この例は、受光部をアレイ状の受光素子によって形成したものを示している。図12において、発光部21が半導体基板23a表面に形成された第1の凹部内24aに配置され、受光部22が半導体基板23b表面に形成された他の凹部である第2の凹部24b内に配置されている。
第1の凹部24aを覆うように、第1の導光部25を有する遮光性のカバー基板27aが配置され、遮光性のカバー基板27aの上側には、透過性の基板29aが設けられている。また、第2の凹部24bを覆うように、第2の導光部26を有する遮光性のカバー基板27bが配置され、遮光性のカバー基板27bの上側には、透過性の基板29bが設けられている。
【0036】
ここでは、受光部22がアレイ状の受光素子28によって形成されているため、受光素子28の数と同数の第2の導光部26が遮光性のカバー基板27bに設けられており、受光素子28の受光面は第2の導光部26の各々の一端と合致するように隙間無く連結されている。勿論、受光部22が単一の受光素子28であるときは、遮光性のカバー基板27bに第2の導光部26が一つ形成され、受光部22の受光面は、第2の導光部26の一端と合致するように隙間無く連結される。発光部21として半導体レーザを用いることができ、受光部22としてフォトダイオードを用いることができる。半導体レーザは、例えば波長1.3μmのDFBレーザを用いることができ、波長1.3μmのDFBレーザを用いることにより、光を皮下組織の奥まで透過させ整った波形を検出することができる。
なお、図12を用いた説明では、発光部21からの光を第1の導光部25を介して生体組織30に向けて出射しているが、必ずしも第1の導光部25を介する必要はなく、何らかの手段によって発光部21からの光が生体組織30に向けて出射されればよい。
【0037】
このセンサ部を用いると、指などの生体組織30を発光側と受光側との間に挿入することにより、発光部21から出射されて生体組織30を透過した光を受光部22で受光することにより、簡便な方法で血流の測定を行うことができる。
なお、以上の実施形態においてはいずれも、本発明のセンサ部を血流計として用いる場合について説明しているが、このセンサ部は血流計への利用に留まらず、上記の原理に基づいて測定できる他の対象についても適用可能である。例えば、軟骨内のゲル状物質の流れなど、生体内での液状物質の流れを検知することができ、広く生体センサとして用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、光学素子や導光部を有する遮光性カバー基板、封止基板などのボンディングをウエハレベルで行うことができ、最終工程でダイシングし、個々のセンサに分離することができるため、小型で個別部品の組み立て、作製の工程を削減し、量産を可能にして、低コスト化、高信頼性を実現した超小型生体センサ及びセンサ部として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態に係る生体センサの構成を示す図である。
【図2】センサ部の構成の一例を示す図である。
【図3】センサ部の構成の他の例を示す図である。
【図4】受光部の受光面と、導光手段との位置関係を示す図である。
【図5】発光部と受光部とを半導体基板上にモノリシックに集積化した例を示す図である。
【図6】受光部が単一の受光素子によって形成されている場合の実験例を示す図である。
【図7】受光部がアレイ状の受光素子によって形成されている場合の実験例を示す図である。
【図8】血流計のSN比の測定データを示す図である。
【図9】導光手段としてのピンホールまたは光導波路の形状の最適範囲についての説明図である。
【図10】発光部として、端面発光の半導体レーザを用いる場合を示す図である。
【図11】生体組織に向けて光を出射する際に、マイクロミラーを用いた場合を示す図である。
【図12】他の実施形態によるセンサ部の構成の一例を示す図である。
【図13】従来の血流計のセンサチップを示す図である。
【符号の説明】
【0040】
11 センサチップ
12 増幅器
13 駆動/演算装置
14 出力部
15 A/D変換器
16 LDドライバ
17 デジタル信号プロセッサ(DSP)
18 電源供給部
19 インターフェース
21 発光部
22 受光部
23、23a、23b 半導体基板
24 凹部
24a 第1の凹部
24b 第2の凹部
25 第1の導光部
26 第2の導光部
27、27a、27b 遮光性のカバー基板
28 受光素子
29、29a、29b 透過性の基板
30 生体組織
31 受光面
32 ピンホール
33 光導波路
40 障壁
41 遮光膜
42 透過性の基板
50 端面受光フォトダイオード
51 遮光構造体
52 ピンホール
60 ミラー
61 端面発光型半導体レーザ
62 コリメートレンズ
70 マイクロミラー
71 半導体レーザフォトダイオードビームスプリッタ
72 貫通穴電極
73 キャビティ構造シリコン
74 レンズ付封止ガラス
75 貫通穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部から出射した光が外部の生体組織に向かって出射され、生体組織からの散乱光が受光部で受光されて生体組織内の液状物質に関する値を測定する生体センサにおけるセンサ部であって、
前記発光部と前記受光部とが半導体基板表面に形成された同一の凹部内に配置され、前記半導体基板の上面側に導光部を有する遮光性のカバー基板が配置され、前記受光部の受光面は前記導光部の一端と合致するように隙間無く連結され、前記発光部から出射した光が外部の生体組織に向けて出射され、前記生体組織からの散乱光が前記導光部を通して前記受光部によって受光される構造を有することを特徴とするセンサ部。
【請求項2】
前記発光部及び前記受光部を前記半導体基板上にモノリシックに集積化したことを特徴とする請求項1記載のセンサ部。
【請求項3】
発光部から出射した光が外部の生体組織に向かって出射され、生体組織からの透過光が受光部で受光されて生体組織内の液状物質に関する値を測定する生体センサにおけるセンサ部であって、
前記発光部が半導体基板表面に形成された第1の凹部内に配置され、前記受光部が半導体基板表面に形成された他の凹部である第2の凹部内に配置され、前記第2の凹部を覆うように、導光部を有する遮光性のカバー基板が配置され、前記受光部の受光面は前記導光部の一端と合致するように隙間無く連結され、前記発光部から出射した光が外部の生体組織に向けて出射され、前記生体組織を透過した光が前記導光部を通して前記受光部によって受光される構造を有することを特徴とするセンサ部。
【請求項4】
前記受光部がアレイ状の受光素子によって形成されるときは、前記受光素子の数と同数の導光部がカバー基板に設けられ、前記受光素子の受光面は前記導光部の各々の一端と合致するように隙間無く連結されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のセンサ部。
【請求項5】
前記導光部は、ピンホールまたは光導波路であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のセンサ部。
【請求項6】
前記導光部の開口に対する長さの比を2.5以上としたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のセンサ部。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のセンサ部と、発光部を駆動する回路と、前記センサ部から受信した信号を処理して生体内の液状物質に関する値を計算するデジタル信号プロセッサとを備えた集積回路とを有することを特徴とする生体センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−130208(P2006−130208A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−324937(P2004−324937)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】