説明

センサ配設構造

【課題】 サイドシルがフロアパネルよりも下側に設けられる車体構造に適用する場合であっても、検出性能を確保した上で良好にセンサを配設することができるセンサ配設構造の提供。
【解決手段】 フロアパネル23の車幅方向の外側部にセンサ21を配設し、フロアパネル23の外側部上に車体前後方向に延在する状態で取り付けられるステップガーニッシュ71でセンサ21を覆う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の側面衝突を検出するセンサのセンサ配設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の衝突を検出するための加速度センサ等のセンサを車体に配設する場合に、センサの検出性能を確保するためには、センサの取付部周辺の変形による影響を極力排除する必要がある。このため、このようなセンサは、通常、車体における剛性の高い部分に配設されることになる。例えば、車両の側面衝突を検出するセンサを配設する場合、車体の車幅方向の外側部で閉断面構造部を構成するサイドシルにセンサを配設する構造(例えば特許文献1参照)や、車体の車幅方向の外側部で閉断面構造部を構成するリアホイールアーチ部にセンサを配設する構造(例えば特許文献2参照)等がある。
【特許文献1】特開平10−29500号公報
【特許文献2】特開2001−80451号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、車両の側面衝突を検出するためのセンサを配置する場合に、上記のようにサイドシルやリアホイールアーチ部に設けることができれば良いが、サイドシルをフロアパネルよりも下側の車室外側に設けることでドア開口の下縁部とフロアとのフラット化を図った、いわゆる掃き出しフロアを採用した場合に、サイドシルにセンサを取り付けようとすると、センサが車外側に配設されることになり好ましくない。
【0004】
したがって、本発明は、サイドシルがフロアパネルよりも下側に設けられる車体構造に適用する場合であっても、検出性能を確保した上で良好にセンサを配設することができるセンサ配設構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、フロアパネル(例えば実施形態におけるフロアパネル23)の車幅方向の外側部にセンサ(例えば実施形態におけるセンサ21)を配設し、前記フロアパネルの前記外側部上に車体前後方向に延在する状態で取り付けられるステップガーニッシュ(例えば実施形態におけるステップガーニッシュ71)で前記センサを覆ってなることを特徴としている。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記ステップガーニッシュには車体前後方向に延在するリブ(例えば実施形態におけるリブ76)が形成されており、該リブの車幅方向内側に前記センサが配設されていることを特徴としている。
【0007】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、前記リブが複数形成されるとともに、各リブの位置に前記ステップガーニッシュの前記フロアパネルへの取付用のクリップ部(例えば実施形態におけるクリップ部80)が設けられており、前記複数のリブの間に前記センサが配設されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、フロアパネルの車幅方向の外側部にセンサを配設し、このセンサを覆うようにステップガーニッシュをフロアパネルの外側部上に取り付けるため、フロアパネルとステップガーニッシュとで囲まれた剛性が高くしかも車室内側となる部分にセンサを配設することができる。したがって、サイドシルがフロアパネルよりも下側に設けられる車体構造に適用する場合であっても、検出性能を確保した上で良好にセンサを配設することができる。しかも、センサをフロアパネルの上側に設けてもステップガーニッシュで覆うため乗員の歩行等による影響を排除できる。
【0009】
請求項2に係る発明によれば、ステップガーニッシュに形成された車体前後方向に延在するリブの車幅方向内側にセンサが配設されているため、センサの位置に対し前後にずれた位置に入力があっても、車体前後方向に延在するステップガーニッシュの位置に入力があれば、この入力でステップガーニッシュが動いてリブがセンサに当たり、センサに入力を行うことになって側面衝突を検出できることになる。したがって、センサの検出性能をさらに高めることができる。
【0010】
請求項3に係る発明によれば、リブの位置にステップガーニッシュのフロアパネルへの取付用のクリップ部が設けられているため、ステップガーニッシュがクリップ部においてフロアパネルに取り付けられると、複数のリブで両壁が構成される、ステップガーニッシュとフロアパネルとからなる閉断面構造部内にセンサが配設されることになる。したがって、センサの配設位置の剛性をさらに高くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の一実施形態のセンサ配設構造を図面を参照して以下に説明する。なお、以下の説明における前後は車体における前後である。
【0012】
図1は、本実施形態のセンサ配設構造が適用された車両の側面図であって、この車両10には車体前後方向に三列の一列目シート11、二列目シート12および三列目シート13が設けられている。
【0013】
車両10の車幅方向の両側部の下部には、車体骨格部を構成するサイドシル15が車体前後方向に沿って設けられている。そして、本実施形態のセンサ配設構造は、このサイドシル15の近傍であって、フロントドア16とリアドア17との間で上下方向に沿う車体骨格部を構成するピラー18と、リアドア17の後側で上下方向に沿う車体骨格部を構成するピラー19との間に配置されるセンサ21に適用されている。ここで、このセンサ21は、具体的には加速度センサであり、二列目シート12の近傍で側面衝突が生じたときにこれを検出して二列目シート12の乗員に対する図示略のサイドエアバッグを展開させるためのものである。
【0014】
図2は、図1におけるA−A線に沿う断面図であって、略水平に配置される鋼板からなるフロアパネル23の車幅方向の外側部の下面に、鋼板からなるサイドシルインナ24が接合されており、このサイドシルインナ24の下部にはサイドシルインナ24とでサイドシル15を構成するすべて鋼板からなるサイドシルスティフナ25、サイドシルアウタ26およびサイドシルアッパ27が結合されている。
【0015】
サイドシルインナ24は、フロアパネル23に接合される上部のフランジ部30と、フランジ部30の車幅方向内側の端縁部から屈曲して下方に突出する立板部31と、立板部31の下端縁部から屈曲して車幅方向外側に突出する下板部32と、下板部32の車幅方向外側の端縁部から屈曲して下方に突出する下部のフランジ部33とを有している。
【0016】
サイドシルスティフナ25は、サイドシルインナ24の下部のフランジ部33に車幅方向外側から接合される下部のフランジ部36と、このフランジ部36の上端縁部から上側ほど車幅方向内側に位置するように傾斜しつつ突出する傾斜板部37と、この傾斜板部37の上端縁部から屈曲して車幅方向内方に突出する上部のフランジ部38とを有している。
【0017】
サイドシルアウタ26は、サイドシルスティフナ25の下部のフランジ部36に車幅方向外側から接合される下部のフランジ部41と、このフランジ部41の上端縁部から若干車幅方向外側に屈曲した後に上方に突出する下板部42と、下板部42の上端縁部から屈曲し上側ほど車幅方向外側に位置するように傾斜しつつ突出する傾斜板部43と、この傾斜板部43の上端縁部から屈曲し上方に突出する上板部44と、この上板部44の上端縁部から若干車幅方向外側に屈曲した後に上方に突出する上部のフランジ部45とを有している。
【0018】
サイドシルアッパ27は、サイドシルインナ24の立板部31に車幅方向外側から接合されるフランジ部48と、このフランジ部48の下端縁部から車幅方向外側に突出する中間板部49と、この中間板部49の車幅方向外側の端縁部から屈曲して上方に突出するとともにサイドシルアウタ26の上部のフランジ部45に車幅方向内側から接合されるフランジ部50とを有している。なお、サイドシルアッパ27の中間板部49の下面には、サイドシルスティフナ25の上部のフランジ部38が接合されている。
【0019】
上記したサイドシルインナ24の下部とサイドシルスティフナ25とサイドシルアウタ26とサイドシルアッパ27とで閉断面構造の車体骨格部であるサイドシル15が構成されることになり、このサイドシル15はフロアパネル23よりも下側に設けられている。これにより、フロアパネル23の上側にサイドシル15が配置されることのない、いわゆる掃き出しフロアの構造となっている。
【0020】
ここで、フロアパネル23のサイドシルインナ24よりも車幅方向外側にはスライドドアであるリアドア17の図示略のアームに連結されるスライドレール53が取り付けられており、サイドシルアッパ27とフロアパネル23との間の隙間は、リアドア17のアームをスライドレール53に連結させるために車幅方向側方に開口している。
【0021】
なお、サイドシルアウタ26の車幅方向外側には合成樹脂製のサイドシルガーニッシュ54が取り付けられる。
【0022】
フロアパネル23は、車幅方向の外側部が、水平配置されるフロア板部56の車幅方向外側の端縁部から屈曲し車幅方向外側ほど下側に位置するように傾斜しつつ車幅方向外側に突出する傾斜板部57と、この傾斜板部57の車幅方向外側の端縁部から屈曲し水平配置されて車幅方向外側に突出する水平板部58と、この水平板部58の車幅方向外側の端縁部から屈曲し車幅方向外側ほど上側に位置するように傾斜しつつ車幅方向外側に突出する傾斜板部59と、この傾斜板部59の車幅方向外側の端縁部から屈曲し水平配置されて車幅方向外側に突出する水平板部60と、水平板部60の車幅方向外側の端縁部から屈曲し上方に突出する側板部61とを有している。ここで、車幅方向外側の水平板部60の下面に上記したスライドレール53が取り付けられており、車幅方向内側の水平板部58の傾斜板部57側の下面に上記したサイドシルインナ24のフランジ部30が接合されている。
【0023】
車幅方向内側の水平板部58には、サイドシルインナ24のフランジ部30よりも外側に取付穴63が形成されており、水平板部58の下面にはこの取付穴63に位置を合わせてウェルドナット64が固定されている。そして、センサ21が、水平板部58の取付穴63に挿入される取付ボルト65で水平板部58に取り付けられる。つまり、センサ21には中間部に上下方向に沿う取付穴67が形成されており、センサ21を水平板部58に載置させた状態で上側から取付穴67に挿入された取付ボルト65が、さらに水平板部58の取付穴63に挿入され、取付穴63の下のウェルドナット64に螺合されることでセンサ21が水平板部58に取り付けられる。ここで、水平板部58とその両側の傾斜板部57,59とで、下方に凹み車体前後方向に延在する凹部68が形成されており、この凹部58の底となる水平板部58にセンサ21が取り付けられる。
【0024】
このようにして、フロアパネル23の車幅方向の外側部にセンサ21が配設される。そして、フロアパネル23の車幅方向の外側部の上側には、フロア板部56と高さをほぼ合わせるように合成樹脂製のステップガーニッシュ71が車体前後方向に延在する状態で取り付けられる。このステップガーニッシュ71でセンサ21が上側から覆われることになる。
【0025】
ステップガーニッシュ71は、リアドア17で開閉されるリアドア開口72を介して乗降する乗員が主として乗降時に足を載せる部分であり、足を載せる上板部73と上板部73の周縁部から下方に突出する囲板部74とを有している。
【0026】
また、ステップガーニッシュ71には、上板部73から下方に突出する複数具体的には二カ所のリブ76が車幅方向に間隔をあけて囲板部74の内側に形成されている。リブ76は、それぞれ、図3に示すように、車体前後方向に延在する板状部77と、板状部77の適宜の位置を補強するように形成される、板状部77の板厚より大径の多数の柱状部78とを有している。
【0027】
ステップガーニッシュ71のリブ76の所定位置には、フロアパネル23への取付用の複数のクリップ部80が形成されている。車幅方向外側に配置されるリブ76に形成された複数(具体的には二カ所)のクリップ部80は、フロアパネル23の例えば水平板部60に形成された図示略の取付穴に係合されることになり、車幅方向内側に配置されるリブ76に形成された複数(具体的には三カ所)のクリップ部80は、フロアパネル23の例えば傾斜板部57に形成された図示略の取付穴に係合されることになる。このように複数のクリップ部80がフロアパネル23に係合されることでステップガーニッシュ71がフロアパネル23に取り付けられる。
【0028】
このようにステップガーニッシュ71がフロアパネル23に取り付けられた状態で、両リブ76は、それぞれほぼ全長にわたってフロアパネル23に当接することになり、ステップガーニッシュ71の両側のリブ76の間となる位置に上記したセンサ21が配設される。言い換えれば、車幅方向外側のリブ76に対してその車幅方向内側にセンサ21が配設される。なお、リブ76はセンサ21よりも車体前後方向に長く、センサ21は車体前後方向におけるリブ76の長さの範囲内に配設される。
【0029】
なお、説明の便宜上図示は略すが、ステップガーニッシュ71には、上記したリブ76および柱状部78の他にも、上板部73から下方に突出する補強用のリブおよび柱状部が多数形成されている。
【0030】
以上に述べた本実施形態によれば、フロアパネル23の車幅方向の外側部にセンサ21を配設し、このセンサ21を覆うように剛性の高いステップガーニッシュ71をフロアパネル23の外側部上に取り付けるため、フロアパネル23とステップガーニッシュ71とで囲まれた剛性が高くしかも車室内側となる部分にセンサ21を配設することができる。したがって、サイドシル15がフロアパネル23よりも下側に設けられる車体構造に適用する場合であっても、検出性能を確保した上で良好にセンサ21を配設することができる。しかも、センサ21をフロアパネル23の上側に設けてもステップガーニッシュ71で覆うため乗員の歩行等による影響を排除できる。
【0031】
また、ステップガーニッシュ71に形成された車体前後方向に延在するリブ76の車幅方向内側にセンサ21が配設されているため、側面衝突時に図3に示すセンサ21の位置に対し車体前後方向にずれた位置に入力があっても、車体前後方向に延在するステップガーニッシュ71の位置に入力があれば、この入力でステップガーニッシュ71が外れる等して動いてそのリブ76がセンサ21に当たり、センサ21に入力を行うことになって側面衝突を検出できることになる。したがって、センサ21の検出性能をさらに高めることができる。
【0032】
加えて、リブ76の位置にステップガーニッシュ71のフロアパネル23への取付用のクリップ部80が設けられているため、ステップガーニッシュ71がクリップ部80においてフロアパネル23に取り付けられると、複数のリブ76で両壁が構成される、ステップガーニッシュ71とフロアパネル23とからなる閉断面構造部84内にセンサ21が配設されることになる。したがって、センサ21の配設位置の剛性をさらに高くできる。
【0033】
また、フロアパネル23に凹部68を形成しこの凹部68にセンサ21を配設するため、フロアパネル23上にセンサ21を設けても車室内へ突出する高さを抑えることができる。しかもフロアパネル23の凹部68によりセンサ21の配設位置の剛性をさらに高めることができるため、センサ21の検出性能をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態のセンサ配設構造が適用された車両を概略的に示す側面図である。
【図2】本発明の一実施形態のセンサ配設構造を示す図1におけるA−A断面図である。
【図3】本発明の一実施形態のセンサ配設構造におけるステップガーニッシュを示す下面図である。
【符号の説明】
【0035】
21 センサ
23 フロアパネル
71 ステップガーニッシュ
76 リブ
80 クリップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアパネルの車幅方向の外側部にセンサを配設し、前記フロアパネルの前記外側部上に車体前後方向に延在する状態で取り付けられるステップガーニッシュで前記センサを覆ってなることを特徴とするセンサ配設構造。
【請求項2】
前記ステップガーニッシュには車体前後方向に延在するリブが形成されており、該リブの車幅方向内側に前記センサが配設されていることを特徴とする請求項1記載のセンサ配設構造。
【請求項3】
前記リブが複数形成されるとともに、各リブの位置に前記ステップガーニッシュの前記フロアパネルへの取付用のクリップ部が設けられており、前記複数のリブの間に前記センサが配設されていることを特徴とする請求項2記載のセンサ配設構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−44451(P2006−44451A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−228213(P2004−228213)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】