説明

センターピラー構造

【課題】十分な強度を確保しつつ、部品点数を少なく抑えることができるセンターピラー構造を提供する。
【解決手段】板材を立体形状に成形したアウターパネル21及びインナーパネル31を備え、アウターパネル21とインナーパネル31とが互いに接合面で接合されることで、上下方向に延びる閉断面形状部41を形成したセンターピラー構造であり、インナーパネル31には、車両前後方向の両縁部側に、接合面23より車室側に突出して上下方向に延びる筋状凸部35と、前後の筋状凸部35間に、閉断面形状部41の水平断面における図心Cよりもアウターパネル21側に凹んで上下方向に延びる筋状凹部37と、を成形している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウターパネルとインナーパネルとが接合されて上下方向に延びる閉断面形状部が形成されたセンターピラー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のセンターピラー構造には、板材を立体形状に成形されたアウターパネルとインナーパネルとが接合されることで、上下方向に延びる閉断面形状部が形成されている。多くの場合、センターピラーの下端側にはシートベルトのリトラクタが装着されている。
【0003】
このようなセンターピラー構造では、車幅方向外側から車両内側への応力が負荷された際の十分な耐力を確保するため、閉断面形状部のアウターパネル側に種々のリインフォースメントが上下方向に配設されている(例えば下記特許文献1〜3参照)。
【0004】
図5乃至図7に従来のセンターピラー構造の一例を示す。
このセンターピラー構造では、図5に示すように、板材を立体形状に成形したアウターパネル51及びインナーパネル52が、上下方向に延びる複数のリインフォースメント53を間に介在させた状態で接合されている。また、上下端部ではルーフサイドレールの構成部材54及びロッカの構成部材55と接合されている。
【0005】
ここでは図6に示すように、アウターパネル51とインナーパネル52とが接合されることで閉断面形状部56が形成され、閉断面形状部56内にリインフォースメント53が配設されている。リインフォースメント53は、アウターパネル51とインナーパネル52との接合面間に挟持された状態で固定され、通常、アウターパネル51側に配置されることで、車幅方向外側から車両内側へ負荷される応力に対して、十分な強度が確保されている。
【0006】
このセンターピラー構造では、図7に示すように、インナーパネル52の下端側にリトラクタ57を装着するための開口52aが設けられており、この開口52a内にリトラクタ57の一部又は全部が収容された状態で固定されている。インナーパネル52に開口52aが設けられるため、この部位のアウターパネル51側にはリインフォースメント53を配置することで強度の低下が防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−95087号公報
【特許文献2】特開2009−101794号公報
【特許文献3】特開2008−230453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のセンターピラー構造では、種々の位置に種々の形状のリインフォースメント53を配設することで、車幅方向外側から車両内側へ負荷される応力に対する大きな反力を得ていた。特にリトラクタ57が装着される部位では、インナーパネル52に開口52aが設けられるため、リインフォースメント53により補強することが必要であった。
【0009】
そのため、従来のセンターピラー構造では、多数の部品を相互に接合しなければならず、部品点数が多い上、一体に接合することも容易でなく、製造に手間を要していた。しかも、部品点数が多いため重量が嵩み易く、軽量化し難かった。
【0010】
そこで、本発明は、十分な強度を確保しつつ、部品点数を少なく抑えることができるセンターピラー構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成する本発明のセンターピラー構造は、板材を立体形状に成形したアウターパネル及びインナーパネルを備え、アウターパネルとインナーパネルとが互いに接合面で接合されることで、上下方向に延びる閉断面形状部が形成されたセンターピラー構造であり、インナーパネルには、車両前後方向の両縁部側に設けられ接合面より車室側に突出して上下方向に延びる筋状凸部と、前後の筋状凸部間に設けられ閉断面形状部の水平断面における図心よりもアウターパネル側に凹んで上下方向に延びる筋状凹形状部と、が成形されている。
【0012】
このセンターピラー構造は、下端側の筋状凹部の車室側にシートベルトのリトラクタが配設されているものに適用することができる。
このセンターピラー構造では、筋状凸部及び筋状凹部がルーフサイドレールとロッカとの間で略連続して設けられているのがよい。また筋状凸部間にパッチが架設されているのが好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、インナーパネルの車両前後方向両縁部側に、接合面より車室側に突出した筋状凸部が設けられ、さらにこの筋状凸部間に図心よりもアウターパネル側まで凹む筋状凹部が設けられている。
そのため車幅方向外側から車両内側への応力が負荷された際、図心よりアウターパネル側に作用する圧縮応力は、閉断面形状部におけるアウターパネルとこのアウターパネル側に配置されたインナーパネルの筋状凹部とで受けることができる。また図心より車室側に作用する引張り応力は、閉断面形状部におけるインナーパネルの前後の筋状凸部により受けることができる。さらに接合面より車室側から図心よりもアウターパネル側までの広い範囲に設けられたインナーパネルの筋状凸部及び筋状凹部の側壁により、断面係数を大きく確保することができる。
【0014】
従って、アウターパネルとインナーパネルとの間にリインフォースメントを配置しなくても、車幅方向外側から車両内側へ負荷される応力に対するセンターピラーの十分な強度を実現することができる。その結果、十分な強度を確保しつつ、部品点数を少なく抑えることが可能なセンターピラー構造を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態におけるセンターピラー構造を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態におけるセンターピラー構造を示す図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の実施形態におけるセンターピラー構造を示す図1のB−B断面図である。
【図4】本発明の実施形態におけるセンターピラー構造の下部を示す斜視図である。
【図5】従来のセンターピラー構造の一例を示す分解斜視図である。
【図6】従来のセンターピラー構造の一例を示す図5のC−C断面図である。
【図7】従来のセンターピラー構造の一例を示す図5のD−D断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図を用いて説明する。
図1に示すように、センターピラー11は、ルーフサイドレール13とロッカ15との間に上下に配設され、車両前後方向にドア開口17が隣接して設けられている。センターピラー11の下端側にはシートベルトのリトラクタ19が固定されている。なお、車室側にはガーニッシュやトリム材が装着されているが、詳細な図示は省略している。
【0017】
この実施形態のセンターピラー構造は、立体形状に成形されたアウターパネル21とインナーパネル31とが接合されることで構成されている。アウターパネル21は、板材をプレス等により立体形状に成形されたもので、ルーフサイドレール13のアウターパネル13a及びロッカ15のアウターパネル15aと一体に連続して形成されている。
【0018】
アウターパネル21は、図2及び図3に示すように、車両前後方向の両側縁部に形成された接合面23と、両接合面23間に車幅方向外側に突出して形成された凸形状部25と、を備えている。接合面23及び凸形状部25は、例えば絞り加工や曲げ加工等により板材を屈曲又は湾曲させることで成形されており、センターピラー11の上下方向の略全長にわたり一体に設けられている。
【0019】
このアウターパネル21は従来から高強度の板材を用いて作製されている。アウターパネル21を構成する板材としては、例えばインナーパネル31を構成する板材と異なる 高張力鋼等の板材を挙げることができ、ここでは引張強度が440MPaで板厚tが1.2mmの鋼材等を使用している。
【0020】
インナーパネル31は、超高張力鋼等の板材をプレス等により立体形状に成形されたもので、図1に示すように、ルーフサイドレール13のインナーパネル13b及びロッカ15のインナーパネル15bと一体に連続して形成されている。ここでは、引張強度が980MPaで板厚tが2.0mmの鋼材等を使用している。
【0021】
インナーパネル31は、図2及び図3に示すように、車両前後方向の両側縁部に形成された接合面33と、前後の接合面33間における車両前後方向の両縁部側に形成された筋状凸部35と、前後の筋状凸部35間に形成された筋状凹部37と、を備えている。接合面33、両筋状凸部35及び筋状凹部37は、例えば絞り加工や曲げ加工等により板材を屈曲又は湾曲させることで成形されており、センターピラー11の上下方向の略全長にわたり一体に形成されている。この実施形態では、筋状凸部35及び筋状凹部37はルーフサイドレール13とロッカ15との間の略全長にわたって切れ目なく配設されている。
【0022】
筋状凸部35は接合面33より車室側に突出して上下方向に延びている。接合面33からの筋状凸部の突出量がセンターピラー11の上方に比べて下端側で小さくなっている。この筋状凸部35は角部のない曲面形状を有する頂部35aが最も車室側に配置され、頂部35aの前後方向両側の側壁部35bが車幅方向に沿って配置されている。ここでは、前後の筋状凸部35間の間隔がセンターピラー11の上方に比べて下端側で広くなっている。
【0023】
筋状凹部37は、両筋状凸部35の側壁部35bから連続して設けられており、車室側から凹んで上下方向に延びている。この筋状凹部37では、車両前後方向に沿う平坦な底部37aがアウターパネル21の近傍位置に配置され、底部37aの前後方向両側から車幅方向に沿って側壁部37bが配置されている。両側壁部37bはそれぞれ筋状凸部35の側壁部35bと滑らかに、ここでは略同一面を形成するように連続している。
これにより筋状凹部37が車外側に大きく凹んだ形状で上下方向に延びた形状となっている。筋状凹部37の底部37aにおける前後方向の幅はセンターピラー11の上方に比べて下端側で広くなっている。
【0024】
本実施形態のセンターピラー11では、このようなアウターパネル21の接合面23とインナーパネル31の接合面33とが対向して溶接等により接合されることで、上下方向に延びた閉断面形状部41がルーフサイドレール13とロッカ15との間の全長にわたって形成されている。
【0025】
この閉断面形状部41では、上下方向の各位置における水平断面において、筋状凹部37が図心Cより凹んで設けられており、筋状凹部37の底部37aが図心Cよりもアウターパネル21側に配置されている。図心は、上下方向の各断面におけるアウターパネル21及びインナーパネル31の形状の中心となる位置である。詳細には、アウターパネル21の接合面23、凸形状部25、インナーパネル31の接合面33、筋状凸部35及び筋状凹部37により形成される閉断面形状部41の中心位置である。
【0026】
閉断面形状部41の車室側には、図1に示すように、前後の筋状凸部35間に架設されたパッチ43が単数又は複数箇所に配置され、両筋状凸部35に溶接等により接合されている。このパッチ43は例えば筋状凸部35間の長さを有する板材で形成されている。
【0027】
閉断面形状部41のロッカ15に隣接する下端側には、図3及び図4に示すように、シートベルトのリトラクタ19が装着されている。閉断面形状部41の下端側における筋状凹部37の車室側にリトラクタ19の配置空間が設けられており、リトラクタ19は図3に示すように多くの部分が筋状凹部37内に収容され、パッチ43やロッカ15等に設けられた固定部位に固定されている。ここでは、従来のようにリトラクタを収容するためにインナーパネル31を貫通して大きな開口を設けていない。
【0028】
以上のような構成を有するセンターピラー構造によれば、インナーパネル31の車両前後方向両縁部側に、接合面23,33より車室側に突出した筋状凸部35が設けられ、さらにこの筋状凸部35から図心Cよりもアウターパネル21側まで凹む筋状凹部37が設けられている。
【0029】
そのため車幅方向外側から車両内側への応力が負荷された際、図心Cよりアウターパネル21側に作用する圧縮応力は、閉断面形状部41におけるアウターパネル21とこのアウターパネル21側に配置されたインナーパネル31の筋状凹部37の底部37aとで受けることができる。また図心Cより車室側に作用する引張り応力は、閉断面形状部41におけるインナーパネル31の前後の筋状凸部35により受けることができる。さらに接合面23,33よりも車室側の位置と図心Cよりもアウターパネル21側の位置との間の広い範囲で設けられたインナーパネル31の側壁部35b,37bにより、断面係数を大きく確保することができる。
【0030】
従って、アウターパネル21とインナーパネル31との間にリインフォースメントを配置しなくても、車幅方向外側から車両内側へ負荷される応力に対するセンターピラー11の十分な強度を実現することができる。
その結果、十分な強度を確保しつつ、部品点数を少なく抑えることが可能なセンターピラー構造を提供することが可能である。そして部品点数を少なくすることにより、製造の手間を簡略化することができて低コスト化を図れ、しかも質量を低減でき車体の軽量化を図れる。
【0031】
このセンターピラー構造では、下端側の筋状凹部37の車室側にシートベルトのリトラクタ19が固定されているので、インナーパネル31の下端側にリトラクタ19を配置するための開口を設ける必要がない。そのためセンターピラーの下端側の強度を大幅に向上することができ、センターピラーの下端側の構成を簡素化して部品点数を確実に少なくすることができる。
【0032】
しかも筋状凹部37が閉断面形状部41の水平断面における図心Cよりもアウターパネル21側に凹んで設けられているため、筋状凹部37が十分に深く形成されている。そのためリトラクタ19が車室側に過剰に突出した状態で配置されることはなく、車室側の内装の意匠性を悪化することを防止できる。
【0033】
このセンターピラー構造では、筋状凸部35及び筋状凹部37がルーフサイドレール13とロッカ15との間で略連続して設けられているので、センターピラーの略全長においてインナーパネル31の断面係数が高い部分を連続して設けることができる。そのためセンターピラーの車幅方向外側から車両内側へ負荷される応力に対して十分な強度を確保でき、また応力が集中し易い部位を生じ難くできる。
【0034】
このセンターピラー構造では、筋状凸部35間にパッチ43が架設されているので、車幅方向外側から車両内側への応力が負荷された際、筋状凸部35や筋状凹部37に倒れ方向に変形して断面係数が低下することを防止でき、十分な強度をより確実に維持することができる。
【0035】
このセンターピラー構造では、アウターパネル21が従来に比べて高強度の板材を使用しているので、車幅方向外側から車室側に向けて応力が負荷された際、圧縮側の強度を向上させることができ、質量の増加を抑えつつ効率よくセンターピラー構造の強度を向上することが可能である。
【0036】
上記の実施形態は、本発明の範囲内において適宜変更可能である。
例えば上記では、アウターパネル21及びインナーパネル31をそれぞれルーフサイドレール13の構成部材やロッカ15の構成部材と一体に形成した例について説明したが、特に限定されるものではなく、これらとは別に形成されたアウターパネル21及びインナーパネル31をルーフサイドレール13やロッカ15に接続するように構成してもよい。
【0037】
上記ではセンターピラー11の略全長に筋状凸部35及び筋状凹部37を設けたが、例えばセンターピラー11のロッカ15との連結位置となる下端からセンターピラー11の上下方向中間位置までの間に筋状凸部35及び筋状凹部37を連続して設けてもよい。また他の部位に設けることも可能である。
【0038】
上記実施形態では、センターピラー構造にリインフォースメントを全く配置しない例について説明したが、リインフォースメントを配設することも可能である。その場合であっても、アウターパネル21及びインナーパネル31からなる閉断面形状部41の強度が高いため、使用するリインフォースメントを少なく抑えることができ、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0039】
C 図心
11 センターピラー
13 ルーフサイドレール
13a アウターパネル
13b インナーパネル
15 ロッカ
15a アウターパネル
15b インナーパネル
17 ドア開口
19 リトラクタ
21 アウターパネル
23 接合面
25 凸形状部
31 インナーパネル
33 接合面
35 筋状凸部
35a 頂部
35b 側壁部
37 筋状凹部
37a 底部
37b 側壁部
41 閉断面形状部
43 パッチ
51 アウターパネル
52 インナーパネル
52a 開口
53 リインフォースメント
54 ルーフサイドレールの構成部材
55 ロッカの構成部材
56 閉断面形状部
57 リトラクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板材を立体形状に成形したアウターパネル及びインナーパネルを備え、上記アウターパネルとインナーパネルとが互いに接合面で接合されることで、上下方向に延びる閉断面形状部が形成されたセンターピラー構造であって、
上記インナーパネルには、車両前後方向の両縁部側に設けられ上記接合面より車室側に突出して上下方向に延びる筋状凸部と、前後の該筋状凸部間に設けられ上記閉断面形状部の水平断面における図心よりも上記アウターパネル側に凹んで上下方向に延びる筋状凹形状部と、が成形されている、センターピラー構造。
【請求項2】
下端側の前記筋状凹部の車室側にシートベルトのリトラクタが配設されている、請求項1に記載のセンターピラー構造。
【請求項3】
前記筋状凸部及び筋状凹部がルーフサイドレールとロッカとの間で略連続して設けられている、請求項1又は2に記載のセンターピラー構造。
【請求項4】
前記筋状凸部間にパッチが架設されている、請求項1乃至3の何れかに記載のセンターピラー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−91458(P2013−91458A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235526(P2011−235526)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000157083)トヨタ自動車東日本株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】