説明

センターホールジャッキ、及びセンターホールジャッキにおけるケーブルの張力調整方法

【課題】複数本のケーブルのうちの任意のケーブルの張力を測定可能とし、複数本のケーブルの張力を平均化する。
【解決手段】複数のグリッパー45により複数本の吊りケーブル12を保持した状態で、グリッパープレート54により複数のグリッパー55を、複数のグリッパー係合部52Bに対して係合不能な位置に変位させる工程と、任意のグリッパー係合部62Bに張力調整用グリッパー70を配置して、任意の1本の吊りケーブル12を張力調整用グリッパー70に挿通する工程と、ロードセル64により所定値が測定されるまで油圧ジャッキ30を加圧し、ロードセル64により所定値が測定されると油圧ジャッキ30を減圧する工程と、を複数本の吊りケーブル12に対して実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センターホールジャッキ、及びセンターホールジャッキにおけるケーブルの張力調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物等の固定構造物に一端を定着された緊張材が挿通されたセンターホールジャッキにより当該緊張材に緊張力を与え、固定構造物にプレストレスを与えるプレストレス工法において、センターホールジャッキの油圧に基づいて緊張材の緊張力を測定する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、固定構造物や揚重物に一端を定着された複数本のケーブルが挿通されるセンターホールジャッキにより、固定構造物にプレストレスを与えたり揚重物を吊り上げたりする技術が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
非特許文献1に記載のセンターホールジャッキでは、油圧ジャッキの反力を受ける固定構造物やジャッキ架台等の反力受部と、ラムとにそれぞれ複数のグリッパーの楔作用により複数本のケーブルを保持する定着機構が支持されている。油圧ジャッキが加圧されると、複数本のケーブルがラムに支持された定着機構に定着され、複数本のケーブルが緊張されたり、揚重物が吊り上げられたりする。一方、油圧ジャッキが減圧されると、複数本のケーブルが反力受部に支持された定着機構に定着され、ジャッキが盛り替えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002―121894号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】VSL移動工法設計・施工指針、VSL協会、1999.8.1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、非特許文献1に記載のセンターホールジャッキでは、各ケーブルの揚重物からセンターホールジャッキまでの長さ(以下、各ケーブルの長さという)に僅かな差が生じた場合、各ケーブルの張力に僅かな差が生じることがある。
【0008】
そして、センターホールジャッキの盛り替えを繰り返すと、各ケーブルの長さの差が累積拡大し、各ケーブルの張力の差が累積拡大することがある。特に、高層の塔状構造物の構築に適用されるリフトアップ工法で非特許文献1に記載のセンターホールジャッキを用いる場合には、ケーブルの長さが長くなり、センターホールジャッキを盛り替える回数が多くなることにより、各ケーブルの長さの差が大きくなり、各ケーブルの張力の差が大きくなることがある。ここで、特定のケーブルのみ荷重が大きくなることや、各ケーブルの張力差により油圧ジャッキに偏荷重がかかること等は好ましくないため、各ケーブルの張力を1本ずつ測定し、各ケーブルの張力を平均化することが望ましい。
【0009】
しかし、特許文献1に記載の緊張材の張力測定装置は、緊張材全体の張力を測定するものであり、複数本の緊張材が緊張されている場合に任意の緊張材の張力を測定するものではない。また、非特許文献1に記載のセンターホールジャッキは、油圧ジャッキの油圧を測定することにより複数本のケーブルの全体の張力を測定することはできるが、任意のケーブルの張力を測定するための手段は備えていない。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み、複数本のケーブルのうちの任意のケーブルの張力を測定することができるセンターホールジャッキ、及び、各ケーブルの張力を平均化できるケーブルの張力調整方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係るセンターホールジャッキは、一端側を揚重物又は固定構造物に定着された複数本のケーブルが挿通される第1昇降手段と、前記第1昇降手段に支持され、各ケーブルが挿通される複数の第1係合孔に対して係脱可能な複数の第1固定手段により、複数本のケーブルを保持又は開放する第1定着手段と、前記第1定着手段よりもケーブルの一端側に配され、各ケーブルが挿通される複数の第2係合孔に対して係脱可能な複数の第2固定手段により複数本のケーブルを保持又は開放する第2定着手段と、前記第1固定手段を前記第1係合孔に対して係合不能な位置と係合可能な位置との間で昇降させる第2昇降手段により前記第1定着手段を動作不能な状態又は動作可能な状態に切換える切換え手段と、前記第1昇降手段に支持され、各ケーブルが挿通される複数の前記第3係合孔のうちの任意の第3係合孔に対して係脱可能な第3固定手段により任意のケーブルを保持又は開放する第3定着手段と、を備える。
【0012】
上記センターホールジャッキにおいて、前記第1〜第3固定手段は、各ケーブルが挿通される楔型のグリッパーであってもよい。また、複数の前記第1固定手段は、前記第1昇降手段が昇動すると、複数の前記第1係合孔と係合して楔作用により複数本のケーブルを保持し、前記第1昇降手段が降動すると、複数の前記第1係合孔との係合を解除して複数本のケーブルを開放してもよい。また、複数の前記第2固定手段は、前記第1昇降手段が昇動すると、複数の前記第2係合孔との係合を解除して複数本のケーブルを開放し、前記第1昇降手段が降動すると、複数の前記第2係合孔と係合して複数本のケーブルを保持してもよい。さらに、前記第3固定手段は、前記切換え手段により前記第1固定手段が前記第1係合孔に対して係合不能な位置に移動された場合において、前記第1昇降手段が昇動すると、前記第3係合孔と係合して楔作用により前記任意のケーブルを保持し、前記第1昇降手段が降動すると、前記第3係合孔との係合を解除して前記任意のケーブルを開放してもよい。
【0013】
また、上記センターホールジャッキは、前記第3固定手段により保持された前記任意のケーブルの張力を測定する測定手段を備えてもよい。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明に係るケーブルの張力調整方法は、一端側を揚重物又は固定構造物に定着された複数本のケーブルが挿通される第1昇降手段と、前記第1昇降手段に支持され、各ケーブルが挿通される複数の第1係合孔に対して係脱可能な複数の第1固定手段により、複数本のケーブルを保持又は開放する第1定着手段と、前記第1定着手段よりもケーブルの一端側に配され、各ケーブルが挿通される複数の第2係合孔に対して係脱可能な複数の第2固定手段により複数本のケーブルを保持又は開放する第2定着手段と、前記第1固定手段を前記第1係合孔に対して係合不能な位置と係合可能な位置との間で昇降させる第2昇降手段により前記第1定着手段を動作不能な状態又は動作可能な状態に切換える切換え手段と、を備えるセンターホールジャッキにおけるケーブルの張力調整方法であって、前記第2昇降手段を昇動させることにより前記第1固定手段を前記第1係合孔に対して係合不能な位置に移動させる工程と、各ケーブルが挿通される複数の第3係合孔のうちの任意の第3係合孔に対して係脱可能であり、前記第1昇降手段の昇降動作により前記任意の第3係合孔に対して係脱して任意のケーブルを保持又は開放する第3固定手段を、前記任意の第3係合孔に設置する工程と、前記第1昇降手段を昇動させることにより、前記第3固定手段を前記任意の第3係合孔に係合させて前記第3固定手段に前記任意のケーブルを保持させると共に、前記任意のケーブルの張力を調整する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0015】
上記センターホールジャッキによれば、複数本のケーブルのうちの任意のケーブルの張力を測定することができる。また、上記ケーブルの張力調整方法によれば、各ケーブルの張力を平均化できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係るセンターホールジャッキを用いて塔状構造物を構築している状態を示す縦断面図である。
【図2】本実施形態に係るセンターホールジャッキを用いて塔状構造物を構築している状態を示す縦断面図である。
【図3】複数のジャッキ架台を示す平面図である。
【図4】ジャッキ架台及びセンターホールジャッキの概略を示す側面図である。
【図5】センターホールジャッキを示す正面図である。
【図6】図5の6−6断面図であり、下部定着機構を示す平面断面図である。
【図7】図6の7−7断面図であり、下部定着機構を示す正面断面図である。
【図8】図5の8−8断面図であり、上部定着機構及び調整ヘッドを示す平面断面図である。
【図9】図8の9−9断面図であり、上部定着機構及び調整ヘッドを示す正面断面図である。
【図10】図8の10−10断面図であり、上部定着機構及び調整ヘッドを示す正面断面図である。
【図11】センターホールジャッキの動作原理を示す側断面図である。
【図12】センターホールジャッキの動作原理を示す側断面図である。
【図13】センターホールジャッキの動作原理を示す側断面図である。
【図14】センターホールジャッキの動作原理を示す側断面図である。
【図15】吊りケーブルの張力を調整している状態を示す側断面図である。
【図16】吊りケーブルの張力を調整している状態を示す側断面図である。
【図17】吊りケーブルの張力を調整している状態を示す側断面図である。
【図18】吊りケーブルの張力を調整している状態を示す側断面図である。
【図19】他の実施形態に係るセンターホールジャッキを示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1及び図2は、本実施形態に係るセンターホールジャッキ10を用いて塔状構造物1を構築している状態を示す縦断面図である。これらの図を参照して塔状構造物1の構築方法について説明する。
【0018】
まず、上下方向に延びる筒状の鉄塔本体2を構築する。次に、複数のジャッキ架台4を鉄塔本体2の塔内の上部に設置し、各ジャッキ架台4に1台のセンターホールジャッキ10を設置する。そして、各センターホールジャッキ10にPC鋼より線等の吊りケーブル(ストランド)12を仕込み、吊りケーブル12を各センターホールジャッキ10から吊り下げる。なお、ジャッキ架台4については後述する。
【0019】
次に、鉄塔本体2の塔内下部において、鉄塔本体2の上端に接続するアンテナ鉄塔3の上部を構築し、吊りケーブル12の下端部をアンテナ鉄塔3の上端部に定着する。そして、センターホールジャッキ10の反力をジャッキ架台4で支持し、センターホールジャッキ10の昇降を繰り返して吊りケーブル12を引き上げていくことにより、アンテナ鉄塔3の上部を吊り上げていき、吊り上げられたアンテナ鉄塔3の下側を順次構築していく。
【0020】
次に、アンテナ鉄塔3の下端部まで構築が完了した後、吊りケーブル12の定着位置を、アンテナ鉄塔3の上端部から下端部へ盛り替える。そして、センターホールジャッキ10の昇降を繰り返して吊りケーブル12を引き上げていくことにより、アンテナ鉄塔3を鉄塔本体2の上部まで吊り上げ、鉄塔本体2の上部に接続する。
【0021】
図3は、複数のジャッキ架台4を示す平面図である。この図に示すように、複数のジャッキ架台4は、鉄塔本体2の上端部に鉄塔本体2の周方向に並べて配されている。ジャッキ架台4は、鉄塔本体2の径方向に延びており、ジャッキ架台4の一端部は、鉄塔本体2の塔内部に臨んでいる。センターホールジャッキ10は、ジャッキ架台4の一端部に配されており、これにより、鉄塔本体2の塔内部に臨むように配されている。
【0022】
図4は、ジャッキ架台4及びセンターホールジャッキ10の概略を示す側面図である。この図に示すように、吊りケーブル12は、複数本一組として用いられ、上端側がセンターホールジャッキ10に定着され、下端側が揚重物としてのアンテナ鉄塔3に定着される。
【0023】
ジャッキ架台4には、油圧ポンプ14、バルブスタンド16、圧力センサ18、圧力計20、及び分電盤22等が設置される。油圧ポンプ14は、センターホールジャッキ10に作動油を給排する。また、バルブスタンド16は、油圧ポンプ14とセンターホールジャッキ10とを連通する油圧供給路23に設けられたバルブを備えている。また、圧力センサ18は、センターホールジャッキ10の油圧を検出し、圧力計20は、圧力センサ18により検出された油圧を表示する。分電盤22は、油圧ポンプ14やバルブ等を制御する制御ユニット等を備えている。
【0024】
図5は、センターホールジャッキ10を示す正面図である。この図に示すように、センターホールジャッキ10は、複数本の吊りケーブル12が挿通されるセンターホールが形成された油圧ジャッキ30と、油圧ジャッキ30の下側に配された下部定着機構40と、油圧ジャッキ30の上側に配された上部定着機構50と、上部定着機構50の上側に配された調整ヘッド60と、上部定着機構に支持された切換え機構80とを備えている。
【0025】
油圧ジャッキ30は、ラム32がシリンダ34に上下方向に摺動可能に支持された構成となっており、シリンダ34内が加減圧されることによりラム32が昇降する。油圧ジャッキ30の下側にはジャッキチェア36が配され、ジャッキチェア36とジャッキ架台4との間には支圧板38が配されている。
【0026】
支圧板38はジャッキ架台4上に固定され、ジャッキチェア36は支圧板38上に固定されており、油圧ジャッキ30は、ジャッキチェア36の上面に固定されている。支圧板38には、複数本の吊りケーブル12が挿通される穴が形成されている。また、ジャッキチェア36は、支圧板38の穴を挟んで対向する一対の脚部36Aを備えており、複数本の吊りケーブル12は、一対の脚部36Aの間に挿通される。
【0027】
ジャッキチェア36の上面には、上下方向に延びる4本のフレーム24が立設されている。この4本のフレーム24の上端部には、板25が結合されている。また、板25には、上下方向に延びる4本のフレーム26により板27が結合されている。板25、27には、複数本の吊りケーブル12が挿通される穴が形成されており、板25と板27との間には、吊りケーブル12が挿通される複数本の円筒状のケーブルガイド28が配されている。ケーブルガイド28の下端部は板25の上面に結合され、ケーブルガイド28の上端部は板7の下面に結合されている。
【0028】
図6は、図5の6−6断面図であり、下部定着機構40を示す平面断面図である。また、図7は、図6の7−7断面図であり、下部定着機構40を示す正面断面図である。これらの図に示すように、下部定着機構40は、支圧板38上に取り付けられた下部ヘッド42と、下部ヘッド42に昇降可能に支持されたグリッパープレート44と、グリッパープレート44を昇降させる一対のグリッパージャッキ46(図5参照)とを備えている。下部ヘッド42は、ジャッキチェア36の一対の脚部36Aの間に配されており、支圧板38上に固定されている。
【0029】
また、下部ヘッド42には、各吊りケーブル12が挿通される複数の穴42Aが形成されている。ここで、複数の穴42Aは、格子状に配されており、縦方向(図6中上下方向)に所定ピッチで配されて縦の列を構成し、横方向(図6中左右方向)に対して傾斜した斜め方向に所定ピッチで配されて斜めの列を構成している。
【0030】
また、該穴42Aの上端部には、グリッパー係合部42Bが形成されている。グリッパー係合部42Bは、上側から下側へかけて縮径する円錐台形状のテーパー穴である。また、下部ヘッド42の上面における穴42Aが形成されている領域外の4箇所には、ガイドシャフト42Sが立設されている。
【0031】
グリッパープレート44には、各吊りケーブル12が挿通される複数の穴44Aが形成されている。複数の穴44Aは、格子状に配されており、下部ヘッド42の穴42Aと同様、縦の列と斜めの列とを構成している。
【0032】
また、グリッパープレート44の穴44Aが形成された領域の周囲の4箇所には、ガイドシャフト42Sと摺動自在に係合する穴が形成されている。これにより、グリッパープレート44は、ガイドシャフト42Sに沿って昇降可能である。
【0033】
また、一対のグリッパージャッキ46が、下部ヘッド42の外周部にセンターホールの径方向に対向するように配されている(図5参照)。このグリッパージャッキ46は、加圧されると上昇し、減圧されると下降するラムを備えており。このラムの上端部はグリッパープレート44に取り付けられている。これにより、グリッパージャッキ46が加圧されるとグリッパープレート44が上昇し、グリッパープレート46が減圧されるとグリッパープレート44が下降する。
【0034】
また、グリッパープレート44の下面側には、各穴44Aに対応してグリッパー45が支持されている。グリッパー45は、断面円弧状の複数のピースがその曲率中心の回りに並べられることにより筒状に構成された部品であり、吊りケーブル12が中心に挿通される。グリッパー45の上側部分の外形は、径が均一の円筒部として形成され、グリッパー45の下側部分の外形は、下側へかけて次第に縮径する円錐台形状のテーパー部として形成されている。ここで、グリッパー45の下側部分は、下部ヘッド42のグリッパー係合部42Bと凸と凹の関係にあり、グリッパー45の下側部分をグリッパー係合部42Bに係合させることができる。この際、吊りケーブル12とグリッパー45とグリッパー係合部とが摩擦係合した状態になり、これにより、吊りケーブル12が、グリッパー45により下部ヘッド42に定着される。
【0035】
また、グリッパー45の上端面には、中心の穴を挟んで対向する一対のガイドシャフト45Sが立設されている。また、グリッパープレート44には、穴44Aを挟んで対向する一対の穴が形成されており、この穴にガイドシャフト45Sが挿通される。また、ガイドシャフト45Sの上端部には拡径されたストッパ部が形成されている。これにより、グリッパー45は、ガイドシャフト45Sによりグリッパープレート44に昇降可能に支持されている。
【0036】
図8は図5の8−8断面図であり、上部定着機構50及び調整ヘッド60を示す平面断面図である。また、図9は図8の9−9断面図であり、上部定着機構50及び調整ヘッド60を示す正面断面図である。さらに、図10は図8の10−10断面図であり、上部定着機構50及び調整ヘッド60を示す正面断面図である。
【0037】
これらの図に示すように、上部定着機構50は、ラム32上に取り付けられたプーリングヘッド52と、上述のグリッパー45と同様の構成のグリッパー55とを備えている。プーリングヘッド52には、各吊りケーブル12が挿通される複数の穴52Aが形成されている。複数の穴52Aは、格子状に配されており、下部定着機構40の穴42A、44Aと同様、縦の列と斜めの列とを構成している。また、該穴52Aの上端部には、上述のグリッパー係合部42Bと同様の構成のグリッパー係合部52Bが形成されている。
【0038】
また、切換え機構80は、ガイドシャフト52Sと、グリッパープレート54と、一対のグリッパージャッキ(油圧ジャッキ)56とを備えている。ガイドシャフト52Sは、プーリングヘッド52の上面における穴52Aが形成されている領域外の4箇所に立設されている。
【0039】
グリッパープレート54は、各吊りケーブル12が挿通される複数の穴54Aが形成されている。複数の穴54Aは、格子状に配されており、プーリングヘッド52の穴52Aと同様、縦の列と斜めの列とを構成している。
【0040】
また、グリッパープレート54の穴54Aが形成された領域の周囲の4箇所には、ガイドシャフト52Sと摺動自在に係合する穴が形成されている。これにより、グリッパープレート54は、ガイドシャフト52Sに沿って昇降可能である。
【0041】
また、一対のグリッパージャッキ56は、プーリングヘッド52の外周部にセンターホールの径方向に互いに対向するように配されている。このグリッパージャッキ56は、加圧されると上昇し、減圧されると下降するラムを備えており、このラムの上端部はグリッパープレート54に取り付けられている。これにより、グリッパージャッキ56が加圧されるとグリッパープレート54が上昇し、グリッパープレート56が減圧されるとグリッパープレート54が下降する。
【0042】
また、グリッパープレート54の下面側には、各穴54Aに対応して、グリッパー55が支持されている。ここで、グリッパー55の下側部分とグリッパー係合部52Bと吊りケーブル12とを摩擦係合させることができ、これによって、吊りケーブル12が、グリッパー55によりプーリングヘッド52に定着される。
【0043】
また、グリッパー55の上端面には、中心の穴を挟んで対向する一対のガイドシャフト55Sが立設されている。また、グリッパープレート54には、穴54Aを挟んで対向する一対の穴が形成されており、この穴にガイドシャフト55Sが挿通される。また、ガイドシャフト55Sの上端部には拡径したストッパ部が形成されている。これにより、グリッパー55は、ガイドシャフト55Sによりグリッパープレート54に昇降可能に支持されている。
【0044】
調整ヘッド60は、各吊りケーブル12が挿通される複数の穴62Aが形成された矩形状のプレート62と、プレート62を支持する4個のロードセル64とを備えている。複数の穴62Aは、格子状に配されており、グリッパープレート54の穴54Aと同様、縦の列と斜めの列とを構成している。
【0045】
各ロードセル64は、プレート62の4隅の各々に配されており、プーリングヘッド52の外周部に取り付けられたロードセル台64Aに支持されている。4個のロードセル64は、プレート62に作用する下向きの荷重の大きさを測定する。
【0046】
また、プレート62に形成された穴62Aの上端部には、上述のグリッパー係合部42B、52Bと同様の構成のグリッパー係合部62Bが形成されており、このグリッパー係合部62Bに、グリッパー45、55と同形状のグリッパーを係合させることができる。
【0047】
図11から図14までは、センターホールジャッキ10の動作原理を示す側断面図である。これらの図に示すように、センターホールジャッキ10には、上述の油圧センサ18により測定された油圧ジャッキ30の油圧を表示する圧力計20と、ロードセル64により測定されたプレート62に作用する下向きの荷重の大きさを表示する圧力計21とが設けられている。
【0048】
また、油圧ジャッキ30のラム32の下端部には、シリンダ34の内径と同径の拡径部32Aが形成されており、シリンダ34の内部は、拡径部32Aにより上室34Aと下室34Bとの2室に分けられている。上室34Aと下室34Bとはそれぞれ油圧供給路23を介して油圧ポンプ14に接続されている。油圧ポンプ14により下室34Bに作動油が供給され、上室34Aから作動油が排出されることによって、ラム32が上昇する。一方、油圧ポンプ14により上室34Aに作動油が供給され、下室34Bから作動油が排出されることによって、ラム32が下降する。
【0049】
なお、図11から図14まででは、グリッパー係合部42B、52Bと吊りケーブル12と摩擦係合した状態のグリッパー45、55を黒塗りで示し、グリッパー係合部42B、52Bと吊りケーブル12との摩擦係合を解除した状態のグリッパー45、55を白抜きで示している。
【0050】
図11は、センターホールジャッキ10の盛り替えが完了した状態を示している。この状態は、下室34Bが減圧され、上室34Aが加圧されることによりラム32が最低位まで下降した後の状態であり、グリッパージャッキ46、56が減圧されることによりグリッパープレート44、54が最低位まで下降した後の状態である。また、グリッパープレート44と下部ヘッド42との間、及びグリッパープレート54とプーリングヘッド52との間には隙間が空けられており、グリッパー45、55が昇降する空間が確保されている。
【0051】
図11中に拡大して示すように、下部定着機構40において、グリッパー45は、下部ヘッド42のグリッパー係合部42Bと吊りケーブル12と摩擦係合する。これにより、吊りケーブル12が下部定着機構40において、グリッパー45により固定保持される。一方、上部定着機構50では、グリッパー55が、プーリングヘッド52のグリッパー係合部52Bとの係合を解除した状態となる。これにより、吊りケーブル12が上部定着機構50において、グリッパー55による固定保持から開放される。
【0052】
従って、センターホールジャッキ10を盛り替えした時点では、吊りケーブル12が下部定着機構40に定着され、揚重物であるアンテナ鉄塔3が下部定着機構40力により保持されて停止する。
【0053】
図12は、ラム32の上昇を開始した状態を示している。この図に示すように、下室34Bが加圧され、上室34Aが減圧されることにより、ラム32が最低位から上昇する。図12中に拡大して示すように、下部定着機構40において、グリッパー45は、グリッパー係合部42Bと吊りケーブル12との摩擦係合を緩め、最終的にはグリッパー係合部42Bとの係合を解除する。一方、上部定着機構50において、グリッパー55は、グリッパー係合部52Bに係合し、最終的にはグリッパー係合部52Bと吊りケーブル12と摩擦係合する。
【0054】
従って、ラム32が上昇を開始すると、下部定着機構40の保持力が低下する一方、上部定着機構50の保持力が増加し、最後的には、吊りケーブル12が上部定着機構50に定着されることにより、アンテナ鉄塔3が上部定着機構50により保持された状態で上昇する。
【0055】
図13は、ラム32の上昇を終了した状態を示している。この図に示すように、上室34Aの減圧と下室34Bの加圧とを停止すると、ラム32の上昇が停止する。図13中に拡大して示すように、この時点では、吊りケーブル12が上部定着機構50において、グリッパー55により固定保持されており、アンテナ鉄塔3が上部定着機構50により保持されて停止する。
【0056】
図14は、ラム32の下降を開始した状態を示している。この図に示すように、下室34Bが減圧され、上室34Aが加圧されることにより、ラム32が最高位から下降する。図14中に拡大して示すように、上部定着機構50において、グリッパー55は、グリッパー係合部52Bと吊りケーブル12との摩擦係合を緩め、最終的にはグリッパー係合部52Bとの係合を解除する。一方、下部定着機構40において、グリッパー45は、グリッパー係合部42Bに係合し、最後的にはグリッパー係合部42Bと吊りケーブル12と摩擦係合する。
【0057】
従って、ラム32が下降を開始すると、上部定着機構50の保持力が低下する一方、下部定着機構40の保持力が増加し、最後的には、吊りケーブル12が下部定着機構40に定着されることにより、アンテナ鉄塔3が下部定着機構40により保持された状態で停止する。そして、センターホールジャッキ10は、図11に示す盛り替えを完了した状態となる。
【0058】
図15から図18までは、吊りケーブル12の張力を調整している状態を示す側断面図である。これらの図に示すように、本実施形態では、調整ヘッド60と張力調整用グリッパー70とを用いて、任意の1本の吊りケーブル12の張力を調整する。
【0059】
張力調整用グリッパー70は、一対の断面半円状のピース70A、70Bがその曲率中心の周りに並べられることにより筒状に構成される部品であり、各ピース70A、70Bは、それぞれ角柱形状の支持部材72A、72Bの長手方向一端部に取り付けられている。ここで、支持部材72Aと支持部材72Bとを間隔を空けて平行に並べた状態で、ピース70A、70Bにより筒状の張力調整用グリッパー70が構成されるように、ピース70A、70Bは、支持部材72A、72Bに取り付けられている。なお、ピース70Aとピース70Bとの境界部の隙間が無い状態で、支持部材72Aと支持部材72Bとの間に吊りケーブル12を挿通する隙間が形成されるように、ピース70A、70Bと支持部材72A、72Bとの相対位置が設定されている。
【0060】
張力調整用グリッパー70の上側部分の外形は、径が均一の円筒体として形成され、張力調整用グリッパー70の下側部分の外形は、下側へかけて次第に縮径する円錐台形状のテーパー部として形成されている。ここで、張力調整用グリッパー70の下側部分は、プレート62のグリッパー係合部62Bと凸と凹の関係にあり、張力調整用グリッパー70の下側部分をグリッパー係合部62Bに係合させることができる。この際、吊りケーブル12と張力調整用グリッパー70とグリッパー係合部62Bとが摩擦係合状態になり、これにより、吊りケーブル12が、張力調整用グリッパー70により固定保持される。
【0061】
ここで、複数の穴62Aに挿通された複数本の吊りケーブル12は、縦方向の列と斜め方向の列とを構成しており、斜め方向の列の間には直線的な空間が存在し、支持部材72A、72Bの寸法は、この直線的な空間に支持部材72A、72Bを通すことができるように設定されている。
【0062】
図15は、センターホールジャッキ10の盛り替えが完了した状態を示している。下部定着機構40の状態については、図11で示した状態と同じであるため、説明を省略する。
【0063】
図15に示すように、センターホールジャッキ10の盛り替えが完了すると、支持部材72A、72Bを、吊りケーブル12の斜めの列の間に通して、張力調整用グリッパー70のピース70A、70Bを、調整対象の吊りケーブル12が挿通されたグリッパー係合部62Bの上まで移動させる。そして、ピース70A、70Bを当該グリッパー係合部62Bに挿入する。
【0064】
また、上部定着機構50のグリッパージャッキ56を作動させてグリッパープレート54を最高位まで上昇させる。これによって、グリッパー55が、グリッパープレート54により、グリッパー係合部52Bと係合不能な高さまで引き上げられる。
【0065】
図16は、ラム32の上昇を開始した状態を示している。この図に示すように、下室34Bが加圧され、上室34Aが減圧されることにより、ラム32が最低位から上昇する。図16中に拡大して示すように、下部定着機構40において、グリッパー45は、グリッパー係合部42Bと吊りケーブル12との摩擦係合を緩め、最終的にはグリッパー係合部42Bとの係合を解除する。また、上部定着機構50では、上述の通り、グリッパー55は、プーリングヘッド52のグリッパー係合部52Bと係合不能な高さに位置する。そして、調整ヘッド60において、張力調整用グリッパー70は、グリッパー係合部62Bと係合し、最後的にはグリッパー係合部62Bと吊りケーブル12と摩擦係合する。
【0066】
従って、ラム32が上昇を開始すると、下部定着機構40の全ての吊りケーブル12に対する保持力が低下する一方、調整ヘッド60の1本の吊りケーブル12に対する保持力が増加し、最後的には、1本の吊りケーブル12が調整ヘッド60に定着される。これにより、アンテナ鉄塔3が各吊り点の1本の吊りケーブル12を介して調整ヘッド60により保持された状態となる。
【0067】
この状態では、調整ヘッド60にはアンテナ鉄塔3の荷重が作用し、この荷重が、ロードセル64により測定され、圧力計21に表示される。作業者は、圧力計21に表示された値が所定値になるまでラム32を上昇させる。
【0068】
図17は、ラム32の上昇を終了した状態を示している。この図に示すように、下室34Bの加圧と上室34Aの減圧とを停止すると、ラム32の上昇が停止する。図17中に拡大して示すように、この時点では、1本の吊りケーブル12が、調整ヘッド60において、張力調整用グリッパー70により固定保持されており、アンテナ鉄塔3が各吊り点の1本の吊りケーブル12を介して調整ヘッド60により保持されて停止する。ここで、ロードセル64に作用する荷重が所定値になるまでラム32を上昇させて停止させたことにより、1本の吊りケーブル12の張力を所定値に調整できる。
【0069】
図18は、ラム32の下降を開始した状態を示している。この図に示すように、下室34Bが減圧され、上室34Aが加圧されることにより、ラム32が最高位から下降する。図18中に拡大して示すように、調整ヘッド60において、張力調整用グリッパー70は、グリッパー係合部62Bと吊りケーブル12との摩擦係合を緩め、最終的にはグリッパー係合部62Bとの係合を解除する。一方、下部定着機構40において、グリッパー45は、グリッパー係合部42Bと係合し、最後的にはグリッパー係合部42Bと吊りケーブル12と摩擦係合する。
【0070】
従って、ラム32が下降を開始すると、調整ヘッド60の保持力が低下する一方、下部定着機構40の保持力が増加し、最後的には、全ての吊りケーブル12が下部定着機構40に定着される。これにより、アンテナ鉄塔3が各吊り点の全ての吊りケーブル12を介して下部定着機構40により保持された状態で停止する。そして、センターホールジャッキ10は、図15に示す盛り替えが完了した状態となり、1本の吊りケーブル12の張力の調整が終了する。以上の調整作業を、全ての吊りケーブル12に対して行い、全ての吊りケーブル12の張力を所定値に調整する。
【0071】
ところで、吊りケーブル12やグリッパー係合部42B、52Bの公差やグリッパー45、55の製品誤差等により、各グリッパー45、55のストローク(以下、各吊りケーブル12のセット量という)に僅かな差が生じる場合が考えられる。この場合、各吊りケーブル12の揚重物からセンターホールジャッキ10までの長さ(以下、各吊りケーブル12の長さという)に僅かな差が生じ、各吊りケーブル12の張力に僅かな差が生じる。
【0072】
そして、吊りケーブル12をグリッパー45、55にセットすることを繰り返すと、各吊りケーブル12のセット量の差が累積することにより、各吊りケーブル12の長さの差が拡大し、各吊りケーブル12の張力の差が拡大すると考えられる。特に、高層の塔状構造物1を構築する本実施形態では、吊りケーブル12の長さが長くなり、吊りケーブル12をグリッパー45、55にセットする回数が多くなることにより、各吊りケーブル12の長さの差が大きくなり、各吊りケーブル12の張力の差が大きくなる可能性がある。ここで、特定の吊りケーブル12のみ荷重が大きくなることや、各吊りケーブル12の張力の差により油圧ジャッキ30に偏荷重がかかること等は好ましくないため、各吊りケーブル12の張力を測定し、各吊りケーブル12の張力を平均化することが望ましい。
【0073】
これに対して、本実施形態に係るセンターホールジャッキ10では、上述の通り、任意の吊りケーブル12を調整ヘッド60に定着させ、他の吊りケーブル12の定着を開放したことにより、任意の吊りケーブル12の張力を測定できる。また、任意の吊りケーブル12から調整ヘッド60に作用する荷重をロードセル64により測定することにより、任意の吊りケーブル12の張力を容易に測定できる。また、本実施形態に係るセンターホールジャッキ10を用いた吊りケーブル12の調整方法によれば、上述の通り、複数本の吊りケーブル12の張力を1本ずつ所定値に調整することができ、各吊りケーブル12の張力を平均化することができる。
【0074】
ここで、各吊りケーブル12の長さに差が生じた場合、短い吊りケーブル12ほど、グリッパー45、55から受ける引き込み力が強くなり、セット量が大きくなるという作用が起こる。この作用により、各吊りケーブル12の長さの差が低減され、各吊りケーブル12の張力が平均化される。しかしながら、アンテナ鉄塔3の構築の初期段階のように揚重物が低荷重であり、各ケーブル12がグリッパー45、55から受ける引き込み力が弱い場合等に、上述の作用が起こらないことも考えられる。
【0075】
これに対して、本実施形態に係る吊りケーブル12の張力調整方法によれば、揚重物が低荷重の場合であっても、各吊りケーブル12の張力を平均化することができ、上述の作用に頼ることなく、各吊りケーブル12の張力を平均化することができる。
【0076】
なお、本実施形態では、センターホールジャッキ10を、塔状構造物1の構築に用いたが、センターホールジャッキ10の用途は、これに限られるものではなく、ドーム状構造物等の他の構造物の構築に用いてもよい。
【0077】
図19は、他の実施形態に係るセンターホールジャッキ100を示す側断面図である。この図に示すように、センターホールジャッキ100は、ポストテンション工法においてPC鋼より線等の緊張材(ストランド)112に緊張力を与えるのに用いられる。なお、上述の実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0078】
センターホールジャッキ100は、一端を構造物102に定着された複数本の緊張材112が挿通されるセンターホールが形成された油圧ジャッキ30と、油圧ジャッキ30と構造物102との間に配された下部定着機構140と、油圧ジャッキ30の構造物102側の反対側に配された上部定着機構50と、上部定着機構50の油圧ジャッキ30側の反対側に配された調整ヘッド60と、切換え機構80とを備えている。
【0079】
油圧ジャッキ30は、下室34B内が加圧されるとラム32が上昇し、上室34A内が減圧されるとラム32が下降する。油圧ジャッキ30と下部定着機構140との間にはジャッキチェア136が配され、下部定着機構140と構造物102との間には支圧板138が配されている。支圧板138は構造物102に埋設され、ジャッキチェア136は下部定着機構140の下部ヘッド42上に固定されており、油圧ヘッド30は、ジャッキチェア136上に固定されている。支圧板138には、複数本の緊張材112が挿通される穴が形成されている。また、ジャッキチェア136には、複数の穴136Aが形成されており、各穴136Aに緊張材112が挿通される。
【0080】
また、ジャッキチェア136の下部ヘッド42側の面には、複数のグリッパー係合部42Bと対向して凹部136Bが形成されている。この凹部136Bの深さは、図中拡大して示すように、グリッパー係合部42Bとの係合を解除したグリッパー45が凹部136Bに当接し、グリッパー係合部42Bに係合したグリッパー45が凹部136Bから離間する程度に設定されている。
【0081】
センターホールジャッキ100では、グリッパープレート54を下降させた状態で、下室34Bを加圧し上室34Aを減圧することによりラム32を上昇させると、グリッパー45がグリッパー係合部42Bとの係合を解除する一方、グリッパー55がグリッパー係合部52Bと緊張材112と摩擦係合する。これにより、緊張材112に与えられる緊張力が増大する。そして、下室34Bを減圧し上室34Aを加圧することによりラム32を下降させると、グリッパー45がグリッパー係合部42Bと緊張材112と摩擦係合し、緊張材112が緊張された状態で下部ヘッド42に定着される。
【0082】
また、緊張材112の張力を調整する場合、張力調整用グリッパー70を調整対象の緊張材112が挿通されるグリッパー係合部62Bに挿入し、グリッパープレート54を上昇させた状態で、ラム32を上昇させる。これにより、図中に拡大して示すように、下部定着機構140において、グリッパー45は、グリッパー係合部42Bと緊張材112との摩擦係合を緩め、最終的にはグリッパー係合部42Bとの係合を解除する。また、上部定着機構50では、上述の通り、グリッパー55は、プーリングヘッド52のグリッパー係合部52Bと係合できない高さに位置する。そして、調整ヘッド60において、張力調整用グリッパー70は、グリッパー係合部62Bと係合し、最後的にはグリッパー係合部62Bと吊りケーブル112と摩擦係合する。
【0083】
従って、ラム32が上昇を開始すると、下部定着機構140の全ての緊張材112に対する保持力が低下する一方、調整ヘッド60の任意の1本の緊張材112に対する保持力が増加し、最後的には、1本の緊張材112が調整ヘッド60に定着される。
【0084】
この状態では、調整ヘッド60には1本の緊張材112の引張荷重が作用し、この荷重が、ロードセル64により測定され、圧力計に表示される。作業者は、圧力計に表示された値が所定値になるまでラム32を上昇させることにより、1本の緊張材112の張力を所定値に調整する。
【0085】
その後、下室34Bを減圧し、上室34Aを加圧することにより、ラム32を下降させる。これにより、調整ヘッド60において、張力調整用グリッパー70は、グリッパー係合部62Bと緊張材112との摩擦係合を緩め、最終的にはグリッパー係合部62Bとの係合を解除する。一方、下部定着機構140において、グリッパー45は、グリッパー係合部42Bと係合し、最後的にはグリッパー係合部42Bと緊張材112と摩擦係合する。
【0086】
従って、ラム32が下降を開始すると、調整ヘッド60の保持力が低下する一方、下部定着機構140の保持力が増加し、最後的には、全ての緊張材112が下部定着機構140に定着される。以上で、任意の1本の緊張材112の張力の調整が終了する。
【0087】
以上の調整作業を、全ての緊張材112に対して行い、全ての緊張材112の張力を所定値に調整する。これにより、各緊張材112の長さの差を低減でき、各緊張材112の張力を平均化できる。
【0088】
なお、上記実施形態では、複数本のケーブルが挿通される第1昇降手段として、油圧ジャッキ30を用いたが、気圧で昇降するジャッキ等、他の昇降手段も適用できる。また、上記実施形態では、切換え手段としての切換え機構80が備える第2昇降手段として、油圧ジャッキであるグリッパージャッキ56を用いたが、気圧で昇降するジャッキやカム機構等、他の昇降手段も適用できる。
【符号の説明】
【0089】
1 塔状構造物、2 鉄塔本体、3 アンテナ鉄塔(揚重物)、4 ジャッキ架台(反力受台)、10 センターホールジャッキ、12 吊りケーブル(ケーブル)、14 油圧ポンプ、16 バルブスタンド、18 圧力センサ、20、21 圧力計、22 分電盤、23 油圧供給路、24、26 フレーム、25、27 板、28 ケーブルガイド、30 油圧ジャッキ(第1昇降手段)、32 ラム、34 シリンダ、36 ジャッキチェア、36A 脚部、38 支圧板、40 下部定着機構(第2定着手段)、42 下部ヘッド、42A 穴、42B グリッパー係合部(第2係合孔)、42S ガイドシャフト、44 グリッパープレート、44A 穴、45 グリッパー(第2固定手段)、46 グリッパージャッキ、50 上部定着機構(第1定着手段)、52 プーリングヘッド、52A 穴、52B グリッパー係合部(第1係合孔)、52S ガイドシャフト、54 グリッパープレート、54A 穴、55 グリッパー(第1固定手段)、56 グリッパージャッキ(第2昇降手段)、60 調整ヘッド(第3定着手段)、62 プレート、62A 穴、62B グリッパー係合部(第3係合孔)、64 ロードセル(測定手段)、64A ロードセル台、70 張力調整用グリッパー(第3固定手段)、70A、70B ピース、72A、72B 支持部材、80 切換え機構(切換え手段)、100 センターホールジャッキ、102 構造物(固定構造物)、136 ジャッキチェア、136A 穴、136B 凹部、138 支圧板、140 下部定着機構(第2定着手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側を揚重物又は固定構造物に定着された複数本のケーブルが挿通される第1昇降手段と、
前記第1昇降手段に支持され、各ケーブルが挿通される複数の第1係合孔に対して係脱可能な複数の第1固定手段により、複数本のケーブルを保持又は開放する第1定着手段と、
前記第1定着手段よりもケーブルの一端側に配され、各ケーブルが挿通される複数の第2係合孔に対して係脱可能な複数の第2固定手段により複数本のケーブルを保持又は開放する第2定着手段と、
前記第1固定手段を前記第1係合孔に対して係合不能な位置と係合可能な位置との間で昇降させる第2昇降手段により前記第1定着手段を動作不能な状態又は動作可能な状態に切換える切換え手段と、
前記第1昇降手段に支持され、各ケーブルが挿通される複数の前記第3係合孔のうちの任意の第3係合孔に対して係脱可能な第3固定手段により任意のケーブルを保持又は開放する第3定着手段と、
を備えるセンターホールジャッキ。
【請求項2】
前記第1〜第3固定手段は、各ケーブルが挿通される楔型のグリッパーであり、
複数の前記第1固定手段は、前記第1昇降手段が昇動すると、複数の前記第1係合孔と係合して楔作用により複数本のケーブルを保持し、前記第1昇降手段が降動すると、複数の前記第1係合孔との係合を解除して複数本のケーブルを開放し、
複数の前記第2固定手段は、前記第1昇降手段が昇動すると、複数の前記第2係合孔との係合を解除して複数本のケーブルを開放し、前記第1昇降手段が降動すると、複数の前記第2係合孔と係合して複数本のケーブルを保持し、
前記第3固定手段は、前記切換え手段により前記第1固定手段が前記第1係合孔に対して係合不能な位置に移動された場合において、前記第1昇降手段が昇動すると、前記第3係合孔と係合して楔作用により前記任意のケーブルを保持し、前記第1昇降手段が降動すると、前記第3係合孔との係合を解除して前記任意のケーブルを開放する請求項1に記載のセンターホールジャッキ。
【請求項3】
前記第3固定手段により保持された前記任意のケーブルの張力を測定する測定手段を備える請求項1又は請求項2に記載のセンターホールジャッキ。
【請求項4】
一端側を揚重物又は固定構造物に定着された複数本のケーブルが挿通される第1昇降手段と、
前記第1昇降手段に支持され、各ケーブルが挿通される複数の第1係合孔に対して係脱可能な複数の第1固定手段により、複数本のケーブルを保持又は開放する第1定着手段と、
前記第1定着手段よりもケーブルの一端側に配され、各ケーブルが挿通される複数の第2係合孔に対して係脱可能な複数の第2固定手段により複数本のケーブルを保持又は開放する第2定着手段と、
前記第1固定手段を前記第1係合孔に対して係合不能な位置と係合可能な位置との間で昇降させる第2昇降手段により前記第1定着手段を動作不能な状態又は動作可能な状態に切換える切換え手段と、
を備えるセンターホールジャッキにおけるケーブルの張力調整方法であって、
前記第2昇降手段を昇動させることにより前記第1固定手段を前記第1係合孔に対して係合不能な位置に移動させる工程と、
各ケーブルが挿通される複数の第3係合孔のうちの任意の第3係合孔に対して係脱可能であり、前記第1昇降手段の昇降動作により前記任意の第3係合孔に対して係脱して任意のケーブルを保持又は開放する第3固定手段を、前記任意の第3係合孔に設置する工程と、
前記第1昇降手段を昇動させることにより、前記第3固定手段を前記任意の第3係合孔に係合させて前記第3固定手段に前記任意のケーブルを保持させると共に、前記任意のケーブルの張力を調整する工程と、
を備えるケーブルの張力調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−225359(P2011−225359A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99115(P2010−99115)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(597022322)ブイ・エヌ・エンジニアリング株式会社 (1)