説明

センダングサ属植物の酵素処理物を含む抗ヒスタミン剤

【課題】副作用が少なく、かつ有効にアレルギー性疾患を治療または予防するための組成物を提供すること。
【解決手段】センダングサ属植物の酵素処理物、特にセルラーゼ及びペクチナーゼにより処理した酵素処理物には、高い抗ヒスタミン作用、抗アナフィラキシー作用及び皮膚炎治療効果が認められた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセンダングサ属植物の酵素処理物を含む抗ヒスタミン剤、抗アナフィラキシー剤、皮膚炎治療用または予防用医薬組成物、並びに食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アトピー性皮膚炎や花粉症等のアレルギー性疾患を患う患者数が増加している。これらのアレルギー性疾患は、個人によって発症の様相や程度が様々であり、本来個人の体質的なものが大きく、治療法は一般に対症的で根本的に治癒させることは困難である。また、アレルギー性疾患に従来用いられている抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤は眠気を催すなどの副作用が認められ、服用できない場合もある。また、アトピー性皮膚炎の炎症を抑制するためにしばしば処方される副腎皮質ホルモン系薬剤にも強い副作用が認められる。また、抗アレルギー剤の中には治療効果が奏されるまでに比較的長い期間を必要とするものもある。
一方、ビデンス・ピローサ等のセンダングサ属植物は昔から身近にあるハーブであり、発展途上国では干した地上部分を煎じたものが飲用に供されている。日本でも細菌この植物を栽培加工して健康茶やエキス錠として健康食品業界で販売されている。またセンダングサ属植物抽出物が花粉症及びアトピー性皮膚炎の治療に効果を奏することが報告されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−352680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は有効にアレルギー性疾患を治療または予防するための組成物、特に抗ヒスタミン剤及び抗アナフィラキシー剤を提供することを目的とする。本発明はまた、副作用が少ないアレルギー性疾患治療用または予防用組成物を提供することを目的とする。また、本発明は抗ヒスタミン作用を奏する食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、センダングサ属植物の酵素処理物に、高い抗ヒスタミン作用、抗アナフィラキシー作用及び皮膚炎抑制作用があることを見出した。
すなわち、本発明はセンダングサ属植物の酵素処理物を含む抗ヒスタミン剤、抗アナフィラキシー剤、及び皮膚炎治療用または予防用医薬組成物に関する。また、本発明はセンダングサ属植物の酵素処理物を含む食品に関する。
本発明のセンダングサ属植物の酵素処理物において、上記酵素はセルラーゼ及びペクチナーゼからなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましく、特に酵素がセルラーゼ及びペクチナーゼであることが好ましい。
また、上記センダングサ属植物はビデンス・ピローサ類であることが特に好ましい。
【発明の効果】
【0006】
センダングサ属植物の酵素処理物は、皮膚炎に対する抑制効果を示す。また、受動的皮膚アナフィラキシーに対して抑制効果を示す。更に、ヒスタミン致死反応に対しても抑制効果を示す。また、肥満細胞からのヒスタミンの遊離に対して非常に強い抑制作用を示す。従って、センダングサ属植物の酵素処理物は、抗ヒスタミン剤、抗アナフィラキシー剤及び皮膚炎治療用または予防用医薬組成物として、若しくはこれらの作用を奏する食品として用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(酵素処理物の調整方法)
本発明において使用されるセンダングサ属植物は、特開2001−178390号公報および特開2001−233727号公報に記載されるように、学名ではビデンス(Bidens)属と言われる一群の植物である。種類も多岐に亘り互いに交配するので変種も多く、植物学上も混乱が見られ、学名、和名、漢名、の対応も交錯していて同定することは極めて困難であるが、本発明で用いられるセンダングサ属植物は以下に掲げるものを包含する。
【0008】
Bidens pilosa L.(コセンダングサ、コシロノセンダングサ、咸豊草)
Bidens pilosa L. var. minor (Blume)Sherff (シロバナセンダングサ、シロノセンダングサ、コシロノセンダングサ、コセンダングサ、咸豊草)
Bidens pilosa L. var. bisetosa Ohtani et S.Suzuki(アワユキセンダングサ)
Bidens pilosa L. f. decumbens Scherff (ハイアワユキセンダングサ)
Bidens pilosa L. var. radiata Scherff (タチアワユキセンダングサ、ハイアワユキセンダングサを含むこともある)
Bidens pilosa L. var. radiata Schultz Bipontinus (シロノセンダングサ、オオバナノセンダングサ)
Bidens biternata Lour. Merrill et Sherff(センダングサ)
Bidens bipinnata L.(コバノセンダングサ、センダングサ)
Bidens cernua L.(ヤナギタウコギ)
Bidens frondosa L.(アメリカセンダングサ、セイタカタウコギ)
Bidens maximowicziana Oett(羽叶鬼針草)
Bidens parviflora Willd(ホソバノセンダングサ)
Bidens radiata Thuill. var. pinnatifida (Turcz.)Kitamura(エゾノタウコギ)
Bidens tripartita L.(タウコギ)
【0009】
上記センダングサ属植物の中で、特にビデンス・ピローサ(Bidens pilosa)類が、効果の観点から好ましい。
上記センダングサ属植物の使用部位は、根、地上部(茎、葉、花等)又は全草何れの部位を用いてもよい。特に、葉及び茎の部分を使用することが効力の点において好ましい。
上記センダングサ属植物は、生で用いても良いが、乾燥物、あるいは加工乾燥物でもよい。通常、生の植物を天日乾燥または熱風(例えば70〜80℃)乾燥したもの、又は蒸気で、例えば1時間〜1時間半程度蒸した後、乾燥したものを使用する。また、特開2001−178390の方法により加工乾燥した物を用いてもよい。
【0010】
さらに、常温又は加温下に水又は含水溶媒を添加して抽出したものを用いてもよい。抽出方法としては例えば、浸漬して静置、またはソックスレー抽出器等の抽出器具を用いて抽出物を得ることもできる。
【0011】
抽出若しくは固液分離後に酵素処理を行う場合において、濃縮物として使用する場合、濃度を調整した後そのまま用いてもよい。また、抽出物は、脱色、不要物除去のため活性炭処理、HP20等の樹脂処理、低温放置、瀘過等の処理を施してから用いてもよい。さらに当該抽出物を適当な分離手段、例えばゲル瀘過法やシリカゲルカラムクロマト法、又は逆相若しくは順相の高速液体クロマト法により活性の高い画分を分画して用いることもできる。本発明においてセンダングサ属植物にはこのような分画物も含むものとする。また使用目的に応じて他の成分を混合してもよい。
【0012】
上記のように得られた加工乾燥物あるいは抽出物を酵素により処理を行う。酵素処理は酵素の種類によって異なるが、通常20〜90℃の温度範囲で、1〜50時間程度行うことが好ましい。また、反応液のpHは酵素の種類にもよるが、通常3.5〜9.0程度の範囲に調整して処理することが好ましい。加工乾燥物をそのまま用いる場合には、加工乾燥物1kgに対して、1〜30Lの水または30%以上含水の親水性有機溶媒(例えば、エタノール、メタノール等)を添加して酵素処理を行う。
酵素の種類は、多糖類加水分解酵素が特に好ましく、セルラーゼ、ペクチナーゼ、ヘミセルラーゼ、キシラナーゼ、マンナーゼ、マセレイティングエンザイム、アミラーゼ、グルコシダーゼ、プルラナーゼがより好ましい。セルラーゼとペクチナーゼを組み合わせて使用することが最も好ましい。
本発明において酵素はAsp.nigerを初め様々な由来のものを使用することができる。また、酵素を含有する微生物の培養液、麹などの培養物そのもの、あるいはそれらの抽出物を用いてもよい。
使用する酵素の量は、基質の全質量(乾燥質量)に対して、0.001〜10質量%程度添加することが好ましい。2種類以上使用する場合には合計がこの範囲となればよい。
【0013】
酵素処理終了後、酵素を高温(90〜120℃)で失活させることが好ましい。失活後、フィルタープレスまたは遠心分離等の工程を加えて固液分離し、清澄な液相を使用することが好ましい。また抽出溶媒により抽出してもよい。
【0014】
酵素を作用させた後、抽出に使用される溶媒の例としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、グリセリン等のアルコール類、並びにこれらの含水物、アセトン、エチルメチルケトン、クロロホルム、塩化メチレン及び酢酸エチル、並びにそれらの含水物を用いてもよい。また、上記溶媒を二種以上含む混合物であってもよい。溶媒の添加量は、例えば用いる植物の合計乾燥重量1kgに対して1L〜100L程度使用することができる。
本発明において特に水抽出が好ましい。
【0015】
抽出時の温度は、通常、室温〜沸点程度で行うことができる。また、抽出時間は、温度や溶媒にもよるが、室温〜沸点程度で抽出を行う場合には、1〜300時間程度の範囲にわたって行うことができる。
抽出液は必要により溶媒を留去濃縮して濃縮物または固形物(乾燥物)としてもよい。
濾液または抽出液を濃縮し、乾燥することにより、本発明のセンダングサ属植物の酵素処理物を得ることができる。
【0016】
(酵素処理物の薬理効果)
肥満細胞は体組織中に存在し、細胞質内に多くの好塩基性顆粒を保有する細胞であり、血液中に存在する好塩基球とほぼ同様の性状を示し、機能的には同等の細胞と考えられている。肥満細胞と好塩基球は、IgEによる即時型過敏症の発現に最も重要な役割を有する。即時型過敏症の発現は、これらの細胞に強く結合したIgEが細胞上で抗原と反応すると、細胞内シグナル伝達によって、顆粒中に貯えられたヘパリン・ヒスタミン・セロトニンなどの化学的メディエーターが急速に放出される現象すなわち脱顆粒(degranulation)がおこることによる。
一方アラキドン酸代謝によってアナフィラキシーにおける遅反応物質(slow reacting substance of anaphylaxis, SRS-A)やプロスタグランジンなども産生放出される。これらの炎症性メディエーターによって、特徴的な即時過敏症の組織反応がひきおこされる。
アナフィラキシーとは、抗原に感作され免疫グロブリンのIgE抗体が産生されている生体に、その抗原が重ねて侵入した場合に起る即時型過敏反応の一つである。組織内の肥満細胞や血中の好塩基球は,親和性の高いIgEのFc受容体(FcεRI)を発現しており、産生されたIgEのほとんどは速やかにこの受容体を介してこれらの細胞表面に結合し、長期間にわたって細胞表面に存在する。この状態が感作状態であり、同じ抗原がここに侵入するとその細胞表面で抗原抗体反応がおこり、それが刺激となって脱顆粒が起こり、ヒスタミン・セロトニンなどが遊離し、その作用により血管透過性の亢進、平滑筋の強い収縮などがおきる。その結果、くしゃみ、下痢、嘔吐、発疹、呼吸困難などの全身症状をおこし,死に至ることもある。これを全身性アナフィラキシー(アナフィラキシーショックanaphylaxie shock)という。皮膚で局所的に類似の反応がおこるが,その機構は同じである。
【0017】
したがって、過敏症(アレルギー反応)の治療、予防において、ヒスタミン遊離の抑制、IgE抗体産生の抑制、アナフィラキシー反応の抑制作用等は重要な役割を果たす。本発明のセンダングサ属植物の酵素処理物は、高いヒスタミン遊離抑制、IgE抗体産生抑制及びアナフィラキシー反応抑制を示す。以下、本発明のセンダングサ属植物の酵素処理物の薬理作用について説明する。
【0018】
ヒスタミン遊離抑制作用
ラットの腹水から単離した肥満細胞を用いてヒスタミンを遊離させる。この肥満細胞を本発明のセンダングサ属植物の酵素処理物で処理してヒスタミン遊離量を測定することにより、肥満細胞からのヒスタミン遊離抑制作用を測定することができる。本発明のセンダングサ属植物の酵素処理物は、公知の抗ヒスタミン剤であるケトチフェンと比較してもほぼ同等のヒスタミン遊離抑制作用を示した(表1)。ヒスタミンは過敏症(アレルギー反応)を直接引き起こす化学物質であり、その放出を抑制できることは非常に有利である。
【0019】
IgE抗体産生抑制作用
マウスに抗原としてDNP−アスカリス(5μg)を腹腔内に投与した後、本発明のセンダングサ属植物の酵素処理物を投与してDNP−アスカリスに対するIgE抗体の産生率を測定することにより、IgE産生能を測定することができる。本発明のセンダングサ属植物の酵素処理物は、酵素処理物の代わりにCMC-Naを投与したコントロールに対して有意にIgE抗体の産生を抑制した(図1)。IgE抗体のほとんどは速やかに受容体を介して肥満細胞等の表面に結合し,同じ抗原が侵入すると細胞表面で抗原抗体反応がおこり,それが刺激となって脱顆粒が起こり、アレルギー反応が生じる。したがってIgE抗体産生を抑制できることは非常に有利である。
【0020】
ヒスタミン致死抑制作用
本発明のセンダングサ属植物の酵素処理物を投与したマウスに致死量のヒスタミンを静脈注射により投与したところ、高いヒスタミン致死抑制率を示した(表2)。この結果から、本発明のセンダングサ属植物の酵素処理物がヒスチジン受容体に対して何らかの作用を示していることが推測される。
【0021】
受動的皮膚アナフィラキシー抑制作用
本発明のセンダングサ属植物の酵素処理物を添加した飼料をラットに10日間与えた後、各ラットの背部に、抗DNP−アスカリス(抗血清)を皮下注射により投与し、その48時間後にDNP−アスカリス抗原とエバンスブルー色素を尾静脈内に注射して受動的皮膚アナフィラキシー反応(PCA反応)を惹起させた。生理食塩水(0.9%NaCl)を用いたコントロールに対し、本発明のセンダングサ属植物の酵素処理物は、受動的皮膚アナフィラキシー反応を有意に抑制した(図2)。
【0022】
起炎症物質による急性皮膚炎抑制作用
本発明のセンダングサ属植物の酵素処理物をCMC−Na溶液に懸濁してラットに経口投与し、その後、起炎物質(ヒスタミン、セロトニン、サブスタンスP)と色素(pontamin sky blue)を投与した。1時間後、投与部位に漏出した色素を抽出して比色定量した。本発明のセンダングサ属植物の酵素処理物は、ヒスタミン、セロトニン、サブスタンスPで惹起された炎症を有意に抑制した(図3)。
【0023】
上記結果から本発明のセンダングサ属植物の酵素処理物は、抗ヒスタミン剤、抗アナフィラキシー剤または皮膚炎治療用または予防用医薬組成物としての効果が明らかである。
本発明の抗ヒスタミン剤、抗アナフィラキシー剤または皮膚炎治療用または予防用医薬組成物中におけるセンダングサ属植物の酵素処理物の含有量は、乾燥固形分重量として、0.01〜100質量%程度であることが好ましい。また、剤形等によっては、0.1〜10質量%含まれることが好ましい。また、活性の高い分画物を用いる場合にはその活性に応じた量を用いることができる。
また、抗ヒスタミン作用、抗アナフィラキシー作用、皮膚炎治療または予防作用等を期待して用いられる食品中におけるセンダングサ属植物の酵素処理物の含有量も上記抗ヒスタミン剤の場合に準じる。
ただし、外用剤の場合には、センダングサ属植物の酵素処理物を0.001質量%〜10質量%程度含有することが好ましい。
【0024】
本発明のセンダングサ属植物の酵素処理物を含む組成物は、アレルギー性疾患の治療または予防において用いることができる。アレルギー性疾患の例としては、皮膚炎、蕁麻疹、アナフィラキシー、鼻炎様症状等が挙げられる。
本発明のセンダングサ属植物の酵素処理物を含む抗ヒスタミン剤、抗アナフィラキシー剤及び皮膚炎治療用または予防用医薬組成物は、いずれの形態で用いてもよく、抽出液、または抽出物を水等で希釈または溶解した液状物として、または、粉末、錠剤等の固形物として経口投与してもよい。錠剤等に成型する場合には従来知られている担体、倍散剤、崩壊剤、滑沢剤等を用いることができる。
【0025】
抗ヒスタミン剤として用いる場合、成人について一日あたり、センダングサ属植物の酵素処理物(乾燥固形分)に換算して0.001〜1g/kg(体重)程度投与することが好ましい。
抗アナフィラキシー剤として用いる場合、成人について一日あたり、センダングサ属植物の酵素処理物(乾燥固形分)に換算して0.001〜1g/kg(体重)程度投与することが好ましい。
皮膚炎治療用または予防用医薬組成物として用いる場合、成人について一日あたり、センダングサ属植物の酵素処理物(乾燥固形分)に換算して0.001〜1g/kg(体重)程度投与することが好ましい。
【0026】
本発明のセンダングサ属植物の酵素処理物を含む食品は、いずれの形態で用いてもよく、抽出液、または抽出物を水等で希釈または溶解した液状物として、または、粉末、錠剤等の固形物として食してもよい。
食品として用いる場合、成人について一日あたり、センダングサ属植物の酵素処理物(乾燥固形分)に換算して0.001〜1g/kg(体重)程度摂取することが好ましい。
【実施例】
【0027】
以下に本発明の実施例について述べる。
製造例
<酵素処理物の調製>
ビデンス・ピローサ(Bidens pilosa L. var. radiate Sch)の加工乾燥物(特開2001−178390の方法により加工した乾燥物)100kgを1800Lの熱水に2時間浸漬後、pH4.5、50℃に調整してセルラーゼ(阪急バイオインダストリー(株)のセルロシンAC−40)とペクチナーゼ(セルロシンPE−60)各200gを添加して攪拌後、一夜置いた。その後、90℃で1時間加熱して酵素を失活させ、濾過して固形物を除去し、濾液を減圧濃縮し、噴霧乾燥した。得られた乾燥物は40kgであった。下記実験において、上記酵素処理工程のみを省いて得られた抽出乾燥物(コントロール、“MMBP”と呼ぶ)と、上記酵素処理物(“e-MMBP”と呼ぶ)を用いた。
【0028】
実施例1
<ヒスタミン遊離抑制作用の測定>
7週齢のWistar/ST雄性ラットの腹膜肥満細胞をフィコール密度勾配遠心法により採取した。各肥満細胞を、PBSバッファー(pH7.4)に溶解したMMBP(3.3mg/ml)、eMMBP(3.3mg/ml)、またはケトチフェン(83.3μg/ml)を30分作用させ、肥満細胞5×105cell/mlに対して化合物48/80(CP)(0.3μg/ml)によってヒスタミン遊離反応を誘発し、10分後にELISA測定キットでヒスタミン量を測定した。また、肥満細胞2×106cell/mlに対してDNP−アスカリス抗体(33μg/ml)を作用させた後、1時間後に、DNP−アスカリス抗原(33μg/ml)とPBSバッファー(pH7.4)に溶解したMMBP(3.3mg/ml)、eMMBP(3.3mg/ml)、またはケトチフェン(83.3μg/ml)を添加し、10分後にELISA測定キットでヒスタミン量を測定した。
(“生物薬科学実験講座第12巻、炎症とアレルギーII”、大内和雄編集、廣川書店、371-386(1993)参照。)
これらの結果を表1に示す。
表1

*:MMBPは完全に溶解しない部分があったため、水溶液上清を使用した。
上記表から明らかなように、本発明のeMMBPは強いヒスタミン遊離抑制作用を示した。
【0029】
実施例2
<IgE産生抑制作用の測定>
7週齢のBALB/c雄性マウス(各群6匹)に抗原としてDNP−アスカリス(5μg)を腹腔内に投与し、投与した日から0.5g/kgのeMMBPを0.25%CMC-Naに懸濁したものを、5日間にわたり毎日1回経口投与した。eMMBPの代わりにCMC-Naを使用したものをコントロールとし、eMMBPの代わりにMMBP(0.5g/kg×5回)、シクロホスファミド(20mg/kg×5回)を使用したものを比較として用いた。また、DNP−アスカリスを投与しないものを正常群として用いた。
DNP−アスカリスを投与してから10日後に血清を採取し、ELISA測定キットで、抗DNP−アスカリス抗体(IgE)の産生量を測定した。結果を図1に示す。
図1から明らかなように、eMMBPはコントロール群に対して有意にIgE産生を抑制し、その抑制量は、MMBP及びシクロホスファミドとほぼ同程度であった。
【0030】
実施例3
<ヒスタミン致死抑制作用の測定>
18〜20gのddYマウス(各群12〜13匹)にeMMBP(0.5g/kg)を0.25%CMC-Naに懸濁して経口投与した後、1時間後にヒスタミン700mg/kgを静脈注射により投与した。ヒスタミン投与2時間までの致死率を測定した。eMMBPの代わりにMMBP(0.5g/kg)を使用したものを比較とし、eMMBPに代わるものを何も投与しなかったものをコントロールとした。結果を表2に示す。



表2

上記表から明らかなように、eMMBPは明らかにヒスタミン致死を抑制し、MMBPと同等の効果を示した。
【0031】
実施例4
<受動的皮膚アナフィラキシー抑制作用の測定>
7週齢のWistar/ST雄性ラット(各群6匹)に、eMMBP(0.5g/kg)を添加した飼料を10日間与えた。その後、各ラットの背部に、抗DNP−アスカリス(抗血清)0.1mL/(部位面積4cm2)を皮下注射により投与して受動的感作を行った。その48時間後にDNP−アスカリス抗原とエバンスブルー色素を尾静脈内に注射して受動的皮膚アナフィラキシー反応(PCA反応)を惹起させた。30分後に、投与部位から漏出した色素をアセトン抽出液で抽出して比色定量した。eMMBPの代わりにMMBP(0.5g/kg)を用いたものを比較とし、生理食塩水(0.9%NaCl)を用いたものをコントロールとした。結果を図2に示す。
図2から明らかなようにeMMBPは、受動的皮膚アナフィラキシー反応を有意に抑制した。
【0032】
実施例5
<起炎症物質による急性皮膚炎抑制作用の測定>
7週齢のWistar/ST雄性ラット(各群6匹)に、eMMBP(0.5g/kg)を0.25%CMC−Na溶液に懸濁して経口投与した。1時間後、起炎物質(ヒスタミン、セロトニン、サブスタンスP、各0.1mL/(部位面積4cm2))を背部局所に皮下注射により投与した。すぐに色素(pontamin sky blue)を尾静注し、1時間後、投与部位に漏出した色素をアセトン抽出液で抽出して比色定量した。eMMBPの代わりにMMBP(0.5g/kg)及びケトチフェン(5mg/kg)を用いたものを比較とし、生理食塩水(0.9%NaCl)を用いたものをコントロールとした。結果を図3に示す。
図3から明らかなように、eMMBPは、ヒスタミン、セロトニン、サブスタンスPで惹起された炎症を有意に抑制した。特にヒスタミン及びセロトニンにより惹起された炎症について、MMBPと同等以上の皮膚炎抑制作用を示した。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明のセンダングサ属植物の酵素処理物のIgE産生抑制作用を示すグラフである。
【図2】本発明のセンダングサ属植物の酵素処理物の受動的皮膚アナフィラキシー抑制作用を示すグラフである。
【図3】本発明のセンダングサ属植物の酵素処理物の起炎症物質による急性皮膚炎抑制作用を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センダングサ属植物の酵素処理物を含む抗ヒスタミン剤。
【請求項2】
酵素が多糖類加水分解酵素からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1記載の抗ヒスタミン剤。
【請求項3】
酵素がセルラーゼ及びペクチナーゼである、請求項1または2記載の抗ヒスタミン剤。
【請求項4】
センダングサ属植物の酵素処理物を含む抗アナフィラキシー剤。
【請求項5】
酵素が多糖類加水分解酵素からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項4記載の抑制剤。
【請求項6】
酵素がセルラーゼ及びペクチナーゼである、請求項4または5記載の抑制剤。
【請求項7】
センダングサ属植物の酵素処理物を含む皮膚炎治療用または予防用医薬組成物。
【請求項8】
酵素が多糖類加水分解酵素からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項7記載の医薬組成物。
【請求項9】
酵素がセルラーゼ及びペクチナーゼである、請求項7または8記載の医薬組成物。
【請求項10】
センダングサ属植物の酵素処理物を含む食品。
【請求項11】
酵素が多糖類加水分解酵素からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項10記載の食品。
【請求項12】
酵素がセルラーゼ及びペクチナーゼである、請求項10または11記載の食品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−197380(P2007−197380A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−19153(P2006−19153)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(591035391)株式会社武蔵野免疫研究所 (10)
【Fターム(参考)】