説明

ゼオライトのインサイチュ結晶化で生じさせたFCC触媒

メタカオリンと含水カオリンを含んで成る反応性微小球からアルミノケイ酸塩ゼオライトをインサイチュで結晶化させることによって高い間隙率を有する流動接触分解触媒を生じさせる。前記反応性微小球をゼオライト形成用溶液と反応させる前にそれに受けさせる如何なる焼成も低温で実施することで前記含水カオリンがメタカオリンに変化しないことを確保する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、Y−ファウジャサイトゼオライト(Y−faujasite zeolite)を含有する微小球を含んで成っていて例外的に高い活性と他の望ましい特性を有する新規な流動接触分解触媒、前記触媒の製造方法そして前記触媒を石油原料の分解、特に短い滞留時間工程下の分解で用いることに関する。
【0002】
1960年代から大部分の商業的流動接触分解触媒にゼオライトを活性成分として入れることが行われてきている。そのように触媒は小さい粒子(微小球と呼ばれる)の形態を取っていて、活性のあるゼオライト成分と非ゼオライト成分の両方が入っている。そのような非ゼオライト系成分はしばしば当該触媒のゼオライト成分用マトリックス(matrix)と呼ばれる。そのような非ゼオライト系成分は当該触媒の触媒特性および物性の両方に関係する数多くの重要な機能を果たすことが知られている。そのような機能は下記の通りであると非特許文献1に記述された:
「マトリックスはシーブの中に存在するナトリウムの掃きだめとして働くことでマトリックス触媒の中のゼオライト粒子に安定性を加えると言われている。前記マトリックスは下記の追加的機能を果たす:ゼオライトを希釈する機能;それを熱および蒸気および機械的摩滅に対して安定にする機能;ゼオライトを最大能力で使用することができかつ再生を容易に行うことができるように高い間隙率を与える機能;そして最後に、再生および分解中の伝熱そして大規模な接触分解中の熱貯蔵にとって重要であるバルク特性(bulk properties)を与える機能。」
従来技術の流動接触分解触媒では、下記の2つの一般的技術の中の1つを用いて活性ゼオライト系成分を当該触媒の微小球の中に取り込ませている。1つの技術では、ゼオライト系成分を結晶化させた後に個別の段階で微小球の中に取り込ませる。2番目の技術、即ちインサイチュ技術では、最初に微小球を生じさせた後にゼオライト系成分を前記微小球自身の中で結晶化を起こさせることでゼオライト系成分と非ゼオライト系成分の両方を含有する微小球を生じさせる。
【0003】
流動接触分解触媒が商業的に成功であるにはそれが商業的に受け入れられる活性、選択性および安定性を示すべきであることは長年に渡って認識されてきている。それは経済的に魅力のある収率をもたらすに充分な活性を示すべきであり、それは所望の生成物をもたらして望まれない生成物をもたらさない方向に良好な選択性を示すべきであり、かつそれは商業的に有効な寿命を有するに充分なほど水熱的に安定で耐摩滅性を示すべきである。
【0004】
商業的接触分解工程にとって特に望まれない2種類の生成物はコークスと水素である。そのような生成物の生成がガソリンの収率に比べて少しでも増加すると有意な実際上の問題が起こり得る。例えば、コークスの生成量が増加すると当該触媒に再生を受けさせている時に起こる非常な発熱によってコークスが焼失することで発生する熱が望ましくなく高くなり得る。逆に、コークスの生成が不充分であるとまた分解工程の熱均衡が壊れる可能性もある。加うるに、商業的製油所では大量の気体、例えば水素などを取り扱う目的で高価な圧縮装置が用いられる。従って、水素の生成量が増加すると実質的に製油所の投資費用が増加する可能性がある。
【0005】
Y−ファウジャサイトを約40重量%以上、好適には50−70重量%含有する耐摩滅性で高ゼオライト含有量の触媒活性微小球を含んで成る新規な流動分解触媒および前記触媒の製造方法が特許文献1(これの教示は相互参照することによって本明細書に組み入れられる)に開示されており、そこでは、異なる2種類の形態の化学的反応性焼成カオリン、即ちメタカオリン(脱ヒドロキシルに伴う強力な吸熱反応を起こすような焼成を受けさせたカオリン)とカオリンをメタカオリンに変化させる目的で用いられる条件より苛酷な条件下で焼成を受けさせたカオリン、即ち特徴的なカオリン発熱反応を起こすような焼成を受けさせたカオリン(時にはスピネル形態の焼成カオリンと呼ばれる)の混合物で構成させた多孔質微小球の中に入っているナトリウムYゼオライトの約40%以上を結晶化させている。好適な態様では、前記2形態の焼成カオリンを含有する微小球をアルカリ性ケイ酸ナトリウム溶液の中に浸漬して、それを加熱、好適には前記微小球の中で最大限入手可能な量のY−ファウジャサイトが結晶化するまで加熱する。
【0006】
特許文献1の技術を実施する時、ゼオライトを中で結晶化させる多孔質微小球の調製を、好適には、粉末にした生(水和)カオリン(Al:2SiO:2HO)と粉末にした焼成カオリン(発熱を起こした)を少量のケイ酸ナトリウム[これはスラリー用の流動化剤として働き、これを微小球を生じさせる噴霧乾燥器に仕込むと、それは後で噴霧乾燥微小球の成分に物理的一体性を与える機能を果たす]と一緒にして水性スラリーを生じさせることを通して実施している。次に、その噴霧乾燥微小球(これは水和カオリンと発熱を起こすような焼成を受けたカオリンの混合物を含有する)に焼成を制御した条件、即ちカオリンが発熱を起こすに必要な条件より苛酷ではない条件下で受けさせることで、前記微小球の水和カオリン部分に脱水を受けさせかつそれをメタカオリンに変化させており、その結果として、メタカオリンと発熱を起こす焼成を受けたカオリンとケイ酸ナトリウムである結合剤の所望混合物を含有する微小球を生じさせている。特許文献1の典型的な実施例では、噴霧乾燥器供給材料の中に水和カオリンとスピネルをほぼ等しい重量で存在させており、前記の結果として焼成を受けた微小球は、発熱を起こしたカオリンをメタカオリンよりいくらか多い量で含有する。特許文献1には、前記焼成を受けた微小球はメタカオリンを約30−60重量%と特徴的な発熱を経たことを特徴とするカオリンを約40−70重量%含有することを教示している。特許文献1に記述されているあまり好適ではない方法は、メタカオリン状態になるように前以て焼成を受けさせておいたカオリンと発熱を起こす焼成を受けさせておいたカオリンの混合物が入っていて水和カオリンが全く入っていないスラリーに噴霧乾燥を受けさせることを伴い、従って、メタカオリンと発熱を起こす焼成を受けたカオリンの両方を含有する微小球を水和カオリンをメタカオリンに変化させる焼成を伴わせないで直接生じさせている。
【0007】
特許文献1に記述されている発明を実施する時、発熱を起こす焼成を受けたカオリンとメタカオリンで構成されている微小球と苛性が豊富なケイ酸ナトリウム溶液を結晶化開始剤(種晶)の存在下で反応させることで前記微小球の中のシリカおよびアルミナを合成ナトリウムファウジャサイト(ゼオライトY)に変化させる。前記微小球をケイ酸ナトリウム母液から分離し、それに希土類、アンモニウムイオンまたは両方によるイオン交換を受けさせることで、希土類またはいろいろな公知安定化形態の触媒を生じさせる。特許文献1の技術は、高い活性、良好な選択性および熱安定性に関係する高いゼオライト含有量ばかりでなく耐摩滅性のユニークな望ましい組み合わせを達成する手段を提供する技術である。
【0008】
上述した技術は広範囲に及ぶ商業的効果を満足させた。現時点で、製油所は、ゼオライト含有量が高いことに加えてまた耐摩滅性も示す微小球を入手することができるようになったことから、特殊な性能目標、例えば高価な機械的再設計を被ることなく活性および/または選択性を向上させると言った目標に合わせて設計した触媒を利用することができるようになった。国内および海外の製油所に現在供給されているFCC触媒の大部分はそのような技術が基になっている。再生装置の最大許容温度または送風機の容量が原因でFCC装置が制限されている製油所は、結果としてコークス生成量の低下をもたらす選択性の向上を探求すると同時に気体圧縮装置が制限されている場合には気体生成量が低い触媒を非常に望んでいる。一見して、送風機または再生装置の温度が制限されている場合にはコークス量が少しでも減少するとそれはFCC装置の操作にとって有意な経済的利点に相当する可能性がある。
【0009】
分解活性の向上と分解触媒のガソリン選択性は必ずしも関連するとは限らない。このように、分解触媒は卓越して高い分解活性を示し得るが、そのような活性の結果としてコークスおよび/または気体への変換が高い度合で起こってガソリンが犠牲になると、そのような触媒は有用性が制限されるであろう。今日のFCC触媒が示す接触分解活性はゼオライト成分と非ゼオライト(例えばマトリックス)成分の両方に起因し得る。ゼオライトによる分解はガソリン選択的である傾向がある。マトリックスによる分解はあまりガソリン選択的ではない傾向がある。特許文献1に記述されているインサイチュ手順で生じさせた高ゼオライト含有量の微小球に希土類カチオンによるイオン交換処置を適切に受けさせるとそれは高い活性と高いガソリン選択性の両方を示すようになる。そのような混合されていない微小球のゼオライト含有量を高くすると活性と選択性の両方が高くなる傾向がある。このことは、ゼオライト含有量が高くなるに伴ってマトリックス含有量が低くなりかつマトリックスによる非選択的分解の役割が徐々に主流でなくなることで説明可能である。従って、ゼオライト含有量が高い微小球のゼオライト含有量を高くするのが非常に望ましいと報告されている。
【0010】
触媒を特許文献1の方法で生じさせるとそのような活性および選択性が達成されはするが、そのような触媒は、ゼオライト内容物を個々のマトリックスの中に取り込ませることによって作られた流動接触分解触媒に比べて、一般に、全間隙率が比較的低い。特に、そのような触媒の微小球が示す全間隙率はある場合には約0.15cc/g未満であり、或は約0.10cc/g未満でさえある。特許文献1の微小球が示す全間隙率は一般に0.30cc/g未満である。本明細書で用いる如き「全間隙率」は、水銀ポロシメータ技術で測定した時に直径が35−20,000Åの範囲内の孔の体積を意味する。特許文献1には、全間隙率が約0.15cc/g未満の微小球がそのような測定活性および選択性を示すことは驚くべきことであると述べられている。例えば、そのような結果は、細孔容積が小さいと「拡散制限が理由で選択性の損失がもたらされる可能性がある」と言った従来技術の開示とは対照的である。
【0011】
特許文献1と同様にして生じさせた触媒微小球が示す間隙率が比較的低くても活性および選択性には悪影響が生じないと信じられている、と言うのは、特許文献1の微小球は特許文献1の時点で用いられた典型的なFCC工程条件に関しては拡散が制限されないからである。特に、分解を受けさせるべき供給材料と触媒が接触する時間は典型的に5秒以上である。このように、ゼオライトをマトリックスの中に物理的に取り込ませることによって生じさせた典型的なFCC触媒の方が間隙率が高い可能性はあるが、従来技術のFCCライザーの中の反応時間では、活性に関しても選択性に関しても全く利点をもたらさなかった。そのような結果によって、FCC触媒では移動プロセスが全く制限されない、少なくともゼオライト構造物の外側では制限されないと言った結論がもたらされた。その逆の主張は事実と一致せずかつ独善的であるとして容易に退けられた。重要なことは、特許文献1に従って作られた微小球が示す耐摩滅性の方が通常のFCC触媒(結晶化させたゼオライト触媒成分を非ゼオライト系マトリックスの中に物理的に取り込ませた触媒である)より優れていることである。
【0012】
しかしながら、最近になって、分解を受けさせるべき供給材料と触媒の間の接触時間が劇的に短いFCC装置が開発された。そのような反応槽は通常はライザーであり、その場合には、触媒と炭化水素原料がライザーの下部から入ってライザーを通って移動する。そのライザーの中を通っている間に熱せられた触媒が炭化水素を分解させそしてその分解生成物は前記ライザーから出た時点で前記触媒から分離される。その後、その触媒を再生装置に送ってコークスを除去することで前記触媒を奇麗にすると同時に前記触媒がライザー反応槽の中で要求する熱を与える。より最新のライザー反応槽は、コークス選択性とデルタコークス(delta coke)が最小限になるように、より短い滞留時間およびより高い操作温度で操作される。そのようなデザインのいくつかはライザーさえも用いておらず、それによって、接触時間が1秒未満にまで更に短くなっている。そのようにハードウエアを変えることで結果としてガソリンおよび乾燥気体の選択性を向上させることができる。そのようなFCC装置改造品は購入する触媒の種類とは関係なく価値が有るとして市販されており、このことは、最新の触媒技術には装置的な問題が存在しないことを暗示している。
【0013】
FCC型の工程で処理される供給材料は益々重質になってきておりかつそのような供給材料はコークスの生成量を多くしかつ望ましくない生成物をもたらす傾向があることから、また、そのような供給材料を触媒と接触させる新規な方法ももたらされた。接触させるFCC触媒の接触時間を非常に短くする方法に特に興味が持たれている。このように、ライザーの中の接触時間を短くして3秒未満にしそして1秒以内の極めて短い接触時間にするとガソリンをもたらす選択率が向上すると同時にコークスおよび乾燥気体生成量が低下することが分かった。
【0014】
FCC工程では触媒と油の接触時間が短くなり続けていることを補う目的で、使用時の「平衡状態」の触媒の活性をより高くしようとする傾向がある。従って、触媒が有する全表面積の増大を達成する必要がありかつ同様に触媒に添加する希土類酸化物助触媒の濃度を高くしてきている。その上、変換率の低下を補う目的で分解温度も高くしてきている。不幸なことに、装置改造後に短い接触時間(SCT)で生じた釜残が示すAPI重力がしばしば高くなることが確認され、その結果として、ある人は炭化水素原料に含まれる最も重い部分の分解の方がより長い時間を要すると考えるようになった。その上、触媒が有する全表面積を高くすることは価値有ることではあるが、それでも、FCC工程にとって耐摩滅性は価値の有ることである。従って、本技術分野に関与している技術者に明らかではないかもしれないが、現在用いられようとしている新規な短い接触時間および極めて短い接触時間の工程に適するようにFCC触媒を最適にする必要性が生じて来る可能性が大きくなってきている。
【0015】
ここに、炭化水素を短い接触時間で処理しようとする時には現在の触媒にまだ存在し得る拡散限界をなくすことでさらなる向上を得ることができると理論付けする。前記用途では前記材料が優れているとしてもそのように結論付ける。触媒の間隙率を最適にしかつ活性部位の閉塞をなくしかついわゆる取り込み方法で作られた触媒に存在する結合剤相が示す拡散制限をなくすことでそのような触媒の改良をもたらすことができると理論付けする。
【0016】
本譲受人は噴霧乾燥微小球ゼオライト前駆体のマクロ間隙率(macroporosity)を高くすることでゼオライト含有量が高くかつ活性が高いゼオライト微小球をもたらしはしたが、その生じさせたゼオライト微小球触媒が示す間隙率は以前には問題であると見なされていなかった、と言うのは、以前のFCC工程技術の下では拡散限界が存在していなかったからである。例えば、高い間隙率を有する前駆体微小球を生じさせることによってインサイチュ触媒のゼオライト含有量を高くすることで多孔質マトリックスの中で成長するゼオライトの量を多くすることができることが特許文献2に開示されている。スピネル焼成カオリンと一緒に大型(2ミクロン以上)のカオリン堆積物が主要量で存在することを特徴とする含水カオリンのスラリーに噴霧乾燥を受けさせることでそのように間隙率が高い前駆体微小球を生じさせている。そのような粗い含水カオリンに噴霧乾燥を受けさせると、結果として、ゼオライトYが中で成長することができるマクロ孔の含有量が所望通り高い微小球がもたらされる。特許文献3でもまた同様に含水カオリンとメタカオリンとスピネルの混合物に噴霧乾燥を受けさせることで前駆体微小球のマクロ間隙率を大きくしている。そのような触媒微小球はゼオライトを実質的な濃度で有しかつ活性および選択性が非常に高い。その上、そのような触媒に含まれる高アルミナのシリカ−アルミナマトリックス部分はしばしば全体がインサイチュで生じたゼオライトで取り巻かれており、その結果として、そのようなマトリックスは接触時間が短いFCC条件下では釜残を分解させる度合が低いと今では理解されている。
【0017】
新規なゼオライト微小球が特許文献4に開示されている。そのようなゼオライト微小球はマクロ多孔性であり、ゼオライトを活性が非常に高くなるに充分な濃度で有しかつSCT FCC工程下で炭化水素から分解で生じるガソリン生成物への有効な変換を向上した釜残分解率を伴って達成するユニークな形態を有する。そのような新規なゼオライト微小球は、特許文献1に記述されている技術の修飾形である新規な方法を用いて製造されたものである。その触媒に含まれるアルミナが豊富な非ゼオライトマトリックスが、微粉砕および発熱を経る焼成を受けていて含水カオリンの90重量%が2ミクロン未満であるような粒子サイズを有する超微細な含水カオリン源から生じさせたものであると、マクロ多孔性のゼオライト微小球が生じ得ることが確認された。より一般的には、FCC触媒のマクロ間隙率を達成するに有用なFCC触媒マトリックスはアルミナ源、例えば発熱を経る焼成を受けたカオリン(これは触媒マトリックスを生じさせる目的で用いられる従来技術の焼成カオリンから区別される特定の指定水細孔容積を有する)などから生じたマトリックスである。前記水細孔容積はインシピエントスラリー点(Incipient Slury Point)(ISP)試験(本出願に記述する)を用いて得た細孔容積である。
【0018】
その生じた微小球触媒の形態は以前に作られたインサイチュ微小球触媒に比べてユニークである。発熱を経る焼成と粉砕を受けさせた超微細な含水カオリンを用いるとマクロ多孔性構造を有するインサイチュゼオライト微小球がもたらされるが、前記構造のマクロ孔は結晶化後に本質的にゼオライトで覆われているか或は内張りされている。本明細書で定義する如きマクロ多孔性は、当該触媒が有する600−20,000Åの範囲内の孔のマクロ孔体積が少なくとも0.07cc/gの水銀侵入であることを意味する。そのような新規な触媒はFCC工程に最適であり、そのような工程には、炭化水素原料を触媒に接触させる時間が約3秒以内である接触時間が短い工程が含まれる。
【0019】
最も幅広い意味において、特許文献4に開示されている如き発明は、カオリン単独に由来する非ゼオライトマトリックスを有するマクロ多孔性触媒に限定されるものでない。このように、ゼオライト合成中に適切な間隙率と適切な反応性の組み合わせを有しかつ触媒に望まれるマクロ間隙率および形態をもたらし得る如何なるアルミナ源も使用可能である。所望形態は触媒全体に渡って良好に分散しているマトリックスを含んで成りそして前記マトリックスのマクロ孔の壁がゼオライトで内張りされていて結合剤の被膜を実質的に含まない。従って、以前の触媒に比べて大きく改良されたのは、触媒が有する孔の表面積が大きいことばかりでなく、活性のあるマトリックスが微小球全体に渡って分散していることで、炭化水素原料がゼオライトの結晶に容易に近づける点にある。如何なる実施理論によっても範囲が限定されることを望むものでないが、ゼオライトを物理的混合でマトリックスの中に取り込ませそして結合剤で糊付けした以前の触媒は充分なマクロ間隙率を持つとしても前記結合剤が活性ゼオライト触媒を覆うことでそれへの接近を妨げていると思われる。前記新規な微小球触媒は、そのようなマクロ間隙率およびマトリックスの分散が向上していることが理由で、この触媒の中に迅速に拡散することを可能にする形態を有し、かつ更に、ゼオライトが孔の壁を自由に覆っていることからゼオライトへの接近が最大である。用語「自由に」は、ゼオライト相がマトリックスの表面に存在しかつ如何なる結合剤相によっても遮られていないことを意味する。その得た結果は単にマクロ間隙率だけではもたらされない、と言うのは、通常の取り込み型触媒も同様なマクロ間隙率を有するからである。従って、そのような驚くべき選択率の結果は間隙率とマクロ孔の壁がゼオライトで被覆されていることの組み合わせによってもたらされたものである。
【0020】
見出したように重質炭化水素原料(この分子は、しばしば一般的ではないとしても、ゼオライトの孔の中に入り込むことができないほど大きい)がマトリックスと接触する前に前記原料がゼオライトと接触するのが最適であることは予想外であった。実際、広く受け入れられている「段階的分解」理論はその逆、即ち大きい方の炭化水素分子が最初に活性のあるマトリックスによって分解を受けた後に生じたより小さい分子がゼオライト内で分解を受けることを示唆している。そのように気づいた考えの探求または裏付けで多くの研究および宣伝活動を行ってきた。
【0021】
この上に開示した如きマクロ多孔性インサイチュ生成ゼオライト微小球が成功したことを考慮すると、マトリックスが触媒全体に渡って分散しておりかつゼオライト触媒が結合剤被膜を含有しないことで炭化水素原料が容易に近づくことができる新規なマクロ多孔性ゼオライト触媒を見つけだす必要性が継続して存在する。そのような触媒を生じさせる他の方法を見つけだす必要性も同様に存在する。従って、本発明の目的は、マトリックスがゼオライトで被覆されている形態を有していて耐摩滅性で高間隙率の触媒である触媒を再現可能様式で製造するに適した新規な方法を提供しかつそのような特性を有する新規な触媒を提供することにある。
【特許文献1】米国特許第4,493,902号
【特許文献2】共通譲渡されたSperonello他の米国特許第4,965,233号
【特許文献3】共通譲渡されたDight他の米国特許第5,023,220号
【特許文献4】2001年9月20日付けで出願した共通譲渡で同時係属中の米国連続番号09/956,250
【非特許文献1】A.G.Oblad、Molecular Sieve Cracking Catalysts、The Oil And Gas Journal、70、84(1972年3月27日)
【発明の開示】
【0022】
(発明の要約)
本発明に従い、反応性メタカオリンと不活性な含水カオリンを含有する前駆体である反応性微小球を生じさせることを通して、新規なマクロ多孔性インサイチュ生成ゼオライト触媒を生じさせる。前記微小球をアルカリ性シリケート溶液と反応させることでゼオライト触媒を生じさせる。前記含水カオリンをマトリックス前駆体として存在させると上述した同時係属中の出願である米国連続番号09/956,250に開示したマクロ多孔構造に似かよったマクロ多孔構造がもたらされることを見いだした。前記同時係属中の出願では、焼成を受けさせた超微細な含水カオリンをマトリックス前駆体として用いてそのようなマクロ多孔性構造を達成している。本発明の触媒は、金属不動態化に有用であることを確認した焼成ベーマイトアルミナばかりでなく、また、ある程度ではあるが、特徴的な発熱を経る焼成を受けたカオリンに由来するマトリックスも含有している可能性がある。
【0023】
本発明の新規な触媒を生じさせる方法では、メタカオリンと含水カオリンとシリケートである結合剤に噴霧乾燥を受けさせることで前駆体である反応性微小球を生じさせる。その噴霧乾燥を受けさせたままの微小球に焼成を含水カオリンからメタカオリンへの吸熱変換が起こらないような低い温度の焼成で受けさせると前記含水カオリンが不活性な成分として保持される。その不活性な含水カオリンが苛性結晶化条件下で消費されることはない。前記メタカオリンは結晶化で反応性シリカとアルミナをもたらしかつまた噴霧乾燥微小球の中に大きな細孔容積が存在することも可能にする。充分なマクロ間隙率がもたらされるようにメタカオリンの量、より一般的には、ゼオライトの結晶化で利用される可溶アルミナの量を制限することで結晶化中に生じるゼオライトの量を制限する。
(発明の詳細な説明)
水和カオリンとメタカオリンと結合剤、例えばシリカゾルまたはケイ酸ナトリウムなどの供給材料混合物に噴霧乾燥を受けさせることで本発明の触媒を製造する。その噴霧乾燥微小球に場合により酸による中和を受けさせかつ洗浄を受けさせることでナトリウム含有量を低くしてもよい。その噴霧乾燥微小球に好適には後で焼成を受けさせることで前駆体である多孔質微小球を生じさせる。本発明で重要なことは、含水カオリン成分がメタカオリンに吸熱変化しないように焼成を低い方の温度で行うことで前記含水カオリンが不活性な成分として保持されるようにすることである。前記噴霧乾燥微小球に焼成を受けさせる時に用いる焼成温度は1000度F未満、好適には800度F未満であってもよい。
【0024】
その噴霧乾燥そして場合により焼成を受けさせた微小球に入っているメタカオリンの量は、ゼオライトの成長に利用される可溶アルミナを与えるような量である。前記噴霧乾燥微小球の中に存在するメタカオリンの量を、不活性物、例えば含水カオリンなどに関して制限することで、結晶化中に生じるゼオライトの量を制限する。前記反応性微小球中のメタカオリンの濃度が過剰であると、ゼオライトの濃度が高くなる可能性があり、それによって、本微小球の間隙率が望まれない低い度合にまで低下する可能性がある。従って、任意の焼成を受けさせた後の噴霧乾燥微小球が含有するメタカオリンの量が50重量%以下、好適には45重量%以下であるようにし、より好適には、それが30−40重量%の量で存在するようにする。
【0025】
使用する如何なる結合剤も含有するナトリウムは除去が容易なナトリウムのみであるべきであり、これをNaOとして表す。そのような栄養素(nutrients)をゼオライト結晶化工程に導入する目的で伝統的にシリカまたはシリケートである結合剤が用いられているが、その主な目的は、生微小球にこれが結晶化までの処理に耐えるに充分な機械的強度を与えることにある。従って、そのような役割を満足させる能力を有すると同時に本明細書に挙げる他の制限を妨害しない如何なる結合剤も妥当である。例えば、アルミニウムクロロヒドロールも有用であろう。
【0026】
実質的に米国特許第5,395,809号(これの教示は相互参照することによって本明細書に組み入れられる)に記述されているようにして、前記前駆体微小球をゼオライト種晶およびアルカリ性ケイ酸ナトリウム溶液と反応させる。前記微小球に結晶化を所望のゼオライト含有量(典型的には約40−75%)になるように受けさせ、濾過、洗浄、アンモニウム交換、必要ならば希土類カチオンによる交換、焼成、アンモニウムイオンによる2回目の交換そして必要ならば2回目の焼成を受けさせる。
【0027】
多孔質微小球が生じた後に場合により焼成を低温で受けさせて前駆体である反応性微小球を生じさせる目的で噴霧乾燥を受けさせるスラリーに入っている固体の特に好適な組成を本明細書の以下に示す表1に示し、それをメタカオリンと不活性物[水和カオリン、金属不動態化用焼成ベーマイトおよび発熱を経る焼成を受けたカオリン(スピネルまたはムライト)を包含](結合剤を除いた)を基準にした重量パーセントとして表し、SiO結合剤の重量%は、水分を含有しない噴霧乾燥微小球の総重量グラム当たりの当該結合剤に入っているSiOのグラムが基になっており、これはケイ酸ナトリウムによってもたらされたものである。その噴霧乾燥微小球の大きさは一般に約20から150ミクロンである。その噴霧乾燥微小球の大きさを好適には約50から100ミクロン、より好適には約65−90ミクロンの範囲にする。
【0028】
【表1】

【0029】
含水カオリンを前記スラリーに入れる不活性物として用いて、本触媒のアルミナ含有マトリックス前駆体として働かせる。従って、本ゼオライト触媒は、結晶化後、前記含水カオリンに由来するシリカ−アルミナマトリックスを含有するであろう。本触媒微小球のアルミナ含有マトリックス前駆体として用いる含水カオリンはあまり重要ではなく、幅広く多様な商業源から入手可能である。そのような含水カオリンは適切にはASP(商標)600またはASP(商標)400カオリンの中の一方または混合物のいずれであってもよく、それらは粗い白色カオリン原料から得られたカオリンである。また、粒径がより微細な含水カオリンを用いることも可能であり、それには、灰色粘土層から得られたカオリン、例えばLHT顔料などが含まれる。Middle Georgiaから得た精製水処理カオリンを成功裏に用いた。そのような含水カオリンの粒径によって微細球の間隙率が影響を受けることが一般的に知られていることから、ある程度ではあるが、含水カオリンの粒径を操作することで結晶化の結果として得る触媒のマクロ間隙率を操作することができる。例えば、本譲受人は含水カオリンが粗ければ粗いほど微小球の中のマクロ孔の容積が高くなることを示した。本発明は触媒のマクロ間隙率を変化させるいくつかのパラメーターを包含することから、含水カオリン粒径の選択には柔軟性がいくらかある。
【0030】
そのような含水カオリンに焼成を1200度Fの温度で受けさせると結果として含水カオリンの吸熱脱ヒドロキシルが起こってメタカオリンが生じ、それを供給材料であるスラリーのメタカオリン成分として用いることができる。
【0031】
結合剤としてのシリケートを好適にはNaOに対するSiOの比率が1.5から3.5のケイ酸ナトリウムで供給し、特に好適な比率は2.00から3.22である。
【0032】
本発明の触媒の中の非ゼオライト系のアルミナ含有マトリックスを、更に、粉砕そして発熱を経る焼成を受けさせた超微細粉末の形態の含水カオリン源からある程度生じさせることも可能である。典型的なゼオライト微小球は、本発明で用いる大きさよりも大きなカオリンがこれの特徴的な発熱を少なくとも実質的に経る焼成を受けることで生じたアルミナ含有マトリックスを伴うように生じさせたゼオライト微小球である。Satintone(商標)No.1(ムライトが実質的に全く生じないような特徴的な発熱を経る焼成を受けた市販カオリン)は、アルミナ含有マトリックスを生じさせる目的で商業ベースで用いられる材料である。Satintone(商標)No.1は、粒子の70%が2ミクロン未満の含水カオリンを用いて作られたものである。アルミナ含有マトリックスを生じさせる目的で用いられてきた他の源には、特徴的な発熱を少なくとも実質的に経る焼成を受けた微細な含水カオリン[例えばASP(商標)600、即ち表題が「Aluminum Silicate Pigments」(EC−1167)のEngelhard Technical Bulletin No.TI−1004に記述されている市販含水カオリン]が含まれる。ブックレットカオリン(Booklet kaolin)が最も普及して商業的に用いられていて世界規模で多大な効果を満たしている。この上に記述した米国連続番号09/956,250に開示された発明以前では、そのようなより大きなカオリン粒子が触媒微小球のアルミナ含有マトリックスを生じさせる時の最新技術に相当しておりかつ欠点を持たないと考えられていた。
【0033】
「超微細な」粉末が意味することは、Sedigraph(商標)(または沈降)で測定して含水カオリン粒子の少なくとも90重量%が直径が2ミクロ未満、好適には1ミクロ未満であるべきであることである。特に、粉砕そして特徴的な発熱を経る焼成を受けさせた後にそのような粒子サイズ分布を示す含水カオリン顔料を用いると、結果として、ゼオライト結晶化後の触媒微小球の中に含まれるマクロ孔の量が多くなることを確認した。その焼成を受けさせた超微細カオリンは緩く詰め込まれていること(loose packing)を見いだしたが、これは、個々の粒子が隣接する粒子に関して平行ではない様式で無作為に配列している「不安定な構造(house of cards)」に例えることができる。その上、その焼成を受けさせた超微細なカオリンは「不安定な構造」形態の多孔性凝集物として存在し、それによって多孔性凝集物がもたらされるばかりでなく凝集物間に追加的多孔性領域も存在する。そのような超微細含水カオリンの粉砕では、個々のカオリン小板の不規則な積み重ねがもたらされるように粉砕を行う必要がある。
【0034】
そのような粉砕を受けさせた超微細な含水カオリン(これを場合によりアルミナ含有マトリックスの一部を生じさせる目的で用いてもよい)に特徴的な発熱を経る焼成をムライトの生成有り無しで受けさせる。マクロ多孔性ゼオライト微小球をある程度生じさせる目的で本発明で使用可能な特に好適なマトリックス源はAnsilex(商標)93である。Ansilex(商標)93は、Fanselow他の米国特許第3,586,523号(これの内容は引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)に記述されているように、低摩滅性の顔料を生じさせる目的で硬質カオリン原料の微細な大きさの画分に噴霧乾燥、粉砕そして焼成を受けさせることで生じさせたものである。その超微細な含水マトリックス源に噴霧乾燥、粉砕に続く発熱を経る焼成(場合によりムライトが生じる)を受けさせる。上述した米国特許第4,493,902号には、カオリンに焼成をX線回折の強度が完全に結晶性の標準に匹敵するようになるまで受けさせることでムライトを生じさせることが開示されている。そのような超微細な含水カオリンに焼成をX線回折強度が前記’902特許に開示されているように完全に結晶性の標準に匹敵するように発熱を超えて受けさせることは本発明の範囲内であるが、そのような超微細な含水カオリンに特徴的な発熱を超える焼成を受けさせることで前記カオリンを結晶子サイズが小さいムライトに変化させる方が好適である。そのような結晶子サイズが小さいムライトは適切な回折線を示しかつ完全に結晶性のムライト標準の化学的組成を示したが、その結晶子の方が小さいことから回折線はより弱い。回折強度/線幅と結晶子の大きさの間の関係は良く知られている。カオリンに充分な焼成を受けさせてムライトを生じさせるには実際に過度の時間と温度を要することから、カオリンに焼成を発熱を超えて受けさせることで小さい結晶子のムライトマトリックスを生じさせる方が好適である。その上、カオリンに焼成を発熱を超えて受けさせて完全に結晶性のムライトを生じさせると結果として焼結が起こることでマクロ間隙率が失われる可能性もある。その上、カオリンに焼成を受けさせて完全に結晶性のムライトを生じさせるとかさ密度が実質的に高くなる可能性もある。従って、発熱を経る焼成を受けさせた超微細含水カオリンが示すX線回折積分ピーク面積が充分に結晶化したムライトを含有するカオリン標準サンプルが示すX線回折積分ピーク面積の20−80%であるようにする方が好適である。より好適には、前記超微細カオリンに発熱を経る焼成をそれが示すX線回折積分ピーク面積が充分に結晶化したムライトが示すX線回折積分ピーク面積の50−70%であるように受けさせる。
【0035】
Ansilex(商標)材料を用いることに関係した通常ではないことは、それが硬質カオリンから得られたものであることである。硬質カオリンは典型的に灰色の色合いまたは色を有し、従って、また「灰色粘土」とも呼ばれる。そのような硬質カオリンは、更に、粗い表面を有する不規則な形状の断片に分解することでも特徴付けられる。硬質カオリンは、また、鉄を有意な含有量で含有し、典型的にはFeを約0.6から1重量%含有する。硬質カオリン粘土はGrimの「Applied Clay Mineralogy」(1962、MaGraw Hill Book Company)の394−398頁(これの開示は引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されている。インサイチュFCC微小球触媒のアルミナ含有マトリックスの一部を生じさせる目的でそのような材料を用いることは米国連続番号09/956,250以前には知られていなかったが、それを組み込み型経路で用いることは充分に確立されている。硬質カオリンはまた時にはインサイチュ微小球のメタカオリン源としても用いられたが、利点を伴わなかった。如何なる理論でも範囲を限定することを望むものでないが、焼成を受けた灰色粘土がインサイチュマトリックス技術で以前に用いられたことは(a)それの鉄含有量が高いことでコークスおよび気体の生成がもたらされる可能性があること、および(b)それから生じさせたスラリーは膨張する性質を有することから明らかに工程時間が無意味に消費されかつ噴霧乾燥を受けさせるスラリーの粘度が高いことで粘度を下げて固体量を低下させるとコストが高くなることが理由で排除されたであろうと思われる。我々は、ここに、そのように膨張すると言った問題と多孔性の利点は本質的かつ基本的に関係していると考えている。その前者の観点に関して、コークスおよび気体を減少させることがインサイチュ触媒に特に求められる目的である、と言うのは、Hadenの元々の配合では非晶質マトリックスの活性のレベルを法外に高くすることでコークスと気体の釣り合いを取っていたからである。それによって、その後の発明では鉄とスピネルの濃度を益々低くしていった。鉄とコークスおよび気体選択性の間には結局全く関係がないと思われることを見いだしたことは驚くべきことである。実際、接触時間が短くなるように供給材料の注入を改良しかつライザーターミネーションデバイス(riser termination devices)を改良するような工程改善を行うことによってFCC乾燥気体およびコークスの実質的な改善が得られた。
【0036】
少なくともある程度ではあるが、間隙率が焼成材料詰め込み中に与えられたことでより一般的に特徴づけられるアルミナ含有材料からマトリックスを生じさせることも可能である。本発明の触媒のマトリックスの一部を最終的に生じさせる目的で使用可能な焼成アルミナ含有材料の細孔容積を測定する試験を開発した。この試験は、固体のサンプルからスラリーを生じさせる時に要する最低限の水量を測定することによって焼成アルミナ含有材料の水細孔容積を特徴づけるものである。この試験では、粉末サンプルを分散剤、例えばColloid 211(Viking Industries、アトランタ、GA)などが入っている水と一緒にカップに入れて撹拌棒またはスパチュラで混合する。水を乾燥したサンプルにその乾燥した粉末が膨張性泥の単一の塊(ちょうどこれ自身の重量下で流れ始める)に変化するにちょうどの量で加える。そのサンプルの重量と使用した水の量からインシピエントスラリー点(ISP)を計算する。このインシピエントスラリー点は下記の如く計算可能である:ISP=[(乾燥サンプルのグラム)/(乾燥サンプルのグラム+添加した水のグラム)]x100。その単位は無次元であり、パーセント固体として報告する。
【0037】
その水の量は当該サンプルの(内部)水細孔容積よりも多いが、明らかに、水細孔容積に関係している。インシピエントスラリー点のパーセント固体値が低いことは、当該サンプルの水吸収容量が高いか或は細孔容量が高いことを示している。その焼成を受けさせたアルミナ含有材料(少なくともある程度ではあるが、これを用いて本発明に従って高アルミナのマトリックスを生じさせることができる)が示すインシピエントスラリー点は57%固体未満、好適には48から52%固体である。それをSatintone(商標)No.1[これがインシピエントスラリー点試験でもたらす値は58%固体以上である]と比較する。
【0038】
従って、そのような超微細含水カオリンは本触媒微小球のマトリックスの一部を生じさせる目的で使用可能なアルミナ含有材料として有用であるばかりでなく、そのようなマトリックスを、また、ある程度ではあるが、薄い層に裂けるカオリン、小板であるアルミナおよび沈澱アルミナから生じさせることも可能である。カオリンのブックレットまたはスタック(stacks)を薄い層に裂く手段は本技術分野で良く知られている。粒状の研磨用媒体、例えば砂などまたは良く知られている如きガラスミクロバルーン(glass microballoons)を用いた方法が好適である。薄い層に裂いた後、その小板を粉砕することで不規則な詰め込みまたは「不安定な構造」形態を生じさせる。
【0039】
ISP試験仕様に合致するマトリックス前駆体の利点は、それによってもたらされるマトリックス表面積単位当たりの細孔容積がより高い点にある。それによって、触媒のコークス(細孔容積)および汚染物のコークス(マトリックスの表面積)の両方が最小限になることで触媒が示す効果が最大限になる。
【0040】
また、商業的に合成されたスピネルおよび/またはムライトからマトリックスをある程度生じさせることも本発明の範囲内である。このように、Okata他、「Characterization of spinel phase from SiO−Al xerogels and the formation process of mullite」、Journal of the American Ceramic Society、69[9]652−656(1986)(引用することによって内容全体が本明細書に組み入れられる)に、エタノールに溶解させたテトラエチオキシシランと硝酸アルミニウム九水化物に遅い加水分解または急速な加水分解を受けさせることで2種類のキセロゲルを生じさせることができることが開示されている。そのような遅い加水分解方法は前記混合物を60℃のオーブンの中で1から2週間かけてゲル化させることを伴う一方、急速な加水分解方法は水酸化アンモニウム溶液を前記混合物に添加した後に空気中で乾燥させることを伴う。前記遅い加水分解方法で生じさせたキセロゲルに焼成を受けさせると非晶質状態からムライトが直接結晶化する一方、前記急速加水分解で生じさせたキセロゲルの場合にはムライトが生じる前にスピネル相が結晶化した。そのような焼成を受けさせた合成材料が本発明の範囲内の水細孔容積を示す限り、本発明の触媒の高アルミナマトリックスを少なくともある程度生じさせる目的でそのような材料を用いることも可能である。
【0041】
混入している金属、例えばニッケルおよびバナジウムなどを不動態化させる目的で、前記触媒マトリックスに更に高分散性ベーマイトに由来するアルミナ源を含有させることも可能である。低い分散性を示すプソイドベーマイトおよびギブサイトの如き他のアルミナを用いることも可能ではあるが、あまり有効ではない。そのような水和アルミナが示す分散性は、当該アルミナが酸性媒体、例えばpHが約3.5未満の蟻酸などの中に有効に分散する特性である。そのような酸処理はアルミナに解膠を受けさせる処理として知られる。当該アルミナの90%以上が約1ミクロン未満の粒子に分散するならば、高い分散性である。
【0042】
結晶性ベーマイトばかりでなくガンマ−デルタアルミナ変換生成物が焼成後に示す表面積(BET、窒素)は150m/g未満、好適には125m/g未満、最も好適には100m/g未満、例えば30−80m/gである。
【0043】
下記は本発明の実施で使用可能な充分な解膠性と分散性を示す結晶性ベーマイトの典型的な特性である。
【0044】
【表2】

【0045】
そのような結晶性ベーマイトに解膠を受けさせる目的でモノプロトン酸、好適には蟻酸を用いてもよい。アルミナに解膠を受けさせる目的で使用可能な他の酸は硝酸および酢酸である。
【0046】
製造中、結晶性ベーマイトが本微小球に組み込まれる前にそれに焼成を受けさせておく。焼成の結果として前記結晶性ベーマイトが多孔質ガンマ相に変化しかつより低い度合ではあるがデルタアルミナに変化する。そのような材料が示すBET表面積の増加は僅かのみであり、例えば80m/gから100m/gに増加するのみである。焼成を受けさせてガンマ相に変化させたベーマイトを含水カオリンとメタカオリンと他のアルミナマトリックス成分が入っているスラリーに添加した後、それに噴霧乾燥を受けさせることで本微小球を生じさせる。ゼオライトが結晶化した後ではアルカリ性シリケート溶液によってガンマアルミナが本微小球から浸出することはないであろう。その分散しているアルミナの溶液に焼成を受けさせそしてカオリンおよび結合剤と一緒に噴霧乾燥を受けさせると、その結果として生じる微小球はこの微小球全体に渡って均一に分布しているガンマアルミナを含有する。
【0047】
その結晶化させた本発明のゼオライト微小球(触媒マトリックスが生じるように含水カオリンを用いて生じさせた)が示す細孔容積は、直径が40−20,000Åの範囲内で、好適には0.15cc/gのHg以上、より好適には0.25cc/gのHg以上、最も好適には0.30cc/gのHg以上である。より詳細には、本発明の触媒の大きさが600から20,000Åの範囲の孔の中のマクロ孔容積は少なくとも0.07cc/gのHg、好適には少なくとも0.10cc/gのHgである。通常のゼオライト組み込み型触媒が示すマクロ間隙率は本発明の触媒のそれに匹敵してはいるが、そのような組み込み型触媒は本発明の触媒が有する新規な「マトリックス上にゼオライトが存在する」形態も性能も持たない。本発明の触媒が示すBET表面積は500m/g未満、好適には475m/g未満、最も好適には約300−450m/gの範囲である。本発明の触媒が中程度の表面積を有することに加えてそのようなマクロ間隙率を示すことで、所望の活性とガソリンをもたらす選択性が達成されると同時に気体およびコークスの生成量も低い。
【0048】
本分野の技術者は、真に重要なことは蒸気による老化を受けた後の表面積および活性であることとそれらが有効細孔容積に対して均衡が取れていなければならにことを容易に理解するであろう。完成製品である(新鮮な)触媒に関して記述した好適な表面積は、1500度Fの蒸気処理を1気圧の蒸気圧力下で4時間受けさせた後の表面積が一般に300m/g未満であるように選択した表面積である。
【0049】
更に、本発明の触媒が示すマクロ間隙率はそのマトリックスの一部を焼成もしくは追加的粗アルミナ含有材料(この上に記述したISPで測定した時に低い水細孔容積を示す)から生じさせた場合でも保持されることを確認した。
【0050】
また、噴霧乾燥を受けさせる前の前記水性スラリーにゼオライト開始剤をある量(例えばカオリンの3から30重量%)で添加することも可能である。本明細書で用いる如き用語「ゼオライト開始剤」は、この開始剤を存在させないと起こらないであろうゼオライト結晶化過程を起こさせるか或はこの開始剤が存在しない時に起こるであろうゼオライト結晶化過程の時間を有意に短縮する材料(シリカとアルミナを含有する)のいずれも包含する。そのような材料はまた「ゼオライト種晶」としても知られる。そのようなゼオライト開始剤はx線回折で検出可能な結晶度を示すか或は示さない可能性もある。
【0051】
噴霧乾燥で微小球にする前の水性カオリンスラリーにゼオライト開始剤を添加することを本明細書では「内部種晶添加」と呼ぶ。別法として、カオリン微小球が生じた後であるが結晶化過程を開始する前にゼオライト開始剤をそれらと混合することも可能であり、そのような技術を本明細書では「外部種晶添加」と呼ぶ。
【0052】
本発明で用いるゼオライト開始剤はいろいろな源から供給可能である。例えば、そのようなゼオライト開始剤は結晶化過程自身中に生じた微細物を回収した物を含んで成っていてもよい。使用可能な他のゼオライト開始剤には、別のゼオライト生成物を結晶化させている過程中に生じた微細物、またはケイ酸ナトリウム溶液に入れた非晶質ゼオライト開始剤が含まれる。本明細書で用いる如き「非晶質ゼオライト開始剤」は、x線回折で検出可能な結晶度を示さないゼオライト開始剤を意味する。
【0053】
そのような種晶の調製は4,493,902に開示されている如く実施可能である。特に好適な種晶が4,631,262に開示されている。
【0054】
噴霧乾燥後の微小球に焼成を低温、例えばチャンバ温度が1000度F未満のマッフルファーネス内で2から4時間受けさせてもよい。焼成中に前記微小球の水和カオリン成分がメタカオリンに変化しないで含水カオリンのままでありかつ前記微小球の任意成分であるスピネルもガンマアルミナも本質的に変化しないままであることが重要である。別法として、ケイ酸ナトリウムである結合剤を用いて微小球を生じさせた場合には、本触媒に受けさせるイオン交換を向上させる目的で結晶化後の微小球に酸による中和を受けさせてもよい。この酸中和過程は、噴霧乾燥を受けさせたが焼成を受けさせていない微小球と鉱酸を制御したpHで撹拌しているスラリーに一緒に供給することを包含する。固体添加速度と酸添加速度を調整することでpHを約2から7、最も好適には約2.5から4.5に維持するが、目標のpHは約3である。ケイ酸ナトリウムである結合剤をゲル化させてシリカと可溶なナトリウム塩を生じさせた後、濾過しそして洗浄することで、それを本微小球から除去する。次に、そのシリカゲルと結合している微小球に焼成を低温で受けさせる。
【0055】
以下に詳細に考察するように前記カオリン微小球を適当量の他の成分(少なくともケイ酸ナトリウムおよび水を包含)と一緒に混合した後に結果として生じたスラリーを前記微小球の中でY−ファウジャサイトが結晶化するに充分な温度で充分な時間(例えば200−215度Fで10−24時間)加熱することで、Y−ファウジャサイトを結晶化させる。記述したように4,493,902の指示に従うことも可能である。しかしながら、以下に示す如く改良した相当する処方も示す。
【0056】
我々が用いる結晶化処方は、1組の仮定と特定の原料が基になった処方である。種晶は4,631,262に記述されている種晶であり、それを好適には外部で用いる。メタカオリンのSiO2、Al2O3およびNa2O成分、種晶、ケイ酸ナトリウム溶液、焼成ケイ酸ナトリウム結合剤およびシリカゲルは100%反応性であると仮定する。含水カオリンから生じたアルミナおよびシリカ−アルミナおよび焼成ベーマイトはそれぞれゼオライト合成に全く反応しないと仮定する。スピネル形態になるように発熱を経る焼成を受けたカオリンの中のアルミナおよびシリカはそれぞれ1%および90%反応性であると仮定する。この2つの値を用いるが、それらは正確ではないと考えている。ムライト形態になるように発熱を経る焼成を受けたカオリンの中のアルミナおよびシリカはそれぞれ0%および67%反応性であると仮定する。この2つの値は正確であると考えており、それらは、結晶化中のムライトの不活性度が3:2であることと遊離シリカ相が完全に溶解することを示している。メタカオリンアルミナが合成における律速反応体(limiting reagent)でありかつゼオライトの体積の方がメタカオリンの相当する体積よりもずっと大きいことから、微小球の細孔容積が決まっている時にはゼオライトの生成を適切に限定することが重要である。さもなければ、結晶化後に結果として細孔容積がほとんどか或は全く残存しなくなってしまうであろう。そのようなことは従来技術に当てはまる。他方、本技術分野で良く知られているように、律速反応体を本微小球の中でゼオライトが本触媒を適切に強化するに充分なほど成長するほどには入手することができない場合には追加的栄養素であるアルミナをメタカオリン微小球の形態で添加してもよい。このように、細孔容積および耐摩滅性に関して厳重な工程管理を行うことができる。
【0057】
そのような仮定を用いて、反応性成分に関して下記の重量比を全体的結晶化処方として用いる。不活性な成分をその比率には入れないが、但し種晶の用量の場合には、それを微小球総グラム数に対する種晶Al2O3のグラムの比率として定義する。
【0058】
【表3】

【0059】
結晶化用反応槽に添加する反応体であるケイ酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウムは多様な源に由来し得る。例えば、そのような反応体をN(商標)ブランドのケイ酸ナトリウムと水酸化ナトリウムの混合物の水溶液として供給してもよい。別の例として、ケイ酸ナトリウムの少なくとも一部を別のゼオライト含有生成物の結晶化中に生じた母液で供給することも可能である。
【0060】
結晶化工程が終了した後、Y−ファウジャサイトを含有する微小球を少なくともそれの母液の実質的な部分から例えば濾過で分離する。濾過段階中または後のいずれかの微小球を水と接触させることでそれを洗浄するのが望ましい可能性がある。そのような洗浄段階の目的は、本微小球の中に同伴されたままになる可能性がある母液を除去することにある。
【0061】
「シリカ保持(Silica Retention)」を実施してもよい。シリカ保持に関しては米国特許第4,493,902号のコラム12の3−31行に示されている教示を相互参照することによって本明細書に組み入れる。
【0062】
種晶を添加したケイ酸ナトリウム溶液の中で起こる反応で結晶化した後の微小球は、結晶性Y−ファウジャサイトをナトリウム形態で含有する。満足される触媒特性を示す製品を得ようとする場合には、その微小球の中に入っているナトリウムカチオンをより望ましいカチオンに置き換える必要がある。これは、前記微小球をアンモニウムもしくは希土類カチオンまたは両方が入っている溶液に接触させることで達成可能である。このようなイオン交換段階1段階または2段階以上を好適には結果として得る触媒が含有するNaOが約0.7重量%未満、最も好適には約0.5重量%未満、最も好適には約0.4重量%未満になるように実施する。イオン交換を受けさせた後の微小球を乾燥させることで本発明の微小球を得る。希土類(REO)が0重量%の触媒を製造しようとする時には、交換中に如何なる希土類塩も用いないでNHNOなどの如きアンモニウム塩のみを用いてNaカチオンと交換する。そのようにREOが0重量%の触媒は、特に、オクタン価がより高いガソリンおよびオレフィンがより多い生成物をもたらすFCC触媒として有益である。本発明の触媒の希土類バージョン、即ち結晶化後に希土類を高濃度で用いたイオン交換後処理を受けさせたバージョン、例えば前記’902特許に記述されている如き手順を用いた後処理を受けさせたバージョンは、例外的に高い活性が求められおりかつFCCガソリン製品のオクタン等級があまり重要でない時に有用である。希土類の濃度を0.1%から12%、通常は0.5%から7%(重量を基準)の範囲にすることを意図する。アンモニウム交換および希土類交換を受けさせた後の触媒に焼成を1100−1200度Fで1−2時間受けさせることで、Yゼオライトの単位格子の大きさを小さくする。そのような焼成を好適には遊離水分が25%存在するように蓋を付けたトレーの中で実施する。
【0063】
本発明の好適な触媒は、結晶化したままのナトリウムファウジャサイトの形態のゼオライトを基にして表してYファウジャサイトを少なくとも15重量%、好適には40から65重量%含有する微小球を構成している。本明細書で用いる如き用語「Yファウジャサイト」には、ナトリウム形態の時にBreck、Zeolite Molecular Sieves、369頁、表4.90(1974)に記述されている種類のX線回折パターンを示しかつナトリウム形態(いくらか存在する結晶化用母液をゼオライトから洗い流した後)の時に表題が「Determination of the Unit Cell Size Dimension of a Faujasite Type Zeolite」(表示D3942−80)の標準的ASTM試験方法に記述されている技術または相当する技術を用いて測定した時に約24.75Å未満の結晶単位格子サイズを示す合成ファウジャサイトゼオライトが含まれる。用語「Yファウジャサイト」は、ナトリウム形態のゼオライトばかりでなく公知修飾形態のゼオライトも包含し、それには例えば希土類による交換を受けた形態およびアンモニウムによる交換を受けた形態および安定化形態が含まれる。本触媒の微小球の中に存在するYファウジャサイトゼオライトのパーセントは、このゼオライトがナトリウム形態(これを洗浄して前記微小球の中にいくらか含まれている結晶化用母液を除去しておいた後)の時に表題が「Relative Zeolite Diffraction Intensities」(表示D3906−80)の標準的ASTM試験方法に記述されている技術または相当する技術を用いて測定したパーセントである。前記微小球にX線評価を受けさせる前にそれを注意深く平衡状態にしておくことが重要である、と言うのは、平衡状態によって結果が大きな影響を受ける可能性があるからである。
【0064】
本微小球のY−ファウジャサイト成分がナトリウム形態の時に約24.73Å未満、最も好適には約24.69Å未満の結晶単位格子サイズを示すのが好適である。
【0065】
以下の表2に、本発明に従って生じさせた触媒の化学的組成および表面積の範囲を挙げる。
【0066】
【表4】

【0067】
本発明の触媒を用いたFCC装置を操作する時に有用な条件は本技術分野で良く知られており、本発明の触媒を用いる時にもそのような条件を意図する。そのような条件は数多くの出版物に記述されており、そのような出版物にはCatal.Rev.−Sci.Eng.、18(1)、1−150(1978)(これは相互参照することによって本明細書に組み入れられる)が含まれる。分散し得る焼成ベーマイトを含有する本発明の触媒は、特に、Ni+V金属の含有量が少なくとも2,000ppmでコンラドソン炭素含有量が1.0以上の残渣および残渣含有供給材料に分解を受けさせる時に用いるに有用である。
【0068】
本発明の触媒は、あらゆる商業的流動接触分解触媒と同様に、分解装置稼働中に水熱的に失活してくるであろう。従って、本明細書で用いる如き語句「石油原料に分解を触媒の存在下で受けさせる」は、触媒を新鮮な状態でか、ある程度失活した状態でか或は完全に失活した形態で存在させて石油原料に分解を受けさせることを包含する。
【0069】
この上で考察した従来技術では、耐摩滅性が優れておりかつ活性および選択性が高いことを考慮して間隙率が低い触媒微小球の方が優れた製品であると考えられており、特に、そのような触媒が示す選択性は表面積がより小さくて細孔容積がより高い触媒が示すそれに少なくとも相当しておりそして接触時間が短い時にはしばしば選択性が良好であると言った充分に確立された事実を考慮して考えられていた。その逆の主張は独善的であるとして容易に退けられかつまたいわゆる取り込み型触媒は滞留時間が短い時には拡散制限を受けると述べることも同じく退けられていた。接触時間が短いFCC工程下ではFCC触媒技術がゼオライトの外側に存在する孔の中の移動に関して拡散制限を受ける可能性があることが見つかったのはほんの最近である。このことは釜残画分のAPI比重がSCT改造後にしばしば高くなった理由とは反対である。それに比べるとあまり明らかではないが、ここに、通常の従来技術の触媒はSCTハードウエアの潜在的利益の全部を与えることができないのは明らかである。しかしながら、今までは、どんな利益も存在しないことを知る方法がなかった。従って、本発明の触媒微小球は以前の触媒微小球とは実質的に異なった形態を有し、特に、細孔容積が大きく、マトリックス上にゼオライトが存在する形態を有しかつ中程度の表面積を有する点で異なる形態を有する。本触媒が示す耐摩滅性は良好でありかつSCT FCC工程条件の場合に有効である。
【0070】
本製造方法そしてその結果としてもたらされる特性、例えば水銀細孔容積などで、本発明の触媒は、多孔質マトリックスの平らな構造物がゼオライト結晶で内張りされている不規則な形態によってマトリックスのマクロ孔が形成されているマクロ多孔性マトリックスを含有する。このように、本触媒のマクロ孔は活性のあるゼオライト触媒で内張りされている。本触媒がそのようなマクロ多孔性を示すことで、炭化水素は本触媒の中に自由に入ることができかつ本触媒のマクロ孔表面積が大きいことから前記炭化水素は触媒表面に接触することができる。重要なことは、炭化水素が邪魔されることなくゼオライトと接触することができ、それによって、本触媒は非常に高い活性とガソリンをもたらす高い選択性を示す。ゼオライト触媒を結合剤および/またはマトリックスの中に取り込ませた通常の取り込み型ゼオライト触媒は間隙率が高いマトリックスを有しはするが、その結合剤の少なくとも一部はゼオライト結晶を覆っているか或は他の様式でそれの邪魔をしている。本微小球状触媒では、ゼオライト結晶化後にいくらか残存する可能性がある少量のシリケート以外、ゼオライトとマトリックス表面を糊付けする個別の物理的結合剤を必要としない。本発明の方法に従って生じさせた微小球触媒は全てのゼオライト/マトリックス触媒の中で最も高いゼオライト接近性をもたらすと考えている。
【0071】
また、場合により、金属を不動態化するアルミナの粒子を高分散状態で存在させてもよい。本発明のマクロ孔の壁を内張りしているゼオライトが優位な量で存在すると同時に、また、分散しているベーマイトおよび/またはムライトから生じたと思われる小さな粒子も見られる。
【0072】
本発明の微小球状触媒は現在市場に出ている以前のFCC触媒に比べてコークス選択性が低くてガソリンをもたらす選択性が高いことで高い変換率を与えることを見いだした。本触媒の方が同様またはより高いさえある間隙率とより小さい表面積を有する通常の取り込み型触媒に比べて一定して優れた性能を示し得ることは驚くべきことである。このことは間隙率単独を加算することでは充分ではないことを示している。マクロ多孔性であることとマクロ孔の壁がゼオライトで内張りされておりかつメソ多孔性もしくは微孔性マトリックスが実質的にゼオライト層の後ろに隠れていると言った新規な構造の触媒であることが本触媒がガソリン、LCOおよびコークス選択性の点で勝っている理由であると現在考えている。本触媒はより重質な炭化水素に分解を受けさせるに充分でありかつ釜残溜分のAPI重力、特に接触時間が短い加工中のそれを向上させると期待する。
【0073】
以下の実施例で本発明の説明を行う。
【実施例1】
【0074】
ノズル型噴霧器が備わっているパイロットプラントを用いて本実施例の微小球を製造した。以下の表3に挙げる如き成分をCowlesミキサーで混合した後、噴霧乾燥を実施した。ケイ酸ナトリウムをスラリーに直接添加することで凝集を起こさせた。噴霧乾燥を実施することができるように固体量を適切に調整した。
【0075】
【表5】

【0076】
前記微小球を更に使用する前にそれに焼成を700度Fで4時間受けさせておいた。
(実施例2および3)
実施例1の微小球の中にゼオライトを成長させる目的で、ゼオライト含有量の調整でメタカオリン含有量が100%の微小球を添加した場合と添加しない場合の2つの反応を実施した。各実施例の反応成分を表4に示す。
【0077】
【表6】

【0078】
反応成分の相当する比率はSiO/NaO=2.70(重量/重量)、HO/NaO=7.0(重量/重量)、SiO/Al=7.0(重量/重量)および種晶のAl/微小球(グラム)=0.0044(重量/重量)であった。結晶化したままの実施例2のサンプルが示したHg細孔容積は0.31cc/g(孔直径が40−20K)であった。
【0079】
実施例3の完成製品が示した特性は下記の通りであった:
【0080】
【表7】

【0081】
(実施例4および5)
実施例4および5の微小球には特徴的発熱を経る焼成を受けた超微細カオリン[Ansilex 93(商標)]を含有させ、それに噴霧乾燥を車型噴霧器が備わっているパイロットプラントで受けさせた。噴霧乾燥を受けさせるスラリーを生じさせる時に用いた各成分の重量パーセントを表5に示す。各カオリン成分の重量パーセントは結合剤無し基準が基になっている。
【0082】
【表8】

【0083】
前記噴霧乾燥を受けさせた微小球を更に使用する前にそれに焼成を700度Fで4時間受けさせておいた。
(実施例6および7)
実施例4および5の微小球を用いてゼオライトを成長させる目的で2つの反応を実施した。各実施例の反応成分を表6に示す。
【0084】
【表9】

【0085】
実施例6および7の完成製品が示した特性を以下に示す。
【0086】
【表10】

【0087】
実施例3、6および7の完成製品は半径が500−700Åの範囲内にピークの最大値を有する同様なマクロ孔サイズ分布を示す。Ansilex−93(商標)を導入すると孔半径が25−30Åの範囲の細孔容積の増加がもたらされる。この上に示したあらゆる触媒実施例に金属耐性アルミナを含有させておらず、金属含有量が最小限の供給材料に分解を受けさせることを意図したものである。
(実施例8および9)
これらの実施例では、金属耐性アルミナを含有させた微小球の調製を開示する。一般的には、最初に高分散性の金属耐性ベーマイトに焼成を1450度Fで2時間受けさせることでガンマアルミナにした。次に、そのガンマアルミナを水性媒体中で粉砕してAPSが約2ミクロンになるまで小さくした。その粉砕したガンマアルミナスラリーに解膠を受けさせるか或は受けさせないでそれをCowlesミキサーに入れておいたメタカオリンと含水カオリンとAnsilex−93(商標)(適用可能な場合)が入っているスラリーに加えた。次に、前記スラリーにケイ酸ナトリウム(SiO2/Na2Oが3.22)を噴霧に適した混合物が生じるに充分な量の水と一緒に加えた。前記スラリーに噴霧乾燥を車型噴霧器が備わっているパイロットプラントで受けさせた。前記スラリーに入っている各成分の重量パーセントを表7に示す。再び、アルミナ成分のパーセントは結合剤無し基準が基になっている。
【0088】
【表11】

【0089】
前記噴霧乾燥を受けさせた微小球に焼成を700度Fで4時間受けさせた後、それを次の結晶化で用いた。
(実施例10および11)
実施例8および9の微小球を表8に示す成分と反応させた。
【0090】
【表12】

【0091】
実施例10および11の完成製品が示した特性を以下に示す。
【0092】
【表13】

【0093】
(実施例12−16)
これらの実施例では、本発明の触媒(実施例3、6および7)が示す性能を2つの比較実施例のそれと対比させて測定する。その2つの比較実施例は米国連続番号09/956,250の触媒(比較1)および米国特許第5,395,908号の触媒(比較2)に相当する。これらの触媒サンプルを実験室で1450度Fの100%蒸気中で4時間失活させた。次に、その失活させた触媒をインジェクターの高さが1.125”のACE(商標)流動床試験装置に入れてコンラドソン炭素が約6%の芳香族供給材料を用いた試験を970度Fで受けさせた。活性FCC触媒の量を変えることで活性を変化させた。前記ACE装置に入れる不活性微小球と活性触媒の総量を12.0gに一定に保持した。変換率が70%の時の収率を報告する。
【0094】
【表14】

【0095】
本発明は、特に微小球中に釜残改善用マトリックス(スピネルおよび/またはムライト)を少量存在させると、比較2のサンプルに比較して明らかに向上したガソリン収率と釜残分解を示す。一般に、マクロ孔と釜残改善用マトリックス(スピネルおよび/またはムライト)を存在させると所望生成物の収率が大きく向上する。
(実施例17−21)
以下に示す実施例では、本発明の触媒(実施例10および11)が示す性能を米国連続番号09/956,250の触媒(比較3)、2001年10月17日付けで出願した米国連続番号09/978,180の触媒(比較4)および2002年6月6日付けで出願した米国連続番号10/164,488の触媒(比較5)のそれに対比させて測定する。比較触媒4および5は残渣分解に適する種類の触媒に相当する。これらの触媒サンプルに前以て蒸気処理を1350度Fの100%蒸気中で2時間受けさせておいた後、オクタン酸ニッケルおよびナフテン酸バナジウムを用いて3000/3000PPMのニッケルとバナジウムを湿り開始で添加した後、後蒸気処理を蒸気が90%で空気が10%の混合物中で1450度Fにおいて4時間受けさせた。次に、この上に示した実施例に記述したプロトコルに従ってACEを用いて各触媒が示す性能を測定した。変換率が70%の時の収率を比較した。
【0096】
【表15】

【0097】
本発明の触媒は比較サンプル3および4に比較してガソリン収率および釜残改善の点で劇的な向上を示す。また、試験を受けさせた触媒の中で本発明の触媒を用いた時に生じたH2量が最も少なく、このことは、金属の不動態化がより良好であることも示している。
(実施例22−24)
これらの実施例でもまた本発明の触媒が示す金属不動態化の方が比較5の触媒および商業的残渣用触媒(比較6)よりも向上していることを示す。実施例17−21の様式に比べて異なる様式で失活させた触媒を用いてACEデータを得た。3サンプルを実験室で前以て蒸気で失活させておき、ニッケルおよびバナジウムに関する流動床分解、後蒸気処理による失活プロトコルを実施した。NiおよびVの典型的な充填率はそれぞれ2800PPMおよび3600PPMであった。次に、その失活させた触媒をインジェクターの高さが2.125”のACE装置に入れてそれらにこの上に示した実施例で用いた供給材料と同じ供給材料を用いた試験を8WHSVにおいて998度Fの分解温度で受けさせた。前記ACE装置に入れる触媒の量を一定に9.0gにしそして送り込む油の量を変えることで活性を変化させた。変換率が75%の時の生成物収率を示す。
【0098】
【表16】

【0099】
再び、本発明の触媒を用いると結果としてH2生成量が低いことで示されるように金属の不動態化が劇的に向上する。実施例10の触媒はスピネルまたはムライトの如き釜残分解用マトリックスを含有しない。この触媒にスピネルおよび/またはムライトを少量添加することによる修飾を受けさせると金属不動態化がほとんどか或は全く不利になることなく釜残改善が向上するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼオライト系流動接触分解触媒であって、
(a)メタカオリン含有反応性微小球からインサイチュで結晶化したアルミノケイ酸塩ゼオライトを少なくとも約15重量%、および
(b)前記反応性微小球に含まれていた含水カオリンから生じたアルミナ含有マトリックス、
を含んで成る触媒。
【請求項2】
前記反応性微小球が前記アルミナ含有成分を基準にして含水カオリンを5−80重量%、メタカオリンを20−50重量%、焼成ベーマイトを0−30重量%および特徴的発熱を経る焼成を受けたカオリンを0−40重量%含んで成る請求項1記載の触媒。
【請求項3】
前記反応性微小球が前記アルミナ含有成分の重量を基準にして含水カオリンを10−75重量%、メタカオリンを25−45重量%、焼成ベーマイトを10−25重量%および前記焼成カオリンを5−30重量%含んで成る請求項1記載の触媒。
【請求項4】
孔径が40−20,000オングストロームの範囲内の水銀細孔容積が0.25cc/gより大きい請求項1記載の触媒。
【請求項5】
メタカオリン含有反応性微小球からインサイチュで結晶化したY−ファウジャサイトを含有する触媒微小球を含んで成る流動接触分解触媒であって、前記反応性微小球に含まれていた含水カオリンから生じた非ゼオライト系アルミナ含有マトリックスを含んで成っていて直径が40−20,000オングストロームの範囲内の孔に関して約0.15cc/gより大きい水銀間隙率を示す触媒微小球を含んで成る流動接触分解触媒。
【請求項6】
更に、前記アルミナ含有マトリックスが57%固体未満のインシピエントスラリー点を示すアルミナ含有前駆体から生じたものである請求項5記載の流動接触分解触媒。
【請求項7】
流動接触分解触媒を生じさせる方法であって、
(a)含水カオリンとメタカオリンを含んで成る水性スラリーを噴霧乾燥させることで直径が20−150ミクロンの範囲内の反応性微小球を生じさせ、
(b)前記噴霧乾燥微小球とアルカリ性シリケート水溶液を前記反応性微小球からインサイチュで結晶化したY−ファウジャサイトが生じるような温度でそのような時間反応させる、
ことを含んで成る方法。
【請求項8】
前記噴霧乾燥微小球を前記アルカリ性シリケート水溶液と反応させる前に前記噴霧乾燥微小球に焼成を1000度F未満の温度で受けさせておく請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記水性スラリーが含水カオリンを5−80重量%、メタカオリンを20−50重量%、焼成ベーマイトを0−30重量%および前記焼成カオリンを0−40重量%含有するようにする請求項8記載の方法。
【請求項10】
炭化水素原料をFCC条件下で分解させる方法であって、前記炭化水素原料を請求項1の触媒に接触させることを含んで成る方法。

【公表番号】特表2007−533428(P2007−533428A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532935(P2006−532935)
【出願日】平成16年5月10日(2004.5.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/014651
【国際公開番号】WO2004/103558
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(591044371)エンゲルハード・コーポレーシヨン (43)
【氏名又は名称原語表記】ENGELHARD CORPORATION
【Fターム(参考)】