説明

ゼニゴケ目生物細胞において外来遺伝子を安定に高発現させるDNA断片及びその利用

【課題】ゼニゴケ目生物細胞において目的の外来遺伝子を高発現させることができるプロモーター、5’UTR、ターミネーター等のDNA断片、及びその利用法を提供する。
【解決手段】下記の(a)〜(d)のいずれかのDNAを含むDNA断片。(a)特定の塩基配列からなるDNA。(b)特定の塩基配列において、1〜複数個の塩基が欠失、置換、又は付加された配列からなり、かつゼニゴケ目生物細胞において5’−UTR活性を有するDNA。(c)特定の塩基配列の一部からなり、かつゼニゴケ目生物細胞において5’−UTR活性を有するDNA。(d)特定の塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNA又はその一部とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつゼニゴケ目生物細胞において5’−UTR活性を有するDNA。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼニゴケ目生物細胞において外来遺伝子を安定に高発現させることができるDNA断片、該DNA断片を含むベクター、該DNA断片又はベクターが導入された形質転換体、ゼニゴケ目生物細胞内で外来遺伝子の発現を増強する方法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物に外来遺伝子を導入し、有用物質を生産する試みは、盛んに行われるようになってきている。例えば、生分解性プラスティックの原料であるポリヒドロキシ酪酸(PHB)(非特許文献1)、殺虫タンパク質(非特許文献2)などの物質が、形質転換植物を用いて生産されている。
【0003】
植物に外来遺伝子を導入する際には、強い転写活性を持つカリフラワーモザイクウィルスの35Sプロモーター(CaMV35Sプロモーター)(非特許文献3)が通常利用されている。この他にも、外来遺伝子を高発現させるための、プロモーターやエンハンサーが開発されている。しかしながら、植物種によってプロモーターやエンハンサーの効果が異なり、必ずしも汎用性が高いとは言えない。
【0004】
コケ植物であるゼニゴケ(Marchantia polymorpha)は、高等植物とは異なる代謝経路を有しており、従来植物では生産できなかった有用物質を生産できる可能性を持つ。これまでに、CaMV35Sプロモーターを用いてゼニゴケに外来遺伝子を導入し、ゼニゴケ細胞の脂肪酸組成を改変することが可能となっている(非特許文献4)。しかしながら、CaMV35Sプロモーターは、ゼニゴケにおいて高等植物と同等の高発現性を示さず、ゼニゴケに適したプロモーター配列が必要であると考えられている。
【0005】
5’UTR(5’非翻訳領域)は、遺伝子の安定した転写及び翻訳にとって重要であることが知られており、翻訳レベルを上昇させる効果を持つタバコモザイクウィルス(TMV)のΩ配列(非特許文献5)、タバコアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子の5’UTR配列(非特許文献6)などが報告されている。しかしながら、これらの配列は、ゼニゴケでは外来遺伝子の高発現に有効ではない。
【0006】
ターミネーターは、転写終結及びmRNAの3’末端修飾を行い、安定した遺伝子発現に必要であることが知られている。これまでに高等植物への外来遺伝子導入においては、NOSターミネーター(非特許文献7)が広く用いられており、ゼニゴケにおいても同様にNOSターミネーターを用いることが可能である。しかしながら、ゼニゴケにおいてNOSターミネーターは遺伝子の高発現活性を有していない。また、HSPターミネーターは、シロイヌナズナやイネでNOSターミネーターよりも高い遺伝子発現を実現することが報告されている(非特許文献8)。しかしながら、ゼニゴケにおいてHSPターミネーターは有効ではなく、外来遺伝子発現を上昇させることができない。
従って、ゼニゴケにおいて外来遺伝子を高発現させるための技術は、未だ開発されていない。
【0007】
ゼニゴケ生物細胞において外来遺伝子の高発現能を有するプロモーター、5’UTR及び/又はターミネーターがゼニゴケ目生物細胞に発現可能に導入されてなる、形質発現の検出及び形質発現体は報告されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Houmiel KL et al., Planta, 209, 547-550 (1999)
【非特許文献2】Kota M et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96, 1840-1845 (1999)
【非特許文献3】Odell JT et al., Nature, 313, 810-812 (1985)
【非特許文献4】Kajikawa M et al., Biosci. Biotech. Biochem., 72, 435-444 (2008)
【非特許文献5】Gallie DR et al., Plant Cell, 1, 301-311 (1989)
【非特許文献6】Nagaya S et al., J. Biosci. Bioeng., 89, 231-235 (2000)
【非特許文献7】Herrera-Estrella L et al., EMBO J., 2, 987-995 (1983)
【非特許文献8】Nagaya S et al., Plant Cell Physiol., 51, 328-332 (2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、ゼニゴケ目生物細胞において目的の外来遺伝子を高発現させることができるプロモーター、5’UTR、ターミネーター等のDNA断片、及びその利用法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討し、ゼニゴケ由来の伸長因子1α (EF1α)遺伝子のプロモーター(配列番号1)、ADH様UDP-グルコース脱水素酵素 (UDP) 遺伝子の5’UTR(配列番号2)及びFT1(Flowering Locus T 1)遺伝子のターミネーター(配列番号3)を単離し、該配列を用いて、ゼニゴケ培養細胞を用いたレポーター遺伝子の一過性発現解析を行った。その結果、これらの配列がゼニゴケ目生物細胞において外来遺伝子の発現を増大させる機能を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の〔1〕〜〔9〕の発明を包含する。
【0011】
〔1〕下記の(a)〜(d)のいずれかのDNAを含むDNA断片。
(a)配列番号2に示される塩基配列からなるDNA
(b)配列番号2に示される塩基配列において、1〜複数個の塩基が欠失、置換、又は付加された配列からなり、かつゼニゴケ目生物細胞において5’−UTR活性を有するDNA
(c)配列番号2に示される塩基配列の一部からなり、かつゼニゴケ目生物細胞において5’−UTR活性を有するDNA
(d)配列番号2に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNA又はその一部とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつゼニゴケ目生物細胞において5’−UTR活性を有するDNA
〔2〕下記の(a)〜(d)のいずれかのDNAを含むDNA断片。
(a)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA
(b)配列番号1に示される塩基配列において、1〜複数個の塩基が欠失、置換、又は付加された配列からなり、かつゼニゴケ目生物細胞においてプロモーター活性を有するDNA
(c)配列番号1に示される塩基配列の一部からなり、かつゼニゴケ目生物細胞においてプロモーター活性を有するDNA
(d)配列番号1に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNA又はその一部とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつゼニゴケ目生物細胞においてプロモーター活性を有するDNA
〔3〕下記の(a)〜(d)のいずれかのDNAを含むDNA断片。
(a)配列番号3に示される塩基配列からなるDNA
(b)配列番号3に示される塩基配列において、1〜複数個の塩基が欠失、置換、又は付加された配列からなり、かつゼニゴケ目生物細胞においてターミネーター活性を有するDNA
(c)配列番号3に示される塩基配列の一部からなり、かつゼニゴケ目生物細胞においてターミネーター活性を有するDNA
(d)配列番号3に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNA又はその一部とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつゼニゴケ目生物細胞においてターミネーター活性を有するDNA
〔4〕前記〔1〕〜〔3〕の何れか1項に記載のDNA断片を含む組換え形質発現ベクター。
〔5〕さらに、導入すべき外来遺伝子を含む前記〔4〕に記載の組換え形質発現ベクター。
〔6〕前記〔5〕に記載の組換え形質発現ベクターがゼニゴケ目生物細胞に発現可能に導入されてなる、ゼニゴケ目生物形質発現体。
〔7〕前記〔6〕に記載の形質発現体を培養又は栽培する工程を含む、ゼニゴケ目生物細胞内で外来遺伝子の発現を増強する方法。
〔8〕前記〔5〕に記載の組換え形質発現ベクターをゼニゴケ目生物細胞に導入する工程を含む、ゼニゴケ目生物細胞内で外来遺伝子の発現を増強する方法。
〔9〕前記〔1〕〜〔3〕の何れか1項に記載のDNA断片又はその相補配列をプローブ又はプライマーとして用いる遺伝子検出器具。
【発明の効果】
【0012】
本発明のDNA断片は、ゼニゴケ目生物細胞においてタンパク質をコードする遺伝子などの目的の外来遺伝子を高発現させることができるものである。
ゼニゴケ目生物細胞に従来の方法により外来遺伝子を導入し、発現させる方法は、遺伝子が高発現しないという問題点があるが、本発明においては、ゼニゴケ目生物細胞において外来遺伝子の高発現能を有するプロモーター、5’UTR及び/又はターミネーター等を用いることにより、ゼニゴケ目生物細胞において外来遺伝子の発現を高めることができる。
【0013】
本発明によれば、ゼニゴケ目生物細胞において外来遺伝子の高発現能を有するプロモーター、5’UTR及び/又はターミネーターを使うことにより、有用物質を生産するために必要な遺伝子を、ゼニゴケ目生物細胞において高発現させることができ、有用物質生産能を増大できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1の(A)は、ゼニゴケ由来のプロモーターを用いた形質発現ベクターの作製手順の一例の概要を示す図であり、図1の(B)は、ゼニゴケ由来の5’UTRを用いた形質発現ベクターの作製手順の一例の概要を示す図であり、図1の(C)は、ゼニゴケ由来のターミネーターを用いた形質発現ベクターの作製手順の一例の概要を示す図である。
【図2】図2の(A)は、ゼニゴケ由来のプロモーターを用いたプラスミドpMpEF1α-Fluc-tNOSの構造を示す模式図であり、図2の(B)は、ゼニゴケ由来の5’UTRを用いたプラスミドCaMV35S-5’UTR-Fluc-tNOSの構造を示す模式図であり、図2の(C)は、ゼニゴケ由来のターミネーターを用いたプラスミドCaMV35S-Fluc-tMpFT1の構造を示す模式図である。
【図3】図3は、ゼニゴケ由来プロモーター、及び5’UTRの外来遺伝子発現能を示す図である。
【図4】図4は、ゼニゴケ由来のターミネーターの外来遺伝子発現能を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の一形態について説明すれば、以下の通りである。なお、本発明は、これに限定されるものではない。
【0016】
本発明のDNA断片は、ゼニゴケ目生物細胞内で所望の外来遺伝子を高発現させる機能を有するDNAである。外来遺伝子を高発現させる機能(高発現能)とは、本発明のDNA断片が該外来遺伝子の発現系に共存した際に、この外来遺伝子にコードされた情報が、転写、翻訳されてタンパク質が形成される際、この翻訳により形成されたタンパク質量を増大させる機能を意味する。
【0017】
本発明のDNA断片として、例えば、ゼニゴケ目生物細胞でプロモーター活性を有する(プロモーターとして機能する)DNA断片、ゼニゴケ目生物細胞で5’URT活性を有する(5’URTとして機能する)DNA断片、ゼニゴケ目生物細胞でターミネーター活性を有する(ターミネーターとして機能する)DNA断片等が挙げられる。本発明のDNA断片は、好ましくはゼニゴケ目生物由来のDNA断片である。
【0018】
例えば、本発明のDNA断片として、下記(a)〜(d)のいずれかのDNAを含むDNA断片が挙げられる。
(a)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA
(b)配列番号1に示される塩基配列において、1〜複数個の塩基が欠失、置換、又は付加された配列からなり、かつゼニゴケ目生物細胞においてプロモーター活性を有するDNA
(c)配列番号1に示される塩基配列の一部からなり、かつゼニゴケ目生物細胞においてプロモーター活性を有するDNA
(d)配列番号1に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNA又はその一部とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつゼニゴケ目生物細胞においてプロモーター活性を有するDNA
配列番号1に示される塩基配列からなるDNAは、ゼニゴケ(Marchantia polymorpha)の伸長因子1α (EF1α)遺伝子のプロモーターである。上記(d)のDNAは、好ましくは配列番号1に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつゼニゴケ目生物細胞においてプロモーター活性を有するゼニゴケ目生物由来のDNAである。
【0019】
上記(a)〜(d)のDNAは、ゼニゴケ目生物細胞でプロモーター活性を有するものである。このような上記(a)〜(d)のいずれかのDNAを含むDNA断片を、本発明1のDNA断片ともいう。
【0020】
本発明1のDNA断片として、(a’)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片;(b’)配列番号1に示される塩基配列において、1〜複数個の塩基が欠失、置換、又は付加された配列からなり、かつゼニゴケ目生物細胞においてプロモーター活性を有するDNA断片;(c’)配列番号1に示される塩基配列の一部からなり、かつゼニゴケ目生物細胞においてプロモーター活性を有するDNA断片;(d’)配列番号1に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNA又はその一部(好ましくは配列番号1と相補的な塩基配列からなるDNA)とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつゼニゴケ目生物細胞においてプロモーター活性を有するDNA断片等が好ましい。また、本発明1のDNA断片は、ゼニゴケ目生物由来のものであることがより好ましい。さらに好ましくは、配列番号1に示される塩基配列からなるDNAを含むDNA断片であり、特に好ましくは、配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片である。
本発明1のDNA断片は、外来遺伝子をゼニゴケ生物細胞内で高発現させる機能を有するプロモーターとして好適に用いられる。
【0021】
本発明は、下記(a)〜(d)のいずれかのDNAを含むDNA断片も包含する。
下記(a)〜(d)のDNAは、ゼニゴケ目生物細胞で5’−UTR活性を有するものである。下記(a)〜(d)のいずれかのDNAを含むDNA断片を、本発明2のDNA断片ともいう。
(a)配列番号2に示される塩基配列からなるDNA
(b)配列番号2に示される塩基配列において、1〜複数個の塩基が欠失、置換、又は付加された配列からなり、かつゼニゴケ目生物細胞において5’−UTR活性を有するDNA
(c)配列番号2に示される塩基配列の一部からなり、かつゼニゴケ目生物細胞において5’−UTR活性を有するDNA
(d)配列番号2に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNA又はその一部とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつゼニゴケ目生物細胞において5’−UTR活性を有するDNA
配列番号2に示される塩基配列からなるDNAは、ゼニゴケ(Marchantia polymorpha)のADH様UDP-グルコース脱水素酵素 (UDP) 遺伝子の5’UTRである。上記(d)のDNAは、好ましくは配列番号2に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつゼニゴケ目生物細胞において5’UTR活性を有するゼニゴケ目生物由来のDNAである。
【0022】
5’UTR活性を有するとは、外来遺伝子の上流側(5’側)に位置する場合に、転写されたmRNAの翻訳効率を上昇させ、外来遺伝子を高発現させる機能を有することを意味する。
【0023】
本発明2のDNA断片として、(a’)配列番号2に示される塩基配列からなるDNA断片;(b’)配列番号2に示される塩基配列において、1〜複数個の塩基が欠失、置換、又は付加された配列からなり、かつゼニゴケ目生物細胞において5’−UTR活性を有するDNA断片;(c’)配列番号2に示される塩基配列の一部からなり、かつゼニゴケ目生物細胞において5’−UTR活性を有するDNA断片;(d’)配列番号2に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNA又はその一部(好ましくは配列番号2と相補的な塩基配列からなるDNA)とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつゼニゴケ目生物細胞において5’−UTR活性を有するDNA断片等が好ましい。また、本発明2のDNA断片は、ゼニゴケ目生物由来のものであることがより好ましい。さらに好ましくは、配列番号2に示される塩基配列からなるDNAを含むDNA断片であり、特に好ましくは、配列番号2に示される塩基配列からなるDNA断片である。
本発明2のDNA断片は、外来遺伝子をゼニゴケ生物細胞内で高発現させる機能を有する5’−UTRとして好適に用いられる。
【0024】
本発明はさらに、下記(a)〜(d)のいずれかのDNAを含むDNA断片も包含する。
下記(a)〜(d)のDNAは、ゼニゴケ目生物細胞でターミネーター活性を有するものである。下記(a)〜(d)のいずれかのDNAを含むDNA断片を、本発明3のDNA断片ともいう。
(a)配列番号3に示される塩基配列からなるDNA
(b)配列番号3に示される塩基配列において、1〜複数個の塩基が欠失、置換、又は付加された配列からなり、かつゼニゴケ目生物細胞においてターミネーター活性を有するDNA
(c)配列番号3に示される塩基配列の一部からなり、かつゼニゴケ目生物細胞においてターミネーター活性を有するDNA
(d)配列番号3に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNA又はその一部とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつゼニゴケ目生物細胞においてターミネーター活性を有するDNA
配列番号3に示される塩基配列からなるDNAは、ゼニゴケ(Marchantia polymorpha)のFT1(Flowering Locus T 1)遺伝子のターミネーターである。上記(d)のDNAは、好ましくは配列番号3に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつゼニゴケ目生物細胞においてターミネーター活性を有するゼニゴケ目生物由来のDNAである。
【0025】
本発明3のDNA断片として、(a’)配列番号3に示される塩基配列からなるDNA断片;(b’)配列番号3に示される塩基配列において、1〜複数個の塩基が欠失、置換、又は付加された配列からなり、かつゼニゴケ目生物細胞においてターミネーター活性を有するDNA断片;(c’)配列番号3に示される塩基配列の一部からなり、かつゼニゴケ目生物細胞においてターミネーター活性を有するDNA断片;(d’)配列番号3に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNA又はその一部(好ましくは配列番号3と相補的な塩基配列からなるDNA)とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつゼニゴケ目生物細胞においてターミネーター活性を有するDNA断片等が好ましい。また、本発明3のDNA断片は、ゼニゴケ目生物由来のものであることがより好ましい。さらに好ましくは、配列番号3に示される塩基配列からなるDNAを含むDNA断片であり、特に好ましくは、配列番号3に示される塩基配列からなるDNA断片である。
本発明3のDNA断片は、外来遺伝子をゼニゴケ生物細胞内で高発現させる機能を有するターミネーターとして好適に用いられる。
【0026】
本明細書中、「1〜複数個」における「複数個」とは、通常2〜30個程度、好ましくは2〜15個程度、より好ましくは2〜10個程度、さらに好ましくは2〜6個程度、最も好ましくは2個である。
【0027】
なお、本明細書中に記載する「ストリンジェントな条件」とは、少なくとも約90%の同一性、好ましくは少なくとも約95%の同一性、より好ましくは少なくとも約97%の同一性、最も好ましくは少なくとも約98%の同一性が配列間に存在するときのみハイブリダイゼーションが起こることを意味する。
【0028】
上記ハイブリダイゼーションは、J. Sambrook et al. Molecular Cloning, A Laboratory Manual. 3rd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory (2001)に記載されている方法等、従来公知の方法で行うことができる。通常、温度が高いほど、塩濃度が低いほどストリンジェンシーは高くなり(ハイブリダイズし難くなる)、より相同な遺伝子を取得することができる。ハイブリダイゼーションの条件としては、従来公知の条件を好適に用いることができ、特に限定しないが、例えば、42℃、市販のDIG(ジゴキシゲニン)ハイブリダイゼーションバッファー(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)を用いて行うことなどが挙げられる。
【0029】
上記「ゼニゴケ目生物」とは、ゼニゴケ(Marchantia polymorpha)に限定されるものでなく、ゼニゴケ亜綱ゼニゴケ目(Marchantiales)に属する生物が含まれる。ゼニゴケ亜綱ゼニゴケ目(Marchantiales)に属する生物としては、例えば、ハマグリゼニゴケ科、ミカズキゼニゴケ科、ジャゴケ科、アズマゼニゴケ科、ジンガサゴケ科、ジンチョウゴケ科、ヤワラゼニゴケ科、ウキゴケ科、ゼニゴケ科等の植物が挙げられる。ゼニゴケ目生物は、好ましくは、ゼニゴケ(Marchantia polymorpha)である。
【0030】
以下、本発明のDNA断片の取得方法、並びに本発明に係るDNA断片の利用方法(有用性)の順で本発明をさらに詳細に説明する。
【0031】
〔1〕本発明のDNA断片の取得方法
本発明のDNA断片は、例えば、ゼニゴケ目生物等の植物、動物、微生物等から取得することができる。好ましくは、ゼニゴケ目生物から取得する。本発明1のプロモーター活性を有するDNA断片、本発明2の5’−UTR活性を有するDNA断片、及び本発明3のターミネーター活性を有するDNA断片の取得方法(生産方法)は特に限定されるものではないが、例えば、ゼニゴケ目生物から本発明のDNA断片を取得する方法として、代表的な方法として次に示す各方法を挙げることができる。なお、本発明のDNA断片は、例えば下記方法においてゼニゴケ目生物以外の植物、動物、微生物等のESTライブラリー等を使用して、ゼニゴケ目生物以外の生物から取得することもできる。
【0032】
(1)ゼニゴケ目生物由来のプロモーター活性を有するDNA断片
例えば、配列番号1に示される塩基配列からなるDNAは、ゼニゴケ(Marchantia polymorpha)の伸長因子1α (EF1α)遺伝子のプロモーターであり、ゼニゴケから以下の方法等により単離することができる。
伸長因子1α (EF1α)遺伝子は、真核生物の翻訳に関わるタンパク質をコードする遺伝子であり、生物一般に高発現することが知られている (Nagaya S et al., J. Biosci. Bioeng., 89, 231-235 (2000)、及びCurie C et al., Mol. Gene. Genet., 238, 428-436 (1993))。そこで、既知のEF1α遺伝子のアミノ酸配列と相同性を示すクローンを、ゼニゴケのESTライブラリーより探索する。次に、得られたESTクローンの配列を含むゲノムクローンを、本発明1のDNA断片の塩基配列(例えば、配列番号1の塩基配列)の一部と特異的にハイブリダイズするプローブを調製し、ゼニゴケのゲノムライブラリーよりスクリーニングする。このようなプローブとしては、本発明のゼニゴケ由来のプロモーターの塩基配列(例えば、配列番号1の塩基配列)又はその相補配列の少なくとも一部に特異的にハイブリダイズするプローブであれば、いずれの配列及び長さのものを用いてもよい。このような方法を用いて、ゼニゴケEF1α遺伝子のプロモーター配列(配列番号1)等を単離することができる。
【0033】
(2)ゼニゴケ目生物由来の5’UTR活性を有するDNA断片
例えば、配列番号2に示される塩基配列からなるDNAは、ゼニゴケ(Marchantia polymorpha)のADH様UDP-グルコース脱水素酵素 (UDP)遺伝子の5’ UTRであり、ゼニゴケから以下の方法等により単離することができる。
タバコにおいて、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)遺伝子の5’ UTR配列が、外来遺伝子の安定な発現に有効であることが知られている (Nagaya S et al., J. Biosci. Bioeng., 89, 231-235 (2000))。そこで、既知のADH遺伝子のアミノ酸配列と相同性を示すクローンを、ゼニゴケのESTライブラリーより探索する。次に、得られたESTクローンの配列を含むゲノムクローンを、本発明2のDNA断片の塩基配列(例えば、配列番号2の塩基配列)の一部と特異的にハイブリダイズするプローブを調製し、ゼニゴケのゲノムライブラリーよりスクリーニングする。このようなプローブとしては、本発明のゼニゴケ由来の5’ UTRの塩基配列(例えば、配列番号2の塩基配列)又はその相補配列の少なくとも一部に特異的にハイブリダイズするプローブであれば、いずれの配列及び長さのものを用いてもよい。このような方法を用いて、ゼニゴケADH様UDP-グルコース脱水素酵素 (UDP)遺伝子の5’ UTR(配列番号2)等を単離することができる。
【0034】
(3)ゼニゴケ目生物由来のターミネーター活性を有するDNA断片
例えば、配列番号3に示される塩基配列からなるDNAは、ゼニゴケ(Marchantia polymorpha)のFT1遺伝子のターミネーターであり、ゼニゴケから以下の方法等により単離することができる。
シロイヌナズナとイネにおいて、内在性遺伝子のターミネーターを用いると、NOSターミネーターよりも遺伝子発現が上昇する場合が多いことが知られている(Nagaya S et al., Plant Cell Physiol., 51, 328-332 (2010))。そこで、既知のFT1遺伝子のアミノ酸配列と相同性を示すクローンを、ゼニゴケのESTライブラリーより探索する。次に、得られたESTクローンの配列を含むゲノムクローンを、本発明のDNA断片の塩基配列(例えば、配列番号3の塩基配列)の一部と特異的にハイブリダイズするプローブを調製し、ゼニゴケのゲノムライブラリーよりスクリーニングする。このようなプローブとしては、本発明のゼニゴケ由来のターミネーターの塩基配列(例えば、配列番号3の塩基配列)又はその相補配列の少なくとも一部に特異的にハイブリダイズするプローブであれば、いずれの配列及び長さのものを用いてもよい。このような方法を用いて、ゼニゴケFT1遺伝子のターミネーター(配列番号3)等を単離することができる。
【0035】
得られたDNA断片の塩基配列の決定は、通常、マキサム−ギルバート法、ジデオキシ法等の公知手法により、又はBigDye(登録商標)ターミネーターサイクルシークエンシングキット(Applied Biosystems社)、BcaBEST(登録商標)ジデオキシシークエンシングキット(Takara社)等を用いた自動塩基配列決定装置により行うことができる。なお、変異の導入は、公知の手法により(Ito, W.(1991) Gene 102: 67-70)、又は市販のキット(Takara社のLA PCR in vitro Mutagenesis シリーズキット)を用いて行うことができる。
【0036】
一旦外来遺伝子の高発現能を有する本発明のDNA断片の塩基配列が確定されると、その後はPCR等の増幅手段を用いて本発明のDNA断片を取得することができる。例えば、本発明のDNA断片のDNA配列のうち、5’側及び3’側の配列(又はその相補配列)の中からそれぞれプライマーを調製し、これらプライマーを用いてゲノムDNA等を鋳型にしてPCR等を行い、両プライマー間に挟まれるDNA領域を増幅することで、本発明のDNA断片を含むDNA断片を大量に取得できる。PCR、プライマーの調製等の操作は、公知の遺伝子工学的手法(遺伝子操作技術)により、行うことができる。また、該DNA断片が適当なベクターにクローニングされている場合には、インサートとしてマルチクローニングサイトに挿入されている該DNA断片の5’及び3’方向外側の、ベクター起源の塩基配列を含むプライマーを用いたPCRによって、又は本発明のDNA断片の塩基配列を含むDNA断片をプローブとしてハイブリダイズさせることによって、本発明のDNA断片を得ることができる。また、DNA合成機による化学合成によって本発明のDNA断片を得ることもできる。
【0037】
得られたDNA断片が目的とする外来遺伝子の高発現能を有するか否かは、例えばゼニゴケ培養細胞においてルシフェラーゼ遺伝子等をレポーター遺伝子としたトランジェントアッセイ、染色体に組込ませた形質転換細胞でのアッセイ等により確認することができる。
【0038】
なお、このように本発明のゼニゴケ目生物由来のプロモーター活性を有するDNA断片、5’UTR活性を有するDNA断片又はターミネーター活性を有するDNA断片を取得する目的で、用いる宿主細胞には様々なものが存在するが、目的に応じたものを選択すればよい。また、外来遺伝子の発現を確認又は検出するために用いるレポーター遺伝子は、様々な検出方法が存在するので、目的に応じたものを選択すればよい。宿主細胞内で産生されたタンパク質を検出又は精製する方法は、用いた宿主、タンパク質の性質によって異なるが、該宿主細胞又はその培養上清から、公知の方法により検出又は精製することが可能である。例えば、ルシフェラーゼ遺伝子の利用又はヒスチジンタグの利用等によって比較的容易に目的のタンパク質を検出又は精製することが可能である。
【0039】
上記の方法等により、ゼニゴケ目生物細胞で外来遺伝子の発現を高める又は増強させる機能を有する本発明のDNA断片を得ることができる。
【0040】
本発明のDNA断片は、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖及びアンチセンス鎖と言った各1本鎖DNAやRNAを包含する。アンチセンス鎖は、プローブとして又はアンチセンス化合物として利用できる。DNAには、例えばクローニング若しくは化学合成技術又はそれらの組み合わせで得られるようなcDNAやゲノムDNA等が含まれる。さらに、本発明のDNA断片は、プロモーター領域、5’UTR配列、及びターミネーター配列を含む形質発現ベクター配列などの配列を含むものであってもよい。
【0041】
〔2〕本発明に係るDNA断片の利用方法(有用性)
(1)組換え形質発現ベクター
上述した本発明のいずれかのDNA断片を含む組換え形質発現ベクターも、本発明に包含される。
本発明の組換え形質発現ベクターは、例えば、外来遺伝子をゼニゴケ目生物細胞に導入したトランジェント形質発現体等のゼニゴケ目生物形質発現体の作出のため等に使用され得るものである。
【0042】
本発明の組換え形質発現ベクターは、(A)本発明1のDNA断片、(B)本発明2のDNA断片、及び(C)本発明3のDNA断片のうちの少なくとも1つを含むものであれば、特に限定されるものではなく、本発明の効果を奏することになる限り、これらの2以上のDNA断片を含んでいてもよい。本発明の組換え形質発現ベクターは、さらに、導入すべき外来遺伝子を含むことができる。組換え形質発現ベクターの作製方法は、遺伝子工学の分野で公知の方法を用いて行えばよい。
【0043】
本発明に係る遺伝子を含む組換え形質発現ベクターは、通常、基礎となるベクター(以下の説明では、便宜上、基礎ベクターと称する)のマルチクローニングサイトに、本発明のDNA断片の1又は2以上等を組み込んで構築すればよい。
【0044】
基礎ベクターの具体的な種類は特に限定されるものではなく、ゼニゴケ目生物細胞中で形質発現可能なベクターを適宜選択すればよい。ここで、上記基礎ベクターとしては、プラスミド、ファージ、又はコスミドなどを用いることができるが特に限定されるものではない。すなわち、細胞の種類に応じて、確実に遺伝子を発現させるために適宜プロモーター配列等を選択し、これと機能が未知又は既知の遺伝子を各種プラスミド等の基礎ベクターに組み込んだものを組換え形質発現ベクターとして用いればよい。
【0045】
組換え形質発現ベクターが本発明1のDNA断片を含む場合、該組換え形質発現ベクターには、通常、本発明1のDNA断片、及びゼニゴケ目生物細胞内で機能するターミネーターが含まれる。通常、上流側から、本発明1のDNA断片、及びゼニゴケ目生物細胞内で機能するターミネーターがこの順で組換え形質発現ベクター内に含まれる。組換え形質発現ベクターが、さらに、導入すべき外来遺伝子を含む場合、該外来遺伝子は、通常、本発明1のDNA断片と、ゼニゴケ目生物細胞内で機能するターミネーターとの間に配置される。
【0046】
ゼニゴケ目生物細胞内で機能するターミネーターは特に限定されず、ゼニゴケ目生物由来のものであってもよく、他の生物由来のものであってもよい。例えば、NOSターミネーター、OCSターミネーター等が挙げられる。また、ゼニゴケ目生物細胞内で機能するターミネーターとして、本発明3のDNA断片を用いることも好ましい。
【0047】
組換え形質発現ベクターが本発明2のDNA断片を含む場合、該組換え形質発現ベクターには、通常、本発明2のDNA断片、及びゼニゴケ目生物細胞内で機能するターミネーターが含まれる。通常、上流側から、本発明2のDNA断片、及びゼニゴケ目生物細胞内で機能するターミネーターがこの順で組換え形質発現ベクター内に含まれる。本発明2のDNA断片を含む組換え形質発現ベクターは、さらに、ゼニゴケ目生物細胞内で機能するプロモーターを含むことが好ましい。本発明2のDNA断片と、前記プロモーターとを併用すると、ゼニゴケ目生物細胞において目的の外来遺伝子を、より高発現させることができる。ゼニゴケ目生物細胞内で機能するプロモーターを含む場合には、通常、上流から、ゼニゴケ目生物細胞内で機能するプロモーター、本発明2のDNA断片、及びゼニゴケ目生物細胞内で機能するターミネーターがこの順で組換え形質発現ベクター内に含まれる。
組換え形質発現ベクターが、さらに、導入すべき外来遺伝子を含む場合、該外来遺伝子は、通常、本発明2のDNA断片と、ゼニゴケ目生物細胞内で機能するターミネーターとの間に配置される。
【0048】
ゼニゴケ目生物細胞内で機能するプロモーターとしては特に限定されず、ゼニゴケ目生物由来のものであってもよく、他の生物由来のものであってもよい。例えば、CaMV35Sプロモーター、植物由来rbcS遺伝子プロモーター等が挙げられる。また、ゼニゴケ目生物細胞内で機能するプロモーターとして、本発明1のDNA断片を用いることもできる。ゼニゴケ目生物細胞内で機能するターミネーターとしては、上述したもの等を好適に用いることができる。
【0049】
組換え形質発現ベクターが本発明3のDNA断片を含む場合、該組換え形質発現ベクターには、通常、本発明3のDNA断片、及びゼニゴケ目生物細胞内で機能するプロモーターが含まれる。通常、上流側から、ゼニゴケ目生物細胞内で機能するプロモーター、及び本発明3のDNA断片がこの順で組換え形質発現ベクター内に含まれる。組換え形質発現ベクターが、さらに、導入すべき外来遺伝子を含む場合、該外来遺伝子は、通常、ゼニゴケ目生物細胞内で機能するプロモーターと、本発明3のDNA断片との間に配置される。
【0050】
ゼニゴケ目生物細胞内で機能するプロモーターとして、上述したもの等を好適に用いることができる。中でも、本発明1のDNA断片を好適に用いることができる。
本発明3のDNA断片を含む組換え形質発現ベクターは、さらに、本発明2のDNA断片等のゼニゴケ目生物細胞内で5’UTR活性を有する配列を含んでもよい。この場合、上流からプロモーター、ゼニゴケ目生物細胞内で5’UTR活性を有する配列、外来遺伝子を含む場合は外来遺伝子、及び本発明3のDNA断片の順に配置することが好ましい。
【0051】
外来遺伝子は、外来の導入したい核酸配列を広く指すものであり、例えば、遺伝子の全長配列(cDNA配列、ゲノム配列)だけでなく、部分配列、調節領域、スペーサー領域、変異を加えた配列なども含まれる。外来遺伝子は、ゼニゴケ目生物由来の遺伝子であってもよく、ゼニゴケ目生物以外の生物由来の遺伝子であってもよい。
外来遺伝子としては、代表的にはタンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。例えば、プロスタグランジン類、不飽和脂肪酸、等の有用物質の生産に関与する酵素をコードする遺伝子等が好ましい。
【0052】
本発明の組換え形質発現ベクターは、本発明のDNA断片、所望により含まれる外来遺伝子、ゼニゴケ目生物細胞内で機能するプロモーター、ターミネーター、及び5’UTR以外の配列を含んでもよい。例えば、薬剤耐性遺伝子等が組み込まれていてもよい。薬剤耐性遺伝子として、カナマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子等が挙げられる。
【0053】
(2)ゼニゴケ目生物形質発現体
本発明の組換え形質発現ベクターがゼニゴケ目生物細胞に発現可能に導入されてなる、ゼニゴケ目生物形質発現体も、本発明に包含される。ゼニゴケ目生物細胞は、好ましくは、ゼニゴケ細胞である。
ここで「ゼニゴケ目生物形質発現体」とは、ゼニゴケ目生物の細胞、組織、器官のみならず、植物個体(植物体)を含む意味である。
【0054】
上記組換え形質発現ベクターをゼニゴケ目生物細胞に導入する方法、すなわち形質転換方法も特に限定されるものではなく、細胞の種類に応じて適宜選択すればよい。例えば、アグロバクテリウム感染法、電気穿孔法、PEG−リン酸カルシウム法、パーティクルガン法等の従来公知の方法を好適に用いることができる。このようなゼニゴケ目生物の形質転換体を作製する技術については、例えば、Plant Cell Physiol., 49, p1048 (2008)等に記載されている。
【0055】
ゼニゴケ目生物細胞の形質転換に用いられる組換え形質発現ベクターは、該ゼニゴケ目生物細胞内で目的とする外来遺伝子を形質発現させることが可能なものであれば特に限定されない。なお、組換え形質発現ベクターが導入されるゼニゴケ目生物細胞には、種々の形態の植物組織、葉状体の切片、カルス、培養細胞などが含まれる。外来遺伝子は、形質発現組換えベクターにより、ゼニゴケ目生物細胞の葉緑体等の核以外の細胞内小器官に導入されてもよい。
【0056】
(3)ゼニゴケ目生物形質発現体による有用物質の生産
本発明のゼニゴケ形質発現体は、有用物質の生産に好適に用いることができるものである。上記のようにして得られた、組換え形質発現ベクターがゼニゴケ目生物細胞に発現可能に導入されてなるゼニゴケ形質発現体を、培養又は栽培することにより、導入した外来遺伝子の発現産物を有用物質として生産することができる。ここで、外来遺伝子の発現産物が酵素である場合には、その酵素によって触媒される反応の産物、又は該反応に続く一連の生合成反応経路上の中間体及び/又は最終生産物をも有用物質として生産することができる。さらに、目的遺伝子が、タンパク質リン酸化酵素やG−タンパク質などの情報伝達機構において、生合成等の反応経路全体の機能調節を司る制御遺伝子(マスター遺伝子などとも呼ばれる)である場合には、該制御遺伝子の情報伝達下流に存在する反応経路上の中間体及び/又は最終生産物をも有用物質として生産することができる。
【0057】
例えば、有用物質の生産にかかわる遺伝子として、国際公開第WO2011/010485号等に記載されているプロスタグランジンの生合成に関与するホスホリパーゼ、リポキシゲナーゼ及びシクロオキシゲナーゼをコードする遺伝子、特開2011−123号公報等に記載されている不飽和脂肪酸合成系遺伝子等が好ましい。
【0058】
ゼニゴケ目生物形質発現体がゼニゴケ培養細胞又はゼニゴケ組織である場合、培養は、通常の植物培養培地、例えばM51C培地(Takenaka et al., Transgenic Research, 9, 179−185(2000))等を用いることにより行うことができる。培養方法は、通常の固体培養法でもよいが、液体培養法を採用することが好ましい。ゼニゴケ目生物形質発現体が植物体である場合は、ガラスハウス等で栽培又は水耕培養することができる。また、例えば、ゼニゴケ目生物の繁殖形態として無性生殖(栄養生殖)によることが好ましい。つまりゼニゴケ目生物については、その形質発現体を、無性生殖(栄養生殖)により増殖又は生育させると、生長速度が早く植物工場システムとしても大量生産が可能であるため好ましい。植物用栽培床及び植物栽培方法については、公知の方法を使用できる。また、例えば、特開2010−088314号公報に記載の方法(縦型多段式栽培棚を用いマット方式による栽培装置)等も使用することができる。
【0059】
ゼニゴケ目生物形質発現体を培養又は栽培する条件及び時間は、適宜選択すればよい。ゼニゴケ目生物の場合、培養又は栽培温度は、通常約20〜30℃、好ましくは約25〜30℃である。
【0060】
培養又は栽培終了後、培養物、植物器官又は植物体より有用物質を採取する。有用物質の採取方法は、各物質の通常の精製手段を用いることができる。培養物、植物器官又は植物体から有用物質を採取するには、通常、磨砕処理等を行って上記有用物質の抽出液を調製し、その後は公知の精製手法により有用物質を精製する。
【0061】
上記のように有用物質生産に関わる遺伝子をゼニゴケ目生物細胞に導入してなる形質発現体により、高効率で、しかも低コストかつ環境にやさしい生産プロセスでプロスタグランジン等の有用物質を生産することができる。
【0062】
(4)ゼニゴケ目生物細胞内で外来遺伝子の発現を増強する方法
上記ゼニゴケ目生物形質発現体を増殖又は生育させることにより、ゼニゴケ目生物細胞内で導入した外来遺伝子の発現を高発現させることができる。
本発明は、上記ゼニゴケ目生物形質発現体を培養又は栽培する工程を含む、ゼニゴケ目生物細胞内で外来遺伝子の発現を増強する方法も包含する。
【0063】
ゼニゴケ目生物形質発現体を培養又は栽培する方法は特に限定されず、ゼニゴケ目生物形質発現体を上述したように適宜培養又は栽培すればよい。
【0064】
上記組換え形質発現ベクターをゼニゴケ目生物細胞に導入する工程を含む、ゼニゴケ目生物細胞内で外来遺伝子の発現を増強する方法も、本発明に包含される。本発明の方法は、さらに、組換え形質発現ベクターが導入されたゼニゴケ目生物細胞(ゼニゴケ目生物形質発現体)を培養又は栽培する工程を含むことが好ましい。
【0065】
(5)ゼニゴケ形質発現体における導入遺伝子発現検出方法
ゼニゴケ目形質転換体において、導入した外来遺伝子の発現を検出する方法は特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜選択すればよい。例えば、外来遺伝子の配列を含むプローブを用いたノザンハイブリダイゼーション法、あるいはまた外来遺伝子の配列の5’及び3’側のプライマーを用いたRT-PCR(Reverse Transcription-PCR)によって検出することができる。
【0066】
(6)遺伝子検出器具
本発明のいずれかのDNA断片又はその相補配列をプローブ又はプライマーとして用いる遺伝子検出器具も、本発明に包含される。
このような遺伝子検出器具は、種々の条件下において、本発明のDNA断片の発現パタ−ンの検出及び/又は測定などに利用することができる。
【0067】
本発明の遺伝子検出器具としては、例えば、本発明の遺伝子と特異的にハイブリダイズする上記プローブを基盤(担体)上に固定化したDNAチップが挙げられる。ここで「DNAチップ」とは、主として、合成したオリゴヌクレオチドをプローブに用いる合成型DNAチップを意味するが、PCR産物などのcDNAをプローブに用いる貼り付け型DNAマイクロアレイをも包含するものとする。
【0068】
プローブとして用いる配列は、cDNA配列の中から特徴的な配列を特定する従来公知の方法によって決定することができる。具体的には、例えば、SAGE:Serial Analysis of Gene Expression法(Science 276:1268,1997;Cell 88:243,1997;Science 270:484,1995;Nature 389:300,1997;米国特許第5,695,937号)等を挙げることができる。
【0069】
なお、DNAチップの製造には、公知の方法を採用すればよい。例えば、オリゴヌクレオチドとして合成オリゴヌクレオチドを使用する場合には、フォトリソグラフィ−技術と固相法DNA合成技術との組み合わせにより、基盤上で該オリゴヌクレオチドを合成すればよい。一方、オリゴヌクレオチドとしてcDNAを用いる場合には、アレイ機を用いて基盤上に貼り付ければよい。
【0070】
また、一般的なDNAチップと同様、パーフェクトマッチプローブ(オリゴヌクレオチド)と、該パーフェクトマッチプローブにおいて一塩基置換されたミスマッチプローブとを配置して遺伝子の検出精度をより向上させてもよい。さらに、異なる遺伝子を並行して検出するために、複数種のオリゴヌクレオチドを同一の基盤上に固定してDNAチップを構成してもよい。
【0071】
本発明に係る遺伝子検出器具は、上記例示したDNAチップに限定されるものではなく、本発明に係る遺伝子の少なくとも一部の塩基配列又はその相補配列をプローブ又はプライマーとして用いたものであればよい。
【実施例】
【0072】
以下、実施例を示し、本発明をさらに詳しく説明する。ただし、本発明はこれら実施例にその技術的範囲が限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。さらに本発明は技術的実施形態に限定されるものではなく、上記に示した種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0073】
本実施例において実験手法は、特に断らない限り、Molecular Cloning 3rd Ed.(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Laboratory (2001))に記載されている方法に従った。得られたゲノムクローンの塩基配列は、3130xlジェネティックアナライザ(Applied Biosystems社)により決定した。
【0074】
<実施例1>ゼニゴケ培養細胞を用いた一過性発現解析
KpnI及びHindIIIサイトを付加したゼニゴケ由来EF1αプロモーター断片の作製方法
シロイヌナズナEF1α遺伝子のアミノ酸配列(Accession No. X16431)と相同性を示すクローンを、ゼニゴケの部分ゲノムデータより探索した。その結果得られたゲノムクローンの塩基配列から、ゼニゴケEF1α遺伝子のプロモーター配列を同定した。ゼニゴケEF1α遺伝子のプロモーター配列を、配列番号1に示す。プロモーター配列の5’及び3’側の配列にそれぞれKpnI、HindIIIサイトを付加したプライマー(ggggtaccCAAATGAGTCACACACATT(配列番号4)及びccaagcttCAACCTTTCTGCAGGCACA(配列番号5))を用いてPCRを行い(95℃ 30秒、55℃ 30秒、72℃ 2分を25サイクル)、KpnI及びHindIIIサイトを付加したゼニゴケ由来EF1αプロモーター断片を増幅した。
【0075】
HindIII及びNcoIサイトを付加したゼニゴケ由来UDP遺伝子の5’-UTR断片の作製方法
タバコADH遺伝子のアミノ酸配列(Accession No. 2121462A)と相同性を示すクローンを、ゼニゴケのESTライブラリーより探索した。その結果得られたESTクローンの塩基配列から、ゼニゴケUDP遺伝子(ADH様UDP-グルコース脱水素酵素遺伝子と相同性のある遺伝子)の5’-UTR配列を同定した。このゼニゴケUDP遺伝子の5’-UTR配列を、配列番号2に示す。この5’-UTR配列の5’及び3’側の配列にそれぞれHindIII、NcoIサイトを付加したプライマー(ccaagcttGGGCGACCGTCAGGGTTTCTC(配列番号6)及びaaccatggTTCGCAGAATGGCAACA(配列番号7))を用いてPCRを行い(95℃ 30秒、55℃ 30秒、72℃ 30秒を25サイクル)、HindIII及びNcoIサイトを付加したゼニゴケ由来UDP遺伝子の5’-UTR断片を増幅した。
【0076】
XbaI及びBamHIサイトを付加したゼニゴケ由来FT1遺伝子のターミネーター断片の作製方法
シロイヌナズナFT1遺伝子のアミノ酸配列(Accession No. AB027504)と相同性を示すクローンを、ゼニゴケの部分ゲノムデータより探索した。その結果得られたゲノムクローンの塩基配列から、ゼニゴケFT1遺伝子のターミネーター配列を同定した。ゼニゴケFT1遺伝子のターミネーター配列を、配列番号3に示す。このターミネーター配列の5’及び3’側の配列にそれぞれXbaI、BamHIサイトを付加したプライマー(cctctagaTAATACTTCTGACTTCC(配列番号8)及びccggatccATGGTTCATATCATGCCGAT(配列番号9))を用いてPCRを行い(95℃ 30秒、55℃ 30秒、72℃ 1分を25サイクル)、XbaI及びBamHIサイトを付加したゼニゴケ由来FT1遺伝子のターミネーター断片を増幅した。
【0077】
図1の(A)〜(C)に、ホタルルシフェラーゼ遺伝子(Synthetic Firefly luciferase: Fluc遺伝子)をゼニゴケ目生物細胞で発現させるための、基礎ベクター phRG−Bからの組換え形質発現ベクターの作製方法の概要を示す。図1の(A)〜(C)及び図2の(A)〜(C)中、「p35S」は、CaMV35Sプロモーターであり、「tNOS」は、NOSターミネーターであり、「Fluc」はホタルルシフェラーゼ(Fluc)遺伝子である。「pMpEF1α」は、ゼニゴケ由来EF1αプロモーター(配列番号1)である。「5’UTR」はゼニゴケ由来UDP遺伝子(ADH様 UDP−グルコース脱水素酵素遺伝子と相同性のある遺伝子)の5’UTR(配列番号2)である。「tMpFT1」は、3’UTRを含むゼニゴケ由来FT1ターミネーター(配列番号3)である。
【0078】
図1の(A)に示すように、ホタルルシフェラーゼ遺伝子(Synthetic Firefly luciferase: Fluc遺伝子)を持つ基本ベクターphRG-B(プロメガ社製)にCaMV35Sプロモーター及びNOSターミネーターを導入したプラスミドCaMV35S-Fluc-tNOS-phRG-Bをもとに作製した。まずこのプラスミドCaMV35S-Fluc-tNOS-phRG-BをKpnI及びHindIIIで消化し、これに、上記で作製したKpnI及びHindIIIサイトを付加したゼニゴケ由来EF1αプロモーター断片(約1.7 kb)を導入し、プラスミド(形質発現ベクター)pMpEF1α-Fluc-tNOSを作製した(図1の(A))。
【0079】
図1の(B)に示すように、プラスミドCaMV35S-Fluc-tNOS-phRG-BをHindIII及びNcoIで消化し、上記で作製したHindIII及びNcoIサイトを付加したゼニゴケ由来UDP遺伝子の5’UTR断片(331 bp)を導入し、プラスミド(形質発現ベクター)CaMV35S-5’UTR-Fluc-tNOSを作製した(図1の(B))。
【0080】
図1の(C)に示すように、プラスミドCaMV35S-Fluc-tNOS-phRG-BをXbaI及びBamHIで消化し、上記で作製したXbaI及びBamHIサイトを付加した3’UTRを含むゼニゴケ由来FT1ターミネーター断片(300bp)を導入し、プラスミド(形質発現ベクター)CaMV35S-Fluc-tMpFT1を作製した(図1の(C))。
【0081】
図2の(A)〜(C)に模式図に示す上記の形質発現ベクターのDNAをPlasmid Midi Kit (QIAGEN)を用いて調製した。図2の(A)は、プラスミドpMpEF1α-Fluc-tNOSの構造を示す模式図である。図2の(B)は、プラスミドCaMV35S-5’UTR-Fluc-tNOSの構造を示す模式図である。図2の(C)は、プラスミドCaMV35S-Fluc-tMpFT1の構造を示す模式図である。
【0082】
コントロールDNAとして、プラスミドCaMV35S-Fluc-tNOS-phRG-BのFlucをウミシイタケルシフェラーゼ(Rluc; Renilla luciferase)に置換したプラスミドCaMV35S-Rluc-tNOS-phRG-Bを使用した。
【0083】
図2の(A)〜(C)に模式図に示す各ベクターDNAと形質転換効率を評価するためのウミシイタケルシフェラーゼ(Rluc)遺伝子を持つコントロールDNAを1.0μmの金粒子にコーティングし、マクロキャリアー(BioRad社)の上に広げた。4日間22℃で、M51C培地中で液体培養したゼニゴケ培養細胞から吸引濾過によって培地を取り除き、培養細胞をM51C寒天培地上に広げた。パーティクルガンの装置(BIOLISTIC PDS-1000/He delivering System, BioRad社)にマクロキャリーをセットし、寒天培地に広げた培養細胞を下から1段目にセットした。28mmHg下、1,100psiの圧力で、DNAをコーティングした金粒子を培養細胞に打ち込んだ。金粒子を打ち込んだ培養細胞を、22℃の暗所下に2日間置いた。
【0084】
DNAを打ち込んだ培養細胞のルシフェラーゼ活性は、Dual-Luciferase Reporter Assay System (Promega社)及びルミノメーター (Lumat LB 9501, Berthold Technologies社)を用いて測定した。培養細胞にLysis buffer 200μlを加え、細胞をすりつぶし、遠心して、上清をとった。この上清にFluc活性測定試薬を加えて、Fluc活性を測定し、次にRluc活性測定試薬を加えて、Rluc活性を測定した(n=3)。結果は、Rluc活性を1とした場合のFluc活性の相対的な活性の大きさ(Fluc活性/Rluc活性)で評価した。結果を、図3及び図4に示す。図3及び図4に示される結果は、平均値である。
【0085】
上記のような、レポーターとしてルシフェラーゼを用いた一過的発現解析の結果、ゼニゴケEF1αプロモーター(配列番号1)をプロモーターとして用いると、CaMV35Sプロモーターと比較して約70倍高いFluc活性が得られた(図3)。つまりゼニゴケEF1αプロモーター(配列番号1)をプロモーターとして用いると、CaMV35Sプロモーターを用いた場合と比較して、約70倍外来遺伝子を高発現させることができた。また、CaMV35SプロモーターにゼニゴケのUDP遺伝子の5’UTR配列(配列番号2)を付加することにより、CaMV35Sプロモーターのみの場合と比較して、約15倍のFluc活性上昇が確認された(図3)。さらに、ゼニゴケFT1ターミネーター(配列番号3)をターミネーターとして用いると、NOSターミネーターを用いた場合と比較して約3倍高いFluc活性が得られた(図4)。このため、ゼニゴケFT1ターミネーター(配列番号3)をターミネーターとして用いると、外来遺伝子の発現を安定化させることができ、該遺伝子を高発現させることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(a)〜(d)のいずれかのDNAを含むDNA断片。
(a)配列番号2に示される塩基配列からなるDNA
(b)配列番号2に示される塩基配列において、1〜複数個の塩基が欠失、置換、又は付加された配列からなり、かつゼニゴケ目生物細胞において5’−UTR活性を有するDNA
(c)配列番号2に示される塩基配列の一部からなり、かつゼニゴケ目生物細胞において5’−UTR活性を有するDNA
(d)配列番号2に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNA又はその一部とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつゼニゴケ目生物細胞において5’−UTR活性を有するDNA
【請求項2】
下記の(a)〜(d)のいずれかのDNAを含むDNA断片。
(a)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA
(b)配列番号1に示される塩基配列において、1〜複数個の塩基が欠失、置換、又は付加された配列からなり、かつゼニゴケ目生物細胞においてプロモーター活性を有するDNA
(c)配列番号1に示される塩基配列の一部からなり、かつゼニゴケ目生物細胞においてプロモーター活性を有するDNA
(d)配列番号1に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNA又はその一部とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつゼニゴケ目生物細胞においてプロモーター活性を有するDNA
【請求項3】
下記の(a)〜(d)のいずれかのDNAを含むDNA断片。
(a)配列番号3に示される塩基配列からなるDNA
(b)配列番号3に示される塩基配列において、1〜複数個の塩基が欠失、置換、又は付加された配列からなり、かつゼニゴケ目生物細胞においてターミネーター活性を有するDNA
(c)配列番号3に示される塩基配列の一部からなり、かつゼニゴケ目生物細胞においてターミネーター活性を有するDNA
(d)配列番号3に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNA又はその一部とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつゼニゴケ目生物細胞においてターミネーター活性を有するDNA
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載のDNA断片を含む組換え形質発現ベクター。
【請求項5】
さらに、導入すべき外来遺伝子を含む請求項4に記載の組換え形質発現ベクター。
【請求項6】
請求項5に記載の組換え形質発現ベクターがゼニゴケ目生物細胞に発現可能に導入されてなる、ゼニゴケ目生物形質発現体。
【請求項7】
請求項6に記載の形質発現体を培養又は栽培する工程を含む、ゼニゴケ目生物細胞内で外来遺伝子の発現を増強する方法。
【請求項8】
請求項5に記載の組換え形質発現ベクターをゼニゴケ目生物細胞に導入する工程を含む、ゼニゴケ目生物細胞内で外来遺伝子の発現を増強する方法。
【請求項9】
請求項1〜3の何れか1項に記載のDNA断片又はその相補配列をプローブ又はプライマーとして用いる遺伝子検出器具。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−22000(P2013−22000A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162620(P2011−162620)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度生物系特定産業技術研究支援センター「生物系産業創出のための異分野融合研究支援事業」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(511169999)石川県公立大学法人 (12)
【Fターム(参考)】