説明

ゼラチン皮膜用組成物、カプセル皮膜用組成物、カプセル皮膜、これを用いたカプセル剤、及びカプセル剤の製造方法

【課題】ゼラチン皮膜の経時的な溶解性低下をより高度に抑制し、特に軟カプセル剤の場合、同時にカプセルに十分な強度を付与するゼラチン皮膜用組成物、カプセル皮膜用組成物、並びにこれを用いたカプセル皮膜及びカプセル剤を提供する。
【解決手段】本発明のカプセル皮膜は、ゼラチン(A)と一般式C12−n・(HPO(式中、nは1〜5の整数)で表されるイノシトールリン酸(B)とを含むことを特徴とする。本発明のカプセル剤は、該カプセル皮膜を備えたことを特徴とする。本発明のカプセル剤は、充填内容物が生薬、不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸残基含有油脂、ミネラル、ミネラル含有酵母及びビタミンCから選択される1種以上を含む場合に特に有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼラチンを含むカプセル皮膜用組成物、カプセル皮膜、及びこれを用いたカプセル剤に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬や食品の分野では、安全性や体内での速溶解性等の観点から、皮膜にゼラチンを用いたゼラチンカプセル剤が汎用されている。しかしながら、ゼラチンカプセル剤は、ゼラチン分子と充填内容物又はその分解物との相互作用による架橋等により、有効成分のバイオアベイラビリティーに繋がる皮膜の溶解性が経時的に低下しやすい傾向にある。この問題は特に、充填内容物に、生薬、DHAやEPA等の高級不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸残基含有油脂等が含まれる場合に顕著である。
上記問題を解消するべく、(1)ゼラチン皮膜へのアミノ酸、クエン酸、酒石酸、又はフマール酸の添加(特許文献1及び2)、(2)ゼラチン皮膜へのプルラン及びポリペプチドの添加(特許文献3)等が提案されている。
【0003】
また、軟カプセル剤の一般的問題として、カプセル成型時に皮膜接合部の十分な接着厚みが得られず、その結果、カプセルの強度が不十分となり、接合部からの内容物のリークや、カプセル破損などを生じることが知られている。
【特許文献1】特公昭57−30088号公報
【特許文献2】特開昭59−39834号公報
【特許文献3】特開平05−65222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記先行技術(1)及び(2)では、皮膜の溶解性低下を充分に抑制するには到っていない。
また、軟カプセル剤の強度向上効果は、必ずしも十分満足できるものではない。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、ゼラチン皮膜の経時的な溶解性低下をより高度に抑制し、特に軟カプセル剤の場合、同時にカプセルに十分な強度を付与するカプセル皮膜用組成物、並びに、これを用いたカプセル皮膜及びカプセル剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、ゼラチン皮膜、カプセル皮膜に、イノシトールリン酸を配合することで、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明のゼラチン皮膜用組成物は、ゼラチン(A)と、一般式C12−n・(HPO(式中、nは1〜5の整数を表す)で表されるイノシトールリン酸(B)とを含むことを特徴とする。
本発明のカプセル皮膜用組成物は、ゼラチン(A)と、一般式C12−n・(HPO(式中、nは1〜5の整数を表す)で表されるイノシトールリン酸(B)とを含むことを特徴とする。
本発明のカプセル皮膜は、ゼラチン(A)と、一般式C12−n・(HPO(式中、nは1〜5の整数を表す)で表されるイノシトールリン酸(B)とを含むことを特徴とする。
【0007】
本発明のカプセル剤は、上記の本発明のカプセル皮膜を備えたことを特徴とする。本発明のカプセル剤は、充填内容物が、生薬、不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸残基含有油脂、ミネラル、ミネラル含有酵母及びビタミンCから選択される1種以上を含む場合に特に有効である。また、本発明のカプセル剤としては、充填内容物に、リン脂質、アミノ糖、及び有機酸から選択される1種以上を配合してなるものが好ましい。さらに、本発明のカプセル剤は、軟カプセル剤の場合に特に有効である。
【0008】
本発明の軟カプセル剤の製造方法は、少なくともゼラチン(A)と、一般式C12−n・(HPO(式中、nは1〜5の整数を表す)で表されるイノシトールリン酸(B)とを含むカプセル皮膜用組成物を調製する工程、カプセル皮膜用組成物からカプセル皮膜を調製し、カプセル皮膜の間に充填内容物を挟み込み圧着してカプセル化する工程、を含むことを特徴とする。本発明の軟カプセル剤の製造方法においては、リン脂質、アミノ糖、及び有機酸から選択される1種以上を含む充填内容物を調製する工程を含むことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ゼラチン皮膜の経時的な溶解性低下を、より高度に抑制し、特に軟カプセル剤の場合、同時に十分なカプセル強度を付与するカプセル皮膜用組成物、並びに、これを用いたカプセル皮膜及びカプセル剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳述する。
「カプセル皮膜用組成物、カプセル皮膜」
本発明のカプセル皮膜用組成物は、カプセル皮膜の製造のために用いられる組成物であって、少なくともゼラチン(A)と、一般式C12−n・(HPO(式中、nは1〜6の整数を表す)で表されるイノシトールリン酸(B)とを含むことを特徴とする。
本発明のカプセル皮膜は、ゼラチン(A)と、一般式C12−n・(HPO(式中、nは1〜6の整数を表す)で表されるイノシトールリン酸(B)とを含むことを特徴とする。
本発明者らは、ゼラチン皮膜にイノシトールリン酸を添加することで、ゼラチン分子と充填内容物又はその分解物との相互作用による架橋等に起因する皮膜の経時的な溶解性低下が著しく抑制され、特に軟カプセル剤の場合、皮膜接合部が十分な厚みでもって接着されることにより、カプセルに十分な強度を付与でき、皮膜接合部からの内容物のリークや、カプセル破損などを防ぐことができることを見出している。
【0011】
主成分のゼラチン(A)としては制限はなく、酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチン、両性処理ゼラチン、化学修飾ゼラチン等、一般のカプセル剤に使用されている公知のゼラチンを用いることができる。これらは1種又は2種以上用いることができる。
ゼラチンはコラーゲンの加水分解処理を経て抽出されるが、加水分解剤として、塩酸や硫酸等の酸を用いるものが「酸処理ゼラチン」、石灰等のアルカリを用いるものが「アルカリ処理ゼラチン」、酸及びアルカリを用いるものが「両性処理ゼラチン」である。また、「化学修飾ゼラチン」は、ゼラチンのアミノ基をコハク酸やフタル酸等の有機酸と反応させて得られるものである。中でも、酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチンが好ましく用いられる。
【0012】
イノシトールリン酸(B)は上記式で表されるものであり、導入されたリン酸基の個数n=1〜6に対応して、イノシトール1リン酸、イノシトール2リン酸、イノシトール3リン酸、イノシトール4リン酸、イノシトール5リン酸、及びイノシトール6リン酸(フィチン酸)がある。これらは1種又は2種以上用いることができる。
中でも、溶解性低下の抑制および強度付与効果がより優れることから、(B)成分として、リン酸基の個数n=3〜6のもの、特にn=6のもの(フィチン酸)を用いることが好ましい。
【0013】
イノシトールリン酸(B)の添加量は制限されない。但し、(B)成分量が過少では、該成分の添加効果(溶解性低下の抑制および強度付与効果)が充分に発現しない恐れがあり、過多では、特に軟カプセル剤において、皮膜のpH低下や、ゼラチンの配合量が相対的に低下することなどによるカプセル強度の低下やカプセル剤同士の癒着が生じる恐れがある。したがって、カプセル皮膜中のイノシトールリン酸(B)量は、ゼラチン(A)に対して、0.05〜15質量%、さらには1〜10質量%、特に2〜8質量%が好ましい。
【0014】
本発明のカプセル皮膜用組成物及びカプセル皮膜には、(A)成分及び(B)成分の他、必要に応じて、カプセル皮膜に一般に用いられる各種添加剤、例えば、アミノ酸、クエン酸等の(B)成分以外のグリセリンやソルビトール等の可塑剤、防腐剤、色素や酸化チタン等の着色剤、有機酸等を配合することができる。
【0015】
カプセル皮膜用組成物は、例えば、(A)成分及び(B)成分、さらに必要に応じて各種添加剤を、常温又は加温下で、水に混合溶解することで製造できる。
【0016】
カプセル皮膜は、概略、上記カプセル皮膜用組成物を皮膜化し、所定形状に成形、及び乾燥することで製造できる。乾燥後のカプセル皮膜中の水分量は制限されないが、5〜20質量%、特に、7〜15質量%が好ましい。
カプセル皮膜の成形と、内容物充填のタイミングは、カプセル剤のタイプによって異なる。本発明は、軟カプセル剤、硬カプセル剤のいずれにも適用可能であるが、特に軟カプセル剤が好ましい。
「軟カプセル剤」では、グリセリンやソルビトール等の可塑剤を配合し、塑性を増した比較的ソフトな薄膜状のカプセル皮膜にて、充填内容物を被包し、被包と同時に又は被包後に所定形状に成形して、カプセル剤を製造する(被包成形)。「硬カプセル剤」では、あらかじめ所定形状に加工した比較的ハードなカプセル皮膜に、充填内容物をそのまま充填する、若しくは充填後軽く成形して、カプセル剤を製造する。
【0017】
本発明は特に、ゼラチン分子と充填内容物又はその分解物との相互作用による架橋等が相対的に起こりやすい軟カプセル剤に対して有効である。
軟カプセル剤の場合、例えば、ロータリー式ソフトカプセル充填機を用い、カプセル皮膜用組成物を薄膜状に加工し、これを左右両側からロール金型に供給し、所定形状に打ち抜く直前に充填内容物を圧入し、成形及び乾燥することで、カプセル剤を製造することができる。
【0018】
硬カプセル剤の場合、例えば、精製水にゼラチンを撹拌しながら溶解し、更にイノシトールリン酸を加えて浸漬液を調製し、この浸漬液にステンレス製の成型ピンを漬け、次いでその成型ピンを回転させながら乾燥させ作製する浸漬法等を用いることができる。
【0019】
本発明のカプセル皮膜用組成物及びカプセル皮膜では、イノシトールリン酸(B)を配合することで、ゼラチン皮膜の経時的な溶解性低下を著しく抑制し、特に軟カプセル剤の場合、同時にカプセル皮膜の接着部の厚みを向上させることで、カプセルに十分な強度を付与することを実現した。
本発明の技術によれば、一般公知の皮膜用組成物にイノシトールリン酸(B)を配合するだけでよいので、従来の製法を変えることなく、カプセル剤を製造することができ、好適である。
【0020】
「カプセル剤」
本発明のカプセル剤は、上記の本発明のカプセル皮膜を備えたことを特徴とする。
本発明は上記したように、軟カプセル剤、硬カプセル剤のいずれにも適用可能であるが、特に軟カプセル剤が好ましい。
充填内容物の形態には制限はなく、液状、懸濁状、ペースト状、粉末状、顆粒状等、いずれであっても良い。顆粒状の場合、コーティング剤にて剤皮を施したものでも良い。
【0021】
本発明のカプセル剤は、医薬品、医薬部外品、健康食品、一般食品、化粧品等の種々の用途に利用することができ、充填内容物の組成は用途に応じて適宜決定される。
本発明は、カプセル皮膜にイノシトールリン酸(B)を配合することで、皮膜の経時的な溶解性低下を著しく抑制し、特に軟カプセル剤の場合、同時にカプセル皮膜の接着部の厚みを向上させることで、カプセルに十分な強度を付与するものであり、充填内容物の組成にかかわらず効力を発揮する。
さらに、本発明者は、充填内容物に、リン脂質、アミノ糖、及び有機酸から選択される1種以上を配合することで、充填内容物のカプセル皮膜への影響を減じ、皮膜の経時的な溶解性低下を一層抑制できることを見出している。
【0022】
「リン脂質」としては制限はないが、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン(レシチン)、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン(ケファリン)、ホスファチジルカルジオリピン、ホスファチジン酸、スフィンゴエミリン、及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらは1種又は2種以上用いることができる。
中でも、溶解性低下の抑制効果に優れることから、ホスファチジルエタノールアミン及びその誘導体が好ましい。ホスファチジルエタノールアミンの誘導体としては、ジアシル型であるホスファチジルエタノールアミンのモノアシル型(リゾ型)、アルケニル型、さらに塩基部分がメチル化されたN−メチル型、N,N−ジメチル型、N−アシル型等が挙げられる。
上記リン脂質を1種以上含有するリン脂質含有製品として、大豆リン脂質(大豆レシチン)、卵黄リン脂質(卵黄レシチン)等が市販されており、これらは入手し易く、効果も優れることから、好ましく用いられる。これらは精製品であっても粗精製品であってもよく、水素添加物や粉末化されたものであってもよい。
【0023】
「アミノ糖」としては制限はないが、グルコサミン、N−アセチルグルコサミン、ガラクトサミン、N−アセチルガラクトサミン、N−アセチルノイラミン酸等のアミノ基を有する糖類あるいはグルコサミンのポリマーが挙げられる。具体的には、キトサン及びその誘導体、ポリガラクトサミン及びその誘導体など、糖の水酸基がアミノ基で置換された構造を有する化合物が挙げられる。キトサン及びその誘導体としては、低分子量キトサン、高分子量キトサン、キトサンオリゴ糖等が挙げられ、キチンを脱アセチル化したものはすべて好適に用いられる。アミノ糖は1種又は2種以上用いることができる。
【0024】
「有機酸」としては制限はなく、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、フェニルアラニン、アルギニン、リジン等のアミノ酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、イノシトールリン酸等が挙げられる。これらは1種又は2種以上用いることができる。
中でも、溶解性低下の抑制効果に優れることから、イノシトールリン酸、クエン酸が好ましい。イノシトールリン酸としては、イノシトール1リン酸、イノシトール2リン酸、イノシトール3リン酸、イノシトール4リン酸、イノシトール5リン酸、及びイノシトール6リン酸(フィチン酸)が挙げられるが、特にフィチン酸を用いることが好ましい。
【0025】
上記したように、充填内容物には、リン脂質、アミノ糖、及び有機酸のうち、少なくとも1種を配合すればよいが、特にリン脂質と有機酸を配合した場合が好ましい。これらの添加量は制限されないが、過少では添加効果が充分に発現せず、過多では医薬等の有効成分の量が相対的に低下するので、総添加量は、充填内容物総量に対して、0.05〜20質量%、さらには0.1〜10質量%、特に0.5〜10質量%が好ましい。
【0026】
本発明は、充填内容物の組成にかかわらず効力を発揮するが、従来、ゼラチン皮膜の溶解性低下の問題が顕著であったことから、充填内容物が、生薬、不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸残基含有油脂、ミネラル、ミネラル含有酵母及びビタミンCから選択される1種以上を含む場合に特に有効である。
【0027】
「生薬」とは、動植物・鉱物等の一部又は全部を、そのまま、あるいは性質を変えない程度に切断、破砕、乾燥等の簡単な加工・調製をして、医薬品原料(漢方薬、民間薬を含む)、香粧料、香辛料等に用いられるものを指す。なお、カプセル剤では、生薬末の他、その抽出物、エキス若しくはチンキ等の形態で使用することができる。
【0028】
生薬の具体例としては、アカメガシワ、アセンヤク、アロエ、イカリソウ、ウイキョウ、ウバイ、ウヤク、ウワウルシ、ウコン、エイジツ、エゾウコギ、エンゴサク、エンメイソウ、オウギ、オウゴン、オウセイ、オウバク、オウヒ、オウレン、オンジ、カイクジン、カイバ、カシュウ、ガジュツ、カッコン、カノコソウ、ガラナ、カンゾウ、キキョウ、キジツ、キョウニン、クコシ、ケイガイ、ケイヒ、ケツメイシ、ゲンチアナ、ゲンノショウコ、コウジン、コウボク、ゴオウ、ゴカヒ、ゴシツ、ゴシュユ、ゴミシ、サイコ、サイシン、サイム、サルビア、サンキライ、サンザシ、サンシシ、サンシュユ、サンショウ、サンソウニン、サンヤク、ジオウ、シベット、シャクヤク、ジャショウシ、シャゼンソウ、ジュウヤク、シュクシャ、ショウキョウ、ショウズク、ジョテイシ、ジリュウ、シンイ、セネガ、センキュウ、ゼンコ、センブリ、ソウジュツ、ソウハクヒ、ソヨウ、ダイオウ、タイソウ、チョウジ、チョウトウコウ、チンピ、トウガラシ、トウキ、トウジン、トウニン、トウヒ、トコン、トシシ、トチュウ、ナンテンジツ、ナンバンゲ、ニクジュヨウ、ニンニク、バクモンドウ、ハマボウフウ、ハンゲ、ハンピ、ビャクジュツ、ブクリョウ、ボウイ、ホコツシ、ボタンピ、ホップ、マオウ、モクテンリョウ、ムイラプアマ、モッコウ、ヨクイニン、リュウガンニク、リュウタン、ロートコン、ロクジョウ、キクカ、麦若葉、コウカ、サラシア、ニンドウ、薬用人参(高麗人参、田七人参等)、ヨモギ、緑茶、ハーブ類(イチョウ葉、セントジョーンズワート、カモミール、カバカバ、ブルーベリー、ビルベリー、ノコギリヤシ、サラシアオブロンガ、ガルシニア、ローズマリー、シトラス、ヒメツルニチニチソウ、エキナセア等)等の植物、その抽出物、エキス若しくはチンキ;
アガリスク、メシマコブ、マンネンタケ、エノキタケ、スエヒロタケ、シイタケ、マイタケ、チャーガ(カバノアナタケ)、マッシュルーム、ハタケシメジ、カワラタケ、チャヒラタケ、サルノコシカケ、冬虫夏草、霊芝等のキノコ(子実体)をそのまま乾燥・粉砕して得られる粉末、キノコを熱水(エタノールを含むこともある。)で抽出したエキス、及びエキス末等;
動物抽出物、もしくはこれを酸、塩基又は酵素を用いて処理した加水分解物、動物の巣等から採取されるもの等(例えば、牛胆汁、コンドロイチン、グルコサミン、コラーゲン、プロポリス等);
穀物、植物、海産物等を麹菌、紅麹菌、乳酸菌、酢酸菌、納豆菌、酵母等で発酵させた発酵物のエキス;
生薬の組み合わせからなる漢方薬、例えば葛根湯(カッコン、タイソウ、シャクヤク、ショウキョウ、マオウ、ケイヒ、カンゾウ)、当帰芍薬(トウキ、センキョウ、シャクヤク、ブクリョウ、ソウジュツ、タクシャ)、八味地黄(ジオウ、サンヤク、ブクリョウ、ケイヒ、サンシュユ、タクシャ、ボタンピ、炮附子)、小青竜湯(マオウ、ショウキョウ、ケイヒ、ゴミシ、シャクヤク、カンゾウ、サイシン、ハンゲ)、麦門冬湯(バクモンドウ、コウベイ、ニンジン、ハンゲ、タイソウ、カンゾウ)、加味逍遥散(トウキ、ソウジュツ、サイコ、サンシシ、ショウキョウ、シャクヤク、ブクリョウ、ボタンピ、カンゾウ、ハッカ)等、が挙げられる。
充填内容物は、これら生薬を1種又は2種以上含むことができる。
皮膜の溶解性低下の抑制効果が大きいことから、本発明は、充填内容物が、ローズマリー、シトラス、ブルーベリー、ビルベリー、プロポリス、田七人参、高麗人参、アガリスク、メシマコブ、シイタケ、霊芝、及びこれらのエキス等を含む場合に特に有効である。
【0029】
「不飽和脂肪酸」としては制限されないが、皮膜の溶解性低下の抑制効果が大きいことから、本発明は、充填内容物が、炭素数14以上、さらには炭素数14〜22の長鎖不飽和脂肪酸を含む場合に特に有効である。
炭素数14以上の長鎖不飽和脂肪酸としては、DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタン酸)、リノール酸、アラキドン酸、オレイン酸、ピノレン酸、シアドン酸、ジュニペロン酸、コロンビン酸、共役リノール酸、エレオステアリン酸、オクタデセン酸、オクタデカジエン酸、ドコセン酸、リシノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、ベヘン酸等が挙げられる。充填内容物は、これら不飽和脂肪酸を1種又は2種以上含むことができる。本発明は特に、充填内容物がDHA及び/又はEPAを含む場合に有効である。
なお、不飽和脂肪酸は、不飽和脂肪酸単離品の形態で配合することもできるし、これを含む油の形態で配合することもできる。
【0030】
「不飽和脂肪酸残基含有油脂」は、油脂を構成する脂肪酸残基の少なくとも1つが、不飽和脂肪酸残基である油脂を指す。
不飽和脂肪酸残基含有油脂を1種又は2種以上含む油としては、大豆油、ナタネ油、米ぬか油、綿実油、ゴマ油、ヒマワリ油、カラシ油、サフラワー油、トウモロコシ油、ラッカセイ油、オリーブ油、パーム油、ヤシ油等の植物油、魚油、鯨油、牛脂、豚脂、乳脂等の動物油が挙げられる。充填内容物は、これらの油を1種又は2種以上含むことができる。
不飽和脂肪酸残基含有油脂として、上記した不飽和脂肪酸(DHA及びEPA)も多く含まれ、皮膜の溶解性低下の抑制効果が大きいことから、本発明は、充填内容物が魚油を含む場合に特に有効である。
【0031】
「ミネラル」として、特に制限はないが、例えば、カルシウム、リン、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、セレン、鉄及び銅等が挙げられる。これらの中でも、多価元素を本発明のカプセル剤の充填内容物として用いた場合、従来のカプセル剤では顕著に生じていた皮膜の不溶化を抑制することができることから、本発明は、カルシウム、リン、マグネシウム、亜鉛、セレン、鉄及び銅を含む場合により有効である。これらは、通常食品等に用いられる無機または有機塩として用いることができる。
なお、ここで言う「ミネラル」とは、人間の体内に存在する元素のうち、水素、酸素、炭素及び窒素を除いた、栄養学的に有用な元素の総称のことである。
【0032】
「ミネラル含有酵母」としては制限はないが、例えば、マグネシウム含有酵母、亜鉛含有酵母、セレン含有酵母、鉄含有酵母及び銅含有酵母等が挙げられる。ここで、ミネラル含有酵母とは、酵母菌体中にミネラルを取り込ませたものである。
【0033】
充填内容物には、上記成分の他、必要に応じて、医薬品、食品等に通常使用される添加剤、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、安定化剤、分散剤、着色剤、香味剤、中鎖脂肪酸モノグリセリド、中鎖脂肪酸トリグリセリド、ポリエチレングリコール類、界面活性剤(グリセリン脂肪酸エステル等)、抗酸化剤(ビタミンE、アスタキサンチン、カテキン等)等を適宜配合することができる。
【0034】
本発明のカプセル剤は、本発明のカプセル皮膜を備えたものであるので、経時的な溶解性低下が著しく抑制され、特に軟カプセル剤の場合、同時にカプセルに十分な強度が付与されたものである。
特に、充填内容物に、リン脂質、アミノ糖、及び有機酸から選択される1種以上を配合することで、溶解性低下を一層抑制することができ、好適である。
【実施例】
【0035】
以下、本発明に係る試験例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
◎皮膜の溶解性低下の抑制効果「試験例1」(実施例1−1、1−2、比較例1−1〜1−3)(ゼラチン皮膜の調製)
精製水100gに、ゼラチン100g及びグリセリン45gを加えて吸水膨潤させた後、約80℃で溶解し、ゼラチン溶液を調製した。この溶液に、表1に示す種類及び量の有機酸を添加し(表中の濃度は、組成物総量に対する濃度(質量%)を示す)、混合後、減圧下で脱泡し、カプセル皮膜用組成物を調製した。
得られた組成物を、TLCプレート板に流し込み、厚さ約1mmに均一に広げ、30℃で24時間乾燥して、含水率約9%の薄膜状のゼラチン皮膜を得た。各例において得られた皮膜を、1×1cmの小片に裁断し、下記評価に供した。
【0036】
(評価)
スクリュー管にDHA(魚油)15mlを入れ、各例で調製したゼラチン皮膜片を2片ずつ浸漬し、50℃で保存した。1日後及び2日後に、ゼラチン皮膜片を取出し、付着した内容物を拭き取った後、60℃の温水200mlに入れてスターラーで2分間攪拌した。静止状態で目視観察し、下記基準にて評価した。
判定基準
(−):ゼラチン皮膜片が完全に溶解し、溶け残りが全く認められない。
(±):溶け残りが僅かに認められる。
(+):溶け残りが少量認められる。
(++):溶け残りが中程度認められる。
(+++):溶け残りが多量に認められる。
(++++):ゼラチン皮膜片が全く溶解せず、完全に不溶化していた。
【0037】
(結果)
結果を表1に合わせて示す。
比較例1−1〜1−3では、2日後にはゼラチン皮膜は完全に不溶化していたのに対し、イノシトール6リン酸(フィチン酸)を添加した実施例1−1、1−2では、2日後もゼラチン皮膜が完全に溶解しており、イノシトール6リン酸を添加することで、ゼラチン皮膜の経時的な溶解性低下が著しく抑制されることが明らかとなった。
【0038】
【表1】

【0039】
「試験例2」(実施例2−1〜2−13)(軟カプセル剤の調製)
ゼラチン45質量%、グリセリン18質量%、表2に示す種類及び量のイノシトールリン酸(表中の濃度は、組成物総量に対する濃度(質量%)を示す)、及び水(残部)からなるカプセル皮膜用組成物を試験例1と同様に調製し、脱泡後、約10時間静置してから、カプセル剤の製造に供した。
ロータリー式ソフトカプセル充填機(オバール5型)を用いて、同表に示す種類及び量の成分を充填した。充填後、温度27℃、湿度50%以下で、カプセル皮膜を水分8%まで乾燥し、軟カプセル剤を製造した。
【0040】
【表2】

【0041】
◎カプセルへの強度の付与効果「試験例3」(実施例3、比較例3)(ゼラチン皮膜および軟カプセル剤の調製)
ゼラチン45質量%、グリセリン18質量%、イノシトール6リン酸(フィチン酸)1質量%及び水36質量%からなるゼラチン溶液(A),ゼラチン45質量%、グリセリン18質量%及び水37質量%からなるゼラチン溶液(B)を調製し、それぞれ80℃で溶解、脱泡した後、約10時間静置した。ゼラチン溶液(A)及び(B)を用いて、ロータリー式ソフトカプセル充填機(オバール5型)により、厚さ0.90mmのゼラチン皮膜を調製し、DHA(魚油)を300mg充填して、軟カプセル剤を調製し、下記評価に供した。
【0042】
(評価)
各々、充填開始直後に、カプセル充填金型のNo.1〜No.7からNo.1、No.4、No.7(前・中・後)の充填カプセルをサンプリングし、内容物を取り出した後、輪切りにして、接着部の最も薄い部分の厚みを、スケール付顕微鏡にて測定し比較した。
さらにそれぞれのゼラチン溶液を用いて、充填機稼動1時間後の充填カプセルを、上述と同様にサンプリングし、最も薄い接着部の厚みを測定し比較した。次いで、この接着部の厚みから接着率を算出し比較した。
【0043】
(結果)
結果を表3および表4に示す。
ゼラチン溶液(B)を用いてカプセルを調製した比較例3に対して、イノシトール6リン酸(フィチン酸)を配合したゼラチン溶液(A)を用いてカプセルを調製した実施例3は、高い接着率を示し、カプセルの強度が高くなっていることが確認された。
【0044】
【表3】

【0045】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の技術は、医薬品、医薬部外品、健康食品、一般食品、化粧品等の分野に用いられるカプセル剤に、好ましく適用することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼラチン(A)と、一般式C12−n・(HPO(式中、nは1〜5の整数を表す)で表されるイノシトールリン酸(B)とを含むことを特徴とするゼラチン皮膜用組成物。
【請求項2】
ゼラチン(A)と、一般式C12−n・(HPO(式中、nは1〜5の整数を表す)で表されるイノシトールリン酸(B)とを含むことを特徴とするカプセル皮膜用組成物。
【請求項3】
ゼラチン(A)と、一般式C12−n・(HPO(式中、nは1〜5の整数を表す)で表されるイノシトールリン酸(B)とを含むことを特徴とするカプセル皮膜。
【請求項4】
請求項3に記載のカプセル皮膜を備えたことを特徴とするカプセル剤。
【請求項5】
充填内容物が、生薬、不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸残基含有油脂、ミネラル、ミネラル含有酵母及びビタミンCから選択される1種以上を含むことを特徴とする請求項4に記載のカプセル剤。
【請求項6】
充填内容物に、リン脂質、アミノ糖、及び有機酸から選択される1種以上を含むことを特徴とする請求項4又は5に記載のカプセル剤。
【請求項7】
カプセルが軟カプセルであることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載のカプセル剤。
【請求項8】
請求項7に記載のカプセル剤の製造方法であって、少なくともゼラチン(A)と、一般式C12−n・(HPO(式中、nは1〜5の整数を表す)で表されるイノシトールリン酸(B)とを含むカプセル皮膜用組成物を調製する工程、カプセル皮膜用組成物からカプセル皮膜を調製し、カプセル皮膜の間に充填内容物を挟み込み圧着してカプセル化する工程、を含むことを特徴とするカプセル剤の製造方法。
【請求項9】
リン脂質、アミノ糖、及び有機酸から選択される1種以上を含む充填内容物を調製する工程を含むことを特徴とする請求項8に記載のカプセル剤の製造方法。


【公開番号】特開2006−328044(P2006−328044A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−28318(P2006−28318)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【分割の表示】特願2005−223287(P2005−223287)の分割
【原出願日】平成17年8月1日(2005.8.1)
【出願人】(000250100)湧永製薬株式会社 (51)
【Fターム(参考)】