説明

ゼラレノンマクロライドアナログを作製するための中間体および方法

例えば式(IV)


の化合物であるマクロライドの調製において有用な方法および中間体が、本明細書中に開示される。式(IV)において、R〜R12は、本明細書中で定義されるとおりである。他の局面において、本発明は、式(IV)の化合物を含有する純度が増大した組成物を作製する方法に関する。純度が増大した組成物は、適切な立体化学を有する出発物質を使用し、従って、αが富化された中間体(例えば、式(V)または式(VI)を含むαが富化された組成物)を形成すること、およびクロマトグラフィーを行わずに実質的に純粋な形態で単離され得る結晶性中間体を目標とするによって得られ得ることもまた、本発明者らにより決定された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、米国仮出願番号61/012,411(2007年12月7日出願)、米国仮出願番号61/012,409(2007年12月7日出願)、米国仮出願番号61/012,408(2007年12月7日出願)および米国仮出願番号61/080,048(2008年7月11日出願)に対する優先権を主張する。これらは、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
大環状化合物(例えば、F152(LL−Z1640−2)などのゼラレノン様マクロライド)は、有利な生物学的特性を有する。例えば、F152
【0003】
【化1】

およびその特定の異性体は、リン酸化酵素であるMap/Erkキナーゼ(MEK)を阻害する。さらに、F152の誘導体はまた、数個の名称を挙げると、チロシンキナーゼインヒビター、他のプロテインキナーゼ(例えば、MEK1)のインヒビター、NF−κB活性化のインヒビター、およびAP−1活性化のインヒビターとしての活性を示している。しかし、しばしば、F152およびその誘導体は、天然産物の醗酵技術および修飾により得られ、従って、調製され得て生物学的活性について評価され得る誘導体の数および型が制限されていた。
【0004】
F152および誘導体の化学合成もまた、開示されている(例えば、特許文献1を参照のこと)が、このような合成はしばしば、複雑であり、そして不純物を除去する目的での多くのクロマトグラフィー精製工程を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第03/076424号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(本発明の簡単な要旨)
本発明は、少なくとも部分的に、マクロライドの調製のための新規な方法および中間体の発見に基づく。いずれの特定の理論によっても束縛されることを望まないが、このような中間体は、例えば、合成における精製段階を提供する際に有用であり得、従って、この特定の精製段階までの、費用がかかり時間を消費するクロマトグラフィー工程の必要性を、減少させるか、または排除さえすると考えられる。いずれの特定の理論によっても束縛されることを望まないが、これらの新規な方法は、従来の方法と比較して、増大した純度および増大した収率を有する、マクロライドの組成物を提供する際に有用であり得るとも考えられる。
【0007】
従って、いくつかの実施形態において、本発明は、式(VII):
【0008】
【化2】

の中間体に関し、式(VII)において、
およびRは各々独立して、水素、C1〜6アルキル、C3〜6非共役アルケニルおよびC3〜6非共役アルキニルからなる群より選択され;
は、水素および塩基安定性酸素保護基からなる群より選択され;
およびRは各々独立して、水素、ハロゲン、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C1〜6ハロアルキル、C1〜6アルコキシ、フェニルおよびベンジルからなる群より選択され、ここでこのフェニルまたはベンジルは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1〜3アルキル、およびNHから独立して選択される0個、1個、2個、もしくは3個の置換基で置換されているか;あるいはRおよびRは、これらが結合する炭素と一緒になって、5員〜6員の非共役炭素環式環を形成し;
11およびR12は、各々独立して、水素および塩基安定性酸素保護基からなる群より選択されるか;またはR11およびR12は一緒になって、構造(a):
【0009】
【化3】

の5員ヘテロシクリルジイルを形成し;
構造(a)において、R19およびR20は各々独立して、水素、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキル、C1〜6アルコキシおよびフェニルからなる群より選択されるか、またはR19およびR20は一緒になって、構造(b):
【0010】
【化4】

のフルオレニル部分を表し;そして
13は、
【0011】
【化5】

であり;そして
14、R15、R16、R17、およびR18は各々独立して、H、NO、−NH、−COH、−CO(C1〜4アルキル)、−COCl、−COOH、−COO(C1〜4アルキル)、−NR、−SOH、ニトリル、−CFおよびハロゲンからなる群より選択される。
【0012】
いくつかの実施形態において、Rは、第一の芳香族環を含有する酸素保護基である。
【0013】
他の実施形態において、本発明は、式(VII):
【0014】
【化6】

の中間体に関し、式(VII)において、
およびRは各々独立して、水素、C1〜6アルキル、C3〜6非共役アルケニルおよびC3〜6非共役アルキニルからなる群より選択され;
は、第一の芳香族環を含有する酸素保護基であり;
およびRは各々独立して、水素、ハロゲン、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C1〜6ハロアルキル、C1〜6アルコキシ、フェニルおよびベンジルからなる群より選択され、ここでこのフェニルまたはベンジルは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1〜3アルキル、およびNHから独立して選択される0個、1個、2個、もしくは3個の置換基で置換されているか;あるいはRおよびRは、これらが結合している炭素と一緒になって、5員〜6員の非共役炭素環式環を形成し;
11およびR12は、各々独立して、水素および塩基安定性酸素保護基からなる群より選択されるか;またはR11およびR12は一緒になって、構造(a):
【0015】
【化7】

の5員ヘテロシクリルジイルを形成し;
構造(a)において、R19およびR20は各々独立して、水素、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキル、C1〜6アルコキシおよびフェニルからなる群より選択されるか、またはR19およびR20は一緒になって、構造(b):
【0016】
【化8】

のフルオレニル部分を表し;そして
13は、第二の芳香族環を含有する酸素保護基である。
【0017】
いくつかの実施形態において、R13は、
【0018】
【化9】

であり;そして
14、R15、R16、R17、およびR18は各々独立して、H、NO、−NH、−COH、−CO(C1〜4アルキル)、−COCl、−COOH、−COO(C1〜4アルキル)、−NR、−SOH、ニトリル、−CFおよびハロゲンからなる群より選択される。
【0019】
いくつかの実施形態において、Rは水素である。いくつかの実施形態において、Rは水素である。特定の実施形態において、Rは、ベンゾイルまたはベンジルから選択され、ここでこのベンゾイルまたはベンジルの各々は、0個、1個、2個もしくは3個の置換基で置換されており、これらの置換基は独立して、−OH、−O(C1〜4アルキル)、−NH、−NH(C1〜4アルキル)、−N(C1〜4アルキル)、アミド、−OCO(C1〜4アルキル)および(C1〜4アルキル)から選択される。いくつかの実施形態において、Rは4−メトキシベンジルである。いくつかの実施形態において、Rは、水素およびC1〜6アルキル(例えば、水素またはメチル)からなる群より選択される。いくつかの実施形態において、Rは、水素およびC1〜6アルキル(例えば、水素またはメチル)からなる群より選択される。
【0020】
いくつかの実施形態において、式(VII)の化合物は結晶性である。
【0021】
いくつかの実施形態において、R14、R15、R16、R17、およびR18のうちの1つは、NO、−NH、−COH、−CO(C1〜4アルキル)、−COCl、−COOH、−COO(C1〜4アルキル)、−NR、−SOH、ニトリル、−CFおよびハロゲンからなる群より選択され、そしてR14、R15、R16、R17、およびR18のうちの他の4つは水素である。いくつかの実施形態において、R14、R15、R16、R17、およびR18のうちの少なくとも1つは、NO、−NH、−COH、−CO(C1〜4アルキル)、−COCl、−COOH、−COO(C1〜4アルキル)、−NR、−SOH、ニトリル、−CFおよびハロゲンからなる群より選択され、そしてR14、R15、R16、R17、およびR18のうちの他のものは水素である。いくつかの実施形態において、R16はNOであり、そしてR14、R15、R17、およびR18の各々は独立して、水素である。
【0022】
いくつかの実施形態において、式(VII)の化合物は、式(VIIa):
【0023】
【化10】

の化合物である。
【0024】
いくつかの実施形態において、式(VII)の化合物は、式(VIIb):
【0025】
【化11】

の化合物である。
【0026】
他の実施形態において、本発明は、式(VIIc):
【0027】
【化12】

の中間体に関し、式(VIIc)において、
およびRは各々独立して、水素およびC1〜6アルキルからなる群より選択され;
は、ベンゾイルまたはベンジルから選択され、ここでこのベンゾイルまたはベンジルの各々は、0個、1個、2個もしくは3個の置換基で置換されており、これらの置換基は独立して、−OH、−O(C1〜4アルキル)、−NH、−NH(C1〜4アルキル)、−N(C1〜4アルキル)、アミド、−OCO(C1〜4アルキル)および(C1〜4アルキル)から選択され;
およびRは各々独立して、水素、ハロゲン、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキル、およびC1〜6アルコキシからなる群より選択され;
11およびR12は、各々独立して、水素および塩基安定性酸素保護基からなる群より選択されるか;またはR11およびR12は一緒になって、構造(a):
【0028】
【化13】

の5員ヘテロシクリルジイルを形成し;
構造(a)において、R19およびR20は各々独立して、水素、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキルおよびC1〜6アルコキシからなる群より選択され;そして
14、R15、R16、R17、およびR18のうちの少なくとも1つは、NO、−NH、−COH、−CO(C1〜4アルキル)、−COCl、−COOH、−COO(C1〜4アルキル)、−NR、−SOH、ニトリル、−CFおよびハロゲンからなる群より選択され、そしてR14、R15、R16、R17、およびR18のうちの残りのものは、各々独立して、Hである。
【0029】
いくつかの実施形態において、RおよびRは各々独立して、水素である。いくつかの実施形態において、Rは4−メトキシベンジルである。いくつかの実施形態において、RおよびRは各々独立して、水素またはメチルである。いくつかの実施形態において、R16はNOであり、そしてR14、R15、R17、およびR18の各々は独立して、水素である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、中間体化合物011の単結晶X線である。
【図2】図2は、中間体002および011aの単結晶X線を図示する。
【図3】図3〜12は、本発明の例示的な中間体および例示的な最終生成物の、CDCl中での100MHz 13C NMRスペクトル(A)および400MHz H NMRスペクトル(B)である。
【図4】図3〜12は、本発明の例示的な中間体および例示的な最終生成物の、CDCl中での100MHz 13C NMRスペクトル(A)および400MHz H NMRスペクトル(B)である。
【図5】図3〜12は、本発明の例示的な中間体および例示的な最終生成物の、CDCl中での100MHz 13C NMRスペクトル(A)および400MHz H NMRスペクトル(B)である。
【図6】図3〜12は、本発明の例示的な中間体および例示的な最終生成物の、CDCl中での100MHz 13C NMRスペクトル(A)および400MHz H NMRスペクトル(B)である。
【図7】図3〜12は、本発明の例示的な中間体および例示的な最終生成物の、CDCl中での100MHz 13C NMRスペクトル(A)および400MHz H NMRスペクトル(B)である。
【図8】図3〜12は、本発明の例示的な中間体および例示的な最終生成物の、CDCl中での100MHz 13C NMRスペクトル(A)および400MHz H NMRスペクトル(B)である。
【図9】図3〜12は、本発明の例示的な中間体および例示的な最終生成物の、CDCl中での100MHz 13C NMRスペクトル(A)および400MHz H NMRスペクトル(B)である。
【図10】図3〜12は、本発明の例示的な中間体および例示的な最終生成物の、CDCl中での100MHz 13C NMRスペクトル(A)および400MHz H NMRスペクトル(B)である。
【図11】図3〜12は、本発明の例示的な中間体および例示的な最終生成物の、CDCl中での100MHz 13C NMRスペクトル(A)および400MHz H NMRスペクトル(B)である。
【図12】図3〜12は、本発明の例示的な中間体および例示的な最終生成物の、CDCl中での100MHz 13C NMRスペクトル(A)および400MHz H NMRスペクトル(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(発明の詳細な説明)
本発明は、マクロライド(例えば、式(IV)
【0032】
【化14】

の化合物)の調製のための方法および中間体、ならびにそれを含有する組成物を提供し、
式(IV)において、RおよびRは各々独立して、水素、C1〜6アルキル、C3〜6非共役アルケニルおよびC3〜6非共役アルキニルからなる群より選択され;
およびRは各々独立して、水素、ハロゲン、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C1〜6ハロアルキル、C1〜6アルコキシ、フェニルおよびベンジルからなる群より選択され、ここでこのフェニルまたはベンジルは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1〜3アルキル、およびNHから独立して選択される0個、1個、2個、もしくは3個の置換基で置換されているか;あるいはRおよびRは、これらが結合する炭素と一緒になって、5員〜6員の非共役炭素環式環を形成し;
は、水素および−ORからなる群より選択され、ここでRは、水素または塩基安定性酸素保護基であり;
は、水素および−ORからなる群より選択され、ここでRは、水素または塩基安定性酸素保護基であり;
は、水素、ハロゲン、−OR、C1〜6アルキル、C3〜6非共役アルケニル、C3〜6非共役アルキニル、C1〜6ハロアルキル、−SRおよび−NRからなる群より選択され、ここでRは、水素または塩基安定性酸素保護基であり、Rは、水素、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C1〜6ヘテロアルキル、1個、2個もしくは3個のヘテロ原子を含む5員〜7員のヘテロアリール、およびC5〜7アリールからなる群より選択され、そしてRおよびRは各々独立して、水素、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C1〜6ヘテロアルキル、1個、2個もしくは3個のヘテロ原子を含む5員〜7員のヘテロアリール、およびC5〜7アリールまたは塩基安定性窒素保護基からなる群より選択され;そして
10は、水素、ハロゲン、−OR、C1〜6アルキル、C3〜6非共役アルケニル、C3〜6非共役アルキニル、C1〜6ハロアルキルおよびC1〜6アルコキシからなる群より選択され、ここでRは、水素または塩基安定性酸素保護基であり;そして
11およびR12は、各々独立して、水素および塩基安定性酸素保護基からなる群より選択されるか;またはR11およびR12は一緒になって、構造(a):
【0033】
【化15】

の5員ヘテロシクリルジイルを形成し;
構造(a)において、R19およびR20は各々独立して、水素、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキル、C1〜6アルコキシおよびフェニルからなる群より選択されるか、またはR19およびR20は一緒になって、構造(b):
【0034】
【化16】

のフルオレニル部分を表す。
【0035】
(定義)
特許請求の範囲の主題をより明瞭かつ簡潔に記載する目的で、以下の定義は、本明細書中で使用される特定の用語の意味に関する指針を提供することを意図される。
【0036】
単数形「a」、「an」、および「the」は、本明細書中で使用される場合、他に記載されない限り、「少なくとも1つ」および「1以上」を包含することが留意されるべきである。従って、例えば、「薬理学的に受容可能なキャリア(a pharmacologically acceptable carrier)」への言及は、2種以上のキャリアの混合物と、単一のキャリアとを包含する、などである。
【0037】
数値および範囲が、本発明の種々の実施形態に関連して記載される(例えば、組成物中の本発明の化合物の量)。列挙される値および範囲の間に入る全ての値および範囲は、他のことが明白に記載されない限り、本発明により包含されることが意図されることが理解されるべきである。さらに、本明細書中に列挙される全ての数値は、他のことが特に記載されない限り、用語「約」により暗黙的に修飾されることもまた、理解されるべきである。用語「約」は、本明細書中でパラメータ、範囲および量に関連して使用される場合、そのパラメータまたは量が、記載されるパラメータまたは量の±1.0%以内であることを意味する。
【0038】
本明細書中で使用される場合、「アルキル」基は、1個以上の炭素原子を有する飽和炭化水素を包含し、直鎖アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルなど)、環状アルキル基(または「シクロアルキル」基もしくは「脂環式」基もしくは「炭素環式」基)(例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなど)、分枝鎖アルキル基(イソプロピル、tert−ブチル、sec−ブチル、イソブチルなど)、ならびにアルキル置換アルキル基(例えば、アルキル置換シクロアルキル基およびシクロアルキル置換アルキル基)が挙げられる。特定の実施形態において、直鎖または分枝鎖のアルキル基は、8個以下の炭素原子をその骨格に有し得る(例えば、直鎖についてはC〜C、または分枝鎖についてはC〜C)。特定の実施形態において、直鎖または分枝鎖のアルキル基は、6個以下の炭素原子をその骨格に有し得る(例えば、直鎖についてはC〜C、または分枝鎖についてはC〜C)。なお他の実施形態において、アルキル基は、約1個〜4個の炭素を含む。他の実施形態において、アルキル基は、約1個〜3個の炭素を含む。なお他の実施形態において、アルキル基は、約1個または2個の炭素を含む。いくつかの実施形態において、好ましいアルキル基としては、C〜Cアルキル基が挙げられる。「C〜Cアルキル」および「C1〜6アルキル」においてのような用語「C〜C」および「C1〜6」は、交換可能に使用されて、1個〜6個の炭素原子を含むアルキル基を意味する。用語「ハロアルキル」は、1個以上(例えば、1個〜3個)の水素原子がハロゲンで置き換えられているアルキル基を意味する。用語「アルケニル」および「アルキニル」は、アルキルと類似であるがそれぞれ少なくとも1つの二重炭素−炭素結合または三重炭素−炭素結合を含む、不飽和脂肪族基をいう。複雑な構造において、炭素鎖は、分枝し得るか、橋架け(bridge)し得るか、または架橋(cross−link)し得る。用語「非共役アルケニル」および「非共役アルキニル」は、それぞれ、コア分子の一部分と共役していない、アルケニル基およびアルキニル基をいう。
【0039】
用語「ヘテロアルキル基」は、鎖中の炭素原子のうちの1つ以上が炭素以外の元素(例えば、窒素、硫黄、または酸素)である、アルキル基と類似の直鎖または分枝鎖の構造を包含する。用語「ヘテロアルケニル基」は、鎖中の炭素原子のうちの1つ以上が炭素以外の元素(例えば、窒素、硫黄、または酸素)である、アルケニル基と類似の直鎖または分枝鎖の構造を包含する。用語「ヘテロアルキニル基」は、鎖中の炭素原子のうちの1つ以上が炭素以外の元素(例えば、窒素、硫黄、または酸素)である、アルキニル基と類似の直鎖または分枝鎖の構造を包含する。用語「C1〜6ヘテロアルキル」および「C〜Cヘテロアルキル」は、交換可能に使用されて、1個〜6個の炭素および1つ以上のヘテロ原子を有する部分をいう。
【0040】
用語「アルコキシ」とは、本明細書中で使用される場合、酸素原子が結合しているアルキル基を意味する。いくつかの実施形態において、アルコキシ基としては、1個〜約8個の炭素原子を有する基が挙げられる。他の実施形態において、アルコキシ基としては、1個〜約6個の炭素原子を有する基が挙げられる。なお他の実施形態において、アルコキシ基としては、約4個未満の炭素原子を有する基が挙げられる。いくつかの実施形態において、好ましいアルコキシ基は、C〜Cアルコキシ基を包含する。アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、およびペントキシ基が挙げられるが、これらに限定されない。アルコキシ基は、直鎖であっても分枝していてもよい。
【0041】
用語「芳香族基」または「アリール基」は、1つ以上の環を含む、不飽和の芳香族環式炭化水素および不飽和の芳香族複素環を包含する。アリール基としては、例えば、C5〜8アリール基が挙げられる。アリール基はまた、芳香族ではない脂環式環または複素環式環と縮合または橋架けして、多環(例えば、テトラリン)を形成し得る。
【0042】
用語「複素環式基」は、環内の炭素原子のうちの1つ以上(例えば、1個、2個または3個)が炭素以外の元素(例えば、窒素、硫黄、または酸素)である、炭素環式基と類似の閉じた環構造を包含する。複素環式基は、飽和であっても不飽和であってもよい。さらに、複素環式基(例えば、ピロリル、ピリジル、イソキノリル、キノリル、プリニル、およびフリル)は、芳香族の特徴を有しても有さなくてもよく、芳香族の特徴を有する場合、「ヘテロアリール」または「ヘテロ芳香族」基と称され得る。用語複素環式基は、環内のヘテロ原子のうちの1つへの結合、または環内の炭素のうちの1つへの結合のいずれかを介してコア構造に結合される環を包含する。例示的な複素環式基としては、イミダゾリル、例えば、
【0043】
【化17】

モルホリニル、例えば、
【0044】
【化18】

ピペリジニル、例えば、
【0045】
【化19】

ピロリジニル、例えば、
【0046】
【化20】

ならびにピペラジニル、例えば、
【0047】
【化21】

が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
用語「アミン」または「アミノ」とは、本明細書中で使用される場合、非置換または置換された、式−NRの部分をいい、この式において、RおよびRは各々独立して、水素、アルキル、アリール、またはヘテロシクリルであるか、あるいはRおよびRは、これらが結合している窒素原子と一緒になって、環内に3個〜8個の原子を有する環状部分を形成する。従って、用語アミノは、他に記載されない限り、環状アミノ部分(例えば、ピペリジニル基またはピロリジニル基)を包含する。
【0049】
本発明の化合物の化学部分(上で議論された基を含む)は、「置換されていても非置換であっても」よい。いくつかの実施形態において、用語「置換(された)」とは、その部分に配置された水素以外の置換基をその部分が有し(すなわち、ほとんどの場合において、水素を置き換える)、この置換基が、その分子がその意図される機能を実施することを可能にすることを意味する。「置換」または「〜で置換される」は、このような置換が置換される原子および置換基の許容される原子価に従うこと、ならびにその置換が安定な化合物を生じる(例えば、転移、環化、脱離などによる変換を自発的には起こさない)ことという、暗黙の仮定を包含することが理解される。本明細書中で使用される場合、用語「置換(された)」は、有機化合物の全ての許容可能な置換基を包含することが意図される。広い意味において、許容可能な置換基としては、有機化合物の、非環状置換基および環状置換基、分枝置換基および非分枝置換基、炭素環式置換基および複素環式置換基、芳香族置換基および非芳香族置換基が挙げられる。本発明の化合物は、本明細書中に記載されるような1つ以上の置換を有し得る。
【0050】
複合化学名(例えば、「アルキルアリール」、「アリールオキシ」など)が本明細書中で使用される場合、これらの化学名は、その化学構造のコアへの特定の接続を有することが理解される。最も右に書かれる部分(例えば、「アルキルアリール」におけるアリール)が、コアに直接接続される部分である。従って、例えば、「アリールアルキル」基は、アリール基で置換されたアルキル基(例えば、フェニルメチル(すなわち、ベンジル))である。「アルキルアリール」部分は、アルキル基で置換されたアリール基(例えば、p−メチルフェニル(すなわち、p−トリル))である。
【0051】
表記法
【0052】
【化22】

は、交換可能に使用されて、2つの置換基を有する二重結合であって、これらの置換基がシスまたはトランスのいずれでもよいものを表す。
【0053】
本明細書中で使用される場合、用語「化合物」は、分子から構成される物質を意味することを意図される(この分子はさらに、原子からなる)。化合物とは、一般に、固相であれ液相であれ気相であれ、そして粗製混合物であっても精製および単離されていても、化学実体をいう。化合物は、化合物自体、ならびに適用可能である場合には、化合物の非晶質形態および結晶性形態(多型形態を含む)であって、混合物中または単離物中にある形態;化合物の遊離酸形態および遊離塩基形態;化合物の異性体(幾何異性体、光学異性体、および互変異性体を含む)であって、これらの光学異性体は、エナンチオマーおよびジアステレオマー、キラル異性体および非キラル異性体を含み、これらの光学異性体は、単離された光学異性体、または光学異性体の混合物(ラセミ混合物および非ラセミ混合物が挙げられる)を包含し;これらの幾何異性体は、トランソイド形態およびシソイド形態を含み、異性体は、単離形態であっても1つ以上の他の異性体との混合物であってもよい、異性体;化合物の同位体であって、ジュウテリウム含有化合物およびトリチウム含有化合物が挙げられ、そして放射性同位体(治療効果的な放射性同位体および診断効果的な放射性同位体が挙げられる)を含む化合物を包含する、同位体;化合物の多量体形態(二量体、三量体などの形態が挙げられる);化合物の塩であって、酸付加塩および塩化付加塩が挙げられ、有機対イオンおよび無機対イオンを含み、そして双性イオン形態を包含し、化合物が2つ以上の対イオンと会合する場合、これらの2つ以上の対イオンは、同じであっても異なっていてもよい塩;ならびに化合物の溶媒和物(半溶媒和物、一溶媒和物、二溶媒和物などが挙げられる)であって、有機溶媒和物および無機溶媒和物を包含し、この無機溶媒和物は、水和物を含み;化合物が2つ以上の溶媒分子と会合する場合、これらの2つ以上の溶媒分子は、同じであっても異なっていてもよい溶媒和物を包含する。
【0054】
用語「保護基」とは、本明細書中で使用される場合、特定の官能性部分(例えば、O、S、またはN)が一時的にブロックされて、反応が、多官能性化合物における別の反応性部位において選択的に起こり得るものをいう。種々の実施形態において、保護基は、選択的に良好な収率で反応して、計画された反応のために安定な保護された基質を与え;容易に利用可能な、好ましくは非毒性の試薬(この試薬は、他の官能基を攻撃しない)によって、良好な収率で選択的に除去され;容易に分離可能な誘導体を(より好ましくは、新たな立体中心を生成せずに)形成し;そして最少のさらなる官能性を有して、さらなる反応部位を回避する。保護基の適合性は、代表的に、引き続く工程における反応条件を考慮に入れる。従って、塩基性の条件が使用される場合、塩基性部分により容易に切断可能な保護基は、好ましくないかもしれない。同様に、酸性の条件が使用される場合、酸性部分により容易に切断される保護基は、好ましくないかもしれない。本発明の種々の実施形態において使用される保護基は、本明細書中により詳細に記載される。保護基を除去するための方法は、当該分野において周知である。例えば、代表的な酸素保護基に関しては;アセチル基は、酸性条件下または塩基性条件下で除去され得;メトキシエトキシメチルエーテル基は、酸性条件下で除去され得;メトキシメチルエーテル基は、酸性条件下で除去され得;メトキシベンジルエーテル基は、酸性条件下でか、水素化分解によってか、または酸化によって除去され得;メチルチオメチルエーテル基は、酸性条件下で除去され得;ピバロイル基は、酸性条件下でか、塩基性条件下でか、または還元剤を用いて除去され得;テトラヒドロピラン基は、酸性条件下で除去され得;シリルエーテル基(トリメチルシリル(TMS)、tert−ブチルジメチルシリル(TBDMS)、およびトリイソプロピルシリル(TIPS)エーテルが挙げられる)は、酸性条件下でか、またはフッ化物イオン(例えば、NaFもしくはTBAF)を用いて除去され得;そしてメチルエーテルは、ジクロロメタン中もしくはMeCN中もしくはクロロホルム中のTMSI、またはジクロロメタン中のBBrを用いて除去され得る。別の例において、代表的な窒素保護基に関しては、カルボベンジルオキシ基は、水素化分解により除去され得;tert−ブチルオキシカルボニル基は、濃い強酸(例えば、HClまたはCFCOOH)を用いて除去され得;9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基は、ピペリジンなどの塩基を用いて除去され得;ベンジル基は、水素化分解により除去され得;そしてp−メトキシフェニル(PMP)基は、硝酸セリウム(IV)アンモニウムを用いて除去され得る。本明細書中で使用される場合、用語「塩基安定性」保護基とは、保護後であって保護基の除去前に行われる、化合物の任意の反応の塩基性条件下で安定な保護基をいう。同様に、本明細書中で使用される場合、用語「酸安定性」保護基とは、保護後であって保護基の除去前に行われる、化合物の任意の反応の酸性条件下で安定な保護基をいう。当業者は、「塩基安定性」保護基が必ずしも全ての塩基に対して安定である必要はなく(例えば、濃水酸化ナトリウムに対しては安定ではないかもしれない)、保護後であって保護基の除去前に行われる、化合物の任意の反応において利用される任意の塩基に対して安定であることを理解する。塩基安定性保護基の例としては、アセチル基、メトキシエトキシメチルエーテル基、メトキシメチルエーテル基、メトキシベンジルエーテル基、メチルチオメチルエーテル基、ピバロイル基、テトラヒドロピラン基、シリルエーテル基(トリメチルシリル(TMS)、tert−ブチルジメチルシリル(TBDMS)、およびトリイソプロピルシリル(TIPS)エーテルが挙げられる)ならびにメチルエーテル、カルボベンジルオキシ基、tert−ブチルオキシカルボニル基、ベンジル基ならびにp−メトキシフェニル(PMP)基が挙げられるが、これらに限定されない。同様に、当業者は、「酸安定性」保護基が必ずしも全ての酸に対して安定である必要はなく(例えば、濃塩酸に対しては安定ではないかもしれない)、保護後であって保護基の除去前に行われる、化合物の任意の反応において利用される任意の酸に対して安定であることを理解する。
【0055】
用語「反応」とは、本明細書中で使用される場合、2つ以上の反応物質が互いに接触させられて、化学変化または変換を起こす化学プロセスをいう。例えば、反応物質Aと反応物質Bとが互いに接触させられて1つ以上の新たな化合物C(C’、C”など)を与える場合、AはBと「反応」してCを生成した、といわれる。
【0056】
語句「大規模調製」において使用される場合の語句「大規模」は、例えば、26gより多い量、例えば、30gより多い量、例えば、35gより多い量、例えば、40gより多い量、例えば、45gより多い量、例えば、50gより多い量、例えば、60gより多い量、例えば、70gより多い量、例えば、80gより多い量、例えば、90gより多い量、例えば、100gより多い量、例えば、200gより多い量、例えば、500gより多い量、例えば、1kgより多い量、例えば、2kgより多い量、例えば、5kgより多い量、例えば、10kgより多い量、例えば、20kgより多い量、例えば、40kgより多い量、例えば、60kgより多い量、例えば、100kgより多い量、例えば、300kgより多い量、例えば、500kgより多い量の生成物を生じる反応を包含する。
【0057】
語句「αが富化された」は、以前に調製された組成物より高いα異性体対β異性体の比を含む中間体(例えば、式(V)および/または(VI)の化合物)を含有する組成物に言及する際に使用される。式(V)および(VI)のα異性体およびβ異性体は、以下に示される。
【0058】
【化23】

以前に調製された組成物(例えば、米国特許出願公開第20060247448号(2006年11月2日公開);段落[1242]〜[1248]を参照のこと)は、代表的に、約1:2のα異性体対β異性体の比を有する。いくつかの実施形態において、用語「αが富化された」とは、少なくとも約1:1.5のα対βの比の、式(V)および/または(VI)の化合物を含有する組成物をいう。いくつかの実施形態において、用語「αが富化された」とは、少なくとも約1:1(例えば、少なくとも約2:1、3:1、4:1、5:1、10:1、25:1、50:1、100:1、500:1、または1000:1)のα対βの比の、式(V)および/または(VI)の化合物を含有する組成物をいう。いくつかの実施形態において、用語「αが富化された」とは、α異性体のみを有する式(V)および/または(VI)の化合物を含有する組成物をいう。本発明のαが富化された組成物は、化合物が生成される反応の規模によって限定されることを意図されないことが留意されるべきである。同様に、語句「α−中間体」は、本明細書中により詳細に記載されるように、α異性体を表す中間体(例えば、式(V)および/または(VI)の化合物)をいう際に使用される。
【0059】
語句「収率が増大した」は、αが富化された中間体組成物を利用して合成された式(IV)の化合物を含有する組成物をいう際に使用される(例えば、米国特許出願公開第20060247448号を参照のこと)。これらの組成物は、αが富化されていない中間体組成物を使用して合成された生成物と比較して、より高収率の目的化合物(例えば、式(IV)の化合物)を有する。いくつかの実施形態において、用語「収率が増大した」とは、αが富化されていない組成物に対して少なくとも5%追加された収率をいう。いくつかの実施形態において、用語「収率が増大した」とは、αが富化されていない組成物に対して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%または200%追加された収率をいう。%収率の文脈において使用される百分率は、最終生成物の収量に対する百分率(すなわち、重量を重量で割る、w/w)を記載することが意図されることが留意されるべきである。本発明の収率が増大した組成物は、化合物を生成する反応の規模によって限定されることもまた意図されないことが留意されるべきである。
【0060】
語句「純度が増大した」は、不純物(例えば、反応の副生成物である不純物、あるいは被験体(例えば、ヒト)への投与のためには適切ではないとみなされる残留出発物質、または被験体への投与のために調製される薬学的組成物から当業者により優先的に除外される残留出発物質)を有意に含まない、最終生成物を含有する組成物(例えば、式(IV)の化合物を治療剤として含有する組成物)をいう際に使用される。いくつかの実施形態において、用語「純度が増大した」とは、αが富化されていない中間体組成物を使用して合成された生成物(例えば、米国特許出願公開第20060247448号を参照のこと)に対する、αが富化された中間体組成物を使用して合成された生成物の純度をいう。本発明の純度が増大された組成物は、化合物を生成する反応の規模によって限定されることを意図されないことが留意されるべきである。
【0061】
語句「含まない」は、本明細書中で、合成プロセスによってその反応物に導入された、記載される品目(例えば、不純物(例えば、p−アニスアルデヒド))を有意に、実質的に、または完全に欠く、本発明の組成物をいう際に使用される。例えば、特定の実施形態において、語句「含まない」は、合成プロセスによってではなく環境因子によって導入された不純物(例えば、残留ナトリウム)を包含することを意図されない。
【0062】
語句「不純物を有意に含まない」において使用されるような語句「有意に含まない」は、不純物(例えば、二量体、アセトニド脱離生成物、アリルメチルが脱離した化合物など)の、最終生成物(例えば、式(IV)の化合物を治療剤として含有する組成物)中での、10%以下(例えば、9%以下、例えば、8%以下、例えば、7%以下、例えば、6%以下、例えば、5%以下、例えば、4%以下、例えば、3%以下、例えば、2%以下、例えば、1.5%以下、例えば、1%以下、例えば、0.5%以下、例えば、0.4%以下、例えば、0.3%以下、例えば、0.2%以下、例えば、0.175%以下、例えば、0.15%以下、例えば、0.125%以下、例えば、0.1%以下、例えば、0.75%以下、例えば、0.5%以下、例えば、0.25%以下、および例えば、0%)の量での存在を特徴とする。特定の実施形態において、本発明の純度が増大した組成物は、有機不純物(例えば、少なくとも部分的に炭素原子からなる不純物(例えば、p−アニスアルデヒド(または本明細書中に示される他の任意の可能な中間体もしくは脱離生成物))を有意に含まない。語句「不純物を実質的に含まない」において使用されるような語句「実質的に含まない」は、不純物(例えば、二量体、アセトニド脱離生成物、アリルメチルが離脱した化合物など)の、最終生成物(例えば、式(IV)の化合物を治療剤として含有する組成物)中での、5%以下(例えば、4%以下、例えば、3%以下、例えば、2%以下、例えば、1.5%以下、例えば、1%以下、例えば、0.5%以下、例えば、0.4%以下、例えば、0.3%以下、例えば、0.2%以下、例えば、0.175%以下、例えば、0.15%以下、例えば、0.125%以下、例えば、0.1%以下、例えば、0.75%以下、例えば、0.5%以下、例えば、0.25%以下、および例えば、0%)の量での存在を特徴とする。語句「実質的に純粋」はまた、本明細書中で使用される場合、5%以下(例えば、4%以下、例えば、3%以下、例えば、2%以下、例えば、1.5%以下、例えば、1%以下、例えば、0.5%以下、例えば、0.4%以下、例えば、0.3%以下、例えば、0.2%以下、例えば、0.175%以下、例えば、0.15%以下、例えば、0.125%以下、例えば、0.1%以下、例えば、0.75%以下、例えば、0.5%以下、例えば、0.25%以下、および例えば、0%)の不純物の存在をいう。不純物の百分率の文脈において使用される百分率は、最終生成物(例えば、薬学的組成物)に対する百分率(すなわち、重量を重要で割ったもの、w/w)を記載することが意図されることが、留意されるべきである。いくつかの実施形態において、不純物の%は、不純物の面積%として(例えば、HPLCにより)測定される。
【0063】
(本発明の方法)
本発明は、少なくとも部分的に、マクロライドを合成する新規な方法に関する。いくつかの実施形態において、本発明は、マクロライドの大規模調製に関する。スキーム1およびスキーム2は、本発明のマクロライドを合成するための例示的な方法を図示する。スキーム1は、リボース分子の保護および開環、引き続くトリフェニルホスホニウム塩とのカップリング、二環式トリフレートとのカップリング、およびマクロライドを形成するための閉環を示す概略である。
【0064】
【化24】

さらに、同じ構築ブロックが、スキーム2においてと同様に使用され得る。スキーム2は、リボース分子の保護および開環、引き続く二環式トリフレートとのカップリング、トリフェニルホスホニウム塩とのカップリング、およびマクロライドを形成するための閉環を示す概略である。
【0065】
【化25】

従って、いくつかの局面において、本発明は、式(V):
【0066】
【化26】

の化合物を作製する方法に関し、式(V)において、RおよびRは各々独立して、水素、C1〜6アルキル、C3〜6非共役アルケニルおよびC3〜6非共役アルキニルからなる群より選択され;
は、水素および塩基安定性酸素保護基からなる群より選択され;
およびRは各々独立して、水素、ハロゲン、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C1〜6ハロアルキル、C1〜6アルコキシ、フェニルおよびベンジルからなる群より選択され、ここでこのフェニルまたはベンジルは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1〜3アルキル、およびNHから独立して選択される0個、1個、2個、もしくは3個の置換基で置換されているか;あるいはRおよびRは、これらが結合する炭素と一緒になって、5員〜6員の非共役炭素環式環を形成し;
11およびR12は、各々独立して、水素および塩基安定性酸素保護基からなる群より選択されるか;またはR11およびR12は一緒になって、構造(a):
【0067】
【化27】

の5員ヘテロシクリルジイルを形成し;
構造(a)において、R19およびR20は各々独立して、水素、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキル、C1〜6アルコキシおよびフェニルからなる群より選択されるか、またはR19およびR20は一緒になって、構造(b):
【0068】
【化28】

のフルオレニル部分を表し;そして
13は、水素および塩基安定性酸素保護基からなる群より選択される。
【0069】
式(V)の化合物は、式I:
【0070】
【化29】

の化合物(式Iにおいて、Rは、水素および塩基安定性酸素保護基からなる群より選択される)を式(II):
【0071】
【化30】

の化合物(式(II)において、Xはハロゲンである)と、式(V)の化合物が形成されるような適切な条件下で反応させることにより合成される。
【0072】
いくつかの実施形態において、式(V)の化合物を形成するために適切な条件は、適切な塩基性条件である。いくつかの実施形態において、式(V)の化合物を形成するために適切な条件は、塩基(例えば、C1〜6アルキルリチウム、カリウムC1〜6t−アルコキシド、水酸化ナトリウム、水素化ナトリウム、アンモニア、ジメチルスルホキシドナトリウム塩およびナトリウムヘキサメチルジシリルアミド)の使用を包含する。いくつかの実施形態において、式(V)の化合物を形成するために適切な条件は、C1〜6アルキルリチウム塩基(例えば、ブチルリチウム)の使用を包含する。
【0073】
式(I)および式(II)の化合物は、各キラル炭素において様々な立体化学を有し得る。好ましい実施形態において、式(I)および式(II)の化合物は、各キラル炭素において、特定の立体化学を有する。従って、得られる式(V)の化合物は、各キラル炭素において、様々な立体化学を有し得る。例えば、いくつかの実施形態において、式(V)の化合物は、式(Va):
【0074】
【化31】

の化合物である。
【0075】
すなわち、式(II)の化合物は、式(IIa):
【0076】
【化32】

の化合物であり得る。
【0077】
いくつかの実施形態において、式(V)の化合物は、(Vb):
【0078】
【化33】

の化合物である。
【0079】
すなわち、式(I)の化合物は、式(Ib):
【0080】
【化34】

の化合物であり得る。
【0081】
いくつかの実施形態において、式(V)の化合物は、(Vc):
【0082】
【化35】

の化合物である。
【0083】
適切な保護基は、起こる反応の性質(例えば、式(V)の化合物を生成するために適切な条件)に依存して変動する。いくつかの実施形態において、Rのために適切な酸素保護基としては、アセテート基、エステル基、ベンジル基およびベンゾエート基が挙げられる。いくつかの実施形態において、Rのために適切な酸素保護基としては、シリル基が挙げられる。いくつかの実施形態において、R13のために適切な酸素保護基としては、シリル基が挙げられる。いくつかの実施形態において、R13による酸素の保護は、優先的にシス−オレフィン生成物を生じ、一方で、R13が水素である場合、優先的にトランスであるオレフィンが形成される。いくつかの実施形態において、シスオレフィンが好ましい。
【0084】
いくつかの実施形態において、
【0085】
【化36】

により表される二重結合は、置換基が互いに対してシス位に位置する二重結合を表す。
【0086】
いくつかの局面において、本発明は、式(VI):
【0087】
【化37】

の化合物を作製する方法に関し、式(VI)において、RおよびRは各々独立して、水素、C1〜6アルキル、C3〜6非共役アルケニルおよびC3〜6非共役アルキニルからなる群より選択され;
は、水素および塩基安定性酸素保護基からなる群より選択され;
は、水素および塩基安定性酸素保護基からなる群より選択され;
は、水素および−ORからなる群より選択され、ここでRは、水素または塩基安定性酸素保護基であり、
は、水素、ハロゲン、−OR、C1〜6アルキル、C3〜6非共役アルケニル、C3〜6非共役アルキニル、C1〜6ハロアルキル、−SRおよび−NRからなる群より選択され、ここでRは、水素または塩基安定性酸素保護基であり、Rは、水素、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C1〜6ヘテロアルキル、1個、2個もしくは3個のヘテロ原子を含む5員〜7員のヘテロアリール、およびC5〜7アリールからなる群より選択され、そしてRおよびRは各々独立して、水素、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C1〜6ヘテロアルキル、1個、2個もしくは3個のヘテロ原子を含む5員〜7員のヘテロアリール、およびC5〜7アリールまたは塩基安定性窒素保護基からなる群より選択され;そして
10は、水素、ハロゲン、−OR、C1〜6アルキル、C3〜6非共役アルケニル、C3〜6非共役アルキニル、C1〜6ハロアルキルおよびC1〜6アルコキシからなる群より選択され、ここでRは、水素または塩基安定性酸素保護基であり;そして
11およびR12は、各々独立して、水素および塩基安定性酸素保護基からなる群より選択されるか;またはR11およびR12は一緒になって、構造(a):
【0088】
【化38】

の5員ヘテロシクリルジイルを形成し;
構造(a)において、R19およびR20は各々独立して、水素、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキル、C1〜6アルコキシおよびフェニルからなる群より選択されるか、またはR19およびR20は一緒になって、構造(b):
【0089】
【化39】

のフルオレニル部分を表す。
【0090】
いくつかの実施形態において、式(VI)の化合物を形成するために適切な条件は、適切な塩基性条件である。いくつかの実施形態において、式(V)の化合物を形成するために適切な条件は、パラジウム触媒の使用を包含する。パラジウム触媒は、有機化学において、例えば、一方のフラグメントの二重結合に配位してπ配位錯体を形成することによって、炭素−炭素結合の形成を容易にするために使用され得る。例示的なパラジウム触媒としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、塩化パラジウムおよび酢酸パラジウム(II)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、式(V)の化合物を形成するために適切な条件は、Heckカップリング条件を包含する。いくつかの実施形態において、適切なHeckカップリング条件としては、不飽和ハロゲン化物またはトルフレートを、アルケンおよび共塩基およびパラジウム触媒と反応させて、置換アルケンを形成することが挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
式(VI)の化合物は、式(I):
【0092】
【化40】

の化合物を式(III):
【0093】
【化41】

の化合物(式(III)において、Yは、ハロゲンまたはトリフレート(−O−SOCF)である)と、式(VI)の化合物が形成されるような適切な条件下で反応させることにより合成される。
【0094】
式(I)および式(III)の化合物は、各キラル炭素において、様々な立体化学を有し得る。好ましい実施形態において、式(I)および式(III)の化合物は、各キラル炭素において特定の立体化学を有する。従って、得られる式(VI)の化合物は、各キラル炭素において、様々な立体化学を有し得る。例えば、いくつかの実施形態において、式(VI)の化合物は、式(VIb):
【0095】
【化42】

の化合物である。
【0096】
すなわち、式(I)の化合物は、式(Ib):
【0097】
【化43】

の化合物であり得る。
【0098】
適切な保護基は、起こる反応の性質(例えば、式(VI)の化合物を生成するために適切な条件)に依存して変動する。いくつかの実施形態において、Rのために適切な酸素保護基としては、アセテート基、エステル基、ベンジル基およびベンゾエート基が挙げられる。いくつかの実施形態において、Rのために適切な酸素保護基としては、シリル基が挙げられる。R、RおよびR10の置換基のために適切な保護基(酸素および/または窒素)(すなわち、R〜R)は、生じる置換基に依存する。例えば、Rが−NRである、式(VI)の化合物を生成するための反応の適切な塩基性条件下では、RおよびRは各々独立して、適切に塩基安定性である窒素保護基(例えば、BOC)であり得る。同様に、Rが−ORである、式(VI)の化合物を生成するための反応の適切な塩基性条件下では、Rは、適切に塩基安定性である酸素保護基であり得る。いくつかの実施形態において、R13のために適切な酸素保護基としては、シリル基が挙げられる。
【0099】
いくつかの実施形態において、
【0100】
【化44】

により表される二重結合は、置換基が互いに対してシス位に位置する二重結合を表す。
【0101】
いくつかの局面において、本発明は、式(IV):
【0102】
【化45】

の化合物を作製する方法に関し、式(IV)において、RおよびRは各々独立して、水素、C1〜6アルキル、C3〜6非共役アルケニルおよびC3〜6非共役アルキニルからなる群より選択され;
およびRは各々独立して、水素、ハロゲン、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C1〜6ハロアルキル、C1〜6アルコキシ、フェニルおよびベンジルからなる群より選択され、ここでこのフェニルまたはベンジルは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1〜3アルキル、およびNHから独立して選択される0個、1個、2個、もしくは3個の置換基で置換されているか;あるいはRおよびRは、これらが結合する炭素と一緒になって、5員〜6員の非共役炭素環式環を形成し;
は、水素および−ORからなる群より選択され、ここでRは、水素または塩基安定性酸素保護基であり;
は、水素および−ORからなる群より選択され、ここでRは、水素または塩基安定性酸素保護基であり;
は、水素、ハロゲン、−OR、C1〜6アルキル、C3〜6非共役アルケニル、C3〜6非共役アルキニル、C1〜6ハロアルキル、−SRおよび−NRからなる群より選択され、ここでRは、水素または塩基安定性酸素保護基であり、Rは、水素、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C1〜6ヘテロアルキル、1個、2個もしくは3個のヘテロ原子を含む5員〜7員のヘテロアリール、およびC5〜7アリールからなる群より選択され、そしてRおよびRは各々独立して、水素、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C1〜6ヘテロアルキル、1個、2個もしくは3個のヘテロ原子を含む5員〜7員のヘテロアリール、およびC5〜7アリールからなる群、または塩基安定性窒素保護基より選択され;そして
10は、水素、ハロゲン、−OR、C1〜6アルキル、C3〜6非共役アルケニル、C3〜6非共役アルキニル、C1〜6ハロアルキルおよびC1〜6アルコキシからなる群より選択され、ここでRは、水素または塩基安定性酸素保護基であり;そして
11およびR12は、各々独立して、水素および塩基安定性酸素保護基からなる群より選択されるか;またはR11およびR12は一緒になって、構造(a):
【0103】
【化46】

の5員ヘテロシクリルジイルを形成し;
構造(a)において、R19およびR20は各々独立して、水素、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキル、C1〜6アルコキシおよびフェニルからなる群より選択されるか、またはR19およびR20は一緒になって、構造(b):
【0104】
【化47】

のフルオレニル部分を表す。
【0105】
式(IV)の化合物は、式(I)の化合物を、式(II)の化合物または式(III)の化合物と、式(IV)の化合物が形成されるような適切な条件下で合わせることにより合成される。式(I)、式(II)および式(III)の化合物は、式(V)および式(VI)の合成に関して上に列挙されたものである。いくつかの実施形態において、式(IV)の化合物は、式(I)の化合物を、式(II)の化合物または式(III)の化合物と、α−中間体および式(IV)の化合物が形成されるような適切な条件下で合わせることにより合成される。いくつかの実施形態において、このα−中間体は、式(V)の化合物である。他の実施形態において、このα−中間体は、式(VI)の化合物である。
【0106】
いくつかの実施形態において、式(IV)の化合物の合成は、3つ全ての特定の出発化合物(すなわち、式(I)、式(II)および式(III)の化合物)の包含により限定されない。すなわち、化合物(I)が化合物(II)または化合物(III)のいずれかと反応させられる限り、この合成の残りの部分は、第三の化合物を特には含まない経路を介して進行し得る。従って、いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、式(II)の化合物と反応させられて式(V)の化合物を形成し、これが引き続いて、式(IV)の化合物の合成において使用される。他の実施形態において、式(I)の化合物は、式(III)の化合物と反応させられて式(VI)の化合物を形成し、これが引き続いて、式(IV)の化合物の合成において使用される。
【0107】
いくつかの実施形態において、式(IV)の化合物の合成は、3つ全ての特定の出発化合物(すなわち、式(I)、式(II)および式(III)の化合物)の包含により限定される。すなわち、いくつかの実施形態において、本発明は、式(I)の化合物を、式(II)の化合物および式(III)の化合物と、式(IV)の化合物が形成されるような適切な条件下で合わせる工程を包含する、式(IV)の化合物を作製する方法を包含する。従って、いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、式(II)の化合物と反応させられて式(V)の化合物を形成し、これが引き続いて式(III)の化合物と反応させられる。他の実施形態において、式(I)の化合物は、式(III)の化合物と反応させられて式(VI)の化合物を形成し、これが引き続いて式(II)の化合物と反応させられる。
【0108】
適切な保護基は、起こる反応の性質(例えば、式(IV)の化合物を生成するために適切な条件)に依存して変動する。いくつかの実施形態において、Rのために適切な酸素保護基としては、アセテート基、エステル基、ベンジル基およびベンゾエート基が挙げられる。いくつかの実施形態において、Rのために適切な酸素保護基としては、シリル基が挙げられる。ここでまた、R、RおよびR10の置換基のために適切な保護基(酸素および/または窒素)(すなわち、R〜R)は、生じる置換基に依存する。例えば、Rが−NRである、式(VI)の化合物を生成するための反応の適切な塩基性条件下では、RおよびRは各々独立して、適切に塩基安定性である窒素保護基(例えば、BOC)であり得る。同様に、Rが−ORである、式(VI)の化合物を生成するための反応の適切な塩基性条件下では、Rは、適切に塩基安定性である酸素保護基であり得る。いくつかの実施形態において、R13のために適切な酸素保護基としては、シリル基および/またはエステル基あるいはアリル基が挙げられる。
【0109】
式(V)および式(VI)の化合物の合成に関してと同様に、式(I)、式(II)および式(III)の化合物は、各キラル炭素において、様々な立体化学を有し得る。好ましい実施形態において、式(I)、式(II)および式(III)の化合物は、各キラル炭素において特定の立体化学を有する。従って、得られる式(IV)の化合物は、各キラル炭素において、様々な立体化学を有し得る。例えば、いくつかの実施形態において、式(IV)の化合物は、式(IVa):
【0110】
【化48】

の化合物である。
【0111】
すなわち、式(II)の化合物は、上記のような式(IIa)の化合物であり得る。
【0112】
式(I)〜(VI)の各々における種々の置換基は、任意の組み合わせで存在し得る。いくつかの実施形態において、Rは水素である。いくつかの実施形態において、Rは水素である。いくつかの実施形態において、RとRとの両方が水素である。いくつかの実施形態において、Rは、水素またはC1〜6アルキルである。いくつかの実施形態において、Rは、水素またはC1〜6アルキルである。いくつかの実施形態において、RおよびRは各々独立して、水素またはメチルである。いくつかの実施形態において、RおよびRは一緒になって、5員〜6員の非共役炭素環式環(例えば、シクロペンチル、非共役シクロペンテニル、シクロヘキシルまたは非共役シクロヘキセニル)を形成する。いくつかの実施形態において、Rは水素またはヒドロキシルである。いくつかの実施形態において、Rは水素またはヒドロキシルである。いくつかの実施形態において、Rは、−ORまたは−NRである。いくつかの実施形態において、Rは、水素またはC1〜6アルキルである。いくつかの実施形態において、Rは−NRである。いくつかの実施形態において、Rは、水素またはC1〜6アルキルである。いくつかの実施形態において、Rは、水素、C1〜6アルキルまたは塩基安定性窒素保護基である。いくつかの実施形態において、RはC1〜6アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり、そしてRは、水素または塩基安定性窒素保護基である。いくつかの実施形態において、R10は水素である。
【0113】
本発明は、少なくとも部分的に、式(V)における以下に示される炭素:
【0114】
【化49】

および/または式(VI)における以下に示される炭素:
【0115】
【化50】

における、立体化学の制御に基づく。
【0116】
式(IV)の化合物を形成するための以前の方法において、このフラグメントの調製は、式(V)のα異性体とβ異性体との1:2の混合物を与えた。α異性体およびβ異性体は、最終マクロライド生成物の引き続く合成において使用される場合に、大いに異なる収率を生じることが、本発明者らによりさらに決定された。例えば、式(V)の化合物のα異性体およびβ異性体が:
【0117】
【化51】

である化合物010の生成において、引き続く反応から得られる収率は、表1において以下に示されるとおりである。
【0118】
表1:化合物010の生成における反応工程の収率
【0119】
【表1】

エチル化反応は、所望の生成物と脱離生成物との約1:1の混合物を生成した。これらの2つの物質は、分離不可能であった。
**TBS切断反応の収率は、上記1:1の混合物に基づく。
***大環状ラクトン化反応の収率は、リチウムビス(トリメチルシリル)アミドに変更することによって、63%に改善され得る。
【0120】
表1に見られ得るように、式(V)の化合物のβ異性体は、多数の引き続く反応工程において、有意に低い収率を与えた。さらに、β異性体のエチル化において生じる脱離副生成物は、収率の有意な低下のみでなく、分離が困難な不純物もまた示す。従って、いずれの特定の理論によっても束縛されることを望まないが、式(V)の化合物のβ異性体の排除は、引き続く反応におけるより高い収率のみでなく、より純度が高い最終生成物もまた生じると考えられる。
【0121】
いくつかの実施形態において、これらの化合物および組成物は、脱離生成物(例えば、式(XI):
【0122】
【化52】

の化合物)を実質的に含まない。
【0123】
いくつかの実施形態において、これらの化合物および組成物は、以下の構造:
【0124】
【化53】

により表される脱離生成物を実質的に含まない。
【0125】
従って、いくつかの局面において、本発明は、式(V)の化合物を含有するαが富化された組成物を作製する方法に関する。αが富化された組成物は、適切な立体化学を有する出発物質を使用することによって得られ得ることが、本発明者らにより決定された。従って、式(V)の化合物を含有するαが富化された組成物は、式(I)の化合物を式(II)の化合物と、式(V)の化合物を含有するαが富化された組成物が形成されるような適切な条件下で反応させることにより、形成され得る。同様に、いくつかの局面において、本発明は、式(VI)の化合物を含有するαが富化された組成物を作製する方法に関する。このようなαが富化された組成物は、式(I)の化合物を式(III)の化合物と、式(VI)の化合物を含有するαが富化された組成物が形成されるような適切な条件下で反応させることにより、形成され得る。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、式(Ib):
【0126】
【化54】

の化合物である。
【0127】
本発明はまた、結晶性中間体が単離され得、その結果、マクロライド生成物の合成において最少のクロマトグラフィーが必要とされるという事実に少なくとも部分的に基づく。式(IV)の化合物を形成するための以前の方法において、多数のクロマトグラフィー精製が、不純物を除去するために必要とされた(例えば、WO 03/076424、段落[1099]〜[1119]を参照のこと)。従って、いずれの特定の理論によっても束縛されることを望まないが、適切な純度および立体化学を維持しながらのクロマトグラフィー工程の排除は、最終マクロライド生成物の収率を改善すると考えられる。
【0128】
従って、いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は結晶性である。他の実施形態において、式(II)の化合物は結晶性である。なお他の実施形態において、式(III)の化合物は結晶性である。他の実施形態において、式(IV)の化合物は、クロマトグラフィーを使用せずに、実質的に純粋な形態で生成される。他の実施形態において、式(V)の化合物は、クロマトグラフィーを使用せずに、実質的に純粋な形態で生成される。他の実施形態において、式(VI)の化合物は、クロマトグラフィーを使用せずに、実質的に純粋な形態で生成される。
【0129】
なお他の実施形態において、式(V)の化合物および/または式(VI)の化合物は結晶性である。中間体の結晶化は、必ずしも簡単にまたは効率的に進行しないことが、当業者により理解される。従って、いくつかの実施形態において、式(V)の化合物および/または式(VI)の化合物の結晶化可能なアナログが、中間体として形成される。本明細書中で使用される場合、用語「結晶化可能なアナログ」とは、結晶化し得るように改変されているが、引き続く反応工程における反応性を依然として維持している、式(V)および/または式(VI)の化合物をいう。例えば、式(V)および/または式(VI)の化合物は、ペンダント酸素のうちの1つにおいて保護基で改変されており、その結果、この保護基が結晶化を容易にし得る。結晶化可能なアナログが引き続く工程において使用される場合、その保護基は、除去され得る。
【0130】
例えば、いずれの特定の理論によっても束縛されることを望まないが、2つの共役環を本発明の分子のうちの1つ以上に組み込むことは、例えば、これらの2つの環の間に有利な相互作用を生じることによって、結晶化を容易にし得ると考えられる。このような相互作用は、例えば、π軌道の相互作用に起因する環のスタッキングであり得る。この現象は、「πスタッキング」と称され得る。従って、いくつかの実施形態において、本発明の分子は、πスタッキングが可能な2つの共役環を含む。いくつかの実施形態において、これらの環は、πスタッキングを容易にする1つ以上の置換基を含む。例えば、πスタッキングは、類似しない電子特性を有する環(例えば、電子豊富な1つの環および電子不足な1つの環)を提供することによって、増強され得る。このような環は、例えば、特定の電子供与性基および/または電子求引性基の存在に基づいて、選択され得る。すなわち、電子供与性基の存在は、代表的に、環をより電子豊富にし、一方で、電子求引性基の存在は、代表的に、環をより電子不足にする。例示的な電子供与性基としては、−O、−OH、−OR、−NH、−NR、アミド、−OCOR、アルキル(例えば、分枝アルキル)、フェニル基および共役アルケニルが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な電子求引性基としては、−NO、−NH、−NR、−SOH、ニトリル、−CF、カルボニル基(例えば、−COH、−COR、−COOHおよび−COOR)ならびにハロゲンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0131】
いくつかの実施形態において、式(V)の化合物の結晶化可能なアナログは、式(VII):
【0132】
【化55】

の化合物であり、例えば、式(VII’):
【0133】
【化56】

であり、これらの式において、RおよびRは各々独立して、水素、C1〜6アルキル、C3〜6非共役アルケニルおよびC3〜6非共役アルキニルからなる群より選択され;
は、水素および塩基安定性酸素保護基からなる群より選択され;
およびRは各々独立して、水素、ハロゲン、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C1〜6ハロアルキル、C1〜6アルコキシ、フェニルおよびベンジルからなる群より選択され、ここでこのフェニルまたはベンジルは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1〜3アルキル、およびNHから独立して選択される0個、1個、2個、もしくは3個の置換基で置換されているか;あるいはRおよびRは、これらが結合する炭素と一緒になって、5員〜6員の非共役炭素環式環を形成し;
11およびR12は、各々独立して、水素および塩基安定性酸素保護基からなる群より選択されるか;またはR11およびR12は一緒になって、構造(a):
【0134】
【化57】

の5員ヘテロシクリルジイルを形成し;
構造(a)において、R19およびR20は各々独立して、水素、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキル、C1〜6アルコキシおよびフェニルからなる群より選択されるか、またはR19およびR20は一緒になって、構造(b):
【0135】
【化58】

のフルオレニル部分を表し;
13は、式(VIII):
【0136】
【化59】

の部分であり;そして
14、R15、R16、R17およびR18は各々独立して、H、NO、−NH、−COH、−CO(C1〜4アルキル)、−COCl、−COOH、−COO(C1〜4アルキル)、−NR、−SOH、ニトリル、−CFおよびハロゲンからなる群より選択される。
【0137】
いくつかの実施形態において、Rは、第一の芳香族環を含む酸素保護基(例えば、−OH、−O(C1〜4アルキル)、−NH、−NH(C1〜4アルキル)、−N(C1〜4アルキル)、アミド、−OCO(C1〜4アルキル)および(C1〜4アルキル)から独立して選択される0個、1個、2個もしくは3個の置換基で置換されたベンジルまたはベンゾイル)である。
【0138】
いくつかの実施形態において、式(V)の化合物の結晶化可能なアナログは、式(VII):
【0139】
【化60】

の化合物であり、例えば、式(VII’):
【0140】
【化61】

であり、これらの式において、RおよびRは各々独立して、水素、C1〜6アルキル、C3〜6非共役アルケニルおよびC3〜6非共役アルキニルからなる群より選択され;
は、第一の芳香族環を含有する酸素保護基であり;
およびRは各々独立して、水素、ハロゲン、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C1〜6ハロアルキル、C1〜6アルコキシ、フェニルおよびベンジルからなる群より選択され、ここでこのフェニルまたはベンジルは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1〜3アルキル、およびNHから独立して選択される0個、1個、2個、もしくは3個の置換基で置換されているか;あるいはRおよびRは、これらが結合する炭素と一緒になって、5員〜6員の非共役炭素環式環を形成し;
11およびR12は、各々独立して、水素および塩基安定性酸素保護基からなる群より選択されるか;またはR11およびR12は一緒になって、構造(a):
【0141】
【化62】

の5員ヘテロシクリルジイルを形成し;
構造(a)において、R19およびR20は各々独立して、水素、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキル、C1〜6アルコキシおよびフェニルからなる群より選択されるか、またはR19およびR20は一緒になって、構造(b):
【0142】
【化63】

のフルオレニル部分を表し;
13は、第二の芳香族環を含有する酸素保護基である。
【0143】
いくつかの実施形態において、R13は、少なくとも1つの置換基で置換されたベンゾイルまたはベンジルであり、ここで各置換基は独立して、−NO、−NH、−NH(C1〜4アルキル)、−NH(C1〜4アルキル)、−N(C1〜4アルキル)、−SOH、ニトリル、−CF、−COH、−CO(C1〜4アルキル)、−COOHおよび−COO(C1〜4アルキル)から選択される。
【0144】
いくつかの実施形態において、R13は、式(VIII):
【0145】
【化64】

の部分である。
【0146】
本明細書中で使用される場合、用語「芳香族環を含有する酸素保護基」とは、構造中に少なくとも1つの芳香族環を有する、本明細書中により詳細に記載されるような酸素保護基をいう。芳香族環とは、共役二重結合を含む環系(例えば、ベンゼン)をいう。このような構造は、代表的に、環系の周りに非局在化した電子を生じる。いくつかの実施形態において、芳香族環を含有する酸素保護基は、置換ベンゾイルまたは非置換ベンゾイルである。いくつかの実施形態において、芳香族環を含有する酸素保護基は、置換ベンジルまたは非置換ベンジルである。
【0147】
いくつかの実施形態において、第一の芳香族環を含有する酸素保護基は、少なくとも1つの電子求引性基で置換されたベンゾイルまたはベンジルであり、そして第二の芳香族環を含有する酸素保護基は、少なくとも1つの電子供与性基で置換されたベンゾイルまたはベンジルである。他の実施形態において、第一の芳香族環を含有する酸素保護基は、少なくとも1つの電子供与性基で置換されたベンゾイルまたはベンジルであり、そして第二の芳香族環を含有する酸素保護基は、少なくとも1つの電子求引性基で置換されたベンゾイルまたはベンジルである。電子供与性基および電子求引性基は、上に記載されたもののうちのいずれかであり得る。いくつかの実施形態において、第一の芳香族環を含有する酸素保護基は、少なくとも1つの置換基で置換されたベンゾイルまたはベンジルであり、ここで各置換基は独立して、−OH、−O(C1〜4アルキル)、−NH、−NH(C1〜4アルキル)、−N(C1〜4アルキル)、アミド、−OCO(C1〜4アルキル)および(C1〜4アルキル)から選択される。いくつかの実施形態において、第二の芳香族環を含有する酸素保護基は、少なくとも1つの置換基で置換されたベンゾイルまたはベンジルであり、ここで各置換基は独立して、−NO、−NH、−NH(C1〜4アルキル)、−NH(C1〜4アルキル)、−N(C1〜4アルキル)、−SOH、ニトリル、−CF、−COH、−CO(C1〜4アルキル)、−COOHおよび−COO(C1〜4アルキル)から選択される。
【0148】
式(VII)の化合物に関して、いくつかの実施形態において、Rは水素である。いくつかの実施形態において、Rは水素である。いくつかの実施形態において、RおよびRの両方が水素である。いくつかの実施形態において、Rは、−OH、−O(C1〜4アルキル)、−NH、−NH(C1〜4アルキル)、−N(C1〜4アルキル)、アミド、−OCO(C1〜4アルキル)および(C1〜4アルキル)から独立して選択される0個、1個、2個、または3個の置換基で置換された、ベンジルである。いくつかの実施形態において、Rは4−メトキシベンジルである。いくつかの実施形態において、Rは、水素またはC1〜6アルキルである。いくつかの実施形態において、Rは、水素またはC1〜6アルキルである。いくつかの実施形態において、RおよびRは各々独立して、水素またはメチルである。
【0149】
いくつかの実施形態において、R14、R15、R16、R17、およびR18のうちの1つは、NO、−NH、−COH、−CO(C1〜4アルキル)、−COCl、−COOH、−COO(C1〜4アルキル)、−NR、−SOH、ニトリル、−CFおよびハロゲンからなる群より選択され、そしてR14、R15、R16、R17、およびR18のうちの他の4つは水素である。いくつかの実施形態において、R14、R15、R16、R17、およびR18のうちの少なくとも1つは、NO、−NH、−COH、−CO(C1〜4アルキル)、−COCl、−COOH、−COO(C1〜4アルキル)、−NR、−SOH、ニトリル、−CFおよびハロゲンからなる群より選択され、そしてR14、R15、R16、R17、およびR18のうちの他のものは水素である。いくつかの実施形態において、R16はNOであり、そしてR14、R15、R17、およびR18の各々は独立して水素である。
【0150】
いくつかの実施形態において、
【0151】
【化65】

により表される二重結合は、置換基が互いに対してシス位に位置する二重結合を表す。
【0152】
いくつかの実施形態において、式(VII)の化合物は、式(VIIa)
【0153】
【化66】

の化合物である。
【0154】
いくつかの実施形態において、式(VII)の化合物は、式(VIIb):
【0155】
【化67】

の化合物である。
【0156】
本発明はまた、高度に可溶性である中間体が、不溶性または乏しく可溶性である不純物から分離され得、その結果、マクロライド生成物の合成において、より少ないクロマトグラフィーが必要とされるという事実に、少なくとも部分的に基づく。上に示されたように、式(IV)の化合物を形成するための以前の方法は、不純物を除去するために、多数のクロマトグラフィー精製に依存した。ここでまた、いずれの特定の理論によっても束縛されることを望まないが、適切な純度および立体化学を維持しながらこのようなクロマトグラフィー工程のうちの1つ以上を排除することは、最終マクロライド生成物の収率を改善するのみでなく、生成の時間および費用もまた低下させ、そして式(IV)の化合物の合成において利用される試薬(例えば、有機溶媒)の量も減少させると考えられる。
【0157】
従って、いくつかの実施形態において、本発明の中間体は、溶解度促進基の付着によって、高度に可溶性にされ得る。いくつかの実施形態において、溶解度促進基の付着は、可逆的である。例えば、いくつかの実施形態において、溶解度促進基の付加は、窒素保護基または酸素保護基の付加と結び付けられ得る。いずれの特定の理論によっても束縛されることを望まないが、溶解度促進基の付着は、目標化合物が水中に引き込まれることを可能にし、これによって、溶解度促進基で誘導体化されないあらゆる部分を有機媒体中に残すと考えられる。従って、いくつかの実施形態において、式(I)の化合物の可溶性アナログが、中間体として形成される。本明細書中で使用される場合、用語「可溶性アナログ」とは、水溶液中に可溶性であるように(例えば、溶解度促進基の付着によって)誘導体化された、式(I)の化合物をいう。例えば、式(I)および/または式(VI)の化合物は、ペンダント酸素のうちの1つにおいて溶解度促進基で修飾され得、その結果、この溶解度促進基は、水性媒体中での化合物の溶解を容易にする。次いで、当業者は、目的の化合物と不純物との溶解度の差を利用して、目的の化合物を、クロマトグラフィーを使用せずに単離し得る。溶解度促進基は、目的の化合物の単離後に除去され得る。
【0158】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物の可溶性アナログは、式(XIII):
【0159】
【化68】

の化合物であり、例えば、式(XIII’):
【0160】
【化69】

であり、これらの式において、
およびRは各々独立して、水素、C1〜6アルキル、C3〜6非共役アルケニルおよびC3〜6非共役アルキニルからなる群より選択され;
は、水素および塩基安定性酸素保護基からなる群より選択され;
11およびR12は、各々独立して、水素および塩基安定性酸素保護基からなる群より選択されるか;またはR11およびR12は一緒になって、構造(a):
【0161】
【化70】

の5員ヘテロシクリルジイルを形成し;
構造(a)において、R19およびR20は各々独立して、水素、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキル、C1〜6アルコキシおよびフェニルからなる群より選択されるか、またはR19およびR20は一緒になって、構造(b):
【0162】
【化71】

のフルオレニル部分を表し;そして
21、R22、R23、R24、およびR25のうちの1つ、2つまたは3つは、酸性水素含有部分またはその塩であり、そしてR21、R22、R23、R24、およびR25のうちの残りのものは各々独立して、水素、メチル、ヒドロキシルまたはアミノである。
【0163】
本明細書中で使用される場合、用語「酸性水素含有部分」とは、少なくとも1つの酸性水素を含有する置換基をいう。酸性水素含有部分としては、例えば、−COOH、−SOH、−SOH、−POおよび−POが挙げられる。酸性水素含有部分は、式(XII)の化合物のコア(すなわち、
【0164】
【化72】

部分)に対してオルトに位置しても、メタに位置しても、パラに位置してもよいことが理解されるべきである。いくつかの実施形態において、酸性水素含有部分は、式(XII)の化合物のコアに対してオルトである。
【0165】
いくつかの実施形態において、R21は、−COOHまたはその塩である。いくつかの実施形態において、R21は、−SOHまたはその塩である。いくつかの実施形態において、R22、R23、R24、およびR25は各々独立して、水素である。いくつかの実施形態において、R22は、−COOHまたはその塩である。いくつかの実施形態において、R22は、−SOHまたはその塩である。いくつかの実施形態において、R21、R23、R24、およびR25は各々独立して、水素である。
【0166】
いくつかの実施形態において、R、R、R、R11、R12、R19およびR20は、化合物(I)に関連して提供された置換基から選択される。例えば、いくつかの実施形態において、RおよびRは各々独立して、水素である。いくつかの実施形態において、R11およびR12は一緒になって、構造(a):
【0167】
【化73】

の5員ヘテロシクリルジイルを形成し;
構造(a)において、R19およびR20は各々独立して、C1〜6アルキルである。
【0168】
いくつかの実施形態において、式(I)、式(II)および式(III)の化合物は、反応して式(IV’):
【0169】
【化74】

の化合物を形成し、式(IV’)の化合物が引き続いて、例えば、カリウムt−ブトキシドおよび引き続く脱保護/酸化を使用する大環状ラクトン化によって、式(IV)の化合物に変換される。式(IV’)のR位における保護基の除去(例えば、DDQでp−メトキシベンジルエーテルを除去してヒドロキシ部分を形成すること)は、p−アニスアルデヒドを生成することもまた決定された。次に、p−アニスアルデヒドは、二量体不純物:
【0170】
【化75】

(ここで置換基は上記のとおりである)の形成の原因であることが見出された。この二量体は、反応条件に再度供されたが、この二量体は、分解して単量体およびp−アニスアルデヒドに戻らなかった。このことは、この二量体が安定であることを示す。また、いくつかの最初の生物学的試験は、この二量体が単量体より低い効力および高い細胞傷害性を有し、この二量体を望ましくない不純物にすることを示した。
【0171】
従って、いくつかの実施形態において、本発明の化合物および組成物は、二量体生成物を実質的に含まない。いくつかの実施形態において、セミカルバジド塩酸塩が、酢酸ナトリウムの存在下で、この反応混合物に添加される。いずれの特定の理論によっても束縛されることを望まないが、これによりイミン誘導体を形成し得、このイミン誘導体は、溶液から沈殿し得るので、濾過により除去され得ると考えられる。
【0172】
いくつかの実施形態において、式(I)、式(II)および式(III)の化合物は、反応して式(IV’’):
【0173】
【化76】

の化合物を形成し、式(IV’’)において、
およびRは各々独立して、水素、C1〜6アルキル、C3〜6非共役アルケニルおよびC3〜6非共役アルキニルからなる群より選択され;
は塩基安定性酸素保護基であり;
およびRは各々独立して、水素、ハロゲン、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C1〜6ハロアルキル、C1〜6アルコキシ、フェニルおよびベンジルからなる群より選択され、ここでこのフェニルまたはベンジルは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1〜3アルキル、およびNHから独立して選択される0個、1個、2個、もしくは3個の置換基で置換されているか;あるいはRおよびRは、これらが結合する炭素と一緒になって、5員〜6員の非共役炭素環式環を形成し;
は−ORであり、ここでRは塩基安定性酸素保護基であり;
は、水素および−ORからなる群より選択され、ここでRは、水素または塩基安定性酸素保護基であり;
は、水素、ハロゲン、−OR、C1〜6アルキル、C3〜6非共役アルケニル、C3〜6非共役アルキニル、C1〜6ハロアルキル、−SRおよび−NRからなる群より選択され、ここでRは、水素または塩基安定性酸素保護基であり、Rは、水素、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C1〜6ヘテロアルキル、1個、2個もしくは3個のヘテロ原子を含む5員〜7員のヘテロアリール、およびC5〜7アリールからなる群より選択され、そしてRおよびRは各々独立して、水素、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C1〜6ヘテロアルキル、1個、2個もしくは3個のヘテロ原子を含む5員〜7員のヘテロアリール、およびC5〜7アリールからなる群または塩基安定性窒素保護基より選択され;そして
10は、水素、ハロゲン、−OR、C1〜6アルキル、C3〜6非共役アルケニル、C3〜6非共役アルキニル、C1〜6ハロアルキルおよびC1〜6アルコキシからなる群より選択され、ここでRは、水素または塩基安定性酸素保護基であり;
式(IV’’)の化合物は、例えば、引き続く脱保護/酸化により、引き続いて式(IV)の化合物に変換される。脱保護は、R、Rまたは式XII:
【0174】
【化77】

のヘテロシクリルジイルにより表される構造のうちのいずれかまたはすべてにおいて起こり得る。
【0175】
いくつかの実施形態において、脱保護は、R、R、および式(XII)のヘテロシクリルジイルにより表される構造の全てにおいて、同時に起こる。他の実施形態において、脱保護は、Rにおいて最初に起こり、その後、Rおよび式(XII)のヘテロシクリルジイルにより表される構造における引き続く脱保護が起こる。
【0176】
他の局面において、本発明は、式(IV)の化合物を含有する純度が増大した組成物を作製する方法に関する。純度が増大した組成物は、適切な立体化学を有する出発物質を使用し、従って、αが富化された中間体(例えば、式(V)または式(VI)を含むαが富化された組成物)を形成すること、およびクロマトグラフィーを行わずに実質的に純粋な形態で単離され得る結晶性中間体を目標とするによって得られ得ることもまた、本発明者らにより決定された。式(IV)の化合物を含有する純度が増大した組成物を作製する方法は、代表的に、式(I)の化合物を式(II)の化合物および式(III)の化合物と、式(IV)の化合物を含有する純度が増大した組成物が形成されるような適切な条件下で合わせる工程を包含する。
【0177】
同様に、他の局面において、本発明は、組成物が有機不純物を実質的に含まない、式(IV)の化合物を含有する組成物を作製する方法に関する。この方法は代表的に、式(I)の化合物を式(II)の化合物および式(III)の化合物と、有機不純物を実質的に含まない、式(IV)の化合物を含有する組成物が形成されるような適切な条件下で合わせる工程を包含する。
【0178】
なお他の局面において、本発明は、式(IV)の化合物を含有する収率が増大した組成物を作製する方法に関する。この方法は代表的に、式(I)の化合物を式(II)の化合物および式(III)の化合物と、式(IV)の化合物を含有する組成物が形成されるような適切な条件下で合わせる工程を包含する。
【0179】
当業者は、本明細書中で使用される反応条件が変動し得ることを理解し得る。例えば、多くの試薬が、式(I)〜(III)および式(V)〜(VI)のうちのいずれかの化合物を互いにカップリングする際に利用され得る。さらに、多くの試薬が、種々の中間体の保護、脱保護、および大環状ラクトン化および酸化において利用され得る。さらに、反応のために要する時間は、試薬および濃度に依存して変動し得る。さらに、本発明の反応は、様々な温度で行われ得る。多数の溶媒もまた、本発明の反応において使用され得る。適切な溶媒は、周囲の室温および圧力において液体であるか、または反応において使用される温度および圧力の条件下で液体状態を維持する。有用な溶媒は、特に制限されないが、ただし、溶媒が反応自体を妨害せず(すなわち、溶媒は好ましくは、不活性溶媒である)、そして特定の量の反応物質を溶解することを条件とする。状況に依存して、溶媒は、蒸留または脱気され得る。溶媒は、例えば、脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサン、ヘプタン、リグロイン、石油エーテル、シクロヘキサン、またはメチルシクロヘキサン)およびハロゲン化炭化水素(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、クロロベンゼン、またはジクロロベンゼン);芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、テトラヒドロナフタレン、エチルベンゼン、またはキシレン);エーテル(例えば、ダイグライム、メチル−tert−ブチルエーテル、メチル−tert−アミルエーテル、エチル−tert−ブチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフランもしくはメチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、またはジエチレングリコールジメチルエーテル);ニトリル(例えば、アセトニトリル);ケトン(例えば、アセトン);エステル(例えば、酢酸メチルまたは酢酸エチル);アルコール(例えば、メタノール)ならびにこれらの混合物であり得る。当業者は、過度に実験を行うことなく、本発明の教示を使用して、適切な反応条件を決定し得る。
【0180】
(有利な反応特性の分析)
1つの実施形態において、本発明の調製方法は、本発明のマクロライドの合成のために現在使用されている方法よりも有利である。特定の実施形態において、本発明の方法は、有利な反応特性(BRP)を有する。
【0181】
語句「有利な反応特性またはBRP」は、同じ反応を実施するための既存の様式より有利である、ある反応の特性を包含する。この特性は、その特性が本質的に、既存の方法論の特性に等しいかまたはより良好であるような、既存の方法論との比較のために適切な任意の特性であり得る。このような特性の例としては、出発物質の安全性、反応時間、エネルギー費用、反応の安全性、生成物質量バランス(廃棄物の減少)、反応のクリーンさ、廃棄物、スループット、後処理、全体的なプロセス時間、および目標生成物の全体的な費用が挙げられるが、これらに限定されない。化合物010の調製に適用される場合に有利な反応特性の数個の特定の例が、以下で議論される。
【0182】
(費用効果)
化合物010を調製する際に、芳香族窒素のエチル化(すなわち、式(IV)のR)が、スループットを制限する工程である。以前に使用されていた方法論において、エチル化は、炭素骨格全体が適切な位置にある、合成の後期に行われる。従って、エチル化反応のあらゆる制限は、骨格全体(全ての出発物質を含む)を危険にさらす。エチル化をより早期に実施することによって、他のフラグメントに対する危険が排除され、そして全体的な合成の収束(convergence)が増大する。従って、いくつかの実施形態において、式(III)の化合物の置換基Rは、式(IV)の化合物の形成における引き続く工程において、アルキル化が起こる必要がないような置換基である。
【0183】
(廃棄物/不純物)
理論的には、化合物010を合成するための以前の方法について、生成物側の質量のうちの少なくとも33%が廃棄物である。例えば、以前の方法において生成される式(V)の化合物のうちの約66%はβ異性体であり、そしてβ異性体から生じる生成物のうちの約50%は、構造:
【0184】
【化78】

の分離不可能な脱離副生成物である。
【0185】
さらに、廃棄物の総量に関して、本発明の方法は、クロマトグラフィー工程の排除により、以前の方法よりもさらに廃棄物を減少させ得る。このような廃棄物の減少は、例えば、時間、費用、危険な廃棄物処理などのさらなる節約をもたらし得る。
【0186】
(本発明の中間体)
本発明はまた、本発明の化合物および組成物(例えば、式(IV)の化合物)の合成において使用するための中間体に、少なくとも部分的に関する。上で議論されたように、少なくともクロマトグラフィー工程が排除され得るように、最終生成物の合成において、結晶性中間体を有することが望ましい。
【0187】
上記スキーム1およびスキーム2において列挙される特定の中間体に加えて、本発明はまた、このような中間体の結晶化可能なアナログを包含することが理解されるべきである。いくつかの実施形態において、スキーム1およびスキーム2において列挙される特定の中間体のうちの1つ以上は、容易にまたは効率的には結晶化しない。上により詳細に記載されたように、中間体は、結晶化され得るように改変され得る。このような改変された中間体は、引き続く反応工程において、その反応性を維持する。
【0188】
従って、いくつかの局面において、本発明は、式(VII):
【0189】
【化79】

の中間体に関し、式(VII)において、
およびRは各々独立して、水素、C1〜6アルキル、C3〜6非共役アルケニルおよびC3〜6非共役アルキニルからなる群より選択され;
は、水素および塩基安定性酸素保護基からなる群より選択され;
およびRは各々独立して、水素、ハロゲン、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C1〜6ハロアルキル、C1〜6アルコキシ、フェニルおよびベンジルからなる群より選択され、ここでこのフェニルまたはベンジルは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1〜3アルキル、およびNHから独立して選択される0個、1個、2個、もしくは3個の置換基で置換されているか;あるいはRおよびRは、これらが結合する炭素と一緒になって、5員〜6員の非共役炭素環式環を形成し;
11およびR12は、各々独立して、水素および塩基安定性酸素保護基からなる群より選択されるか;またはR11およびR12は一緒になって、構造(a):
【0190】
【化80】

の5員ヘテロシクリルジイルを形成し;
13は、式(VIII):
【0191】
【化81】

の部分であり;そして
14、R15、R16、R17およびR18は各々独立して、H、NO、−NH、−COH、−CO(C1〜4アルキル)、−COCl、−COOH、−COO(C1〜4アルキル)、−NR、−SOH、ニトリル、−CFおよびハロゲンからなる群より選択される。
【0192】
特定の局面において、本発明は、式(VII):
【0193】
【化82】

の中間体に関し、式(VII)において、
およびRは各々独立して、水素、C1〜6アルキル、C3〜6非共役アルケニルおよびC3〜6非共役アルキニルからなる群より選択され;
は、芳香族環を含有する酸素保護基であり;
およびRは各々独立して、水素、ハロゲン、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C1〜6ハロアルキル、C1〜6アルコキシ、フェニルおよびベンジルからなる群より選択され、ここでこのフェニルまたはベンジルは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1〜3アルキル、およびNHから独立して選択される0個、1個、2個、もしくは3個の置換基で置換されているか;あるいはRおよびRは、これらが結合する炭素と一緒になって、5員〜6員の非共役炭素環式環を形成し;
11およびR12は、各々独立して、水素および塩基安定性酸素保護基からなる群より選択されるか;またはR11およびR12は一緒になって、構造(a):
【0194】
【化83】

の5員ヘテロシクリルジイルを形成し;
構造(a)において、R19およびR20は各々独立して、水素、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキル、C1〜6アルコキシおよびフェニルからなる群より選択されるか、またはR19およびR20は一緒になって、構造(b):
【0195】
【化84】

のフルオレニル部分を表し;
13は、芳香族環を含有する酸素保護基である。
【0196】
、R、R、R、R、R11、R12およびR13についての例示的な値は、式(VII)の結晶化可能なアナログに関連して上により詳細に記載されている。
【0197】
いくつかの実施形態において、式(VII)の化合物は、式(VIIa)
【0198】
【化85】

の化合物である。
【0199】
いくつかの局面において、本発明は式(IX):
【0200】
【化86】

の中間体に関し、式(IX)において、
およびRは各々独立して、水素、C1〜6アルキル、C3〜6非共役アルケニルおよびC3〜6非共役アルキニルからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、Rは水素である。いくつかの実施形態において、Rは水素である。いくつかの実施形態において、RおよびRは各々独立して、水素である。
【0201】
なお他の局面において、本発明は、式(X):
【0202】
【化87】

の中間体に関し、式(X)において、
およびRは各々独立して、水素、C1〜6アルキル、C3〜6非共役アルケニルおよびC3〜6非共役アルキニルからなる群より選択され;
およびRは各々独立して、水素、ハロゲン、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C1〜6ハロアルキル、C1〜6アルコキシ、フェニルおよびベンジルからなる群より選択され、ここでこのフェニルまたはベンジルは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1〜3アルキル、およびNHから独立して選択される0個、1個、2個、もしくは3個の置換基で置換されているか;あるいはRおよびRは、これらが結合する炭素と一緒になって、5員〜6員の非共役炭素環式環を形成し;
は、水素および−ORからなる群より選択され、ここでRは、水素または塩基安定性酸素保護基であり、
は、水素、ハロゲン、−OR、C1〜6アルキル、C3〜6非共役アルケニル、C3〜6非共役アルキニル、C1〜6ハロアルキル、−SRおよび−NRからなる群より選択され、ここでRは、水素または塩基安定性酸素保護基であり、Rは、水素、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C1〜6ヘテロアルキル、1個、2個もしくは3個のヘテロ原子を含む5員〜7員のヘテロアリール、およびC5〜7アリールからなる群より選択され、そしてRおよびRは各々独立して、水素、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C1〜6ヘテロアルキル、1個、2個もしくは3個のヘテロ原子を含む5員〜7員のヘテロアリール、およびC5〜7アリールからなる群または塩基安定性窒素保護基より選択され;そして
10は、水素、ハロゲン、−OR、C1〜6アルキル、C3〜6非共役アルケニル、C3〜6非共役アルキニル、C1〜6ハロアルキルおよびC1〜6アルコキシからなる群より選択され、ここでRは、水素または塩基安定性酸素保護基である。
【0203】
いくつかの実施形態において、Rは水素である。いくつかの実施形態において、Rは水素である。いくつかの実施形態において、RおよびRは各々独立して、水素である。いくつかの実施形態において、Rは、水素またはC1〜6アルキルである。いくつかの実施形態において、Rは、水素またはC1〜6アルキルである。いくつかの実施形態において、RおよびRは各々独立して、水素またはメチルである。いくつかの実施形態において、Rは水素である。いくつかの実施形態において、R10は水素である。いくつかの実施形態において、Rは−ORまたは−NRである。いくつかの実施形態において、Rは、水素またはC1〜6アルキルである。いくつかの実施形態において、Rは−NRである。いくつかの実施形態において、Rは、水素またはC1〜6アルキルである。いくつかの実施形態において、Rは、水素、C1〜6アルキルまたは塩基安定性窒素保護基である。いくつかの実施形態において、RはC1〜6アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり、そしてRは、水素または塩基安定性窒素保護基である。
【0204】
いくつかの実施形態において、式(X)の化合物は、式(Xa)
【0205】
【化88】

の化合物であり、式(Xa)において、
は、水素、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C1〜6ヘテロアルキル、ヘテロアリール、およびアリールからなる群より選択され;そして
は塩基安定性窒素保護基である。
【0206】
他の実施形態において、本発明は、式(X)の中間体を含有する組成物に関し、この組成物は、式(IV):
【0207】
【化89】

の化合物を実質的に含まず、式(IV)において
およびRは各々独立して、水素、C1〜6アルキル、C3〜6非共役アルケニルおよびC3〜6非共役アルキニルからなる群より選択され;
およびRは各々独立して、水素、ハロゲン、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C1〜6ハロアルキル、C1〜6アルコキシ、フェニルおよびベンジルからなる群より選択され、ここでこのフェニルまたはベンジルは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1〜3アルキル、およびNHから独立して選択される0個、1個、2個、もしくは3個の置換基で置換されているか;あるいはRおよびRは、これらが結合する炭素と一緒になって、5員〜6員の非共役炭素環式環を形成し;
は−ORであり、ここでRは塩基安定性酸素保護基であり;
は、水素および−ORからなる群より選択され、ここでRは、水素または塩基安定性酸素保護基であり;
は、水素、ハロゲン、−OR、C1〜6アルキル、C3〜6非共役アルケニル、C3〜6非共役アルキニル、C1〜6ハロアルキル、−SRおよび−NRからなる群より選択され、ここでRは、水素または塩基安定性酸素保護基であり、Rは、水素、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C1〜6ヘテロアルキル、1個、2個もしくは3個のヘテロ原子を含む5員〜7員のヘテロアリール、およびC5〜7アリールからなる群より選択され、そしてRおよびRは各々独立して、水素、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C1〜6ヘテロアルキル、1個、2個もしくは3個のヘテロ原子を含む5員〜7員のヘテロアリール、およびC5〜7アリールからなる群または塩基安定性窒素保護基より選択され;
10は、水素、ハロゲン、−OR、C1〜6アルキル、C3〜6非共役アルケニル、C3〜6非共役アルキニル、C1〜6ハロアルキルおよびC1〜6アルコキシからなる群より選択され、ここでRは、水素または塩基安定性酸素保護基であり;そして
11およびR12は各々独立して、水素である。
【0208】
他の局面において、本発明は、式(III):
【0209】
【化90】

の中間体に関し、式(III)において、
Yは、ハロゲンまたはトリフレート(−O−SOCF)であり;
は、水素および−ORからなる群より選択され、ここでRは、水素または塩基安定性酸素保護基であり、
は−NRであり;ここでRは、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C1〜6ヘテロアルキル、1個、2個もしくは3個のヘテロ原子を含む5員〜7員のヘテロアリール、およびC5〜7アリールからなる群より選択され、ここでRは塩基安定性窒素保護基であり;そして
10は、水素、ハロゲン、−OR、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C1〜6ハロアルキルおよびC1〜6アルコキシからなる群より選択され、ここでRは、水素または塩基安定性酸素保護基である。いくつかの実施形態において、Rは水素である。いくつかの実施形態において、R10は水素である。いくつかの実施形態において、RはC1〜6アルキル(例えば、メチルまたはエチル)である。いくつかの実施形態において、Rは−BOCである。
【0210】
なお他の局面において、本発明は、方法の節において本明細書中で上に記載されたような、式(I)〜(III)または式(V)〜(VII)のうちのいずれかの中間体に関する。
【0211】
他の局面において、本発明は、式(IV)の化合物の合成における中間体としての、式(I)〜(III)または式(V)〜(IX)の化合物のうちのいずれか1つの使用に関する。例えば、いくつかの実施形態において、本発明は、式(IV)の化合物を含有する、純度が増大したかまたは収率が増大した組成物の合成における中間体としての、式(I)〜(III)または式(V)〜(IX)の化合物のうちのいずれか1つの使用に関する。いくつかの実施形態において、本発明は、式(IV)の化合物を含有する、純度が増大したかまたは収率が増大した組成物の合成における、式(V)および/または式(VI)の化合物を含有するαが富化された組成物の使用に関する。
【0212】
(本発明の方法を使用して調製される化合物および組成物)
いくつかの局面において、本発明は、本発明の方法を使用して調製される化合物および組成物(例えば、αが富化された組成物)に関する。いくつかの実施形態において、これらの化合物および組成物は、治療処方物において使用するために適切である。このような治療処方物は、例えば、以下により詳細に記載されているものであり得る。他の実施形態において、これらの化合物および組成物は、他の生成物(例えば、式(IV)の化合物)の合成において使用するために適切である。
【0213】
(本発明の組成物の使用)
一般に、本発明は、炎症性障害または免疫障害の処置、および癌(特に、固形腫瘍)の処置のために有用な化合物を提供する。いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、NF−κB活性を阻害し、従って、炎症性障害および免疫障害において有効であり得る(一般に、NF−κB in Defense and Disease,J.Clin.Investig 2001,107,7を参照のこと)。さらに、本発明の特定の化合物はまた、レセプターチロシンキナーゼ活性(例えば、VEGFrおよびPDGFr)をインビトロで阻害することが示されており、癌(固形腫瘍を含む)の処置のために有用である(Angiogenesis:Potentials for Pharmacologic Intervention in the Treatment of Cancer,Cardiovascular Diseases,and Chronic Inflammation,Pharmacological Reviews,2000,52,237を参照のこと)。
【0214】
従って、いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、NF−κB阻害について、10μM未満のIC50値を示した。他の特定の実施形態において、本発明の化合物は、7.5μM未満のIC50値を示した。特定の実施形態において、本発明の化合物は、5μM未満、2.5μM未満、1μM未満のIC50値を示した。特定の実施形態において、本発明の化合物は、0.75μM未満、0.5μM未満、0.25μM未満、0.1μM未満、75nM未満、50nM未満、または25nM未満さえのIC50値を示した。
【0215】
なお他の実施形態において、本発明の化合物は、インビトロにおける腫瘍細胞株の増殖の阻害について、10μM未満のIC50値を示した。他の特定の実施形態において、本発明の化合物は、7.5μM未満のIC50値を示した。特定の実施形態において、本発明の化合物は、5μM未満、2.5μM未満、1μM未満のIC50値を示した。特定の実施形態において、本発明の化合物は、0.75μM未満、0.5μM未満、0.25μM未満、0.1μM未満、75nM未満、50nM未満、または25nM未満さえのIC50値を示した。
【0216】
上で議論されたように、本発明の化合物は、免疫調節活性を示し、そしてレセプターチロシンキナーゼの阻害を介する新脈管形成の阻害についての活性を示す。従って、本発明の化合物は、種々の障害(数個の名称を挙げると、敗血症、糸球体症、慢性関節リウマチ(強直性脊椎炎を含む)、乾癬性関節炎、変形性関節症、骨粗鬆症、アレルギー性鼻炎、眼の炎症、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎、乾癬、喘息、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性肺疾患、肝炎、自己免疫障害、糖尿病、AIDS、固形腫瘍癌、白血病、リンパ腫、非ホジキンB細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、多発性骨髄腫、全身性エリテマトーデス、同種移植片拒絶/対宿主性移植片病、湿疹、蕁麻疹、重症筋無力症、特発性血小板減少性紫斑病、心臓血管疾患(例えば、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症)、肝炎、増殖性腎炎、アデノウイルス、中枢神経系の疾患/障害(脳卒中、アルツハイマー病、癲癇)、およびマラリアの症状の処置が挙げられるが、これらに限定されない)の処置のために有用であり得る。特定の実施形態において、本発明の化合物は、慢性関節リウマチ、乾癬、多発性硬化症、喘息および癌の処置のために、特に有用である。特定の実施形態において、本発明の化合物は、乾癬の処置のために特に有用である。特定の実施形態において、本発明の化合物は、癌の処置のために特に有用である。特定の実施形態において、本発明の化合物は、アトピー性皮膚炎の処置のために特に有用である。このような疾患の処置についてのさらなる情報および指針は、例えば、米国特許出願公開第2006/0247448号に見出され得、その全内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0217】
(投薬量および投与の様式)
本発明の方法により形成される化合物および組成物は、本明細書中に示される疾患状態のいずれかの処置のために有効な、任意の量および任意の投与経路を使用して投与され得ることが理解される。従って、「有効量」との表現は、癌の処置について本明細書中で使用される場合、腫瘍細胞の増殖を阻害するために充分な薬剤の量をいうか、または癌の影響を低下させるために充分な量をいう。必要とされる正確な量は、被験体の種、年齢、および一般的な状態、疾患の重篤度、特定の抗癌剤、その投与様式などに依存して、被験体ごとに変動する。本発明の化合物は、好ましくは、投与の容易さおよび投薬量の均一性のために、投薬単位形態で処方される。「投薬単位形態」との表現は、本明細書中で使用される場合、処置されるべき患者のために適切な、治療剤の物理的に不連続な単位をいう。しかし、本発明の化合物および組成物の毎日の全使用量は、合理的な医学的判断の範囲内で、診察する医師により決定されることが理解される。任意の特定の患者または生物についての特定の治療有効用量レベルは、種々の要因(処置される障害およびその障害の重篤度;使用される特定の化合物の活性;使用される特定の組成物;患者の年齢、体重、一般的健康状態、性別および食事;使用される特定の化合物の投与の回数、投与経路、および排出速度;処置の持続時間;使用される特定の化合物と組み合わせてかまたは同時に使用される薬物;ならびに医療分野において周知である類似の要因が挙げられる)に依存する(例えば、GoodmanおよびGilman,「The Pharmacological Basis of Therapeutics」,第10版,A.Gilman,J.HardmanおよびL.Limbird編,McGraw−Hill Press,155−173,2001(これは、その全体が本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)。
【0218】
薬学的組成物は、全身投与(例えば、経腸投与方法および非経口投与方法(例えば、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、冠状脈内投与、動脈内投与(例えば、頚動脈小体内へ)、皮内投与、皮下投与、経皮送達、気管内投与、皮下投与、関節内投与、心室内投与、吸入(例えば、エアロゾル)、大脳内、経鼻、臍、経口、眼内、肺内投与、カテーテルの挿入(impregnation)、坐剤による投与および組織への直接の注射、または全身吸収される局所投与もしくは粘膜投与))され得る。本発明の組成物の全身投与のための指針(適切な投薬形態、投薬量および用量スケジュールが挙げられる)は、例えば、米国特許出願公開第2006/0247448号に見出され得、その全内容は、本明細書中に参考として援用される。特定の例示的な実施形態において、本発明の化合物は、ステントのためのコーティングとして使用され得る。本発明の化合物をこの能力で使用するための指針は、例えば、WO05/023792に見出され得る。
【0219】
(等価物)
当業者は、本明細書中に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識するか、または慣用的な実験のみを使用して確認し得る。このような等価物は、添付の特許請求の範囲により包含されることが意図される。
【0220】
(参考としての援用)
本願全体にわたり引用される全ての参考文献、特許、および特許出願の内容は、本明細書中に参考として援用される。
【実施例】
【0221】
(実験)
以下の命名規則が、本明細書中で使用される:
【0222】
【表2】

以下に与えられる試薬の量は、任意の所定のスキームに対して最初に列挙される試薬に関してである。体積が与えられる場合、これらの体積は、1kgの重量=1Lの体積の換算係数を使用して計算される。
【0223】
(実施例1:化合物010の合成)
スキーム3:D−リボースからのジオールの合成
【0224】
【化91】

D−リボース(1重量)をアセトン(5体積)に懸濁させた。硫酸(0.05重量)を添加し、そしてこの混合物を均質になるまで攪拌した。イミダゾール(0.6重量)を添加した。この混合物を15分間攪拌し、次いで、アセトンを留去した。アセトン(0.5体積)をこの反応容器に入れた。このアセトンを留去し、そしてこの手順を繰り返した。ジクロロメタン(0.5体積)をこの反応容器に入れ、そして留去した。この物質を、粗製なままで次の反応に持ち越した。
【0225】
このアセトニド(1重量)にイミダゾール(0.36重量)を添加した。この混合物をジクロロメタン(5体積)中に25℃で懸濁させた。この混合物を0℃まで冷却し、そしてtert−ブチルジフェニルシリルクロリド(1.4重量)を添加した。塩化アンモニウム(2体積)と水(1体積)との飽和溶液を添加し、そしてこの混合物を15分間攪拌した。TBME(2.5体積)をこの混合物に添加し、そして5分間攪拌した。この有機溶液を分離し、そして水(2体積)およびブライン(2体積)で洗浄した。その有機層を濃縮し、粗製のTBDPS保護ラクトールを得た。この物質を、粗製なままで次の工程に持ち越した。
【0226】
TBDPS−アセトニド(1重量)のTHF(1.6体積)中の−20℃の溶液に、ビニルマグネシウムブロミドの溶液(1M/THF,5.8体積)を、−10℃未満の温度を維持する速度で添加した。この溶液をゆっくりと25℃まで温めた。この反応物を、飽和水性塩化アンモニウム(4.5体積)、TBME(4.5体積)および水(1.8体積)の冷混合物に移した。その水層を分離し、そしてその有機溶液を水(2.25体積)で2回洗浄した。その有機溶液をブライン(4.5体積)で洗浄し、そして濃縮した。粗製ジオール001(d−リボースから35.2%の収率)を、ヘプタンから結晶化させた。その固体を収集し、そして冷ヘプタンで洗浄し、そして風乾した。
【0227】
スキーム4:アリル還元によるアセテートの合成
【0228】
【化92】

ジオール001(1重量)、ジメチルアミノピリジン(0.002重量)およびトリエチルアミン(0.76体積)の、tert−ブチルメチルエーテル(1.75体積)中0℃の攪拌溶液に、無水酢酸(0.46体積)を添加した。この溶液を25℃まで温め、次いで約1時間攪拌した。この反応混合物を0℃まで冷却し、そして飽和水性塩化アンモニウム(2体積)でクエンチした。TBME(1体積)を添加した。その有機相を分離し、そして水(2体積)、続いてブライン(2体積)で洗浄した。合わせた有機溶液を濃縮して、ジアセテートを得、これをさらに精製せずに使用した。
【0229】
反応容器に、触媒のPd(PhP)(0.02重量)、トリエチルアミン(0.37重量)およびTHF(3体積)を入れた。この溶液を5℃まで冷却した。次いで、ギ酸(0.17体積)を添加した。ギ酸の添加が完了した後に、THF(1体積)中のジアセテート(1重量)の溶液を添加した。この混合物を還流状態(65℃)で2時間加熱した。完了したら、この混合物を0℃まで冷却し、そして水(1.82体積)でクエンチした。tert−ブチルメチルエーテル(2.73体積)を添加し、そして15分間攪拌した。水層を分離した後に、この溶液を10重量%の水性システイン(2.0体積)で洗浄し、次いで飽和塩化ナトリウム(1.82体積)で洗浄した。その有機相を濃縮した。その粗製油状残渣をIPA/水(9:1)(5体積)に溶解させ、70℃まで温め、次いで−5℃まで冷却した。この結晶性アセテート002を濾過した。そのケーキを冷IPA/水(9:1)(0.5体積)で洗浄し、次いで乾燥させた(001から64.8%の収率;融点64℃〜67℃)。002の13C NMRおよびH NMRを、図3Aおよび図3Bに図示する。
【0230】
スキーム5:アセテートの第一級アルコールへの変換
【0231】
【化93】

アセテート002(1重量)をTHF(4.7体積)に懸濁させた。この懸濁物にMeOH(2.33体積)を添加した。この得られた懸濁物に、MeOH(2.33体積)中の炭酸カリウム(0.3重量)のスラリーを添加した。この混合物を10℃まで冷却し、次いで、水(8.0体積)およびメチルtert−ブチルエーテル(8体積)を添加した。攪拌(15分間)後、この反応物を沈降させ(15分間)、そしてその有機層を分離した。次いで、その有機相をブライン(4体積)で洗浄し、そして濃縮した。この粗製アルコールを精製せずに使用した。
【0232】
アルコール(1重量)を、水レベルが0.03%未満になるまで、無水THF(3×1.78重量)と共沸した。得られた油状物に、DMF(1.05重量)中のTBAI(0.17重量)の懸濁物を添加した。次いで、この混合物を−15℃まで冷却した。次いで、この反応容器に、THF(1.4重量)中20重量%のカリウムtert−ブトキシド(無水THF(0.94重量)中に希釈したもの)を入れた。この混合物を15分間攪拌した。次いで、4−メトキシベンジルクロリド(0.43重量)を添加した。完了したら、この反応をメタノール中0.5Mのナトリウムメトキシドの溶液(0.55重量)でクエンチした。次いで、この混合物を室温で攪拌した。この混合物を濃縮し、そして残った油状物を、水(5重量)とtert−ブチルメチルエーテル(3.7重量)との間で分配した。その有機層を飽和水性塩化ナトリウムで洗浄し、次いで、濃縮した。この粗製油状物を精製せずに使用した。
【0233】
シリルエーテル(1.0重量)をTHF(2.3重量)に溶解させた。フッ化テトラブチルアンモニウム(THF中1.0M)(1.9重量)を添加した。完了したら、10%水性重炭酸ナトリウム(2.6重量)を添加し、そしてこの混合物をtert−ブチルメチルエーテル(1.9重量)で2回抽出した。合わせた有機層を飽和水性塩化ナトリウム(2.6重量)で洗浄した。次いで、その有機層を濃縮して、粗製003を得た。
【0234】
【化94】

粗製003(理論質量に基づいて1.0重量)に、TBME(2.95重量)、DMAP(0.04重量)、トリエチルアミン(0.31重量)、および無水フタル酸(0.69重量)を添加した。完了したら、化合物003aを3%水性NaHCO(9.98重量)で抽出した。合わせた水性重炭酸ナトリウム抽出物を反応容器に戻し、次いで、ヘプタン(2.27重量)で2回洗浄した。次いで、水酸化ナトリウム(1.23重量)を添加した。変換して化合物003に戻ったら、その水層をTBME(2.73重量)で抽出した。次いで、このTBME有機層を濃縮して、化合物003の横橙色油状物を得た(002から66.2%の収率)。003の13C NMRおよびH NMRを、図4Aおよび図4Bに図示する。
【0235】
スキーム6:SO−ピリジン酸化
【0236】
【化95】

第一級アルコール003(1重量)を無水ジクロロメタン(5.0体積)に溶解させた。この溶液を0℃まで冷却し、次いでジイソプロピルエチルアミン(1.38体積)を添加した。別の反応容器中で、三酸化硫黄ピリジン錯体(1.29重量)を、無水ジメチルスルホキシド(5.00体積)に溶解させた。このSO・Py/DMSO溶液をアルコール/CHCl溶液に添加した。完了したら、この反応混合物を冷水(6.4体積)でクエンチした。その有機層を分離した。その水相を、ヘプタン(4.50体積)とジクロロメタン(0.30体積)との混合物で抽出した。合わせた有機相を、5重量%水性クエン酸(5.0体積)で、その水層のpH値が3以下になるまで洗浄した。その有機相を10重量%の水性重炭酸ナトリウム(2.50体積)で洗浄し、次いで飽和水性塩化ナトリウム(4.80体積)で洗浄した。その有機相を濃縮し、そしてヘプタン(2×4.0体積)との共沸により乾燥させて、アルデヒド004を得た。
【0237】
スキーム7:3−(S)−ヒドロキシ酪酸エチルからのアルコールおよびホスホニウム塩の合成
【0238】
【化96】

3−(S)−ヒドロキシ酪酸エチル(1重量)を、2.0Mのリチウムジイソプロピルアミド(10重量)の溶液に0℃で添加した。この混合物を30分間攪拌し、次いで、−20℃まで冷却した。ヨウ化メチル(1.8重量)のTHF(3.4重量)中の溶液を添加し、この間、反応温度を−15℃未満に維持した。完了したら、この反応を飽和水性塩化アンモニウム(8体積)でクエンチした。この混合物を酢酸エチル(6体積ずつ)で2回抽出した。合わせた酢酸エチル層を飽和水性塩化ナトリウム(6体積ずつ)で2回洗浄し、次いで、減圧下で濃縮した。この粗製混合物をヘプタンと共沸することにより乾燥させ、そして次の反応において直接使用した。
【0239】
この粗製物質(1重量)を無水DMF(3.7重量)に溶解させた。イミダゾール(0.77重量)およびtert−ブチルジメチルシリルクロリド(1.25重量)を添加した。完了したら、この反応を水(4重量)でクエンチし、そしてヘプタン(4重量ずつ)で2回抽出した。このヘプタン層を減圧下で濃縮し、そしてその溶媒をトルエンに交換し、そして次の反応において直接使用した。
【0240】
この粗製エステル(1.0重量)を無水トルエン(1.22重量)に溶解させ、そしてこの溶液を−10℃まで冷却した。トルエン(4.5重量)中の水素化ジイソブチルアルミニウムの溶液を、反応温度を0℃未満に維持しながら添加した。反応が完了したら、メタノール(0.4重量)を添加した。この反応混合物を、冷塩酸水溶液(6.0重量)に移した。この混合物をメチルtert−ブチルエーテル(2.3重量ずつ)で2回抽出した。合わせた有機層を減圧下で濃縮した。次いで、粗製生成物005(3−(S)−ヒドロキシ酪酸エチル出発物質から68.7%の収率)を減圧蒸留(100℃〜120℃、10torr)により精製した。
【0241】
アルコール005(1.0重量)をTHF(3重量)に溶解させ、そして0℃まで冷却した。トリエチルアミン(0.51重量)を添加し、続いてメタンスルホニルクロリド(0.55重量)を添加した。反応が完了したら、水(2.5重量)を添加し、続いてヘプタン(3.5重量)を添加した。相分離後、そのヘプタン層を飽和塩化ナトリウム(2.5重量)で洗浄し、次いで、減圧下で濃縮した。この粗製物質を次の反応において直接使用した。
【0242】
このメシレート(1.0重量)をアセトン(3.33重量)に溶解させた。ヨウ化ナトリウム(1.0重量)を添加し、そしてこの混合物を加熱還流した。完了したら、この反応物を周囲温度まで冷却し、そして水(2.8重量)を添加した。この混合物をヘプタン(4.0体積)で抽出した。このヘプタン層を飽和水性重炭酸ナトリウム(1重量)、飽和水性チオ硫酸ナトリウム(2.5重量)および飽和水性塩化ナトリウム(2.0重量)で順番に洗浄した。このヘプタン層を減圧下で濃縮し、そして次の反応において直接使用した。
【0243】
トリフェニルホスフィン(3.0重量)を100℃まで加熱した。ヨウ化物(1.0重量)を添加し、そしてこのヨウ化物が消費されるまで、この混合物を100℃で攪拌した。酢酸エチル(5重量)を添加し、そしてこの混合物を還流状態で20分間維持し、次いで0℃まで冷却した。得られた固体のホスホニウム塩006(005から72.4%の収率)を濾過し、さらなる酢酸エチル(7体積)ですすぎ、次いで窒素下で乾燥させた。006の13C NMRおよびH NMRを、図5Aおよび図5Bに図示する。
【0244】
スキーム9:Wittigカップリング
【0245】
【化97】

ホスホニウム塩006(2.40重量)を、無水THF(9.60体積)と共沸させることにより乾燥させた。無水THFを添加し(4.80体積)、そしてこの混合物を0℃まで冷却した。1.6Mのn−ブチルリチウム(2.42体積)を添加し、そしてこの溶液を20分間攪拌した。アルデヒド004(1重量)の無水THF(1体積)中の溶液をこの反応混合物に添加し、そしてこの反応物を20℃まで温めた。完了したら、セライト(1.3重量)を添加し、続いてクエン酸/D.I.水(0.13重量/0.15体積)の溶液を添加した。ヘプタン(3.90体積)を添加し、そしてこの混合物を濾過し、そしてヘプタン(2×5.23体積)で洗浄した。合わせた濾液を濃縮した。ヘプタン(3.78体積)を添加し、そしてこの溶液を濾過し、ヘプタン(2×3.78体積)ですすいだ。合わせた濾液を濃縮し、そしてその粗製物質を精製せずに使用した。007の13C NMRおよびH NMRを、図6Aおよび図6Bに図示する。
【0246】
スキーム10:Heck反応
【0247】
【化98】

トリフレート007a(1.1重量)、オレフィン007(1.0重量)、およびトリス(ジベンジリデンアセトン)−ジパラジウムを、反応容器中で合わせた。N−メチルピロリジノン(3.3体積)およびジシクロヘキシルメチルアミン(0.77重量)を添加した。この混合物を80℃で攪拌した。完了したら、この混合物を20℃まで冷却し、そしてセライト(1.5重量)および酢酸エチル(10体積)を添加した。この混合物を濾過し、そしてその固体を酢酸エチル(30体積)ですすいだ。その濾液を減圧下で濃縮した。その粗製濃縮物をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、これは72.5%の収率を与えた。
【0248】
スキーム11:大環状ラクトン化
【0249】
【化99】

Boc−アミド008をジメチルテトラヒドロピリミジノンに溶解させ、そして0℃まで冷却した。THF(2.5体積)中1.0Mのリチウムビス(トリメチルシリルアミド)の溶液を添加した。ヨードエタン(1.2重量)を添加し、次いでこの混合物を0℃まで温めた。完了したら、この混合物を0℃まで冷却し、そして飽和水性塩化アンモニウム(25体積)でクエンチした。この混合物を、ヘプタン(4.0体積)とメチルtert−ブチルエーテル(4.0体積)との混合物で3回抽出した。合わせた有機層を飽和水性塩化ナトリウム(25体積)で洗浄し、次いで減圧下で濃縮した。その粗製シリルエーテル濃縮物をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、これは94%の収率を与えた。
【0250】
イミダゾール塩酸塩(0.44重量)を、THF(8.5体積)中1.0Mのフッ化テトラブチルアンモニウムに溶解させた。シリルエーテル(1.0重量)のTHF(4.8体積)中の溶液を添加した。完了したら、この混合物を飽和水性塩化アンモニウム(15.0体積)でクエンチし、そしてメチルtert−ブチルエーテル(10体積ずつ)で3回抽出した。合わせた有機層を水(33体積)および飽和水性塩化ナトリウム(33体積)で洗浄し、次いで減圧下で濃縮した。この粗製アルコール濃縮物をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、これは51.6%の収率を与えた。
【0251】
このアルコール(1.0重量)をTHF(47体積)に溶解させ、そしてこの溶液を0℃まで冷却した。0.5Mのカリウムビス(トリメチルシリル)アミドの溶液(3.0体積)を3時間かけて添加した。完了したら、tert−ブチルジメチルシリルクロリド(1.0重量)のTHF(1.0体積)中の溶液を添加した。完了したら、飽和水性塩化アンモニウム(25体積)および水(4体積)を添加した。この混合物をtert−ブチルメチルエーテル(25体積)で抽出した。その水層を除去した後に、その有機層を飽和水性塩化ナトリウム(25体積)で洗浄した。合わせた有機層を減圧下で濃縮した。その粗製濃縮物をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、化合物009を得た(収率57.4%)。009の13C NMRおよびH NMRを、図7Aおよび図7Bに図示する。
【0252】
スキーム12:化合物010
【0253】
【化100】

大環状化合物009(1重量)のジクロロメタン(2.7体積)中の溶液を、ジクロロジシアノベンゾキノン(DDQ,0.35重量)および水(0.6体積)を含む反応容器に添加した。完了したら、この反応を飽和水性重炭酸ナトリウム(4.0体積)および飽和チオ硫酸ナトリウム(1体積)でクエンチした。相分離後、その水層を、酢酸エチル(1.3体積)とヘプタン(2.6体積)との混合物で抽出した。合わせた有機層を減圧下で濃縮した。その粗製濃縮物を酢酸エチル(1.6体積)に溶解させ、そしてこの溶液を、セミカルバジド塩酸塩(0.22重量)と酢酸ナトリウム(0.54重量)との水(0.96体積)中の溶液に添加した。完了したら、その固体を濾過し、そして酢酸エチル(3.34体積)ですすいだ。その水相をその濾液から除去し、そしてその有機層を減圧下で濃縮した。この濃縮物を、ヘプタン(2体積)とジクロロメタン(2.0体積)との混合物に溶解させ、ポリッシュ濾過(polish filter)し、そして減圧下で濃縮して、アリルアルコールを得た。
【0254】
このアリルアルコール(1.0重量)をジクロロメタン(4.0体積)に溶解させた。Dess−Martinペルヨージナン(0.68重量)を少しずつ添加した。完了したら、この反応を飽和水性重炭酸ナトリウム(7.0体積)でクエンチした。水性チオ硫酸ナトリウム(5.5体積)の10重量%溶液を添加した。その有機相を分離し、そしてその水層を、酢酸エチル(2.2体積)とヘプタン(2.2体積)との混合物で抽出した。合わせた有機相を減圧下で濃縮した。この濃縮物を酢酸エチル(4.5体積)に溶解させ、そして飽和水性塩化ナトリウム(1.5体積)で洗浄した。その有機相を減圧下で濃縮して、エノンを得た。
【0255】
このエノン(1.0重量)のジクロロメタン(6.5体積)中の溶液を、トリフルオロ酢酸(6.1体積)の水(0.3体積)中の0℃の溶液に添加した。完了したら、この反応を冷(0℃)15.0%水性水酸化アンモニウム(11.0体積)でクエンチした。有機層の分離後、その水層をジクロロメタン(2.3体積)で抽出した。合わせた有機層を飽和塩化ナトリウム(4.6体積)で洗浄した。その有機相を減圧下で濃縮した。t−ブチルメチルエーテル(2.2体積)を添加し、そしてこの混合物を55℃まで温めた。ヘプタン(2.2体積)をゆっくりと添加し、次いでこの溶液を0℃まで冷却した。その固体を濾過し、そしてヘプタン(1.4体積)とt−ブチルメチルエーテル(1.4体積)との0℃の混合物で洗浄した。固体010を乾燥させ、次いで2−プロパノール(5.0体積)に懸濁させ、そして65℃まで温めた。水(0.1体積)を添加し、続いてヘプタン(7.5体積)をゆっくりと添加した。次いで、この混合物を0℃まで冷却し、そして010の固体(009から80.7%の収率;融点157℃〜159℃)を濾過し、ヘプタン(2.4体積)と2−プロパノール(2.4体積)との混合物ですすぎ、次いで乾燥させた。010の13C NMRおよびH NMRを、図8Aおよび図8Bに図示する。
【0256】
(実施例2:化合物010の合成)
スキーム13:酸化後にWittigカップリング
【0257】
【化101】

化合物007を、化合物003から、実施例1において上に記載されたように合成した。
【0258】
スキーム14:結晶性中間体011
【0259】
【化102】

TBSエーテル007(1重量)をTHF(0.88重量)に溶解させた。THF中1.0Mのフッ化テトラブチルアンモニウムの溶液(2.1重量)を添加した。この溶液を50℃まで温めた。完了したら、この混合物を20℃まで冷却した。10重量%水性重炭酸ナトリウム(3体積)を添加し、そしてこの混合物をtert−ブチルメチルエーテル(6体積)で抽出した。その有機層を飽和水性塩化ナトリウム(3体積)で洗浄し、次いで濃縮した。この粗製物質を精製せずに使用した。
【0260】
4−(ジメチルアミノ)ピリジン(0.03重量)を無水THF(9体積)中のアルコール(1重量)の溶液に添加した。トリエチルアミン(0.3重量)を添加し、次いで、4−ニトロベンゾイルクロリド(0.5重量)を、THF(1.0体積)中の溶液として添加した。次いで、この反応混合物を35℃で攪拌した。完了したら、この反応物を20℃まで冷却した。5重量%水性重炭酸ナトリウム(10体積)を添加し、続いてt−ブチルメチルエーテル(15体積)を添加した。その有機相を20重量%水性塩化ナトリウム(10体積)で洗浄した。その有機相を濃縮し、そしてその溶媒をメタノールに交換した。メタノール(6体積)を添加し、そしてこの混合物を50℃まで温め、続いて50℃で30分間攪拌し、次いで0℃まで冷却した。その結晶性固体(収率56.1%;融点86℃〜89℃)を濾過し、冷メタノールで洗浄し、そして乾燥させた。化合物011の単結晶を単離した。その結晶構造を図1に示す。011の13C NMRおよびH NMRを、図9Aおよび図9Bに図示する。
【0261】
スキーム15:脱保護後にHeckカップリング
【0262】
【化103】

p−ニトロ安息香酸エステル011(1.0重量)を、THF(2.65重量)およびメタノール(0.4重量)に溶解させた。10重量%水性水酸化ナトリウム溶液(1.65重量)を添加し、そしてこの混合物を35℃まで温めた。完了したら、この反応物を20℃まで冷却した。水(3.0体積)を添加し、続いてメチルtert−ブチルエーテル(6体積)を添加した。分離後、その有機層を25重量%塩化ナトリウム(4体積)で洗浄した。その溶媒を減圧下で除去した。
【0263】
アリールトリフレート011a[1.26重量;007aをLiHDMSおよびDMPUで処理し、続いてヨウ化エチルでクエンチすることにより調製した;13C NMRおよびH NMRを図11Aおよび図11Bに示す;単結晶X線を図2に示す]とトリス(ジベンジリジンアセトン)ジパラジウム(0.12重量)とを、反応容器中で合わせた。オレフィン(1.0重量)のN−メチルピロリジノン(1.6重量)中の溶液を添加し、続いてN−メチルジシクロヘキシルアミン(0.53重量)を添加した。この混合物を80℃まで加熱した。完了したら、この混合物を20℃まで冷却した。セライト(0.5重量)のMTBE(3.70重量)中のスラリーを添加した。この混合物を濾過し、そしてその固体をMTBE(3.70重量ずつ)で3回すすいだ。合わせた濾液を、1N水性塩酸(5.1重量)、5重量%水性L−システイン(5重量)で2回、次いで25重量%水性塩化ナトリウム(5.33重量)で洗浄した。その溶媒を減圧下で濃縮して、化合物012を得た。012の13C NMRおよびH NMRを、図10Aおよび図10Bに図示する。
【0264】
スキーム16:大環状ラクトン化
【0265】
【化104】

アルコール012(1重量)をTHF(23体積)に溶解させ、そして20重量%カリウムtert−ブトキシドのTHF(0.88体積)中の冷溶液に添加し、THF(19.7体積)で希釈した。完了したら、tert−ブチルジメチルシリルクロリド(0.33重量)のTHF(0.28体積)中の溶液を添加した。次いで、飽和水性重炭酸ナトリウム(3.5体積)を添加し、そしてその溶媒を減圧下で除去した。その残渣をtert−ブチルメチルエーテル(7体積)で溶解させ、そしてその水相を分離した。その有機相を25重量%水性塩化ナトリウム(8.4体積)で洗浄した。その溶媒を減圧下でエバポレートして、大環状化合物009を得た。
【0266】
スキーム17:化合物010
【0267】
【化105】

化合物010を、化合物009から、実施例1において上に記載されたように合成した。
【0268】
(実施例3:009の脱保護)
スキーム18:脱保護
【0269】
【化106】

エノン009(1.0重量)の、ジクロロメタン(2.0体積)およびメタノール(2.0体積)中の溶液に、フッ化カリウム(0.16重量)を添加した。完了したら、水(4.0重量)およびメチルtert−ブチルエーテル(4.0体積)を添加した。その水層の分離後、その有機相を25重量%水性塩化ナトリウムで洗浄し、次いで減圧下で濃縮した。その粗製濃縮物を、2−プロパノール(2.0重量)で溶媒交換した。粗製生成物009aをメタノール(5体積)中にスラリー化し、そして65℃まで加熱した。この溶液を−20℃まで冷却した。この固体(収率67%;融点174℃〜175℃)を濾過し、そして−20℃まで予め冷却しておいたメタノール(5.0体積)で洗浄した[011からの全体の収率は29%であった]。009aの13C NMRおよびH NMRを、図12Aおよび図12Bに図示する。
【0270】
フェノール009a(1.0重量)の、ジクロロメタン(8.0重量)および水(0.2重量)中の溶液に、トリフルオロメタンスルホン酸(0.51重量)を添加した。この反応混合物を30℃まで温めた。完了したら、この反応を水性重炭酸ナトリウム(5.0重量)でクエンチし、そしてtert−ブチルメチルエーテル(6.0重量)を添加した。その水層を除去した。その有機相を、水(4.0重量)および25重量%水性塩化ナトリウム(4.0重量)で洗浄した。その有機相をポリッシュ濾過し、次いで減圧下で濃縮した。粗製生成物を2−プロパノール(2.0重量)で溶媒交換し、そして濃縮乾固させた。その粗製固体を2−プロパノール(10体積)でスラリー化した。この混合物を65℃まで加熱した。次いで、この溶液を40℃の温度まで冷却し、そして種結晶を添加した。次いで、この混合物を0℃まで冷却し、次いでその固体を濾過した。その固体を、−20℃まで予め冷却しておいた2−プロパノール(2.0体積)ですすいだ。次いで、そのケーキを乾燥させ、化合物010を72.6%の収率で得た(融点157℃〜159℃;MeOH中5mg/mLでの旋光度+47°)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(VII):
【化107】

の中間体であって、式(VII)において、
およびRは各々独立して、水素、C1〜6アルキル、C3〜6非共役アルケニルおよびC3〜6非共役アルキニルからなる群より選択され;
は、水素および塩基安定性酸素保護基からなる群より選択され;
およびRは各々独立して、水素、ハロゲン、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C1〜6ハロアルキル、C1〜6アルコキシ、フェニルおよびベンジルからなる群より選択され、ここで該フェニルまたはベンジルは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1〜3アルキル、およびNHから独立して選択される0個、1個、2個、もしくは3個の置換基で置換されているか;あるいはRおよびRは、これらが結合する炭素と一緒になって、5員〜6員の非共役炭素環式環を形成し;
11およびR12は、各々独立して、水素および塩基安定性酸素保護基からなる群より選択されるか;またはR11およびR12は一緒になって、構造(a):
【化108】

の5員ヘテロシクリルジイルを形成し;
構造(a)において、R19およびR20は各々独立して、水素、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキル、C1〜6アルコキシおよびフェニルからなる群より選択されるか、またはR19およびR20は一緒になって、構造(b):
【化109】

のフルオレニル部分を表し;そして
13は、
【化110】

であり;そして
14、R15、R16、R17、およびR18は各々独立して、H、NO、−NH、−COH、−CO(C1〜4アルキル)、−COCl、−COOH、−COO(C1〜4アルキル)、−NR、−SOH、ニトリル、−CFおよびハロゲンからなる群より選択される、
中間体。
【請求項2】
が第一の芳香族環を含有する酸素保護基である、請求項1に記載の中間体。
【請求項3】
式(VII):
【化111】

の中間体であって、式(VII)において、
およびRは各々独立して、水素、C1〜6アルキル、C3〜6非共役アルケニルおよびC3〜6非共役アルキニルからなる群より選択され;
は、第一の芳香族環を含有する酸素保護基であり;
およびRは各々独立して、水素、ハロゲン、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C1〜6ハロアルキル、C1〜6アルコキシ、フェニルおよびベンジルからなる群より選択され、ここで該フェニルまたはベンジルは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1〜3アルキル、およびNHから独立して選択される0個、1個、2個、もしくは3個の置換基で置換されているか;あるいはRおよびRは、これらが結合している炭素と一緒になって、5員〜6員の非共役炭素環式環を形成し;
11およびR12は、各々独立して、水素および塩基安定性酸素保護基からなる群より選択されるか;またはR11およびR12は一緒になって、構造(a):
【化112】

の5員ヘテロシクリルジイルを形成し;
構造(a)において、R19およびR20は各々独立して、水素、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキル、C1〜6アルコキシおよびフェニルからなる群より選択されるか、またはR19およびR20は一緒になって、構造(b):
【化113】

のフルオレニル部分を表し;そして
13は、第二の芳香族環を含有する酸素保護基である、
中間体。
【請求項4】
13が、
【化114】

であり;そして
14、R15、R16、R17、およびR18が各々独立して、H、NO、−NH、−COH、−CO(C1〜4アルキル)、−COCl、−COOH、−COO(C1〜4アルキル)、−NR、−SOH、ニトリル、−CFおよびハロゲンからなる群より選択される、
請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
が水素である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
が水素である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
が、ベンゾイルまたはベンジルから選択され、ここで該ベンゾイルまたはベンジルの各々は、0個、1個、2個もしくは3個の置換基で置換されており、該置換基は独立して、−OH、−O(C1〜4アルキル)、−NH、−NH(C1〜4アルキル)、−N(C1〜4アルキル)、アミド、−OCO(C1〜4アルキル)および(C1〜4アルキル)から選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
が4−メトキシベンジルである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
が水素およびC1〜6アルキルからなる群より選択される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
が水素およびC1〜6アルキルからなる群より選択される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
が水素またはメチルである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
が水素またはメチルである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
式(VII)の化合物が結晶性である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
14、R15、R16、R17、およびR18のうちの1つは、NO、−NH、−COH、−CO(C1〜4アルキル)、−COCl、−COOH、−COO(C1〜4アルキル)、−NR、−SOH、ニトリル、−CFおよびハロゲンからなる群より選択され、そしてR14、R15、R16、R17、およびR18のうちの他の4つは水素である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
14、R15、R16、R17、およびR18のうちの少なくとも1つが、NO、−NH、−COH、−CO(C1〜4アルキル)、−COCl、−COOH、−COO(C1〜4アルキル)、−NR、−SOH、ニトリル、−CFおよびハロゲンからなる群より選択され、そしてR14、R15、R16、R17、およびR18のうちの他のものが水素である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
16がNOであり、そしてR14、R15、R17、およびR18の各々が独立して水素である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項17】
前記式(VII)の化合物が(VIIa):
【化115】

の化合物である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項18】
前記式(VII)の化合物が(VIIb):
【化116】

の化合物である、請求項1〜17のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項19】
式(VIIc):
【化117】

の化合物であって、式(VIIc)において、
およびRは各々独立して、水素およびC1〜6アルキルからなる群より選択され;
は、ベンゾイルまたはベンジルから選択され、ここで該ベンゾイルまたはベンジルの各々は、0個、1個、2個もしくは3個の置換基で置換されており、該置換基は独立して、−OH、−O(C1〜4アルキル)、−NH、−NH(C1〜4アルキル)、−N(C1〜4アルキル)、アミド、−OCO(C1〜4アルキル)および(C1〜4アルキル)から選択され;
およびRは各々独立して、水素、ハロゲン、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキル、およびC1〜6アルコキシからなる群より選択され;
11およびR12は、各々独立して、水素および塩基安定性酸素保護基からなる群より選択されるか;またはR11およびR12は一緒になって、構造(a):
【化118】

の5員ヘテロシクリルジイルを形成し;
構造(a)において、R19およびR20は各々独立して、水素、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキルおよびC1〜6アルコキシからなる群より選択され;そして
14、R15、R16、R17、およびR18のうちの少なくとも1つは、NO、−NH、−COH、−CO(C1〜4アルキル)、−COCl、−COOH、−COO(C1〜4アルキル)、−NR、−SOH、ニトリル、−CFおよびハロゲンからなる群より選択され、そしてR14、R15、R16、R17、およびR18のうちの残りのものは、各々独立してHである、
化合物。
【請求項20】
およびRが各々独立して、水素である、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
が4−メトキシベンジルである、請求項19〜20のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項22】
およびRが各々独立して、水素またはメチルである、請求項19〜21のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項23】
16がNOであり、そしてR14、R15、R17、およびR18の各々が独立して水素である、請求項19〜22のいずれか1項に記載の化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2011−506324(P2011−506324A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536950(P2010−536950)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/013512
【国際公開番号】WO2009/075823
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(506137147)エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社 (215)
【Fターム(参考)】