説明

ゼリー惣菜

【課題】 口に入れるとゼリー化した調味液が速やかに溶けて具材から分離し、惣菜を構成している具材本来の食感、食味及び風味と、調味液のうま味を同時に味わうことのできるゼリー惣菜の提供。
【解決手段】 ゼリー化した調味液中に惣菜の具材が封入されているゼリー惣菜であって、JIS P3801で規定する「2種」に相当する濾紙の切断片(長さ×幅=50mm×20mm)の長さ方向の先端15mmを、10℃の温度に保ったゼリー化した調味液中に垂直に差し込み、2分間経過した時点でのゼリー化した調味液表面からの吸液高さを測定して吸水距離としたときに、当該吸水距離が15〜25mmであるゼリー惣菜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、惣菜の具材がゼリー化した調味液中に封入されているゼリー惣菜に関する。より詳細には、本発明は、口に入れるとゼリー化した調味液が速やかに溶けて具材から分離し、惣菜を構成している具材本来の食感、食味および風味と、調味液のうま味を同時に味わうことのできる従来にないゼリー惣菜、および当該ゼリー惣菜を破損や崩れなどを生ずることなく、その形状を維持したまま容器から簡単に且つ綺麗に取り出すことのできる所定の容器に充填し密封したゼリー惣菜に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の多様化、口当たりや摂取性の良さなどの点から、各種ゼリー食品が従来からも多量に製造、販売されている。
ゼリー食品の代表例としては、各種のフルーツゼリー、水羊羹、杏仁豆腐、プリンなどのゼリー菓子を挙げることができる。
【0003】
また、惣菜をゼリー化した液中に封入したゼリー惣菜も従来から広く知られており、その代表例としては、魚介類や肉類を、ゼラチンを含む魚介類や肉類の煮汁ごと固めた「煮こごり」を挙げることができる。
ゼリー惣菜としては、煮こごり以外にも、和惣菜を透明なゼリー中に埋没させて密封容器に収容したもの(特許文献1)、漬け物に薬味、添えづま、添え花のいずれか1種以上を添えてゼリーの内部に封じ込めた漬け物ゼリー加工食品(特許文献2)、シチュー風味のゼリー(特許文献3)などが知られている。
また、おでんをゼリー中に封入したおでんゼリー、野菜をゼリー中に封入した野菜ゼリーなどの製品も既に販売されている。
【0004】
上記した従来のゼリー食品は、ゼリー特有の口当たりの良さ、喉通りの良さをはじめとして、ゼリー化されていない食品にはない特有の食感、食味などを有しており、それらの点が消費者に好まれる要因の1つとなっている。
その一方で、上記した従来のゼリー食品は、口に入れてからもゼリー部分がゼリー状(固形状)を維持しているため、具材をゼリー中に封入したゼリー惣菜などでは、具材自体の食感、食味、風味を味わう前に、具材も固形状のゼリー部分と一緒に喉を通ってしまい、具材本来の食感、食味、風味などを十分に味わいにくいものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3154206号公報
【特許文献2】特開2009−77711号公報
【特許文献3】特開2001−45990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ゼリー化した調味液中に惣菜の具材が封入されているゼリー惣菜であって、口に入れたときに、ゼリー化した調味液が速やかに溶けて具材から分離し、具材本来の食感、食味、風味と、調味液のうま味を同時に味わうことのできる従来にないゼリー惣菜を提供することである。
さらに、本発明の目的は、ゼリー惣菜の破損、崩れなどを生ずることなく、元の形状を維持したままゼリー惣菜を容器から簡単に且つ綺麗に取り出すことのできるゼリー惣菜に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記の目的を達成すべく検討を重ねてきた。その結果、ゼリー惣菜において、具材を封入しているゼリー化した調味液の濾紙による吸水特性を特定の範囲にすると、口に入れたときにゼリー化した調味液が速やかに溶けて具材から分離し、具材本来の食感、食味、風味と、調味液のうま味を同時に味わうことのできる従来にないゼリー惣菜が得られることを見出した。
【0008】
さらに、本発明者らは、その際にゼリー惣菜におけるゼリー化した調味液の水分含量、破断強度、濾紙による吸水量を特定の範囲にすると、ゼリー惣菜を口に入れたときに、ゼリー化した調味液が速やかに溶けること、しかもゼリー惣菜を容器から取り出して皿などに盛り付ける際にゼリー惣菜の形崩れや破損が生じないことを見出した。
また、本発明者らは、上記したゼリー惣菜を、プラスチック容器に充填して密封した後に80〜100℃の熱水中で加熱処理したものは、0〜10℃で1カ月間保存した後でも、微生物の繁殖がなく安全性に優れ、しかも良好な食感、食味および風味を維持していることを見出した。
そして、本発明者らは、上記したゼリー惣菜を、楕円形の開口部を有する特定のプラスチック容器に充填すると、ゼリー惣菜の崩れや破損などを生ずることなく、形状を良好に維持したまま、ゼリー惣菜をプラスチック容器から簡単に且つ円滑に取り出せることを見出し、それらの知見に基づいて本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1) ゼリー化した調味液中に惣菜の具材が封入されているゼリー惣菜であって、具材を封入してなるゼリー化した調味液の、以下の方法で測定した吸水距離が15〜25mmであることを特徴とするゼリー惣菜である。
[ゼリー化した調味液の吸水距離の測定方法]
JIS P3801で規定する「2種」に相当する濾紙を切断して得た長さ×幅=50mm×20mmの濾紙片の長さ方向の先端15mmを、10℃の温度に保ったゼリー化した調味液中に垂直に差し込み、2分間経過した時点でのゼリー化した調味液表面からの吸液高さを測定して、吸水距離とする。
【0010】
そして、本発明は、
(2) 具材を封入してなるゼリー化した調味液の水分含量が90質量%以上である前記した(1)のゼリー惣菜;
(3) 具材を封入してなるゼリー化した調味液のゲル破断強度が0.5〜3N/cm2である前記した(1)または(2)のゼリー惣菜;
(4) 具材を封入してなるゼリー化調味液の、以下の方法で測定した吸水量が0.13〜0.20gである前記した(1)〜(3)のいずれかのゼリー惣菜である。
[ゼリー化した調味液の吸水量の測定方法]
JIS P3801で規定する「2種」に相当する濾紙を切断して得た長さ×幅=50mm×20mmの濾紙片の長さ方向の先端15mmを、10℃の温度に保ったゼリー化した調味液中に垂直に差し込み、2分間経過した時点で濾紙片が吸った調味液の重さを測定して吸水量とする。
である。
【0011】
さらに、本発明は、
(5) プラスチック容器に充填し密封されている前記した(1)〜(4)のいずれかのゼリー惣菜;
(6) プラスチック容器に充填して密封した後に80〜100℃の熱水中で加熱処理されている前記した(5)のゼリー惣菜;
(7) プラスチック容器が、楕円形の開口部を有し、当該楕円形の開口部の全周にわたってフランジを有し、当該楕円形の開口部の長径の一方の端部に相当する箇所のフランジ部分に外方に突出する耳部を有し、且つ当該楕円形の開口部における長径の一方の端部に相当する箇所のフランジ部分に補強用のリブを有するかまたは長径の両方の端部に相当する箇所のフランジ部分に補強用のリブを有するプラスチック容器である前記した(5)または(6)のゼリー惣菜;
(8) プラスチック容器が、楕円形の開口部における、耳部が設けられていない長径のもう一方の端部側に位置するフランジ部分に補強用のリブを有するかまたは補強用のリブを有していないプラスチック容器である前記(5)〜(7)のいずれかのゼリー惣菜;
(9) プラスチック容器の楕円形の開口部の短径:長径の比が、1:1.3〜1:2.3である前記した(5)〜(8)のいずれかのゼリー惣菜;
(10) プラスチック容器の深さ:楕円形の開口部の短径の比が、1:0.7〜1:2.5である前記した(5)〜(9)のいずれかのゼリー惣菜;および、
(11) プラスチック容器の楕円形の開口部が、プラスチックフィルムで密封されている前記した(5)〜(10)のいずれかのゼリー惣菜;
である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のゼリー惣菜は、口に入れたときにゼリー化した調味液が速やかに溶けて液化して具材から分離し、具材本来の食感、食味、風味と、調味液のうま味を同時に味わうことができる。
本発明のゼリー惣菜は、ゼリー惣菜を容器から取り出して皿などに盛り付ける際に、形崩れや破損が生じず、良好な形状を維持することができる。
本発明で規定する楕円形の開口部を有する特定のプラスチック容器に充填し密封した本発明のゼリー惣菜は、ゼリー惣菜の形崩れや破損などを生ずることなく、形状を良好に維持したまま、プラスチック容器から簡単に且つ円滑に取り出すことができる。
そのため、消費者は、本発明のゼリー惣菜を購入し、家庭などで容器から皿などに取り出すだけで、食感、食味、風味に優れる惣菜を簡単に食することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明のゼリー惣菜を充填するのに好ましく用いられるプラスチック容器の一例を示す図である。
【図2】図2は、ゼリー化した調味液の吸水距離および吸水量の測定に用いる濾紙挟持片を示す図である。
【図3】図3は、ゼリー化した調味液の吸水距離および吸水量の測定方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明のゼリー惣菜は、主食とともに食べられることの多い、調理ずみの惣菜(副食、おかず)をゼリー化した調味液中に封入したものである。
本発明において、「ゼリー化した調味液」とは、惣菜の種類に応じてその惣菜に適するように味付された液(調味液)が、ゲル化した状態になっているものを意味する。
【0015】
本発明のゼリー惣菜では、『JIS P3801で規定する「2種」に相当する濾紙を切断して得た長さ×幅=50mm×20mmの濾紙片の長さ方向の先端15mmを、10℃の温度に保ったゼリー化した調味液中に垂直に差し込み、2分間経過した時点でのゼリー化した調味液表面からの吸液高さを測定して「吸水距離」とする方法』を採用してゼリー化した調味液の「吸水距離」を測定したときに、具材を封入してなるゼリー化した調味液の当該「吸水距離」が、15〜25mmであることが必要であり、16〜22mmであることが好ましく、16〜20mmであることがより好ましい。
なお、本明細書でいう当該「吸水距離」の詳細な測定方法については、以下の実施例に記載するとおりである。
【0016】
ゼリー化した調味液の吸水距離が前記範囲であることによって、ゼリー惣菜を容器から取り出して皿などに盛り付ける際に、形崩れや破損が生じず、良好な形状を維持することができ、しかもゼリー惣菜を口に入れたときにゼリー化した調味液が速やかに溶けて具材から分離し、具材本来の食感、食味、風味と、調味液のうま味を同時に味わうことができる。
具材を封入してなるゼリー化した調味液の吸水距離が小さすぎると、ゼリー惣菜を口に入れたときに、ゼリー化した調味液の食感が硬すぎ、しかもゼリー化した調味液が口の中で速やかに溶けずに喉を通るときにもゼリー状のままであることが多いため、具材本来の食感、食味、風味と調味液のうま味を同時に味わうことが困難になる。
一方、具材を封入してなるゼリー化した調味液の吸水距離が大きすぎると、ゼリー惣菜の保形性が低下し、ゼリー惣菜を容器から取り出して皿などに盛り付ける際に、形崩れや破損が生じず、良好な形状を維持することが困難になる。
【0017】
また、本発明のゼリー惣菜では、具材を封入してなるゼリー化した調味液の水分含量が90質量%以上であることが好ましく、90〜98質量%であることがより好ましく、92〜96質量%であることが更に好ましい。
なお、本明細書におけるゼリー化した調味液の水分含量の測定方法は、以下の実施例に記載するとおりである。
ゼリー惣菜において、ゼリー化した調味液の水分含量が前記よりも少ないと、ゼリー化した調味液の味が濃くなり過ぎ、しかもゼリー惣菜を食したときにゼリー化した調味液が口の中で速やかに溶けず喉を通るときにもゼリー状になっていることが多いため、具材本来の食感、食味、風味と調味液のうま味を同時に味わいにくくなる。
【0018】
また、本発明のゼリー惣菜では、具材を封入してなるゼリー化した調味液のゲル破断強度が0.5〜3N/cm2であることが好ましく、0.6〜2N/cm2であることがより好ましく、0.7〜1.9N/cm2であることが更に好ましい。
なお、本明細書におけるゼリー化した調味液のゲル破断強度の測定方法は、以下の実施例に記載するとおりである。
ゼリー惣菜において、ゼリー化した調味液のゲル破断強度が前記よりも小さいと、ゼリー惣菜の保形性が低下して、ゼリー惣菜を容器から取り出して皿などに盛り付ける際に、形崩れや破損が生じ易くなる。
一方、ゼリー惣菜において、ゼリー化した調味液のゲル破断強度が前記よりも大きいと、ゼリー惣菜が硬くなって食感が低下し、しかも食したときにゼリー化した調味液が口の中で速やかに溶けずに喉を通るときにもゼリー状になっていることが多いため、具材本来の食感、食味、風味と調味液のうま味を同時に味わいにくくなる。
【0019】
本発明のゼリー惣菜では、『JIS P3801で規定する「2種」に相当する濾紙を切断して得た長さ×幅=50mm×20mmの濾紙片の長さ方向の先端15mmを、25℃の温度に保ったゼリー化した調味液中に垂直に差し込み、2分間経過した時点で濾紙片が吸った調味液の重さを測定して「吸水量」とする方法』を採用してゼリー化した調味液の「吸水量」を測定したときに、具材を封入してなるゼリー化した調味液の当該吸水量が、0.13〜0.20gであることが好ましく、0.13〜0.18gであることがより好ましく、0.13〜0.17gであることが更に好ましい。
なお、本明細書でいう当該「吸水量」の詳細な測定方法については、以下の実施例に記載するとおりである。
【0020】
ゼリー化した調味液の吸水量が前記範囲であることによって、ゼリー惣菜を容器から取り出して皿などに盛り付ける際に、形崩れや破損が生じず、良好な形状を維持することができ、しかもゼリー惣菜を口に入れたときにゼリー化した調味液が速やかに溶けて液化して具材から分離し、具材本来の食感、食味、風味と、調味液のうま味を同時に味わうことができる。
具材を封入してなるゼリー化した調味液の吸水量が小さすぎると、ゼリー惣菜が硬い食感となり、しかも食したときに口の中でゼリー化した調味液の速やかに溶けずに喉を通るときにもゼリー状のままであることが多く、具材本来の食感、食味、風味と調味液のうま味を同時に味わうことが困難になる。
一方、具材を封入してなるゼリー化した調味液の吸水量が大きすぎると、ゼリー惣菜の保形性が低下し、ゼリー惣菜を容器から取り出して皿などに盛り付ける際に、形崩れや破損が生じず、良好な形状を維持することが困難になる。
【0021】
本発明のゼリー惣菜は、具材を封入してなるゼリー化した調味液が、本発明で規定する前記した吸水距離を有するか、または本発明で規定する前記した吸水距離と共に前記した好ましい水分含量、ゲル破断強度および/または吸水量を有するものである限りは、具材の種類、ゼリー化した調味液の種類は特に限定されない。
本発明のゼリー惣菜では、ゼリー化した調味液中に封入する具材の種類は、惣菜の種類に応じて、1種類の食材からなっていてもよいし、または2種類以上の食材からなっていてもよい。
本発明のゼリー惣菜における惣菜としては、調味液と一緒に美味しく食することのできる惣菜であればいずれでもよく、例えば、和風惣菜、洋風惣菜、中華風惣菜、エスニック風惣菜などのいずれであってもよい。
また、ゼリー化した調味液に封入する惣菜(惣菜の具材)は、例えば、煮物、蒸し物、炒め物、焼き物、和え物、揚げ物などのいずれであってもよい。
そのうちでも、本発明のゼリー惣菜は、和風、中華風、洋風、エスニック風の煮物または蒸し物からなる具材をゼリー化した調味液中に封入したものであることが、風味の点から好ましい。
限定されるものではないが、本発明のゼリー惣菜の例としては、ひじき煮をゼリー化した調味液に封入したもの、筍土佐煮をゼリー化した調味液に封入したもの、蕗煮をゼリー化した調味液に封入したもの、筍煮と蕗煮をゼリー化した調味液に封入したもので、おでんをゼリー化した調味液に封入したもの、カボチャ煮をゼリー化した調味液に封入したもの、高野豆腐煮をゼリー化した調味液に封入したものなどを挙げることができる。
【0022】
本発明のゼリー惣菜の原料となる食材の種類は特に限定されず、ゼリー化した調味液中に封入する惣菜の種類に応じて選択することができる。本発明のゼリー惣菜に使用しうる食材としては、例えば、根菜類(ニンジン、大根、里芋、ジャガイモ、サツマイモ、里芋、長芋、ヤマイモ、レンコン、ゴボウ、カブなど)、果菜類(カボチャ、トマト、トウガン、ピーマン、ブロッコリー、カリフラワー、キュウリ、ナス、ニガウリ、シロウリなど)、葉菜類(フキ、白菜、小松菜、ホウレン草、キャベツ、水菜、カラシナ、シュンギク、セリ、セロリ、チンゲンサイ、ノザワナ、ネギ、芽キャベツなど)、茎菜類(アスパラガス、ウド、ショウガ、タケノコ、タマネギ、ニンニク、フキ、ユリ根、ラッキョウ、ワサビなど)、キノコ類(松茸、シイタケ、エノキ、シメジ、ナメコ、ヒラタケ、キクラゲ、マイタケ、マッシュルームなど)、豆類(大豆、小豆、エンドウ、インゲン、ソラマメなど)などの野菜類、海草類(ヒジキ、ワカメ、コンブ、モズク、ノリなど)、ギンナン、魚介類(サケ、ニシン、タイ、タラ、マグロ、カツオ、アジ、スズキ、ヒラメ、シラス、イカ、タコ、カニ、エビ、ハマグリ、アサリ、シジミ、サンマなど)、魚卵類(カズノコ、タラコ、イクラ、カラスミなど)、肉類(ブタ肉、牛肉、鳥肉、マトンなど)、加工食品(コンニャク、油揚げ、豆腐、高野豆腐、カマボコ類、おでん、ハム、ソーセージ、チーズ、角天など)などを挙げることができ、本発明のゼリー惣菜では、前記した食材の1種または2種以上を用いることができる。
【0023】
また、本発明のゼリー惣菜におけるゼリー化した調味液は、ゼリー化した調味液中に封入する具材(惣菜)の種類に応じて、それに適した食味、風味を有する調味液をゼリー化する。例えば、和風惣菜の場合は具材とゼリー化した調味液の両方を和風にし、中華風惣菜の場合は具材とゼリー化した調味液の両方を中華風にし、洋風惣菜の場合は具材とゼリー化した調味液の両方を洋風にしたものを挙げることができる。また、具材とゼリー化した調味液との間にミスマッチが生じない限りは、場合によっては、例えば、和風惣菜の具材を中華風や洋風のゼリー化した調味液中に封入してもよいし、中華風惣菜の具材を和風や洋風のゼリー化した調味液中に封入してもよいし、洋風惣菜の具材を和風または中華風のゼリー化した調味液中に封入してもよい。
【0024】
本発明のゼリー惣菜は、製造の容易性、取り扱い性、衛生性、保存性などの点から、容器に充填し密封されていることが好ましい。
容器としては、白無地や絵柄の付いた容器でもよいが、外側からゼリー惣菜の内容や状態が見える透明なプラスチック容器を用いることが好ましい。
プラスチック容器などの容器には、複数食分を充填して密封してもよいが、1食分ずつ充填して密封することが好ましい。
【0025】
本発明のゼリー惣菜をプラスチック容器に充填し密封してプラスチック容器入りのゼリー惣菜とするに当っては、ゼリー状食品において従来から用いられているプラスチック容器のいずれを用いてもよいが、本発明者らが新たに開発した、「開口部の全周にわたってフランジを有する楕円形の開口部を有し、楕円形の開口部における長径の一方の端部側に位置するフランジ部分に補強用のリブが設けられ且つ当該補強用のリブを介して外方に突出する耳部が設けられているプラスチック容器」(以下これを「プラスチック容器(α)」ということがある)に充填して密封することが好ましい。
【0026】
プラスチック容器(α)は、楕円形の開口部を有すると共に、前記した特定の形状を有することにより、楕円形の開口部における長径の両端に相当する部分およびその近傍部分での押圧強度(耐押圧性)が、楕円形の開口部における短径に相当する部分およびその近傍部分での押圧強度(耐押圧性)よりも高いため、プラスチック容器(α)に充填されているゼリー惣菜を容器から取り出して皿などに載せる際に、楕円形の開口部における長径の両端側に位置するフランジ部分の下の部分(容器壁)を手で内側に押圧すると、小さな押圧力で、楕円形の開口部における短径の両端側およびその近傍の容器壁が容易に外方に拡張して、プラスチック容器(α)に充填されているゼリー惣菜が短径の両端側およびその近傍で容器の内壁から離れ、その部分からプラスチック容器(α)の内壁とゼリー惣菜の外面との間に空気が流れ込んで、プラスチック容器(α)内のゼリー惣菜を、破損や形崩れなどを生ずることなく、充填されていたときのままの形状を保ちながら、プラスチック容器(α)から簡単に且つ円滑に取り出すことができる。
【0027】
限定されるものではないが、本発明で好ましく用いられるプラスチック容器(α)について図1を参照して説明する。
図1において、(a)は、本発明で好ましく用いられるプラスチック容器(α)の一例の外観を模式的に示した図である。
また、図1の(b)は、図1の(a)のプラスチック容器(α)を上方から見た平面図であり、図1の(c)は図1の(a)のプラスチック容器(α)を楕円形の開口部1の長径に相当する部分で縦方向に切断した縦断面図であり、図1の(d)は図1の(a)のプラスチック容器(α)を楕円形の開口部1の短径に相当する部分で縦方向に切断した縦断面図である。
【0028】
プラスチック容器(α)は、図1の(a)および(b)にみるように、楕円形の開口部1を有し、当該楕円形の開口部の全周にわたってフランジ2を有する。フランジ2の幅は、プラスチック容器(α)の開口部の大きさ、深さ、内容量などに応じて決めることができ、一般的には2〜10mm程度、特に3〜8mm程度であることが、フランジ2への蓋体をなすプラスチックフィルムのシール性、プラスチックフィルムでシールした容器の密封性、プラスチック容器(α)の強度、フィルムの開け易さなどの点から好ましい。
さらに、プラスチック容器(α)は、楕円形の開口部1の長径の一方の端部側に位置するフランジ部分に補強用のリブ3を有し、当該補強用のリブ3を介して外方に突出する耳部4を有する。図1のプラスチック容器(α)では、楕円形の開口部1における長径の一方の端部側に位置するフランジ部分にのみ補強用のリブ3を有しているが、長径のもう一方の端部側に位置するフランジ部分にも補強用のリブ3を有していてもよい。
【0029】
プラスチック容器(α)は、楕円形の開口部1の周囲にフランジ2を有していることによって、楕円形の開口部1の補強がなされると共に、プラスチック容器(α)に蓋体としてプラスチックフィルム(図示せず)を被せて開口部1をプラスチックフィルムで覆って、プラスチックフィルムをフランジ2部分にシールすることにより、ゼリー惣菜を充填したプラスチック容器(α)を内容物の漏れなどを生ずることなく、プラスチックフィルムで密封することができる。その際に、長径の一方の端部側または両方の端部側に位置するフランジ部分以外のフランジ部分では、折り返しを設けずに、図1の(a)、(c)、(d)にみるように平坦なフランジとしておくと、楕円形の開口部における長径の両端側に位置するフランジ部分の下の部分(容器壁)を手で内側に押圧したときに、小さな押圧力で、楕円形の開口部における短径の両端側およびその近傍の容器壁が容易に外方に拡張変形し易くすることができる。
【0030】
また、楕円形の開口部1の長径の一方の端部側または両方の端部側に位置するフランジ部分に設ける補強用のリブ3は、図1の(c)に示すようにフランジの端部をフランジ面に対して直角またはほぼ直角になるよう折り曲げて形成してもよいし、または図示していないがフランジの端部を肉厚にしてリブとしてもよい。
また、プラスチック容器(α)の楕円形の開口部1の長径の一方の端部側に位置するフランジ部分に、補強用のリブ3を介して外方に突出させて設けた耳部4では、楕円形の開口部1の全周に設けたフランジ2部分よりも、プラスチックフィルム(蓋体)のシール強度が小さくなるようにしておくことによって、楕円形の開口部1にシールして取り付けられているプラスチックフィルムからなる蓋体を当該耳部4でプラスチック容器(α)から剥がしてプラスチック容器(α)内のゼリー惣菜を取り出す際に、プラスチックフィルムからなる蓋体の楕円形の開口部1からの引きはがしが容易になる。
耳部4でのプラスチックフィルムのシール強度を小さくする方法としては、例えば図1に例示するように、耳部4の構造を、プラスチックフィルムのシールが部分的にだけ行なわれる溝や凹凸などを有する構造としておくことなどが挙げられる。
耳部4の幅および突出長さは、プラスチック容器(α)の楕円形の開口部にシールにより取り付けられているプラスチックフィルムからなる蓋体を耳部4でつまんで引きはがし易いサイズであればよい。
【0031】
本発明で好ましく用いられるプラスチック容器(α)では、楕円形の開口部1における短径の長さ(L1)と長径の長さ(L2)の比、L1:L2が1:1.3〜1:2.3であることが好ましく、1:1.4〜1:1.7であることがより好ましい。L1:L2を前記範囲にすることによって、プラスチック容器(α)の楕円形の開口部1における長径の両端部分を指で内側に押圧することによって、小さな押圧力で、ゼリー惣菜をプラスチック容器(α)から破損などを生ずることなく、簡単に且つきれいに取り出すことができる。
【0032】
また、本発明で好ましく用いられるプラスチック容器(α)では、プラスチック容器(α)の深さHと楕円形の開口部1における短径の長さL1の比、H:L1が1:0.7〜1:2.5であることが好ましく、1:1.4〜1:2.2であることがより好ましい。
H:L1を前記範囲にすることによって、プラスチック容器(α)が深くなり過ぎず、プラスチック容器(α)の楕円形の開口部1における長径の両端部分を指で内側に押圧することによって、小さな押圧力で、ゼリー惣菜をプラスチック容器(α)から破損などを生ずることなく、簡単に且つきれいに取り出すことができる。
【0033】
プラスチック容器(α)の容器壁の厚さは100〜800μm、更には120〜550μmであることが、プラスチック容器の製造の容易性、ゼリー惣菜を充填し密封した容器入りゼリー惣菜の取り扱い性、容器入りゼリー惣菜を高温で加熱殺菌する際や保存時、流通時などにおける変形防止、食する際のプラスチック容器(α)からのゼリー惣菜の取り出しの容易性、耐衝撃性などの点から好ましい。
また、プラスチック容器(α)におけるフランジの厚さは100〜800μm、特に300〜550μm、フランジの幅(外方への突出幅)は2〜10mm、特に3〜8mmであることが、プラスチック容器(α)の強度、フランジ部分への蓋体をなすプラスチックフィルムによるシール性、容器の密封性などの点から好ましい。
【0034】
本発明で好ましく用いられるプラスチック容器(α)は、プラスチック容器(α)に充填してあるゼリー惣菜が外部から見られるように、透明で且つ可撓性のあるプラスチックから形成されていることが好ましく、そのようなプラスチックとしてはポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどを挙げることができ、そのうちでもポリプロピレンから形成されていることが好ましい。
【0035】
本発明で好ましく用いられるプラスチック容器(α)は、上記した構造を有する本発明のプラスチック容器(α)に相当する型キャビティを有する金型などを使用して、プラスチックシートまたはプラスチックフィルムをプレス成形、真空成形、プレス・真空成形、インジェクション成形などの成形加工を行なって、一体成形することによって製造することができる。
【0036】
本発明のゼリー惣菜の製造方法は特に限定されず、惣菜の具材を封入してなるゼリー化した調味液の吸水距離が、本発明で規定する上記した数値範囲になる製造方法のいずれもが採用できる。特に、本発明のゼリー惣菜の製造に当っては、具材を封入してなるゼリー化した調味液の吸水距離が本願発明で規定する数値範囲で、さらにゼリー化した調味液の水分含量が90質量%以上、ゲル破断強度が0.5〜3N/cm2および/または吸水量が0.13〜0.20gである製造方法を採用することが好ましい。
【0037】
本発明のゼリー惣菜の製造に当っては、調味液をゼリー化(ゲル化)するためのゲル化剤としては、ゼリー惣菜におけるゼリー化した調味液の吸水距離を本発明で規定する数値範囲内にすることのできるゲル化剤であればいずれも使用でき、具体例としては、カラギーナン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、グアガム、カンテン、ペクチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)などの増粘性多糖類、コラーゲン、ゼラチン、寒天などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
そのうちでも、本発明のゼリー惣菜の製造に当っては、ゲル化剤として、カラギーナンおよびローカストビーンガムを併用することが好ましく、特に、カラギーナンおよびローカストビーンガムを、カラギーナン:ローカストビーンガム=3:1〜8:1の質量比で用いることがより好ましく、4:1〜7:1の質量比で用いることが更に好ましく、5:1〜6:1の質量比で用いることが一層好ましい。
ゲル化剤として、カラギーナンとローカストンビーンガムを前記して質量比で併用して本発明のゼリー惣菜を製造することによって、具材を封入してなるゼリー化した調味液の吸水距離が本発明で規定する上記した数値範囲にある本発明のゼリー惣菜を円滑に製造することができる。
【0038】
本発明のゼリー惣菜を製造する際のゲル化剤の添加量は、ゲル化剤の種類、惣菜の種類、調味液の内容、具材量などによって異なり得るが、一般的には、具材を封入するのに用いる調味液の質量に対して、0.2〜0.9質量%であることが好ましく、0.25〜0.85質量%であることがより好ましく、0.3〜0.8質量%であることが更に好ましく、0.4〜0.8質量%であることが一層好ましい。
ゲル化剤の添加量が少なすぎると、ゼリー惣菜におけるゼリー化した調味液の吸水距離が本発明で規定する数値範囲よりも大きくなると共に、保形性のあるゼリー惣菜が得られなくなる。一方、ゲル化剤の添加量が多すぎると、ゼリー化した調味液の吸水距離が本発明で規定する範囲よりも小さくなると共に、硬くて不良な食感になり、ゼリー惣菜を食したときに、口の中でゼリー化した調味液が速やかに溶けずに喉を通過するときにゼリー状のままであることが多くなり、具材自体の食感、食味、風味を味わうことが困難になる。
【0039】
本発明のゼリー惣菜は、プラスチック容器などの容器に充填し、密封した後、高温で加熱処理されていることが好ましい。加熱温度は、80〜100℃が好ましく、85〜100℃がより好ましく、90〜100℃がさらに好ましい。また、その加熱時間は、20〜120分程度、特に30〜90分程度であることが好ましい。
容器に充填し密封したゼリー惣菜を上記した温度で加熱処理することによって、微生物の繁殖がなくて安全性に優れ、冷蔵温度で7日以上保存可能なゼリー惣菜を得ることができる。
容器に充填し密封したゼリー惣菜を高温で加熱処理する場合は、当該加熱処理時にも具材の加熱調理が行なわれるので、ゼリー惣菜の製造に用いる惣菜(具材)の加熱調理時間を通常の加熱調理時間よりも多少短くしておくことが好ましい。
【0040】
限定されるものではないが、本発明のゼリー惣菜の製造工程としては、所定の食材を用いて調理を行なって調理された惣菜用の具材をつくり、プラスチック容器などの容器に当該調理した具材を入れ、そこにゲル化剤を含有する調味液を注入し、次いで容器の開口部をシールし、高温で加熱滅菌処理した後に冷却して調味液をゼリー化させて、ゼリー化した調味液中に具材が封入されているゼリー惣菜とする方法などを挙げることができる。
【実施例】
【0041】
以下に、実施例などによって本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
以下の例(実施例、参考例)のゼリー惣菜またはゼリー食品の保形性および食した際の食感、食味および風味は、以下の方法で評価した。
【0042】
[ゼリー惣菜またはゼリー食品の保形性の評価]
ゼリー惣菜またはゼリー食品について、下記の評価基準に従って保形性の評価を行なった。
保形性の評価基準
○:容器から取り出す際に、形崩れや破損が全く生じず、元の形状を維持したまま取り出すことができ、保形性に優れている。
△:容器から取り出す際に、形崩れ、変形、破損等が多少あり、保形性にやや劣る。
×:容器から取り出す際に、形が完全に崩れてしまうか、破損が大きく保形性に劣っている。
【0043】
[ゼリー惣菜またはゼリー食品の食感、食味および風味の評価]
5名のパネラーがゼリー惣菜およびゼリー食品を食し、そのときの食感、食味および風味を下記の評価基準で評価して、それぞれの評価記号(A,B,C)に該当するパネラーの人数を数えた。
食感、食味および風味の評価基準
A:ゼリー惣菜またはゼリー食品を口に入れたときに、ゼリー化した調味液が速やかに溶けて液化し、具材を含有している食品では調味液が具材から分離し、具材本来の食感、食味および風味と、調味液のうま味を同時に味わうことができた。
B:ゼリー惣菜またはゼリー食品を口に入れたときに、ゼリー化した調味液が速やかに溶けずにゼリー状を維持し、しばらく経ってから溶けたため、具材を含有している食品では具材本来の食感、食味および風味を味わいにくかった。
C:ゼリー惣菜またはゼリー食品を口に入れたときに、ゼリー化した調味液が速やかに溶けずに、硬いゼリー状のままであり、喉を通るときもゼリー状のままであっため、具材を含有している食品では具材本来の食感、食味および風味を味わうことができなかった。
【0044】
また、以下の例において、ゼリー惣菜またはゼリー食品におけるゼリー化した調味液の吸水距離、吸水量、水分含量、ゲル破断強度およびpHは、以下の方法で測定した。
[ゼリー惣菜またはゼリー食品におけるゼリー化した調味液の吸水距離、吸水量、水分含量、ゲル破断強度およびpHの測定方法]
(1)物性測定用のゼリー化した調味液の調製:
ゼリー化した調味液中に具材が封入されている以下の各例のゼリー惣菜または他のゼリー食品を、スチームコンベクションオーブン(ニチワ電機株式会社製「SCOS−RS」)に入れて100℃で30分間スチーム加熱してゼリー化した調味液を溶かし、それをザル上にあけて具材(固形分)を分離した後、液体部分を容器(直径×高さ=40mm×40mm)に充填し、10℃の冷蔵庫内で3時間冷却して調味液をゲル化してゼリー化した調味液を再調製し、これを物性測定用のゼリー化した調味液として使用した。
なお、ゼリー惣菜またはゼリー化食品からゼリー化した調味液を直接採取して物性測定用の試料として用いなかった理由は、ゼリー惣菜またはゼリー食品ではゼリー化した調味液中に封入または混入されている具材などにより物性測定が可能な所定の寸法および量のゼリー化した調味液の採取が困難であることによる。また、具材を封入する前(具材と混合する前)の調味液をそのままゼリー化したものを物性測定用の試料として用いなかった理由は、ゼリー惣菜やゼリー食品を製造する際に具材などに伴って容器内に持ち込まれる液体の種類や量、容器に具材と調味液を充填し密封した後の加熱処理などによって、ゼリー惣菜またはゼリー食品におけるゼリー化した調味液の物性が、ゼリー化する前の調味液を具材と混合せずにそのままゼリー化したものの物性と異なったものになる場合があることによる。
【0045】
(2)ゼリー惣菜またはゼリー食品におけるゼリー化した調味液の吸水距離および吸水量の測定:
(i) 図2に示す濾紙挟持片βを作製した[なお、図2の(a)は濾紙挟持片βの外観図、(b)は濾紙挟持片βの正面図、(c)は濾紙挟持片βの側面図である]。
すなわち、JIS P3801で規定する「2種」に相当する濾紙(厚さ0.13mm)を切断して縦×横=50mm×20mmの濾紙片5を作製して、その質量(W0)(g)を測定した。この濾紙片5の両側を、2枚のポリプロピレンシート片6,6’(縦×横×厚さ=55mm×30mm×0.13mm)で、濾紙片5の長さ方向の頂部10mmがプラスチックシート片6,6’の長さ方向の頂部から露出し、濾紙片5の長さ方向の底部からポリプロピレンシート片6,6’が15mmの長さで延在し且つ濾紙の横方向の両側にプラスチックシート片6,6’が5mmずつ延在するようにして挟んで濾紙挟持片βを作製した。
(ii) 上記(i)で作製した濾紙挟持片βを、図3の(a)に示すように、濾紙挟持片β内の濾紙片5の長さ方向の底部から15mmまでが、上記(1)で調製したゼリー化した調味液7中に進入するまでゼリー化した調味液7に挿入した後、図3の(b)に示すように濾紙片5の両側のポリプロピレンシート片6,6’を抜き取って濾紙片5をゼリー化した調味液7と接触させ、濾紙片5がゼリー化した調味液7と接触してから2分後に濾紙片5をゼリー化した調味液7から抜き取った[図3の(c)]。
(iii) 上記(ii)でゼリー化した調味液7から抜き取った濾紙片5について、濾紙片5に吸収されて上方に伸びた液体の距離(L3)(mm)を測定して、下記の数式《1》からゼリー化した調味液の吸水距離(mm)を求めた。
また、上記(ii)でゼリー化した調味液から抜き取った濾紙片5の質量(W1)(g)を測定して、下記の数式《2》からゼリー化した調味液の吸水量(g)を求めた。
なお、ゼリー化した調味液の吸水距離および吸水量の測定に当って、濾紙片5をそのまま直接ゼリー化した調味液に挿入せずに濾紙挟持片βを作製してゼリー化した調味液に挿入した理由は、濾紙片5のみでは、ゼリー化した調味液中に所定の深さで正確に挿入することが困難であることによる。
ゼリー化した調味液の吸水距離(mm)=L3−15 《1》
ゼリー化した調味液の吸水量(g)=W1−W0 《2》
【0046】
(3)ゼリー化した調味液の水分含量の測定:
上記(1)で調製したゼリー化した調味液を容器から取り出し、その5gを採取して水分分析計(エーアンドディ社製「MX−50」)にセットし、130℃にてゼリー化した調味液の水分含量(質量%)を測定した。
【0047】
(4)ゼリー化した調味液のゲル破断強度の測定:
上記(1)で調製したゼリー化した調味液を破損しないようにして容器から取り出して、圧縮試験機(島津製作所製「EZ Test」)にセットした。円筒形のプランジャー(直径20mm)にてゲルを30mm/minの速度で圧縮し、ゼリー化した調味液が破断した時の応力を求めて、ゲル破断強度(N/cm2)とした。
【0048】
(5)ゼリー化した調味液のpHの測定:
上記(1)で調製したゼリー化した調味液中に、pH測定装置の端子を挿入してpHを測定した。
【0049】
《実施例1》[筍蕗煮ゼリー]
(1) 味醂9g、上白糖9g、醤油17g、だし260gを鍋に入れて加熱し、沸騰したところに筍(1個の大きさ約7〜11g)250gを入れて10分間にて筍煮を得た。
(2) 味醂9g、上白糖9g、醤油17g、だし260gを鍋に入れて加熱し、沸騰したところに蕗(1個の大きさ約2〜8g)250gを入れて10分間にて蕗煮を得た。
(3) 鍋に、味醂35g、上白糖35gおよび醤油56gと共に、下記の表1に示す量のだし(鰹節と昆布から取っただし)と下記の表1に示す量のゲル化製剤(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製「ゲルアップWA」)[ゲル化剤(カラギーナンおよびローカストビーンガム)の含有量45質量%、カラギーナン:ローカストビーンガムの質量比=約5.4:1]を入れ(鍋に入れる材料の合計質量=1178g)、加熱して沸騰したところで加熱を止めて、調味液を調製した。
【0050】
(4) 図1に示すポリプロピレン製のプラスチック容器[内容量=約120ml、開口部の短径(内径)L1=61mm、長径(内径)L2=91mm、壁厚=550μm、フランジの幅=5mm、容器の深さ=35mm)の各1個に、上記(1)で調理した筍煮3個と上記(2)で調理した蕗煮3個をきれいに入れ、そこに上記(3)で調製した調味液約80gを充填し、満注状態で、プラスチック容器のフランジ部分にトップフィルムをヒートシールして密封した。
(5) 上記(4)で得られた筍蕗煮とゼリー液を充填し密封した容器を、100℃の熱水槽に60分間浸漬して加熱した後、取り出して冷水槽(温度10℃)に60分間浸漬して、筍蕗煮ゼリーを製造した。
【0051】
(6) 上記(5)で筍蕗煮ゼリーをプラスチック容器から取り出す際の保形性を上記した評価基準で評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
また、プラスチック容器から取り出した筍蕗煮ゼリーを5名のパネラーが食して、その食感、食味および風味を上記した評価基準に従って評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
(7) 上記(5)で得られた筍蕗煮ゼリーについて、ゼリー化した調味液の吸水距離、吸水量、水分含量、ゲル破断強度およびpHを上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0052】
【表1】

【0053】
上記の表1の結果にみるように、ゼリー惣菜におけるゼリー化した調味液の吸水距離が15〜25mmの範囲にある実験番号3〜8のゼリー惣菜は、口に入れるとゼリー化した調味液が速やかに溶けて液化して具材から分離し、惣菜を構成している具材本来の食感、食味および風味と、調味液のうま味を同時に味わうことのでき、しかも保形性にも優れていて容器からの取り出し時にゼリー化した調味液の崩れや破損が生じず、きれいに取り出すことができる。
それに対して、ゼリー化した調味液の吸水距離が15mmよりも小さいと、食したときにゼリー化した調味液が速やかに溶けずに、硬いゼリー状のままになっていて、具材を含有している食品では具材本来の食感、食味および風味を味わうことができない。
一方、ゼリー化した調味液の吸水距離が25mmよりも大きいと、保形性がなく、容器から取り出す際に、形崩れや破損が生ずる。
【0054】
《実施例2》[ひじき煮ゼリー]
(1)ひじき煮の製造:
ひじきを20倍量の水で2時間水戻しした後、鍋に水戻ししたひじき400gを入れて20gのゴマ油で炒め、次いで砂糖48g、醤油40g、だし362gを入れ、ゴボウ46g、筍46g、蓮根46g、人参46g、油揚げ36g、コンニャク63gを加えて20分間煮てひじき煮を得た。
(2)調味液の調製:
鍋に、上白糖6gおよび醤油32gと共に、だし(鰹節と昆布からとっただし)533gおよび実施例1で使用したのと同じゲル化製剤(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製「ゲルアップWA」)7.4gを入れ、加熱して沸騰したところで加熱を止めて、調味液を調製した。
【0055】
(3) 図1に示す実施例1で使用したのと同じポリプロピレン製のプラスチック容器の各1個に、上記(1)で調理したひじき煮40gを入れ、そこに上記(2)で調製した調味液約80gを充填し、満注状態で、プラスチック容器のフランジ部分にトップフィルムをヒートシールして密封した。
(4) 上記(3)で得られたひじき煮とゼリー液を充填し密封した容器を、100℃の熱水槽に60分間浸漬して加熱した後、取り出して冷水槽(温度12℃)に60分間浸漬して、ひじき煮ゼリーを製造した。
【0056】
(5) 上記(4)でひじき煮ゼリーをプラスチック容器から取り出す際の保形性を上記した評価基準で評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
また、プラスチック容器から取り出したひじき煮ゼリーを5名のパネラーが食して、その食感、食味および風味を上記した評価基準に従って評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
(6) 上記(4)で得られたひじき煮ゼリーについて、ゼリー化した調味液の吸水距離、吸水量、水分含量、ゲル破断強度およびpHを上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0057】
《実施例3》[おでんゼリー]
(1)おでんの製造:
鍋に日本酒42g、味醂42g、醤油42gおよびだし汁850gを入れて加熱し、沸騰したところにウズラの卵170g、角天150g、コンニャク150gおよび大根300gを入れて20分間煮ておでんを得た。
(2)調味液の調製:
鍋に、味醂43g、日本酒18gおよび醤油34gと共に、だし(鰹節と昆布からとっただし)700gおよび実施例1で使用したのと同じゲル化製剤(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製「ゲルアップWA」)7.8gを入れ、加熱して沸騰したところで加熱を止めて、調味液を調製した。
【0058】
(3) 図1に示す実施例1で使用したのと同じポリプロピレン製のプラスチック容器の各1個に、上記(1)で調理したおでん40gを入れ、そこに上記(2)で調製した調味液約80gを充填し、満注状態で、プラスチック容器のフランジ部分にトップフィルムをヒートシールして密封した。
(4) 上記(3)で得られたおでんとゼリー液を充填し密封した容器を、95℃の熱水槽に60分間浸漬して加熱した後、取り出して冷水槽(温度12℃)に60分間浸漬して、おでんゼリーを製造した。
【0059】
(5) 上記(4)でおでんゼリーをプラスチック容器から取り出す際の保形性を上記した評価基準で評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
また、プラスチック容器から取り出したおでんゼリーを5名のパネラーが食して、その食感、食味および風味を上記した評価基準に従って評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
(6) 上記(4)で得られたおでんゼリーについて、ゼリー化した調味液の吸水距離、吸水量、水分含量、ゲル破断強度およびpHを上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0060】
《実施例4》[高野豆腐煮ゼリー]
(1)高野豆腐煮の製造:
角型容器に砂糖20g、食塩6g、醤油10g、味醂10g、だし(鰹節と昆布からとっただし)600gと高野豆腐50gを入れて、蒸し庫の中で95℃で30分間加熱して高野豆腐煮を得た。
(2)調味液の調製:
鍋に、味醂10g、上白糖20g、醤油10gおよび食塩4gと共に、だし(鰹節と昆布からとっただし)600gおよび実施例1で使用したのと同じゲル化製剤(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製「ゲルアップWA」)8.4gを入れ、加熱して沸騰したところで加熱を止めて、調味液を調製した。
【0061】
(3) 図1に示す実施例1で使用したのと同じポリプロピレン製のプラスチック容器の各1個に、上記(1)で調理した高野豆腐煮40gを入れ、そこに上記(2)で調製した調味液約80gを充填し、満注状態で、プラスチック容器のフランジ部分にトップフィルムをヒートシールして密封した。
(4) 上記(3)で得られた高野豆腐煮とゼリー液を充填し密封した容器を、95℃の熱水槽に60分間浸漬して加熱した後、取り出して冷水槽(温度12℃)に60分間浸漬して、高野豆腐煮ゼリーを製造した。
【0062】
(5) 上記(4)で高野豆腐煮ゼリーをプラスチック容器から取り出す際の保形性を上記した評価基準で評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
また、プラスチック容器から取り出した高野豆腐煮ゼリーを5名のパネラーが食して、その食感、食味および風味を上記した評価基準に従って評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
(6) 上記(4)で得られた高野豆腐煮ゼリーについて、ゼリー化した調味液の吸水距離、吸水量、水分含量、ゲル破断強度およびpHを上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0063】
《参考例1〜13》
(1) 市販のゼリー状食品、具体的には、グレープフルーツゼリー(参考例1)、マンゴーゼリー(参考例2)、水ようかん(参考例3)、コーヒーゼリー(参考例4)、杏仁豆腐(参考例5)、おでんゼリー(参考例6)、野菜ゼリー(参考例7)、煮こごり(参考例8)、豆乳プリン(参考例9)、タラコゼリー(参考例10)、鰊ゼリー(参考例11)、シイタケゼリー(参考例12)およびふきちりめんゼリー(参考例13)を購入して、容器から取り出す際の保形性を上記した評価基準で評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
(2) また、容器から取り出した上記したそれぞれのゼリー状食品を5名のパネラーが食して、その食感、食味および風味を上記した評価基準に従って評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
(3) 購入した上記(1)のそれぞれのゼリー状食品について、ゼリー化した調味液の吸水距離、吸水量、水分含量、ゲル破断強度およびpHを上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0064】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のゼリー惣菜は、口に入れたときにゼリー化した調味液が速やかに溶けて液化して具材から分離し、具材本来の食感、食味、風味と、調味液のうま味を同時に味わうことができるので、消費者は、本発明のゼリー惣菜を購入し、家庭などで容器から皿などに取り出すだけで、食感、食味、風味に優れる惣菜を簡単に食することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 開口部
2 フランジ
3 リブ
4 耳部
5 濾紙片
6 ポリプロピレンシート片
6’ ポリプロピレンシート片
7 ゼリー化した調味液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼリー化した調味液中に惣菜の具材が封入されているゼリー惣菜であって、具材を封入してなるゼリー化した調味液の、以下の方法で測定した吸水距離が15〜25mmであることを特徴とするゼリー惣菜。
[ゼリー化した調味液の吸水距離の測定方法]
JIS P3801で規定する「2種」に相当する濾紙を切断して得た長さ×幅=50mm×20mmの濾紙片の長さ方向の先端15mmを、10℃の温度に保ったゼリー化した調味液中に垂直に差し込み、2分間経過した時点でのゼリー化した調味液表面からの吸液高さを測定して、吸水距離とする。
【請求項2】
具材を封入してなるゼリー化した調味液の水分含量が90質量%以上である請求項1に記載のゼリー惣菜。
【請求項3】
具材を封入してなるゼリー化した調味液のゲル破断強度が0.5〜3N/cm2である請求項1または2に記載のゼリー惣菜。
【請求項4】
具材を封入してなるゼリー化調味液の、以下の方法で測定した吸水量が0.13〜0.20gである請求項1〜3のいずれか1項に記載のゼリー惣菜。
[ゼリー化した調味液の吸水量の測定方法]
JIS P3801で規定する「2種」に相当する濾紙を切断して得た長さ×幅=50mm×20mmの濾紙片の長さ方向の先端15mmを、10℃の温度に保ったゼリー化した調味液中に垂直に差し込み、2分間経過した時点で濾紙片が吸った調味液の重さを測定して吸水量とする。
【請求項5】
プラスチック容器に充填し密封されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のゼリー惣菜。
【請求項6】
プラスチック容器に充填して密封した後に80〜100℃の熱水中で加熱処理されている請求項5に記載のゼリー惣菜。
【請求項7】
プラスチック容器が、開口部の全周にわたってフランジを有する楕円形の開口部を有し、楕円形の開口部における長径の一方の端部側に位置するフランジ部分に補強用のリブが設けられ且つ当該補強用のリブを介して外方に突出する耳部が設けられているプラスチック容器である請求項5または6に記載のゼリー惣菜。
【請求項8】
プラスチック容器が、楕円形の開口部における、耳部が設けられていない長径のもう一方の端部側に位置するフランジ部分に補強用のリブを有するかまたは補強用のリブを有していないプラスチック容器である請求項5〜7のいずれか1項に記載のゼリー惣菜。
【請求項9】
プラスチック容器の楕円形の開口部の短径:長径の比が、1:1.3〜1:2.3である請求項5〜8のいずれか1項に記載のゼリー惣菜。
【請求項10】
プラスチック容器の深さ:楕円形の開口部の短径の比が、1:0.7〜1:2.5である請求項5〜9のいずれか1項に記載のゼリー惣菜。
【請求項11】
プラスチック容器の楕円形の開口部が、プラスチックフィルムで密封されている請求項5〜10のいずれか1項に記載のゼリー惣菜。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−167115(P2011−167115A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33206(P2010−33206)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000226998)株式会社日清製粉グループ本社 (125)
【Fターム(参考)】