説明

ゼロカロリーのミルク入り飲料及びその製造方法

【課題】ベース飲料の風味、乳感、甘味感のバランスを維持したゼロカロリーのミルク入り飲料を提供する。
【解決手段】乳成分及び甘味料を含有し、以下(1)及び(2)の特徴を有するゼロカロリー飲料とする。(1)飲料中の脂質、タンパク質及び炭水化物のエネルギー量が、それぞれ0.3〜2.2kcal/100mL、0.2〜1.4kcal/100mL、0.9〜2.6kcal/100mLである。(2)飲料中のナトリウム濃度が、30〜70mg/100mLである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風味の改善されたゼロカロリーのミルク入り飲料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より市販されている清涼飲料、コーヒー飲料、茶飲料などの飲料には、嗜好性を向上させるために比較的多量の糖類が使用されている。近年、健康に対する意識向上やダイエット志向などから、飲料の分野においてもより低カロリー化乃至ノンカロリー(ゼロカロリー)化の要望が大きくなっており、糖アルコールなどの低カロリー甘味料や、スクラロース、ステビア、アスパルテーム及びアセスルファムカリウムなどの高甘味度甘味料を使用した低カロリー又はゼロカロリー飲料が既に実用化されている。消費者は、このような製品においてカロリーを気にする必要はないが、低カロリー甘味料や高甘味度甘味料は、対応する完全カロリー(フルカロリー)製品の味とは異なる味をもたらし、嗜好性を低下させることが知られている。具体的には、甘味の立ちやキレ、後味の時間や質、濃厚感などの口当たりといった点において、ショ糖を含む製品に比べて味が劣ることが指摘されている。
【0003】
そこで、高甘味度甘味料を含有する製品の質を改善することが提案されている。例えば、特許文献1には、ノンカロリーの特性を維持しながら、質感のある良好な甘味質を有する甘味組成物で、エリスリトール、アセスルファムK及びスクラロースからなる甘味組成物であって、該甘味組成物中のエリスリトールの含有率が96.63〜99.52重量%であり、アセスルファムKの含有率が0.26〜2.63重量%であり、スクラロースの含有率が0.14〜1.13重量%である甘味組成物が開示されており、この甘味組成物を含有する飲料としてコーヒー・紅茶飲料が例示されている。
【0004】
また、特許文献2には、(a)1以上の非栄養性甘味料、(b)糖アルコール、および(c)D−タガトースを、ダイエット飲料に含める工程を含む、ダイエット飲料の味を改善する方法が開示されており、実施例には、この方法によりダイエットコーラ飲料がフルカロリー飲料に近い味を有することが示されている。
【0005】
特許文献3には、乳成分と脂肪よりなり乳糖含有率が1重量%以下である乳糖代替成分を含有し、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール等の糖アルコールと、ステビア、アスパルテーム、グリチルリチン等の非糖類甘味料(ジテルペン配糖体)を含む乳風味コーヒー飲料又は乳風味紅茶飲料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−321114号公報
【特許文献2】特表2004−520072号公報
【特許文献3】特開平9−37714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ミルク入りコーヒーやミルク入り紅茶などの乳分を含有する飲料(以下、ミルク入り飲料という)は、コーヒーや紅茶などのベース飲料特有の香りとコクといった「飲料感」(コーヒー感や紅茶感)、ミルクのコクやまろやかさといった「乳感」、甘さや厚み(ボディ感)といった「甘味感」のバランスが重要視される飲料である。
【0008】
いわゆるゼロカロリー飲料(100mLあたりの熱量が5kcal未満の飲料)の開発にあたっては、例えば、コーヒー飲料は、糖類や乳分を添加していなくても、コーヒーの抽出液自体が3kcal/100mL程度の熱量を有するため、風味の良いショ糖や乳分はカロリーが高く、ゼロカロリー飲料への処方は大きく制限される。そのため、ゼロカロリーのミルク入りコーヒー飲料は、コーヒー抽出液に高甘味度甘味料と、場合によって極めて少量の乳分を配合することによって調製されている場合がほとんどであり、フルカロリーのミルク入りコーヒー飲料のコーヒー感、乳感、甘味感のバランスを大きく欠いている。したがって、ゼロカロリーのミルク入り飲料において、フルカロリー飲料の味に類似した味を有する飲料が強く望まれている。
【0009】
本発明は、ベース飲料の風味(飲料感)、乳感、甘味感のバランスを維持したゼロカロリーのミルク入り飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、(1)飲料中の脂質、タンパク質及び炭水化物のエネルギー量とそのバランス、及び(2)飲料中のナトリウムイオン濃度、がミルク入り飲料の風味に大きな影響を及ぼすことを見出した。そして、これらの条件を特定することにより、ゼロカロリーのミルク入り飲料でありながら、フルカロリー飲料に極めて類似した風味を有するミルク入り飲料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、これに限定されるものではないが、本発明は以下に関する。
(1) 乳分及び甘味料を含有する飲料であって、脂質、タンパク質及び炭水化物を、それぞれ次のエネルギー量:
(a)脂質:0.3〜2.2kcal/100mL;
(b)タンパク質:0.2〜1.4kcal/100mL;
(c)炭水化物:0.9〜2.6kcal/100mL;
を満たす量で含み、飲料中のナトリウム濃度が30〜70mg/100mLである、上記飲料。
(2) 甘味料として、少なくとも1種の糖アルコールを含有する、請求項1に記載の飲料。
(3) 糖アルコールがエリスリトールである、請求項2に記載の飲料。
(4) コーヒー飲料である、請求項1〜3のいずれかに記載の飲料。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、ゼロカロリーのミルク入り飲料でありながら、フルカロリー飲料に極めて類似した風味を有するミルク入り飲料が提供される。例えば、コーヒー感、乳感、甘味感のバランスがよく、風味良好なゼロカロリーのミルク入りコーヒー飲料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明において、ミルク入り飲料とは、乳分を原料として使用した飲料を意味する。本発明のミルク入り飲料は、長期保存性を高めるため、UHT殺菌やレトルト殺菌等の高温殺菌工程を経て製造することが好ましい。また、本発明の好ましい態様として、例えば、缶、紙パック、PETボトル等の保存容器に充填された、長期間の保存に適した容器詰め飲料が挙げられる。
【0014】
本発明において飲料との関連で用いられる「乳分」との用語は、飲料にミルク風味やミルク感を付与するために添加する成分を指し、主に乳等省令に定義されている乳、牛乳及び乳製品のことをいう。例えば、生乳、牛乳、特別牛乳、脱脂乳、加工乳、乳飲料等が挙げられ、乳製品としては、クリーム、調製クリーム、濃縮ホエイ、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、加糖脱脂練乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、バターミルクパウダー、調整粉乳などが挙げられる。なお、調製クリームとは、脂肪やタンパク質量を調製された加工クリームを意味する。本発明の飲料では、特にタンパク質が少ない乳分(クリーム若しくはバター等)を用い、これにカゼインナトリウムを添加したものが好適に用いられる。乳分は、ゼロカロリー飲料となる量で添加され、また、後述するエネルギー量およびナトリウム濃度を満足するような量で添加することができる。
【0015】
本発明のミルク入り飲料は、上記乳分を原料として含む飲料であれば、その種類を限定されるものではなく、例えば、コーヒー分を含むミルク入りコーヒー飲料、紅茶分を含むミルク入り紅茶飲料の他、ココア、発酵乳風味飲料などが含まれる。ここで、「コーヒー分」とは、コーヒー豆由来の成分を含有する溶液のことをいい、例えば、コーヒー抽出液、すなわち、焙煎、粉砕されたコーヒー豆を水や温水などを用いて抽出した溶液や、コーヒー抽出液を濃縮したコーヒーエキス、コーヒー抽出液を乾燥したインスタントコーヒーなどを、水や温水などで適量に調整した溶液が挙げられる。また、「紅茶分」とは、紅茶葉由来の成分を含有する溶液のことをいい、例えば、紅茶葉抽出液、すなわち紅茶葉を温水などを用いて抽出した溶液や、紅茶葉抽出液を濃縮した紅茶エキス、紅茶葉抽出液を乾燥した粉末紅茶などを水や温水などで適量に調整した溶液が挙げられる。
【0016】
本明細書で使用される「ゼロカロリー飲料」とは、飲料100mLあたりの熱量が5kcal未満の飲料をいい、「フルカロリー飲料」とは、飲料100mLあたりの熱量が20kcal以上の飲料をいう。
【0017】
本発明では、飲料中の(1)脂質、タンパク質及び炭水化物のエネルギー量、及び(2)ナトリウムイオン濃度、の条件を特定することにより、ゼロカロリーのミルク入り飲料でありながら、フルカロリー飲料に極めて類似した風味を有するミルク入り飲料が得られる。
【0018】
1つの態様において本発明の飲料がミルク入りコーヒー飲料であれば、本発明により、コーヒー感、乳感、甘味感のバランスがよく、風味良好なゼロカロリー飲料が提供される。ここで、本明細書でいう「風味良好」とは、ベース飲料の風味(コーヒー飲料であればコーヒー特有の香りとコクといった「コーヒー感」)、ミルクのコクやまろやかさといった「乳感」、甘さや厚み(ボディ感)といった「甘味感」のバランスが重要視味のバランスが良く飲みやすい飲料で、飲用後に知覚される後味も良い飲料を意味する。
【0019】
本発明の飲料は、まず飲料中に含まれる脂質、タンパク質及び炭水化物のエネルギー量が、それぞれ(a)脂質:0.3〜2.2kcal/100mL、(b)タンパク質:0.2〜1.4kcal/100mL、(c)炭水化物:0.9〜2.6kcal/100mLを満たすように調整される。特に好ましくは(a)脂質:0.5〜1.8kcal/100mL、(b)タンパク質:0.6〜1.0kcal/100mL、(c)炭水化物:1.2〜1.8kcal/100mLの範囲で調整される。飲料中の脂質、タンパク質及び炭水化物のエネルギー量がこの範囲となるように調整することによって、ゼロカロリー飲料の風味が改善される。
【0020】
脂質となる成分としては、ベースとなる飲料に含まれる油脂成分(コーヒー飲料であれば、コーヒーオイル等)、乳分由来の脂質成分、その他必要に応じて添加される乳化剤や調製クリーム中に含まれる植物油脂等が挙げられる。ゼロカロリー飲料は、可溶性固形分の少なさから極めてデリケートな風味設計を必要とするものであり、植物油脂を配合すると異味として強く知覚される傾向にある。したがって、植物油脂は配合しないか、ごく少量で配合するようにすることが好ましい。具体的には、飲料中の脂質中、乳分由来の脂質の比率が50%以上、好ましくは70%以上となるように調整することが好ましい。
【0021】
タンパク質となる成分としては、ベースとなる飲料に含まれるタンパク質成分、その他必要に応じて添加される安定化剤等が挙げられる。メカニズムは不明であるが、飲料中のカゼインタンパク質含量が1mg〜350mg/100mL、好ましくは10mg〜300mg/100mLとなるように調整することで、さらに風味良好なミルク入り飲料が得られる。具体的には、飲料中のタンパク質中、カゼインタンパク質の比率が4%以上、好ましくは10%以上となるように調整することが好ましい。
【0022】
炭水化物となる成分としては、ベースとなる飲料に含まれる炭水化物成分(コーヒー飲料であれば、コーヒーオリゴ糖や多糖類等)、乳分に含まれる炭水化物成分(例えば、乳糖等)、甘味料に含まれる炭水化物成分等が挙げられる。乳分由来の炭水化物成分は、風味を低下させる傾向にあることから、飲料中の炭水化物中、乳分由来の炭水化物の比率が10%以下、好ましくは5%以下となるように調整することが好ましい。
【0023】
脂質量、タンパク質量の測定方法及び炭水化物量の算出方法は、栄養表示基準別表第二(平一六厚労告一二六・一部改正)に示してある方法を用いることができる。また、エネルギー算出には、五訂(増補)日本食品標準成分表に掲載されているエネルギー換算係数を用いることができる。
【0024】
また、本発明の飲料は、飲料中のナトリウムイオン濃度が30〜70mg/100mLであり、40〜60mg/100mLとすることもできる。飲料中のナトリウムイオン濃度がこの範囲となるように調整することによって、ベース飲料や乳分の風味の立ち上がりを早くし、ボディ感を強め、甘味料や乳化剤等の後引きを低減して後味のキレをよくする等の効果が増強され、その結果、ゼロカロリーでありながら風味良好なミルク入り飲料となる。飲料中のナトリウムイオンの濃度は、コーヒー分等の原材料や乳分由来のものに加え、その他の原材料、例えば、塩化ナトリウム、乳清ミネラル等のミネラル類、重曹(炭酸水素ナトリウム)、リン酸三ナトリウム等のpH調整剤、カゼインナトリウム等の安定剤などを配合して調整できる。
【0025】
本発明におけるナトリウム濃度の測定方法は、栄養表示基準別表第二(平一六厚労告一二六・一部改正)に示してある方法を用いることができる。
本発明のミルク入り飲料は、乳分の他に、少なくとも甘味料を含有する。甘味料としては、甘味を呈する成分であれば使用することができる。例えば、単糖類、二糖類、オリゴ糖類または糖アルコール類が挙げられる。単糖類としては、ぶどう糖、果糖、木糖、ソルボース、ガラクトース又は異性化糖などが挙げられ、二糖類としては、蔗糖 、麦芽糖、乳糖、異性化乳糖又はパラチノースなどが挙げられる。オリゴ糖類としては、フラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、カップリングシュガー又はパラチノースなどが挙げられる。糖アルコール類としては、例えば、エリスリトール、ソルビトール,キシリトール,マンニトール等の単糖アルコール類、マルチトール,イソマルチトール,ラクチトール等の2糖アルコール類、マルトトリイトール,イソマルトトリイトール,パニトール等の3糖アルコール類、オリゴ糖アルコール等の4糖以上アルコール類、粉末還元麦芽糖水飴などが挙げられる。その他、ステビア、アスパラテーム、サッカリン、グルチルリチン、ソーマチンなどの甘味料として挙げられる。これらの甘味料は、単独で使用されてもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0026】
本発明の飲料では、特に糖アルコールが好適に用いられる。糖アルコールを用いることで、本発明のナトリウムイオンを特定濃度に調整して得られる効果を相乗的に又は相加的に高めることができる。糖アルコールを用いる場合、その配合量は、本発明の飲料中の(c)炭水化物のエネルギー量等や甘味度等を勘案して適宜設定されるが、例えばエリスリトールを用いる場合、飲料全量に対し、0.1〜7.0重量%、好ましくは0.6〜1.5重量%程度配合するとよい。
【0027】
本発明のミルク入り飲料には、保存性を高める等の目的のため、乳化剤を配合することができる。例えば、高温殺菌工程を経て製造される容器詰め飲料は、長期間の保存を可能とするために、乳化剤を配合することが好ましい。ただし、タンパク質含量が多い飲料においては、乳化剤特有の嫌味がタンパク質などによりマスキングされるために大きな問題とはならなかったが、タンパク質含量が極めて少ないゼロカロリーの飲料では、乳化剤の嫌味が顕著に知覚される傾向がある。しかし、本発明の飲料においては乳化剤に起因する嫌味が抑制され、特に糖アルコールを配合した本発明の飲料では、特定の濃度に調整されたナトリウムイオンと糖アルコールとが相乗的に作用し、乳化剤に起因する風味低下を大きく抑制できる。
【0028】
本発明において乳化剤としては、例えば、シュガーエステル、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、動物性ステロール、植物性ステロール等や、これらの混合物が挙げられる。また、乳化剤に加えて、セルロース、グアーガム、ローカストビンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸、ペクチン等の乳化安定剤を含有させてもよい。特に、シュガーエステル及び/又はグリセリン脂肪酸エステルの嫌味に対して、特定のナトリウムイオン及び糖アルコールは効果を奏する。乳化剤の含有量は、乳化剤の種類等により異なるが、通常、0.001〜0.05重量%、好ましくは0.002〜0.03重量%程度である。
【0029】
本発明の飲料には、本発明の構成を超えない範囲で、上記成分に加えて各種ビタミン類、各種ミネラル類、食物繊維、香料、着色剤、安定化剤等を配合することもできる。
1つの態様において本発明は飲料の製造方法であり、各種原料を混合することにより飲料が製造される。本発明の飲料は、乳分及び甘味料を少なくとも含有するため、これらの原料を混合してミルク入り飲料が製造される。ミルク入り飲料のpHは特に制限されないが、pH4.0〜8.0が好ましく、pH5.0〜7.0がより好ましく、pH5.5〜6.5が最も好ましい。また、本発明においては、保存性を高めるため、各種原料を混合して得られた調合液を高温殺菌処理することができ、高温殺菌処理としては、UHT殺菌やレトルト殺菌等を好適な例として挙げることができる。さらに、本発明においては、飲料を各種容器に充填して容器詰め飲料とすることができる。なお、殺菌工程と充填工程を行う順序は特に限定されず、いずれを先に行ってもよい。
【0030】
また別の観点からは本発明は、ゼロカロリーのミルク入り飲料の風味改善方法であって、乳分及び甘味料を混合する工程、飲料中の脂質、タンパク質、炭水化物のエネルギー量が、脂質:0.3〜2.2kcal/100mL、タンパク質:0.2〜1.4kcal/100mL、炭水化物:0.9〜2.6kcal/100mLとなるように調整する工程を備える。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本発明において数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
また、実施例における脂質量、タンパク質量の測定方法及び炭水化物量の算出方法は、栄養表示基準別表第二(平一六厚労告一二六・一部改正)に示してある方法を用いた。エネルギー算出には、五訂(増補)日本食品標準成分表に掲載されているエネルギー換算係数を用いた。ただし、修正アトウォーター法に従い、タンニン(FOLIN−DENIS法にて測定)、カフェイン及び糖アルコール(エリスリトール)(高速液体クロマトグラフ法にて測定)も考慮した。ナトリウム濃度の測定方法は、栄養表示基準別表第二(平一六厚労告一二六・一部改正)に示してある方法を用いた。
<試験例1>
各栄養成分由来エネルギーのバランスとミルク入り飲料の呈味との関係を検討した。
【0032】
まず、焙煎したコーヒー豆を粉砕し、豆に対して約8倍量の熱湯でドリップ抽出し、遠心処理後、500メッシュで濾過することで、コーヒー抽出液を得た。この抽出液を試験例1〜3に使用した。
【0033】
次いで、表1に示す栄養成分値をとるように、以下の手順によりミルク入りコーヒー飲料を調合した。すなわち、コーヒー抽出液に殺菌後のpHが6.1〜6.5となるよう重曹を添加し、甘味料(サネット0.16g/L(キリン協和フーズ株式会社)及びスクラロース0.02g/L(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社))を加えた後、均質化処理した加工クリーム(特性値:乳脂肪分40%、たんぱく質1.0%、無脂乳固形分2.7%、灰分0.4%)及び乳化剤0.2g/L(特性値:脂質100%)を加えた。さらに乳清ミネラル(株式会社ADEKA、商品名:みるくのミネラル、ナトリウム約0.6質量%)を添加してナトリウム量を調整した。調合液をよく攪拌した後、均質化処理を行い、実施例1のミルク入りコーヒー飲料を得た。なお、比較例2のみ、甘味料として砂糖0.7g/Lを用いて調製した。表1の配合に示す各栄養成分の量の調整は、コーヒー抽出液、加工クリーム、乳清ミネラルの配合量を調整することによって行った。
【0034】
このようにして調製した飲料185gを190g用飲料用缶に充填し、レトルト殺菌を行い、容器詰め飲料を製造した。
【0035】
【表1】

【0036】
製造したミルク入りコーヒー飲料について、専門パネラー3名により官能検査を実施した。官能評価については5点満点(比較例1を基準点の3点とし、点数の高い方が高評価とした)の評価として合議により採点した。結果を表2に示す。結果より、飲料中の脂質、タンパク質及び炭水化物のエネルギー量を特定範囲とすることで、ミルク入りコーヒー飲料の風味が良好となることが示された。
【0037】
【表2】

【0038】
<試験例2>
試験例1の結果から、飲料中の脂質、タンパク質及び炭水化物のエネルギー量が表3に示す処方となるようにして缶コーヒーを調製した。すなわち、ナトリウム濃度がミルク入り飲料の呈味にどう影響するかを検討するために、乳清ミネラルの配合量を変える以外は試験例1と同様の方法により、ナトリウム濃度の異なる缶コーヒーを調製して評価した。
【0039】
【表3】

【0040】
得られたミルク入りコーヒー飲料について、試験例1と同様にして、専門パネラーによる官能検査を実施した。結果を表4に示す。飲料中のナトリウムイオン濃度を30〜70mg/100mLとなるように調整することによって、コーヒー感や乳感の風味の立ち上がりがよくなり、ボディ感が増強され、甘味料や乳化剤等の後引きを低減して後味のキレをよくすることが示された。なお、塩味の観点から、ナトリウム濃度の上限は70mg/100mLとすべきであり、好ましくは60mg/100mLであることが判明した。
【0041】
【表4】

【0042】
<試験例3>
甘味料とナトリウムの関係を調べるため、表5のような処方で缶コーヒーを調製した(比較例2は、試験例の比較例2と同一のものである)。缶コーヒーの調製方法は試験例1と同様であるが、更に糖アルコールのエリスリトールを甘味料として添加した。この際、エリスリトールの甘味度を砂糖の0.7倍と換算し、甘味度を合わせて調合し、比較した。
【0043】
【表5】

【0044】
得られたミルク入りコーヒー飲料について、試験例1と同様にして、専門パネラーによる官能検査を実施した。結果を表6に示す。エリスリトールを添加し、かつナトリウム含量を増やした実施例10は、砂糖を添加した比較例2と比較して、飛躍的にボディ感やコクが出ることが分かった。すなわち、エリスリトールとナトリウムとを組み合わせると、飲料のボディ感やコクについて相乗効果があることが確かめられた。また、エリスリトールを添加した実施例9・10は、乳化剤に起因する風味低下を大きく抑制されており、特に後味が顕著に改善されていた。
【0045】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳分及び甘味料を含有する飲料であって、脂質、タンパク質及び炭水化物を、それぞれ次のエネルギー量:
(a)脂質:0.3〜2.2kcal/100mL;
(b)タンパク質:0.2〜1.4kcal/100mL;
(c)炭水化物:0.9〜2.6kcal/100mL;
を満たす量で含み、飲料中のナトリウム濃度が30〜70mg/100mLである、上記飲料。
【請求項2】
甘味料として、少なくとも1種の糖アルコールを含有する、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
糖アルコールがエリスリトールである、請求項2に記載の飲料。
【請求項4】
コーヒー飲料である、請求項1〜3のいずれかに記載の飲料。

【公開番号】特開2013−39068(P2013−39068A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177578(P2011−177578)
【出願日】平成23年8月15日(2011.8.15)
【出願人】(309007911)サントリーホールディングス株式会社 (307)
【Fターム(参考)】