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ゼロギャップ式電解槽用電極ユニット
説明

ゼロギャップ式電解槽用電極ユニット

【課題】 ゼロギャップ式電解槽に使用されるにもかかわらず、製作コストを極力抑制することができる経済性の高いゼロギャップ式電解槽用電極ユニットを提供する。
【解決手段】 ギャップ式電解槽を構成する電極ユニットの構成部材のうち、隔壁を挟んで一方の側に陽極20を支持し他方の側に陰極を支持する電極支持フレーム、及びその陽極20をそのまま使用する。前記陰極の代わりに、その陰極を背板31としてその正面側に導電性弾性体32を介して活性陰極33を前後動可能に支持する陰極構造体30を取り付ける。ギャップ式電解槽に使用されていた電極ユニットを、僅かに改造するだけで、ゼロギャップ式電解槽用電極ユニットとすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼロギャップ式電解槽に使用される電極ユニットに関し、より詳しくは、従来主流であった非ゼロギャップ式電解槽(ギャップ式電解槽)に使用されていた既存、既設の電極ユニットをベースとする経済性の高いゼロギャップ式電解槽用電極ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
アルカリ金属塩水溶液、すなわち塩化ナトリウム水溶液を電気分解することによって塩素や水素、水酸化ナトリウムを製造するために、陽極室と陰極室とを陽イオン交換膜によって分離し、陽極室内の陽極と陰極室内の陰極との間に電流を流して電解を行うイオン交換膜法食塩電解槽が用いられることはよく知られており、これについての様々な改良も数多く行われてきた。例えば、陽極に寸法安定性電極、陰極に水素過電圧が低い活性陰極が開発されることにより、イオン交換膜法食塩電解における電解電圧の低下が図られている。特に最近の電解技術の向上は著しく、その一つとして、陽極及び陰極を陽イオン交換膜に密着させた所謂ゼロギャップ式電解槽が開発され、電解電圧の更なる低下が図られている(特許文献1及び2)。
【0003】
ゼロギャップ式電解槽、ギャップ式電解槽を問わず、イオン交換膜法食塩電解槽では、隔壁を挟んで一方の側に陽極を支持し、他方の側に陰極を支持した電極ユニットが使用される(特許文献3)。具体的には、陽イオン交換膜を挟んで複数の電極ユニットを縦列配置し連結する。これにより、図5に示すように、隣接する2つの電極ユニットの陽極2と陰極3との間にイオン交換膜Iが配置され、電解槽が構成される。電解槽構成用の縦列配置された複数の電極ユニットが電気的に直列接続されたものが複極式(バイポーラ)と呼ばれ、並列接続されたものが単極式(モノポーラ)と呼ばれている。パイポーラ電解槽は、陽極と背後の隔壁の間が陽極室、陰極と背後の隔壁の間が陰極室とされた電極ユニットを使用する。モノポーラ電解槽は、電極ユニットとして、両面に陽極を有する陽極室ユニットと、両面に陰極を有する陰極室ユニットとを使用する。そして、隣接する電極ユニット間に配置されるイオン交換膜Iに対して陽極2が密着し、陰極3が所定のギャップGをもって対峙するものがギャップ式電解槽であり、陽極2と共に陰極3も密着させたものがゼロギャップ式電解槽である。
【0004】
すなわち、イオン交換膜法食塩電解槽では、陽極は当初よりイオン交換膜に密着しており、新たに陰極を密着させたものがゼロギャップ式電解槽である。それは、イオン交換膜の陽極側と陰極側とで電解液圧が異なるため(陰極側の液圧が陽極側の液圧より大であるため)、イオン交換膜は自然と陽極に押し付けられて密着するからである。そして、この状態から更に陰極をイオン交換膜に意図的、物理的に密着させてイオン交換膜と陰極との間の電気抵抗を小さくして、電解電圧を低下させるのがゼロギャップ式電解槽である。このようなゼロギャップ式電解槽では、イオン交換膜への陰極の密着に伴って、陽極へのイオン交換膜の押し付け圧が増加する。
【0005】
この押し付け圧の増加に対処するため、特許文献2に記載されたゼロギャップ式電解槽では、陽極は剛性を高くしてイオン交換膜に押し付けても変形の少ない剛構造とする一方、陰極は電極支持フレームなどの公差、変形による凹凸を吸収してゼロギャップを保つような柔構造とすると共に、更に背後の背板との間に導電性クッションマットを介在させることにより、イオン交換膜を傷つけることなく、イオン交換膜と陽極との間、及びイオン交換膜と陰極との間の密着性を確保するようにしている。そして、剛構造である陽極の構造に関しては、主にイオン交換膜との間における通液性を確保する観点から、開口率が25〜75%のチタニウム製エキスパンドメタル又はチタニウム製金網からなる導電性基体の表面に触媒層を形成し、触媒層表面の凹凸の高低差の最大値を5〜50μmとし、厚みを0.7〜2.0mmとすることが推奨されている。
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載されているようなゼロギャップ式電解槽用の電極ユニットを新たに設計し、作製するには多大の費用が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−262387号公報
【特許文献2】特許第4453973号公報
【特許文献3】特開昭61−37355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ゼロギャップ式電解槽に使用されるにもかかわらず、製作コストを極力抑制することができる経済性の高いゼロギャップ式電解槽用電極ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明者らは、旧来より使用されているギャップ式電解槽用電極ユニットに装着されている多くの陽極について、触媒層表面の凹凸の高低差を調査した。その結果、大多数の陽極において、触媒層表面の凹凸の高低差の最大値が、殆ど例外なく5〜50μmの範囲内に収まっていることが判明した。また、ギャップ式電解槽用電極ユニット、ゼロギャップ式電解槽用電極ユニットを問わず、陽極基体として、開口率が25〜75%のチタニウム製エキスパンドメタルは公知であり、0.7〜2.0mmという陽極厚みも至極一般的である。
【0010】
すなわち、特許文献2に記載のゼロギャップ式電解槽を構成するための剛構造の陽極は、旧来から使用されているギャップ式電解槽用電極ユニットに組み込まれている陽極と何ら変るところがないのである。なぜなら、ギャップ式電解槽用電極ユニットに使用される陽極においても、導電性基体の表面に触媒層を担持するためのアンカー効果を期待するために基体表面がブラスト処理、エッチング処理により数μmから数十μm程度の粗度で粗面化されているため、その表面に形成された触媒層の表面も、望むと望まざるとにかかわらず表面の凹凸に沿って、凹凸高低差の最大値が数μmから数十μmの範囲内で凹凸化するからである。
【0011】
ここで、導電性基体の表面粗度と触媒層表面における凹凸高低差の最大値との関係について簡単に説明する。基体表面への触媒層の被覆により基体表面の凹凸が緩和されるため、凹凸高低差の最大値で比較すれば、基体表面より触媒層表面の方で小さくなるが、同じ凹凸の大きさでも、Raなどの平均粗度と凹凸高低差の最大値とでは前者より後者の方が大きく表示される。その結果、互いが相殺し合うことになり、基体表面の平均粗度と触媒層表面における凹凸高低差の最大値とは、同程度の値となるのが通例である。
【0012】
要するに、ギャップ式電解槽用電極ユニットに組み込まれている陽極とゼロギャップ式電解槽用電極ユニットに組み込まれている陽極とは、共にイオン交換膜に密着する陽極である以上、材質上、製法上、使用上、同様の制限を受けるので、構造上、差のないことは当然なのである。このため、ギャップ式電解槽用電極ユニットとゼロギャップ式電解槽用電極ユニットとの構造上の差異は、結局のところ、陰極側の柔軟密着構造に過ぎないのである。
【0013】
そうであるならば、ゼロギャップ式電解槽用電極ユニットを作製するためには、全てを新たに作り直す必要はなく、旧来からギャップ式電解槽用電極ユニットの陽極向けに製造販売されている汎用電極及び電極支持フレームを含む多くの部分をゼロギャップ式電解槽用電極ユニット用に転用すればよく、これらの転用により、改造程度の手間でゼロギャップ式電解槽用電極ユニットを作製できるとの結論に到達した。ちなみに、ギャップ式電解槽用電極ユニットにおける陰極は、イオン交換膜に密着しないため、ニッケル製エキスパンドメタルの如く剛構造であることが多く、導電性クッションマットを背後から支持する背板として使用できる程度の剛性は持ち合わせている。
【0014】
本発明のゼロギャップ式電解槽用電極ユニットは、かかる知見を基礎として完成されたものであり、ゼロギャップ式電解槽を構成するのに使用される電極ユニットであって、ギャップ式電解槽用電極ユニット向けに作製された陽極と、ギャップ式電解槽用電極ユニット向けに作製され、隔壁を挟んで一方の側に前記陽極を支持し他方の側に陰極を支持する電極支持フレームと、当該電極支持フレームにおける陰極を背板としてその正面側に導電性弾性体を介して活性陰極を前後方向で移動可能に積層支持した陰極構造体とを具備している。
【0015】
本発明のゼロギャップ式電解槽用電極ユニットにおいては、陽極がギャップ式電解槽用電極ユニットからの転用物である。電極支持フレームもギャップ式電解槽用電極ユニットからの転用品であり、その陰極は、陰極構造体における導電性弾性体の背板として使用される。新たに必要なのは、陰極構造体における活性陰極及び導電性弾性体、並びにこれらの取付けのための電極支持フレームの若干の改造程度である。したがって、旧来から使用されているギャップ式電解槽用電極ユニットを改造する程度の手間で安価に作製することが可能となるのである。
【0016】
陽極は、通液性を有する導電性基体の表面に活性を有する触媒層を形成した活性電極であることが、電解電圧低下の観点から好ましい。陽極の導電性基体としては、耐食性等の点からチタニウム製エキスパンドメタル又はチタニウム製パンチングメタルが望ましく、経済性の観点からチタニウム製エキスパンドメタルが特に望ましい。これらの導電性基体における開口率は機械的強度と通液性の両立という観点などから25〜75%であることが望ましい。
【0017】
触媒層を含めた陽極の厚みは、機械的強度と経済性の両立という観点から0.7〜2.0mmが望ましい。すなわち、導電性基体が薄すぎると、機械的強度が低下し、表面を粗面化する際に変形し、歪みを生じる。その結果、イオン交換膜と陽極との間に隙間が生じ、電解電圧が大きくなる。また、運転時の電解圧力によって変形を生じる可能性があることからも、薄過ぎる導電性基体は好ましくない。反対に厚すぎる場合は原材料コストが上り、経済性が低下する。
【0018】
触媒層表面における凹凸高低差の最大値は、通液性確保とイオン交換膜保護を両立させる観点から5〜50μmが好ましく、10〜40μmがより好ましいが、導電性基体の表面側に触媒層を担持するためにその基体表面はブラスト処理やエッチング処理による粗面化処理を受けており、これによる基体表面の凹凸が触媒層の表面に反映されるために、特に意図しなくても5〜50μmの範囲内に収まることは前述したとおりである。
【0019】
導電性基体の表面粗さ、触媒層表面の表面粗さを測定する場合は、触針を用いた接触式と光干渉やレーザー光を利用した非接触式の測定法がある。非接触式は、測定物に傷が生じないが高価であるため、接触式による測定法が望ましい。触針を用いた接触式による表面粗さの測定にはミツトヨ製のSJ−301などを利用する。本装置は、検出器の触針が測定物表面の微細な凹凸をなぞり、その際の触針の上下方向の変位量及び横方向の移動量から表面粗さを求める方法により表面粗さを測定する。
【0020】
測定物表面の測定値については、Ra算術平均粗さや十点平均粗さなどが測定可能であるが、ここでは、平均線からもっとも高い山頂までの高さと最も深い谷底までの深さとの和を求めた最大高さを採用する。被測定領域は任意に選ぶことが可能であるが、基体表面や触媒層表面の凹凸をある程度把握するためには、10μmから300μm四方の領域を測定することが望ましい。特に、エキスパンドメタルやその表面の触媒層を測定する場合には50μmから150μm四方の領域を測定することが望ましい。
【0021】
陰極構造体における活性陰極についても、通液性を有する導電性基体の表面に活性を有する触媒層を形成した活性電極であることが、電解電圧低下の観点から好ましい。陰極の導電性基体としては、耐食性等の点からニッケル製エキスパンドメタル、ニッケル製パンチングメタル又はニッケル性ファインメッシュが望ましく、経済性及びイオン交換膜へのダメージ軽減等の観点から、柔構造であるニッケル製ファインメッシュが特に望ましい。陽極の場合と同様、これらの導電性基体における開口率は機械的強度、通液性などの観点から25〜75%であることが望ましく、触媒層を含む陰極の厚みは機械的強度と経済性の両立という観点から0.7〜2.0mmが望ましい。
【0022】
陰極構造体における導電性弾性体としては、導電性の金属細線を錯綜させてマット状としたウーブンメッシュ(導電性クッションマット)がスプリングより好ましい。なぜなら柔軟性が高く経済性が良好なためである。金属細線の材質としては陰極の材質と同じニッケルが好ましい。金属細線の線径は通常0.05〜0.3mmであり、好ましくは0.07〜0.2mmであり、更に好ましくは0.1〜0.15mmである。
【0023】
ウーブンメッシュ(導電性クッションマット)のかさ密度は0.2〜2kg/m2 が好ましく、厚みとしては負荷を受けない状態で5〜10mm、電極ユニット連結後、イオン交換膜に密着した状態で4〜8mmが好ましい。なぜなら、ある程度の機械的強度を有していないと,陰極から陽極へのイオン交換膜の押し付け圧を確保できないからである。
【発明の効果】
【0024】
本発明のゼロギャップ式電解槽用電極ユニットは、旧来から使用されているギャップ式電解槽用電極ユニット向けの多くの部材、部品を転用することにより、その電極ユニットの改造程度の手間で安価に作製することができるので、経済性に非常に優れる。また作製工期も短くなり、この点からも経済性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態を示すゼロギャップ式電解槽用電極ユニットの主要部の概略構造を示す縦断側面である。
【図2】同主要部の概略構造を示す横断平面図で、図1中のA−A線断面矢示図である。
【図3】同主要部の詳細構造を示す縦断側面図で、図1中のB部拡大図である。
【図4】同主要部の別の詳細構造を示す縦断側面図で、図1中のB部拡大図に相当する。
【図5】ギャップ式電解槽用電極ユニットの主要部の詳細構造を示す縦断側面である。
【図6】ゼロギャップ式電解槽用電極ユニットの主要部構造が図3、図4である場合の槽電圧(電解電圧)の経時変化を、図5のギャップ式電解槽用電極ユニットを使用したときと比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
図1〜図3に示されたゼロギャップ式電解槽用電極ユニットは、ゼロギャップ式のイオン交換膜法食塩電解槽に使用されるものであり、ここでは、所定数の電極ユニットUが同一極性で縦列的に配置され、隣接するユニットU,U間にイオン交換膜Iが配置されることにより、電解槽を構成する。
【0028】
個々の電極ユニットUは、縦列方向に直角で垂直な隔壁11の一方の側に剛構造の陽極20を支持し、他方の側に陰極構造体30を支持する電極支持フレーム10を備えている。電極ユニットUにおける電極支持フレーム10は、旧来のギャップ式電解槽用電極ユニットに組み込まれることを前提として作製されたものであり、垂直な隔壁11の一方の側に所定の隙間をあけて剛構造の陽極20を支持し、他方の側に元の陰極を含む陰極構造体30を支持する構成となっている。
【0029】
ここにおける陽極20の支持のために、垂直な隔壁11の一方の表面に、横方向に所定間隔で配置された垂直な複数の縦リブ12が取付けられており、それらの先端に陽極20が取付けられている。陽極20とその背後の隔壁11との間が陽極室20Aであり、陽極室20Aにおいて電解液が横方向で自由に流通するよう、個々の縦リブ12には、複数の貫通孔12aが設けられている。
【0030】
同様に、電極支持フレーム10の垂直な隔壁11の他方の表面には、横方向に所定間隔で配置された垂直な複数の縦リブ13が取付けられており、それらの先端に陰極構造体30が取付けられている。陰極構造体30とその背後の隔壁11との間が陰極室30Aであり、陰極室30Aにおいて電解液が横方向で自由に流通するよう、個々の縦リブ13には、複数の貫通孔13aが設けられている。
【0031】
電極ユニットUにおける剛構造の陽極20は、電極支持フレーム10と同様、旧来のギャップ式電解槽用電極ユニットに組み込まれることを前提として作製されたものであり、電極ユニットUが縦列配置された状態で、隣接する電極ユニットUにおける陰極構造体30との間にイオン交換膜Iを挟み込む。剛構造の陽極20は、通液性を有する高剛性で板状の導電性基体、ここでは開口率が25〜75%のチタニウム製エキスパンドメタルからなる導電性基体21と、導電性基体21の正面側の表面に形成された、活性を有する触媒層22とからなる。
【0032】
剛構造の陽極20の厚みは0.7〜2.0mm、導電性基体21の厚みは0.7〜2.0mm、触媒層22の厚みは5〜50μmである。また、触媒層表面の凹凸高低差の最大値は5〜50μmである。
【0033】
電極ユニットUにおける陰極構造体30は、電極支持フレーム10の縦リブ13に直接取付けられた元の陰極を背板31として、その正面側に導電性弾性体32を介して柔構造の活性陰極33を積層した3層構造になっている。背板31となる元の陰極は、ここでは材質上の制限から、ニッケル製エキスパンドメタルからなり、剛構造である。導電性弾性体32は、ここでは導電性の細線(ニッケル細線)を錯綜させて形成したクッションマット(ウーブンメッシュ)であり、柔構造の活性陰極33を、正面側の電極ユニットUとの間に配置されたイオン交換膜Iに弾性的に接触させるのに寄与する。柔構造の活性陰極33は、可撓性を有する導電性基体33a、ここでは開口率が25〜75%のニッケル製ファインメッシュからなる導電性基体33aの正面側の表面に、活性を有する触媒層33bを形成した活性電極である。
【0034】
柔構造の活性陰極33の厚みは0.7〜2.0mm、活性陰極33における導電性基体33aの厚みは0.7〜2.0mm、触媒層33bの厚みは1.0〜50μmである。同じく剛構造の背板31の厚みは0.7〜2.0mmである。
【0035】
次に、図1〜図3に示されたゼロギャップ式電解槽用電極ユニットの機能について説明する。
【0036】
電解槽内に所定数の電極ユニットUが、間にイオン交換膜Iを挟みながら、同じ極性で縦列配置され、配列方向に所定の荷重が付加されることにより、電解槽を構成する。これにより、隣接する電極ユニットU,U間のイオン交換膜Iが、一方の側の電極ユニットUにおける剛構造の陽極20に対して、他方の側の電極ユニットUにおける陰極構造体30により、所定荷重で押し付けられる。具体的には、陰極構造体30において、背板31の正面側に導電性弾性体32を介して活性陰極33を配置したことにより、その活性陰極33がイオン交換膜Iに弾性的に押圧される。
【0037】
しかも、元の陰極からなる背板31はニッケル製エキスパンドメタルを基体とする剛構造である一方、新たな活性陰極33は、ニッケル製ファインメッシュを基体とする柔構造であることから、イオン交換膜Iに対する電極押し付け荷重の分散効果が大きい。その結果、旧来のギャップ式電解槽用電極ユニットに組み込まれる剛構造の陽極20をそのまま使用しているにもかかわらず、格別の問題を生じることはない。
【0038】
運転中は陽極室20A内に食塩水が供給され、陰極室30A内に水が供給される。この状態で、電気的に直列接続された所定数の電極ユニットUに所定の電圧が印加される。これにより、陽極室20内で塩素ガス(Cl2 )が発生し、陰極室30内で水酸化ナトリウム(NaOH)及び水素ガス(H2 )が発生する。そして、活性陰極33をイオン交換膜Iに密着させたゼロギャップ構造が採用されていることにより、この間の電圧上昇が阻止され、槽電圧(電解電圧)が下がる。
【0039】
個々の電極ユニットUにおいては、電極支持フレーム10、陽極20及び陰極構造体30における背板31は、旧来のギャップ式電解槽用電極ユニットからの転用物であり、背板31の正面側に導電性弾性体32を介して活性陰極33を支持する程度の改造のみで、電極ユニットUが作製されるので、作製コストが非常に安い。
【0040】
図4に示されたゼロギャップ式電解槽用電極ユニットは、陰極構造体30における活性陰極33がニッケル製ファインメッシュからなる導電性基体33aのみからなり、その表面に触媒層33bが形成されていない点が、図1〜図3に示されたゼロギャップ式電解槽用電極ユニットと異なる。イオン交換膜Iと接する活性陰極33が触媒層33bを有しない分、槽電圧(電解電圧)は上昇するが、電極ユニットUがギャップ式電解槽用電極ユニットからの転用物により安価に作製できることは、図1〜図3に示されたゼロギャップ式電解槽用電極ユニットと同じである。
【実施例】
【0041】
次に、本発明の実施例を説明し、比較例と対比することにより、本発明の効果を明らかにする。
【0042】
(比較例)
1991年3月8日から用途を限定せずに販売されていた2種類の汎用電極を陽極及び陰極に使用したギャップ式電解槽を比較試験に用いた。その電解槽は、イオン交換膜Iを挟みながら電極ユニットUを縦列配置することにより構成されている。個々の電極ユニットUは、図5に示すように、図示されない電極支持フレームにより隔壁の一方の側に陽極2を支持し、他方の側に陰極3を支持し、縦列配置されて電解槽を構成すると共に、対峙する両ユニットの陽極2と陰極3との間の極間距離Dを大きくして、その極間に配置されたイオン交換膜Iに対して陽極2が接触状態、陰極3が非接触状態(所定のギャップGをもって対向する状態)となるように構成されている。電極ユニットにおける電極支持フレームの材質はSUS310Sである。
【0043】
汎用の前記陽極2は、開口率が50%のチタニウム製エキスパンドメタルを導電性基体2aとする通液型の剛構造電極であり、次のようにして作製されていた。その基体の表面を♯180のアルミナでブラスト処理し、その後10%の90℃のシュウ酸中で3時間エッチング処理した。エッチング後の基体表面の平均粗度は20μmであった。こうして粗面化された導電性基体2aの表面に白金族系金属を含む酸性溶液を塗布し、100℃で10分間の乾燥処理を行った後、500℃で20分間の焼成処理を行った。この塗布−乾燥−焼成のプロセスを繰り返して、基体表面に活性を有する厚みが約10μmの触媒層2bを形成することにより、前記陽極2は作製されている。触媒層2bを含む陽極2の厚みは1mmである。触媒層2bの表面の凹凸高さの最大差は、エッチング後の基体表面の平均粗度と同じ20μmであった。
【0044】
一方、陰極3は、開口率が50%のニッケル製エキスパンドメタルを導電性基体とする通液型の剛構造電極である。その導電性基体の表面に活性炭分散メッキ処理を行うことにより、陰極3は作製されている。陰極3の厚みは1mmである。
【0045】
電極ユニットを連結して構成されたギャップ式電解槽における極間距離Dは2mmである。極間に陽極に接して配置されるイオン交換膜Iは、デュポン製陽イオン交換膜Nafion2030(Nafionは登録商標)であり、厚みは約150μmである。
【0046】
構成されたギャップ式電解槽内の各電極ユニットにおける陽極室に電解液として250g/Lの食塩水、陰極室に32%の水酸化ナトリウム溶液を供給し、液温80℃、電流密度4kA/m2 の条件で電解運転を20年間行っている。比較試験開始からの槽電圧(電解電圧)の経時変化を図6に示す。槽電圧(電解電圧)は当初3.22Vであり、試験開始から360日経過後には10mV上昇した。
【0047】
(実施例1)
前記比較例で使用した使用期間20年のギャップ式電解槽用電極ユニットを、図1〜図3に示すゼロギャップ式電解槽用電極ユニットUに改造した。具体的には、陽極20及び電極支持フレーム10は、ギャップ式電解槽用電極ユニットにおける陽極2及び電極支持フレームをそのまま使用した。これ以外は、電極支持フレームにおける剛構造の陰極3を背板31としてその正面側に、ニッケルウーブンメッシュからなるマット状の導電性弾性体32を介して活性陰極33を前後動可能に支持した。導電性弾性体32を構成するニッケルウーブンメッシュの線径は0.1mm、圧縮力を受けない状態での弾性体厚は約8mmである。
【0048】
活性陰極33は、開口率が50%のニッケル製ファインメッシュを導電性基体33aとする柔構造電極である。その導電性基体33aの表面を♯180のアルミナでブラスト処理し、その後10%塩酸中で60分間、室温でエッチング処理した。こうして粗面化された導電性基体の表面に白金族系金属を含む酸性溶液を塗布し、100℃で10分間の乾燥処理を行った後、500℃で10分間の焼成処理を行った。この塗布−乾燥−焼成のプロセスを繰り返して、基体表面に活性を有する厚みが約5μmの触媒層33bを形成し、活性陰極33を完成させた。触媒層33bを含む活性陰極33の厚みは1mmである。
【0049】
陽極20と新たに作製された陰極構造体30との間にイオン交換膜Iを挟み、且つそのイオン交換膜Iに陰極構造体30を密着させながら電極ユニットUを縦列配置することにより、ゼロギャップ式電解槽を構成した。この状態での陰極構造体30における導電性弾性体32の厚みは約6mmである。
【0050】
比較例と同じ条件で電解運転を行った。槽電圧(電解電圧)の経時変化を図6に示す。ゼロギャップ化及び陰極の活性化により、運転開始当初の槽電圧(電解電圧)は2.96Vであり、比較例に比べて260mV低下した。運転開始から360日経過後の電圧上昇は僅か10mVであった。
【0051】
(実施例2)
実施例1において、陽極20の導電性基体21として使用されるチタニウム製エキスパンドメタルの粗面化処理後の平均粗度を60μmとした。完成された陽極20における触媒層22表面の凹凸高さの最大差は、粗面化処理後の基体表面の平均粗度と同じ60μmであった。運転開始からの槽電圧(電解電圧)の経時変化を図6に示す。槽電圧(電解電圧)は比較例と比べて240mV低下した。
【0052】
(実施例3)
実施例1において、活性陰極33の導電性基体33aの表面に形成された触媒層33bを省略した。すなわち、図4に示すゼロギャップ式電解槽用電極ユニットを使用した。運転開始からの槽電圧(電解電圧)の経時変化を図6に示す。槽電圧(電解電圧)は、比較例と比べて210mV低下した。
【符号の説明】
【0053】
U 電極ユニット
I イオン交換膜
D ギャップ式電解槽における極間距離
G ギャップ式電解槽における陰極とイオン交換膜との間のギャップ
10 電極支持フレーム
11 隔壁
12,13 縦リブ
12a,13a 貫通孔
2,20 陽極
20A 陽極室
30 陰極構造体
30A 陰極室
31 背板
32 導電性弾性体
3 陰極
33 活性陰極


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼロギャップ式電解槽を構成するのに使用される電極ユニットであって、ギャップ式電解槽用電極ユニット向けに作製された陽極と、ギャップ式電解槽用電極ユニット向けに作製され、隔壁を挟んで一方の側に前記陽極を支持し他方の側に陰極を支持する電極支持フレームと、当該電極支持フレームにおける陰極を背板としてその正面側に導電性弾性体を介して陰極を前後方向で移動可能に積層支持した陰極構造体とを具備するゼロギャップ式電解槽用電極ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のゼロギャップ式電解槽用電極ユニットにおいて、陽極は、通液性を有する導電性基体の表面に活性を有する触媒層を形成した活性電極であるゼロギャップ式電解槽用電極ユニット。
【請求項3】
請求項2に記載のゼロギャップ式電解槽用電極ユニットにおいて、陽極は、導電性基体として開口率が25〜75%のチタニウム製エキスパンドメタル又はチタニウム製パンチングメタルを用いた剛構造であり、且つ触媒層を含めた厚みが0.7〜2.0mmであると共に、触媒層表面の凹凸の高低差の最大値が5〜50μmであるゼロギャップ式電解槽用電極ユニット。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載のゼロギャップ式電解槽用電極ユニットにおいて、陰極構造体における陰極は、通液性を有する導電性基体として開口率が25〜75%のニッケル製エキスパンドメタル、ニッケル製パンチングメタル又はニッケル製ファインメッシュを用い、その表面に活性を有する触媒層を形成した活性電極であるゼロギャップ式電解槽用電極ユニット。
【請求項5】
請求項4に記載のゼロギャップ式電解槽用電極ユニットにおいて、陰極構造体における陰極は、ニッケル製ファインメッシュを導電性基体とする柔構造の活性電極であるゼロギャップ式電解槽用電極ユニット。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載のゼロギャップ式電解槽用電極ユニットにおいて、陰極構造体における導電性弾性体は、導電性の金属細線を錯綜させてマット状としたウーブンメッシュであるゼロギャップ式電解槽用電極ユニット。
【請求項7】
請求項6に記載のゼロギャップ式電解槽用電極ユニットにおいて、金属細線は線径が0.05〜0.3mmのニッケル線であるゼロギャップ式電解槽用電極ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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