説明

ソイルセメントスラリーの流動化方法

【課題】ソイルセメントスラリーに充分な流動性及び流動保持性を持たせることができ、また同時に起泡性を抑えてセメントミルクと土壌との均一混合を促すことにより、得られるソイルセメント硬化体に充分な止水性及び強度等を発現させることができるソイルセメントスラリーの流動化方法を提供する。
【解決手段】A成分:イソブチレンと無水マレイン酸との共重合物をアルカリ加水分解した質量平均分子量2000〜50000の水溶性ビニル共重合体、B成分:糖類、オキシカルボン酸及びオキシカルボン酸の塩から選ばれる一つ又は二つ以上、C成分:特定の脂肪族ポリエーテル、D成分:特定のポリエーテル系消泡剤、以上のA成分、B成分、C成分及びD成分から成り、該A成分を50〜95質量%、該B成分を2〜35質量%、該C成分を0.1〜20質量%及び該D成分を0.01〜5質量%含有して成る流動化剤を、土壌1m当たり0.5〜25kgの割合となるよう、セメントミルクに含有させて用いた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はソイルセメントスラリーの流動化方法に関する。山留め工事、地下止水工事、軟弱地盤改良工事等では、工事現場において、セメントミルクと原位置土壌とを攪拌混合して硬化させるソイルセメント壁工法が広く採用されている。かかる工法では、1)一定の作業時間内における応力負担材(H鋼)の挿入性を確保しつつ、地中へのセメントミルクの注入率を下げて廃棄することとなる建設汚泥の発生量を抑えるため、セメントミルクと土壌とを混合したソイルセメントスラリーに充分な流動性と流動保持性を持たせること、2)起泡性を抑え、またセメントミルクと土壌との均一混合を促して、ソイルセメント壁に充分な止水性及び強度等を発現させることが要求されている。本発明はかかる要求に応えるソイルセメントスラリーの流動化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ソイルセメントスラリーの流動化方法として、各種の流動化剤を用いる方法が知られている(例えば特許文献1〜3参照)。しかし、これらの従来法では、ソイルセメント壁工法における前記した要求に充分に応えることができないという問題がある。
【0003】
【特許文献1】特開2002−3843号公報
【特許文献2】特開2002−114550号公報
【特許文献3】特開2006−298726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、ソイルセメントスラリーに充分な流動性及び流動保持性を持たせることができ、また起泡性を抑えてセメントミルクと土壌との均一混合を促すことにより、得られるソイルセメント硬化体に充分な止水性及び強度等を発現させることができるソイルセメントスラリーの流動化方法を提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、特定の4成分から成る流動化剤を、土壌に対して所定割合となるよう、セメントミルクに含有させて用いる方法が正しく好適であることを見出した。
【0006】
すなわち本発明は、下記のA成分、B成分、C成分及びD成分から成り、該A成分を50〜95質量%、該B成分を2〜35質量%、該C成分を0.1〜20質量%及び該D成分を0.01〜5質量%含有して成る流動化剤を、土壌1m当たり0.5〜25kgの割合となるよう、セメントミルクに含有させて用いることを特徴とするソイルセメントスラリーの流動化方法に係る。
【0007】
A成分:イソブチレンと無水マレイン酸との共重合物をアルカリ加水分解した質量平均分子量2000〜50000の水溶性ビニル共重合体
【0008】
B成分:糖類、オキシカルボン酸及びオキシカルボン酸の塩から選ばれる一つ又は二つ以上
【0009】
C成分:下記の化1で示される脂肪族ポリエーテル

【0010】
【化1】

【0011】
D成分:下記の化2で示されるポリエーテル系消泡剤
【0012】
【化2】

【0013】
化1及び化2において、
:炭素数8〜20の脂肪族炭化水素基
:炭素数12〜20の脂肪族炭化水素基
:分子中に2〜20個のオキシエチレン単位で構成されたポリオキシエチレン基を有するポリエチレングリコールから全ての水酸基を除いた残基
:分子中に合計23〜70個のオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位とで構成され且つ該オキシエチレン単位と該オキシプロピレン単位とがブロック状に付加したポリオキシアルキレン基を有するポリアルキレングリコールから全ての水酸基を除いた残基
【0014】
本発明に係るソイルセメントスラリーの流動化方法(以下単に本発明の流動化方法という)では、セメントミルクと土壌とを混合してソイルセメントスラリーとするときに、該セメントミルクに流動化剤を含有させて用いる。かかるセメントミルクに用いるセメントとしては、普通ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント等が挙げられるが、なかでも高炉セメントB種が好ましい。セメントの使用量は、セメントミルクと土壌を混合してソイルセメントスラリーとするときに、土壌1m当たり通常は100〜500kgとなるようにするが、好ましくは150〜400kgとなるようにする。セメントミルクの調製時には、セメントの他に、セメントミルクの分離防止やソイルセメントスラリーの水分逸散防止等の目的で更にベントナイトを用いるのが好ましい。ベントナイトを用いる場合、その使用量は、土壌1m当たり通常は1〜50kgとなるようにし、好ましくは3〜30kgとなるようにする。セメントミルクの水/セメント比は、これと混合する土壌の性状によっても異なり、通常は100〜350%とするが、155〜330%とするのが好ましい。
【0015】
本発明の流動化方法において、以上説明したようなセメントミルクに含有させて用いる流動化剤はA成分、B成分、C成分及びD成分から成るものである。A成分は、イソブチレンと無水マレイン酸との共重合物をアルカリ加水分解した質量平均分子量2000〜50000の水溶性ビニル共重合体である。ここで質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ法(以下、単にGPC法という)で測定したプルラン換算の質量平均分子量を意味する。
【0016】
イソブチレンと無水マレイン酸との共重合及び得られる共重合物のアルカリ加水分解は、公知の方法で行なうことができる。例えば、溶媒としてエチルベンゼン、無水マレイン酸、ラジカル連鎖移動剤及びラジカル開始剤をオートクレーブに仕込み、反応系を窒素置換した後、イソブチレンを圧入し、温度60〜120℃で圧力2〜5kg/cm2の条件下に2〜10時間ラジカル重合させて、共重合物を沈殿物として得た後、この共重合物をアルカリ水溶液で加水分解する方法が挙げられる。
【0017】
所望の共重合物を得るためには、ラジカル開始剤やラジカル連鎖移動剤の種類及び使用量、溶媒の種類及び使用量、重合温度、重合時間等を適宜選択する。ここで用いるラジカル開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、クメンハイドロパーオキサイド等の非水系の開始剤等が挙げられる。
【0018】
イソブチレンと無水マレイン酸との共重合物において、双方の共重合比率は、
イソブチレン/無水マレイン酸=45/55〜55/45(モル比)となるようにするのが好ましく、できるだけ50/50(モル比)に近い比率となるようにするのがより好ましい。
【0019】
イソブチレンと無水マレイン酸との共重合物をアルカリ加水分解するときのアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物が好ましく、工業的見地から安価な水酸化ナトリウムの水溶液がより好ましい。アルカリ加水分解は、結果として部分中和物が得られる場合であっても又は完全中和物が得られる場合であってもよい。
【0020】
A成分は、イソブチレンと無水マレイン酸との共重合物をアルカリ加水分解した質量平均分子量2000〜50000の水溶性ビニル共重合体であるが、質量平均分子量は5000〜35000の水溶性共重合体とするのが好ましい。
【0021】
B成分は、糖類、オキシカルボン酸及びオキシカルボン酸の塩から選ばれる一つ又は二つ以上である。糖類としては、ショ糖、グルコース、フラクトース、ガラクトース、オリゴ糖、糖蜜類等が挙げられ、またオキシカルボン酸としては、グルコン酸、クエン酸等が挙げられ、かかるオキシカルボン酸の塩としては、グルコン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。なかでもB成分としては、A成分との溶解安定性や腐敗防止性の観点から、ショ糖が好ましい。
【0022】
C成分は、化1で示される脂肪族ポリエーテルである。化1中のRとしては、1)オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ラウリル基(ドデシル基)、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等の炭素数8〜20の飽和脂肪族炭化水素基、2)11−ドデセニル基、8−ヘキサデセニル基、9−オクタデセニル基、11−エイコセニル基等の炭素数8〜20の不飽和脂肪族炭化水素基等が挙げられるが、なかでも炭素数10〜20の飽和脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数12〜16の飽和脂肪族炭化水素基がより好ましく、ラウリル基が特に好ましい。
【0023】
また化1中のAは、分子中に2〜20個のオキシエチレン単位で構成されたポリオキシエチレン基を有するポリエチレングリコールから全ての水酸基を除いた残基とするが、分子中に4〜12個のオキシエチレン単位で構成されたポリオキシエチレン基を有するポリエチレングリコールから全ての水酸基を除いた残基とするのが好ましい。以上説明した化1で示される脂肪族ポリエーテルから成るC成分は、土壌中の粘土塊粒子にぬれ性や浸透性を付与するための表面張力低下剤として作用し、主に土粒子の分散剤として作用する前記したA成分及びB成分の練り混ぜ性能を助長する。
【0024】
D成分は、化2で示されるポリエーテル系消泡剤である。化2中のRとしては、1)ラウリル基(ドデシル基)、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等の炭素数12〜20の飽和脂肪族炭化水素基、2)11−ドデセニル基、8−ヘキサデセニル基、9−オクタデセニル基、11−エイコセニル基等の炭素数12〜20の不飽和脂肪族炭化水素基等が挙げられるが、なかでも炭素数12〜20の不飽和脂肪族炭化水素基が好ましく、9−オクタデセニル基がより好ましい。
【0025】
また化2中のAは、分子中にオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位とで構成され且つ該オキシエチレン単位と該オキシプロピレン単位とがブロック状に付加したポリオキシアルキレン基を有するポリアルキレングリコールから全ての水酸基を除いた残基である。Aのポリオキシアルキレン基を構成するオキシエチレン単位及びオキシプロピレン単位の繰り返し数は合計で23〜70とするが、25〜60とするのが好ましい。以上説明した化2で示されるポリエーテル系消泡剤は、炭素数12〜20の脂肪族アルコール1モルに対してエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを合計23〜70モルの割合でブロック状に付加させる公知の方法で合成できる。
【0026】
本発明の流動化方法において、セメントミルクに含有させて用いる流動化剤は、以上説明したA成分、B成分、C成分及びD成分から成るものである。A成分、B成分、C成分及びD成分の含有割合は、A成分50〜95質量%、B成分2〜35質量%、C成分0.1〜20質量%、D成分0.01〜5質量%(合計100質量%)とするが、A成分60〜90質量%、B成分9〜30質量%、C成分0.5〜17質量%、D成分0.1〜3質量%(合計100質量%)とするのが好ましい。流動化剤中のA成分、B成分、C成分及びD成分の含有割合は、以上のような含有割合の範囲内にて、それを含有させたセメントミルクと混合する土壌の性状との関係で適宜選択するのが好ましい。
【0027】
以上説明した流動化剤は、その水溶液がアルカリ領域でより優れた効果を発揮する。したがって流動化剤は、その固形分濃度1質量%の水溶液のpHが7.0〜11の範囲内となるものが好ましく、7.5〜10.5の範囲内となるものがより好ましい。かかる流動化剤のpHの調整は例えばアルカリ金属水酸化物を用いて行なうことができる。
【0028】
また流動化剤は、その固形分濃度1質量%の水溶液の20℃における表面張力が40mN/m以下となるものが好ましく、25〜40mN/mの範囲内となるものがより好ましい。かかる流動化剤の表面張力の調整は例えば前記C成分の含有割合を加減することによって行なうことができる。
【0029】
本発明の流動化方法では、予め流動化剤を含有させておいたセメントミルクを調製しておき、かかるセメントミルクと土壌とを混合してソイルセメントスラリーとする。この場合、流動化剤の使用量は、土壌1m当たり0.5〜25kgの割合となるようにするが、1〜10kgの割合となるようにするのが好ましい。
【0030】
本発明の流動化剤方法では、流動化剤の使用に際して、合目的的に他の剤を併用することができる。かかる他の剤としては、防腐剤、凝結促進剤、防水剤等が挙げられる。以上、本発明の流動化方法について説明したが、本発明の流動化方法は、工事現場においてセメントミルクと原位置土壌とを撹拌混合して硬化させるソイルセメント壁工法に適用する場合に効果の発現が高い。
【発明の効果】
【0031】
本発明の流動化方法によると、ソイルセメントスラリーに充分な流動性及び流動保持性を持たせることができ、また同時に起泡性を抑えてセメントミルクと土壌との均一混合を促すことにより、得られるソイルセメント硬化体に充分な止水性及び強度等を発現させることができる。これらの効果は、土壌が粘土分やシルト分を多く含む粘性のものであっても発揮される。
【0032】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明が該実施例に限定されるというものではない。なお、以下の実施例等において、別に記載しない限り、%は質量%を、また部は質量部を意味する。
【実施例】
【0033】
試験区分1(A成分としての水溶性ビニル共重合体の合成)
・水溶性ビニル共重合体(a−1)の合成
無水マレイン酸49g、溶媒としてエチルベンゼン300g、分子量調節剤として3−メルカプトプロピオン酸0.3g及び重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル1gをオートクレーブに仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換した。次に、イソブチレン28gを圧入した後、反応系の温度を85℃まで加温し、85℃に保ちながらラジカル重合反応を6時間継続して反応を完結した。反応終了後、反応系の温度を室温まで冷却し、脱気後、攪拌を止めて沈殿した共重合物を取り出し、濾過乾燥して淡黄色粉末状の共重合物75gを得た。この共重合物を分析したところ、無水マレイン酸/イソブチレン=50/50(モル比)の割合で共重合したものであった。この共重合物50g、30%水酸化ナトリウム水溶液51g及び水道水102gを攪拌装置及び冷却コンデンサーのついたフラスコに入れ、攪拌しながら加温して、共重合物をアルカリ加水分解した水溶性ビニル共重合体(a−1)の30%水溶液を得た。この水溶性ビニル共重合体をGPCで分子量測定したところ、質量平均分子量が20100(プルラン換算)であった。
【0034】
・水溶性ビニル共重合体(a−2)、(a−3)、(ar−1)及び(ar−2)の合成
水溶性ビニル共重合体(a−1)の合成と同様にして、水溶性ビニル共重合体(a−2)、(a−3)、(ar−1)及び(ar−2)を合成した。以上で合成した各水溶性ビニル共重合体の内容を表1に示した。
【0035】
【表1】

【0036】
試験区分2(流動化剤の調製)
・流動化剤(P−1)の調製
A成分として試験区分1で合成した水溶性ビニル共重合体(a−1)の30%水溶液250部、B成分としてショ糖(b−1)の30%水溶液63部、C成分としてポリオキシエチレン(オキシエチレン単位の繰り返し数が6個、以下6モルと略記)ラウリルモノエーテル(c−1)の30%水溶液17部及びD成分としてポリエーテル系消泡剤(d−1)の30%水懸濁液3部を混合して流動化剤(P−1)の30%水溶液を調製した。流動化剤(P−1)の固形分濃度1%水溶液のpH及び温度20℃での表面張力を測定したところ、9.9及び29.9mN/mであった。
【0037】
・流動化剤(P−2)〜(P−13)及び(R−1)〜(R−12)の調製
流動化剤(P−1)の調製と同様にして、流動化剤(P−2)〜(P−13)及び(R−1)〜(R−12)を調製した。以上で調製した各流動化剤の内容を表2にまとめて示した。
【0038】
【表2】

【0039】
表2において、
*1:固形分濃度1%水溶液のpH
*2:固形分濃度1%水溶液の20℃における表面張力
a−1〜a−3,ar−1及びar−2:試験区分1で合成した水溶性ビニル重合体
ar−3:ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物
b−1:ショ糖
b−2:グルコース
b−3:グルコン酸ナトリウム
b−4:グルコン酸
c−1:ポリオキシエチレン(6モル)モノラウリルエーテル(HLB価11.7)
c−2:ポリオキシエチレン(9モル)モノセチルエーテル(HLB価12.4)
c−3:ポリオキシエチレン(15モル)モノオレイルエーテル(HLB価14.2)
d−1:α−オクタデセニル−ω−ヒドロキシ−ポリオキシエチレン(6モル)ポリオキシプロピレン(32モル)
d−2:α−オクタデセニル−ω−ヒドロキシ−ポリオキシエチレン(9モル)ポリオキシプロピレン(48モル)
d−3:α−ラウリル−ω−ヒドロキシ−ポリオキシエチレン(3モル)ポリオキシプロピレン(32モル)
【0040】
試験区分3(ソイルセメントスラリーの調製)
・比較例1
高炉セメントB種(密度=3.04g/cm)202g、水650g及びベントナイト14gをホバートミキサーに入れて均一に混合し、セメントミルクを調製した。このセメントミルクに表3に記載のシルト質粘土を主成分とする掘削土1690g(0.001m相当)を加えて混合し、表4に記載の配合No.1に相当するソイルセメントスラリーを調製した。調製したソイルセメントスラリーは、試験区分4の物性評価における直後フロー値が212mmのもので、調製直後においては流動化剤を添加しなくても施工現場でH鋼が挿入可能な流動性を有するソイルセメントスラリーであった。
【0041】
・実施例1〜16及び比較例2〜14
高炉セメントB種(密度=3.04g/cm)199g、水419g、ベントナイト16g及び表5に記載の使用量となる量の流動化剤をホバートミキサーに入れて均一に混合し、セメントミルクを調製した。このセメントミルクに表3に記載の物性値を有する掘削土1690gを加えて混合し、表4に記載の配合No.2に相当するソイルセメントスラリーを調製した。
【0042】
・実施例17〜29及び比較例15〜25
高炉セメントB種(密度=3.04g/cm)190g、水296g、ベントナイト17g及び表6に記載の使用量となる量の流動化剤をホバートミキサーに入れて均一に混合し、セメントミルクを調製した。このセメントミルクに表4に記載の物性値を有する掘削土1690gを加えて混合し、表4に記載の配合No.3に相当するソイルセメントスラリーを調製した。
【0043】
・実施例30〜42及び比較例26〜37
高炉セメントB種(密度=3.04g/cm)190g、水296g及び表6に記載の使用量となる量の流動化剤をホバートミキサーに入れて均一に混合し、セメントミルクを調製した。このセメントミルクに表3に記載の物性値を有する掘削土1690gを加えて混合し、表4に記載の配合No.4に相当するソイルセメントスラリーを調製した。
【0044】
【表3】












【0045】
【表4】

【0046】
試験区分4(調製したソイルセメントスラリーの評価)
試験区分3で調製した各例のソイルセメントスラリーについて、フロー値、フロー残存率、空気量を次のように求め、結果を表5〜表7にまとめて示した。また各例のソイルセメントスラリーから得た硬化体について、透水比及び一軸圧縮強度をつぎのように求め、結果を表5〜表7にまとめて示した。
【0047】
・フロー値:JIS−R5201に準拠し、練り混ぜ直後と180分後にフロー試験を行い、15回落差後のフロー値(mm)を測定した。
【0048】
・フロー残存率:(180分静置後のフロー値/練り混ぜ直後のフロー値)×100で求めた。
【0049】
・空気量:JIS−A1171に準拠して求めた。
【0050】
・透水比:JIS−A1404に準拠し、直径150mm×高さ40mmの金属製型枠にソイルセメントスラリーを充填した後、ポリエチレンフィルムで表面を覆って、温度20℃、湿度80%の恒温室に28日間養生し、脱型後に表面を平滑に仕上げして、試験体を作製した。この試験体の上下両面の中央に、直径5cmの円孔をもつ厚さ1cmのゴムガスケットを当て、均一に締め付けた後、上面から9.8kPaの水圧を1時間かけて透水試験を行った。透水の目安として、下記の透水比を算出した。ここで透水比の数値が小さいほど遮水性が優れていることを意味する。
透水比=各例のソイルセメントスラリーから作製した試験体の透水量(g)/比較例1のソイルセメントスラリーから作製した試験体の透水量(g)
【0051】
・一軸圧縮強度試験:JIS−A1108に準拠し、直径50mm×高さ100mmの型枠を用いて成形した成型品について、材齢28日の圧縮強度(N/mm2)を測定した。尚、この試験では、ソイルセメント壁工法における目標値を0.2〜2.0N/mm2の強度範囲とした。









【0052】
【表5】
















【0053】
【表6】





















【0054】
【表7】

【0055】
表5〜表7において、
*3:土壌1m当たりに使用した流動化剤の固形分換算値(kg)
*4:材齢28日の一軸圧縮強度
R−13:ポリアクリル酸ナトリウム(質量平均分子量12000)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のA成分、B成分、C成分及びD成分から成り、該A成分を50〜95質量%、該B成分を2〜35質量%、該C成分を0.1〜20質量%及び該D成分を0.01〜5質量%含有して成る流動化剤を、土壌1m当たり0.5〜25kgの割合となるよう、セメントミルクに含有させて用いることを特徴とするソイルセメントスラリーの流動化方法。
A成分:イソブチレンと無水マレイン酸との共重合物をアルカリ加水分解した質量平均分子量2000〜50000の水溶性ビニル共重合体
B成分:糖類、オキシカルボン酸及びオキシカルボン酸の塩から選ばれる一つ又は二つ以上
C成分:下記の化1で示される脂肪族ポリエーテル
【化1】

D成分:下記の化2で示されるポリエーテル系消泡剤
【化2】

(化1及び化2において、
:炭素数8〜20の脂肪族炭化水素基
:炭素数12〜20の脂肪族炭化水素基
:分子中に2〜20個のオキシエチレン単位で構成されたポリオキシエチレン基を有するポリエチレングリコールから全ての水酸基を除いた残基
:分子中に合計23〜70個のオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位とで構成され且つ該オキシエチレン単位と該オキシプロピレン単位とがブロック状に付加したポリオキシアルキレン基を有するポリアルキレングリコールから全ての水酸基を除いた残基)
【請求項2】
流動化剤が、A成分を60〜90質量%、B成分を9〜30質量%、C成分を0.5〜17質量%及びD成分を0.1〜3質量%含有して成るものである請求項1記載のソイルセメントスラリーの流動化方法。
【請求項3】
A成分が、イソブチレンと無水マレイン酸との共重合物をアルカリ加水分解した質量平均分子量5000〜35000の水溶性ビニル共重合体である請求項1又は2記載のソイルセメントスラリーの流動化方法。
【請求項4】
B成分が、ショ糖である請求項1〜3のいずれか一つの項記載のソイルセメントスラリーの流動化方法。
【請求項5】
C成分が、化1中のRがラウリル基、Aが分子中に4〜12個のオキシエチレン単位で構成されたポリオキシエチレン基を有するポリエチレングリコールから全ての水酸基を除いた残基である場合のものである請求項1〜4のいずれか一つの項記載のソイルセメントスラリーの流動化方法。
【請求項6】
流動化剤が、その固形分濃度1質量%の水溶液のpHが7.0〜11の範囲内となり且つ該水溶液の20℃における表面張力が40mN/m以下となるものである請求項1〜5のいずれか一つの項記載のソイルセメントスラリーの流動化方法。
【請求項7】
セメントミルクが、セメントとして高炉セメントB種を用いたものである請求項1〜6のいずれか一つの項記載のソイルセメントスラリーの流動化方法。
【請求項8】
更にベントナイトをセメントミルクに含有させて用いる請求項1〜7のいずれか一つの項記載のソイルセメントスラリーの流動化方法。
【請求項9】
ソイルセメント壁工法に用いる請求項1〜8のいずれか一つの項記載のソイルセメントスラリーの流動化方法。

【公開番号】特開2009−35453(P2009−35453A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−201672(P2007−201672)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(000210654)竹本油脂株式会社 (138)
【Fターム(参考)】