説明

ソケット構造

【課題】流体が付着して固化した固化付着物による着脱及びバルブ機構の動作不良やシール不良を防止または抑制したソケット構造を提供する。
【解決手段】容器の出口開口部に設置されたコネクタ1のプラグ7に接続して使用されるソケット30が、流路31を内部に形成してバルブ機構45を設けたソケット本体32と、軸中心を貫通して配設されたソケット本体32の外周面に沿って軸方向のスライド及び回動を可能に設けたスリーブ40とを備え、ソケット本体32の下端部に開口する流路31の入口をプラグ7の上端部に開口するプラグ出口に挿入して接続させた後、スリーブ40を下方へスライドさせながら回転させてスリーブねじ部39とソケット雌ねじ部15との螺合によりねじ止めして固定するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液等の流体を収納する容器のノズルに取り付けられているコネクタのプラグに接続して使用されるソケット構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体高純度薬品や一般化学薬品等の液体は、生産工場にてタンクなどの容器に充填され、この容器に形成された開口部にキャップ(蓋)を嵌め込んだ状態で出荷されている。
この容器に貯留された液体を取り出す場合には、容器のノズル開口部に嵌め込まれていたキャップを取り外し、サイフォン管を備えたコネクタが取り付けられる。このコネクタには、容器底部に到達する長さのサイフォン管を接続したプラグが設けられている。そして、コネクタの取り付けが完了した後には、コネクタのプラグに液送ホースを備えたソケットが接続され、ポンプによる吸引や加圧ガスによる押圧を行うことにより、容器内の液体がサイフォン管からプラグ、ソケット及び液送ホースを通って取り出される。
【0003】
このとき、ポンプにより容器内の液体を吸引する場合には、容器内に生じる負圧を補うため、窒素等の不活性ガスが気送ホースを通って容器内に供給される。一方、加圧ガスによる押圧を行って容器内の液体を押し出す場合には、加圧ガスとして窒素等の不活性ガスが気送ホースを通って容器内に供給される。
上述した気送ホースの接続構造には、容器に専用のノズル開口部を設けて気送ホース接続用のソケットを取り付ける方式や、液送ホースのソケットに気送ホース接続口及びガス流路を形成してノズル開口部を液体取出と共用する方式がある。
【0004】
上述したソケットには、液体流路を開閉するバルブ機構が設けられている。従来のバルブ機構を備えたソケットには、スリ−ブと、スリ−ブ内に挿入される内筒と、内筒内に設置されたバルブ機構とを備えたものがある。
この場合のバルブ機構は摺動筒を備えており、この摺動筒は、円筒状であって中間部に他の部分と一体成形されたベロ−ズを有している。このため、摺動筒の中間部に他の部分と一体成形によってベロ−ズを形成するので、ベロ−ズと他の部分とをシ−ル性を考慮して接合する手間とコストが省けるだけでなく、ベロ−ズの部分からの液状物等の漏出を長期にわたって確実に防止することができる。なお、ソケットとプラグとの接続部には、着脱時に動作するボールロック機構が採用されている。(たとえば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−230686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述したソケットを用いて取り扱う流体には、たとえばスラリ状の薬液等のように、固着しやすい液体もある。このような液体は、ボールロック機構やバルブ機構等の稼働部及びねじ部等に付着して固化すると、固形付着物がスムーズな動作を妨げる障害となる。
具体例をあげると、ボールロック機構のボールに液体が付着して固化すると、ボールのスムーズな転動ができなくなってソケットの着脱を困難にする。また、ばね部材やベローズに付着した液体が固化すると、スムーズな変形動作を妨げるとともに、変形可能範囲も狭めることになる。さらに、ねじ部に付着した液体が固化すると、固形付着物がスムーズな螺合を妨げるため、完全な螺合による結合やシールは困難になる。
【0007】
このような背景から、容器側のプラグに結合して液体を取り出すソケットにおいては、着脱及びバルブ機構等の動作やシール機能が取り扱う流体の固形付着物により妨げられることを防止または抑制するとともに、容易かつ確実な着脱の操作を可能にすることが望まれる。
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、取り扱う流体が付着して固化した固化付着物による着脱及びバルブ機構の動作不良やシール不良を防止または抑制し、プラグと容易かつ確実に接続できる優れた操作性を有するソケット構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明に係るソケット構造は、容器内の流体を取り出して移送するため、前記容器の出口開口部に設置されたコネクタのプラグに接続して使用されるソケット構造であって、前記流体の流路を内部に形成してバルブ機構を設けたソケット本体と、軸中心を貫通して配設された前記ソケット本体の外周面に沿って軸方向のスライド及び回動を可能に設けたスリーブとを備え、前記ソケット本体の下端部に開口する前記流路の入口を前記プラグの上端部に開口するプラグ出口に挿入して接続させた後、前記スリーブを下方へスライドさせながら回転させてスリーブねじ部と前記容器側のねじ部との螺合によりねじ止めして固定するように構成したことを特徴とするものである。
【0009】
本発明のソケット構造によれば、流体の流路を内部に形成してバルブ機構を設けたソケット本体と、軸中心を貫通して配設されたソケット本体の外周面に沿って軸方向のスライド及び回動を可能に設けたスリーブとを備え、ソケット本体の下端部に開口する流路の入口をプラグの上端部に開口するプラグ出口に挿入して接続させた後、スリーブを下方へスライドさせながら回転させてスリーブねじ部と容器側のねじ部との螺合によりねじ止めして固定するように構成したので、ソケットの着脱時において、たとえばソケット側に残った液体が液だれするなどしてソケットとコネクタとの接続部に付着し、接続部で固化した液体が着脱動作の妨げとなることを防止できる。
すなわち、ソケット本体の下端部に開口する流路の入口をプラグの上端部に開口するプラグ出口に挿入して(差し込んで)接続させるようにしたので、バルブ機構を閉じることにより、ソケット内のバルブ機構下流側に残った液体は、接続部に液だれして付着するようなことはなく、容器内へ確実に落下するようになる。
【0010】
上記の発明において、前記スリーブねじ部と前記容器側のねじ部との螺合位置は、前記流路の入口と前記プラグ出口との接続位置より高く設定されていることが好ましく、これにより、コネクタからソケットを取り外した時にソケット側から液だれしても、スリーブねじ部及び容器側のねじ部に対して液体が付着することを防止または抑制できる。
【0011】
上記の発明においては、前記ソケット本体の下端部外周面に、前記容器側のねじ部に対して所定位置まで前記スリーブねじ部が螺合した状態で露出する螺合完了表示部を設けることが好ましく、これにより、スリーブを締め込んで固定する作業者は、螺号完了表示部を目視で確認することにより、スリーブの適正な締め込み量を容易に判断することができる。
【0012】
上記の発明においては、前記スリーブの下端部外周面に下端部側を小径とした作業スペース形成用のテーパー面を設けることが好ましく、これにより、スリーブを取り扱う作業時に手を入れる作業スペースを確保することができる。
【0013】
上記の発明において、前記ソケット本体は、前記流路の外周側に配置された複数本のガス流路を備えていることが好ましく、これにより、ガス流路の流路断面積を確保して大気開放による液体の吸引(取り出し)が可能になる。
【発明の効果】
【0014】
上述した本発明によれば、コネクタへの着脱及びソケット本体に設けたバルブ機構等の動作やシール機能が、取り扱う流体の液だれ等により付着した固形付着物によって妨げられることを防止または抑制し、容易かつ確実な着脱の操作を可能にしたソケット構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るソケット構造の一実施形態を示す断面図であり、矢印方向へ左から順に、閉状態にある手動開閉式のバルブを備えたソケットをコネクタのプラグに接続した状態、スリーブを締め込んでソケットをコネクタに固定した状態(バルブ閉)、ソケットをコネクタに固定してバルブを開いた状態を示している。
【図2】容器の開口部にコネクタ及びソケットを取り付けた状態の概要を示す部分断面図である。
【図3】図2に示した容器の開口部にコネクタを取り付けた状態を示す要部の拡大断面図である。
【図4】本発明に係るソケット構造の第1変形例として、開状態にある電動開閉式のバルブを備えたソケットがコネクタのプラグに接続された状態を示す要部の断面図である。
【図5】本発明に係るソケット構造の第2変形例として、開状態にある空気圧開閉式のバルブを備えたソケットがコネクタのプラグに接続された状態を示す要部の断面図である。
【図6】本発明に係るソケット構造の第3変形例として、コネクタのプラグに接続された状態にある電動開閉式のプラグバルブを備えたソケット構造を示す断面図であり、矢印方向へ左から順に、プラグバルブが閉の状態、プラグバルブが開の状態である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るソケット構造の一実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明のソケット構造は、容器内の流体を取り出して移送するため、容器の出口開口部に設置されたコネクタのプラグに接続して使用される器具である。この場合の液体は、たとえば、石油製品、工業用薬品、塗料、医療品等であり、以下の説明では、半導体高純度薬品や一般化学薬品を取り扱うものとするが、これに限定されることはない。
【0017】
図2及び図3は、コネクタ1が容器51に取り付けられた状態を説明する図であり、液体吸い上げ用の液送ホース及び気体取り入れ用の気送ホースについて、共用のコネクタを使用する場合の構成例である。
図2に示すように、液体が貯蓄された容器51の上面には、二つの開口部53,53′が形成されている。一方の開口部53には、液体引き出し及び気体取り入れに共用するコネクタ1及びソケット30が取り付けられており、他方の開口部53′にキャップにより封止されている。容器51内への気体取り入れは、液体が引き上げられた容器51内へ気体を供給することにより、液体のスムーズな吸引を可能にする。
【0018】
このように、本実施形態のコネクタ1及びソケット30は、容器51に設けた他の開口部53′を使用せず、液体引き出し用のソケット30に設けた気体流通系統に気送ホースを接続して容器51内へ窒素ガス等の気体(不活性ガス)を供給する。なお、一方の開口部53に液体引き出し専用のコネクタ及びソケットを取り付け、他方の開口部53′に気体流通専用のコネクタ及びソケットを取り付ける構成を採用することも可能である。
容器51の底面には、凹状の曲面に湾曲した形状の凹部が形成されており、この凹部が容器51で最も深い位置となる。なお、最深部となる凹部の形成位置については、たとえば底面中央など特に限定されることはない。
【0019】
図3は、容器51の開口部53に取り付けられたコネクタ1を示す拡大図である。
コネクタ1には、図示しないホースを有するソケット30が着脱可能に取り付けられ、ホースの他端側に設置されたポンプ等により、容器51内の液体を吸引して取り出すようになっている。
図示のコネクタ1は、コネクタ1の本体部分であるコネクタ本体3と、上述したソケット30との連結部であるプラグ部7と、プラグ部7に固定され、容器51の内部に向けて伸びるサイフォン管9とにより概略構成されている。なお、円筒ノズル61は、容器51に形成された液体取出用の開口部である。
【0020】
コネクタ本体3は略有底円筒状に形成され、その内部にプラグ部7が一体に形成されている。また、コネクタ本体3の開口端側外周には、容器51の円筒ノズル61に形成された雌ねじ部63と螺合することにより容器51に結合される結合部(外ねじ部)5が設けられている。
この場合のサイフォン管9は、下端部側が容器底面に沿うよう略水平方向へ向けて90度程度の湾曲をしており、その先端開口が上述した凹部の最深部付近で側方に向けて開口している。なお、図示の容器51は、円筒ノズル61の内周面にコネクタ1用の雌ねじ部63が形成され、外周面に容器封止用の容器キャップ(不図示)を取り付けるための固定部65が形成されたものであり、図中の符号67はシール用のOリングである。
【0021】
プラグ部7は、上端部にプラグ出口7aが開口する略円筒状に形成され、コネクタ本体3の底面(図中下方の面)と一体に形成される。そして、プラグ部7の内部は、液体が流通する流通孔11となっている。プラグ部7の外周面には、液体流出防止用のプラグキャップ(不図示)と螺合するキャップ用ねじ部13が図中の下方端側に形成されている。なお、プラグキャップは、コネクタ1にソケット30を取り付ける際にプラグ部7から取り外され、それ以外の場合には、プラグ部7に取り付けられて流体が流出することを防止する部品である。
【0022】
プラグ部7の下端部には上述した管状部材のサイフォン管9が接続され、流通孔11と連通して先端開口から液体を取り出す液体流路を形成している。
また、上述したコネクタ本体3の上端開口には、後述するソケット30を固定するソケット雌ねじ部15が形成されている。
【0023】
図1に示す実施形態において、ソケット30は、容器51内の流体を取り出して移送するため、容器51の液体出口となる開口部53に設置されているコネクタ1のプラグ7に接続して使用される。
このソケット30は、流体の流路31を内部に形成してバルブ機構45を設けたソケット本体32と、軸中心を貫通して配設されたソケット本体32の外周面に沿って軸方向のスライド及び回動を可能に設けたスリーブ40とを備えている。
このソケット30は、ソケット本体32の下端部に開口する流路31の入口をプラグ7の上端部に開口するプラグ出口7aに挿入して接続させた後、スリーブ40を下方へスライドさせ、さらにスリーブ40を回転させることにより、スリーブ40の下端部外周に形成されているスリーブねじ部39と容器51側のねじ部であるコネクタ1のソケット雌ねじ部15とを螺合させて、ねじ止めにより容器51側に固定設置される。
【0024】
ソケット本体32は、軸中心部に流路31が形成された略円筒状部材である。
ソケット本体32の下端部側には、プラグ部7の上端部に開口するプラグ出口7aの内径と略一致する外径とした挿入部33と、プラグ部7の外径と略一致する内径を有する外輪部34と、が設けられている。すなわち、ソケット本体32の下端部側は、プラグ7の内周面及び外周面を挟持するようにして、挿入部33及び外輪部34よりなる二重リング形状に形成されている。また、二重リング形状となる挿入部33及び外輪部34の連結面35は、プラグ部7の上端面7b上に載置されて挿入量を規制するようになっている。なお、図中の符号36及び37はOリングであり、二重リング内に入り込んだプラグ部7の内外両面において液体及びガスが流出しないようシールしている。
【0025】
ソケット本体32の上端部側には、適所に配設したOリングを介してバルブ機構45が連結されている。従って、本実施形態におけるソケット本体32は、バルブ機構45のバルブ本体45aを包含する。図示のバルブ機構45は、手動開閉式のダイヤフラムバルブであり、レバー46を操作して開閉するように構成されている。
すなわち、バルブ機構45は、レバー46を略180度回転させることにより、バルブ本体45a内に配設された弁体47と開閉リンク機構48を介して連結された弁軸47aが上下方向にスライドする。この結果、バルブ本体45aの内部に形成された流路31が90度の方向転換をする弁室31aでは、弁体47が上下方向に開閉動作する。なお、上下方向から水平方向に90度の方向転換をした流路31には、上述したホースを接続する液送ノズル31bがバルブ本体45aから突出して設けられている。
【0026】
バルブ機構45の開閉動作は、上下方向に形成された流路31の上端出口を下降した弁体47が塞ぐことで弁閉状態となり、弁体47が上昇して流路31の上端出口を開くことで弁開状態となる。なお、バルブ機構45は、弁室31aの上部において、レバー46に連結された開閉リンク機構48がダイヤフラム49により液体の流路31から完全に分離されており、従って、流体を流す流路31及び弁室31aとバルブ開閉機構との間がダイヤフラム49により上下に分離されて液封されている。
【0027】
また、ソケット本体32には、容器51内に気体を供給する気体流通用として、流路31の外周側に配置された複数本のガス流路38を備えている。このガス流路38は、ソケット本体32の円形断面において、軸中心に設けられた流路31の外周を取り囲むようにして周方向へ等ピッチに配置されている。なお、ガス流路38の流路断面積については、1本の流路で必要面積を確保することも可能ではあるが、ソケット本体32の形状をいびつにし、あるいは、ソケット本体32を大型化するため、好ましくない。
【0028】
複数のガス流路38は、上端部側及び下端部側でそれぞれ全数が連通している。一方の上端部側連通ガス流路38aは、たとえばバルブ本体45a等に設けた気送ホース接続用の気送ノズル(不図示)に連通している。他方の下端部側連通ガス流路38bは、コネクタ1側に設けた複数のガス流路に17に連通している。従って、気送ホースから気送ノズルに供給された不活性ガス(気体)は、上端部側連通ガス流路38aから複数のガス流路38に分割されて下端部側連通ガス流路38bに流れた後、コネクタ1側の複数のガス流路17を通って容器51内に流入する。
なお、図示しない気送ノズルは、気送ホースと液送ホースとが干渉しないようにするため、上述した液送ノズル31bと異なる方向に配置することが望ましい。
【0029】
このように構成されたソケット30は、容器51の開口部53に予め取り付けられているコネクタ1に対し、以下の手順により取り付けて容器51内の液送及び気送が可能となる。すなわち、図1において、ソケット30の取付及び液送は、図中に白抜き矢印で示すように、紙面の左側から順に行われる。
【0030】
最初の手順では、コネクタ1のプラグ7に対して、液体入口となるソケット本体32の下端部に形成された挿入部33及び外輪部34を、プラグ7の上端部に開口するプラグ出口7aに挿入して接続する。このとき、挿入部33及び外輪部34はプラグ7の内外両面を挟持し、プラグ7の上端面7bに連結面35が当接して挿入位置(挿入量)が規定される。この結果、サイフォン管9に接続されたプラグ部7の流通孔11と、ソケット30の流路31とが連結される。このとき、挿入部33がソケット7の連通孔11内に挿入されているので、ソケット30側からの流体流れは、プラグ部7とソケット30との接続部から流出することなく、容器51内へ確実に流下する。
【0031】
次の手順では、ソケット本体32及びバルブ本体45aの外周に配設され、上下方向のスライドに加えて回動が可能なスリーブ37を下方へスライドさせる。この後、スリーブ37をねじの締め込み方向へ回転させ、スリーブねじ部39を容器51側のねじ部であるコネクタ1のソケット雌ねじ部15に締め込んで螺合させる。この結果、ソケット本体30は、ねじ止めにより容器51側に固定設置される。
【0032】
このとき、ソケット本体32の外周面適所に、容器51側のねじ部であるソケット雌ねじ部15に対して所定位置までスリーブねじ部39が螺合した状態で露出する螺合完了表示部43を設けておくとよい。この場合の螺号完了表示部43は、ソケット本体32と連結されたバルブ本体45aの下端部外周面に設けられており、たとえばバルブ本体45aやソケット本体32の外周面と異なる色のカラーリングを取り付ければよい。
このような螺号完了表示部43は、スリーブ40の締め込み量が適正になると露出する位置にあるので、スリーブ40を締め込んで固定する作業者は、螺号完了表示部43の露出を目視で確認することができる。このため、作業者は、スリーブ40の締め込み量が適正位置まで到達したことを容易に判断できる。
【0033】
こうしてソケット30の固定設置が完了した後には、レバー46を左から右へ略180度回転させることにより、流路31の弁体47が上昇して弁開の状態となる。ここで、バルブ機構45及び開閉操作用のレバー46がソケット30と一体になっているので、接続完了後にその場で開閉操作を行って液体の取り出しを行うことができる。従って、図示しない液送ホースの他端に接続されたポンプの運転を開始すれば、容器51内の液体が吸引されて、サイフォン管9から連通孔11及び流路31を通って吸い出される。
このとき、気送ノズルからガス流路38を介して容器51内へ不活性ガスを供給することにより、容器51の内部が負圧になることはなく、従って、容器51内の液体はスムーズに流出する。また、容器51が樹脂製の場合には、容器自体の変形を防止することができる。なお、ガス流路38を複数設けたことにより、ガス流路の十分な流路断面積を確保できるようになり、液体を取り出す流速等によっては、不活性ガス等の供給を大気導入に代えることも可能になる。
【0034】
こうして容器51内の液体を取り出す作業が終了した後には、レバー46の操作により弁体47を下降させて弁閉状態とする。この結果、ソケット30の弁体47より下流側となる流路31内に残留した液体は、液体流出時と逆方向に流れ、容器51内へ流下して回収される。なお、バルブ機構45がソケット30と一体になっているので、流路31内に残留する液体量は少なくなる。
【0035】
また、ソケット30の着脱時には、ソケット30側に残った比較的少量の液体が液だれすることもあるが、このような場合には、ソケット本体32の下端部に開口する流路31の入口をプラグ7の上端部に開口するプラグ出口に挿入して(差し込んで)接続させるようにしたので、液だれした液体は容器51内へ確実に落下するようになる。すなわち、挿入部33が連通孔11内に挿入されているので、液だれの液体は挿入部33の下端部に付着しており、従って、ソケット30を取り外す場合の動作により、液だれの液体は連通孔11内へ落下するようになり、ソケット30とコネクタ1との接続部に付着することを防止または抑制することができる。
【0036】
このような液だれが接続部のねじ等に付着すると、接続部で固化した液体が所定の着脱動作を妨げる原因となるので、接続部に対する液だれの液体付着を防止することは、着脱動作のトラブルを解消して容易かつ確実な作業を可能にする。すなわち、ソケット本体32の下端部に開口する流路31の入口をプラグ7の上端部に開口する連通孔11のプラグ出口7aから流路内部に挿入して(差し込んで)接続させるようにしたので、バルブ機構45を閉じることにより、ソケット30内のバルブ機構45より下流側に残った液体は、接続部に液だれして付着するようなことはなく、容器51の内部へ確実に落下するようになる。
【0037】
ところで、上述した実施形態の構成では、スリーブねじ部39と容器51側のねじ部となるソケット雌ねじ部15との螺合位置は、流路31の入口とプラグ出口7aとの接続位置より高く設定されている。すなわち、コネクタ1に形成されたソケット雌ねじ部15の位置は、プラグ出口7aより高い位置にあるので、コネクタ1からソケット30を取り外した時にソケット30側から液だれしても、着脱操作に重要なスリーブねじ部39及びソケット雌ねじ部15に対して、液体が付着することを防止または抑制できる。
【0038】
また、上述した実施形態では、スリーブ40の下端部外周面に、下端部側を小径としたテーパー面40aを設けてある。このテーパー面40aは、スリーブ40を回動さる着脱作業時において、作業員が手を入れる作業スペースを確保するものである。すなわち、テーパー面40aを形成した分だけ、スリーブ40の下端部では径が小さくなるので、この小径化した分だけ周囲の作業スペースが増加する。
【0039】
このように、上述した実施形態のソケット構造によれば、コネクタ1への着脱及びソケット本体32に設けたバルブ機構45等の動作やシール機能が、取り扱う流体の液だれ等により接続部等に付着した固形付着物によって妨げられることを防止または抑制し、容易かつ確実な着脱の操作を可能にする。
また、液体が接液する部分には、たとえばボール、ベローズ及びばね等のように、固着した液体により動作を妨げられる要素部品がないため、この点でも信頼性の高いソケット構造となる。
【0040】
ところで、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、種々の変形例が可能である。以下では、上述した本発明に係る実施形態について、各変形例を図面に基づいて説明する。なお、上述した実施形態と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0041】
最初に、図4に基づいて第1変形例を説明する。この第1変形例は、上述した実施形態のレバー46を手動操作する方式に代えて、電動アクチュエータを備えた電動開閉式のバルブ機構45Aを採用している。すなわち、第1変形例のバルブ機構45Aは、電動アクチュエータとしてモーター機構Maを備えている。このモーター機構Maは、電源及び制御用のケーブルCaを介して図示しない制御部と接続されている。なお、図示のバルブ機構45Aは、弁開の状態を示している。
このような電動開閉式のバルブ機構45Aを採用すれば、バルブ開閉の遠隔操作が可能になるので、これを備えた装置の各種自動化に有効である。
【0042】
次に、図5に基づいて第2変形例を説明する。この第2変形例は、上述した実施形態のレバー46を手動操作する方式に代えて、空気圧アクチュエータを備えた空気圧開閉式のバルブ機構45Bを採用している。すなわち、第2変形例のバルブ機構45Bは、空気圧アクチュエータとしてエアシリンダAsを備えている。このエアシリンダAsは、空気圧供給源(不図示)との間が空気圧配管(不図示)を介して接続され、空気圧配管には、制御部(不図示)から出力される制御信号により開閉する電磁弁(不図示)を備えている。なお、図示のバルブ機構45Bは、弁開の状態を示している。
このような空気圧開閉式のバルブ機構45Bを採用すれば、空気圧の供給をON/OFFする電磁弁の開閉を遠隔操作することにより、バルブ機構45Bの開閉についても遠隔操作が可能になるので、これを備えた装置の各種自動化に有効である。
【0043】
最後に、図6に基づいて第3変形例を説明する。この第3変形例は、上述した実施形態のダイヤフラムバルブに代えてプラグバルブを採用したバルブ機構45Cを備えている。すなわち、弁体47が上下にスライドして開閉する方式ではなく、流路47bを備えたプラグ(弁体)47Aが90度の回転をして開閉操作がなされる。なお、図示の変形例はモーター機構Maを採用した電動開閉式としているが、空気圧アクチュエータを採用してもよい。
【0044】
図6において、紙面の左側は、流路47bが流路31と連通しない弁閉の状態を示している。すなわち、ソケット本体32の流路31は、流路47bのないプラグ47Aにより塞がれている。
一方、この状態からプラグ47Aを90度回転させると、流路47bの両端が流路31と一致して連通するので、紙面右側に示す弁開の状態となる。
このようなバルブ機構45Cを備えたソケット構造としても、上述した実施形態及び変形例と同様の作用効果を得ることができる。
【0045】
このように、上述した本発明の実施形態及び変形例のソケット構造は、いずれもバルブ機構を備えているので、装置構成の構築が容易になる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 コネクタ
3 コネクタ本体
5 結合部(外ねじ部)
7 プラグ
7a プラグ出口
9 サイフォン管
11 流通孔
15 ソケット雌ねじ部(容器側のねじ部)
30 ソケット
31 流路
32 ソケット本体
33 挿入部
34 外輪部
35 連結面
38 ガス流路
39 スリーブねじ部
40 スリーブ
40a テーパー面
43 螺合完了表示部
45,45A〜45C バルブ機構
51 容器
53 開口部(出口開口部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内の流体を取り出して移送するため、前記容器の出口開口部に設置されたコネクタのプラグに接続して使用されるソケット構造であって、
前記流体の流路を内部に形成してバルブ機構を設けたソケット本体と、軸中心を貫通して配設された前記ソケット本体の外周面に沿って軸方向のスライド及び回動を可能に設けたスリーブとを備え、
前記ソケット本体の下端部に開口する前記流路の入口を前記プラグの上端部に開口するプラグ出口に挿入して接続させた後、前記スリーブを下方へスライドさせながら回転させてスリーブねじ部と前記容器側のねじ部との螺合によりねじ止めして固定するように構成したことを特徴とするソケット構造。
【請求項2】
前記スリーブねじ部と前記容器側のねじ部との螺合位置が、前記流路の入口と前記プラグ出口との接続位置より高く設定されていることを特徴とする請求項1に記載のソケット構造。
【請求項3】
前記ソケット本体の下端部外周面に、前記容器側のねじ部に対して所定位置まで前記スリーブねじ部が螺合した状態で露出する螺合完了表示部を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のソケット構造。
【請求項4】
前記スリーブの下端部外周面に下端部側を小径とした作業スペース形成用のテーパー面を設けたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のソケット構造。
【請求項5】
前記ソケット本体が、前記流路の外周側に配置された複数本のガス流路を備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のソケット構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−98740(P2011−98740A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252901(P2009−252901)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(591257111)サーパス工業株式会社 (60)
【Fターム(参考)】