説明

ソフォリコシドの医薬品の製造のための使用

本発明は、ソファリコシドの、閉経後女性の関節軟骨退化及び骨関節炎を予防及び/又は治療する医薬品の製造のための使用に関し、その治療効果が著しいが、動物体のエストロゲンの子宮、乳房などに対する副作用がなく、抽出が便利で、資源が豊富で、幅広い市場の将来性がある。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、ソファリコシドの、閉経後女性の関節軟骨退化及び骨関節炎を予防及び/又は治療する医薬品の製造のための使用に関する。
【0002】
〔背景技術〕
骨関節炎(osteoarthritis、OA)は、中高年者の中で最も多い骨関節疾患であり、その発症や進行が年齢、ホルモン、環境、遺伝子などの様々な要素に影響される。主な病理学的知見は、滑膜関節の軟骨欠損である。閉経後女性は、発症率が男性よりも高く、エストロゲンレベルの低い女性は、骨関節炎の発症率が増加し(Sowers MR、McConnell D、Jannausch Mら、Estradiol and its metabolites and their association with knee osteoarthritis、Arthritis Rheum.、2006 8;54(8):2481-7)、エストロゲンの骨関節炎の発症における作用が示唆されている。エストロゲンは、関節におけるエストロゲン受容体(estrogen receptor、ER)との結合によって作用し、軟骨及び軟骨下骨のいずれにおいても発現され、そのタンパク質の活性と構造の変化及び関節における発現レベルが骨関節炎の発症に影響しうる。
【0003】
エストロゲン受容体は、核内受容体であり、ステロイドホルモン受容体ファミリーに属する。細胞質及び細胞核に位置し、典型的な作用方式がリガンド依存的転写因子と類似し、標的遺伝子のプロモーター領域に結合することによって、直接、相同DNA配列に作用するか、或いはタンパク質間相互作用によって他の転写因子に作用するものである。また、現在、エストロゲンのいくつかの細胞系で見られる急速な効果に基づき、非ゲノム効果が学者らによって提出された。ERには、エストロゲン受容体αとエストロゲン受容体βの二種類のサブタイプがある。エストロゲン受容体αは、遺伝子が染色体6q25-27に位置し、8つのエクソンを含み、140kbである。エストロゲン受容体βは、遺伝子が染色体14q22-24に位置し、8つのエクソンを含み、40kbである。
【0004】
性ホルモンは、生体の骨量の維持には重要な役割を担い、老年性や手術性の性ホルモンの低下がいずれも骨喪失につながり、骨粗しょう症性骨折を引起しうる。閉経後の骨粗しょう症は、高齢の女性に見られることが多く、治療がかなり困難である。今の社会では、人口老齢化が進み、高齢になる女性が増えているが、女性は閉経後、骨喪失率が血液循環におけるエストロゲンレベルの低下につれて高くなり、さらに骨粗しょう症が生じ、骨折の危険性が増加するため、骨粗しょう症、骨折及び様々な合併症による死亡人数が増えつつある。
【0005】
Hanらによって、180匹のアカゲザルの去勢モデルを用い、ペアを組んで3群に分け、1群がモデル群で、他の2群にそれぞれエストロゲン補充療法(estrogen replacement therapy、ERT)と大豆植物エストロゲン(SPE)を使用したことが早期に報告されている。3年後、モデル群において、エストロゲン補充療法群よりも軟骨の欠損がひどく、且つ骨棘の増殖が多く、長期間のエストロゲン補充治療が骨関節炎を緩和できることが示唆されている。そして、関節軟骨におけるインスリン様増殖因子結合タンパク質(IGFBP)-2、IGFBP-3、コラーゲン、プロテオグリカンのレベルを測定したところ、エストロゲン補充療法群において、IGFBP-3のレベルがモデル群よりも高かったが、他の指標では有意な差がなかったことが確認された。脛骨近位端の軟骨下骨区(SC)及び骨幹端(EMC)における骨代謝指数を測定したところ、両区域における骨代謝指数について、モデル群は最高で、その次は大豆植物エストロゲン(SPE)群で、エストロゲン補充療法(ERT)群は最低であったことが確認された。モデル群において、SC区における骨化がEMC区よりも高く、大豆植物エストロゲン群における骨梁の体積がモデル群よりも高かった。長期間のエストロゲン補充療法では、SC区の骨形成を低下させることによって骨関節炎のリスクを低くすることが示唆されたが、最近、同研究グループは、脛骨近位端の関節の周辺における骨棘を測量したところ、長期間のエストロゲン補充治療が継続的に軟骨の骨境界区域及び脛骨関節の周辺における骨棘の形成を低下させることができないことがわかった(Olson EJ, Lindgren BR, Carlson CSら, Effects of long-term estrogen replacement therapy on the prevalence and area of periarticular tibial osteophytes in surgically postmenopausal cynomolgus monkeys Bone. 2007年4月20日)。流行病学の資料からも、閉経後女性は骨量が低下し、それによる骨生体力学的変化がOAの発症に関与することが示されているが、最近、Jacobsenらは選ばれた3913例(男1470例、女2443例)の骨関節炎の患者に対し、骨密度及び股関節の関節間隙を測定したところ、関節間隙では、男性患者は一生で変化が大きくなかったが、女性は45歳後著しく狭くなり、且つ骨量の低下と顕著な相関性があることが確認された(P<0.0001)(Jacobsen S, Jensen TW, Bach-Mortensen Pら. Low bone mineral density is associated with reduced hip joint space width in women: results from the Copenhagen Osteoarthritis Study Menopause. 2007年6月1日)。
【0006】
多くの研究によって、エストロゲンは体内でも体外でも軟骨細胞に確実な作用を持ち、且つエストロゲン受容体の発現レベルに相関することが解明された。II型コラーゲンのC末端テロペプチド(CTX-II)は、II型コラーゲンタンパク質の生体内における特異的代謝物であり、体内のII型コラーゲンが軟骨に分布することが多いため、血液や尿液におけるCTX-IIを軟骨代謝の特異的マーカーとすることができる。この評価指標を使用した関連報告が多い。Andersenらは、ラットの去勢後2、4、6、8週の尿液におけるCTX-II含有量を観察して去勢前の含有量で補正したところ、2週の時に軟骨代謝が最も旺盛で、後はだんだん低下していった。2週の時に、ERT及びエストロゲン受容体モジュレーター(SERM)は、2週の時の軟骨代謝を抑制することができた。また、4週の軟骨代謝の様子と8週後の膝関節軟骨の退行性変化の様子は最も相関性があった(Hoegh-Andersen P, Tanko LB, Andersen TLら,Ovariectomized rats as a model of postmenopausal osteoarthritis: validation and application Arthritis Res Ther. 2004;6(2):R169-80,2004年2月19日)。
【0007】
最近、Oestergaardらは、46匹のSDラットをランダムに、去勢モデル群、早期ERT群、延期ERT群及び偽手術(sham)群の4群に分けた。そして、血中CTX-IIを測定し、且つ9週後の関節形態を採点し、免疫組織化学法によって関節におけるCTX-IIを測定したところ、ERTは関節軟骨の退行性変化を緩和することができること、及び延期ERTは早期ERTよりも関与効果が劣ること、関節においてCTX-IIが検出され、且つ軟骨欠損区域に共局在することがわかった(Oestergaard S, Sondergaard BC, Hoegh-Andersen Pら,Effects of ovariectomy and estrogen therapy on type II collagen degradation and structural integrity of articular cartilage in rats: implications of the time of initiation,Arthritis Rheum. 2006年8月;54(8):2441-51)。従来の文献では、去勢後、関節軟骨におけるER発現レベルが低下することが報告されている(Oshima Y, Matsuda K, Yoshida Aら,Localization of Estrogen Receptors alpha and beta in the Articular Surface of the Rat Femur. Acta Histochem Cytochem. 2007年2月27日;40(1):27-34;及びDai G, Li J, Liu Xら,The relationship of the expression of estrogen receptor in cartilage cell and osteoarthritis induced by bilateral ovariectomy in guinea pig,J. Huazhong Univ Sci Technolog Med Sci. 2005;25(6):683-6を参照)。閉経後、子宮頸におけるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の発現が増加し、且つ組織メタロプロテアーゼ阻害物質(TIMP)が抑制されることが報告されている。また、MMPは関節軟骨のコラーゲンの破壊の主因であるが、Leeらは、17β-E2 が軟骨細胞におけるMMP-1mRNAの発現を抑制でき、かつMMPとTIMPの間のバランスの調和を改善できることを見出した(Richette P, Dumontier MF, Francois Mら,Dual effects of 17-beta-oestradiol on interleukin 1beta-induced proteoglycan degradation in chondrocytes,Ann Rheum Dis. 2004 年2月;63(2):191-9)。そのため、去勢後エストロゲンのレベルが低下し、ERの発現レベルが低下し、MMPの発現レベルが増加することにより、II型コラーゲンの代謝が向上し、軟骨基質が破壊される。
【0008】
以上の動物実験によって、エストロゲンの波動が閉経後女性の骨関節炎の発症の始動要素の一つかもしれないので、早期のエストロゲンによる関与は、軟骨におけるERレベルの低下を抑制することによってOAの発生を防止することができることが示唆されている。一方、ERTの後期では、主にエストロゲン受容体を通して軟骨下骨の代謝を調節することにより、骨関節炎の発生を抑制し、且つ骨関節炎の進行を緩和する。
【0009】
エストロゲンの関節軟骨に対する作用の投与量と効果の関係は、多く研究され、且つ体外実験が多い。通常、低投与量のエストロゲンは炎症因子に誘導される軟骨基質の分解を抑制することができるが、高投与量のエストロゲンは軟骨の退行性変化を促進することができるとされている。IL1-βは、現在、骨関節炎の発症の研究において、比較的に明確な前炎症因子であり、Richetteらは、ウサギ関節軟骨細胞の培養により、低濃度の17β-エストラジオール(E2)(0.1nmol/l)がインターロイキン(IL)1βに誘導されるプロテオグリカンの分解を抑制するが、高濃度(10nmol/l)ではその作用が増加することを見出した(Lee YJ, Lee EB, Kwon YEら,Effect of estrogen on the expression of matrix metalloproteinase (MMP)-1, MMP-3, and MMP-13 and tissue inhibitor of metalloproternase-1 in osteoarthritis chondrocytes Rheumatol Int. 2003 Nov;23(6):282-8. 2003年4月9日)。
【0010】
エストロゲン受容体と類似で、類似のDNA配列を認識するが、リガンドがまだ明らかでない受容体は、エストロゲン受容体の関連受容体と呼ばれ、オーファン核内受容体に属し、それぞれERR-α、ERR-β、ERR-γ(1999年の核内受容体命名委員会の命名原則に従ってそれぞれはNR3B1、NR3B2、NR3B3)である。これらは、いくつかの組織において、エストロゲンによって発現が促進される。研究によって、ERR-αはエストロゲンの信号伝達を調節し、且つERと相互作用をすることができることがわかった。Bonnelyeらは、免疫組織化学染色によってERR-αが成熟ラットの関節軟骨細胞において発現されることを証明し、且つ体外培養の軟骨細胞においてERR-αの過度発現がSOX-9の発現の増加を誘導し、軟骨の成長を促進することができるが、ERR-αの発現を抑制することによって軟骨の形成を抑制することができることを見出した。ERR-αの軟骨の形成及び安定化状態の保持における作用が示唆されている(Bonnelye E, Zirngibl RA, Jurdic Pら, The orphan nuclear estrogen receptor-related receptor-alpha regulates cartilage formation in vitro: implication of Sox9 Endocrinology 2007年3月,148(3):1195-205)。
【0011】
以上のように、エストロゲン及びその受容体は、いずれも骨関節炎の発症及び病変の程度に影響を与えるが、エストロゲン受容体は関節軟骨と軟骨下骨のいずれにおいても発現され、タンパク質の活性及び構造の差異がエストロゲンの関節軟骨と軟骨下骨に対する作用に影響し、その遺伝子多型が骨関節炎の発症と相関する。現在、いくつかの研究から、エストロゲン受容体モジュレーターがエストロゲン補充治療と同様の作用を持ち、且つエストロゲンがその受容体の発現レベルを促進できることが示され、エストロゲン受容体がエストロゲンの骨関節炎に対する作用を誘導することが示唆されている。女性は、閉経後、骨関節炎の発症率が上昇し、エストロゲン補充治療の効果には流行病学の証拠がまだ不十分である。エストロゲン及びその受容体の骨関節炎における作用機構がまだ明らかでなく、より多い予見性の流行病学の観察とより深い体外及び体内の実験・研究が必要である。
【0012】
しかし、ヒトエストロゲンの摂取は、多くの副作用ももたらし、最も厳重なのは、乳腺がんと子宮内膜がんの発症率を増加させることである。
【0013】
したがって、本技術分野において、骨関節炎を治療するため、乳腺がんと子宮内膜がんの発症率を増加させる危険性などのない医薬品がずっと求められてきた。
【0014】
ゲニステイン(genistein)は、植物に存在するイソフラボン成分であり、多くの植物においてアグリコンのまま或いはグリコシドの様態で存在する。グリコシドにおいてO-グリコシド結合を形成する糖類は、グルコースのような単糖類でもよく、ネオヘスペリドース(neohesperidose)、グルコシルアピオシド(glucosylapiosied)のようなものでもよい。糖鎖の位置は、7位又は4’位に一本鎖を形成してもよく、7,4’に二本鎖を形成しても良い。或いは、8位又は6,8位にC-グリコシド結合を形成しても良い。多くのグリコシドのうち、最も見られるのは、別名がソフォリコシド(sophoricoside)のゲニステイン-4’-O-グルコピラノシド(genistein-4'-glucopyranoside)および別名がゲニスチン(genistin)のゲニステイン-7-O-グルコピラノシド(genistein-4'-glucopyranoside)である。
【0015】
【化1】

【0016】
ゲニスチンは、大豆の活性成分の一つで、イソフラボン類に属する。1953年に、大豆残渣に存在し、大豆残渣を家畜の餌として使用すると、それに含有されるゲニスチンがエストロゲン様活性を持つため、家畜の体重を増加させたことが報告された。
【0017】
近年、さらに、大豆におけるこのようなイソフラボンが閉経期前の女性の乳腺がんのリスクを降下できること、及びラット膀胱腫瘍の生長と前立腺がんの早期発展を抑制できることが発見された。最近、ゲニスチンを含有する大豆を抽出してエストロゲン製剤とすること以外、腸管におけるグルコースの摂取を抑制することもできるため、糖尿病に適用することやグルコースによる脂質の過酸化に対する保護剤とすることも報告された。また、老齢雌ラットから得られた大腿骨の骨幹端組織(femoral-metaphyseal tissues)の体外試験において、ゲニスチン又はゲニステインが骨幹端組織におけるアルカリホスファターゼ、DNA及びカルシウム含有量の顕著な増加を引起したので、これらが骨代謝に対する合成作用を持つこと、及びゲニスチンは卵巣機能喪失のラットの骨喪失を予防できることが示されている。
【0018】
ソフォリコシド(sophoricoside)は、常用生薬であるカイカク(槐角)、すなわち、マメ科(Leguminosae)クララ属植物であるエンジュ(槐)(Sophora japonica L)の果実から得られるもので、またピプタンサス・ネパレンシス(Piptanthus nepalensis)の茎及びウルシ科植物であるシナス・ラチフォリウス(Schinus latifolius)の葉にも存在し、抗炎症作用を持ち、炎症過程での増殖期を顕著に抑制することができ、且つグルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼを低下させる作用も有する。近年、同時にラットのカラギーナンに誘導された水腫及びクロトン油に誘導された耳水腫を抑制できることや、インターロイキン-5の阻害剤とされることも報告された。
【0019】
日本特許出願JP11-116487では、ソフォリコシドの糖尿病などの疾患を治療するための使用だけが開示されている。
【0020】
中国特許CN01113081.4でも、ソフォリコシドの女性の閉経後の骨粗しょう症を治療するための使用だけが開示されている。
【0021】
〔発明の内容〕
本発明の一つの目的は、人体の乳房及び子宮にエストロゲン様副作用がないソフォリコシドの、関節軟骨退化、特に閉経後女性の関節軟骨退化を予防及び/又は治療する医薬品の製造のための使用を提供することである。
【0022】
本発明のもう一つの目的は、人体の乳房及び子宮にエストロゲン様副作用がないソフォリコシドの、骨関節炎、特に閉経後女性の骨関節炎を予防及び/又は治療する医薬品の製造のための使用を提供することである。
【0023】
そのため、本発明は、下述式のソファリコシドの、閉経後女性の関節軟骨退化を予防及び/又は治療する医薬品の製造のための使用に関する。
【0024】
【化2】

【0025】
3-[4-(β-D-グルコピラノシジル)-フェニル]-5,7-ジヒドロ-4H-1-ベンゾピラン-4-オン(4',5,7-トリヒドロキシイソフラボン-4'-D-グルコシド)。
【0026】
また、本発明は、下述式のソファリコシドの、閉経後女性の骨関節炎を予防及び/又は治療する医薬品の製造のための使用に関する。
【0027】
【化3】

【0028】
3-[4-(β-D-グルコピラノシジル)-フェニル]-5,7-ジヒドロ-4H-1-ベンゾピラン-4-オン(4',5,7-トリヒドロキシイソフラボン-4'-D-グルコシド)。
【0029】
さらに、本発明は、治療有効量の下述式のソファリコシドを必要な対象に投与すること、を含む閉経後女性の関節軟骨退化を予防及び/又は治療する方法に関する。
【0030】
【化4】

【0031】
3-[4-(β-D-グルコピラノシジル)-フェニル]-5,7-ジヒドロ-4H-1-ベンゾピラン-4-オン(4',5,7-トリヒドロキシイソフラボン-4'-D-グルコシド)。
【0032】
またさらに、本発明は、治療有効量の下述式のソファリコシドを必要な対象に投与すること、を含む閉経後女性の骨関節炎を予防及び/又は治療する方法に関する。
【0033】
【化5】

【0034】
3-[4-(β-D-グルコピラノシジル)-フェニル]-5,7-ジヒドロ-4H-1-ベンゾピラン-4-オン(4',5,7-トリヒドロキシイソフラボン-4'-D-グルコシド)。
【0035】
前述のソファリコシドは、大豆やカイカクのようなマメ科植物(sophora subprograms)、特にカイカクから抽出されたものであることが好ましい。
【0036】
製薬分野の技術者は、通常の技術に基づき、前述のソファリコシドを経口投与のカプセル剤、錠剤などの通常の剤形のような様々な剤形として製造することができる。
【0037】
〔図面の説明〕
図1は実施例3における各群の子宮のHE染色の様子を示す顕微鏡図(対物レンズ40倍)。
【0038】
図2は実施例4における各群のCTX-IIの基準線比の変化の様子を示す折線図。
【0039】
図3Aは関節全体の病理切片のトルイジンブルー染色の顕微鏡図(対物レンズ1倍)で、大腿骨、脛骨及び内・外側半月板を示したものである。図3Bは関節面の病理切片のトルイジンブルー染色の顕微鏡図で、大腿骨、脛骨及び関節面の欠損を示したものである。
【0040】
図4は実施例5における各群の病変の様子を示すカラム図で、基本的に表3の内容を表したものである。
【0041】
図5は正常の関節軟骨におけるER-αの免疫組織化学染色の顕微図(対物レンズ40倍)である。正常の関節軟骨におけるER-αは表層、中間層及び肥大細胞層において発現されている。
【0042】
図6は病変の関節軟骨におけるER-αの免疫組織化学染色の顕微図(対物レンズ40倍)である。関節面の破壊区域における軟骨細胞においては、ER-αの発現が欠けている。
【0043】
図7は実施例6における各群の関節軟骨におけるER-αの免疫組織化学染色の顕微図(対物レンズ40倍)である。
【0044】
図8は各群の関節軟骨におけるER-αの発現陽性率の比較のカラム図で、基本的に表4の内容を表したものである。
【0045】
図9は正常の関節軟骨のTUNEL染色の顕微図(対物レンズ40倍)である。図中、アポトーシス細胞が少量で石灰化軟骨細胞層及び肥大軟骨細胞層に分布し、矢印で示されている。
【0046】
図10は各群の関節軟骨のTUNEL染色の顕微図(対物レンズ40倍)である。
【0047】
図11は実施例7における各群の関節軟骨のアポトーシス指数の比較のカラム図で、基本的に表5の内容を表したものである。
【0048】
〔具体的な実施形態〕
(実施例1:動物の群分け及びモデルの構築)
66匹の6ヶ月の雌SDラットをランダムにモデル群(卵巣切除(ovariectomized)、OVX)、偽手術群(SHAM)、及びERT群、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)群、仙霊骨葆群、ソファリコシド10mg群(HDA10)、ソファリコシド20mg群(HDA20)、ソファリコシド40mg群(HDA40)、ソファリコシド80mg群(HDA80)といった各薬物関与群に分けた。
【0049】
[1.モデルの構築方法:]
OVX群及び各薬物関与群:1%ペントバルビタールナトリウム溶液を5ml/kgで腹腔注射し、麻酔が効いた後、ラットを下向きにし、肋骨弓下の第3腰椎のところで毛を除去し、臭化ベンザルコニウムで皮膚を消毒し、皮膚に約1cmの切口を入れ、皮下、筋膜を切り、筋肉を鈍的切開し、注意して腹膜を切開し、組織鉗子を切口から入れ、注意して腹腔の白い脂肪を引き上げ、軽く脂肪を繰り替え、梅花状の卵巣を見つけ、1号無菌糸で結束し、眼科鋏で切断し卵巣を卵管から分離し、圧迫止血後、脂肪を注意して腹腔に置き、切口を反対側に移し、同様な方法で反対側の卵巣を切除し、腹膜、筋膜、皮下、皮膚の順で縫合した。そして、傷口を消毒した。
【0050】
SHAM群:同様な方法で卵巣を暴露させたが、切除せず、同量の周囲脂肪を切除した後、切口を封じた。
【0051】
[2.動物の飼養条件及び関与措置]
ラットは、中国科学院上海生命科学研究院動物実験センターのSPF級動物室において飼養された。恒温、恒湿で、清潔な環境にいた。温度:24℃。湿度:40〜60%。毎日12h照明/12h暗室で、浄化水、通常の飼料を与えた。
【0052】
薬物の溶媒は、1%カルボキシメチルセルロースナトリウム(sodium carboxymethycellulose,CMC-Na)を選び、SHAM及びOVX群では溶媒で胃に灌注した。
【0053】
薬物群は、それぞれ以下の投与量で前述溶媒に溶解させて胃に灌注した。
【0054】
ERT群:プロギノバ(Progynova、吉草酸エストラジオール錠、フランスschering S.A 製、ロット番号072A-2)で、0.8mg/kg/日。
【0055】
SERM群:エビスタ(Evisa、塩酸ラロキシフェン錠、スペインlilly S.A製、ロット番号A208711)で、3mg/kg/日。
【0056】
XLGB群:仙霊骨葆カプセル(貴州同済堂製薬社、ロット番号060361)で、270mg/kg/日。
【0057】
HDA10群:ソファリコシド(上海金木生物科技社、ロット番号:04292004)で、10mg/kg/日。
【0058】
HDA20群:ソファリコシド(上海金木生物科技社、ロット番号:04292004)で、20mg/kg/日。
【0059】
HDA40群:ソファリコシド(上海金木生物科技社、ロット番号:04292004)で、40mg/kg/日。
【0060】
HDA80群:ソファリコシド(上海金木生物科技社、ロット番号:04292004)で、80mg/kg/日。
【0061】
[3.動物材料の採集]
ラットは、モデル構築前、3週、5週、7週でそれぞれ代謝かごを用いて尿液を1〜1.5ml収集し、Eppendorf管に置いて-20℃の冷蔵庫に保存した。
【0062】
11週後、頚椎脱臼法でラットを殺処分し、子宮を取ってその湿重量を測定した後、4%パラホルムアルデヒド(paraformaldehyde、PFA)に入れて固定した。右側の膝関節全体を取って4%PFAに入れて固定した。
【0063】
(実施例2:実験前後のラットの体重及び子宮の湿重量)
実験前後に、ラットの体重を量り、殺処分して動物材料を採集したと同時に、子宮を取って湿重量を測定した結果を表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
データの統計に分散分析を使用したが、SHAM群では、子宮の湿重量の群間差異が大きかったが、異なる月経周期にいることによると考えられる。実験前後の各群間では、体重は有意な差異がなかった。卵巣切除処理の各群とSHAM群とでは、子宮の湿重量は有意な差異があった(P<0.01)が、卵巣摘出が成功したことが示されている。SHAM群及びERT群とモデル群と比べると、子宮の湿重量は有意な差異があった(P<0.01)が、他の処理群とOVX群と比べると、有意な差異がなかった(P>0.05)。これは、エストロゲンは子宮に刺激作用があったが、他の各群では、顕著な子宮に刺激作用がなかったことが示されている。
【0066】
(実施例3:子宮切片の観察:)
1.包埋:実施例1で得られたラットの子宮を4%パラホルムアルデヒドで24時間固定した。75%酒精で一晩、85%酒精で45分間、95%酒精で45分間×2回、100%酒精で45分間×2回脱水し、キシレンに漬ける透明処理を15分間×2回行った。65℃のオーブンで、蝋に3時間漬けた。パラフィンで包埋した。
【0067】
2.切片の製作:ラットの子宮管腔の冠状面を取り、パラフィンミクロトーム(Leica, Model:RM2235)で厚さ5μmになるように切片し、30℃の温水に置き、ポリリジンで処理されたスライドガラスに敷いた。切片を65℃のオーブンで3時間加熱し、使用に備えた。
【0068】
3.子宮のHE染色:1)切片の水までの脱蝋:65℃のオーブンで3時間置き、キシレンに10分間×3回漬け、100%酒精で10分間×2回、95%酒精で10分間×2回、85%酒精で10分間、75%酒精で10分間、そして再蒸留水で処理した。
【0069】
2)染色:ヘマトキシリンで4分間染色し、流水で10分間洗浄し、エオシンA液で4分間、エオシンB液で2分間染色した。
【0070】
3)脱水:95%酒精で10分間×2回、100%酒精で10分間×2回脱水した。
【0071】
4)透明化:キシレンで10分間×2回透明化した。
【0072】
5)中性樹脂で切片を封じた。
【0073】
図1は40倍の顕微鏡において各群の子宮のHE染色の様子を示す。図1において、1行目では、左から右までそれぞれSHAN群、ERT群及びSERM群で、2行目では、左から右までそれぞれXLGB群、HDA10群及びHDA20群で、3行目では、左から右までそれぞれHDA40群、HDA80群及びOVX群である。中では、Sham群では、子宮内膜が厚くなり、鱗屑状になっていた。OVX群では、子宮内膜が薄くなり、平坦であった。ERT群では、子宮内膜がOVX群よりも厚かった。他の群では、OVX群と類似であった。
【0074】
(実施例4:CTX-II含有量の測定)
1.Urine Pre-clinical(PC)Cartilaps ELISAキットを用い、競合酵素結合免疫吸着(enzyme linked immunosorbent assay、ELISA)法によって実施例1で得られた尿液におけるCTX-II濃度を測定し、マルチアナライザー(Beckman coulter、DXC800)によって尿液におけるクレアチニン(creatinine、以下、Creaと記する)濃度を測定し、且つ下記公式でCTX-II含有量を補正した。
補正CTX-II(mg/mmol)= CTX-II(mg/L)/ Crea(mmol/L)。
【0075】
2.ELISA法の原理
ELISA法の基本原理は、酵素分子と抗体又は抗抗体分子とを共有結合させるが、このような結合は、抗体の免疫学の特徴を変えず、酵素の生物学の活性に影響しない。このような酵素標識抗体は、固相担体に吸着させた抗原或いは抗体と特異的に結合することができる。基質溶液を滴下した後、基質は酵素の作用によってそれに含まれた水素供与体が無色の還元型から有色の酸化型に変化し、呈色反応が生じる。そのため、基質の呈色反応によって相応の免疫反応の有無を判断することができ、呈色反応の濃淡が標本における相応の抗原或いは抗体の量と正相関する。このような呈色反応は、ELISAアナライザーで定量測定することができるので、酵素の化学反応の感受性と抗原抗体反応の特異性を組合わせることによって、ELISA法が特異的で且つ敏感な測定方法になっている。
【0076】
3.CTX-II(μg/L)の測定:
1)実施例1で得られたラットの尿液を取り、解凍し、室温で30分間溶解させ、Creaの測定のために200μlを取り、また各サンプル10μlに標準A液を入れ、4倍に希釈した。
【0077】
2)標準品の配合:下述表のように0μg/L、1.56μg/L、3.13μg/L、6.25μg/L、12.5μg/L、25μg/L、50μg/L、100μg/Lの8つの濃度の勾配の標準品を配合した。
【0078】
【表2】

【0079】
3)ストレプトアビジンで覆われた96穴プレートを取り、その中にビオチン化抗原100μLを入れ、封止膜を加えて室温で30分間インキュベートした。
【0080】
4)洗浄液を1:5で脱イオン水によって希釈し、使用に備えた。
【0081】
5)プレートを5回洗浄した。
【0082】
6)各穴に標準品、サンプル、コントロール品をそれぞれ10μL入れ、そして各穴にそれぞれ主要抗体を150μL入れ、封止膜で封じた後、4℃の冷蔵庫に置いて21±3時間インキュベートした。
【0083】
7)プレートを5回洗浄した。
【0084】
8)各穴にそれぞれペルオキシダーゼ標識抗体を100μL入れ、封止膜で封じ、室温で60分間インキュベートした。
【0085】
9)プレートを5回洗浄した。
【0086】
10)各穴にそれぞれテトラメチルベンジジン(tetramethyl benzidine、TMB)を100μL入れて基質を呈色させ、暗室で15分間インキュベートした。
【0087】
11)各穴にそれぞれ中止液を10μL入れた。
【0088】
12)マイクロプレートリーダー(Molecular Devices Corporation、BD03315)によって光学濃度値(optical density、OD)をそれぞれ450nm及び650nmで測定し、4パラメータロジスティック曲線を作り、各サンプルの濃度値を読み出した。
【0089】
4.尿液におけるCrea(mmol/L)の測定:上海瑞金病院の検査課によってマルチアナライザー(Beckman coulter、DXC800)を用いて測定した。
【0090】
上述式によってCTX-IIの基準線比を算出した結果は、図2に示されるように、同じ時点のモデル群と比べたが、図において、**はP<0.01、*はP<0.05を示す。
【0091】
卵巣切除後の各群のCTX-II型濃度の基準線百分率の変化の傾向は、図2に示されるように、データの処理に分散分析を用いたが、その結果、OVX群では、卵巣切除後、尿液におけるCTX-II含有量が顕著に増加し(P<0.01)、関節軟骨のColII代謝が旺盛であったが、7週間以内で基準線に近いレベルに戻ってきたことが示されている。SHAM群では、実験期間内で、尿液におけるCTX-II含有量がほぼ安定しており(P>0.05)、関節軟骨のColII代謝のもほぼ安定していた。エストロゲン補充療法、選択的エストロゲン受容体モジュレーター、HDA80は、卵巣切除後の短期間内におけるCTX-IIの代謝ピークを顕著に低下させることができた(P<0.01)。漢方薬の仙霊骨葆、HDA40は同様にこの作用があったが、比較的に弱かった(P<0.05)。エストロゲン補充療法、選択的エストロゲン受容体モジュレーター、HDA及び漢方薬はこの病理的過程を予防・緩和する作用があった。
【0092】
(実施例5:関節面病変の様子の観察)
1.ラットの膝関節の病理学的パラフィン切片の製作
A)包埋:1)ラットの膝関節を4%PFAで48時間固定した。2)15%エチレンジアミン四酢酸(ethylenediamine tetraacetic acid、EDTA)で15日間脱石灰化した。3)75%酒精で一晩脱水した。4)85%酒精で45分間脱水した。5)95%酒精で45分間×2回脱水した。6)100%酒精で45分間×2回脱水した。7)キシレンで20分間×2回透明化を行った。8)65℃のオーブンで、蝋に3時間漬けた。9)パラフィンで包埋した。
【0093】
B)切片の製作:内側側副靭帯を標識として冠状面を作り、パラフィンミクロトーム(Leica, Model:RM2235)で厚さ5μmになるように切片し、30℃の温水に置き、ポリリジンで処理されたスライドガラスに敷いた。切片を65℃のオーブンで3時間加熱し、使用に備えた。
【0094】
2.トルイジンブルー染色、関節面欠損の測量:
A) トルイジンブルー染色:
1)切片の水までの脱蝋:65℃のオーブンで3時間置き、キシレンで10分間×3回、100%酒精で10分間×2回、95%酒精で10分間×2回、85%酒精で10分間、75%酒精で10分間、そして再蒸留水で処理した。
【0095】
2)染色:1%トルイジンブルーで5分間染色し、流水で10分間洗浄した。
【0096】
3)脱水:アセトンI、IIでそれぞれ10分間脱水した。
【0097】
4)透明化:キシレンI、IIでそれぞれ10分間透明化した。
【0098】
5)中性樹脂で切片を封じた。
【0099】
B) 関節病変の画像解析
2名のベテランの画像解析技師が、Axionplan 2 imaging顕微画像解析システム(Axioplan 2多機能自動化蛍光顕微鏡、KS400画像解析システムVer3.0、AxioCamデジタルカメラ解像度3900×3090)を使用して独立に大腿骨の内・外側顆、脛骨高原の内・外側の四つの関節荷重区の軟骨面病変区域(図3A及び図3Bに示されるように)において病変の長さを測量し、最後、平均値を算出し、且つそれぞれ四つの関節面の病変百分率を計算し、最後、膝関節全体の病変百分率を計算した。
【0100】
関節面の各部の病変百分率=病変区域の長さ/荷重関節面の全長×100%
膝関節の関節面の病変百分率=病変区域の合計長さ/関節面の全長×100%
各群のラットの膝関節の各部及び全体の退行性変化の様子は下述表3及び明細書図面の図4に示されるように、データの処理に分散分析を使用した。実験結果から、OVX群の関節軟骨の退行性変化の様子はSHAMと比較すると、有意な差があった(P<0.01)ことが示されている。卵巣切除後、関節軟骨の退行性変化が深刻になったことが示唆されている。HDA10、HDA20以外の各薬物はいずれも卵巣切除による関節軟骨の退行性変化を緩和することができるが、中でも、ERT群とHDA80群は効果が優れており、OVX群と比べて有意な差があり(P<0.01)、SHAM群と比べて有意な差がなかった(P>0.05)。一方、XLGB群、SERM群、HAD40は効果があるが、完全に逆転できず、OVX群と比べて有意な差があり(P<0.05)、SHAM群と比べて有意な差がなかった(P<0.05)。
【0101】
【表3】

【0102】
(実施例6:関節軟骨細胞のエストロゲン受容体染色、陽性細胞百分率の計算)
1.軟骨細胞のエストロゲン受容体染色:1)切片の水までの脱蝋:65℃のオーブンで3時間置き、キシレンで5分間×2回、100%酒精で5分間×2回、95%酒精で5分間×2回、85%酒精で5分間、75%酒精で5分間、再蒸留水で5分間×2回、PBSで5分間×3回処理した。
【0103】
2)内在性ペルオキシダーゼの除去:3%H2O2-メタノールで10分間漬け、PBSで5分間×3回洗浄した。
【0104】
3)抗原のブロッキング:0.3%ウシ血清アルブミン(bovine serum albumin、BSA)に30分間処理した。
【0105】
4)第一抗体の加入:ERα抗体(SANTA CRUZ BIOTECHNOLOGY, INC. sc-542)(1:50)を55μl/切片で入れ、4℃で一晩処理し、PBSで5分間×3回洗浄した。
【0106】
5)第二抗体の加入:ビオチン化第二抗体(1:200)を入れて37℃で30分間処理し、PBSで5分間×3回洗浄した。
【0107】
6)SABC(StreptAvidin Biotin Complex)の加入:SABC(1:300)を入れて37℃で30分間処理し、PBSで5分間×3回洗浄した。
【0108】
7)呈色:ジアミノベンジジン(3,3'-diaminobenzidine、DAB)を75μl/切片で入れて3〜6分間処理し、顕微鏡で観察した。
【0109】
8)対比染色:流水で3分間洗浄し、ヘマトキシリンで10秒間染色し、流水で10分間洗浄し、95%酒精で10分間×2回、100%酒精で10分間×2回、キシレンで10分間×2回処理し、中性樹脂で切片を封じた。
【0110】
2.画像解析、陽性細胞百分率の計算:2名のベテランの画像解析技師が、Axionplan 2 imaging顕微画像解析システム(前述実施例と同様)を使用してそれぞれ膝関節の大腿骨の内・外側顆、脛骨高原の内・外側において、それぞれ2つの視野を選んで独立にER-α発現の陽性細胞百分率を計算し、平均値を算出してこの区域の陽性細胞百分率とした。四つの区域の平均値を算出してこの膝関節全体の陽性細胞百分率とした。二人の計算結果の平均値を最終実験結果とした。
【0111】
陽性細胞百分率=視野における陽性軟骨細胞数/視野における全軟骨細胞数×100%
各群のラットの関節軟骨におけるER-α発現の様子は図7に示されるように、中では、SHAM群では、ER-αが関節軟骨の各層に発現されているが、OVX群、HDA10群、HDA20群では、関節軟骨の浅層におけるER-α陽性細胞が正常の関節軟骨よりも顕著に減少し、ERT群、HDA80群では、関節軟骨におけるER-α陽性細胞がOVX群よりも顕著に増加し、正常の関節軟骨に近かった。SERM群、XLGB群では、発現がOVX群よりも増加した。
【0112】
ER-α発現陽性率及び各群間の差異は下述表4及び図8に示す。実験結果から、正常の関節軟骨(SHAM群)では、ER-αが表層、中間層及び肥大細胞層において発現されている(図5)。軟骨の関節面の病変区域において、ER-αの発現がなくなった。卵巣切除後、ラットの関節軟骨におけるER-αの発現が顕著に減少した(P<0.01)。エストロゲン、SERM及び10mg投与量群以外のHDA関与の卵巣切除されたラットは、ER-αの発現が顕著に増加した(P<0.01)。しかし、正常のレベル(SHAMとの比較では、ERT群はP<0.05、他の各群:P<0.01)に戻るのが困難である。XLGB群はOVX群と比べて有意な差異があり(P<0.05)、且つERTは効果が最高で、顕著に他の群よりも優れていた(P<0.01)。
【0113】
【表4】

【0114】
(実施例7:軟骨細胞のアポトーシスの様子の観察)
1.TUNEL法によるアポトーシス細胞の検出の原理
細胞アポトーシスにおける染色体DNAの断裂は漸進的な多段階の過程で、染色体DNAはまず内在性核酸分解酵素の作用によって50〜300kbの大断片に分解される。そして、約30%の染色体DNAはCa2+とMg2+依存エンドヌクレアーゼの作用によって、ヌクレオソーム単位間でランダムに切断され、180〜200bpのヌクレオソームDNAポリマーが形成される。DNAの二本鎖の断裂または一本鎖におけるニックによる一連のDNAの3’-OH末端は、ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(terminal deoxynucleotidyl transferase、TdT)の作用によって、デオキシリボヌクレオチドとフルオレセイン、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ又はビオチンとからなる誘導体をDNAの3’末端に標識することにより、アポトーシス細胞を検出することができる。このような方法は、通常、ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ媒介ニック末端標識法と呼ばれている。
【0115】
2.TUNEL染色:
1)切片の水までの脱蝋:65℃のオーブンで3時間置き、キシレンで5分間×2回、100%酒精で5分間×2回、95%酒精で5分間×2回、85%酒精で5分間、75%酒精で5分間、PBSで5分間×2回処理した。
【0116】
2)前処理:新鮮なプロテイナーゼK(20μg/ml)を60μl/切片で、37℃で20分間処理し、PBSで2分間×2回洗浄した。
【0117】
3)内在性ペルオキシダーゼの除去:3%H2O2-メトのールで5分間処理し、PBSで5分間×2回洗浄した。
【0118】
4)平衡化液の加入と洗浄:75μl/切片で10s処理し、剰余の液体を捨て、周囲の液体を吸い捨てた。
【0119】
5)TdT酵素の加入:直ちに使用液(陽性対照において加入せず)55μl/切片で入れ、37℃で1時間処理した。
【0120】
6)中止:中止液を加えて15分間軽く振とうし、PBSで3分間×3回洗浄し、剰余の液体を軽く取り出した。
【0121】
7)呈色:抗ジゴキシン-ペルオキシダーゼを65μl/切片で室温で30min処理し、PBSで2分間×4回洗浄し、十分な量のペルオキシダーゼ基質を75μl/切片で入れて3〜6分間反応させ、顕微鏡で観察した。
【0122】
8)対比染色:流水で3分間洗浄し、ヘマトキシリンで10秒間染色し、流水で10分間洗浄し、95%酒精で10分間×2回、100%酒精で10分間×2回し、キシレンで10分間×2回処理し、中性樹脂で切片を封じた。
【0123】
3.画像解析、アポトーシス指数の計算:2名のベテランの画像解析技師が、Axionplan 2 imaging顕微画像解析システム(Axioplan 2多機能自動化蛍光顕微鏡、KS400画像解析システムVer3.0、AxioCamデジタルカメラ解像度3900×3090)を使用してそれぞれ膝関節の大腿骨の内・外側顆、脛骨高原の内・外側において、それぞれ2つの視野を選んで独立にアポトーシス指数を計算し、平均値を算出してこの区域のアポトーシス指数とした。四つの区域のアポトーシス指数の平均値を算出してこの膝関節全体のアポトーシス指数とした。二人の平均値を実験結果とした。
【0124】
アポトーシス指数=視野における陽性細胞数/視野における全軟骨細胞数×100%
図10は各群の関節軟骨のTUNEL染色の顕微図(対物レンズ40倍)である。中では、OVX群では、関節軟骨の各層のいずれにおいても、大量のアポトーシス細胞が見られ、且つ表層、中間層に分布が増加したことが示されている。SHAM群では、アポトーシス細胞は主に軟骨石灰化層に集中し、量が少なかった。ERT群、HAD80群では、関節軟骨のアポトーシス細胞がOVX群よりも少なく、正常の関節軟骨に近かった。他の各群では、HAD20群以外、いずれもOVX群よりも減少した。これは、ラットの正常の関節軟骨は石灰化軟骨層に少量のアポトーシス細胞が存在するが、卵巣切除後(OVX群)関節軟骨のアポトーシス細胞が増加し(P<0.01)、関節軟骨の表層及び中間層を含む浅層にいずれもアポトーシスの軟骨細胞が見られ(図10を参照)、HDA20以外の各薬物関与群では、いずれも関節軟骨のアポトーシスが減少し、OVX群と比べて有意な差異があった(P<0.05)ことを示めしている。中では、XLGB群、HDA40群では、効果が比較的に弱く、SHAM群と比べて有意な差異があった(P<0.05)。
【0125】
下述表5及び図11は各群のラットの膝関節の関節軟骨における軟骨細胞のアポトーシス指数を示している。
【0126】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】図1は実施例3における各群の子宮のHE染色の様子を示す顕微鏡図(対物レンズ40倍)。
【図2】図2は実施例4における各群のCTX-IIの基準線比の変化の様子を示す折線図。
【図3A】図3Aは関節全体の病理切片のトルイジンブルー染色の顕微鏡図(対物レンズ1倍)で、大腿骨、脛骨及び内・外側半月板を示したものである。
【図3B】図3Bは関節面の病理切片のトルイジンブルー染色の顕微鏡図で、大腿骨、脛骨及び関節面の欠損を示したものである。
【図4】図4は実施例5における各群の病変の様子を示すカラム図で、基本的に表3の内容を表したものである。
【図5】図5は正常の関節軟骨におけるER-αの免疫組織化学染色の顕微図(対物レンズ40倍)である。正常の関節軟骨におけるER-αは表層、中間層及び肥大細胞層において発現されている。
【図6】図6は病変の関節軟骨におけるER-αの免疫組織化学染色の顕微図(対物レンズ40倍)である。関節面の破壊区域における軟骨細胞においては、ER-αの発現が欠けている。
【図7】図7は実施例6における各群の関節軟骨におけるER-αの免疫組織化学染色の顕微図(対物レンズ40倍)である。
【図8】図8は各群の関節軟骨におけるER-αの発現陽性率の比較のカラム図で、基本的に表4の内容を表したものである。
【図9】図9は正常の関節軟骨のTUNEL染色の顕微図(対物レンズ40倍)である。図中、アポトーシス細胞が少量で石灰化軟骨細胞層及び肥大軟骨細胞層に分布し、矢印で示されている。
【図10】図10は各群の関節軟骨のTUNEL染色の顕微図(対物レンズ40倍)である。
【図11】図11は実施例7における各群の関節軟骨のアポトーシス指数の比較のカラム図で、基本的に表5の内容を表したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下述式のソファリコシドの、閉経後女性の関節軟骨退化を予防及び/又は治療する医薬品の製造のための使用:
【化1】

3-[4-(β-D-グルコピラノシジル)-フェニル]-5,7-ジヒドロ-4H-1-ベンゾピラン-4-オン(4',5,7-トリヒドロキシイソフラボン-4'-D-グルコシド)。
【請求項2】
下述式のソファリコシドの、閉経後女性の骨関節炎を予防及び/又は治療する医薬品の製造のための使用:
【化2】

3-[4-(β-D-グルコピラノシジル)-フェニル]-5,7-ジヒドロ-4H-1-ベンゾピラン-4-オン(4',5,7-トリヒドロキシイソフラボン-4'-D-グルコシド)。
【請求項3】
前述のソファリコシドがマメ科植物から得られたものであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前述のソファリコシドが大豆或いはカイカクから得られたものであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2011−529924(P2011−529924A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521427(P2011−521427)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際出願番号】PCT/CN2009/073120
【国際公開番号】WO2010/015205
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(511032257)
【氏名又は名称原語表記】DU,Ning
【住所又は居所原語表記】12A/4,118 Ziyun Rd.,Shanghai 200051,P.R.China
【Fターム(参考)】