説明

ソフトカプセル及びその製造方法

【課題】カプセル皮膜の組成物におけるカラギナンの含有率を高くして硬度を維持する反面、カラギナンによる増粘効果やゲル化速度を緩和して、カプセルの製造性を安定させ、保存性や、乾燥後における手指での割れやすさや、割れる際の音や感触などの付加価値の得られるソフトカプセルと、その製造方法を提供すること。
【解決手段】ソフトカプセルにおいて、カプセル皮膜の組成物に、カラギナンと、酸性pH調整剤、中和剤とを少なくとも含有させる。カラギナンを酸性pH調整剤によって分解する工程と、その分解を中和剤によって停止する工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプセル皮膜の組成物にカラギナンを有するソフトカプセルと、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ソフトカプセルは、医薬品・化粧品・健康食品などの分野で広く使用されている。近年、その用途は広がり、従来のように、カプセル皮膜の強度を上げて割れにくくする技術のみではなく、逆に割れやすくする技術も求められてきている。
割れやすくする技術の用途としては、例えば、香料等を内包したカプセルをタバコのフィルターに埋設して、喫煙時などにカプセルを割って香りを楽しんだり、カプセルが割れる際の音や感触を楽しむことなどが挙げられる。しかし、それを好適に実現する従来技術はない。
【0003】
一般に、カプセルを割れやすくするためには、カプセル皮膜を薄くしていた。例えば、特許文献1には、継ぎ目のあるソフトカプセルにおいて、その継ぎ目の接着面を斜めにしたり、特殊な金型を用いてフリンジを設けて接着部分のみを厚くすることが開示されている。特許文献2には、入浴剤用の継ぎ目のあるソフトカプセルにおいて、皮膜の接着部分が局部的に薄くなることを抑えることが開示されている。
しかし、カプセル皮膜を薄くすると硬度は低くなるが、カプセル皮膜自体に相応の可塑性があるため、カプセルは心地よく割れずに変形してしまう。
【0004】
その問題を避けるために、カプセル皮膜におけるゲル化剤の含有率を増やすと、高粘度になり、カプセル製造が困難になってしまう。
例えば皮膜のゲル化剤として、カラギナンを使用することが公知である。しかし、カラギナンは増粘効果が高く、かつ、ゲル化速度も速いので、多量のカラギナンを含有することはカプセル化の妨げになる。すなわち、カラギナンの含有率が高い場合、高粘度と早いゲル化のために、真球性の悪さや射出ノズル先端での固まりやすさなど、カプセルの成形性が悪く、好ましいカプセルが製造できなかった。
【0005】
この対策として、例えば特許文献3には、カラギナンに、皮膜の固形分濃度を高くする基剤や充填剤として、デンプンや、デキストリン、非ゲル化多糖類などを配合して、低粘性とゲル化速度の緩和を図ることが開示されている。
しかし、吸湿性が高いことが周知であるゼラチンを皮膜に採用した場合は勿論、ゼラチンより吸湿性が低いとされているカラギナンを採用した場合であっても、デンプンや、デキストリン、非ゲル化多糖類などを配合すると、湿度の影響を受けやすくなり、乾燥後における手指での割れやすさ、割れる際の音や感触などの付加価値を、経時的に安定して得ることはできない。
【0006】
なお、特許文献4〜5には、カプセル皮膜におけるカラギナンの含有率が高いものも開示されているが、それによる作用効果については特に言及がない。特許文献4には、クエン酸ナトリウム等と炭酸塩中和剤等を用いることが記載され、酸はカラギナンの分解を助長するものであるが、中和剤は劣化を抑止するものとしての開示にとどまっている。
また、特許文献6には、カラギナンにクエン酸カリウム等を加えることが記載されているが、粘性及び弾性を調整するものとしての開示にとどまっている。
また、特許文献7〜14には、タバコのフィルターにカプセルを埋設することが開示されているが、カプセルの製造性や、保存性、乾燥後における手指での割れやすさ、割れる際の音や感触などの付加価値については考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−288075
【特許文献2】特開平5−51315
【特許文献3】US6214376B1
【特許文献4】特表2002−517378
【特許文献5】特表2007−526210
【特許文献6】特開2008−237572
【特許文献7】特表2009−504175
【特許文献8】特表2008−528053
【特許文献9】特表2008−546400
【特許文献10】特開2008−43347
【特許文献11】特表2007−507230
【特許文献12】特表2007−520204
【特許文献13】特開2003−304856
【特許文献14】特開昭64−60363
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、カプセル皮膜の組成物におけるカラギナンの含有率を高くして硬度を維持する反面、カラギナンによる増粘効果やゲル化速度を緩和して、カプセルの製造性を安定させ、保存性や、乾燥後における手指での割れやすさや、割れる際の音や感触などの付加価値を得られるソフトカプセルと、その製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のソフトカプセルは、カプセル皮膜の組成物に、カラギナンと、酸性pH調整剤、中和剤とを少なくとも有することを特徴とする。
【0010】
ここで、カプセル皮膜の組成物に、可塑剤、アルギン酸塩類、糖類、デキストリン類、でん粉、加工でん粉のいずれかを含有させてもよい。
例えば、可塑剤は、成形性の向上、アルギン酸塩類は、湿度に対する耐久性の向上に寄与する。なお、アルギン酸塩類は、ただ単に添加するのみでもかまわないが、カルシウムイオンを含む水溶液中でゲル化処理を施してもよい。
【0011】
カラギナンとして、酸性pH調整剤による分解で粘度の調整されたものを用いて、成形性の向上に寄与させてもよい。
【0012】
カプセル皮膜の組成物におけるカラギナンの含有率は、50%以上、好ましくは70%以上としてもよい。なお、この含有率は、水分を除いての値である。
【0013】
皮膜率は、5〜20%、好ましくは7〜15%としてもよい。なお、この皮膜率は、カプセル全体に占めるカプセル皮膜の質量の割合である。
【0014】
カプセル皮膜の厚さは、40μm以下、好ましくは30μm以下としてもよい。
【0015】
カプセル皮膜の硬度は、5〜40Nとするのが好ましい。5Nより小さいと、製造工程中に不都合が生じやすく、40Nを超えると、指でつぶす場合に困難性が高まるからである。より好ましくは10〜20Nとしてもよい。なお、この場合の硬度測定は、一般的な「木屋式硬度計」を使用できる。「木屋式硬度計」は、試料を試料台の上に置き、上方から円柱形の加圧子を徐々に降ろし、破裂したときの圧力を記録するものである。本発明における検討では、「(株)藤原製作所製、木屋式デジタル硬度計KHT−20N型」を使用した。この装置は、円筒状の加圧子が電動で一定速度で降りるタイプで、昇降速度1mm/秒、加圧面の直径5mm、試料台の直径25mmというものである。
【0016】
カプセルの直径は、0.5〜15mmが好ましい。直径0.5mmより小さいと、指でつぶすために掴むことが困難となる。直径15mmを超えると、内容量が大きくなり、指でつぶした際に周囲を汚染するおそれがある。より好ましくは1〜8mmとしてもよい。
【0017】
カプセルとしては、シームレスカプセルに有用に適用できる。
シームレスカプセルは、例えば、従来公知の滴下法によって製造できる。滴下法の典型例は、同心二重ノズルを用いて、外側ノズルからはゲル化剤水溶液等を含む皮膜液を、内側ノズルからは内容物を、各々同時に二重液滴として、皮膜液がゲル化する液の中へ滴下し、外側の皮膜液をゲル化、硬化させてカプセル皮膜とし、継目の無いシームレスカプセルとする製法である。液中硬化法やオリフィス法とも呼ばれることがある。二重ノズルの代わりに三重以上の多重ノズルを用いることも可能である。
【0018】
アルギン酸塩類の含有率をカラギナンの50%以下として、過剰な粘度を抑制してもよい。
【0019】
ロウ類またはワックス類から成るコーティングを施して、耐湿性に寄与させてもよい。
【0020】
本発明のソフトカプセルの製造方法は、その皮膜の調製方法において、カプセル皮膜の組成物となるカラギナンを酸性pH調整剤によって分解する工程と、その分解を中和剤によって停止する工程とを備えることを特徴とする。すなわち、酸による分解で、分子量と粘度を低減させ、アルカリによる中和で分解を停止させて、所望の粘度に設定させられる。
【0021】
ここで、カラギナンを分解する程度を、カプセルの内容物に応じ、好ましい粘度までに調整してもよい。この場合の好ましい粘度とは、30〜150mPa・s、より好ましくは50〜100mPa・sである。なお、粘度測定は、「(株)トキメック製、C型粘度計・CVR−20」で液温75℃にて、100mPa・s以下の場合はロータNo.0を使用し、100mPa・sを超えるときはロータNo.1を使用して測定できる。
【0022】
カプセル皮膜の組成物としてアルギン酸塩類を加え、アルギン酸塩類は、カルシウムイオンを含むゲル化助剤水溶液中でゲル化処理し、耐湿性に寄与させてもよい。
【0023】
ゲル化助剤水溶液に、エタノールを含有させて用いて、カプセルの洗浄に寄与させてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、カラギナンを、酸性pH調整剤によって分解すると共に、その分解を中和剤によって停止させて、所望の粘度に調整できる。また、カラギナンによるゲル化速度も緩和し、カプセルの製造性を安定させられる。カラギナンの含有率を高くして硬度を維持することができ、手指で割れやすく、割れる際の音や感触などの付加価値も提供可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明の実施形態を、表1〜8に示す実施例を基に説明する。なお、実施形態は下記の例示に限らず、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で、前記文献など従来公知の技術を用いて適宜設計変更可能である。
本発明者は、ソフトカプセルの製造にあたって、カラギナンを酸で処理することで有用な結果が得られた知見を基に、本発明に至った。
【0026】
本発明によるソフトカプセルは、カプセル皮膜の組成物に、カラギナンと、酸性pH調整剤、中和剤とを少なくとも有する。
主成分のカラギナンは、κ,ι,λ等のタイプや原料などによって細分類され得るが、基本的にはこれらの内、κタイプが必須であり、ι,λはいずれも適宜利用可能である。
また、例えば日本の食品衛生法では、食品添加物として使用できるカラギナンとして、精製カラギナン・加工ユーケマ藻類・ユーケマ藻類が規定されているが、これらのいずれも使用可能であり、食品添加物としての利用は提供先となる各国の法規による。
従来技術では、ゼラチンを主成分とするものが多いが、カラギナンを主成分とするものには、付着性の低さや、湿度による影響が少ないなどの利点がある。
【0027】
一方、カラギナンには、増粘効果が高くゲル化が速い特徴があるので、含有率を高くすると、射出ノズル付近で固化してしまったり真球性が劣化したりするなど、カプセルの成形が困難になる。逆に、含有率を低くすると、皮膜固形分が減少し、カプセル強度が下がり、乾燥工程に耐えられないなどの難点が生じてしまう。また一般に、皮膜率が低いと、カプセルの成形が困難になる。
それに対し、本発明では、無機酸・有機酸のいずれか一方または両方と、各種カチオンを含有させることで、カラギナンに起因する問題点を改善し、しかも、得られたカプセルは、湿度条件によらずに硬さが一定の硬度40N以下であり、手指で簡単に割ることができ、カプセルが割れるときに生じるパチンという音及び感触が心地よいものとなった。また、略球形のシームレスカプセルが得られるので、美観の点でも好ましい成形が容易である。
【0028】
カプセル皮膜の組成物におけるカラギナンの含有率は、50%以上、好ましくは70%以上にする。また、皮膜率は、5〜20%、好ましくは7〜15%の低さにする。
このように低い皮膜率であっても、乾燥工程や輸送過程においても、破裂や変形のない良好なカプセルが得られた。
また、製造性や割れやすさなどの点から、カプセル皮膜の硬度は、5〜40N、好ましくは10〜20N、カプセル皮膜の厚さは、40μm以下、好ましくは30μm以下、掴みやすさや内容量などの点から、カプセルの直径は、0.5〜15mm、好ましくは1〜8mmであることが好適である。
【0029】
ソフトカプセルの製造には、カプセル皮膜の組成物となるカラギナンを酸性pH調整剤によって分解する工程と、その分解を中和剤によって停止する工程とを含む。すなわち、酸による分解で、分子量と粘度を低減させ、アルカリによる中和で分解を停止させて、所望の粘度に設定する。
カラギナンを分解する程度は、カプセルの内容物との兼ね合いなどによって、好ましい粘度までに調整する。
【0030】
酸性pH調整剤としては、クエン酸や、リンゴ酸、酢酸、ギ酸、シュウ酸、乳酸、フィチン酸、塩酸など、弱酸・強酸、有機酸・無機酸は勿論、リン酸水素一カリウムなど、中性域の液を酸性域に変えられるものであれば何でも使用可能である。
【0031】
中和剤としては、使用する酸性pH調整剤に対応させたアルカリが使用でき、例えば、リン酸水素2カリウムや、クエン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなど、酸性域の液を中和できるものであれば何でも使用可能である。
【0032】
通常は、成形性の向上のために、可塑剤を加える。好適な可塑剤としては、グリセリンや、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール、ブドウ糖や、果糖、グルコース、ガラクトースなどの単糖類、ショ糖、麦芽糖、トレハロース、カップリングシュガーなどの2糖類及びオリゴ糖、プルラン、アラビアガム、アラビノガラクタン、セルロースなどの多糖類、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、パラチニット、キシリトール、マンニトール、ガラクチトールなどの糖アルコールなどが挙げられる。
【0033】
また、湿度に対する耐久性を向上させるために、アルギン酸塩類を含んでいてもよい。アルギン酸塩類としては、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムなどが挙げられる。
なお、カプセル中に含まれているアルギン酸塩類は、カルシウムイオンを含む水溶液(例:塩化カルシウム水溶液、乳酸カルシウム水溶液など。以下、ゲル化助剤水溶液という。)中でゲル化処理を施してもよい。
アルギン酸カルシウムは、原料としての使用には適さないが、その後のゲル化助剤水溶液中のカルシウムイオンとの反応によって、各種アルギン酸塩類からアルギン酸カルシウムに変化し得るので、最終的なカプセルの中には含まれ得る。ゲル化処理の方法としては、(1)皮膜液調製時にアルギン酸ナトリウムを溶解後にゲル化助剤水溶液を添加する方法、(2)カプセル形成後、乾燥前に(カプセル皮膜に水分が含まれている状態で)ゲル化助剤水溶液に浸漬する方法、(3)カプセル形成後、乾燥したカプセルをゲル化助剤水溶液に浸漬する方法などを例示することができる。
なお、本発明において、アルギン酸塩類は必須成分ではなく、あくまでも吸湿防止目的の任意的添加物である。
【0034】
本発明においてカプセル中に含まれているアルギン酸塩類をゲル化させる方法は、前記(1)(2)(3)のいずれの方法も適用できるが、前記(3)の方法が最適である。
前記(3)の方法で処理する場合の浸漬処理時間に関しては、特に限定されるものではないが、あまり長時間処理を行っても効果が増強されないため、10分以内が好ましく、1〜3分程度が最も好ましい。
【0035】
浸漬するゲル化助剤水溶液としては、水溶液にした時にカルシウムイオンを生ずるものであればよく、例えば、塩化カルシウム水溶液、乳酸カルシウム水溶液、炭酸水素カルシウム水溶液、酢酸カルシウム水溶液、硝酸カルシウム水溶液などを挙げることができる。
塩化カルシウム水溶液を用いた場合の最適な水溶液濃度は1質量%以下である。
【0036】
ゲル化助剤水溶液には、エタノールを含有させてもよい。エタノールを多く含んだ場合には、カプセルの洗浄工程も合わせて行えるため、製造の利便性が高まる。
【0037】
アルギン酸塩類を配合する分量は特に限定されないが、カラギナンの50%以下の質量であることが好ましい。アルギン酸塩類の含有量が多過ぎると、粘度が増し、カプセルの成形性に影響を及ぼすことがあり得る。
【0038】
また、さらに、吸湿防止性を高めるために、後述のロウ類及びワックス類などの各種コーティング剤でコーティングを施してもよい。
コーティング方法としては、乾燥後のカプセルに、コーティング剤を揮発性溶媒などに溶解または分散したものを噴霧または塗布し、揮発性溶媒を揮散させる方法(上掛け法)、コーティング剤を揮発性溶媒などに溶解または分散させたものに乾燥後のカプセルを浸漬し、揮発性溶媒を揮散させる方法(ディップ法)、カプセル皮膜液調製時に予め分散・懸濁させておく方法(練り込み法)などを挙げることができ、特にその方法に制限はない。
なお、コーティング剤をカプセル皮膜に導入する場合には、分散性や懸濁性を高めるために、乳化剤を適宜配合してもよい。
【0039】
また、割れやすさの調整のために、基剤として、デキストリン類や、でん粉、加工でん粉などを加えてもよい。逆に、デキストリン類や、でん粉、加工でん粉を一切加えなくてもよい。
【0040】
カプセルには、様々なものを含有できる。
以下に、カプセルに含有し得るものを例示する。これら各成分は、カプセル剤中のいかなる部分にも含有可能である。
【0041】
油脂類として、アボカド油、アーモンド油、亜麻仁油、ウイキョウ油、エゴマ油、オリーブ油、オリーブスクワレン、オレンジ油、オレンジラファー油、ゴマ油、ガーリックオイル、カカオ脂、カボチャ種子オイル、カミツレ油、カロット油、キューカンバー油、牛脂脂肪酸、ククイナッツ油、クランベリー種子油、玄米胚芽油、米油、小麦胚芽油、サフラワー油、シア脂、液状シア脂、シソ油、大豆油、月見草油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ノコギリヤシエキスオイル、ハトムギ油、パーシック油、パセリ種子油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ボラージ油、マカデミアナッツ油、メドウホーム油、綿実油、落花生油、タートル油、ミンク油、卵黄油、魚油、パーム油、パーム核油、モクロウ、ヤシ油、長鎖・中鎖・短鎖の脂肪酸トリグリセリド、ジアシルグリセライド、牛脂、豚脂、スクワレン、スクワラン、プリスタン、並びに、これら油脂類の水素添加物などが含有可能である。
【0042】
ロウ類及びワックス類として、シェラックロウ、ミツロウ、カルナバロウ、鯨ロウ、ラノリン、液状ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、環状ラノリン、ラノリンワックス、キャンデリラロウ、モクロウ、モンタンロウ、セラックロウ、ライスワックスなどが含有可能である。硬化油として、植物油脂を水素添加して得られる植物硬化油、牛脂硬化油、豚脂硬化油などが含有可能である。
【0043】
鉱物油として、流動パラフィン、ワセリン、パラフィン、オゾケライド、セレシン、マイクロクリスタリンワックスなどが含有可能である。
【0044】
脂肪酸類として、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、共役リノール酸、リノレン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、トール油、ラノリン脂肪酸等の天然脂肪酸、イソノナン酸、カプロン酸、2-エチルブタン酸、イソペンタン酸、2-メチルペンタン酸、2-エチルヘキサン酸、イソペンタン酸等の合成脂肪酸および、これら脂肪酸を脂肪酸組成として含む油脂などが含有可能である。
【0045】
ビタミン類として、ビタミンA群:レチノール、レチナール(ビタミンA1)、デヒドロレチナール(ビタミンA2)、カロチン、リコピン(プロビタミンA)、ビタミンB群:フルスルチアミン、チアミン塩酸塩、チアミン硫酸塩(ビタミンB1)、リボフラビン(ビタミンB2)、ピリドキシン(ビタミンB6)、シアノコバラミン、メチルコバラミン(ビタミンB12)、葉酸類、ニコチン酸類、パントテン酸類、ビオチン類、コリン、イノシトール類、ビタミンC群:アスコルビン酸またはその誘導体、ビタミンD群:エルゴカルシフェロール(ビタミンD2)、コレカルシフェロール(ビタミンD3)、ジヒドロタキステロール、ビタミンE群:ビタミンEまたはその誘導体、ユビキノン類、ビタミンK群:フィトナジオン(ビタミンK1)、メナキノン(ビタミンK2)、メナテトレノン、メナジオン(ビタミンK3)、メナジオール(ビタミンK4)、その他、必須脂肪酸(ビタミンF)、カルニチン、フェルラ酸、γ−オリザノール、オロット酸、ビタミンP類(ルチン、エリオシトリン、ヘスペリジン)、ビタミンUなどが含有可能である。
【0046】
刺激剤として、トウガラシチンキ、トウガラシオイル、ノニル酸バニルアミド、カンタリスチンキ、ショウキョウチンキ、ショウキョウ油、ハッカ油、l-メントール、カンフル、ニコチン酸ベンジルなどが含有可能である。
【0047】
紫外線吸収や遮断剤として、ベンゾフェノン誘導体(2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン−スルホン酸ナトリウム、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン等)、パラアミノ安息香酸誘導体(パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸オクチル等)、メトキシ桂皮酸誘導体(パラメトキシ桂皮酸エチル、パラメトキシ桂皮酸イソプロピル、パラメトキシ桂皮酸オクチル、パラメトキシ桂皮酸2-エトキシエチル、パラメトキシ桂皮酸ナトリウム、パラメトキシ桂皮酸カリウム、ジパラメトキシ桂皮酸モノ-2-エチルヘキサン酸グリセリル等)、サリチル酸誘導体(サリチル酸オクチル、サリチル酸フェニル、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸ジプロピレングリコール、サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸ミリスチル、サリチル酸メチル等)、アントラニル酸誘導体(アントラニル酸メチル等)、ウロカニン酸誘導体(ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル等)、クマリン誘導体、アミノ酸系化合物、ベンゾトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、イミダゾリン誘導体、ピリミジン誘導体、ジオキサン誘導体、カンファー誘導体、フラン誘導体、ピロン誘導体、核酸誘導体、アラントイン誘導体、ニコチン酸誘導体、ビタミンB6誘導体、ウンベリフェロン、エスクリン、桂皮酸ベンジル、シノキサート、オキシベンゾン、ジオキシベンゾン、オクタベンゾン、スリソベンゾン、ベンゾレソルシノール、アルブチン、グアイアズレン、シコニン、バイカリン、バイカレイン、ベルベリン、ネオヘリオパン、エスカロール、酸化亜鉛、タルク、カオリンなどが含有可能である。
【0048】
美白剤として、パラアミノ安息香酸誘導体、サルチル酸誘導体、アントラニル酸誘導体、クマリン誘導体、アミノ酸系化合物、ベンゾトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、イミダゾリン誘導体、ピリミジン誘導体、ジオキサン誘導体、カンファー誘導体、フラン誘導体、ピロン誘導体、核酸誘導体、アラントイン誘導体、ニコチン酸誘導体、ビタミンCまたはその誘導体(ビタミンCリン酸エステルマグネシウム塩、ビタミンCグルコシド等)、ビタミンEまたはその誘導体、コウジ酸またはその誘導体、オキシベンゾン、ベンゾフェノン、アルブチン、グアイアズレン、シコニン、バイカリン、バイカレイン、ベルベリン、胎盤エキス、エラグ酸、ルシノールなどが含有可能である。
【0049】
チロシナーゼ活性阻害剤として、ビタミンCまたはその誘導体(ビタミンCリン酸エステルマグネシウム塩、ビタミンCグルコシド等)、ハイドロキノンまたはその誘導体(ハイドロキノンベンジルエーテル等)、コウジ酸またはその誘導体、ビタミンEまたはその誘導体、N−アセチルチロシンまたはその誘導体、グルタチオン、過酸化水素、過酸化亜鉛、胎盤エキス、エラグ酸、アルブチン、ルシノール、シルク抽出物、植物エキス(カミツレ、クワ、クチナシ、トウキ、ワレモコウ、クララ、ヨモギ、スイカズラ、キハダ、ドクダミ、マツホド、ハトムギ、オドリコソウ、ホップ、サンザシ、ユーカリ、セイヨウノコギリソウ、アルテア、ケイヒ、マンケイシ、ハマメリス、カラグワまたはヤマグワ、延命草、桔梗、トシシ、続随子、射干、麻黄、センキュウ、ドッカツ、サイコ、ボウフウ、ハマボウフウ、オウゴン、牡丹皮、シャクヤク、ゲンノショウコ、葛根、甘草、五倍子、アロエ、ショウマ、紅花、緑茶、紅茶、阿仙薬)などが含有可能である。
【0050】
メラニン色素還元や分解物質として、フェニル水銀ヘキサクロロフェン、酸化第二水銀、塩化第一水銀、過酸化水素水、過酸化亜鉛、ハイドロキノンまたはその誘導体などが含有可能である。
【0051】
ターンオーバーの促進作用や細胞賦活物質として、ハイドロキノン、乳酸菌エキス、胎盤エキス、霊芝エキス、ビタミンA、ビタミンE、アラントイン、脾臓エキス、胸腺エキス、酵母エキス、発酵乳エキス、植物エキス(アロエ、オウゴン、スギナ、ゲンチアナ、ゴボウ、シコン、ニンジン、ハマメリス、ホップ、ヨクイニン、オドリコソウ、センブリ、トウキ、トウキンセンカ、アマチャ、オトギリソウ、キュウリ、タチジャコウソウ、マンネンロウ、パセリ)などが含有可能である。
【0052】
収斂剤として、コハク酸、アラントイン、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、酸化亜鉛、カラミン、パラフェノールスルホン酸亜鉛、硫酸アルミニウムカリウム、レゾルシン、塩化第二鉄、タンニン酸(カテキン化合物を含む)などが含有可能である。
【0053】
活性酸素消去剤として、SOD、カタラーゼ、グルタチオンパーオキシダーゼなどが含有可能である。
【0054】
抗酸化剤として、ビタミンCまたはその塩、ステアリン酸エステル、ビタミンEまたはその誘導体、ノルジヒドログアセレテン酸、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ヒドロキシチロソール、パラヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、セサモール、セサモリン、ゴシポール、プロポリスなどが含有可能である。
【0055】
過酸化脂質生成抑制剤として、β-カロチン、植物エキス(ゴマ培養細胞、アマチャ、オトギリソウ、ハマメリス、チョウジ、メリッサ、エンメイソウ、シラカバ、サルビア、マンネンロウ、南天実、エイジツ、イチョウ、緑茶)などが含有可能である。
【0056】
抗炎症剤として、イクタモール、インドメタシン、カオリン、サリチル酸、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸メチル、アセチルサリチル酸、塩酸ジフェンヒドラミン、d-カンフル、dl-カンフル、ヒドロコルチゾン、グアイアズレン、カマズレン、マレイン酸クロルフェニラミン、グリチルリチン酸またはその塩、グリチルレチン酸またはその塩、甘草エキス、シコンエキス、エイジツエキス、プロポリスなどが含有可能である。
【0057】
抗菌・殺菌・消毒薬として、アクリノール、イオウ、グルコン酸カルシウム、グルコン酸クロルヘキシジン、スルファミン、マーキュロクロム、ラクトフェリンまたはその加水分解物、塩化アルキルジアミノエチルグリシン液、トリクロサン、次亜塩素酸ナトリウム、クロラミンT、サラシ粉、ヨウ素化合物、ヨードホルム、ソルビン酸またはその塩、プロピオン酸またはその塩、サルチル酸、デヒドロ酢酸、パラヒドロキシ安息香酸エステル類、ウンデシレン酸、チアミンラウリル硫酸塩、チアミンラウリル硝酸塩、フェノール、クレゾール、p-クロロフェノール、p-クロロ-m-キシレノール、p-クロロ-m-クレゾール、チモール、フェネチルアルコール、O-フェニルフェノール、イルガサンCH3565、ハロカルバン、ヘキサクロロフェン、クロロヘキシジン、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、2-フェノキシエタノール、1,2-ペンタンジオール、ジンクピリジオン、クロロブタノール、イソプロピルメチルフェノール、非イオン界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等)、両性界面活性剤、アニオン界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンカリウム等)、カチオン界面活性剤(臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化メチルロザニリン)、ホルムアルデヒド、ヘキサミン、ブリリアントグリーン、マラカイトグリーン、クリスタルバイオレット、ジャーマル、感光素101号、感光素201号、感光素401号、N-長鎖アシル塩基性アミノ酸誘導体及びその酸附加塩、酸化亜鉛、ヒノキチオール、クジン、プロポリスなどが含有可能である。
【0058】
保湿剤として、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリカプリルカプリン酸グリセリン、グリコール酸(αーヒドロキシ酸)、ヒアルロン酸またはその塩、コンドロイチン硫酸またはその塩、水溶性キチンまたはその誘導体或いはキトサン誘導体、ピロリドンカルボン酸またはその塩、乳酸ナトリウム、尿素、ソルビトール、アミノ酸またはその誘導体(バリン、ロイシン、イソロイシン、トレオニン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、リジン、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、システイン、シスチン、チロシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒドロキシリジン、アルギニン、オルニチン、ヒスチジンや、それらの硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、或いはピロリドンカルボン酸)などが含有可能である。
【0059】
各種有機酸として、グリコール酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、フェルラ酸、フィチン酸などが含有可能である。
【0060】
頭髪用剤として、二硫化セレン、臭化アルキルイソキノリニウム液、ジンクピリチオン、ビフェナミン、チアントール、カスタリチンキ、ショウキョウチンキ、トウガラシチンキ、塩酸キニーネ、強アンモニア水、臭素酸カリウム、臭素酸ナトリウム、チオグリコール酸などが含有可能である。
【0061】
香料として、ジャコウ、シベット、カストリウム、アンバーグリス等の天然動物性香料、アニス精油、アンゲリカ精油、イランイラン精油、イリス精油、ウイキョウ精油、オレンジ精油、カナンガ精油、カラウェー精油、カルダモン精油、グアヤクウッド精油、クミン精油、黒文字精油、ケイ皮精油、シンナモン精油、ゲラニウム精油、コパイババルサム精油、コリアンデル精油、シソ精油、シダーウッド精油、シトロネラ精油、ジャスミン精油、ジンジャーグラス精油、杉精油、スペアミント精油、西洋ハッカ精油、大茴香精油、チュベローズ精油、丁字精油、橙花精油、冬緑精油、トルーバルサム精油、バチュリー精油、バラ精油、パルマローザ精油、桧精油、ヒバ精油、白檀精油、プチグレン精油、ベイ精油、ベチバ精油、ベルガモット精油、ペルーバルサム精油、ボアドローズ精油、芳樟精油、マンダリン精油、ユーカリ精油、ライム精油、ラベンダー精油、リナロエ精油、レモングラス精油、レモン精油、ローズマリー(マンネンロウ)精油、和種ハッカ精油等の植物性香料、その他コーヒーフレーバー、ヨーグルトフレーバー等の合成香料などが含有可能である。
【0062】
このような含有物に応じて、様々な用途が可能である。
例えば、たばこに付属しているフィルターや、たばこに取り付けるためのフィルターの内部に、香料等を内包したカプセルを埋設すれば、喫煙時に指でつぶしてカプセルがつぶれる音や感触と香りが得られる。また、マスク内に、揮発または蒸発または昇華して、鼻のとおりが良くなるメントール等の成分を内包したカプセルを埋設すれば、鼻づまり時にカプセルをつぶして鼻づまりを改善できる。また、グレーティングカードにフレーバーを内包したカプセルを設置すれば、受取人がカプセルをつぶして音や感触と香りを得られる。
その他、医薬品や、健康食品、食品、化粧品、清掃用品等の日用品などに適用可能である。
【実施例】
【0063】
(実施例1)
表1は、本発明による実施例のカプセル皮膜の組成を示す表である。
【0064】
【表1】

【0065】
カプセル内容物としてl−メントール30%MCT溶液を、皮膜率8.0%、皮膜厚25.0μm、直径4mmのカプセルに充填してシームレスカプセルを製造した。ただし、本実施例では、カルシウム処理によりアルギン酸ナトリウムをアルギン酸カルシウムに置換する処理を行っていない。
乾燥後の硬度を測定すると、15N((株)藤原製作所製 木屋式デジタル硬度計KHT−20N型、サンプル数20)であった。
得られたソフトカプセルを、乾燥後にタバコフィルターに埋設したところ、手指で容易にパチンと音を立てて割れ、カプセルが割れる音と感触を楽しめた。またメントールの爽快な香りも楽しめた。
更に、高湿条件下での安定性のテストとして、カプセルをフィルターに埋設したタバコを、25℃85%RHの環境下に10分間放置後、同様のテストをしたところ、前記とほぼ同様の結果が得られた。
【0066】
(比較例1)
表2は、比較例1のカプセル皮膜の組成を示す表である。
【0067】
【表2】

【0068】
カプセル内容物としてl−メントール30%MCT溶液を、皮膜率9.0%、皮膜厚45.0μm、直径4mmのカプセルに充填してシームレスカプセルを製造した。なお、ゼラチン皮膜の場合、皮膜率9.0%よりも低い場合、良好なカプセルを得られにくかった。
乾燥後の硬度を測定すると、40N((株)藤原製作所製 木屋式デジタル硬度計KHT−20N型、サンプル数20)であった。
得られたソフトカプセル組成物を、実施例1と同様にタバコフィルターに埋設し手指で挟んだところ、割れたが、割れにくく、指に痛みを生じ、割れる感触や音は楽しめなかった。
また、実施例1と同様に、カプセルをフィルターに埋設したタバコを、25℃85%RHの環境下に10分間放置したところ、カプセルが軟化して、変形はするものの一層割れにくくなった。
【0069】
(比較例2)
表3は、比較例2のカプセル皮膜の組成を示す表である。
【0070】
【表3】

【0071】
カプセル内容物としてl−メントール30%MCT溶液を、皮膜率9.0%、直径4mmのシームレスカプセル形成を試みた。
しかし、乾燥時にカプセルが割れてしまい、製品は製造できなかった。
【0072】
(比較例3)
比較例2と同様の条件で、皮膜率を30%に変えたところ、直径4mmのシームレスカプセルを製造できた。乾燥後の硬度は40Nであった。
しかし、手指で割ることは困難であった。
【0073】
(比較例4)
比較例2と同様の条件で、皮膜率を20%に変えたところ、直径4mmのシームレスカプセルを成形できた。
しかし、乾燥時に2割程のカプセルが割れてしまい、収率が悪く、安定した製造はできなかった。また、デキストリンの吸湿性に起因して、形状がいびつで、球状のカプセルは製造できなかった。
数少ない良品を選別して試験に供したところ、製造品の乾燥後の硬度は25Nであった。手指で割ると、割れたが、割れにくく、指に痛みを生じた。また、25℃85%RHの環境下に10分間放置したところ、カプセルは皺だらけになると共に軟化し、押してもプスッとつぶれるだけであった。
【0074】
(実施例2)
前記実施例1で得られたカプセルを使用して、湿度に対する耐久性を向上させるためにカルシウムイオンを含む水溶液中でゲル化処理を施した後、再乾燥したサンプルにおいて、その浸漬処理時間を検討した。
表4は、浸漬処理時間による影響の評価を示す表である。
【0075】
【表4】

【0076】
前期実施例1のカプセル形成後、乾燥したカプセルをゲル化助剤水溶液として塩化カルシウム5%水溶液を用いゲル化処理を行った後、再乾燥したサンプルを、40℃75%の保存条件で一定時間保存(保存容器の蓋は開放状態にした。以下、このことを「カプセル開放」と記載する。)した。表5における1/10などの数値は、保存後のカプセルが手指でパチンとつぶれなかった数の割合を示す。
浸漬処理時間として、1分、10分、60分を比較した結果、1分のものが最適であった。浸漬時間が長時間になると、再乾燥時間が長時間化し、カルシウム処理の効果も薄れていく結果となった。
【0077】
(実施例3)
同様に、前記実施例1で得られたカプセルを使用して、湿度に対する耐久性を向上させるためにカルシウムイオンを含む水溶液中でゲル化処理を施した後、再乾燥したサンプルにおいて、そのカルシウム濃度を検討した。
表5は、カルシウム濃度による影響の評価を示す表である。なお、表の下部2行における分数は、手指によりカプセルをつぶす試験の結果、不良なつぶれ方をしたサンプルの割合(NG数/n数)を表す。
【0078】
【表5】

【0079】
前記実施例1のカプセル形成後、乾燥したカプセルをゲル化助剤水溶液として塩化カルシウム及び乳酸カルシウム五水和物の水溶液を用い、浸漬処理時間1分でゲル化処理し、その後再乾燥したサンプルを、25℃90%の保存条件で12.5時間及び21.5時間保存(カプセル開放)した。
塩化カルシウムの濃度として、0(対照)、0.2、0.5、1、3、5質量%(水に対する外付け割合)を比較した結果、0%を超え1%以下のものが最適であった。また、これらの最適な結果と同等な乳酸カルシウム五水和物の濃度は、5質量%外付けのものであった。
【0080】
(実施例4)
同様に、前記実施例1で得られたカプセルを使用して、湿度に対する耐久性を向上させるためにカルシウムを含むエタノール溶液中に浸漬処理を施した後、エタノールを除去したサンプルにおいて、浸漬させる液の組成の差などによる効果の差を検討した。
表6は、処理条件を示す表であり、表7及び8は、保存条件による影響の評価を示す表であり、表7は手指によりつぶす試験の結果(分数は、手指によりカプセルをつぶす試験の結果、不良なつぶれ方をしたサンプルの割合(NG数/n数)を表す。)、表8は硬度を表す。なお、表8における硬度は、単位Nであり、サンプル数10の平均値、MAX、MIN、Rをそれぞれ表す。
【0081】
【表6】

【0082】
【表7】

【0083】
【表8】

【0084】
サンプル4A〜Cは比較例である。サンプル4Aは、カルシウムによる処理を行っていないものであり、サンプル4Bは、塩化カルシウム及びレシチンを含有するエタノールに浸漬したものであり、サンプル4Cは、塩化カルシウム水溶液とエタノールとの混液に浸漬したものである。
サンプル4Dは、塩化カルシウム水溶液(0.5質量%(溶媒に対する外付け割合))に浸漬処理時間1分でゲル化処理(一次処理)した後、送風による再乾燥処理を行い、エタノール中に1分浸漬(二次処理)し、カプセル表面のエタノールを除去したものである。エタノールの除去の方法としては、自然揮発、送風による揮発、遠心分離などの方法が利用できる。工業的には、遠心分離が好ましく使用される。
サンプル4E〜Kは、塩化カルシウム水溶液(0.25、0.5質量%)とエタノールとの混液(エタノール30、50、60質量%)に浸漬(1分)し、続けてエタノールまたはエタノール中に塩化カルシウム(0.5質量%)を溶解した液に浸漬(2分)した後、カプセル表面のエタノールを除去したものである。
いずれも、25℃90%の高湿度条件で保存(カプセル開放)した。
【0085】
手指によりつぶす試験の結果は、サンプル4D〜Kは良好であった。サンプル4D〜Kは、硬度の点でも良好であった。
カルシウム水溶液で浸漬処理を行った場合には、処理後の再乾燥が必要であり、一方、エタノール中にカルシウムを溶かした液で浸漬処理を行った場合には、カルシウムによる硬化処理の効果が薄れてしまう傾向があった。それに対し、本実施例の特にサンプル4E〜Kのように、カルシウム水溶液とエタノールの混液で一次浸漬処理を行い、その後、エタノールまたは塩化カルシウム入りエタノールで二次浸漬処理を行い、次いで、カプセル表面のエタノールを除去する方法は、作業効率と、カプセルの仕上がり及び耐湿性の点で好ましい。
【0086】
(実施例5)
同様に、湿度に対する耐久性を向上させるためにアルギン酸塩類を加え、カルシウムイオンを含む水溶液中でゲル化処理を施した後、再乾燥したサンプルにおいて、アルギン酸塩類と可塑剤の配合量を検討した。
表9は、アルギン酸塩類と可塑剤の配合量による影響の評価を示す表である。
【0087】
【表9】

【0088】
カプセル皮膜の組成には、アルギン酸ナトリウムの配合量として、1.0及び5.0質量%、可塑剤のグリセリンの配合量として、3.0、6.0、10.0質量%のものを用い、カプセル形成後、乾燥したカプセルを、ゲル化助剤水溶液として塩化カルシウム水溶液(塩化カルシウムの濃度として、0.5、1質量%(水に対する外付け割合))を用いて浸漬処理後、再乾燥したサンプルを、25℃90%の保存条件で13、38、60、92時間保存(カプセル開放)した。
その結果、アルギン酸ナトリウムの配合量による差も、可塑剤のグリセリンの配合量による差も認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明によるカプセルは、保存性が良好であり、手指で割れやすいので、割れる際の音や感触などの付加価値を得られ、様々な用途に適用できるので、実用的であり産業上利用価値が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シームレスソフトカプセルの皮膜の調製において、カプセル皮膜の組成物となるカラギナンを酸性pH調整剤によって分解し、その分解を中和剤によって停止し、滴下法によって製造されるシームレスソフトカプセルであって、
そのカプセル皮膜の組成物に、カラギナン少なくとも有することを特徴とするソフトカプセル。
【請求項2】
カプセル皮膜の組成物に、可塑剤、アルギン酸塩類、糖類、デキストリン類、でん粉、加工でん粉の少なくともいずれかを有する請求項1に記載のソフトカプセル。
【請求項3】
カラギナンが、酸性pH調整剤による分解で粘度の調整されたものである請求項1または2に記載のソフトカプセル。
【請求項4】
カプセル皮膜の組成物におけるカラギナンの含有率が、50%以上、好ましくは70%以上である請求項1ないし3のいずれかに記載のソフトカプセル。
【請求項5】
皮膜率が、5〜20%、好ましくは7〜15%である請求項1ないし4のいずれかに記載のソフトカプセル。
【請求項6】
カプセル皮膜の厚さが、40μm以下、好ましくは30μm以下である請求項1ないし5のいずれかに記載のソフトカプセル。
【請求項7】
カプセル皮膜の硬度が、5〜40N、好ましくは10〜20Nである請求項1ないし6のいずれかに記載のソフトカプセル。
【請求項8】
カプセルの直径が0.5〜15mm、好ましくは1〜8mmである請求項1ないし7のいずれかに記載のソフトカプセル。
【請求項9】
アルギン酸塩類の含有率が、カラギナンの50%以下である請求項2ないし8のいずれかに記載のソフトカプセル。
【請求項10】
ロウ類、ワックス類または硬化油から選ばれる一種以上から成るコーティングを有する請求項1ないし9のいずれかに記載のソフトカプセル。
【請求項11】
シームレスソフトカプセルの皮膜を調製する方法において、カプセル皮膜の組成物となるカラギナンを酸性pH調整剤によって分解する工程と、その分解を中和剤によって停止する工程とを備え、滴下法によって製造することを特徴とするソフトカプセルの製造方法。
【請求項12】
ゲル化助剤水溶液に、エタノールを含有させて用いる請求項11に記載のソフトカプセルの製造方法。

【公開番号】特開2012−1553(P2012−1553A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191389(P2011−191389)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【分割の表示】特願2010−546567(P2010−546567)の分割
【原出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(391010976)富士カプセル株式会社 (12)
【Fターム(参考)】