説明

ソフトカプセル用皮膜及びソフトカプセル

【課題】 高温・多湿下において従来のソフトカプセルに比較して表面に粘着性が生じ難いソフトカプセル用皮膜及びソフトカプセルを提供する。
【解決手段】 ソフトカプセル用皮膜は、エンドウ蛋白を含む。エンドウ蛋白とは、エンドウの子実中に20%程度含まれている蛋白質である。エンドウ蛋白は、例えば、完熟した黄色エンドウの子実を洗浄、乾燥し、外殻を取り除いた後、主に水を使用して蛋白質成分を抽出することにより得られる。ソフトカプセル用皮膜は、ゼラチン100重量部に対してエンドウ蛋白7.5重量部〜20重量部を含むことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプセル用皮膜及びソフトカプセル用皮膜並びにソフトカプセルに関する。ソフトカプセルとは、主にゼラチンを主成分(基剤)とした皮膜にて囲まれた空間に、栄養補助成分、健康食品成分、薬効成分等を封入して使用する容器を意味する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ソフトカプセル用皮膜が具備すべき条件として、造膜性が良いこと、弾力性が高いこと、強度が高いこと、ヒートシール性が良いこと、可食性であること等が挙げられる。こういった条件を満たす皮膜原料の基剤としては、現状、牛・豚由来の動物性蛋白質であるゼラチンが用いられている。
【0003】
ゼラチン基材のソフトカプセル皮膜中には、弾力性やカプセル強度を更に高めるために、グリセリンやソルビトール等の可塑剤が配合されている。この可塑剤は、多く配合するほど、皮膜に弾力性を与えカプセル強度が向上する反面、ゼラチンに粘着性を与えてしまう性質がある。特に高温・多湿下においては、この性質が顕著に現れるので、環境条件によっては、ソフトカプセル製造工程のびん詰包装あるいはPTP包装でのソフトカプセルの滑走性(滑りやすさ)を悪化させ、包装作業を困難にするとともに、包装後においても容器内で、ソフトカプセル同士及びソフトカプセルと容器との付着が生じることがあった。他方、ソフトカプセル皮膜中の可塑剤を減じた場合には、滑走性や付着性は改善されるものの、主に低温・低湿下においてはゼラチンの弾力性が不足し、カプセル強度が低下するために皮膜が硬化し、ひび割れを起し、内容物が漏洩することがあった。
【0004】
従来、ソフトカプセルの粘着性を防止する方法として、ソフトカプセルのゼラチンを基剤(基材)とする皮膜中に、小麦粉をゼラチン量の0.5重量%〜50重量%配合したものが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−80466号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1のように小麦粉をソフトカプセルの皮膜に添加した構成では、高温・多湿下における粘着性の抑制効果がまだ十分に高いとは言えない。
本発明は、上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものであってその目的は、高温・多湿下において従来のソフトカプセルに比較して表面に粘着性が生じ難いカプセル用皮膜、ソフトカプセル用皮膜及びソフトカプセルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明のカプセル用皮膜及びソフトカプセル用皮膜は、エンドウ蛋白を含むことを特徴とする。エンドウ蛋白(エンドウ蛋白質)とは、エンドウの子実中に20%程度含まれている蛋白質を意味する。なお、エンドウ(Pisum sativum L.)とは、マメ科の1〜2年草で、広く食用に供されている植物であり、その種類は問わない。しかし、黄色エンドウ(Yellow Pea)の蛋白質が色調、風味において食品加工用素材として最も適しており、且つ工業的にも入手し易い点で好ましい。
【0007】
なお、黄色エンドウとは、子実が完熟して堅くなり黄色味を示すエンドウの1種であり、種実用として広く一般に栽培されている。
黄色エンドウの蛋白質は、黄色エンドウを原料とし常法により製造したものを用いることができる。すなわち、一般的には、原料となる完熟した黄色エンドウの子実を洗浄、乾燥し、外殻を取り除いた後、主に水を使用して蛋白質成分を抽出することにより得られる。本発明に用いる黄色エンドウの蛋白質としては、さらに濃縮後、噴霧乾燥し粉末状としたものが好ましい。ただし、黄色エンドウに含有される蛋白質を分離、精製したものであれば、その製造方法は特に限定されない。
【0008】
ソフトカプセル用皮膜は、ゼラチン100重量部に対してエンドウ蛋白7.5重量部〜20重量部を含むことが好ましい。エンドウ蛋白が7.5重量部未満では粘着性抑制効果が十分とは言えない。また、エンドウ蛋白の含量が15重量部で粘着性抑制効果は最大になり、それ以上添加量を増やしても粘着性抑制効果は同じであり、20重量部を超えると皮膜が脆くなるため、20重量部を超える添加量は好ましくない。
【0009】
本発明のソフトカプセルは、前記ソフトカプセル用皮膜を備えている。ソフトカプセルは、一般的な製造方法、例えば、特許文献1に記載されたロータリ式自動ソフトカプセル製造機により製造される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高温・多湿下において従来のソフトカプセルに比較して表面に粘着性が生じ難いカプセル用皮膜、ソフトカプセル用皮膜及びソフトカプセルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施形態を説明する。
ソフトカプセル用皮膜は、エンドウ蛋白を成分に含む。その結果、高温多湿下において、従来のソフトカプセル用皮膜に比較して粘着性が生じ難くなる。そのため、製造工程でのソフトカプセルの滑走性を高めて作業性を向上させるとともに、ソフトカプセル用皮膜中に栄養補助成分、健康食品成分、薬効成分等の種々の有効成分を封入した包装後において容器内でのソフトカプセルの付着が防止される。
【0012】
ソフトカプセル用皮膜は、皮膜の基材(主成分)であるゼラチン100重量部に対する含有量が2.5重量部を超えた状態から、添加量が増加するほど皮膜が周囲の水分を吸収する量、即ち皮膜中の水分量が少なくなり、付着防止割合が増加する。そのため、広口瓶中にソフトカプセルを保存している際に、互いに付着しないソフトカプセルの数が多くなる。そして、添加量が15重量部以上では付着が生じない状態になる。
【実施例】
【0013】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。ただし、それらは例示であって、本発明を限定するものではない。
(実施例1)
(エンドウ蛋白添加量が皮膜中の水分量及び付着防止割合に与える影響の評価)
ゼラチン100重量部、水90重量部、グリセリン(可塑剤)40重量部に、エンドウ蛋白を表1に示す所定量添加して、温度65℃で混合攪拌し、完全に溶解した後、脱気してソフトカプセル皮膜原料液を調製した。エンドウ蛋白として、オルガノ株式会社製のエンドウたん白:PP−CSを使用した。
【0014】
エンドウたん白:PP−CSの成分は、蛋白質82.1%、脂質2.6%、灰分5.3%、糖質・繊維10.0%であり、液性(1%sol.)pH7.2である。
前記各ソフトカプセル皮膜原料液からカプセル状にする前の皮膜を厚さ1mmで、1cm×1cmの大きさのチップ状に形成した。そのチップ状の皮膜を40℃、RH(相対湿度)75%に一定時間(この実施例では50時間)保持後、皮膜中の水分量を測定した。水分量の測定は、次のようにして行った。40℃、RH(相対湿度)75%に一定時間保持後の試料の重量Wを測定する。また、その試料を130℃、40分放置したときの重量減Wdを測定する。そして、皮膜中の水分量(%)を次式(1)から算出する。
【0015】
水分量(%)={(W−Wd)/W}×100・・・(1)
また、前記チップ状皮膜について付着防止割合の測定を行った。付着防止割合の測定は、次のようにして行った。50〜100枚のチップ状皮膜を広口瓶に入れ、40℃、RH(相対湿度)75%に一定時間(この実施例では50時間)保持後、広口瓶を逆さにして落下したチップ状皮膜の枚数を調べた。付着防止割合(%)は次式(2)のように定義する。
【0016】
付着防止割合(%)={(全枚数−落下枚数)/全枚数}×100・・・(2)
各試料のエンドウ蛋白添加量と、皮膜中の水分量及び付着防止割合の関係を表1及び図1に示す。
【0017】
【表1】

表1及び図1から、ソフトカプセル皮膜中へのエンドウ蛋白の添加量が増加するに従って一定時間経過後の皮膜中の水分量は低下し、付着防止割合が増加することが確認された。付着防止割合は、エンドウ蛋白の添加量が7.5重量部で75%、添加量が10重量部で90%になり添加量が15重量部で100%に達し、添加量が20重量部でも100%であった。即ち、エンドウ蛋白の添加量が15%で付着防止割合に対する効果は飽和すると考えられる。なお、エンドウ蛋白の添加量が20重量部を超えると、皮膜が脆くなった。
【0018】
(比較例1)
比較例として、特許文献1の小麦粉に相当する市販の強力粉をエンドウ蛋白に代えて表2に示す所定量添加する点を除き、実施例1と同様にしてソフトカプセル皮膜原料液を調製した。このソフトカプセル皮膜原料液を用いて、実施例1と同様に、厚さ1mmで1cm×1cmの大きさのチップ状の皮膜を作製し、そのチップ状の皮膜を40℃、RH(相対湿度)75%に一定時間(50時間)保持後、皮膜中の水分量を測定した。また、実施例1と同様にして、付着防止割合の測定を行った。結果を表2に示す。
【0019】
【表2】

表2から、エンドウ蛋白に代えて小麦粉をソフトカプセル皮膜に添加した場合は、添加量を20.0重量部としても付着防止割合が50%であり、エンドウ蛋白を添加した場合の方が付着防止効果が高いことが確認された。
【0020】
(実施例2)
(蛋白質の種類が皮膜中の水分量及び付着防止割合に与える影響の評価)
ソフトカプセル用皮膜に添加する植物性蛋白質の違いが、皮膜中の水分量及び付着防止割合に与える影響を調べた。
【0021】
エンドウ蛋白、小麦蛋白としての強力粉、植物性蛋白の代表として大豆蛋白をそれぞれ10重量部添加して、実施例1と同様にしてソフトカプセル皮膜原料液を調製した。このソフトカプセル皮膜原料液を用いて、実施例1と同様に、厚さ1mmで1cm×1cmの大きさのチップ状の皮膜を作製し、その皮膜中の水分量を測定した。また、実施例1と同様にして、付着防止割合の測定を行った。結果を表3に示す。
【0022】
【表3】

表3から、エンドウ蛋白が他の蛋白に比較して付着防止効果が高いことが確認された。
【0023】
(実施例3)
(ソフトカプセル皮膜中の水分量の変化と付着防止性との関係)
ソフトカプセル皮膜中の水分量の変化を添加物質がエンドウ蛋白、小麦精製物及び無し(コントロール)について調べ、付着防止性との関係を調べた。
【0024】
エンドウ蛋白、小麦精製物(強力粉)をそれぞれゼラチン100重量部に対して10重量部添加し、実施例1と同様にしてソフトカプセル皮膜原料液を調製した。また、コントロールとして両者のいずれも添加しないソフトカプセル皮膜原料液を調製した。このソフトカプセル皮膜原料液を用いて、実施例1と同様に、厚さ1mmで1cm×1cmの大きさのチップ状の皮膜を作製し、その皮膜中の水分量の変化を測定した。水分量の変化は、試料を40℃、RH(相対湿度)75%に所定時間保持後、その皮膜の重量Wを測定する。また、その皮膜を130℃、40分放置したときの重量減Wdを測定する。そして、皮膜中の水分量(%)を前記式(1)を用いて算出する。結果を図2に示す。
【0025】
図2から、コントロールに比較して、エンドウ蛋白又は小麦精製物を添加した場合は、高温・多湿環境(40℃、RH75%)に保持された状態におけるソフトカプセル皮膜中の水分量の増加が少なく、エンドウ蛋白を添加した場合の方が小麦精製物を添加した場合より水分量の増加が少ないことが確認された。
【0026】
前記エンドウ蛋白が添加されたソフトカプセル皮膜原料液及び無添加のソフトカプセル皮膜原料液を用い、ロータリー式ソフトカプセル製造装置により油を300mg内包したソフトカプセルを製造した。また、小麦精製物が添加されたソフトカプセルとして、オリヒロプランデュ株式会社製、アザラシ抽出精製油加工食品を使用した。この加工食品はソフトカプセルで、原料に小麦粉が使用されている。
【0027】
それらのソフトカプセルについて付着防止割合の測定を行った。付着防止割合の測定は、次のようにして行った。50〜100個のソフトカプセルを広口瓶に入れ、40℃、RH(相対湿度)75%に所定時間(この実施例では0時間、24時間、48時間)保持後、広口瓶を逆さにして落下したソフトカプセルの数を調べた。付着防止割合(%)は次式(3)のように定義する。
【0028】
付着防止割合(%)={(全個数−落下個数)/全個数}×100・・・(3)
結果を図3に示す。
図3から、コントロールの場合は、高温・多湿環境(40℃、RH75%)に24時間保持された状態で付着防止割合が0%に低下し、小麦精製物を添加した場合は、高温・多湿環境に24時間保持された状態で付着防止割合が60%に低下し、48時間保持された状態で付着防止割合が50%に低下することが確認された。一方、エンドウ蛋白を添加した場合は、高温・多湿環境に24時間保持された状態では、付着防止割合は100%を維持し、48時間保持された状態で付着防止割合が80%に低下することが確認された。即ち、エンドウ蛋白の方が小麦精製物に比較して付着防止性に優れている。
【0029】
エンドウ蛋白を添加した場合は、高温・多湿環境に24時間保持されるまでは、付着防止割合(%)が100%に維持されるため、ソフトカプセル製造工程のびん詰包装あるいはPTP包装でのソフトカプセルの滑走性(滑りやすさ)を悪化させることが防止されて、包装作業を困難にすることが防止される。
【0030】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように構成してもよい。
・ ソフトカプセル用皮膜に添加する可塑剤は、グリセリンに限らず、ソルビトールやポリエチレングリコールを使用してもよい。
【0031】
・ 可塑剤の添加量はゼラチン100重量部に対して、35重量部〜45重量部の範囲で変更してもよい。
・ 皮膜中の水分量の測定を、他の方法で行ってもよい。
【0032】
・ ソフトカプセル用皮膜に限らずハードカプセル用皮膜に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施例1におけるエンドウ蛋白添加量と皮膜水分量及び付着防止割合の関係を示すグラフ。
【図2】実施例3における皮膜水分量の経時変化を示すグラフ。
【図3】実施例3における付着防止割合の経時変化を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドウ蛋白を含むことを特徴とするカプセル用皮膜。
【請求項2】
前記カプセル用皮膜はソフトカプセル用皮膜である請求項1に記載のカプセル用皮膜。
【請求項3】
ゼラチン100重量部に対してエンドウ蛋白7.5重量部〜20重量部を含むことを特徴とするソフトカプセル用皮膜。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のソフトカプセル用皮膜を備えたソフトカプセル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−55945(P2007−55945A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−243879(P2005−243879)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【特許番号】特許第3802550号(P3802550)
【特許公報発行日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(503315676)中日本カプセル 株式会社 (9)
【Fターム(参考)】