説明

ソフトカプセル製剤、ソフトカプセル製剤用組成物、及びソフトカプセル製剤の製造方法

【課題】自己乳化型組成物を封入してなる保存安定性に優れたソフトカプセル製剤、該ソフトカプセル製剤の製造方法、該ソフトカプセル製剤の製造中間体であるソフトカプセル製剤用組成物、該ソフトカプセル製剤用組成物に用いる自己乳化型組成物及びカプセル皮膜組成物を提供する。
【解決手段】油性成分、乳化剤、8質量%〜20質量%の多価アルコール、及び2.5質量%〜5質量%の水を含有する自己乳化型組成物と、前記自己乳化型組成物が封入され、35質量%〜50質量%の多価アルコール、及びゼラチンを含有するカプセル皮膜と、を有するソフトカプセル製剤、該ソフトカプセル製剤の製造方法、該ソフトカプセル製剤の製造中間体であるソフトカプセル製剤用組成物、該ソフトカプセル製剤用組成物に用いる自己乳化型組成物及びカプセル皮膜組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフトカプセル製剤、ソフトカプセル製剤用組成物、及びソフトカプセル製剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
油性成分などの水に難溶な生理活性成分の体内での吸収性を改善する技術として、自己乳化型組成物が提案されている。自己乳化型組成物とは、生理活性成分を、自己乳化能を有する組成物内に含有させることで、該組成物と水又は消化液が接触するだけで、自然に乳化・分散するように工夫されたものである。
【0003】
例えば、特許文献1には、油性成分を高配合とし且つ乳化剤の使用を大幅に低減させた製剤を得るべく、油性成分、グリセリン、澱粉又は澱粉誘導体、及びリゾレシチンを含有するカプセル製剤用乳化組成物が開示されている。特許文献2には、油性成分、多価アルコール、非多価アルコール性の水分活性抑制剤、乳化剤を含有するカプセル製剤用乳化組成物が開示されている。また、そのような自己乳化型の組成物に適用される剤型としては、取り扱い性や摂取の容易性の点から、ソフトカプセル等のカプセル剤型が適している旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−114157号公報
【特許文献2】特開2010−235563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、自己乳化型組成物を充填して得られる従来のソフトカプセル製剤では、保存安定性が未だ不充分であった。具体的には、ソフトカプセル製剤内に充填された自己乳化型組成物が、長期保存に伴い分離状態となるため、自己乳化型組成物と、水又は消化液が接触して乳化又は分散する際に、自己乳化型組成物の分散粒子が大きくなってしまうという問題点があった。また、長期保存に伴い、カプセル皮膜が軟化又は変形するため、ソフトカプセルの外観が損なわれるという問題もある。
【0006】
本発明は、上記の状況に鑑みなされたものであり、自己乳化型組成物を封入して得られる保存安定性に優れたソフトカプセル製剤、該ソフトカプセル製剤の製造方法、該ソフトカプセル製剤の製造中間体であるソフトカプセル製剤用組成物、並びに、該ソフトカプセル製剤用組成物に用いうる自己乳化型組成物及びカプセル皮膜組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段は、以下のとおりである。
[1] 油性成分、乳化剤、8質量%〜20質量%の多価アルコール、及び2.5質量%〜5質量%の水を含有する自己乳化型組成物と、前記自己乳化型組成物が封入され、35質量%〜50質量%の多価アルコール、及びゼラチンを含有するカプセル皮膜と、を有するソフトカプセル製剤。
[2] 前記自己乳化型組成物及びカプセル皮膜に含有される多価アルコールが、いずれもグリセリンである[1]記載のソフトカプセル製剤。
[3] 表面がコーティング剤によりコーティングされている[1]又は[2]に記載のソフトカプセル製剤。
[4] 油性成分、20質量%〜35質量%の多価アルコール、乳化剤、及び水を含有する自己乳化型用組成物。
[5] 前記多価アルコールがグリセリンである[4]に記載の自己乳化型組成物。
[6] 20質量%〜35質量%の多価アルコール、及びゼラチンを含有するカプセル皮膜組成物。
[7] 前記多価アルコールがグリセリンである[6]に記載のカプセル皮膜組成物。
[8] 油性成分、20質量%〜35質量%の多価アルコール、乳化剤、及び水を含有する自己乳化型組成物が、20質量%〜35質量%の多価アルコール、及びゼラチンを含有するカプセル皮膜組成物に封入されたソフトカプセル製剤用組成物。
[9] 自己乳化型組成物及びカプセル皮膜組成物に含有される多価アルコールが、いずれもグリセリンである[8]に記載のソフトカプセル製剤用組成物。
[10] 表面がコーティング剤によりコーティングされている[8]又は[9]に記載のソフトカプセル製剤用組成物。
[11] 油性成分、20質量%〜35質量%の多価アルコール、乳化剤、及び水を含有するカプセル封入用の自己乳化型組成物と、20質量%〜35質量%の多価アルコール、及びゼラチンを含有するカプセル皮膜組成物とを調製すること、前記自己乳化型組成物を、前記カプセル皮膜組成物に封入して、ソフトカプセル製剤用組成物を得ること、得られたソフトカプセル製剤用組成物を乾燥させること、を含む[1]に記載のソフトカプセル製剤の製造方法。
[12] 前記自己乳化型組成物及び前記カプセル皮膜組成物に含有される多価アルコールが、いずれもグリセリンである[12]に記載のソフトカプセル製剤の製造方法。
[13] 乾燥後のソフトカプセル製剤の表面をコーティング剤によりコーティングすることを含む[11]又は[12]に記載のソフトカプセル製剤の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、自己乳化型組成物を封入して得られる保存安定性に優れたソフトカプセル製剤、該ソフトカプセル製剤の製造方法、該ソフトカプセル製剤の製造中間体であるソフトカプセル製剤用組成物、並びに、該ソフトカプセル製剤用組成物に用いる自己乳化型組成物及びカプセル皮膜を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のソフトカプセル製剤、ソフトカプセル製剤用組成物、及びソフトカプセル製剤の製造方法について詳細に説明する。
【0010】
なお、本発明において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0011】
本発明のソフトカプセル製剤は、油性成分、乳化剤、8質量%〜20質量%の多価アルコール、及び2.5質量%〜5質量%の水を含有する自己乳化型組成物と、前記自己乳化型組成物が封入され、35質量%〜50質量%の多価アルコール、及びゼラチンを含有するカプセル皮膜と、を有するソフトカプセル製剤である。
【0012】
また、本発明のソフトカプセル製剤用組成物は、油性成分、20質量%〜35質量%の多価アルコール、乳化剤、及び水を含有する自己乳化型組成物が、20質量%〜35質量%の多価アルコール、及びゼラチンを含有するカプセル皮膜組成物に封入されたソフトカプセル製剤用組成物である。
【0013】
本発明のソフトカプセル製剤用組成物は、本発明のソフトカプセル製剤を好適に形成しうる製造中間体であり、これを乾燥させることにより、完成品である本発明のソフトカプセル製剤が得られる。
【0014】
本発明のソフトカプセル製剤は、前記の構成を有することで、長期に亘って保存した場合でも、封入された自己乳化型組成物の経時による分離、及び、カプセル皮膜の軟化や変形が効果的に抑制されるため、優れた保存安定性を発揮する。この優れた保存安定性は、ソフトカプセル製剤に含有される多価アルコール量、及び、自己乳化型組成物に含有される水の含有量を、本発明に係る特定の範囲としたことにより顕著に発揮される。
また、ソフトカプセル製剤用組成物に用いる自己乳化型組成物及びカプセル皮膜組成物の各々に含有される多価アルコールは、本発明に係る特定の範囲の量で含有される。ソフトカプセル製剤用組成物が乾燥されてソフトカプセル製剤が形成される際に、ソフトカプセル製剤用組成物に含有される水の一部が除去されると共に、自己乳化型組成物に含有される多価アルコールの一部はカプセル皮膜側に移動する。ソフトカプセル製剤における自己乳化型組成物が含有する多価アルコール及び水の特定の含有量、カプセル皮膜が含有する多価アルコールの特定の含有量は、このようにして得ることができる。
【0015】
(1)ソフトカプセル製剤
本発明のソフトカプセル製剤は、油性成分、乳化剤、8質量%〜20質量%の多価アルコール、及び2.5質量%〜5質量%の水を含有する自己乳化型組成物と、前記自己乳化型組成物が封入され、35質量%〜50質量%の多価アルコール、及びゼラチンを含有するカプセル皮膜と、を有する。
以下、本発明のソフトカプセル製剤における各構成要素について詳細に説明する。
【0016】
<自己乳化型組成物>
本発明のソフトカプセル製剤における自己乳化型組成物は、油性成分、乳化剤、8質量%以上20質量%以下の多価アルコール、及び2.5質量%〜5質量%の水を含有する。
【0017】
ここで、本発明において自己乳化型組成物とは、水、消化液等の水性液体に接触した際において、機械的操作により加えられる外力を必要することなく自然に乳化する性質を有する組成物を意味する。
【0018】
以下、本発明のソフトカプセル製剤における自己乳化型組成物が含有する必須成分及び任意成分について説明する。
【0019】
<<油性成分>>
ソフトカプセル製剤における自己乳化型組成物は油性成分を含有する。
油性成分としては、特に限定はないが、花精油、ペパーミント油、スペアミント油、スパイス油などの植物精油、コーラナッツ、コーヒー、ワニラ、ココア、紅茶、緑茶、ウーロン茶、スパイス類などの油性のエキストラクト類、合成香料化合物、調合香料組成物及びこれら任意の混合物などの着香料、カロチノイド類(リコペン、アスタキサンチン等)、パプリカ色素、アナトー色素、クロロフィルなどの油溶性天然色素類、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、DHA及び/又はEPA含有魚油などのω3類の不飽和脂肪酸、リノール酸、γ−リノレン酸、α−リノレン酸、月見草油、ボラージ油、大豆油、オクタコサノール、ローズマリー、セージ、γ−オリザノール、β−カロチン、パームカロチン、シソ油;ビタミンA(レチノイド類)、ビタミンD、トコフェロールまたはその誘導体、ビタミンF、ビタミンKなどの脂溶性ビタミン類、水溶性ビタミンの油溶化誘導体などの機能性油性材料、補酵素Q10(CoQ10)を含むユビキノン類、スクワレン、スクワラン、菜種油、コーン油、オリーブ油、ツバキ油、マカデ
ミアナッツ油、ミンク油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、アマニ油、綿実油、エノ油、ヒマシ油、アボガド油、タートル油、サフラワー油、ヒマワリ油、米油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルチミン酸グリセリン、サラダ油、ココナッツ油、ピーナッツ油、アーモンド油、ヘーゼルナッツ油、ウォルナッツ油、グレープシード油、牛脂、硬化牛脂、牛脚脂、牛骨脂、ミンク油、豚油、魚油、馬脂、羊脂、硬化油、カカオ脂、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、パーム硬化油、モクロウ、モクロウ核油、硬化ヒマシ油などの動植物油脂類、オリバナム、ロジン、コーパル、ダンマル、エレミ、エステルガムなどの植物性樹脂類、炭素数6〜12の中鎖脂肪酸トリグリセライドなどの加工食用油脂及びこれらの任意の混合物を挙げることができる。
【0020】
油性成分は、1種のみであってもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0021】
ソフトカプセル製剤における自己乳化型組成物に含有される油性成分の含有量としては、選択された油性成分に由来する期待される効果の発現に必要なカプセル数の軽減(カプセル摂取負荷の軽減)と製剤安定性との両立の観点から、50質量%〜80質量%が好ましく、55質量%〜75質量%がより好ましく、60質量%〜75質量%が更に好ましい。
【0022】
<<多価アルコール>>
ソフトカプセル製剤における自己乳化型組成物は、8質量%〜20質量%の多価アルコールを含有する。自己乳化型組成物における多価アルコールとしては、二価以上のアルコールであれば特に限定されず用いることができる。該多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、マルチトールなどが挙げられる。多価アルコールの中でも、安定性の観点からは、グリセリンが最も好ましい。
自己乳化型組成物における多価アルコールは、1種のみであってもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0023】
ソフトカプセル製剤における自己乳化型組成物に含有される多価アルコールの含有量は、経時での油分分離の抑制、分散粒子径の増大抑制の観点から、8質量%〜20質量%であり、10質量%〜20質量%が好ましく、14質量%〜20質量%がより好ましい。
【0024】
<<乳化剤>>
ソフトカプセル製剤における自己乳化型組成物は乳化剤を含有する。自己乳化型組成物は、乳化剤を1種のみ含有されてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
乳化剤としては、水溶性乳化剤(親水性乳化剤)であることが好ましい。
また、乳化剤としては、水溶性乳化剤を単独で又は2種以上を併用する態様の他、親水性乳化剤と親油性乳化剤とを組み合わせて用いても構わない。
【0026】
水溶性乳化剤としては、水性媒体に溶解する乳化剤であれば、特に限定は無いが、例えば、HLBが10以上、好ましくは12以上のノニオン界面活性剤が好ましい。
上記のHLBを有するノニオン界面活性剤を乳化剤として用いることで、自己乳化型組成物は、乳化分散性により優れたものとなる。
ここで、HLBは、通常界面活性剤の分野で使用される親水性−疎水性のバランスで、通常用いる計算式、例えば川上式等が使用できる。川上式を次に示す。
HLB=7+11.7log(Mw/Mo)
ここで、Mwは親水基の分子量、Moは疎水基の分子量である。
また、カタログ等に記載されているHLBの数値を使用してもよい。
また、上記の式からも分かるように、HLBの加成性を利用して、任意のHLB値の乳化剤を得ることが出来る。
【0027】
乳化剤として用いられるノニオン界面活性剤の例としては、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、およびショ糖脂肪酸エステル、レシチンなどが挙げられる。より好ましくは、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチンである。
また、上記の乳化剤は蒸留などで高度に精製されたものであることは必ずしも必要ではなく、反応混合物であってもよい。
【0028】
本発明において乳化剤として用いうるポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、平均重合度が2以上、好ましくは6〜15、より好ましくは8〜10のポリグリセリンと、炭素数8〜18の脂肪酸、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、及びリノール酸とのエステルが好ましい。該ポリグリセリン脂肪酸エステルの好ましい例としては、ヘキサグリセリンモノオレイン酸エステル、ヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル、ヘキサグリセリンモノパルミチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノミリスチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンモノステアリン酸エステル、デカグリセリンモノパルミチン酸エステル、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル、デカグリセリンモノラウリン酸エステル等が挙げられる。本発明においては、これらのポリグリセリン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルを用いる場合、併用される油性成分との相性を考慮して、適切な脂肪鎖を有するものを選択することが好ましい。
【0029】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、市販品を用いてもよい。該市販品としては、例えば、日光ケミカルズ(株)製NIKKOL DGMS、NIKKOL DGMO−CV、NIKKOL DGMO−90V、NIKKOL DGDO、NIKKOL DGMIS、NIKKOL DGTIS、NIKKOL Tetraglyn 1−SV、NIKKOL Tetraglyn 1−O、NIKKOL Tetraglyn 3−S、NIKKOL Tetraglyn 5−S、NIKKOL Tetraglyn 5−O、NIKKOL Hexaglyn 1−L、NIKKOL Hexaglyn 1−M、NIKKOL Hexaglyn 1−SV、NIKKOL Hexaglyn 1−O、NIKKOL Hexaglyn 3−S、NIKKOL Hexaglyn 4−B、NIKKOL Hexaglyn 5−S、NIKKOL Hexaglyn 5−O、NIKKOL Hexaglyn PR−15、NIKKOL Decaglyn 1−L、NIKKOL Decaglyn 1−M、NIKKOL Decaglyn 1−SV、NIKKOL Decaglyn 1−50SV、NIKKOL Decaglyn 1−ISV、NIKKOL Decaglyn 1−O、NIKKOL Decaglyn 1−OV、NIKKOL Decaglyn 1−LN、NIKKOL
Decaglyn 2−SV、NIKKOL Decaglyn 2−ISV、NIKKOL Decaglyn 3−SV、NIKKOL Decaglyn 3−OV、NIKKOL Decaglyn 5−SV、NIKKOL Decaglyn 5−HS、NIKKOL Decaglyn 5−IS、NIKKOL Decaglyn 5−OV、NIKKOL Decaglyn 5−O−R、NIKKOL Decaglyn 7−S、NIKKOL Decaglyn 7−O、NIKKOL Decaglyn 10−SV、NIKKOL Decaglyn 10−IS、NIKKOL Decaglyn 10−OV、NIKKOL Decaglyn 10−MAC、及び、NIKKOL Decaglyn PR−20、三菱化学フーズ(株)社製リョートーポリ
グリエステル L−10D、L−7D、M−10D、M−7D、P−8D、S−28D、S−24D、SWA−20D、SWA−15D、SWA−10D、O−50D、O−15D、B−100D、B−70D、ER−60D、太陽化学(株)社製サンソフトQ−17UL、サンソフトQ−14S、サンソフトA−141C、理研ビタミン(株)社製ポエムDO−100、ポエムJ−0021、ポエムJ−0381Vなどが挙げられる。
【0030】
本発明において乳化剤として用いうるソルビタン脂肪酸エステルとしては、脂肪酸の炭素数が8以上のものが好ましく、12以上のものがより好ましい。該ソルビタン脂肪酸エステルの好ましい例としては、モノカプリル酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、セキステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。本発明においては、これらのソルビタン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
【0031】
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、市販品を用いてもよい。該市販品としては、例えば、日光ケミカルズ(株)社製、NIKKOL SL−10、SP−10V、SS−10V、SS−10MV、SS−15V、SS−30V、SI−10RV、SI−15RV、SO−10V、SO−15MV、SO−15V、SO−30V、SO−10R、SO−15R、SO−30R、SO−15EX、第一工業製薬(株)社製の、ソルゲン30V、40V、50V、90、110などが挙げられる。
【0032】
本発明において乳化剤として用いうるショ糖脂肪酸エステルとしては、脂肪酸の炭素数が12以上のものが好ましく、12〜20のものがより好ましい。該ショ糖脂肪酸エステルの好ましい例としては、ショ糖ジオレイン酸エステル、ショ糖ジステアリン酸エステル、ショ糖ジパルミチン酸エステル、ショ糖ジミリスチン酸エステル、ショ糖ジラウリン酸エステル、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル、ショ糖モノラウリン酸エステル等が挙げられる。本発明においては、これらのショ糖脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
【0033】
ショ糖脂肪酸エステルとしては、市販品を用いてもよい。該市販品としては、例えば、三菱化学フーズ(株)社製リョートーシュガーエステル S−070、S−170、S−270、S−370、S−370F、S−570、S−770、S−970、S−1170、S−1170F、S−1570、S−1670、P−070、P−170、P−1570、P−1670、M−1695、O−170、O−1570、OWA−1570、L−195、L−595、L−1695、LWA−1570、B−370、B−370F、ER−190、ER−290、POS−135、第一工業製薬(株)社製の、DKエステルSS、F160、F140、F110、F90、F70、F50、F−A50、F−20W、F−10、F−A10E、コスメライクB−30、S−10、S−50、S−70、S−110、S−160、S−190、SA−10、SA−50、P−10、P−160、M−160、L−10、L−50、L−160、L−150A、L−160A、R−10、R−20、O−10、O−150等が挙げられる。
【0034】
レシチンも乳化剤として有効である。レシチンとは、グリセリン骨格と脂肪酸残基及びリン酸残基を必須構成成分とし、これに、塩基や多価アルコール等が結合したもので、リン脂質とも称されるものである。レシチンは、分子内に親水基と疎水基を有していることから、従来、食品、医薬品、化粧品分野で、広く乳化剤として使用されている。
産業的にはレシチン純度60%以上のものがレシチンとして利用されており、本発明でも利用できる。レシチンとして、好ましくは一般に高純度レシチンと称されるものであり、これはレシチン純度が80%以上、より好ましくは90%以上のものである。このレシチン純度は、レシチンがトルエンに溶解しやすくアセトンに溶解しない性質を利用して、トルエン不溶物とアセトン可溶物の質量を差し引くことにより求められる。
【0035】
レシチンとしては、植物、動物及び微生物の生体から抽出分離された従来公知の各種のものを挙げることができる。このようなレシチンの具体例としては、例えば、大豆、トウモロコシ、落花生、ナタネ、麦等の植物や、卵黄、牛等の動物及び大腸菌等の微生物等から由来する各種レシチンを挙げることができる。このようなレシチンを化合物名で示すと、例えば、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルメチルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ビスホスアチジン酸、ジホスファチジルグリセリン(カルジオリピン)等のグリセロレシチン;スフィンゴミエリン等のスフィンゴレシチン等を挙げることができる。
【0036】
また、本発明においては、上記の高純度レシチン以外にも、水素添加レシチン、酵素分解レシチン、酵素分解水素添加レシチン、ヒドロキシレシチン等を、乳化剤として使用することができる。本発明で用いるこれらのレシチンは、単独又は複数種の混合物の形態で用いることができる。
【0037】
ソフトカプセル製剤における自己乳化型組成物に含有される乳化剤の含有量としては、自己乳化型組成物が乳化した際における乳化粒子の初期における粒子径の安定性及び経時における油分分離の抑制の観点から、6質量%〜16質量%が好ましく、9質量%〜13質量%が更に好ましい。
乳化剤の含有量は、自己乳化型組成物の安定性、自己乳化型組成物が乳化した際における乳化粒子の粒子径及び乳化物の安定性の観点から設定される。
【0038】
<<水>>
ソフトカプセル製剤における自己乳化型組成物は、2.5質量%〜5質量%の水を含有する。水としては、通常の食品用として適切な異物処理を施された飲用可能な水であればどのようなものであってもよい。
【0039】
ソフトカプセル製剤における自己乳化型組成物に含有される水の含有量は、自己乳化型組成物が乳化した際における乳化粒子の粒子径及び経時における油分分離の抑制の観点から、2.5質量%〜5質量%であり、3質量%〜4質量%がより好ましい。
【0040】
<<その他の成分>>
ソフトカプセル製剤における自己乳化型組成物には、更に、必要に応じて他の成分を含有してもよい。
他の成分としては、例えば、香料、酸化防止剤、ビルベリーエキス末などの各種抽出エキスなどが挙げられる。
また、カプセル製剤を製造する際において、乾燥工程を経ても完成直後のカプセル内部に好ましい範囲の水分を保持させる観点からは、保水性に寄与する成分(例えば、アミノ酸類や糖類、多糖類など)を、自己乳化型組成物に更に配合することも有効である。
【0041】
<<自己乳化型組成物の物性>>
自己乳化型組成物は、水分と接触すると、良好な体内吸収性を発揮し得る粒子径の分散粒子を有する乳化物として乳化分散する。
自己乳化型組成物の自己乳化時(本明細書では、再乳化時ということがある)の分散粒子の粒子径(体積平均粒子径)は、油性成分としての油・脂溶性の生理活性成分を効率よく体内に吸収させる観点から、800nm以下であることが好ましく、600nm以下であることがより好ましい。
【0042】
自己乳化型組成物の再乳化時の分散粒子の粒子径は、以下の方法により評価することができる。
即ち、水40質量部に対して自己乳化型組成物0.15質量部を接触させて、25℃5分間、マグネチックスターラーで緩やかに撹拌し、得られた測定用分散物を、動的光散乱法により測定する。動的光散乱を用いた市販の測定装置としては、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550((株)堀場製作所)、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000、ナノトラックUPA(日機装(株))、等が挙げられる。
本発明における粒径は、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000を用いて25℃で測定し、粒径、単分散度を評価するものとする。
【0043】
自己乳化型組成物の粘度は、カプセル皮膜と組み合わせてソフトカプセル製剤を製造する際の操作性の観点から低いことが好ましく、40Pa・s以下が好ましく、30Pa・s以下が更に好ましい。
自己乳化型組成物の粘度の測定は、40℃において、レオメーター(The Bohlin Gemini HR nano Rheometer system)を用いて、測定した値とする。
自己乳化型組成物の粘度を上記の範囲内に調整する手段はいずれであってもよいが、例えば、粘度調整用の多糖類などの増粘剤を使用することや、組成物に含有される各成分種類及び量を微調整することなどにより適宜調整できる。
【0044】
<カプセル皮膜>
本発明のソフトカプセル製剤におけるカプセル皮膜は、35質量%〜50質量%の多価アルコール、及びゼラチンを含有する。本発明のソフトカプセル製剤は、前記自己乳化型組成物が当該カプセル皮膜内に封入されてなるものである。
【0045】
本発明のソフトカプセル製剤におけるカプセル皮膜が含有する必須成分及び任意成分について説明する。
【0046】
<<多価アルコール>>
カプセル皮膜は、35質量%〜50質量%の多価アルコールを含有する。
多価アルコールとしては、前記自己乳化型組成物の説明において挙げた多価アルコールが同様に挙げられ、好適な態様も同様である。多価アルコールの中でも、安定性の観点からは、グリセリンが最も好ましい。
カプセル皮膜における多価アルコールは、1種のみであってもよいし、2種以上が併用されてもよい。
自己乳化型組成物及びカプセル皮膜に含有される多価アルコールは、それぞれ同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。本発明においては、自己乳化型組成物及びカプセル皮膜に含有される多価アルコールのいずれもが、グリセリンであることが特に好ましい。
【0047】
カプセル皮膜は、35質量%〜50質量%の多価アルコールを含有し、初期及び経時後の油分分離の抑制並びにカプセル変形の抑制の観点から、40質量%〜50質量%が好ましく、45質量%〜50質量%がより好ましい。
【0048】
<<ゼラチン>>
カプセル皮膜は、ゼラチンを含有する。
ゼラチンとしては、ソフトカプセル用として使用できるものであれば特に制限なく使用することができる。カプセルの経時凹み抑制の観点では、ゼリー強度が200ブルーム以上のゼラチンを好ましく用いることができる。また、ゼラチンとしては、市販品を適用することもでき、例えば、新田ゼラチン株式会社製 イクオスシリーズなどが挙げられる。
【0049】
カプセル皮膜におけるゼラチンの含有量としては、40質量%〜60質量%が好ましく、40質量%〜50質量%が更に好ましい。
【0050】
<<水>>
カプセル皮膜は、水を含有することが好ましい。水の詳細は、前記自己乳化型組成物が含有する水と同様である。
【0051】
カプセル皮膜における水の含有量としては、5質量%〜12質量%が好ましく、5質量%〜10質量%がより好ましく、5質量%〜8質量%が更に好ましい。
【0052】
<<その他の成分>>
カプセル皮膜は、更に、必要に応じて他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、カラメル色素などの色素類、加工澱粉や二酸化ケイ素などの付着防止剤などが挙げられる。
【0053】
本発明のソフトカプセル製剤の形状としては、特に限定されるものではなく、球状、ラグビーボール状、球形、三角形、涙型、等のソフトカプセル製剤の形状として公知の形状を適用することができる。
【0054】
ソフトカプセル製剤における自己乳化型組成物の封入量は、摂取成分量とカプセル数の設定に応じて適宜設定できる。
【0055】
本発明のソフトカプセル製剤は、その表面がコーティング剤によりコーティングされていることが好ましい。ソフトカプセル製剤の表面がコーティング剤によりコーティングされることにより、カプセル内に封入された自己乳化型組成物の安定性がより向上する。また、カプセル表面のコーティングにより、カプセル皮膜の変形、軟化などに起因する凹みも効果的に抑制されることから、外観についてもより優れたものとなる。
【0056】
本発明に適用しうるコーティング剤としては、トウモロコシタンパク(ツェイン)、シェラック、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)等を含むものが挙げられる。コーティング剤には、更に、脂肪酸、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン、色素などを添加することができる。
【0057】
コーティング剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、トウモロコシタンパクとしては小林香料(株)製の「小林ツェインDP」、HPMCとしては、信越化学工業(株)製の「食品添加物用メトローズ」、岐阜セラック製造所製の「シェラック」などが挙げられる。
【0058】
コーティング剤の付与量としては、カプセルの全質量に対して、0.5質量%〜6質量%が好ましく、より好ましくは1質量%〜5質量%、特に好ましくは2質量%〜4質量%である。
【0059】
本発明のソフトカプセル製剤は、健康食品、機能性食品、栄養補助食品等として好適に適用することができる。
【0060】
本発明のソフトカプセル製剤、後述する本発明のソフトカプセル製剤の製造方法により好適に製造することができる。
即ち、本発明のソフトカプセル製剤は、(i)油性成分、20質量%〜35質量%の多価アルコール、乳化剤、及び水を含有する自己乳化型組成物、及び、20質量%〜35質量%の多価アルコール、及びゼラチンを含有するカプセル皮膜組成物を調製すること、(ii)該カプセル皮膜組成物に、該自己乳化型組成物を封入してソフトカプセル製剤用組成物(本発明のソフトカプセル製剤用組成物)を得ること、(iii)得られたソフトカプセル製剤用組成物を乾燥すること、により好適に製造することができる。
【0061】
以下、本発明のソフトカプセル製剤の製造方法について、当該製造方法おいて製造中間体として得られる本発明のソフトカプセル製剤用組成物に関する事項も含めて、詳細に説明する。
【0062】
(2)ソフトカプセル製剤の製造方法、ソフトカプセル製剤用組成物
本発明のソフトカプセル製剤の製造方法(以下、適宜「本発明の製造方法」と称する。)は、油性成分、20質量%〜35質量%の多価アルコール、乳化剤、及び水を含有する自己乳化型組成物、及び、20質量%〜35質量%の多価アルコール、及びゼラチンを含有するカプセル皮膜組成物を調製すること(以下、「組成物調製工程」とも称する。)、前記カプセル皮膜組成物に、前記自己乳化型組成物を封入して、ソフトカプセル製剤用組成物を得ること(以下、「成形工程」とも称する。)、得られたソフトカプセル製剤用組成物を乾燥させること(以下、「乾燥工程」とも称する。)、を含む製造方法である。
【0063】
前記成形工程にて得られる、ソフトカプセル製剤用組成物は、本発明のソフトカプセル製剤用組成物である。
【0064】
本発明のソフトカプセル製剤用組成物は、本発明のソフトカプセル製剤を形成しうる製造中間体であり、成形工程に引き続いて乾燥工程において乾燥されることにより、完成品である本発明のソフトカプセル製剤が得られる。
以下、本発明の製造方法における各構成要素ついて詳細に説明する。
【0065】
<組成物調製工程>
組成物調製工程では、油性成分、20質量%〜35質量%の多価アルコール、乳化剤、及び水を含有する自己乳化型組成物、及び、20質量%〜35質量%の多価アルコール、及びゼラチンを含有するカプセル皮膜組成物を調製する。
【0066】
<<自己乳化型組成物>>
ソフトカプセル製剤用組成物における自己乳化型組成物としては、油性成分、20質量%〜35質量%の多価アルコール、乳化剤、及び水を含有する本発明の自己乳化型組成物が好適に適用される。
【0067】
ソフトカプセル製剤用組成物における自己乳化型組成物に含有される必須成分及び任意成分の種類及び好適な態様など、多価アルコール、乳化剤、及び水の含有量以外の事項については、前述のソフトカプセル製剤の説明において自己乳化型組成物に関して説明した事項が同様に適用される。
【0068】
ソフトカプセル製剤用組成物における自己乳化型組成物に含有される油性成分の含有量としては、55質量%〜78質量%が好ましく、60質量%〜70質量%が更に好ましい。
【0069】
ソフトカプセル製剤用組成物における自己乳化型組成物に含有される多価アルコールの含有量は、カプセル皮膜に封入された内容物の経時安定性の観点から、20質量%〜35質量%であり、23質量%〜32質量%がより好ましい。
【0070】
ソフトカプセル製剤用組成物における自己乳化型組成物に含有される乳化剤の含有量としては、分散粒子径や乳化物安定性の観点から、5質量%〜13質量%が好ましく、8質量%〜11質量%が更に好ましい
【0071】
ソフトカプセル製剤用組成物における自己乳化型組成物に含有される水の含有量は、カプセル皮膜に充填可能な粘度に組成物の粘度を下げることと共に、ソフトカプセル製剤用組成物を乾燥して得られるソフトカプセル製剤における自己乳化型組成物に含有される水の含有量が、2.5質量%〜5質量%となるように設定される。該水の含有量としては、4質量%〜10質量%が好ましく、4質量%〜6質量%が更に好ましい。カプセル乾燥時の負荷軽減、乾燥時のグリセリンのカプセル皮膜への移行抑制の観点からは、自己乳化型組成物における水分量は必要最小限に設定することが好ましい。
【0072】
ソフトカプセル製剤用組成物における自己乳化型組成物は、例えば、多価アルコール、水、及び任意成分を溶解して調製した混合液(水相)に、油性成分及び任意成分を含む液(油相)を徐々に添加する方法によって調製することができる。
【0073】
<<カプセル皮膜組成物>>
ソフトカプセル製剤用組成物におけるカプセル皮膜組成物としては、20質量%〜35質量%の多価アルコール、及びゼラチンを含有する本発明のカプセル皮膜組成物が好適に適用される。即ち、本発明のソフトカプセル製剤用組成物は、皮膜状の形態を有する本発明のカプセル皮膜組成物に、油性成分、20質量%〜35質量%の多価アルコール、乳化剤、及び水を含有する本発明の自己乳化型組成物を封入して得られる。
なお、本発明のカプセル皮膜組成物には、皮膜状に成形された形態、特定の形状に成形されていない形態の双方が包含される。
【0074】
ソフトカプセル製剤用組成物におけるカプセル皮膜組成物に含有される必須成分及び任意成分の種類及び好適な態様など、多価アルコールの含有量以外の事項については、前述のソフトカプセル製剤の説明においてカプセル皮膜に関して説明した事項が同様に適用される。
【0075】
カプセル皮膜組成物における多価アルコールの含有量は、20質量%〜35質量%であり、22質量%〜31質量%がより好ましい。
なお、ソフトカプセル製剤用組成物における自己乳化型組成物及びカプセル皮膜組成物に含有される多価アルコールは、それぞれ同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。本発明においては、ソフトカプセル製剤用組成物における自己乳化型組成物及びカプセル皮膜組成物に含有される多価アルコールのいずれもが、グリセリンであることが特に好ましい。
【0076】
カプセル皮膜組成物に含有されるゼラチンの含有量としては、35質量%〜45質量%が好ましく、38質量%〜43質量%が更に好ましい。
【0077】
カプセル皮膜組成物は、該皮膜組成物に含有される所定の成分を溶解させた溶液として調製することができる。
【0078】
<成形工程>
成形工程では、前記カプセル皮膜組成物に、ソフトカプセル製剤用組成物における自己乳化型組成物を封入して、ソフトカプセル製剤用組成物(本発明のソフトカプセル製剤用組成物)を得る。
【0079】
成形工程におけるカプセル皮膜組成物への自己乳化型組成物の封入は、例えば、ロータリー式、シームレス式又は平板式などの各種の公知の方法を使用して行うことができる。
ロータリー式の例であるロータリーダイ式自働ソフトカプセル製造機を用いた方法としては、例えば、特開2004−351007号の段落番号0024〜0031に開示されている事項を、本工程においても同様に適用することができる。
【0080】
成形工程におけるカプセル皮膜組成物への自己乳化型組成物の封入としては、シート状に成形した二枚のカプセル皮膜組成物の間に自己乳化型組成物を挟持させて積層体を形成し、当該積層体を金型で両面から圧縮して打ち抜く平板法などを必要に応じて適用してもよい。
【0081】
<乾燥工程>
乾燥工程では、前記成形工程において得られたソフトカプセル製剤用組成物を乾燥させる。本工程を経ることにより、完成品であるソフトカプセル製剤が得られる。
【0082】
乾燥方法は、特に限定されず、タンブラー乾燥機(回転ドラム式乾燥機)などの公知の
乾燥機を使用することができる。また、タンブラー乾燥後は、適当な温・湿度環境下にカプセルを広げ、適切な時間をかけて更に乾燥を行うことが好ましい。
乾燥温度としては、25℃〜30℃程度が好ましく、湿度としては、30%RH〜50%RH程度が好ましい。乾燥時間としては、3日〜10日程度が好ましい。
【0083】
<コーティング工程>
本発明の製造方法においては、乾燥工程後に更に、コーティング工程により、ソフトカプセル製剤の表面をコーティング剤によりコーティングしてもよい。
【0084】
コーティングとしては、スプレーコーティング装置などを使用した常法によって、コーティング剤をソフトカプセル製剤の表面に付与することにより行うことができる。
【0085】
コーティング剤及びその付与量については、本発明のソフトカプセル製剤において説明した事項が同様に適用される。
【実施例】
【0086】
以下、本発明を実施例にて詳細に説明するが、本発明はそれらに何ら限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は質量基準である。
【0087】
[実施例1〜16、比較例1〜7]
(1)ソフトカプセル製剤の製造
<自己乳化型組成物の調製>
自己乳化型組成物(乾燥前)は、表1又は表2に示す各成分を、表1又は表2に示す量となるように用いて以下のように調製した
<<水相の調製>>
水相は、表1又は表2に記載の乳化剤をグリセリンに70℃で溶解した後、25℃に冷却し、水を加えて均一な液とすることで調製した。
<<油相の調製>
油相は、表1又は表2に記載の油のみを含む液として、又は、ヘマトコッカス藻抽出物を用いる場合には、表1又は表2に記載の油及びヘマトコッカス藻抽出物の混合物として調製した。油及びヘマトコッカス藻抽出物の混合物は、70℃で、油にヘマトコッカス藻抽出物を溶解後、25℃に冷却することにより調製した。
<<自己乳化型組成物の調製>>
アジホモミキサーで水相を撹拌しながら、油相をチューブポンプで小量ずつ全量を添加して、組成物を調製した。調製後、真空脱泡を実施し、自己乳化型組成物とした。
【0088】
<カプセル皮膜組成物の調製>
カプセル皮膜組成物(乾燥前)は、表1又は表2に示す各成分を、表1又は表2に示す量となるように用いて以下のように調製した。
ゼラチンに水を添加し、膨潤させた後、70℃に加温してゼラチンを溶解して溶解液を得た。得られた溶解液に、グリセリンを添加し、撹拌し、温かいうちに脱泡を実施し、カプセル皮膜組成物とした。
【0089】
<ソフトカプセル製剤の製造>
上記カプセル皮膜組成物(乾燥前)に、ロータリーダイ方式を用いる常法により自己乳化型組成物(乾燥前)を封入しソフトカプセル製剤用組成物を作製した後、タンブラー乾燥機を用いてソフトカプセル製剤用組成物を乾燥することで、ソフトカプセル製剤を得た。
【0090】
<<コーティング>>
実施例10〜12、及び実施例14〜16のソフトカプセル製剤については、更に、乾
燥したカプセルに対して、表1に示すコーティング剤をドリアコーターにてコーティングした。コーティング皮膜量に関しては、カプセル質量に対して2%とした。
【0091】
得られた各ソフトカプセル製剤(完成品)における自己乳化型組成物(乾燥後)及びカプセル皮膜(乾燥後)の組成は、表1及び表2に示す通りである。
また、各ソフトカプセル製剤におけるカプセル皮膜の膜厚は、0.78μm〜0.82μmの範囲内であった。
【0092】
表1又は表2に示される各成分の詳細は以下の通りである。
<油性成分>
油A:ココナード RK(商品名)、花王(株)製、中鎖脂肪酸トリグリセリド
油B:DHA70G(商品名)、日本水産(株)製、DHA高含有精製魚油
ヘマトコッカス藻抽出物: ASTOTS−S(商品名)、武田紙器(株)製、アスタキサンチン20%含有
【0093】
<多価アルコール>
グリセリン(食添用グリセリン、花王(株)製)
【0094】
<乳化剤>
乳化剤A:NIKKOL Decaglyn 1−L(商品名)日光ケミカルズ(株)製、脂肪鎖がラウリン酸(C18不飽和脂肪酸)のデカグリセリン脂肪酸エステル
乳化剤B:ポエムJ−0381V(商品名)、理研ビタミン(株)製、脂肪鎖がオレイン酸(C18不飽和脂肪酸)のデカグリセリン脂肪酸エステル
【0095】
<その他の成分>
ゼラチン(商品名:イクオス、新田ゼラチン(株)製)
【0096】
<コーティング剤>
トウモロコシタンパク(商品名:小林ツェインDP、小林香料(株)製)
HPMC(商品名:食品添加物用メトローズ、信越化学工業(株)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)
シェラック(岐阜セラック製造所製)
【0097】
(2)ソフトカプセル製剤の評価
実施例1〜16、比較例1〜7で得られたソフトカプセル製剤を用いて、初期分散性、保存安定性(経時安定性、経時凹み、経時軟化)についての評価を行った。
【0098】
1.初期分散性
初期分散性は、以下の評価方法及び評価基準により評価した。
<評価方法>
カプセル1個を開き、ディスポカップへ内容物を搾り出した。そこへ水100mlを添加して撹拌し、内容物を分散させて評価用分散液を得た。
得られた評価用分散液について目視で観察し、下記の評価基準により評価した。結果を表1及び表2に示す。
<評価基準>
A :油分分離が無く均一に分散している。分散液の透明性が高い。
B :油分の分離がわずかに見られるが、均一に分散している。
C :油分の分離が見られる。分散液の透明性は低い。
D :油分がかなり分離している。分散液の濁り度合いが高い。
E :油分がほとんど分離している。油分がわずかしか分散していない
【0099】
2.保存安定性
2−1.経時安定性
経時安定性は、以下の評価方法及び評価基準により評価した。
<評価方法>
カプセルを40℃の環境に1ヵ月間保管した後、カプセルの初期分散性評価と同様の方法で評価用分散液を調製した。
得られた評価用分散液について目視で観察し、下記の評価基準により評価することで、経時安定性の評価とした。結果を表1及び表2に示す。
<評価基準>
A :油分分離がほとんど無く均一に分散している。分散液の透明性が高い
B :油分の分離がある程度見られるが、均一に分散している
C :油分の分離が比較的多く確認されるが、均一には分散している。分散液の透明性は低い。
D :油分がかなり分離している。分散液の濁り度合いが高い。
E :油分がほとんど分離している。油分がわずかしか分散していない。
【0100】
2−2.経時凹み・軟化
経時凹み・軟化は、各ソフトカプセル製剤を40℃の環境に1ヵ月間保管した後、下記の評価基準により経時凹み・軟化を評価した。結果を表1及び表2に示す。
<評価基準>
A : 全く凹みが無く、経時前と変わりがない。カプセルはある程度力を加えないと変形しない。
B : 軽微な凹みを有するものが、評価した全カプセル中に、30%以下の個数で存在する。
C : 明らかな凹みを有するものが、評価した全カプセル中に、30%以下の個数で存在する。
D : 明らかな凹みを有するものが、評価した全カプセル中に、60%以下の個数で存在する。カプセルが軟らかく、小さな圧力で変形する。
E : 評価した全カプセルの総てが、凹みを有している。カプセルが非常に軟らかい。
【0101】
【表1】

【0102】
【表2】

【0103】
表1及び表2に示されるように、実施例のソフトカプセル製剤は、比較例のソフトカプセル製剤との対比において、初期分散性が良好であり、保存安定性についても優れていることが分かる。
また、実施例10〜12、及び実施例14〜16のソフトカプセル製剤の評価結果に示されるように、カプセル表面をコーティング剤によりコーティングすることで、初期分散性及び保存安定性の双方において、いずれも優れた効果が発揮されることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油性成分、乳化剤、8質量%〜20質量%の多価アルコール、及び2.5質量%〜5質量%の水を含有する自己乳化型組成物と、
前記自己乳化型組成物が封入され、35質量%〜50質量%の多価アルコール、及びゼラチンを含有するカプセル皮膜と、
を有するソフトカプセル製剤。
【請求項2】
前記自己乳化型組成物及びカプセル皮膜に含有される多価アルコールが、いずれもグリセリンである請求項1に記載のソフトカプセル製剤。
【請求項3】
表面がコーティング剤によりコーティングされている請求項1又は請求項2に記載のソフトカプセル製剤。
【請求項4】
油性成分、20質量%〜35質量%の多価アルコール、乳化剤、及び水を含有する自己乳化型組成物。
【請求項5】
前記多価アルコールがグリセリンである請求項4に記載の自己乳化型組成物。
【請求項6】
20質量%〜35質量%の多価アルコール、及びゼラチンを含有するカプセル皮膜組成物。
【請求項7】
前記多価アルコールがグリセリンである請求項6に記載のカプセル皮膜組成物。
【請求項8】
油性成分、20質量%〜35質量%の多価アルコール、乳化剤、及び水を含有する自己乳化型組成物が、20質量%〜35質量%の多価アルコール、及びゼラチンを含有するカプセル皮膜組成物に封入されたソフトカプセル製剤用組成物。
【請求項9】
前記自己乳化型組成物及び前記カプセル皮膜組成物に含有される多価アルコールが、いずれもグリセリンである請求項8に記載のソフトカプセル製剤用組成物。
【請求項10】
表面がコーティング剤によりコーティングされている請求項8又は請求項9に記載のソフトカプセル製剤用組成物。
【請求項11】
油性成分、20質量%〜35質量%の多価アルコール、乳化剤、及び水を含有するカプセル封入用の自己乳化型組成物と、20質量%〜35質量%の多価アルコール、及びゼラチンを含有するカプセル皮膜組成物とを調製すること、
前記自己乳化型組成物を、前記カプセル皮膜組成物に封入して、ソフトカプセル製剤用組成物を得ること、
得られたソフトカプセル製剤用組成物を乾燥させること、
を含む請求項1に記載のソフトカプセル製剤の製造方法。
【請求項12】
前記自己乳化型組成物及び前記カプセル皮膜組成物に含有される多価アルコールが、いずれもグリセリンである請求項11に記載のソフトカプセル製剤の製造方法。
【請求項13】
乾燥後のソフトカプセル製剤の表面を、コーティング剤によりコーティングすることを含む請求項11又は請求項12に記載のソフトカプセル製剤の製造方法。

【公開番号】特開2013−63970(P2013−63970A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−191344(P2012−191344)
【出願日】平成24年8月31日(2012.8.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】