説明

ソフト系ファーネスカーボンブラック及びこれを配合したゴム組成物

【課題】サーマルタイプのファーネスブラックの特長を維持しながら、加硫ゴム物性を低下させずに圧縮永久歪みを一層下げることができるファーネスカーボンブラック及びゴム成分に配合したゴム組成物を提供。
【解決手段】よう素吸着量(IA)が10〜35g/kg、ジブチルフタレート吸油量(DBPA)が30ml/100g以下、トルエン着色透過度が45%以上の領域にあるファーネスカーボンブラックにおいて、遠心沈降法で得られるアグリゲートサイズの重量平均径(Aw)と数平均径(An)の比であるアグリゲートサイズ分布指数(X)の値が2.0〜3.0の間に存在し、さらに、窒素吸着比表面積(NSA)とよう素吸着量(IA)の比(Y)が0.9〜1.2であり、窒素吸着比表面積(NSA)とCTAB吸着比表面積(CTAB)の比(Z)が0.9〜1.1であることを満足するファーネスカーボンブラック。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムのようなエラストマに配合した場合、低硬度を維持したまま高充填配合が可能で、広い硬度調整が可能であるというこれまでのサーマルタイプのファーネスブラックの特長を維持しながら、その他の特性も低下させることなく圧縮永久歪みを一層減少することができるゴム組成物を提供することができるファーネスカーボンブラック及びこのカーボンブラックをゴム成分に配合したゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
雨、風、埃などの種々の環境条件下で高速で走行する自動車には、車室や客室へこれらの雨や埃が車内に入り込まないように気密性を保持するさまざまなゴム組成物が使用されている。例えば、窓ガラスを車体に密着させるウェザーストリップやドアシール、回転するエンジンやトランスミッション空間内に充填されたオイル成分の漏出を防止するオイルシール、ブレーキピストンでの油の漏出を防ぐブレーキキャップなどがある。これらのゴム組成物は過酷な環境下で使用されるために、耐候性や耐油性、耐久性、耐摩耗性等が要求される。その中でも絶えず大きな荷重を受ける用途で使用されるパッキン、ガスケット、防振ゴム等では圧縮永久歪み特性が小さいことが最も重要である。
【0003】
圧縮永久歪み特性は、円柱状試験片に一定の圧縮歪みを与え、規定の温度で規定の時間経過後に歪みを取り除き、このときの試験片の厚さから初期試験片からの変化率として測定されるものである。
この圧縮永久歪みは、加硫ゴムの流動性を表す特性として重要な方法であり、低加硫状態では永久歪みは大きくなるが、加硫が進むにつれて弾性体となって永久歪みは小さくなるので、加硫状態判定法として用いることができる。
【0004】
圧縮永久歪みに大きな影響を与える因子として充填剤であるカーボンブラックの特性があり、一般に圧縮永久歪みを小さくする場合は、エラストマ成分に配合するカーボンブラックの粒子径を大きくする、そしてストラクチャー(粒子のつながり度合)を高くする方法が提案されている。しかし、カーボンブラックの粒子径の増大とストラクチャーの増加は、引張り強さを低下する傾向があるため、補強性を保ちつつ、圧縮永久歪み特性を小さくすることは互いに相反する特性の改善となり、極めて困難な問題であった。
この問題を解決するために、従来のサーマルタイプのファーネスカーボンブラックと同等の加硫ゴム特性を維持しながら、圧縮永久歪み特性のみを低下させるカーボンブラックの要望が近年強くなり、この対応が急務となっていた。
【0005】
カーボンブラックは厳密に制御された条件下のファーネス炉内での高温燃焼ガス中へ原料炭化水素を導入し、高温化での原料炭化水素の熱分解により生産される重要な工業用素材であり、ゴム配合時の組成物に対して機械的性質、特に引張り強さ、耐摩耗性などの特性を飛躍的に向上させることができるという特異な性質を有することから、タイヤをはじめとする各種ゴム製品の充填補強剤として広く用いられているとともに、名称からわかるようにその材料が持つ黒色という特性を生かした黒色顔料として塗料、トナーなどにも使用されている。
ゴム配合用カーボンブラックにおいては、その物理化学的特性、すなわちカーボンブラックを構成する単位粒子径、単位重量当たりの表面積(比表面積)、粒子のつながり度合(ストラクチャー)などにより配合ゴム組成物の性能に大きな影響を与えるので、要求されるゴム組成物によって各種特性の異なるカーボンブラックが選択的に使用されている。
ソフト系カーボンブラックは、ゴム等の成分に配合されたときに柔軟性の高いゴム組成物を提供することに起因して命名されたものであり、チューブ、ホース、タイヤカーカス、電線被覆用部材などの各種工業部材や履物などに広く用いられている。
【0006】
ソフト系カーボンブラックに関する従来技術としては、本出願人が開示した特許文献1(特開平1−229074号公報)があり、その要旨は、「よう素吸着量(IA)が8〜15g/kg、DBP吸油量(DBPA)が35〜45ml/100g、トルエン着色透過度が60%以上のファーネスカーボンブラックにおいて、比着色力が下記式を満たすとともに、下記式で得られるアグリゲートサイズ分布指数(S)が0.20以上の特性を有するサーマルタイプ・ファーネスカーボンブラック。
(1):比着色力≦(IA+20)
(2):S=0.84932×log(DL50/DST
(ここで、DSTは遠心沈降分析によるカーボンブラックのストークス相当径の最多頻度値であり、DL50はDSTよりも大きい側にあって、かつDSTの1/2の頻度を有するストークス相当径:液中に分散した粒子の沈降速度がアインシュタイン・ストークス式に従うものとして測定される、同じ沈降速度を持った球として換算した相当径)である。
この発明の目的としては、ゴムやプラスチックの配合物への多量配合が可能である従来のFT級ならびにMT級カーボンブラック並の大粒子径、すなわち、よう素吸着量(IA)値を低位に維持しながらDBP吸収量(DBPA)を従来のFT級ならびにMT級よりも若干高位に保持せしめ、さらに配合物の汚染に関連するトルエン着色透過度を60%以上にしたサーマルタイプのファーネスカーボンブラックを提供することである。
【0007】
また、特許文献2(特開平9−48933号公報)(出願人:旭カーボン株式会社)では、「ソフト系ファーネスカーボンブラック」を開示しており、その要旨は、「よう素吸着量(IA)が20〜30g/kg、ジブチルフタレート吸収量(DBPA)が25〜35ml/100gという基本特性を有し、かつ窒素吸着比表面積(NSA)とIAの比、NSA/IAが0.85〜1.10であり、遠心沈降法におけるカーボンブラック凝集体のストークス相当径の最多頻度値DSTに対する半値幅ΔDSTの比、△DST/DSTが0.96〜1.02であることを特徴とするソフト系ファーネスカーボンブラック〔ここで、DSTは遠心沈降分析により得られたカーボンブラック凝集体のストークス径のモード値(nm)、△DSTは前記DST頻度の1/2に相当する2点のストークス径の差を示すものとする。〕」というものである。この目的は、カーボンブラックをゴムに配合したとき従来のサーマルブラック配合ゴム組成物と同等の低いゴム硬度と弾性率を維持しながら、抗張力および耐疲労特性が効果的に向上しているゴム組成物を得ることのできるソフト系ファーネスカーボンブラックおよびこれを含むゴム組成物を提供する点にある。
しかしながら、本出願人が提案した上記の発明はそれぞれの開発課題の解決においては一定の効果を示したが、硬さと補強性を維持しながら圧縮永久歪み特性の向上を可能とするゴム組成物を提供することのできるファーネスカーボンブラックの開発については未解決のままであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平1−229074号公報
【特許文献2】特開平9−48933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、カーボンブラックをエラストマ及び/又はポリマーに配合したときに、従来のサーマルタイプのファーネスカーボンブラックと比較して、硬さと補強性を維持しながら圧縮永久歪み特性の向上を可能にするゴム組成物を提供することのできるファーネスカーボンブラックおよびこれを含むゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、従来のサーマルタイプのファーネスカーボンブラックと比較して、硬さと補強性を維持しながら圧縮永久歪み特性を向上させることができるカーボンブラックの開発について鋭意研究を進めた結果、よう素吸着量(IA)が10〜35g/kg、ジブチルフタレート吸収量(DBPA)が30ml/100g以下、トルエン着色透過度が45%以上の基本特性を有するソフト系ファーネスカーボンブラックにおいて、遠心沈降法で得られるアグリゲートサイズの重量平均径の体積平均値(Aw)と個数平均値(An)の比により表される下記式のアグリゲートサイズ分布指数(X)の値が2.0〜3.0の数値範囲にあることを特徴とするファーネスカーボンブラックであれば上記の課題を満たすゴム組成物を提供できることを見出し、本発明を完成させることが可能となったものである。
【数1】

【0011】
上記の特性に加えて、本発明のカーボンブラックの表面積の比の指標として、下記式で得られる窒素吸着比表面積(NSA)とよう素吸着量(IA)の比(Y)が0.9〜1.2であり、一次粒子のラフネスの指標として、下記式で得られる窒素吸着比表面積(NSA)とCTAB吸着比表面積(CTAB)の比(Z)が0.9〜1.1であることを満足すれば、さらに効果的に機能を発揮させることができる。
【数2】

【数3】

【0012】
この特性を有するファーネスカーボンブラックをゴムに配合した場合にそのゴム組成物に対して本出願人が提案した上記のサーマルタイプのファーネスカーボンブラックと同等の硬さと補強性を満足し、さらに圧縮永久歪みを小さくする効果があることを見いだして本発明に到達したものである。
【0013】
本発明に適応することのできるゴムとしては、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、アクリルニトリル−ブタジエンゴムなどが挙げられ、これらの単独ゴムあるいは任意の組み合わせによるブレンドゴムをマトリックス成分として用いることができる。
【0014】
また、本発明カーボンブラックにおいて、IAが10g/kgを下回る場合はゴム配合物において引張り強さなどの補強性が低下し、また35g/kgを上回る場合は組成物の硬度が上昇するため、サーマルタイプのファーネスカーボンブラックの特徴である多量配合、低硬度の達成が困難となる。また、DBPAが30ml/100gを上回る場合には、ゴム配合物の硬さが増大して柔軟性が低下し、伸びなどの破壊特性が低下する。トルエン着色透過度については、45%を下回るとゴム配合物の汚染性を回避することが困難となるので、できれば65%、より好ましくは70%以上が望ましい。
さらに、本発明ではカーボンブラックのアグリゲートサイズの分布を表す指標として、遠心沈降法で得られるアグリゲートサイズ分布指数(X)が2.0〜3.0の範囲にあることが必須であるが、この分布指数が2.0未満の場合は本発明の特徴である低い圧縮永久歪み特性が保持できなくなり、逆に3.0を上回った場合にはゴムに対する機械的特性、特に引張り強さの特性の面で低下を招来する。
上述の特性に加えて、さらに前述の(Y)および(Z)の要件を満たすカーボンブラックである場合にはさらに好ましいゴム物性を発現させることができる。すなわち、窒素吸着比表面積(NSA)とよう素吸着量(IA)の比(Y)が0.9を下回る場合は引張強さが低下する傾向があり、1.2を上回る場合はトルエン着色透過度が低下しゴム配合物の汚染性を回避することが困難となる傾向があるので、Yの範囲は0.9〜1.2とするのが好ましい。さらに、窒素吸着比表面積(NSA)とCTAB吸着比表面積(CTAB)の比(Z)が0.9を下回る場合はトルエン着色透過度が低下しゴム配合物の汚染性を回避することが困難となり、1.1を上回る場合はカーボンブラック粒子の製造装置内に副生成物が蓄積しやすくなる為に連続的な操業が困難となる傾向があるので、Zの範囲は0.9〜1.1とするのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明のカーボンブラックは、従来のサーマルタイプのファーネスカーボンブラックの利点であるゴムに配合した場合、低硬度、高充填配合並びに低硬度での硬度調整用途に適しているという特長を維持したまま、加工性能、補強性能を低下させることなく圧縮永久歪みの改良することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明カーボンブラックを製造するのに好適な製造炉の一例を示す縦断正面図である。左側が炉頭部であり、カーボンブラックの生成は左側から右側に進行する。
【図2】図2は、よう素吸着量と圧縮永久歪みにおけるアグリゲートサイズ分布指数の関係を示したものである。
【実施例】
【0017】
以下に実施例を示し、本発明を更に詳しく説明する。
【0018】
[製造例]
特開平1−229074号公報(特許文献1)(出願人 旭カーボン)に記載の円筒型製造炉と同様な構造とした図1に示すオイルファーネス炉(直径600mm、長さ5000mm)の炉頭部中心軸方向から炉内に原料噴霧ノズル1を挿入し、炉の接線方向に上下一対に設けられた第1空気孔グループA(2、2′)、第2空気孔グループB(3、3′)ならびに第3空気孔グループC(4、4′)より適宜の空気量を導入し、各空気孔グループからの導入空気量ならびに原料油供給量を変化することにより、物理化学特性値の異なるサーマルタイプのファーネスカーボンブラックを製造した。なお、DBPAの制御については通常のストラクチャー調整剤を適宜利用した。原料油の性状は表1に示した通りである。
【0019】
【表1】

【0020】
カーボンブラックの製造条件を表2の実施例と比較例に示した。
【表2】

【0021】
また、表2記載の製造条件により得られたカーボンブラックの物理化学特性を表3に示した。参照例としてサーマルブラックMTの物理化学特性についても記載した。
【表3】

なお、実施例1〜3は本発明にかかるファーネスカーボンブラックであり、比較例1〜3は本発明のいずれかの物性要件において外れたカーボンブラックの例である。また参照例はサーマルブラックMTである。
【0022】
[各特性の測定]
本発明にかかるカーボンブラックの物理化学特性は次のようにして測定される。
(1)よう素吸着量(IA)
JIS K6217−1:2008に記載の方法により測定され、単位重量
当たりに吸着されるよう素量(g/kg)で表示される。
(2)DBP吸収量(DBPA)
JIS K6217−4:2008に記載の方法により測定され、100g
当たりに吸収されるDBPの容積(ml/100g)で表示される。
(3)トルエン着色透過度
JIS K6218−4:2005に記載の方法により測定され、カーボン
ブラック表面から抽出される物質によってトルエンが着色される程度を透過率
(%)として表示される。
(4)アグリゲート分布指数(X)
JIS K6217−6:2008に記載の方法によりカーボンブラック分散液
を加えてからの経過時間と吸光度の分布曲線より各時間tに対応するストーク
ス相当径を算出する。
測定されたアグリゲートストークス径を用い、重量平均径(Aw)と数平均径
(An)の比は下記算出式を用いて算出される。
・アグリゲート径の重量平均径(Aw)と数平均径(An)の定義
分布曲線の最小ストークス径と最大ストークス径の間を等間隔に40等分し、
その各ヒストグラムの中心値をDi、その頻度をNiとして、下式によりAw
およびAnの値を算出する。
Aw=〔Σ(NiDi)÷Σ(NiDi)〕 (1)
An=〔Σ(NiDi)÷ΣNi〕 (2)
アグリゲートサイズ分布指数(X)の値は次式で算出される。
【数4】

Aw/Anの値は、アグリゲート径の分布が広い場合、特に大きい側のアグリ
ゲート径が存在するときはこの数値が大きくなるという特徴を有し、特に大き
い側に分布する試料の多寡を評価するメジャーの一つとして利用される数値で
あり、本発明ではアグリゲートサイズ分布指数(X)が2.0〜3.0の範囲
にあること、すなわち従来よりも大きい側の試料が多いことを特徴とするソフ
ト系ファーネスカーボンブラックである。
(5)窒素吸着比表面積(NSA)
JIS K6217−2:2001に記載の方法により測定され、単位重量
当たりに吸着される窒素量(m/g)で表示される。
(6)CTAB吸着比表面積(CTAB)
JIS K6217−3:2001に記載の方法により測定され、単位重量
当たりに吸着されるCTAB量(m/g)で表示される。
[ゴム配合特性]
表3に示したカーボンブラックを表4に示した割合でゴムに配合してゴム組成物とし、各種特性を測定した。この結果を表5にとりまとめて示した。
【0023】
【表4】

【0024】
【表5】

上記実施例および比較例のカーボンブラックを天然ゴムに配合した表5のゴム特性の結果から、本発明カーボンブラックの効果について説明する。なお、上記各特性は次のようにして測定した。
・ムーニー粘度及びスコーチタイム・・・・JIS K6300−1:2001に記載の
方法で測定した。ムーニー粘度のML1+4′はL型ロータで予熱時間1分とロータ回転4分後でのムーニー粘度であり、最低粘度のVmは予熱時間1分後にロータを回転させたときのムーニー粘度の最低値である。また、ムーニーの読みがVmより5M(ムーニー単位)上昇した時間をt5とし、スコーチタイムとする。
・硬さ・・・・JIS K6253:2006に記載された方法により測定した。
・引張試験・・・・JIS K6251:2004に記載された方法によりリング状1号
形試験片の引張特性を測定した。
・反発弾性・・・・JIS K6255:1996に記載された方法により測定した。
・分散度・・・・加硫ゴムをカミソリで切断し、その切断面を約30倍の倍率で写真撮影して、Rubber World,151巻3号第41頁(1964)で掲載された標準分散写真(1〜10の表示で、10が最良)と比較して分散の良否を判定する。中間にあると判定された場合は0.5を加える(例えば、8と9の中間は8.5と表示)。
・圧縮永久歪み・・・・JIS K6262:2006に記載された方法で大型試験片を70℃で96時間25%に圧縮した後の圧縮永久歪みを測定した。
(i)圧縮永久歪み特性について
一般的に圧縮永久歪み特性はよう素吸着量(IA)が下がるに伴って、低下する傾向がある。そこでアグリゲートサイズ分布指数(X)が本発明の下限を外れた比較例1〜3、参照例と実施例1〜3をよう素吸着量(IA)で比較した結果(図2)、以下のことがわかった。
イ.同じよう素吸着量(IA)で比較例と実施例とを比較すると、実施例の方が圧縮永久歪み特性が小さい。
ロ.アグリゲートサイズ分布指数(X)でまとめられるライン上に測定点が並び、アグリゲート分布指数の大きい方が圧縮永久歪み特性が小さい。
このことから、アグリゲート分布指数の増加が圧縮永久ひずみの低下に寄与していることが明示される。
(ii)未加硫試験について
同じよう素吸着量(IA)レベルでは実施例と比較例の間に差がない。このことから、本発明のファーネスカーボンブラックは同じよう素吸着量(IA)レベルの一般的なサーマルタイプのファーネスカーボンブラックと加工性能は同等であることがわかる。
(iii)加硫ゴム物性について
同じよう素吸着量(IA)レベルでは実施例と比較例の間に差がない。このことから、本発明のファーネスカーボンブラックは同じよう素吸着量(IA)レベルの一般的なサーマルタイプのファーネスカーボンブラックと硬さと補強性能は同等であることがわかる。
(iv)まとめ
上記(i)〜(iii)から本発明のファーネスカーボンブラックは加工性能、硬さおよび補強性能は同等でありながら圧縮永久ひずみ特性が改良されていることがわかる。
【符号の説明】
【0025】
1 原料油噴霧ノズル設置用円筒
2 第1空気孔グループA
2′ 第1空気孔グループA
3 第2空気孔グループB
3′ 第2空気孔グループB
4 第3空気孔グループC
4′ 第3空気孔グループC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
よう素吸着量(IA)が10〜35g/kg、ジブチルフタレート吸収量(DBPA)が30ml/100g以下、トルエン着色透過度が45%以上の領域にあるソフト系ファーネスカーボンブラックにおいて、遠心沈降法で測定されたカーボンブラックアグリゲートサイズの重量平均径の体積平均値(Aw)と個数平均値(An)の比により表される下記式のアグリゲートサイズ分布指数(X)の値が2.0〜3.0の範囲にあることを特徴とするソフト系ファーネスカーボンブラック。
【数5】

【請求項2】
下記式で得られる窒素吸着比表面積(NSA)とよう素吸着量(IA)の比(Y)が0.9〜1.2であり、下記式で得られる窒素吸着比表面積(NSA)とCTAB吸着比表面積(CTAB)の比(Z)が0.9〜1.1であることを満足する請求項1記載のソフト系ファーネスカーボンブラック。
【数6】

【数7】

【請求項3】
天然ゴムまたはジエン系モノマを構成成分に含む合成ゴム100重量部に対し、請求項1記載のソフト系ファーネスカーボンブラックを20〜220重量部配合したことを特徴とするゴム組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−126953(P2011−126953A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284873(P2009−284873)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000116747)旭カーボン株式会社 (19)
【Fターム(参考)】