説明

ソルダペースト用フラックス及びソルダペースト

【課題】ハロゲン系活性剤を含まずに、ソルダペーストの皮はり、粘度変化等の経時変化を防止し、かつ使用に関しては良好の塗布・印刷性を長時間持続し、高温プリヒートにも耐えうるソルダペーストを提供することを目的とする。
【解決手段】ソルダペースト用フラックスにおいて、活性剤として脂肪族トリカルボン酸を含有することを特徴とするソルダペースト用フラックス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経時変化の極めて少なく、高温プリヒートにも耐えうるソルダペースト用フラックス及びソルダペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりハンダ金属粉末をロジン樹脂及びその誘導体を主体としたフラックスと練り合わせたソルダペーストをプリント基板に塗布、印刷し、部品を搭載した後、加熱してハンダ金属を溶融して実装基板を作製することは広く行われている。近年、ソルダペーストが用いられる実装基板は部品の微小化及び実装密度の上昇が進められると共に、ソルダペースト合金の鉛フリー化も行われてきているため長時間にわたって良好な塗布・印刷性を持続し、高温プリヒートにも耐えうるソルダペーストが要求されている。そのためソルダペースト用フラックス及びソルダペーストについて種々の検討、提案がなされている。例えば、特許文献1にはフラックスとハンダ粉末とを混練して成るクリームはんだにおいて、炭素数12〜30の常温で個体の開環したジカルボン酸又はその塩を0.01〜6重量%含有することを特徴とするクリームはんだについて開示されており、特許文献2には活性剤として融点50℃以上の脂肪酸及び50℃以下では亜鉛と実質的に反応を起こさない融点100℃以上の有機ハロゲン化物を含む亜鉛含有ハンダ用フラックスについて記載されている。また、特許文献3にはフラックス中の活性剤として炭素数3〜5のジカルボン酸および炭素数15〜20のジカルボン酸をそれぞれ少なくとも1種類以上含有させることで粘度経時変化を防止し、高温プレヒートにも耐えうるソルダペースト用フラックスが開示されている。
【0003】
しかしながら、上記の要求を充分に満足できるものは得られていない。その理由として、ソルダペーストの経時変化のメカニズムが大きく関与している。即ち、ソルダペーストの経時変化としては、空気中の酸素や水分がソルダペーストと反応したり、或いはソルダペースト中の合金と、フラックス中の活性剤及び有機酸が反応したりして、その結果、はんだペーストの粘度が変化し、ソルダペースト表面が硬化して皮を張ったような状態である「皮はり」という現象を生じるのである。このような現象はハロゲン系活性剤や従来の有機酸を使わなければソルダペーストの経時変化を軽減することが出来る。
しかし、それらの物を使用しなければ当然、良好なハンダ付け性を確保することは難しく、どちらか一方を満足することが出来てもソルダペーストとしては不完全であり、ソルダペーストの皮はり、粘度変化等の経時変化を防止し、かつ使用に関しては良好の塗布・印刷性を長時間持続し、高温プリヒートにも耐えうるソルダペーストの開発が待たれていた。
【特許文献1】特開平6−63788号公報
【特許文献2】特開2001−138089号公報
【特許文献3】特開2003−260589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ハロゲン系活性剤を含まずに、ソルダペーストの皮はり、粘度変化等の経時変化を防止し、かつ使用に関しては良好の塗布・印刷性を長時間持続し、高温プリヒートにも耐えうるソルダペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、ハロゲン系活性剤を含まずに、ソルダペーストの皮はり、粘度変化等の経時変化を防止し、かつ使用に関しては良好の塗布・印刷性を長時間持続し、高温プリヒートにも耐えうるソルダペーストについて種々検討した結果、フラックス中の活性剤として1,3,6−ヘキサントリカルボン酸を含有させることにより上記の目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。本願の第1の発明要旨は、ソルダペースト用フラックスにおいて、活性剤として1,3,6−ヘキサントリカルボン酸を含有することを特徴とするソルダペースト用フラックスであり、本願の第2の発明要旨は、活性剤として1,3,6−ヘキサントリカルボン酸を含有するフラックスとはんだ合金を含んでいることを特徴とするソルダペーストである。
【0006】
即ち、本発明は、下記(1)から(3)に関する発明である。
(1) ソルダペースト用フラックスにおいて、活性剤として脂肪族トリカルボン酸を含有することを特徴とするソルダペースト用フラックス。
(2) 脂肪族トリカルボン酸が、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸であることを特徴とする前記(1)記載のソルダペースト用フラックス。
(3) 前記(1)又は(2)記載のソルダペースト用フラックスとはんだ金属とを含んでなることを特徴とするソルダペースト。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、ハロゲン系活性剤を含まずに、ソルダペーストの皮はり、粘度変化等の経時変化を防止し、かつ使用に関しては良好の塗布・印刷性を長時間持続し、高温プリヒートにも耐えうるソルダペーストを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明について詳細に述べる。
本発明のソルダペーストとは、はんだ粉末合金とフラックスとを混合したものである。はんだ粉末合金を適性な粘性を有するフラックスに均一に練り合わせたものが好ましい。
本発明のソルダペーストに用いられるはんだ粉末合金は、Sn、Pb、Ag、Cu、In、Zn、Bi、Pd、Ni、Al等の金属を含有する合金であって、具体的には、Sn−Pb、Sn−Ag、Sn−InまたはSn−Znで示される二元系或いはこれらの二元系合金にCu、Bi、In、Ni、Ge、Sb、Zn、Pbの中から選ばれる1種類または2種以上を組み合わせた三元系もしくはそれ以上の合金を挙げることが出来る。特にPbフリーのはんだ合金であるSn−Ag、Sn−Zn系の二元系や三元系もしくはそれ以上の多元系の場合にはその効果を十分に発揮することが出来る。
【0009】
本発明のフラックスとは、はんだ粉末合金の金属表面の清浄効果(金属表面の酸化被膜の除去)を促進することを主目的として用いられ、松脂やロジン等の媒体、接合面への塗布性や作業性を高めるために添加される溶剤、活性剤等から構成される。
本発明の活性剤とは、はんだ粉末合金の金属表面の清浄(金属表面の酸化被膜の除去)のためにフラックスに添加される。
本発明において活性剤として使用する脂肪族トリカルボン酸は、脂肪族であって、3塩基酸のカルボン酸である。具体的には、例えば、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸等が挙げられ、特に好ましいものは1,3,6−ヘキサントリカルボン酸である。2種以上を混合して用いることも好ましい。
【0010】
これらのトリカルボン酸類の使用量については、0.05〜15質量%であって、0.05質量%以下では、はんだ粉末表面へのコーティング膜が不完全であり、十分な効果が出ず、多ければその効果をより発揮するが、フラックスの信頼性を低下させてしまい、15質量%以上では、信頼性を確保でき難い。好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜7質量%、最も好ましくは2〜6質量%である。
本発明におけるフラックスには、上記のトリカルボン酸以外に、1塩基酸や2塩基酸のカルボン酸から選ばれる1種以上のカルボン酸を添加することも好ましい。
2塩基酸のカルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、ペンタデカンニ酸(C15284)、ヘキサデカンニ酸(C16304)、ヘプタデカンニ酸(C17324)、オクタデカンニ酸(C18344)、ノナデカンニ酸(C19364)、エイコサンニ酸(C20384)等を挙げることが出来る。
【0011】
本発明におけるフラックスには、通常のフラックスに使用される揺変剤、チクソ剤、消泡剤、酸化防止剤、防錆剤、界面活性剤、熱硬化剤等を必要に応じて配合することが好ましい。即ち、粘性を調整する目的で加えられる揺変剤としては、硬化ヒマシ油、脂肪酸アマイドなどの通常のフラックスに使用されるものが好ましい。揺変剤はフラックス中20質量%以下の範囲で配合することが好ましい。
【実施例】
【0012】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明する。
実施例及び比較例の配合によって得られたソルダペーストについて連続印刷性、はんだボール、濡れ性、粘度の経時変化を測定した。測定方法は次の通りである。
(1)連続印刷性 メタルマスクを用いて連続印刷を行い、版抜け性、耐ニジミ性を評価する。
(2)はんだボール 基板にソルダペーストを印刷し、リフロー後部品に拡大鏡を用いてハンダボールを観察する。
◎:はんだボールなし ×:はんだボール多数あり
(3)濡れ性 基板にソルダペーストを印刷し、部品をマウント、リフロー後、部品に対する濡れ上がり等を、拡大鏡を用いて、観察する。
◎:良好 ×:不濡れあり
(4)粘度 JIS−Z−3284に準拠してマルコム(株)製スパイラル粘度計PCU−205を用いて、室温1週間での粘度変化を測定する。
【0013】
「実施例1」
質量部(%)
Sn−3.0Ag−0.5Cu(25−45μm) 90.0
変性ロジン 5.2
硬化ヒマシ油 0.4
1,3,6−ヘキサントリカルボン酸 2.0
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 2.4
以上の配合より成るソルダペーストについて、上記の測定法によって連続印刷性、はんだボール、濡れ性、粘度の経時変化を測定した。その結果を表1に示した。
尚、実施例1のソルダペーストは、ハロゲン系活性剤を含まずに、ソルダペーストの皮はり、粘度変化等の経時変化を防止し、かつ使用に関しては良好の塗布・印刷性を長時間持続し、高温プリヒートにも耐えうるソルダペーストであった。
【0014】
「実施例2」
質量部(%)
Sn−3.0Ag−0.5Cu(25−45μm) 90.0
変性ロジン 5.5
水添ヒマシ油 0.5
1,3,6−ヘキサントリカルボン酸 1.2
マロン酸(C344) 0.2
ジエチレングリコールジブチルエーテル 2.6
以上の配合より成るソルダペーストについて、上記の測定法によって連続印刷性、はんだボール、濡れ性、粘度の経時変化を測定した。その結果を表1に示した。
【0015】
「比較例1」
質量部(%)
Sn−3.0Ag−0.5Cu(25−45μm) 90.0
変性ロジン 5.5
水添ヒマシ油 0.5
マロン酸(C344) 0.4
ヘキサデカン二酸(C16304) 1.0
ジエチレングリコールジブチルエーテル 2.6
以上の配合より成るソルダペーストについて、上記の測定法によって連続印刷性、はんだボール、濡れ性、粘度の経時変化を測定した。その結果を表1に示した。
【0016】
「比較例2」
質量部(%)
Sn−3.0Ag−0.5Cu(25−45μm) 90.0
変性ロジン 5.7
硬化ヒマシ油 0.4
シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩 0.3
エイコサン二酸(C20384) 1.0
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 2.6
以上の配合より成るソルダペーストについて、上記の測定法によって連続印刷性、はんだボール、濡れ性、粘度の経時変化を測定した。その結果を表1に示した。
【0017】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明によると、ハロゲン系活性剤を含まずに、ソルダペーストの皮はり、粘度変化等の経時変化を防止し、かつ使用に関しては良好の塗布・印刷性を長時間持続し、高温プリヒートにも耐えうるソルダペースト分野で好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソルダペースト用フラックスにおいて、活性剤として脂肪族トリカルボン酸を含有することを特徴とするソルダペースト用フラックス。
【請求項2】
脂肪族トリカルボン酸が、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸であることを特徴とする請求項1記載のソルダペースト用フラックス。
【請求項3】
請求項1又は2記載のソルダペースト用フラックスとはんだ金属とを含んでなることを特徴とするソルダペースト。