説明

ソルダーレジスト組成物およびプリント配線板

【課題】変色劣化に起因した反射率の低下を防止し、かつ、高反射率で高解像度のソルダーレジスト組成物、及びそれを用いてソルダーレジストを形成して得られるプリント配線板を提供する。
【解決手段】(A)芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂、(B)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、(C)モノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、(D)光重合性モノマー、(E)ルチル型酸化チタン、(F)エポキシ化合物、(G)有機溶剤および(H)酸化防止剤を含むソルダーレジスト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板の永久マスクとしての使用に適した高反射率のソルダーレジストを形成することができるソルダーレジスト組成物、および回路形成されたプリント配線板の表面に、このソルダーレジスト組成物を用いてソルダーレジストパターンを形成してなるプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板は、一般的に積層板に張り合わせた銅箔の不要な部分をエッチングにより除去して回路配線を形成したものであり、電子部品がはんだ付けにより所定の場所に配置されている。このようなプリント配線板には、電子部品をはんだ付けする際の回路の保護膜として、基材に塗布して硬化させて形成するソルダーレジストが使用されている。
【0003】
このソルダーレジストは、はんだ付けの際に、はんだが不必要な部分に付着するのを防止すると共に、回路導体が空気に直接曝されて、酸素や湿分により劣化することを防止する。さらに、ソルダーレジストは、回路基板の永久保護膜としても機能する。そのため、これには密着性、電気絶縁性、はんだ耐熱性、耐溶剤性、耐薬品性などの諸特性が要求される。
【0004】
また、プリント配線板は、高密度化実現のため微細化(ファイン化)、多層化およびワンボード化の一途をたどっており、実装方式も、表面実装技術(SMT)へと推移している。そのため、ソルダーレジストにも、ファイン化、高解像性、高精度、高信頼性の要求が高まっている。
【0005】
このようなソルダーレジストのパターンを形成する技術として、微細なパターンを正確に形成できるフォトリソグラフィー法が用いられており、特に環境面の配慮等から、アルカリ現像型のフォトリソグラフィー法が主流となっている。
【0006】
例えば、特許文献1および特許文献2には、ノボラック型エポキシ樹脂に不飽和モノカルボン酸を反応させ、さらに多塩基酸無水物を付加させた反応生成物をベースポリマーとするアルカリ水溶液で現像可能なソルダーレジスト組成物が開示されている。
【0007】
一方で、近年、携帯端末、パソコン、テレビ等の液晶ディスプレイのバックライト、また照明器具の光源などとして、低電力で発光する発光ダイオード(LED)を、ソルダーレジストが被覆形成されたプリント配線板に直接実装する用途が増えてきている。
【0008】
そこで、LEDの光を効率よく利用するため、ソルダーレジストが高反射率を有するよう、これを白色としたプリント配線板が求められている。
【0009】
しかし、白色ソルダーレジストは組成物自体が高い反射率を有しているので、パターニング露光時に光を反射してしまい、その硬化に必要な光を十分に吸収することができず、解像性に劣る結果、高精細なパターン潜像を形成することが困難であった。
【0010】
また、直接LEDを実装したプリント配線板は、LEDから発せられる光と熱により白色ソルダーレジストの劣化、着色が促進され、反射率の低下を起こす。特に、使用時においては、白色ソルダーレジストは、長期間、LEDから発せられる光と熱に晒されるため、ソルダーレジストの劣化、着色による反射率の低下が著しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特公平1−54390号公報
【特許文献2】特公平7−17737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、LEDの光を効率よく利用することができる、高反射率で高解像性のソルダーレジスト膜を形成するためのソルダーレジスト組成物及びプリント配線板を提供することにある。
【0013】
更に本発明の目的は、LEDから発せられる光と熱に、特に長期間晒される場合にも、ソルダーレジストの劣化、着色を防止することができるソルダーレジスト組成物及びプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は鋭意研究した結果、アルカリ現像を可能とし、熱硬化性をもつカルボキシル基含有樹脂として芳香環を有さない樹脂を用い、且つ高反射率を達成させるための白色顔料としてルチル型酸化チタンを用いることで、光や熱による劣化を抑制し、さらにエポキシ化合物と酸化防止剤とを用いることで長期にわたる光や熱による劣化を抑制することを見出すとともに、光重合開始剤としてビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤とモノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を併用することによって、反射率が高い酸化チタンを多量に含有するソルダーレジスト組成物であっても、解像性に優れ、高精細なパターン潜像を形成することができることを見出した。
【0015】
すなわち、本発明のソルダーレジスト組成物は(A)芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂、(B)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、(C)モノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、(D)光重合性モノマー、(E)ルチル型酸化チタン、(F)エポキシ化合物、および(G)有機溶剤、(H)酸化防止剤を含むことを特徴とし、さらに(I)チオキサントン系光重合増感剤を含有することもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、現像型ソルダーレジストとして要求されるコーティング性、光硬化性、現像性、はんだ耐熱性、密着性、電気絶縁性等の特性を有し、さらに経時による反射率の低下および劣化による着色を抑えた高反射率で高解像性のソルダーレジスト膜を形成することができる。さらに本発明のソルダーレジスト組成物は、LEDをプリント配線板に実装した際に全体として照度を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例、比較例の試験片の耐光・耐熱変色性試験に使用された加熱炉の温度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0019】
本発明のソルダーレジスト組成物は、(A)芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂、(B)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、(C)モノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、(D)光重合性モノマー、(E)ルチル型酸化チタン、(F)エポキシ化合物、(G)有機溶剤、(H)酸化防止剤を含むことを特徴とする。
【0020】
(芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂)
芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂(A)としては、芳香環を持たないカルボキシル基を有する樹脂であれば、それ自体に感光性の不飽和二重結合を1個以上有する感光性のカルボキシル基含有樹脂、および感光性の不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂のいずれも使用可能であり、特定のものに限定されるものではない。特に以下に列挙する樹脂の中で芳香環を有さないもの(オリゴマーまたはポリマーのいずれでもよい)を好適に使用することができる。すなわち、(1)不飽和カルボン酸と不飽和二重結合を有する化合物の共重合によって得られるカルボキシル基含有樹脂、(2)カルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合樹脂に1分子中にオキシラン環とエチレン性不飽和基を有する化合物を反応させて得られる感光性のカルボキシル基含有樹脂、(3)1分子中にそれぞれ1個のエポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物と不飽和二重結合を有する化合物との共重合体に不飽和モノカルボン酸を反応させ、この反応により生成した第2級の水酸基に飽和または不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られる感光性のカルボキシル基含有樹脂、(4)水酸基含有ポリマーに飽和または不飽和多塩基酸無水物を反応させた後、この反応により生成したカルボン酸に1分子中にそれぞれ1 個のエポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物を反応させて得られる感光性の水酸基およびカルボキシル基含有樹脂である。
【0021】
これらの中でも、上記(2)の感光性のカルボキシル基含有樹脂である、(a)カルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合樹脂と、(b)1分子中にオキシラン環とエチレン性不飽和基を有する化合物との反応により得られるカルボキシル基を有する共重合系樹脂が好ましい。
【0022】
(a)のカルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルと、1分子中に1個の不飽和基と少なくとも1個のカルボキシル基を有する化合物とを共重合させて得られる。共重合樹脂(a)を構成する(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソオクチルオキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のグリコール変性(メタ)アクリレート類などが挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。なお、本明細書中において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタアクリレートを総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
【0023】
また、1分子中に1個の不飽和基と少なくとも1個のカルボキシル基を有する化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、不飽和基とカルボン酸の間が鎖延長された変性不飽和モノカルボン酸、例えばβ−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ラクトン変性等によりエステル結合を有する不飽和モノカルボン酸、エーテル結合を有する変性不飽和モノカルボン酸、さらにはマレイン酸等のカルボキシル基を分子中に2個以上含むものなどが挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0024】
(b)1分子中にオキシラン環とエチレン性不飽和基を有する化合物としては、1分子中にエチレン性不飽和基とオキシラン環を有する化合物であればよく、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルブチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアミノアクリレート等を挙げることができる。中でも、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートが好ましい。これら(b)1分子中にオキシラン環とエチレン性不飽和基を有する化合物は、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂(A)は、その酸価が50〜200mgKOH/gの範囲にあることが必要である。酸価が50mgKOH/g未満の場合には、弱アルカリ水溶液でのソルダーレジスト組成物の塗膜の未露光部分の除去が難しい。酸化が200mgKOH/gを超えると、硬化被膜の耐水性、電気特性が劣るなどの問題がある。また、芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂(A)の重量平均分子量は、5,000〜100,000の範囲にあることが好ましい。重量平均分子量が5,000未満であるとソルダーレジスト組成物の塗膜の指触乾燥性が著しく劣る傾向がある。また、重量平均分子量が100,000を超えると、ソルダーレジスト組成物の現像性、貯蔵安定性が著しく悪化する問題を生じるために好ましくない。
【0026】
(光重合開始剤)
(ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤)
本発明に用いられるビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(B)としては、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、(2,5,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。中でもビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン社製、商品名;イルガキュア819)が入手しやすく実用的である。
【0027】
(モノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤)
本発明に用いられるモノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C)としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2−メチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル等が挙げられる。中でも2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン社製、商品名;ダロキュアTPO)が入手しやすく実用的である。
【0028】
本発明のソルダーレジスト組成物は、上記ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(B)と前記モノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C)を併用することにより、酸化チタンを配合した高反射率の塗膜でも必要な光を吸収でき、高精細なパターン形成ができるようになる。またその配合比率を変えることにより、塗膜の光吸収の微調整が可能となる。すなわち、パターンの断面形状で基材面側の深部の硬化性が不足してアンダーカットが出やすいときには、上記ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(B)の比率を大きくする。また、表面硬化性が不足して現像後に表面状態が悪いときには、前記モノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C)の比率を大きくする。このビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(B)とモノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C)の配合比率は、90対10〜1対99、好ましくは80対20〜2対98である。この配合比率の範囲外では、これらの併用による効果が少なくなり、必要な光が吸収できないため高精細なパターン形成ができなくなる。このようなビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(B)とモノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C)の合計配合量は、芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して好ましくは1〜30質量部、より好ましくは2〜25質量部である。このビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(B)とモノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C)の合計配合量が1質量部未満の場合、光硬化性が低下し、露光・現像後のパターン形成が困難になるので好ましくない。一方、当該配合量が30質量部を超えた場合、光重合開始剤由来の塗膜の色つきが大きくなり、またコスト高の原因となるので好ましくない。
【0029】
(光重合性モノマー)
本発明に用いられる光重合性モノマー(D)としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート類;エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのモノ又はジアクリレート類;N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドなどのアクリルアミド類;N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートなどのアミノアルキルアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの多価アルコール又はこれらのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイド付加物の多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート及び、これらのフェノール類のエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイド付加物などのアクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテルのアクリレート類;メラミンアクリレート;及び/又は上記アクリレート類に対応するメタクリレート類等を挙げることができる。
【0030】
これらの光重合性モノマー(D)の配合量は、芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは10〜100質量部、より好ましくは20〜80質量部である。配合量が100質量部を超えると、硬化塗膜のソルダーレジストとしての物性が低下して好ましくない。一方、当該配合量が10質量部未満であると充分な光硬化性がなく、高精細なパターンが得られない。
【0031】
(ルチル型酸化チタン)
本発明では、白色顔料として、ルチル型酸化チタン(E)を用いる。一般的な酸化チタンにはアナターゼ型とルチル型がある。アナターゼ型酸化チタンは、光触媒活性を有するために、ソルダーレジスト組成物中の樹脂の変色を引き起こすことがある。これに対し、ルチル型酸化チタンは、アナターゼ型酸化チタンと比較して紫外線領域と可視光領域の境界付近に吸収があり、白色度と可視光領域全体の反射率の点では劣るものの、光活性を殆ど有さないために、安定したソルダーレジスト膜を得ることができる。
【0032】
前記ルチル型酸化チタン(E)としては、公知のものを使用することができる。具体的には、タイペークR−820、タイペークR−830、タイペークR−930、タイペークR−550、タイペークR−630、タイペークR−680、タイペークR−670、タイペークR−680、タイペークR−670、タイペークR−780、タイペークR−850、タイペークCR−50、タイペークCR−57、タイペークCR−80、タイペークCR−90、タイペークCR−93、タイペークCR−95、タイペークCR−97、タイペークCR−60、タイペークCR−63、タイペークCR−67、タイペークCR−58、タイペークCR−85、タイペークUT771(石原産業株式会社製)、タイピュアR−100、タイピュアR−101、タイピュアR−102、タイピュアR−103、タイピュアR−104、タイピュアR−105、タイピュアR−108、タイピュアR−900、タイピュアR−902、タイピュアR−960、タイピュアR−706、タイピュアR−931(デュポン株式会社製)、TITON R−25、TITON R−21、TITON R−32、TITON R−7E、TITON R−5N、TITON R−61N、TITON R−62N、TITON R−42、TITON R−45M、TITON R−44、TITON R−49S、TITON GTR−100、TITON GTR−300、TITON D−918、TITON TCR−29、TITON TCR−52、TITON FTR−700(堺化学工業株式会社製)等を使用することができる。
【0033】
このようなルチル型酸化チタン(E)の配合量は、芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは50〜450質量部、より好ましくは60〜350質量部である。配合量が450質量部を超えると、光硬化性が低下し、硬化深度が低くなり好ましくない。一方、当該配合量が50質量部未満であると、隠ぺい力が小さく、高反射率のソルダーレジストを得ることができない。
【0034】
(エポキシ化合物)
次に、エポキシ化合物(F)としては、例えばビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート(例えば日産化学(株)製のTEPIC−H(S−トリアジン環骨格面に対し3個のエポキシ基が同一方向に結合した構造をもつβ体)や、TEPIC(β体と、S−トリアジン環骨格面に対し1個のエポキシ基が他の2個のエポキシ基と異なる方向に結合した構造をもつα体との混合物)等)などの複素環式エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂などの希釈剤に難溶性のエポキシ樹脂や、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型またはクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、キレート型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、アミノ基含有エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、ε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂などの希釈剤に可溶性のエポキシ樹脂などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
このようなエポキシ化合物(F)の配合量は、芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して好ましくは5〜70質量部、より好ましくは5〜60質量部である。エポキシ化合物(F)の配合量が70質量部を超えると、現像液での未露光部分の溶解性が低下し、現像残りが発生しやすくなり、実用上使用することが難しい。一方、5質量部未満であると、芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂(A)のカルボキシル基が未反応の状態で残存するため、硬化塗膜の電気特性、はんだ耐熱性、耐薬品性が充分に得られ難くなる傾向がある。
【0036】
芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂(A)のカルボキシル基と、エポキシ化合物(F)のエポキシ基とは、開環重合により反応する。そして、有機溶剤(G)やソルダーレジスト組成物中の他の物質として易溶性のエポキシ樹脂を用いた場合、乾燥時の熱によりカルボキシル基とエポキシ基の架橋が進みやすい。そのため、この架橋反応を抑制して乾燥時間を長くとりたい場合には、難溶性のエポキシ樹脂を単独で、または易溶性のエポキシ樹脂と共に用いることが望ましい。
【0037】
(有機溶剤)
本発明で使用される有機溶剤(G)は、ソルダーレジスト組成物を塗布しやすい状態にし、これを基材等に塗布後乾燥させて塗膜を形成するために用いられる。このような有機溶剤(G)としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロプレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート及び上記グリコールエーテル類のエステル化物などのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類;オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサなどの石油系溶剤等を挙げることができる。
【0038】
前記有機溶剤(G)は、単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。有機溶剤(G)の配合量は、芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して、20〜300質量部が好ましい。
【0039】
(酸化防止剤)
本発明で使用される酸化防止剤(H)は、ソルダーレジストの硬化物が長期間に渡り高温にさらされた場合でも、当該硬化物の反射率の低下や着色を防止するために使用される。このような酸化防止剤(H)としては、n−オクタデシル−3−(3’5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3’5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、1,4−ブタンジオール−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、トリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、テトラキス−(メチレン−3−(3’、5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネートメタン、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、N,N‘−ビス−3−(3’5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プリピオニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−テトラメチレンビス−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニルジアミン、N,N’−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニル)ヒドラジン、N−サリチロイル−N’−サリチリデンヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、N,N’−ビス(2−(3−(3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)オキシアミド等のヒンダードフェノール化合物、ジドデシル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネート、ジオクタデシル−3,3’−チオジプロピオネート、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリチルテトラキス(3−テトタデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリチルテトラキス(3−トリデシルチオプロピオネート)、ジラウリル−3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオジプロピオネート、2−メルカプトベンゾイミダゾール、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、2−メルカプトメチルベンツイミダゾールの亜鉛塩、2−メルカプトベンツイミダゾールの亜鉛塩、2−メルカプトメチルベンツイミダゾール、ジブチルチオカルバミン酸亜鉛等の硫黄系酸化防止剤、トリフェニルホスファイト、トリス(メチルフェニル)ホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(オクチルフェニル)ホスファイト、トリス[デシルポリ(オキシエチレン)ホスファイト、トリス(シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、トリ(デシル)チオホスファイト、トリイソデシルチオホスファイト、フェニル・ビス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、フェニル・ジイソデシルホスファイト、テトラデシルポリ(オキシエチレン)・ビス(エチルフェニル)ホスファト、フェニル・ジシクロヘキシルホスファイト、フェニル・ジイソオクチルホスファイト、フェニル・ジ(トリデシル)ホスファイト、ジフェニル・シクロヘキシルホスファイト、ジフェニル・イソオクチルホスファイト、ジフェニル・2−エチルヘキシルホスファイト、ジフェニル・イソデシルホスファイト、ジフェニル・シクロヘキシルフェニルホスファイト、ジフェニル・(トリデシル)チオホスファイト等のリン系酸化防止剤、フェニルナフチルアミン、4,4’−ジメトキシジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、ジ−tert−ブチルジフェニルアミン、N,N’−ジ(オクチルフェニル)アミン、4−イソプロポキシジフェニルアミン、N,N’−ジ(2−ナフチル)−p−フェニレンジアミン等の芳香族アミン系酸化防止剤等がある。これらは1種以上を選び、組み合わせても使用できる。中でもヒンダードフェノール化合物が反射率の低下と着色防止の効果が高いため望ましい。ヒンダードフェノール化合物の酸化防止剤の商品名としては、ノクラック200、ノクラックM−17、ノクラックSP、ノクラックSP−N、ノクラックNS−5、ノクラックNS−6、ノクラックNS−30、ノクラック300、ノクラックNS−7、ノクラックDAH(以上いずれも大内新興化学工業(株)製);MARK AO−30、MARK AO−40、MARK AO−50、MARK AO−60、MARK AO−616、MARK AO−635、MARK AO−658、MARK AO−15、MARK AO−18、MARK 328、MARK AO−37(以上いずれも(株)ADEKA製);イルガノックス245、イルガノックス259、イルガノックス565、イルガノックス1010、イルガノックス1035、イルガノックス1076、イルガノックス1081、イルガノックス1098、イルガノックス1222、イルガノックス1330、イルガノックス1425WL(以上いずれもチバ・ジャパン(株)製)があげられる。
【0040】
酸化防止剤(H)の配合量は、芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して好ましくは0.4〜25質量部、より好ましくは0.8〜15質量部である。酸化防止剤(H)の配合量が芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して0.4質量部未満の場合、ソルダーレジストの熱劣化による変色防止効果が少ない。また、酸化防止剤(H)の配合量が芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して25質量部を超える場合、本件塗膜の現像性が低下し、パターニングに不具合がでる。
【0041】
(チオキサントン系光重合増感剤)
本発明では露光時の光に対する感度を向上させる目的で、チオキサントン系光重合増感剤(I)を配合することが望ましい。上記ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(B)と上記モノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C)を併用した組成ではチオキサントン系光重合増感剤(I)の効果が非常に高いからである。このチオキサントン系光重合増感剤(I)としては、チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等が挙げられる。
【0042】
このようなチオキサントン系光重合増感剤(I)の配合量は芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して好ましくは0.05〜2質量部、より好ましくは0.1〜1質量部である。当該配合量が0.05質量部未満では感度向上の効果が少なく、2質量部以上を超えるとチオキサントン由来の塗膜の色つきが大きくなる。
【0043】
(安定剤)
さらに、本発明のソルダーレジスト組成物においては、ヒンダードアミン系光安定剤を含有させることにより、光劣化を減少させることができる。
【0044】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、チヌビン622LD、チヌビン144;CHIMASSORB 944LD、CHIMASSORB 119FL(以上いずれもチバ・ジャパン株式会社製);MARK LA−57、LA−62、LA−67、LA−63、LA−68(以上いずれも株式会社ADEKA製);サノールLS−770、LS−765、LS−292、LS−2626、LS−1114、LS−744(以上いずれも三共ライフテック株式会社製)などが挙げられる。
【0045】
上記光安定剤は、芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して0.1〜10質量部添加することが好ましい。
【0046】
(分散剤)
本発明のソルダーレジスト組成物においては、分散剤を含有させることにより酸化チタンの分散性、沈降性を改善することができる。分散剤としては、例えば、ANTI−TERRA−U、ANTI−TERRA−U100、ANTI−TERRA−204、ANTI−TERRA−205、DISPERBYK−101、DISPERBYK−102、DISPERBYK−103、DISPERBYK−106、DISPERBYK−108、DISPERBYK−109、DISPERBYK−110、DISPERBYK−111、DISPERBYK−112、DISPERBYK−116、DISPERBYK−130、DISPERBYK−140、DISPERBYK−142、DISPERBYK−145、DISPERBYK−161、DISPERBYK−162、DISPERBYK−163、DISPERBYK−164、DISPERBYK−166、DISPERBYK−167、DISPERBYK−168、DISPERBYK−170、DISPERBYK−171、DISPERBYK−174、DISPERBYK−180、DISPERBYK−182、DISPERBYK−183、DISPERBYK−185、DISPERBYK−184、DISPERBYK−2000、DISPERBYK−2001、DISPERBYK−2009、DISPERBYK−2020、DISPERBYK−2025、DISPERBYK−2050、DISPERBYK−2070、DISPERBYK−2096、DISPERBYK−2150、BYK−P104、BYK−P104S、BYK−P105、BYK−9076、BYK−9077、BYK−220S(ビックケミー・ジャパン株式会社製)、ディスパロン2150、ディスパロン1210、ディスパロンKS−860、ディスパロンKS−873N、ディスパロン7004、ディスパロン1830、ディスパロン1860、ディスパロン1850、ディスパロンDA−400N、ディスパロンPW−36、ディスパロンDA−703−50(楠本化成株式会社製)、フローレンG−450、フローレンG−600、フローレンG−820、フローレンG−700、フローレンDOPA−44、フローレンDOPA−17(共栄社化学株式会社製)が挙げられる。
【0047】
分散剤の含有量は、上記の目的を有効に達成するために、ルチル型酸化チタン(E)100質量部に対して、0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部が好ましい。
【0048】
(その他の添加成分)
さらに、本発明のソルダーレジスト組成物には、必要に応じて、硬化促進剤、熱重合禁止剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、カップリング剤、難燃助剤等が使用できる。
【0049】
(製法)
以下にソルダーレジスト組成物の使用の一例として、プリント配線板の製造について説明する。
【0050】
まず、本発明のソルダーレジスト組成物を、必要に応じて希釈して塗布方法に適した粘度に調整する。
【0051】
次に、粘度調整した組成物を、回路形成されたプリント配線板に、スクリーン印刷法、カーテンコート法、スプレーコート法、ロールコート法等の方法により塗布する。そして、例えば70〜90℃の温度で、塗布した組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥させることにより、タックフリーの塗膜を形成する。
【0052】
その後、当該塗膜にフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光し、未露光部をアルカリ水溶液により現像してレジストパターンを形成する。そしてこのレジストパターンを100℃〜200℃で熱硬化することにより、ソルダーレジストパターンを形成する。
【0053】
また、露光するための照射光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ又はメタルハライドランプなどを用いることができる。その他、レーザー光線なども活性光線として利用できる。
【0054】
現像液であるアルカリ水溶液としては、0.5〜5質量%の炭酸ナトリウム水溶液が一般的である。他のアルカリ水溶液を使用することも可能である。他のアルカリ水溶液としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等のアルカリ水溶液を挙げることができる。
【0055】
そして、ソルダーレジストパターンを形成した後、LEDを実装して本発明に係るプリント配線板を製造する。このような本発明に係るプリント配線板は、本発明の反射率の高い酸化チタンを含有するソルダーレジストを用いて作製されており、高反射率で高精細なパターンを有するものである。
【実施例】
【0056】
以下、実施例及び比較例を示して、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではないことはもとよりである。
【0057】
(A)芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂の合成
合成例1
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた2リットルセパラブルフラスコに、溶媒としてジエチレングリコールジメチルエーテル900g、および重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(日油株式会社製、商品名;パーブチルO)21.4gを加えて90℃に加熱した。加熱後、ここに、メタクリル酸309.9g、メタクリル酸メチル116.4g、およびラクトン変性2−ヒドロキシエチルメタクリレート(ダイセル化学工業株式会社製、商品名;プラクセルFM1)109.8gを、重合開始剤であるビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(日油株式会社製、商品名;パーロイルTCP、)21.4gと共に3時間かけて滴下して加えた。さらにこれを6時間熟成することにより、カルボキシル基含有共重合樹脂を得た。なお、これらの反応は、窒素雰囲気下で行った。
【0058】
次に、得られたカルボキシル基含有共重合樹脂に、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート(ダイセル化学株式会社製、商品名;サイクロマーA200)363.9g、開環触媒としてジメチルベンジルアミン3.6g、重合抑制剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル1.80gを加え、100℃に加熱し、これを攪拌することによりエポキシの開環付加反応を行った。16時間後、固形分の酸価が108.9mgKOH/g、重量平均分子量が25,000の、芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂を53.8質量%(不揮発分)含む溶液を得た。以下、この反応溶液をA−1ワニスと呼ぶ。
【0059】
合成例2
温度計、攪拌機、滴下ロート、および還流冷却器を備えたフラスコに、溶媒としてジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、触媒としてアゾビスイソブチロニトリルを入れ、窒素雰囲気下、これを80℃に加熱し、メタアクリル酸とメチルメタアクリレートを0.40:0.60のモル比で混合したモノマーを約2時間かけて滴下した。さらにこれを1時間攪拌した後、温度を115℃にまで上げ、失活させて樹脂溶液を得た。
【0060】
この樹脂溶液を冷却後、これを触媒として臭化テトラブチルアンモニウムを用い、95〜105℃で30時間の条件で、ブチルグリシジルエーテルを0.40のモル比で、得られた樹脂のカルボキシル基の等量と付加反応させ、冷却した。
【0061】
さらに、上記で得られた樹脂のOH基に対して、95〜105℃で8時間の条件で、無水テトラヒドロフタル酸を0.26のモル比で付加反応させた。これを冷却後取り出して、固形分の酸価が78.1mgKOH/g、重量平均分子量が35,000の芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂を50質量%(不揮発分)含む溶液を得た。以下、この反応溶液をA−2ワニスと呼ぶ。
【0062】
芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂の合成
比較合成例1
温度計、攪拌器、滴下ロート、および還流冷却器を備えたフラスコに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製エピクロンN−680、エポキシ当量=210)210gと、溶媒としてのカルビトールアセテート96.4gとを加え、加熱溶解させた。続いて、これに重合禁止剤としてハイドロキノン0.1g、反応触媒としてトリフェニルホスフィン2.0gを加えた。この混合物を95〜105℃に加熱し、アクリル酸72gを徐々に滴下し、酸価が3.0mgKOH/g以下となるまで、約16時間反応させた。この反応生成物を、80〜90℃にまで冷却した後、テトラヒドロフタル酸無水物76.1gを加え、赤外吸光分析により、酸無水物の吸収ピーク(1780cm−1)が無くなるまで、約6時間反応させた。この反応溶液に、出光興産株式会社製の芳香族系溶剤イプゾール#150を96.4g加え、希釈した後取り出した。このようにして得られたカルボキシル基含有の感光性ポリマー溶液は、不揮発分が65重量%、固形物の酸価が78mgKOH/gであった。以下、この反応溶液をB−1ワニスと呼ぶ。
【0063】
実施例1〜8及び比較例1〜6の配合:
表1に従って各成分を配合、攪拌して3本ロールにて分散させてそれぞれソルダーレジスト組成物を作製した。表中の数字は、質量部を示す。
【表1】

【0064】
酸化防止剤1:イルガノックス1010(チバ・ジャパン社製・テトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネートメタン・ヒンダードフェノール化合物)
酸化防止剤2:DMPT「ヨシトミ」(ピーアイコーポーレーション社製・ジミリスチル−3,3−チオジプロピオネート・硫黄系化合物)
光重合開始剤A1:ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド イルガキュア819(チバ・ジャパン社製)
光重合開始剤A2:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド ダロキュアTPO(チバ・ジャパン社製)
光重合開始剤B1:イルガキュア907(チバ・ジャパン社製)
光重合性モノマー:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
酸化チタンA:ルチル型酸化チタン CR−95(石原産業社製)
酸化チタンB:アナターゼ型酸化チタン A−220(石原産業社製)
エポキシ化合物:TEPIC−H(日産化学社製)
熱硬化促進剤:ジシアンジアミド
溶剤:カルビトールアセテート
消泡剤(シリコーンオイル):KS−66(信越化学製)
各ソルダーレジスト組成物を用いて形成されるソルダーレジストの諸性質を調べるために、以下の試験、および評価を行った。
【0065】
(1)解像性(断面形状)
各ソルダーレジスト組成物を、100mm×150mmの大きさで1.6mmの厚さのFR−4銅張り積層板に対し、スクリーン印刷法にて、100メッシュポリエステル(バイアス製)の版を使用してベタ(基板全面)で印刷した。これを80℃で10分間、熱風循環式乾燥炉にて乾燥させた。さらにそれぞれの上記乾燥塗膜に、同様の方法でソルダーレジスト組成物を重ねて印刷して、80℃で20分間熱風循環式乾燥炉にて乾燥させた。さらにプリント配線板用露光機HMW−680GW(株式会社オーク製作所製)を用いて、ネガの寸法が250μmのラインのマスクパターンを使用し、実施例1〜5、7、8、及び比較例1〜4と6については450mJ/cm、実施例6、比較例5については900mJ/cmの積算光量で、マスクと乾燥させたソルダーレジストを密着させる方法で紫外線露光した。その後、30℃で1%の炭酸ナトリウム水溶液を現像液として、これらをプリント配線板用現像機にて60秒間現像した。さらに続いて、これらについて150℃で60分間、熱風循環式乾燥炉で熱硬化を行い、各試験片を作製した。これらの試験片のラインについて断面形状を顕微鏡にて、マスクと接触した上面と基材に接している基材面を測定した。次に、各試験片について表面粗さ計で膜厚も測定した。また、各試験片について観察された形状について目視による判定を行なった。この判定では、断面の形状がほぼ四角形であるものを○、張り出しやアンダーカットが大きく、明らかに逆台形であるものを×とした。結果を表2に示す。単位はμmである。
【表2】

【0066】
表2によると、実施例1〜8、また比較例でもビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(B)とモノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C)を併用したものは、ラインの断面形状で上面と基材面の寸法の差が小さく、断面形状がほぼ四角形あり、優れた解像性が得られている。
【0067】
(2)耐光・耐熱変色性
解像性試験で良好であった実施例1〜8および、比較例1、2、6のソルダーレジスト組成物について、100mm×150mmの大きさで1.6mmの厚さのFR−4銅張り積層板に対し、スクリーン印刷法にて、膜厚40μmとなるように、100メッシュポリエステル(バイアス製)の版を使用してベタ(基板全面)でパターンを印刷した。そして、これらを80℃で30分間に渡って熱風循環式乾燥炉にて乾燥させた。さらにプリント配線板用露光機HMW−680GW(株式会社オーク製作所製)を用いて、30mm角のネガパターンを残すように、900mJ/cmの積算光量で紫外線露光した。その後、30℃で1%の炭酸ナトリウム水溶液を現像液として、これらをプリント配線板用現像機にて60秒間現像し、続いて150℃で60分間、熱風循環式乾燥炉で熱硬化を行い、特性試験用の各試験片を作製した。
【0068】
得られた試験片を色彩色差計CR−400(コニカミノルタセンシング株式会社製)で測定して初期値とし、試験片を2分割して各試験を行った。
【0069】
(1)耐実装・耐光性試験(部品実装を想定し、その後の耐光性試験)
各試験片を部品実装用のコンベア式加熱炉を用いて2回繰り返し加熱した。加熱炉の温度は図1に示す。その後、コンベア型UV照射機QRM−2082−E−01(株式会社オーク製作所製)を用いて、メタルハライドランプ、コールドミラー、120W/cm×3灯、コンベアスピード3m/分(波長350nm付近の積算光量3000mJ/cm)の条件で50回繰り返してUVを照射した。(計算上では積算光量150J/cmとなる)そして、UV照射後の各試験片について、初期値と同様の条件にて色差を測定し、各試験片の劣化状態を評価した。また、目視でも当該各試験片を評価した。その結果を表3に示す。
【0070】
(2) 耐光・長期耐熱性
各試験片をコンベア型UV照射機QRM−2082−E−01(株式会社オーク製作所製)を用いて、メタルハライドランプ、コールドミラー、120W/cm×3灯、コンベアスピード3m/分(波長350nm付近の積算光量3000mJ/cm)の条件で50回繰り返してUVを照射した。(計算上では積算光量150J/cmとなる)次に、これらを150℃で1000時間、熱風循環式乾燥炉で加熱した。試験後に各試験片について初期値と同様の条件にて色差を測定し、各試験片の劣化状態を評価した。また、目視でも当該各試験片を評価した。その結果を表3に示す。
【表3】

【0071】
表3において、YはXYZ表色系の反射率を示し、Lは、L表色系の明度を表わす。△E*abはL*a*b*の各値について、劣化試験後の値と初期値の差の二乗を取り、その総和の平方根をとったものである。aは赤方向、−aは緑方向、bは黄方向、−bは青方向を示し、ゼロに近いほど彩度がないことを示す。△Eabは、色の変化を表し、この値が小さいほど色の変化も小さいことを示す。目視での評価基準は、◎:全く変色がないもの、○:変色がないと見られるが、初期のものと比較すると若干の変色が見られるもの、×:明らかな変色が見られるもの、××:激しく変色が見られるものである。
【0072】
実施例1〜8はUV照射し、さらに150℃で1000時間(42日間)にもおよぶ加熱試験を行った後においても△E*abの値及び目視評価についても変色が少なく、良好な結果であった。また、この試験後の基材(FR−4)については激しい変色がみられ、黒色になっていた。比較例1は、実装時を想定した耐光試験、耐熱試験では耐変色性に関し良好な結果であったが、使用時を想定した長期間の耐光・耐熱試験では、耐変色性に関し実施例に比べて劣っていた。
【0073】
(3)はんだ耐熱性
実施例1〜8について、(2)と同様に作製した各試験片に、ロジン系フラックスを塗布して260℃のはんだ槽で10秒間フローさせた。その後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで洗浄し、乾燥させた後に、セロハン粘着テープによるピールテストを行い、塗膜の剥がれについて評価した。この評価では、剥がれが無いものを○、剥がれがあるものを×とした。結果を表4に示す。
【0074】
(4)耐溶剤性
実施例1〜8について、(2)と同様に作製した各試験片を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに30分間浸漬し、乾燥させた後に、セロハン粘着テープによるピールテストを行い、塗膜の剥がれについて評価した。この評価では、剥がれが無いものを○、剥がれがあるものを×とした。結果を表4に示す。
【0075】
(5)鉛筆硬度試験
実施例1〜8について、(2)と同様に作製した各試験片に、芯の先が平らになるように研がれたBから9Hの鉛筆を、約45°の角度で押し付けて、塗膜の剥がれが生じない鉛筆の硬さを記録した。結果を表4に示す。
【0076】
(6)絶縁抵抗試験
実施例1〜8について、FR−4銅張り積層板の代わりにIPC B−25テストパターンのクシ型電極Bクーポンを用いること以外は(2)と同様の条件で各試験片を作製した。これらの試験片に、DC500Vのバイアスを印加し、絶縁抵抗値を測定した。値が100GΩ以上であれば○、100GΩ未満であれば×とした。結果を表4に示す。
【表4】

【0077】
表4から明らかなように、本発明のソルダーレジスト組成物を用いた実施例1〜8においては、ソルダーレジストに要求される良好な耐熱性、耐溶剤性、密着性および電気絶縁性を有することがわかった。
【0078】
以上詳述した通り、本発明のソルダーレジスト組成物は、酸化チタンを配合しても光によるパターニング性が良好で解像性に優れることが分かった。また、本発明のソルダーレジスト組成物を用いて形成されたソルダーレジストは、光や長期間にわたる加熱による変色が少なく、高反射率に優れるものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂、(B)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、(C)モノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、(D)光重合性モノマー、(E)ルチル型酸化チタン、(F)エポキシ化合物、(G)有機溶剤および(H)酸化防止剤を含むことを特徴とするソルダーレジスト組成物。
【請求項2】
前記芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂(A)が、(a)カルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合樹脂と、(b)1分子中にオキシラン環とエチレン性不飽和基を有する化合物との反応により得られるカルボキシル基を有する共重合系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のソルダーレジスト組成物。
【請求項3】
(I)チオキサントン系光重合増感剤を更に含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のソルダーレジスト組成物。
【請求項4】
ソルダーレジスト組成物の硬化物が形成される基材を備えたプリント配線板に於いて、
上記硬化物は、
(A)芳香環を有さないカルボキシル基と(F)エポキシ化合物のエポキシ基との反応物、(B)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、(C)モノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、(D)光重合性モノマー、(E)ルチル型酸化チタン、および(H)酸化防止剤を含むことを特徴とするプリント配線板。
【請求項5】
硬化物は、(I)チオキサントン系光重合増感剤を更に含むことを特徴とする請求項4に記載のプリント配線板。
【請求項6】
発光ダイオードを実装していることを特徴とする請求項4又は5に記載のプリント配線板。

【図1】
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【公開番号】特開2011−170050(P2011−170050A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32935(P2010−32935)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(591021305)太陽ホールディングス株式会社 (327)
【Fターム(参考)】