説明

ソレノイドバルブ

【課題】出力油圧を直接的に摩擦係合要素の油圧サーボに供給し得る調圧能力を有し、かつ油圧制御装置の小型化を図ることが可能なソレノイドバルブを提供する。
【解決手段】リニアソレノイドバルブ1のバルブ部20に内部バルブ部30を設け、該内部バルブ30の作動油室33と出力ポートPoutとを連通する導入油路21dを形成する。導入油路21dを介して作動油室33に作用する出力油圧が所定圧未満である際と所定圧以上である際とで第2スプール31の位置が切換えられ、摩擦係合要素のスリップ状態を制御する低い油圧出力領域にあっては、フィードバック油室27に対するフィードバック圧の作用をオンし、摩擦係合要素の細かいコントロールが不要となる高い油圧出力領域にあっては、フィードバック圧の作用をオフするので、ソレノイド部10の必要な駆動力性能が低減されて小型化が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力される油圧を電気的に調圧出力し得るソレノイドバルブに係り、特に車輌用自動変速機の油圧制御装置などに用いられるソレノイドバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車輌用自動変速機の油圧制御装置にあっては、オイルポンプにより発生した油圧をレギュレータバルブによってスロットル開度に応じたライン圧に調圧し、該ライン圧をクラッチやブレーキ等の摩擦係合要素の油圧サーボに選択的に供給することで、それら摩擦係合要素を選択的に係合して動力伝達経路の形成を行い、かつスロットル開度の上昇に伴う駆動源の出力トルクの上昇によって、摩擦係合要素に滑りが生じないように構成されている。
【0003】
ライン圧を摩擦係合要素の油圧サーボに供給して係合を行う場合や排出して解放を行う場合は、単に油圧サーボに対してライン圧の供給や排出を行うと、急係合や急解放による変速ショックが生じるため、ライン圧を所望の圧に調圧しつつ油圧サーボに対して供給・排出を行う必要がある。そのため、ライン圧を油圧サーボに供給するための油路に、入力される制御圧に応じてスプールを移動させることで油圧サーボに対するライン圧の絞り量をコントロールし得るコントロールバルブを介在させ、一方で、ライン圧をモジュレータバルブによって所定圧以下に抑制したモジュレータ圧を入力油圧としたリニアソレノイドバルブによって制御圧を生成し、つまりリニアソレノイドバルブを電気的に制御することによって制御圧をコントロールバルブに対して作用させ、該コントロールバルブによりライン圧を調圧することで、上記油圧サーボに対する供給油圧のコントロールを行っている(特許文献1、図5参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−74733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、自動変速機は、燃費向上等を図るために多段化の開発が進められており、それに伴い摩擦係合要素の数も増加している。そのため、自動変速機の油圧制御装置にあって、各摩擦係合要素に対応して上述のようなコントロールバルブを設けると、それらコントロールバルブの数の増加だけでなく、油路も複雑化して、油圧制御装置の大型化を招いてしまう。
【0006】
そのため、上述のようなコントロールバルブを配設せずに、リニアソレノイドバルブの入力油圧としてライン圧を用い、摩擦係合要素の油圧サーボにリニアソレノイドバルブからの出力油圧を直接的に(他のバルブで調圧することなく)供給し得るように構成し、つまりリニアソレノイドバルブだけで油圧サーボの供給油圧を調圧することが考えられる。
【0007】
しかしながら、このようにリニアソレノイドバルブから直接的に油圧サーボへ油圧供給を行うためには、上記モジュレータ圧に比してライン圧が圧倒的に高圧であるため、該リニアソレノイドバルブの調圧能力を大幅に増加する必要があり、リニアソレノイドバルブのプランジャの駆動力を大幅に増大させる必要があって、ソレノイド部の大型化を招き、結局は油圧制御装置の大型化を招いてしまうという問題がある。
【0008】
一方、例えば自動変速機に用いられるリニアソレノイドバルブは、変速中の変速ショック等を防止するために、低い油圧出力領域にあっては細やかなコントロールが求められ、反対に摩擦係合要素を係合状態に維持するための高い油圧出力領域にあっては単に高出力が求められるという特性がある。そこで、そのような低い油圧出力領域にあってはフィードバック制御を行って、高い油圧出力領域にあってはフィードバック圧の入力をオフ(カット)することでフィードバック作用をなくし、リニアソレノイドバルブを大型化することなく、出力能力の向上を図ることが考えられる。しかしながら、このようにフィードバック圧の作用をオン・オフするためには、フィードバック圧をオン・オフするための切替えバルブ等を別途設けることになり、バルブ本数が増加し、結局は油圧制御装置の肥大化を招いてしまう。
【0009】
そこで本発明は、出力油圧を直接的に摩擦係合要素の油圧サーボに供給し得る調圧能力を有し、かつ油圧制御装置の小型化を図ることが可能なソレノイドバルブを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る本発明は(例えば図1乃至図6参照)、供給される電力に応じてプランジャ(11)を駆動するソレノイド部(10)と、前記プランジャ(11)の駆動力により第1付勢手段(24)の付勢力に抗して第1スプール(21)を移動することによって、入力油圧が入力される入力ポート(Pin)と出力ポート(Pout)との開口量を調整すると共に、該出力ポート(Pout)から出力される出力油圧を、前記開口量を絞る方向にフィードバック作用させるフィードバック油室(27)を有するバルブ部(20)と、を備えたソレノイドバルブ(1)において、
前記出力油圧を前記フィードバック油室(27)に導入し得るフィードバック圧導入油路(22B,21e,39B)と、
前記第1スプール(21)内に形成された中空部分(21A)に移動自在に配置された第2スプール(31)と、
前記第1スプール(21)によって反力が受圧されると共に前記第2スプール(31)を移動方向一方側に付勢する第2付勢手段(32)と、
入力された油圧が前記第2付勢手段(32)の付勢力に対して前記第2スプール(31)に対向作用する作動油室(33)と、
前記第1スプール(21)に穿設され、前記出力ポート(Pout)と前記作動油室(33)とを連通して前記出力油圧を前記作動油室(33)に導入する導入油路(21d)と、
前記フィードバック油室(27)の油を排出し得るドレーンポート(Pex2)と、を備え、
前記第2スプール(31)が、前記導入油路(21d)を介して前記作動油室(33)に作用する前記出力油圧が所定圧(例えばP1)未満である際に、前記フィードバック油室(27)と前記ドレーンポート(Pex2)とを遮断すると共に前記フィードバック油室(27)と前記フィードバック圧導入油路(22B,39B)とを連通する位置となり、前記導入油路(21d)を介して前記作動油室(33)に作用する前記出力油圧が所定圧(例えばP1)以上である際に、前記フィードバック油室(27)と前記フィードバック圧導入油路(22B,39B)とを遮断すると共に前記フィードバック油室(27)と前記ドレーンポート(Pex2)とを連通する位置となる、
ことを特徴とするソレノイドバルブ(1)にある。
【0011】
請求項2に係る本発明は(例えば図1、図3参照)、前記フィードバック圧導入油路は、前記第1スプール(21)に被嵌する第1スリーブ部材(22)に形成された第1スリーブ内油路(22B)と、前記第1スプールに形成され、該第1スリーブ内油路(22B)に連通するフィードバック入力ポート(21e)と、からなる、
請求項1記載のソレノイドバルブ(1,1)にある。
【0012】
請求項3に係る本発明は(例えば図5、図6参照)、前記第1スプール(21)の中空部分(21A)の内周と前記第2スプール(31)の外周との間に介在された第2スリーブ部材(39)を備え、
前記フィードバック圧導入油路は、前記第2スリーブ部材(39)に形成され、前記作動油室(33)と前記フィードバック油室(27)とを連通し得る第2スリーブ内油路(39B)からなる、
請求項1記載のソレノイドバルブ(1,1)にある。
【0013】
請求項4に係る本発明は(例えば図1、図2、図5参照)、前記ソレノイド部(10)に対して非通電状態である際に、前記第1付勢手段(24)の付勢力によって前記第1スプール(21)により前記入力ポート(Pin)と前記出力ポート(Pout)とが遮断されるノーマルクローズタイプである、
請求項1ないし3のいずれか記載のソレノイドバルブ(1,1)にある。
【0014】
請求項5に係る本発明は(例えば図3、図4、図6参照)、前記ソレノイド部(10)に対して非通電状態である際に、前記第1付勢手段(24)の付勢力によって前記第1スプール(21)により前記入力ポート(Pin)と前記出力ポート(Pout)とが連通されるノーマルオープンタイプである、
請求項1ないし3のいずれか記載のソレノイドバルブ(1,1)にある。
【0015】
請求項6に係る本発明は、前記出力ポート(Pout)から出力される出力油圧を摩擦係合要素の油圧サーボに供給し得る自動変速機の油圧制御装置に用いられてなる、
請求項1ないし5のいずれか記載のソレノイドバルブ(1)にある。
【0016】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る本発明によると、フィードバック圧導入油路とフィードバック油室とを連通・遮断する位置に切り換えられる第2スプールと、該第2スプールを付勢する第2付勢手段とを第1スプール内の中空部分に配置し、該第2スプールの作動油室に出力ポートの出力油圧を導入する導入油路を第1スプールに穿設したので、出力油圧が所定圧未満の際にはフィードバック圧が作用し、かつ出力油圧が所定圧以上となった際にフィードバック圧の作用がオフされるように構成することができる。
【0018】
これにより、例えばコントロールバルブ等を設けることなく、かつソレノイド部の大型化を図ることなく、当該ソレノイドバルブによって充分に摩擦係合要素の油圧サーボの供給油圧としての出力油圧を調圧する能力を具備することができ、また、フィードバック圧をオン・オフするための切替えバルブを別途設けることを不要とすることができて、総合的に油圧制御装置の小型化を図ることができる。
【0019】
請求項2に係る本発明によると、フィードバック圧導入油路が、第1スプールに被嵌する第1スリーブ部材に形成された第1スリーブ内油路と、第1スプールに形成されたフィードバック入力ポートとからなるので、油圧制御装置にフィードバック圧をフィードバック油室まで導く油路を設けることを不要とすることができ、油圧制御装置の小型化を図ることができる。また、例えば第1スリーブ部材に2つの孔を穿設して、これら2つの孔を連通させる溝を外周部分に形成するだけの簡単な加工により第1スリーブ内油路を形成することができ、かつ第1スプールの対応する位置に孔を穿設するだけの簡単な加工によりフィードバック入力ポートを形成することができ、つまり簡単な加工によりフィードバック圧導入油路を構成することができる。
【0020】
請求項3に係る本発明によると、フィードバック圧導入油路が、第2スリーブ部材に形成され、作動油室とフィードバック油室とを連通し得る第2スリーブ内油路からなるので、油圧制御装置にフィードバック圧をフィードバック油室まで導く油路を設けることを不要とすることができ、油圧制御装置の小型化を図ることができる。また、例えば第2スリーブ部材に第2スリーブ内油路を形成しておき、該第2スリーブ部材を第1スプールの中空部分の内周側と第2スプールの外周側との間に介在するように組付けることで、フィードバック圧導入油路を構成することができ、つまり組立工程の簡易化を図ることができる。
【0021】
請求項4に係る本発明によると、ソレノイドバルブがノーマルクローズタイプからなるので、最大出力油圧を出力する際の消費電力を低減することができ、例えば摩擦係合要素の係合状態を維持する際における油圧制御のエネルギー効率を向上することができて、車輌の燃費向上を図ることができる。
【0022】
請求項5に係る本発明によると、ソレノイドバルブがノーマルオープンタイプからなるので、出力油圧を非出力にする際の消費電力を低減することができ、例えば摩擦係合要素の解放状態を維持する際における油圧制御のエネルギー効率を向上することができて、車輌の燃費向上を図ることができる。
【0023】
請求項6に係る本発明によると、本ソレノイドバルブを、出力ポートから出力される出力油圧を摩擦係合要素の油圧サーボに供給し得る自動変速機の油圧制御装置に用いて好適とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
<第1の実施の形態>
以下、本発明に係る第1の実施の形態について、図1及び図2に沿って説明する。図1は第1の実施の形態に係るノーマルクローズタイプのリニアソレノイドバルブを示す断面図、図2は第1の実施の形態に係るリニアソレノイドバルブにおける電流と出力油圧との関係を示す図である。
【0025】
第1の実施の形態に係るリニアソレノイドバルブ(ソレノイドバルブ)1は、図1に示すように、大まかにソレノイド部10とバルブ部20とからなり、そのうちのバルブ部20が、例えば自動変速機の油圧制御装置におけるバルブボディ99のバルブ孔99Aに嵌合・埋設される形で設置される。
【0026】
上記ソレノイド部10は、プランジャ11、コイルアッセンブリ17及びヨークとしての機能を有するケース(以下、「ヨーク」という)13を備えている。コイルアッセンブリ17は、ステンレススチール(SUS)等の非磁性金属製(必ずしも金属に限らず合成樹脂等の非磁性体であってもよい)のボビン12bと、マグネットワイヤ(不図示)と、電磁軟鉄等の強磁性体からなり強磁性体部を構成するエンド部15,16と、前記ボビン12bに前記マグネットワイヤが巻付けられているコイル12aに電流を供給するターミナル14とを備えており、上記エンド部15,16は、ボビン12bの軸方向両端部に配置されている。上記両エンド部15,16及びボビン12bは、焼結接合により一体に形成されている。なお、上記エンド部を構成する電磁軟鉄は、純鉄を95[%]以上、好ましくは略々99[%]以上(小数点第1位で四捨五入して99[%]以上)含むものが望ましい。また、両エンド部15,16及びボビン12bは、焼結結合により一体に形成するものを一例として説明しているが、溶接、ロー付け、接着等により一体に形成してもよい。
【0027】
コイルアッセンブリ17は、上記ターミナル14部分を除いて円筒状に形成されており、該アッセンブリ17の中心には、軸方向に同一径からなる中空部17aが形成されている。そして、該中空部17aには上記プランジャ11が摺動自在に嵌挿されている。該プランジャ11は、外周面が軸方向に同一径からなり、かつコイル12aより軸方向に長く構成されている。
【0028】
上記コイルアッセンブリ17のエンド部15には、内周側にて、プランジャ11に向けて先細形状で断面直角3角形状となる縁部15aが形成されている。また、エンド部15の縁部15aの付根部分には環状の段差部15bが形成されており、上記ボビン12bのフランジ部12cに焼結結合する係止部となっている。一方、上記エンド部16のボビン12b側には、筒状部16aが形成されており、上記ボビン12bの環状部12dに焼結結合する係止部となっている。
【0029】
即ち、ボビン12b及びエンド部15,16を加熱して焼結を行う際は、例えばステンレススチールからなるボビン12bが収縮すると共に、例えば軟鉄からなり、略収縮しないエンド部15,16と該ボビン12bとの間に粒子間の結合が進み、上記フランジ部12cが段差部15bに、上記環状部12dが筒状部16aに、それぞれ押し付けられながら接合される。これにより、ボビン12b及びエンド部15,16は、接合強度の高い状態で一体に形成される。
【0030】
なお、該縁部15aは、上述した直角3角形状が好ましいが、内径面を曲面又は異なる傾斜角の多段傾斜面としてもよく、要は、縁部15aの先端に向かって磁気飽和が現出する先細形状であればよい。
【0031】
一方、上記プランジャ11の一端面11bには、後述するプラグ19の先端19aが当接している。また、該プランジャ11におけるバルブ部20から離れた側の他端面11cには、非磁性材料のコーティング又は表面処理が施されており、プランジャ11とヨーク13とが磁気的に切り離されている。上記ヨーク13の底部分の内側中心部分には、プランジャ11側に向けて突起部13cが形成されており、この他端面11cは、部分的にヨーク13に当接するように構成されている。これにより、プランジャ11がヨーク13の底部分に吸着することを防止している。なお、プランジャ端面(他端面11c)に限らず、ヨーク13の底部に非磁性体のコーティング又は表面処理を施すようにしてもよく、要は、取付け状態において、ヨーク13とプランジャ11の磁極を切り離すことができればよい。
【0032】
また、プランジャ11には、一端面11bと他端面11cとの間を貫通する複数の貫通孔11a,11aが穿設されており、後述するダイヤフラム18により隔たれて形成される空間にある油が、該プランジャ11が駆動されて移動した際に通過して、プランジャ11の他端面11cとヨーク13との間に生じる空隙に流入するようになっている。つまり、この貫通孔11a,11aによってプランジャ11の駆動の際に体積変化による抵抗が生じ難くなるように構成されている。
【0033】
上記ヨーク13は、強磁性材料からなり、深絞り又は冷間鍛造等の塑性金属加工によりコップ状に形成されており、かつ一部分13aが上記ターミナル14用に切欠かれている。該ヨーク13の材料は、純鉄を95[%]以上、好ましくは略々99[%]以上(小数点第1位で四捨五入して99[%]以上)含む電磁軟鉄が望ましい。該ヨーク13は、前記コイルアッセンブリ17を嵌合して内部に納め、かつ先端部が後述するバルブ部20のスリーブ部(第1スリーブ部材)22の端部に固着されることによって、ソレノイド部10がバルブ部20と一体に組付けられる。また、この組付けの際、プラグ19が上記プランジャ11と後述するバルブ部20の第1スプール21との間に介在される形で配置されると共に、該プラグ19の外周部に固着されたダイヤフラム18がスリーブ部22とエンド部15との間に挟持される形で取付けられる。
【0034】
一方、バルブ部20は、全体が略スリーブ状に形成されたスリーブ部22と、該スリーブ部22の中空部分22Aに摺動自在(長手方向に対して移動自在)に嵌挿されている第1スプール21を有しており、該スリーブ部22に抜止め・固着されたエンドキャップ23と第1スプール21の先端部分に固着された座金25との間に第1スプリング(第1付勢手段)24が縮設されている。
【0035】
該スリーブ部22には、図中上方より順に、不図示の油圧サーボに供給した出力油圧をドレーン(排出)するためのドレーンポートPex1、不図示の油圧サーボに連通する出力ポートPout、スロットル開度に応じて調圧されたライン圧(シフトレンジを切換えるマニュアルバルブ等を介して供給されるレンジ圧も含む)が入力される入力ポートPin、後述のフィードバック油室27の油圧をドレーンし得るドレーンポートPex2、第1スプール21の移動を妨げないように開放されたドレーンポートPex3、が形成されている。
【0036】
また、上記入力ポートPinとドレーンポートPex2との間、即ち入力ポートPinに対してソレノイド部10の反対側には、開口部分がバルブボディ99によって閉塞されることによって室状に形成され、後述するスプール21のランド径の違いによって入力された油圧がフィードバック圧として作用するフィードバック油室27が形成されている。そして、該スリーブ部22には、外周側から出力ポートPoutに向けて穿設された油孔22aと、後述する第1スプール21のフィードバック入力ポート21eに対応する位置に外周側から穿設された油孔22cと、これら2つの油孔22a,22cを連通する溝22bと、が形成されており、該溝22bの外周側がバルブボディ99によって閉塞されることによって、詳しくは後述するフィードバック圧をフィードバック油室27に導入し得るスリーブ内油路(フィードバック圧導入油路、第1スリーブ内油路)22Bが構成されている。
【0037】
なお、バルブボディ99には、これら各ポートPex1、Pout、Pin、Pex2、Pex3に対応した位置に、油路99a、99b,99c,99d,99eが形成されて、これらの各ポートに連通されており、即ち、油路99a,99d,99eは不図示のオイルパンに向けて油を排出する油路であり、油路99cは不図示のライン圧を調圧するレギュレータバルブの調圧ポートに連通された油路であり、油路99bは摩擦係合要素(クラッチやブレーキ)の油圧サーボの作動油室に連通された油路である。
【0038】
第1スプール21は、2個の大径のランド部21a,21b及び1個の小径ランド部21cを有しており、該大径ランド部21aの上記プランジャ11側には、穴部21hが形成されて、該穴部21hの底面がプラグ19の曲面状に形成された端部19bに当接されている。即ち、第1スプール21は、上記第1スプリング24の付勢力に抗して、ソレノイド部10のプランジャ11によりプラグ19を介して押圧駆動されるように構成されている。
【0039】
上記大径ランド部21a,21bは、小径ランド部21cの外径d2よりも大きい外径d1に形成されており、このうちの大径ランド部21aは、ソレノイド部10が非通電であって第1スプール21がプランジャ11に押圧されずに第1スプリング24によって付勢された位置である際に、出力ポートPoutとドレーンポートPex1とを連通し、プランジャ11に押圧されて移動された際にそれら出力ポートPoutとドレーンポートPex1とを遮断するように形成されている。
【0040】
大径ランド部21bは、第1スプール21がプランジャ11に押圧されずに第1スプリング24によって付勢された位置である際に、入力ポートPinと出力ポートPoutとを遮断し、プランジャ11に押圧されて移動された際にそれら入力ポートPinと出力ポートPoutとの開口量を大きくするように形成されている。
【0041】
また、大径ランド部21bと小径ランド部21cとの間は、第1スプール21が移動されてもフィードバック油室27内に位置するように形成されており、それら大径ランド部21bと小径ランド部21cとの外径差(d1−d2)によって該フィードバック油室27に入力されるフィードバック圧がスプリング24の付勢方向と同方向に作用するように、即ち上記出力ポートPoutと入力ポートPinとの開口量が小さくなる方向に作用するように構成されている。
【0042】
そして、第1スプール21にあって、これら大径ランド部21bと小径ランド部21cとの内部には、中空穴(中空部分)21Aが穿設されており、該中空穴21A内に、内部バルブ部30が構成されている。即ち内部バルブ部30は、中空穴21Aに摺動自在(長手方向に対して移動自在)に嵌挿されている第2スプール31を有しており、上記第1スプール21に固着された座金25と該第2スプール31の先端部分に形成された穴部31cとの間に第2スプリング(第2付勢手段)32が縮設されている。該第2スプール31は、第1ランド部31aと第2ランド部31bと、それら両ランド部31a,31bを接続する軸部31dとが形成されており、第1ランド部31aと中空穴21Aの図中上方側となる底部分との間に作動油室33を形成している。そして、第1スプール21には、大径ランド部21bの端部に対して斜め方向から油孔21dが穿設されており、該油孔21dによって出力ポートPoutと該作動油室33とが連通され、つまり作動油室33に本リニアソレノイドバルブ1の出力油圧が導かれるように構成されている。
【0043】
一方、第1スプール21の大径ランド部21bにおける第2スプール31の第1ランド部31aに対応する位置には、該第1スプール21の移動位置に拘らず上記スリーブ内油路22Bに常時連通するフィードバック入力ポート21eが穿設されて形成されており、これらにより出力ポートPoutの出力油圧をフィードバック圧として導くフィードバック圧導入油路が構成されている。
【0044】
また、大径ランド部21bと小径ランド部21cとの間には、上記中空穴21Aに対して油孔21gが穿設されており、上記第2スプール31の第1ランド部31aが上記フィードバック入力ポート21eを開放している状態(第2スプール31が図中上方に移動された状態)で、該フィードバック入力ポート21eまで導かれたフィードバック圧が、中空穴21Aと軸部31dと間の隙間により形成された油路34及び上記油孔21gを介してフィードバック油室27まで導かれる。
【0045】
更に、小径ランド部21cにおける第2スプール31の第2ランド部31bに対応する位置には、該第1スプール21の移動位置に拘らず上記スリーブ部22のドレーンポートPex2に常時連通するドレーンポート21fが穿設されて形成されており、上記第2スプール31の第2ランド部31bが該ドレーンポート21fを開放している状態(第2スプール31が図中下方に移動された状態)で、上記油孔21g及び上記油路34を介してフィードバック油室27のフィードバック圧をドレーンする。
【0046】
ついで、上述した構成に基づきリニアソレノイドバルブ1の作用について説明する。ターミナル14からマグネットワイヤに電力が供給されると(以下、「ソレノイド部10に電力が供給される」という。)、非磁性体からなるボビン12bは磁気回路を構成しないので、強磁性体からなる、ヨーク13、一方のエンド部15、プランジャ11、他方のエンド部16に流れる磁気回路が形成される。該磁気回路に基づき、プランジャ11の一端面11bとエンド部15とが吸引部となって、プランジャ11がエンド部15に引きつけられて図中下方側に駆動される。そして、上記プランジャ11のストローク量に基づき、プラグ19を介して第1スプール21が第1スプリング24に抗して移動し、スリーブ部22に対する第1スプール21の位置が制御される。
【0047】
上記ターミナル14に対して供給された電力が0である状態、即ち非通電の状態にあっては、プランジャ11がストローク駆動されず、第1スプリング24の付勢力によって、第1スプール21、プラグ19、プランジャ11が図中上方側の位置となる。すると、入力ポートPinに供給されているライン圧は大径ランド部21bによって遮断されると共に、出力ポートPoutは大径ランド部21aの位置に基づきドレーンポートPex1に連通され、出力油圧(油圧サーボの供給油圧)はドレーンされる。
【0048】
この際は、油孔21dによって出力ポートPoutに連通する作動油室33内の油圧も0であり、更に、スリーブ内油路22B、フィードバック入力ポート21e、油路34、油孔21gを介して出力ポートPoutに連通するフィードバック油室27内の油圧も0である。
【0049】
ついで、ソレノイド部10に電力の供給が開始されると、プランジャ11が図中下方側にストローク(駆動)され、プラグ19及び第1スプール21が第1スプリング24の付勢力に抗して図中下方側に移動される。すると、大径ランド部21aによってドレーンポートPex1が閉塞されると共に、大径ランド部21bの移動によって入力ポートPinと出力ポートPoutとが開口・連通して開口量が大きくされる。これにより、入力ポートPinのライン圧が該開口量に基づき絞られた形で出力ポートPoutに供給され、該出力ポートPoutより出力油圧が不図示の油圧サーボに対して出力される。
【0050】
この際、ソレノイド部10に対して供給される電力が、図2に示す所定の電流値Ax未満である場合は、つまり出力油圧が油圧(所定圧)P1未満であって、油路21dを介して作動油室33に作用する出力油圧が第2スプリング32の付勢力よりも小さく、第2スプール31の第1スプール21に対する相対位置が図中上方側にあって、該第2スプール31の第1ランド部31aが該第1スプール21のフィードバック入力ポート21aを閉塞せずに開口状態とするので、出力ポートPoutの出力油圧は、スリーブ内油路22Bを介して第1スプール21のフィードバック入力ポート21eに導かれ、さらに油路34及び油孔21gを介してフィードバック油室27まで導かれる。
【0051】
この状態にあっては、第1スプール21に対し、プランジャ11の駆動力、第1スプリングの付勢力、フィードバック油室のフィードバック力が作用し、ソレノイド部10に対して供給する電流の上昇に応じて出力油圧が上昇すると共に、該出力油圧に比例してフィードバック圧が上昇するため、出力油圧と電力との関係は図2中のX1N/C(フィードバックのON状態)で示すような勾配が緩やかな正比例関係となる。従って、不図示の油圧サーボに供給する出力油圧を細やかにコントロールする必要がある、例えば摩擦係合要素が完全に係合状態となる係合油圧P1までの低油圧の領域にあって、摩擦係合要素のスリップ状態等の係合制御を精度良く行うことができる。
【0052】
続いて、ソレノイド部10に対して供給される電力が、図2に示す所定の電流値Ax以上となると、つまり出力油圧が油圧(所定圧)P1以上となって、油路21dを介して作動油室33に作用する出力油圧が第2スプリング32の付勢力よりも大きくなり、該第2スプール31の第1スプール21に対する相対位置が図中下方側に切換えられ、該第2スプール31の第1ランド部31aが該第1スプール21のフィードバック入力ポート21aを閉塞する。これにより、スリーブ内油路22Bを介して第1スプール21のフィードバック入力ポート21eまで導かれている出力油圧が遮断され、つまりフィードバック油室27にフィードバック圧が供給されなくなる。さらに、該第2スプール31の第2ランド部31bが第1スプール21のドレーンポート21fを開口し、フィードバック油室27が油孔21g、油路34、ドレーンポート21fを介してドレーンポートPex2に連通して、つまりフィードバック油室27内に供給されていたフィードバック圧をドレーンして0にする。
【0053】
この状態にあっては、第1スプール21に対するフィードバック力が作用しなくなり、該第1スプール21に対してプランジャ11の駆動力と第1スプリングの付勢力とだけが作用する状態となる。これにより、出力油圧と電力との関係は図2中のX2N/C(フィードバックのOFF状態)で示すような、上記X1N/Cに比して勾配が急な正比例関係となる。従って、不図示の油圧サーボに供給する出力油圧の細やかなコントロールが不要となった、例えば係合油圧P1から係合油圧P2までの高油圧の領域にあって、出力油圧の急上昇・急下降を図ることができる。なお、油圧P2は、略々ライン圧と同等の圧であって、例えば路面から駆動車輪が受ける急激なトルク変動等に対して摩擦係合要素が滑ることのない安全率を加味した圧、いわゆる完全係合圧である。
【0054】
以上のように、本リニアソレノイドバルブ1にあっては、内部バルブ部30によりフィードバック圧のオン・オフを出力油圧に基づく自動的な切換えによって行うことができるので、図2中の従来の出力油圧と電流との関係YN/Cに示すような、出力油圧を完全係合圧P2にするために必要な電流A2を、電流A1に低減することができる。即ち、ソレノイド部10のプランジャ11の最大駆動力性能を、電流A2に対応した駆動力から電流A1に対応した駆動力に低減することができるので、その分、ソレノイド部10のコイルアッセンブリ17等の大きさをコンパクト化することができる。
【0055】
これにより、例えば従来のようなライン圧の絞り量を制御するコントロールバルブ等を設けることなく、本リニアソレノイドバルブ1によって油圧サーボの係合油圧を調圧する性能を十分に持たせることができるものでありながら、ソレノイド部10の大型化を図ることなく、また、フィードバック圧をオン・オフするための切替えバルブ等を外部に別途設けることを不要とすることができて、総合的に油圧制御装置の小型化を図ることができる。
【0056】
また、フィードバック圧導入油路として、第1スプール21に被嵌するスリーブ部22に形成されたスリーブ内油路22Bと、第1スプール21に形成されたフィードバック入力ポート21eとによって構成することができるので、例えば油圧制御装置のバルブボディ99にフィードバック圧をフィードバック油室まで導く油路を設けることを不要とすることができ、油圧制御装置の小型化を図ることができる。また、例えばスリーブ部22に2つの油孔22a,22cを穿設して、これら2つの油孔22a,22cを連通させる溝22bを外周部分に形成するだけの簡単な加工により第1スリー部内油路22Bを形成することができ、かつ第1スプール21の対応する位置に孔を穿設するだけの簡単な加工によりフィードバック入力ポート21eを形成することができ、つまり簡単な加工によりフィードバック圧を導入するための油路を構成することができる。
【0057】
さらに、本リニアソレノイドバルブ1は、ノーマルクローズタイプからなるので、最大出力油圧P2を出力する際の消費電力をA2からA1に低減することができ、例えば摩擦係合要素の係合状態を維持する際における油圧制御のためのエネルギー効率を向上することができて、車輌の燃費向上を図ることができる。
【0058】
<第2の実施の形態>
ついで、本発明の第2の実施の形態に係るリニアソレノイドバルブ1について図3及び図4に沿って説明する。図3は第2の実施の形態に係るノーマルオープンタイプのリニアソレノイドバルブを示す断面図、図4は第2の実施の形態に係るリニアソレノイドバルブにおける電流と出力油圧との関係を示す図である。
【0059】
なお、本第2の実施の形態に係るリニアソレノイドバルブ1は、上記第1の実施の形態に係るリニアソレノイドバルブ1を一部変更したものであるので、主に変更部分を説明し、同機能の部分には同符号して、その説明を省略する。また、図3においては、本リニアソレノイドバルブ1だけを示し、バルブボディ99の図示を省略しているが、図1と同様にバルブボディ99に設置されて用いられるものである。
【0060】
本第2の実施の形態に係るリニアソレノイドバルブ1は、上記第1の実施の形態に係るノーマルクローズタイプのリニアソレノイドバルブ1に比して、ノーマルオープンタイプで構成したものであり、エンドキャップ23、第1スプリング24、ドレーンポートPex3の位置だけをそのままに、第1スプール21の移動方向(図中の上下方向)に対して位置関係を逆にしたものである。即ち、第1スプール21の小径ランド部21cに固着された座金25がプラグ19の端部19bに当接し、反対側の大径ランド部21aの穴部21hに第1スプリング24に当接するように配置され、かつ内部バルブ部30も逆転されている。そして、大径ランド部21bは、図中上方位置にある際に、入力ポートPinと出力ポートPoutとを最大に開口して連通させるように形成されており、かつ第1スプール21が図中下方に移動(ストローク)されていくと、入力ポートPinと出力ポートPoutとの開口量を徐々に小さくし、つまり閉じていくように構成されている。
【0061】
このように構成されたリニアソレノイドバルブ1は、上記ターミナル14に対して供給された電力が0である状態、即ち非通電の状態にあっては、プランジャ11がストローク駆動されず、第1スプリング24の付勢力によって、第1スプール21、プラグ19、プランジャ11が図中上方側の位置となる。すると、入力ポートPinに供給されているライン圧が、略々そのまま出力ポートPoutに連通され、出力油圧(油圧サーボの供給油圧)は、図4に示すように油圧P2となる。
【0062】
この際は、油路21dを介して作動油室33に作用する出力油圧が第2スプリング32の付勢力よりも大きく、該第2スプール31の位置が図中上方側となり、該第2スプール31の第1ランド部31aが該第1スプール21のフィードバック入力ポート21aを閉塞する。これにより、スリーブ内油路22Bを介して第1スプール21のフィードバック入力ポート21eまで導かれている出力油圧が遮断され、つまりフィードバック油室27にフィードバック圧が供給されなくなる。さらに、該第2スプール31の第2ランド部31bが第1スプール21のドレーンポート21fを開口し、フィードバック油室27が油孔21g、油路34、ドレーンポート21fを介してドレーンポートPex2に連通して、つまりフィードバック油室27内に供給されていたフィードバック圧をドレーンして0にする。
【0063】
ついで、ソレノイド部10に電力の供給が開始されると、プランジャ11によって第1スプール21が第1スプリング24の付勢力に抗して図中下方側に移動される。すると、大径ランド部21bの移動によって入力ポートPinと出力ポートPoutとの開口量が小さくされていき、入力ポートPinのライン圧が該開口量に基づき絞られた形となって、出力ポートPoutより出力される出力油圧が小さくされる。
【0064】
この際、供給される電力が図4に示す所定の電流値Ax未満である場合は、上記内部バルブ部30によって第1スプール21に対するフィードバック圧が作用せず、該第1スプール21に対しては、プランジャ11の駆動力と第1スプリングの付勢力とだけが作用する状態である。これにより、出力油圧と電力との関係は図4中のX2N/O(フィードバックのOFF状態)で示すような勾配が急な比例関係となる。従って、不図示の油圧サーボに供給する出力油圧の細やかなコントロールが不要である、例えば係合油圧P2から係合油圧P1までの高油圧の領域にあって、出力油圧の急上昇・急下降を図ることができる。
【0065】
続いて、ソレノイド部10に対して供給される電力が、図4に示す所定の電流値Ax以上となると、出力油圧が小さくなり、第2スプリング32の付勢力が油路21dを介して作動油室33に作用する出力油圧よりも大きくなって、該第2スプール31の第1スプール21に対する相対位置が図中下方側となり、該第2スプール31の第1ランド部31aが該第1スプール21のフィードバック入力ポート21aを開口すると共に、第2ランド部31bがドレーンポート21fを閉塞する。これにより、出力ポートPoutの出力油圧は、スリーブ内油路22Bを介して第1スプール21のフィードバック入力ポート21eに導かれ、さらに油路34及び油孔21gを介してフィードバック油室27まで導かれる。
【0066】
この状態にあっては、第1スプール21に対し、プランジャ11の駆動力、第1スプリングの付勢力、フィードバック油室のフィードバック力が作用し、ソレノイド部10に対して供給する電流の上昇に応じて出力油圧が下降すると共に、該出力油圧に比例したフィードバック圧が作用するため、出力油圧と電力との関係は図4中のX1N/O(フィードバックのON状態)で示すような、上記X1N/Oに比して勾配が緩やかな正比例関係となる。従って、不図示の油圧サーボに供給する出力油圧を細やかにコントロールする必要がある、例えば摩擦係合要素が完全に係合状態となる係合油圧P1未満の低油圧の領域にあって、摩擦係合要素のスリップ状態等の係合制御を精度良く行うことができる。
【0067】
以上のように、本リニアソレノイドバルブ1にあっては、内部バルブ部30によりフィードバック圧のオン・オフを出力油圧に基づく自動的な切換えによって行うことができるので、図4中の従来の出力油圧と電流との関係YN/Oに示すような、出力油圧を0にするために必要な電流A2を、電流A1に低減することができる。即ち、ソレノイド部10のプランジャ11の最大駆動力性能を、電流A2に対応した駆動力から電流A1に対応した駆動力に低減することができるので、その分、ソレノイド部10のコイルアッセンブリ17等の大きさをコンパクト化することができる。
【0068】
これにより、例えば従来のようなライン圧の絞り量を制御するコントロールバルブ等を設けることなく、本リニアソレノイドバルブ1によって油圧サーボの係合油圧を調圧する性能を十分に持たせることができるものでありながら、ソレノイド部10の大型化を図ることなく、また、フィードバック圧をオン・オフするための切替えバルブ等を外部に別途設けることを不要とすることができて、総合的に油圧制御装置の小型化を図ることができる。
【0069】
また、本リニアソレノイドバルブ1は、ノーマルオープンタイプからなるので、出力油圧を0(非出力)にする際の消費電力をA2からA1に低減することができ、例えば摩擦係合要素の解放状態を維持する際における油圧制御のエネルギー効率を向上することができて、車輌の燃費向上を図ることができる。
【0070】
<第3の実施の形態>
ついで、本発明の第3の実施の形態に係るリニアソレノイドバルブ1について図5に沿って説明する。図5は第3の実施の形態に係るノーマルクローズタイプのリニアソレノイドバルブを示す断面図である。
【0071】
なお、本第3の実施の形態に係るリニアソレノイドバルブ1は、上記第1の実施の形態に係るリニアソレノイドバルブ1を一部変更したものであるので、主に変更部分を説明し、同機能の部分には同符号して、その説明を省略する。また、図5においては、本リニアソレノイドバルブ1だけを示し、バルブボディ99の図示を省略しているが、図1と同様にバルブボディ99に設置されて用いられるものである。
【0072】
本第3の実施の形態に係るリニアソレノイドバルブ1は、上記第1の実施の形態に係るリニアソレノイドバルブ1に比して、内部バルブ部30の構成を変更し、フィードバック圧導入油路をスリーブ内油路22B(図1参照)から内部スリーブ内油路(フィードバック圧導入油路、第2スリーブ内油路)39Bに変更したものである。即ち、内部バルブ部30は、中空穴21Aの内周部分に嵌合・固定された内部スリーブ部材(第2スリーブ部材)39を有しており、該内部スリーブ部材39の内周面39Aに第2スプール31が摺動自在に嵌挿されている。該内部スリーブ部材39は、それぞれが長手方向に対して垂直方向に穿設された油孔である、フィードバック入力ポート39bと、油孔21gに連通する油孔39cと、ドレーンポート39dとを有しており、さらに、該フィードバック入力ポート39bと作動油室33とを連通する油路39aが形成されている。つまり、油路39aとフィードバック入力ポート39bとにより、第2スプール31が図中上方に位置する状態で、作動油室33に導かれた出力油圧をフィードバック油室27まで導くフィードバック圧導入油路を構成している。
【0073】
これにより、出力油圧が油圧P1未満である状態にあっては、第2スプール31の第1ランド部31aがフィードバック入力ポート39bを開口し、作動油室33に導かれた出力油圧が、油路39a、フィードバック入力ポート39b、油路34、油孔39c、油孔21gを介してフィードバック油室27まで導かれる。また、出力油圧が油圧P1以上となった状態にあっては、第2スプール31の第1ランド部31aがフィードバック入力ポート39bを閉塞すると共に、第2ランド部31bがドレーンポート39dを開口し、フィードバック油室27の油圧が、油孔21g、油孔39c、油路34、ドレーンポート39d,21f,Pex2を介してドレーンされる。
【0074】
このようにフィードバック圧導入油路が、内部スリーブ部材39に形成され、作動油室33とフィードバック油室22とを連通し得る内部スリーブ内油路39Bからなるので、油圧制御装置のバルブボディ99にフィードバック圧をフィードバック油室27まで導く油路を設けることを不要とすることができ、油圧制御装置の小型化を図ることができる。また、例えば内部スリーブ部材39に加工して内部スリーブ内油路39Bを形成しておき、該内部スリーブ部材39を第1スプール21の中空穴21Aの内周側と第2スプール31の外周側との間に介在するように組付けるだけで、フィードバック圧導入油路を構成することができ、つまり組立工程の簡易化を図ることができる。
【0075】
なお、これ以外の構成、作用、及び効果は、第1の実施の形態と同様であるので、その説明は省略する。
【0076】
<第4の実施の形態>
ついで、本発明の第4の実施の形態に係るリニアソレノイドバルブ1について図6に沿って説明する。図6は第4の実施の形態に係るノーマルオープンタイプのリニアソレノイドバルブを示す断面図である。
【0077】
なお、本第4の実施の形態に係るリニアソレノイドバルブ1は、上記第2の実施の形態に係るリニアソレノイドバルブ1を一部変更したものであるので、主に変更部分を説明し、同機能の部分には同符号して、その説明を省略する。また、図6においては、本リニアソレノイドバルブ1だけを示し、バルブボディ99の図示を省略しているが、図1と同様にバルブボディ99に設置されて用いられるものである。
【0078】
本第4の実施の形態に係るリニアソレノイドバルブ1は、上記第2の実施の形態に係るリニアソレノイドバルブ1における内部バルブ部30(図3参照)を、上記第3の実施の形態に係るリニアソレノイドバルブ1の内部バルブ部30(図5参照)と同様に構成したものである。言い換えれば、本第4の実施の形態に係るリニアソレノイドバルブ1は、上記第3の実施の形態に係るノーマルクローズタイプのリニアソレノイドバルブ1に比して、ノーマルオープンタイプで構成したものであり、エンドキャップ23、第1スプリング24、ドレーンポートPex3の位置だけをそのままに、第1スプール21の移動方向(図中の上下方向)に対して位置関係を逆にしたものである。
【0079】
これにより、出力油圧が油圧P1未満である状態にあっては、第2スプール31の第1ランド部31aがフィードバック入力ポート39bを閉塞すると共に、第2ランド部31bがドレーンポート39dを開口し、フィードバック油室27の油圧が、油孔21g、油孔39c、油路34、ドレーンポート39d,21f,Pex2を介してドレーンされる。また、出力油圧が油圧P1以上となった状態にあっては、第2スプール31の第1ランド部31aがフィードバック入力ポート39bを開口し、作動油室33に導かれた出力油圧が、油路39a、フィードバック入力ポート39b、油路34、油孔39c、油孔21gを介してフィードバック油室27まで導かれる。
【0080】
なお、これ以外の構成、作用、及び効果は、第2の実施の形態と同様であるので、その説明は省略する。
【0081】
なお、以上説明した実施の形態においては、ソレノイドバルブの一例として、ソレノイド部10がプランジャ11のリニア駆動を行うリニアソレノイドバルブについて説明したが、これに限らず、ソレノイドバルブであれば、どのようなものであってもよく、特にソレノイド部10の構成は、本実施例の構成に限るものではない。
【0082】
また、以上の実施の形態において、ソレノイドバルブを自動変速機の油圧制御装置に用いて摩擦係合要素の油圧サーボの係合油圧を調圧するものとして説明したが、勿論、最大出力油圧に対するコンパクト化が求められる装置に用いられるソレノイドバルブであれば、どのような装置に本ソレノイドバルブを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】第1の実施の形態に係るノーマルクローズタイプのリニアソレノイドバルブを示す断面図。
【図2】第1の実施の形態に係るリニアソレノイドバルブにおける電流と出力油圧との関係を示す図。
【図3】第2の実施の形態に係るノーマルオープンタイプのリニアソレノイドバルブを示す断面図。
【図4】第2の実施の形態に係るリニアソレノイドバルブにおける電流と出力油圧との関係を示す図。
【図5】第3の実施の形態に係るノーマルクローズタイプのリニアソレノイドバルブを示す断面図。
【図6】第4の実施の形態に係るノーマルオープンタイプのリニアソレノイドバルブを示す断面図。
【符号の説明】
【0084】
1 ソレノイドバルブ(リニアソレノイドバルブ)
10 ソレノイド部
11 プランジャ
20 バルブ部
21 第1スプール
21A 第1スプールの中空部分(中空穴)
21d 導入油路
21e フィードバック圧導入油路、フィードバック入力ポート
22 第1スリーブ部材(スリーブ部)
22B フィードバック圧導入油路、第1スリーブ内油路(スリーブ内油路)
24 第1付勢手段(第1スプリング)
27 フィードバック油室
31 第2スプール
32 第2付勢手段(第2スプリング)
33 作動油室
39 第2スリーブ部材(内部スリーブ部材)
39B フィードバック圧導入油路、第2スリーブ内油路(内部スリーブ内油路)
Pin 入力ポート
Pout 出力ポート
Pex2 ドレーンポート
P1 所定圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される電力に応じてプランジャを駆動するソレノイド部と、前記プランジャの駆動力により第1付勢手段の付勢力に抗して第1スプールを移動することによって、入力油圧が入力される入力ポートと出力ポートとの開口量を調整すると共に、該出力ポートから出力される出力油圧を、前記開口量を絞る方向にフィードバック作用させるフィードバック油室を有するバルブ部と、を備えたソレノイドバルブにおいて、
前記出力油圧を前記フィードバック油室に導入し得るフィードバック圧導入油路と、
前記第1スプール内に形成された中空部分に移動自在に配置された第2スプールと、
前記第1スプールによって反力が受圧されると共に前記第2スプールを移動方向一方側に付勢する第2付勢手段と、
入力された油圧が前記第2付勢手段の付勢力に対して前記第2スプールに対向作用する作動油室と、
前記第1スプールに穿設され、前記出力ポートと前記作動油室とを連通して前記出力油圧を前記作動油室に導入する導入油路と、
前記フィードバック油室の油を排出し得るドレーンポートと、を備え、
前記第2スプールが、前記導入油路を介して前記作動油室に作用する前記出力油圧が所定圧未満である際に、前記フィードバック油室と前記ドレーンポートとを遮断すると共に前記フィードバック油室と前記フィードバック圧導入油路とを連通する位置となり、前記導入油路を介して前記作動油室に作用する前記出力油圧が所定圧以上である際に、前記フィードバック油室と前記フィードバック圧導入油路とを遮断すると共に前記フィードバック油室と前記ドレーンポートとを連通する位置となる、
ことを特徴とするソレノイドバルブ。
【請求項2】
前記フィードバック圧導入油路は、前記第1スプールに被嵌する第1スリーブ部材に形成された第1スリーブ内油路と、前記第1スプールに形成され、該第1スリーブ内油路に連通するフィードバック入力ポートと、からなる、
請求項1記載のソレノイドバルブ。
【請求項3】
前記第1スプールの中空部分の内周と前記第2スプールの外周との間に介在された第2スリーブ部材を備え、
前記フィードバック圧導入油路は、前記第2スリーブ部材に形成され、前記作動油室と前記フィードバック油室とを連通し得る第2スリーブ内油路からなる、
請求項1記載のソレノイドバルブ。
【請求項4】
前記ソレノイド部に対して非通電状態である際に、前記第1付勢手段の付勢力によって前記第1スプールにより前記入力ポートと前記出力ポートとが遮断されるノーマルクローズタイプである、
請求項1ないし3のいずれか記載のソレノイドバルブ。
【請求項5】
前記ソレノイド部に対して非通電状態である際に、前記第1付勢手段の付勢力によって前記第1スプールにより前記入力ポートと前記出力ポートとが連通されるノーマルオープンタイプである、
請求項1ないし3のいずれか記載のソレノイドバルブ。
【請求項6】
前記出力ポートから出力される出力油圧を摩擦係合要素の油圧サーボに供給し得る自動変速機の油圧制御装置に用いられてなる、
請求項1ないし5のいずれか記載のソレノイドバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−8158(P2009−8158A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169681(P2007−169681)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】