説明

ソレノイド式施錠・解錠機構

【課題】構造が簡単で故障しにくく信頼性が高く、しかも低コストであるという利点を損なうことなく、故意にロック部材が解錠方向に移動させられることを確実に阻止可能なソレノイド式施錠・解錠機構を提案すること。
【解決手段】ソレノイド式施錠・解錠機構1は、ソレノイド3と、ロック部材4と、ソレノイド3の可動鉄心5とロック部材4の間を連結している連結部材6と、解錠領域に向かうロック部材4の移動軌跡上の係合位置から退避位置に移動可能なストッパ部材7とを有し、連結部材6およびロック部材4は、ロック部材4の移動方向に沿って一定量だけ相対移動可能な状態で連結され、ソレノイド3を励磁して、可動鉄心5が引き込み位置に引き込まれると、連結部材6によりストッパ部材7が移動軌跡上の係合位置から退避位置に押し出され、ストッパ部材7が係合位置から外れた後に、ロック部材4が当該係合位置を通過して施錠領域から外れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソレノイドにより駆動されるロック部材の出没によって施錠および解錠が行われるソレノイド式施錠・解錠機構に関する。さらに詳しくは、施錠状態にあるロック部材が針金などを用いて故意に押されて不正に解錠されてしまうことが無く、ソレノイドを励磁した場合にのみ解錠状態に切り替わるソレノイド式施錠・解錠機構に関する。
【背景技術】
【0002】
図5および図6には、従来におけるソレノイド式施錠・解錠機構の基本構成を示してある。この図に示すように、ソレノイド式施錠・解錠機構100は、ソレノイド101と、このソレノイド101の可動鉄心102の先端に連結したロック部材103とを有している。ソレノイド101の可動鉄心102は、消磁状態においては、戻しバネ104によって図に示す突出位置102Aに押し出されている。ロック部材103は、ソレノイド101等が取り付けられているフレーム105に取り付けた左右のガイド部材106、107によって可動鉄心102の移動方向に沿ってスライド可能な状態で保持されている。また、ロック部材103の施錠位置決め部103aが一方のガイド部材107の端面に当接することにより、ロック部材103の施錠位置が規定されている。
【0003】
可動鉄心102が突出位置102Aにある状態では、ロック部材103の先端側の側面103bが、被ロック部材108に形成されている係合段面108aに当接している。被ロック部材108は不図示のばね部材などによって、係合段面108aがロック部材103の側面103bに押し付けられる方向(矢印で示す方向)に付勢されている。
【0004】
この施錠状態においてソレノイド101を励磁すると、図6に示すように、可動鉄心102が突出位置102Aから引き込み位置102Bに引き込まれる。この結果、ロック部材103も解錠方向(図における上方)に引かれて、その側面103bが被ロック部材108の係合段面108aから外れて、解錠状態に切り替わる。解錠状態に切り替わると、被ロック部材108は不図示のばね力によって矢印に示す方向、即ち開き方向に飛び出すことになる。
【0005】
かかるソレノイド式施錠・解錠機構100は、部品点数が比較的少なく、構造がシンプルであるので、壊れにくく安価である。また、ソレノイドの吸引力のロスが少なく効率的な構造である。
【0006】
このようなソレノイド式施錠・解錠機構を応用した施解錠装置及び収納装置が特許文献1に開示されている。ここに開示の装置はソレノイドおよびシリンダ錠を備え、これらのいずれを操作しても施錠状態にある施錠機構を解錠できるように構成されている。これにより、停電時等のようにソレノイドを駆動できない場合でも解錠機能が担保される。
【特許文献1】特開2006−328825号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ソレノイド式施錠・解錠機構には次のような問題点がある。ロック部材103は、戻しバネ104のばね力と、可動鉄心102およびロック部材103の自重とによって、施錠状態に保持されている。したがって、ロック部材103は機械的に施錠状態に完全に固定されているものではない。このため、図5(a)において想像線で示すように、薄板、針金などの部材110を用いて、故意にロック部材103を解錠方向(図の上方)に押し込むような行為がなされると、解錠してしまう危険性がある。
【0008】
そこで、例えば、図7に示すように、ロック部材103を施錠状態に機械的に完全にロックできるように構成することが考えられる。この図に示すソレノイド式施錠・解錠機構120では、上述した図5、6に示す機構に加えて、ロックソレノイド121によって、施錠状態にあるロック部材103が解錠方向に移動することをストッパ122によって機械的に阻止できるようになっている。施錠状態にあるロック部材103を解錠する際には、まず、ロックソレノイド121を励磁してストッパ122を退避させ、しかる後に、ソレノイド101を励磁してロック部材103を引き上げて解錠状態に切り替える。
【0009】
この機構は、故意にロック部材103を解錠方向に移動させるような不正行為を阻止するために極めて有効である。しかしながら、ソレノイドを追加する必要があり、ソレノイドの追加に伴う駆動系、制御系の複雑化を招き、また、大幅なコストアップを招いてしまう。さらに、設置スペースの増加を招き、図5、6に示す機構の設置スペースには狭すぎて設置できないという問題点も生ずる。
【0010】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、構造が簡単で故障しにくく信頼性が高く、しかも低コストであるという従来のソレノイド式施錠・解錠機構の利点を損なうことなく、故意にロック部材が解錠方向に移動させられることを確実に阻止可能なソレノイド式施錠・解錠機構を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明のソレノイド式施錠・解錠機構は、
施錠領域および解錠領域の間を移動可能なロック部材と、
このロック部材を移動させるためのソレノイドと、
このソレノイドの可動鉄心と前記ロック部材の間を連結している連結部材と、
前記ロック部材が前記施錠領域から外れないように当該ロック部材に係合可能な係合位置、および、当該係合位置から外れた退避位置に移動可能なストッパ部材とを有し、
前記連結部材は、突出位置にある前記可動鉄心が引き込み位置に向けて移動する際には当該可動鉄心と共に解錠方向に移動するように当該可動鉄心に連結されており、
前記ロック部材は、前記連結部材が解錠方向に所定量だけ移動した後に当該連結部材に連結して同一方向に移動するように、当該連結部材に連結されており、
前記ストッパ部材は、解錠方向に移動する前記連結部材によって前記係合位置から前記退避位置に押し出されるようになっており、
解錠方向に移動する前記ロック部材は、前記ストッパ部材が前記係合位置から外れた後に当該係合位置を通過するようになっていることを特徴としている。
【0012】
本発明のソレノイド式施錠・解錠機構では、ロック部材が連結部材を介してソレノイドの可動鉄心に連結されており、連結部材はロック部材に対して解錠方向に一定量だけ相対移動可能な状態で連結されている。施錠状態においてソレノイドを励磁して可動鉄心を突出位置から引き込み位置に向けて引き込むと、まず、可動鉄心によって連結部材が移動して、ロック部材の移動軌跡上に位置しているストッパ部材を退避位置に押し出す。連結部材が一定量だけ解錠方向に移動した後にロック部材が連結部材と共に解錠方向に移動を開始する。ロック部材がストッパ部材による係合位置を通過する時点では、すでに、連結部材によってストッパ部材が退避位置に移動しているので、ロック部材はストッパ部材によって移動を阻止されることなく、施錠領域を外れて解錠領域内の位置まで移動することができ、これにより解錠状態に切り替わる。
【0013】
しかるに、施錠状態において、不正行為によってロック部材を解錠方向に移動させるようとした場合には、ストッパ部材がロック部材の移動軌跡上に位置しているので、ロック部材が施錠領域から外れる前にストッパ部材に当たり、それ以上はロック部材を解錠方向に移動させることができない。よって、針金などによってロック部材を移動させて施錠を解除する不正行為を確実に阻止できる。
【0014】
ここで、ばね部材を配置して、ストッパ部材を係合位置から外れないように保持しておくことが望ましい。
【0015】
また、ストッパ部材としては、係合位置および退避位置の間を揺動可能な揺動部材を用いることができる。
【0016】
この場合、前記ストッパ部材の揺動中心を規定する揺動中心線に沿った方向から見た場合に、当該ストッパの揺動中心、前記ソレノイドの可動鉄心の中心軸線、前記ロック部材の中心軸線、並びに、前記ストッパ部材および前記ロック部材の係合部位が、同一直線上に位置するように、各部材を配置することが望ましい。この配置を採用すると、ロック部材からストッパ部材に作用する力が、ロック部材およびストッパ部材の係合部位と、ストッパ部材の揺動中心とを通る直線に沿って作用する。よって、揺動部材であるストッパ部材を揺動方向に移動させようとする分力が発生しないので、ストッパ部材がロック部材から外れることがなく、ロック部材を確実にロックできる。
【0017】
さらに、連結部材によってストッパ部材を係合位置から退避位置に移動させるための構造としては、ストッパ部材にソレノイドの可動鉄心の引き込み動作時に連結部材が衝突する衝突面を形成し、この衝突面を、連結部材の移動方向に対して斜めに交差するテーパ面とし、このテーパ面に衝突する連結部材の側の部位を円弧面としておくことが望ましい。このようにすれば、連結部材の移動によりストッパ部材を速やかに退避位置に押し出すことができ、連結部材の移動に伴う負荷も小さくて済む。
【0018】
また、ロック部材および連結部材を相対移動可能に連結するためには、それらの一方に、これらの移動方向に所定の開口幅を備えた連結穴を形成し、他方に、当該連結穴に移動可能な状態で挿入された連結片を形成しておけばよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のソレノイド式施錠・解錠機構では、ロック部材が施錠領域から外れることを機械的な係合によって阻止するためのストッパ部材を配置し、ソレノイドの可動鉄心とロック部材を連結部材を介して連結し、連結部材が解錠方向に所定量だけ移動した後にロック部材に連結するようにし、ソレノイドを励磁してロック部材を施錠領域から解錠領域に移動させる際には、ロック部材がストッパ部材の係合位置に至る前に、解錠方向に移動する連結部材を利用してストッパ部材を係合位置から退避位置に移動させるようにしている。
【0020】
この構成によれば、不正行為によってロック部材を施錠状態から解錠状態に移動させることをストッパ部材によって確実に阻止できる。また、ソノレイドを励磁してロック部材を解錠状態に切り替える際には、ソレノイドによって移動する連結部材によってストッパ部材が退避位置に移動するので、ストッパ部材を移動させるためのソノレイドなどの駆動源を別途配置する必要もない。
【0021】
したがって、本発明によれば、構造が簡単で故障しにくく信頼性が高く、しかも低コストであるという利点を損なうことなく、故意にロック部材が解錠方向に移動させられることを確実に阻止可能なソレノイド式施錠・解錠機構を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したソノレノイド式施錠・解錠機構の実施の形態を説明する。
【0023】
(構成の説明)
図1(a)および(b)は、それぞれ、本実施の形態に係るソレノイド式施錠・解錠機構を示す概略正面図および概略側面図である。ソレノイド式施錠・解錠機構1は、例えば、引き出し部材2を施錠するためのものであり、引き出し部材2は矢印Aで示すように常に引き出し方向に向けてバネ力によって付勢されている。
【0024】
ソレノイド式施錠・解錠機構1は、ソレノイド3と、ロック部材4と、ソレノイド3の可動鉄心5およびロック部材4を連結している連結部材6と、ロック部材4が施錠領域から外れて解錠領域の側に移動することを阻止しているストッパ部材7とを有している。ソレノイド3は、消磁状態においては、戻しバネ8によって、可動鉄心5が突出位置5Aに押し出された状態に保持されている。ソレノイド3を励磁すると、可動鉄心5が引き込み位置5B(図4参照)まで引き込まれるようになっている。
【0025】
ソレノイド3の可動鉄心5の先端部に連結固定されている連結部材6は、例えば、コの字状に折り曲げた一定幅の板金製の部材であり、可動鉄心5の中心軸線5aと平行に延びている本体板部分6aと、この本体板部分6aのソレノイド側の端から直角に折れ曲がっている端板部分6bと、本体板部分6aの他方の端から同一方向に直角に折れ曲がっている端板部分6cとを備えており、端板部分6bの中央部分に可動鉄心5の先端部が連結固定されている。
【0026】
ロック部材4は、例えば一定厚さの板金製の部材から形成されており、その中心軸線4aが可動鉄心5の中心軸線5aと同一直線上に位置するように配置されている。また、連結部材6の本体板部分6aと平行となるように配置されている。このロック部材4の中央部分には角穴4bが形成されており、ここに、連結部材6の端板部分6cが直交状態に差し込まれている。角穴4bは端板部分6cよりも広幅であり、端板部分6cは、中心軸線4aの方向に一定量ΔLだけ相対移動可能である。換言すると、端板部分6cが角穴4bにおける移動方向の両側の端面4c、4dに当たるまでは、連結部材6が単独で中心軸線5aに沿った施錠方向および解錠方向に移動可能であり、当たった後は、ロック部材4と一体となって移動する。
【0027】
また、ロック部材4の先端部の側面4eは、引き出し部材2の側に形成した係合段面2aに係合可能である。ソレノイド3が消磁状態においては、突出位置5Aにある可動鉄心5に連結されている連結部材6によってロック部材4は、側面4eが係合段面2aに係合した施錠状態に保持されている。これら側面4eと係合段面2aが係合状態に維持されるロック部材4の移動範囲が当該ロック部材の施錠領域である。この施錠領域からロック部材4が外れた後の領域、換言すると、側面4eが係合段面2aから外れた後のロック部材4の移動範囲が当該ロック部材4の解錠領域である。
【0028】
ロック部材4は、左右のガイド部材9a、9bによって、施錠領域および解錠領域の間を中心軸線5aに沿った方向、すなわち施錠方向および解錠方向にガイドされるようになっている。また、ロック部材4に形成した係合突起部4fが一方のガイド部材9bの端面に当たることにより、ロック部材4の施錠領域での最大移動位置が規制されるようになっている。
【0029】
次に、ストッパ部材7は、一方の端部7aがフランジ付き支点用ネジ11によってソレノイド3の側面に揺動可能な状態で取り付けられた揺動部材である。ネジ11によって規定されているストッパ部材7の揺動中心線11aは、側方から見た場合に(図1(b)参照)、可動鉄心5の中心軸線5a上に位置している。ストッパ部材7の本体部分は中心軸線5aと平行に、可動鉄心5の側方位置を延びており、その先端側の端部7bは、揺動中心線11aに沿った方向から見た場合に(図1(b)に示すように側方から見た場合に)、中心軸線5aに交差する位置まで直角に折れ曲がって突出している。この端部7bの端面はロック部材4の中心軸線4aに直交するストッパ面7cとなっており、施錠領域に位置しているロック部材4が解錠方向に移動する際の移動軌跡上に位置し、当該ロック部材4の後端面4gに当接可能となっている。
【0030】
ストッパ部材7は、その側端面7dが、ソレノイド3などが搭載されているフレーム10に形成した位置決め用突起12に当接することにより、中心軸線4aに平行な姿勢に保持されている。この姿勢は、ストッパ部材7とフレーム10の間に架け渡した引張りコイルバネ13によって維持されている。
【0031】
一方、ストッパ部材7の先端側の端部7bの側部からは直角に折れ曲がった状態で、衝突板部分7eが形成されている。この衝突板部分7eには、中心軸線4aおよびソレノイド3に向かう方向に傾斜して延びている一定幅のテーパ面7gが形成されている。このテーパ面7gは、連結部材6の端板部分6bと本体板部分6aの円弧面状の出隅部分6dの移動軌跡に交差するようになっている。
【0032】
(動作の説明)
図2乃至図4も参照してソレノイド式施錠・解錠機構1の動作を説明する。まず、図2は不正行為によりロック部材4が解錠方向に押し出された場合の動作を示す説明図である。図1に示す施錠状態にあるソレノイド式施錠・解錠機構1において、図2に示すように、ロック部材4が針金などの部材110によって不正に解錠方向に押されたとする。ロック部材4は連結部材6に対して施錠・解錠方向に相対移動可能な状態で連結されている。したがって、ロック部材4が解錠方向に押されると、まず、ロック部材4のみが解錠方向に押し上げられる。
【0033】
ロック部材4の解錠方向の移動軌跡上にはストッパ部材7のストッパ面7cが位置している。ロック部材4の側面4eが被ロック部材である引き出し部材2の段面2aから外れる前の時点(施錠領域内に位置している時点)において、ロック部材4の後端面4gが、ストッパ面7cに当たる。したがって、これ以上、ロック部材4を解錠側に移動させることが不可能であり、ロック部材4は施錠領域から外れることがない。よって、このような不正行為による解錠動作をストッパ部材7によって確実に阻止できる。
【0034】
本例では、図2から分かるように、ストッパ部材7の揺動中心を規定する揺動中心線11aに沿った方向から見た場合に、当該ストッパ部材7の揺動中心、ソレノイド3の可動鉄心5の中心軸線5a、ロック部材4の中心軸線4a、並びに、ストッパ部材7およびロック部材4の係合部位Aが、同一直線上に位置するように、各部材が配置されている。この配置では、ロック部材4からストッパ部材7に作用する力の方向が、ロック部材4およびストッパ部材7の係合部位Aと、ストッパ部材7の揺動中心とを通る直線に一致する。よって、揺動部材であるストッパ部材7を揺動方向に移動させようとする分力が発生しないので、ストッパ部材7がロック部材4から外れることがなく、ロック部材4を確実にロックできる。
【0035】
なお、針金などの部材110によってロック部材4を解錠方向に移動させるような行為が行われ、ロック部材4がストッパ部材7に当たった後は、一般にロック部材4はストッパ部材7に当たった状態に保持される。すなわち、被ロック部材である引き出し部材2の側にはバネ付勢力が作用しているので、ロック部材4の側面4eは引き出し部材2の係合段面2aに押し付けられている。これらの間の摩擦係合力によって、ロック部材4はストッパ部材7に当たった位置に保持される。この状態においては、針金などの部材110による押上げ力が作用していないので、ロック部材4とストッパ部材7の係合部位Aに生ずる摩擦力は極僅かである。よって、ソレノイド3を励磁してロック部材4を解錠方向に移動させる際に、ストッパ部材7を横方に押し出す動作に支障を来たすことはない。
【0036】
次に、図3(a)および(b)は、ロック部材4を解錠状態に切り替えるためにソレノイド3を励磁して可動鉄心5の引き込み動作を行った場合の状態変化を示す動作説明図であり、図4(a)および(b)はロック部材4が解錠状態に切り替わった後の状態を示す説明図である。
【0037】
図1に示す施錠状態にあるソレノイド式施錠・解錠機構1において、ソレノイド3を励磁すると、その可動鉄心5が突出位置5Aから引き込まれる。可動鉄心5を引き込むと、そこに連結されている連結部材6が可動鉄心5と共に解錠方向に移動する。しかるに、ロック部材4は相対移動可能な状態で連結部材6に連結されているので、移動の初期段階では施錠状態のまま動かない。
【0038】
図3(a)に示すように、可動鉄心5によって連結部材6が解錠方向に引かれると、その円弧面状の出隅部分6dがストッパ部材7のテーパ面7gに衝突する。連結部材6がストッパ部材7のテーパ面7gに斜め方向から衝突すると、ストッパ部材7には中心軸線5aに直交する方向の分力が作用し、ストッパ部材7がバネ力に逆らって横方に押し出される。連結部材6は、その出隅部分6dによってストッパ部材7を横方に押し出しながら解錠方向に移動する。この結果、ストッパ部材7は揺動中心線11aを中心に揺動して、そのストッパ面7cがロック部材4の移動軌跡上から退避する。
【0039】
ここで、連結部材6が解錠方向に移動すると、その端板部分6cがロック部材4の角穴4bの解錠側の端面4cに当たる。この後は、ロック部材4が連結部材6によって解錠方向に移動を開始する。本例では、ロック部材4の後端面4gがストッパ面7cとの係合位置に至る手前の時点で、当該ストッパ面7cが連結部材6によって横方に退避し終わるように設定されている。
【0040】
図3(b)はロック部材4がストッパ面7cとの係合位置を通過する時点の状態を示してある。したがって、ロック部材4はストッパ部材7によって移動が阻止されることなく解錠方向に向けて連結部材6と共に移動する。
【0041】
この後は、図4(a)、(b)に示すように、可動鉄心5がその引き込み位置5Bまで引き込まれると、ロック部材4は引き出し部材2の側から完全に離れた解錠状態に切り替わる。
【0042】
なお、この解錠状態において、引き出し部材2をバネ力に逆らってロック部材4に係合可能な位置まで押し込み、この状態でソレノイド3を消磁すると、戻しバネ8によって可動鉄心5が引き込み位置5Bから突出位置5Aに向けて飛び出す。図4の状態から可動鉄心5が飛び出すと、まず連結部材6のみがΔLだけ移動する。この後は、その端板部分6cがロック部材4の角穴4bの施錠側の端面4dに当たり、これ以後は、ロック部材4が連結部材6と共に施錠方向に押し出される。また、ストッパ部材7は、連結部材6が施錠方向に移動すると、そのテーパ面7gが連結部材6の出隅部分6dから外れて、バネ13のバネ力によって再び、ロック部材4に機械的に係合可能な位置に戻る。この結果、再び図1に示す施錠状態が形成される。
【0043】
本実施の形態のソレノイド式施錠・解錠機構1においては、ストッパ部材7は小さな負荷で連結部材6によって横方に退避させることができるように構成されている。すなわち、連結部材6の円弧面状の出隅部分6dをストッパ部材7のテーパ面7gに衝突させて、ストッパ部材7を小さな負荷で横方に退避させることができるようにしている。また、ストッパ部材7を引っ張っているバネ13は、解錠時に退避位置にあるストッパ部材7を再び係合位置に戻すために必要な非常に弱いバネ力を発生できればよい。このため、ソレノイド吸引による解錠動作時におけるストッパ部材7の解除(退避動作)に必要なソレノイド負荷は小さなものであり、ソレノイド吸引力に対してあまりロスにはならず、従来構成のシンプルなソレノイド式施錠・解錠機構(図5参照)に用いるソレノイドの吸引力で問題がない。
【0044】
なお、ストッパ部材7の退避動作をより安定させるためには、連結部材6の振れ止め、回り止め、余剰のがたつき防止などの対策を講じて、連結部材6が精度良くストッパ部材7に衝突するようにすることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】(a)および(b)は、それぞれ、本発明を適用したソレノイド式施錠・解錠機構の施錠状態を示す概略正面図および概略側面図である。
【図2】図1のソレノイド式施錠・解錠機構の動作を示す説明図であり、故意にロック部材が解錠方向に移動させられた場合の状態を示す。
【図3】(a)および(b)は、それぞれ、図1のソレノイド式施錠・解錠機構を解錠状態に切り替える際の動作を順次に示す動作説明図であり、連結部材によってストッパ部材が退避方向に押し出される動作を示す。
【図4】(a)および(b)は、それぞれ、図1のソレノイド式施錠・解錠機構の解錠状態を示す概略正面図および概略側面図である。
【図5】(a)および(b)は、それぞれ、従来のソレノイド式施錠・解錠機構の構成および問題点を示すための概略正面図および概略側面図である。
【図6】(a)および(b)は、それぞれ、図5のソレノイド式施錠・解錠機構の解錠状態を示す概略正面図および概略側面図である。
【図7】(a)および(b)は、それぞれ、図5のソレノイド式施錠・解錠機構にソレノイドを追加して従来の問題を解決した構成例を示す施錠状態および解錠状態の概略正面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 ソレノイド式施錠・解錠機構
2 引き出し部材(被ロック部材)
2a 係合段面
3 ソレノイド
4 ロック部材
4a 中心軸線
4b 角穴
4c 端面
4d 端面
4e 側面
4f 係合突起部
4g 後端面
5 可動鉄心
5A 突出位置
5B 引き込み位置
5a 中心軸線
6 連結部材
6a 本体板部分
6b、6c 端板部分
6d 出隅部分
7 ストッパ部材
7a、7b 端部
7c ストッパ面
7d 側端面
7e 衝突板部分
7g テーパ面
8 戻しバネ
9a、9b ガイド部材
10 フレーム
11 フランジ付き支点用ネジ
11a 揺動中心線
12 位置決め用突起
13 引張りコイルバネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
施錠領域および解錠領域の間を移動可能なロック部材と、
このロック部材を移動させるためのソレノイドと、
このソレノイドの可動鉄心と前記ロック部材の間を連結している連結部材と、
前記ロック部材が前記施錠領域から外れないように当該ロック部材に係合可能な係合位置、および、当該係合位置から外れた退避位置に移動可能なストッパ部材とを有し、
前記連結部材は、突出位置にある前記可動鉄心が引き込み位置に向けて移動する際には当該可動鉄心と共に解錠方向に移動するように当該可動鉄心に連結されており、
前記ロック部材は、前記連結部材が解錠方向に所定量だけ移動した後に当該連結部材に連結して同一方向に移動するように、当該連結部材に連結されており、
前記ストッパ部材は、解錠方向に移動する前記連結部材によって前記係合位置から前記退避位置に押し出されるようになっており、
解錠方向に移動する前記ロック部材は、前記ストッパ部材が前記係合位置から外れた後に当該係合位置を通過するようになっていることを特徴とするソレノイド式施錠・解錠機構。
【請求項2】
請求項1に記載のソレノイド式施錠・解錠機構において、
前記ストッパ部材を前記係合位置に保持しているばね部材を有していることを特徴とするソレノイド式施錠・解錠機構。
【請求項3】
請求項1または2に記載のソレノイド式施錠・解錠機構において、
前記ストッパ部材は、前記係合位置および前記退避位置の間を揺動可能な揺動部材であることを特徴とするソレノイド式施錠・解錠機構。
【請求項4】
請求項3に記載のソレノイド式施錠・解錠機構において、
前記ストッパ部材の揺動中心を規定する揺動中心線に沿った方向から見た場合に、当該ストッパの揺動中心、前記ソレノイドの可動鉄心の中心軸線、前記ロック部材の中心軸線、並びに、前記ストッパ部材および前記ロック部材の係合部位が、同一直線上に位置していることを特徴とするソレノイド式施錠・解錠機構。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちのいずれかの項に記載のソレノイド式施錠・解錠機構において、
前記ストッパ部材は、前記ソレノイドの前記可動鉄心の引き込み動作時に前記連結部材が衝突する衝突面を備えており、
この衝突面は、前記連結部材の移動方向に対して斜めに交差するテーパ面であり、
このテーパ面に衝突する前記連結部材の側の部位は円弧面となっていることを特徴とするソレノイド式施錠・解錠機構。
【請求項6】
請求項1ないし5のうちのいずれかの項に記載のソレノイド式施錠・解錠機構において、
前記ロック部材および前記連結部材の一方には、これらの移動方向に所定の開口幅を備えた連結穴が形成され、他方には、当該連結穴に移動可能な状態で挿入された連結片が形成されていることを特徴とするソレノイド式施錠・解錠機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−308922(P2008−308922A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−159188(P2007−159188)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(000128946)マミヤ・オーピー株式会社 (122)